説明

リファイナーブローライン処理を伴うアルカリ過酸化物を用いた多段階メカニカルパルプ化方法

本発明は、アルカリ過酸化物等の化学薬剤をリファイニング後の中間ラインへ添加するという概念と、アルカリ過酸化物等の化学薬剤を第1リファイニング前にリグノセルロース材料への予備処理に適用するという概念および/またはアルカリ過酸化物等の化学薬剤を第1リファイナーへ適用するという概念を組み合わせたものである。本発明は、その好ましい態様において、原料を予備調整し、大気圧超のリファイナーで原料をパルプにリファイニングし、リファイニング後に化学薬剤を添加することにより、達成されるものである。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、化学メカニカルリファイニングによって、木材チップのようなリグノセルロース材料からパルプを製造する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
メカニカルパルプ化システムにおいてアルカリ性過酸化物系化学薬剤を適用すること(APMP)は、1962年頃まで遡って行われており、それ以来、上記化学薬剤をリファイナーパルプ化の前または初期の段階に適用するために数多くの異なるプロセスが開発されてきている。近年において、リファイナーメカニカルパルプ化において異なる化学薬剤処理がパルプ特性の改良およびプロセス消費にどのような影響を与えるかについて広汎かつ系統的な研究が報告されてきている。硬質木材の場合、アルカリ過酸化物を用いた予備処理は、亜硫酸アルカリ塩(alkaline sulfite)プロセスや冷苛性ソーダプロセス等の他の従来の化学的予備処理と比べると、一般に、より優れた光学特性とより優れた漂白特性を与え、また同等の強度特性を有しつつより高いパルプ収率を与えることが確認されている。過酸化物を用いる後漂白プロセスと比較すると、リファイニング前にアルカリ過酸化物を適用することは、北米産アスペン(ポプラ)等のある種の硬質木材種の場合、所定の引っ張り強さにおいて、より高い嵩を与える傾向がある。
【0003】
大変広い意味においては、アルカリ過酸化物を用いるリファイナーメカニカルパルプ化は、リファイナーにおける開繊(defiberization)およびフィブリル化(fibrillation)前またはそれらの間に、過酸化水素と種々の形態のアルカリが、種々の量の相異なる過酸化物安定剤と共に、リグノセルロース材料に適用されるパルプ化プロセスの一種である。この種のパルプ化方法の開発初期の段階においては、2つの基本的なコンセプトが試みられた。一つは、チップ上にアルカリ過酸化物を適用して、リファイニング前に漂白反応を終了しまたは終了させようとすることである。もう一つの基本的なコンセプトは、予備処理を行うことなく、またはリファイナーにおけるアルカリ過酸化物の適用前に、安定化剤や他のアルカリによる予備処理を行った上で、アルカリ過酸化物の全てをリファイナーで適用することである。
【0004】
通常珪酸塩等の化学薬剤をリファイナーの前に加えると、プロセス装置にスケールが生成する事態が生じる。リファイナー領域自体も、珪酸塩沈殿が、特に軟質木材の処理中に生成して、リファイナープレートをガラス状に被覆してしまう。
【0005】
化学薬剤をリファイナーの下流地点で加えることも提案されている。しかしながら、この提案は、チップの化学的な予備処理や調整を行うことは含んでいなかった。加えて、下流において化学薬剤を添加することは、高圧のリファイニング条件と両立しないと考えられていた。
【0006】
(発明の概要)
本発明は、化学薬剤をリグノセルロース材料にリファイニング直後に導入し、とりわけ、化学薬剤をリファイナーの上流および/またはリファイナーにおいて導入したときと同様の漂白効果を達成することを指向するものである。
【0007】
リファイナーが第1、第2および/または第3リファイナーであれ、化学薬剤をリファイナーの下流で導入することは、リファイニング前にリグノセルロース材料にアルカリ過酸化物のような化学薬剤で予備処理するという概念と共に利用される。リファイナーは、高圧リファイニングにおいて公知の利点を達成するために、高度に加圧されたケースを有していることが好ましい。
【0008】
本発明により、リファイナー下流で化学薬剤を導入することは、本明細書においてP−RC(予備調整とこれに続くリファイナーによる化学処理)APMPと呼ばれるプロセスとともに利用することを選択してもよく、ここでP−RC APMPとは、第1リファイニング前にリグノセルロース供給材料へアルカリ過酸化物のような化学薬剤を予備処理のために適用するという概念と、アルカリ過酸化物のような化学薬剤を第1リファイナーに供給するという概念とを組み合わせたものである。
【0009】
本発明の好ましい態様には、よりエネルギー効率の高いプロセスを得、リファイナーからの排出前に全ての化学薬剤を適用する場合よりも優れた漂白効率を得るために、アルカリ過酸化物(および/またはリグノセルロース材料を漂白するため、またはリグノセルロース材料をパルプまたはパルプの前駆体に処理するために本技術分野において知られている、その他の化学薬剤)の全量の1/3より多くを、ポストリファイナー中間ラインにおけるブローバルブまたはその付近で適用することと、リファイナーにおける化学薬剤の添加およびリファイナー上流におけるチップへの化学薬剤の含浸とを組み合わせる態様が含まれる。
【0010】
本発明の重要な効果は、従来技術に比べて、より多数の化学反応を下流に移すことにより、ポストリファイナーブローラインにおいて、化学薬剤および/または化学安定化剤が相対的に多量若しくは高濃度で添加されて、化学薬剤の効率に優れていることである。
【0011】
本発明の更なる効果は、高圧の第1リファイニングの前および第1リファイニングにおける高温および/または他の条件による悪影響が減少することであり、この悪影響はパルプの明度と改良に影響を与えることが知られている。
【0012】
本発明の別の効果は、高圧システムで実施されたときに、第1リファイナーが完全に大気圧ないし入口が大気圧となっている他のP−RC APMPシステムよりも、より多く、かつより高品質のスチームおよび/または熱を回収することができることである。
【0013】
(発明の詳細な説明)
図1は、P−RCアルカリ過酸化物メカニカルパルプ化(APMP)プロセスにおけるプロセスフローの簡略図である。P−RCプロセスにおいては、通常アルカリ過酸化物薬剤が、チップの予備処理/チップ含浸処理工程/段階1,2において適用され、そして材料が第1リファイナー3に供給されるときにも適用される。
【0014】
図1の段階1および2において実施される予備処理工程は、好ましくは1台または2台の大気圧圧縮装置、例えばスクリュープレスを含む。チップ材料は入口より供給され、少なくとも1箇所の圧縮領域と少なくとも1箇所の膨張領域を通過して排出される。化学活性溶液(予備処理溶液)は、チップ材料への溶液の浸透を促進するために、圧縮されていないとき、または排出時若しくは排出直前において圧縮を解かれたときに通常加えられる。
【0015】
リファイニング工程3は、化学メカニカルパルプ化において知られている、通常のサイズ、構造、運転条件を有する第1リファイナーを含む。化学薬剤が加えられるかどうか、もし加えられるならばどのタイプの化学薬剤が加えられるかに依存して、化学薬剤を過度の温度あるいは時間−温度の組み合せに晒させないように、リファイナーのサイズ、構造、運転条件を調整することができる。本発明の一実施態様において、圧力は約15psi(103kPa)から45psi(310kPa)を超える圧力にすることができる。以下、リファイナーに加えられる化学薬剤をリファイナー溶液と呼ぶ。
【0016】
第1リファイニング工程に続いて行われる工程においては、リファイナーあるいは他の上流のプロセスから下流へ運ばれた一定レベルの化学薬剤が存在し得る。本発明の一実施態様において、ポストリファイニングにおける化学的環境は、1種以上の中間ライン溶液を1回以上中間ラインへ加えることにより修正することができる。中間ラインは、リファイナーと保持塔の間に配置される。例えば、図11に示されるように、リファイナーで晒され、リファイナーから排出された後に、中間ライン中のパルプにブローライン30において、アルカリ過酸化物溶液が適用される。化学薬剤は、ブローライン30に沿うかその周辺における、1箇所以上で適用される。ブローライン30は、中間ラインのブローバルブとセパレーター間で延長してもよい。図18に示されるように、化学薬剤は、ブローバルブの直後40、ブローバルブとセパレーターの間42、セパレーター44の直前、セパレーター46および/またはセパレーターの直後48の中間ラインにおいて適用してもよい。セパレーターは、例えばサイクロンであるが、パルプから生じるスチーム/熱/液体またはこれらの混合物を分離し得るように運転してもよい。セパレーターへ導入する前において、パルプは約20%〜約60%のコンシステンシーと約80℃〜約155℃の温度を有していてもよい。
【0017】
中間ラインの1箇所以上で、中間ライン中の簡単なオリフィスを通して、および/または中間ラインに設けられたノズル等のインジェクターを用いて、化学薬剤が注入される。ノズルは、中間ラインに沿う箇所かまたはその周辺部に、様々な方法で、化学薬剤の添加を望ましく制御するために設けられる。この制御は、例えば、漂白プロセスおよび/または調整プロセスにおける、添加物の有する効果に依存し得る。このように、パルプフロー中の化学履歴は、例えば化学薬剤の注入順序(sequence)や、化学薬剤の流速、組成および/または注入時間により、改変しあるいは維持することができる。他の変数、例えば、流路へのインジェクターの貫入深さ、インジェクターの角度、インジェクターオリフィスの構成、およびインジェクター設備に関するその他の特性は、望ましい結果が達成されるように改変してもよい。化学薬剤は、リファイニングで用いられる圧力に基づいて、その導入位置を変更する修正を行ってもよい。例えばアルカリ過酸化物薬剤は、特に圧力が約45psi(310kPa)未満の低圧リファイニングにおいて、ブローバルブの直後(ブローバルブから2〜3インチ(5〜7.5cm)に満たない位置から2〜3フィート(6〜9m)の位置)に導入してもよい。特に圧力が約45psi(310kPa)を超える高圧リファイニングにおいて、アルカリ過酸化物薬剤は、ブローバルブ後であってサイクロンの直前(2〜3インチ(5〜7.5cm)に満たない位置から2〜3フィート(6〜9m)の位置)に導入してもよい。その他のケースにおいては、アルカリ過酸化物薬剤は、サイクロンとブローバルブの中間で、あるいはサイクロンにおいて、導入してもよい。
【0018】
リファイナーは、加圧ケーシングを有するか、またはプレヒーターからリファイナーの排出まで十分に加圧された、第1、第2および/または第3リファイナーである。リファイナー中の圧力は、リファイナーからパルプを排出する時にパルプを流出し易くする。この排出は、例えばブローバルブで改変したり、制御したりすることができる。パルプを中間ラインへ排出し易くする上記圧力によって、パルプは、中間ラインの部分において数秒から数分の間滞留することになる。上記パルプは、パルプが中間ラインを通って流れるときに、高速度にすることができ、有意な乱流に晒すことができる。これらの条件は、化学薬剤とパルプとの混合を促進する。パルプ流における激しい乱流と高い温度勾配により、化学薬剤が個々のパルプ繊維に浸透し易くなり、その上、繊維壁内にも浸透し易くなる。
【0019】
図示された例のように、パルプは約100℃以上、化学薬剤は40℃以下の温度でもよい。中間ライン溶液は、約10℃〜約25℃の範囲であることが好ましいが、80℃までの温度にすることもできる。中間ラインでアルカリ過酸化物薬剤を適用することによって、特にリファイニング時に高められた温度および/または圧力が存在する場合に、アルカリ過酸化物薬剤を高温度に晒す時間を短くすることができる。リファイニング後に化学薬剤を注入口よりパルプ流に添加することにより、アルカリ過酸化物の安定化をより容易にし、その効果をより増大させる。大気圧超のリファイナー(superatmospheric refiner)システムを伴う中間ラインで本発明を実施しても、パルプからのスチーム/熱/液体の回収を促進したり、改良したりすることができる。このようなスチームは、スチームパイプ36を通じて再利用してもよい。これらの特徴は、また、低い結束繊維濃度(shives content)を有する高フリーネスのパルプの生産を可能にするが、これは、パルプ工業において、より高いリファイニング圧力はより低い結束繊維、あるいはより清浄なパルプを生産し易いことが知られているからである。幾つかの態様においては、サイクロン32に加え、あるいはサイクロン32の代わりに、プレス装置(a press)を含めてよい。このプレス装置は、パルプからのスチーム/熱/液体の回収量を増加させる。
【0020】
本発明の一実施態様において、過酸化物の効率と明度の改善に影響を与える最適化プロセスは、第1リファイニングが十分に加圧されたときに達成される。一つの特定の構成において、これは本明細書でP−RC APTMPと呼ぶが、これは第1リファイナーが完全大気圧下で操作されるか、あるいは入口が大気圧でケーシングが低圧で操作される他のP−RC APMP構成とは異なるものである。
【0021】
図1Aから図1Fは、図1に概略的に示されるP−RCプロセスの種々の例を示している。例えば、図1Aと図1Bは、1および/または2において材料が予備処理された後、溶液がリグノセルロース材料に加えられるが、その場所は、特にスクリュープレス下流であって、リファイナー3近傍のクロスコンベアー10において、またはリファイナー自体、例えば、リボンフィーダー12、リファイナーディスク14の入口の眼(inlet eye)において、および/またはリファイナーディスク16上のプレートの入口領域においてであることを示している。
【0022】
本明細書において用いられるように、“材料がリファイナーに供給されるときに”化学薬剤を添加することは、10、12、14および16の場所において行われる。P−RCプロセスのリファイナーは大気圧のケーシング3Aあるいは加圧ケーシング3Bを有するが、リファイナーへの入口は通常大気圧である。第1パルプの加圧ケーシング20aからの排出はブローバルブまたはこれに類似する装置を用いて行われるが、大気圧ケーシング20からの排出は重力落下等により行われる。リファイナーからの排出物は、直接であれ間接であれ、いずれの場合も、本技術分野で公知のタイプの高コンシステンシー塔(但し、温度制御は行われる)へ送られる。
【0023】
本発明の一態様において、予備処理溶液、リファイナー溶液(もし存在する場合)および中間ライン溶液は、リグノセルロース材料に化学的に作用する。プロセスを最適化し、および/または望ましくない化学的効果や分解を減少させあるいは排除するために、リグノセルロース材料とプロセス装置に依存して、リグノセルロース材料の化学薬剤との接触履歴を変更することは有益である。そのような化学薬剤履歴の変更は、プロセス全体における一連の化学薬剤の添加によって達成することができ、あるいは、温度、濃度、圧力、時間等の、望ましい効果をさらに向上させるための他の種々の変動条件との組み合せにより達成することができる。
【0024】
P−RCプロセスによりプロセス処理されたリグノセルロース材料は、測定可能なフリーネスを有する第1次パルプとして、第1リファイナーケーシングから(大気圧の排出20あるいは加圧排出20aを経て)4に排出され、これはハンドシートを形成可能なパルプと呼ばれる。図1Cと図1Dに示されるように、リファイナーからの大気圧での排出物は、搬送スクリューのような搬送装置22を介して塔24へ送られ、あるいは、シュート等を介してより直接的に28へ送られる。図1Eと図1Fに示されるように、加圧ケーシングによってリファイニングされたパルプは、ブローバルブを介して排出され、直接または間接に高コンシステンシー塔へ通常送られる。あるいは、図1Cと図1Eに示されるように、高コンシステンシー塔から排出された漂白パルプは、例えば第2リファイナーでさらに処理することもできる。高コンシステンシー保持塔24により、塔の上流より持ち越された化学漂白反応を継続することができる。
【0025】
本発明の一態様においては、例えば、図18に示されるように、ブローバルブからの排出物を、セパレーターおよび/またはプレス装置を介して間接的に保持塔に搬送してもよい。
【0026】
第1リファイナー中に十分な量のアルカリ過酸化物が存在することにより(例えば、化学反応の大部分をリファイナー化学処理段階へ移すことにより)、効率を改善することができる。これは、木材チップと繊維の自然界における不均一性(heterogeneity)に加え、チップの形状と品質の変動が、時としてチップ予備処理/含浸段階における良好な化学薬剤分布の達成を不可能でないとしても困難にしているからである。このような状況において、第1リファイナーでの混合作用は化学薬剤の分配を促進し、そのため、化学効率が改善される。
【0027】
本発明の一態様によれば、ポストリファイニング中間ラインに化学薬剤を添加することにより、例えばリファイニングにおいて加圧リファイナーを用いたり高温にしたりすることができるようになる。化学薬剤を、例えばブローラインで中間ラインに添加することにより、過酸化物のような化学薬剤を、速く、より直接的に発色位置に分配して効率的に漂白することができる。この効率は、プロセス前段において存在する、より不均一な環境に過酸化物を長く晒すことなく、目的とする過酸化物の反応が所望の位置で迅速に起きることにより、得られるものである。通常、リファイナープレート間に位置する入口の温度により、発色団の除去反応とへミセルロースのアルカリ反応が促進されて、pHが早期に低下する。本発明の一態様によれば、ポストリファイナー中間ラインを化学薬剤の混入位置として用いることにより、パルプの高められた温度に対して十分な程度まで好ましく対抗できるように迅速に化学薬剤を分配することができる。上記パルプの高められた温度は、例えば、約80℃〜約155℃とすることができる。
【0028】
本発明の一態様において、パルプは段階間の高コンシステンシー保持塔で維持することもできる。高コンシステンシー保持塔におけるパルプは約20%〜約40%のコンシステンシーを有してよく、約30%のコンシステンシーであることが好ましい。高コンシステンシー保持塔中のパルプ温度は約60℃〜約95℃である。パルプは、化学処理に必要な化学反応に依存して、保持塔中で約30分〜2時間以上保持することができる。ここで保持条件には、これらに制限されるものではないが、温度、圧力、pH、化学薬剤の濃度、固体の濃度、および時間が含まれ、これらの条件によってパルプの調整および/または漂白が継続され、パルプの漂白に関係しない反応による漂白剤の分解が防止される。そのような関係しない反応は、パルプの漂白に対し非生産的・非効率的で、および/または有害である。条件の一部または全部を制御することは、例えばプロセス中で用いられるリグノセルロース材料の種類と状態、装置そのものの種類、サイズ、運転環境によって必要とされたりされなかったりする。例えば、温度条件はプロセスを通じて化学薬剤、加圧ガスや他の加熱または冷却方法を加えることによって変えることができる。温度変更手段は、パルプが混合され高コンシステンシー塔へ搬送される間、水を加えながら、混合スクリューを用いることによって、第1パルプ22の搬送中に用いることができる。第1パルプの温度も、第1パルプが直接高コンシステンシー塔28へ本技術分野における公知手段により排出される場合には、高コンシステンシー塔内で熱的に調整される。例えば、パルプは液体や気体の導入、および/または管や塔ジャケット等の熱移動手段を用いることによって熱的に調整される。
【0029】
ここで用いられる“制御”という用語は、能動的な技術手法と受動的な技術手法の両者を含むと解すべきである。従って、制御は、静的なハードウェア構造により、または1以上のプロセスパラメーターを連続的に測定し、1以上のプロセス変数を制御することにより行われる。
【0030】
本発明のプロセスの何れの箇所における化学的条件は、関係のない分解を防止するための添加剤によって変更される。この変更は、実施例によれば、予備処理工程1および/または2において、クロスコンベアー10、リボンフィーダー12、リファイナーディスク14の入口の眼(inlet eye)、リファイナーディスク16のプレート、ブローバルブ20a、ブローライン30、セパレーター32において、および/またはセパレーターの後において行われる。安定化剤の例として、キレート剤がある。キレート剤とは、リグノセルロース材料中の金属と第1パルプとでキレートと呼ばれる錯体を形成し得る化合物を意味する。このような金属には、一価金属である、ナトリウム、カリウム、二価のアルカリ土類金属であるカルシウム、マグネシウム、バリウム、および重金属である鉄、銅、マンガン等が含まれる。プロセス処理されている材料中に保持されている金属イオンは酸素化合物(過酸化水素等)による漂白を非効率化し、過度の化学薬剤の消費や、本技術分野で周知の他の問題を引き起こす。プロセス上でこれ等の金属イオンの影響を減少させまたは除去するために、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA),エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリル三酢酸(NTA)等のキレート剤が用いられる。上記および本技術分野で知られる他のキレート剤は、プロセス条件に応じて必要に応じてまたは所望により単独で、または組み合わせて用いられる。さらに、珪酸塩と硫酸塩が、安定化剤としてまたは本技術分野で周知の他の機能を発揮させるために有益に用いられる。
【0031】
本発明の態様および概念は、以下の実施例と記述により明らかとなる。
(実施例)
実施例A
いくつかのシリーズのパイロットプラントプロセスが以下の実施例に示されている。
下記の実施例において、材料と条件は特記しない限り次のとおりである。
木材:ポプラ(aspen)50%とシナノキ(basswood)50%の混合物が本研究に用いられた。ポプラは中心部が腐っていたため、一般に予期されるよりも漂白がより困難であった。木材は全て米国のウィスコンシン産で、後記のプロセス前に表皮を剥がされ、チップ化され、篩いにかけられた。
化学含浸:チップは最初に10分間、予備水蒸気処理され、その後アルカリ過酸化物化学液で含浸される前にアンドリッツ(Andritz)社製 560GS インプレサファイナー(Impressafiner)を用いて4:1の圧縮比でプレスされた。プレスからの排出時に化学液が導入され、リファイニング前に30分間保持された。
リファイニング:1200rpmの通常速度を有するアンドリッツ社製 92 cm (36インチ) 401型 ダブルディスク大気圧リファイナーが、全てのリファイニングプロセスに用いられた。第1リファイニングプロセスおよび第2リファイニングプロセスの間は、15分間以上の保持時間であり、第1リファイニングプロセス後と第2リファイニングプロセス前においては一切希釈されなかった。リファイニングコンシステンシーは第1リファイニングプロセスおよび第2リファイニングプロセスの何れにおいても20%であった。
パルプ試験:フリーネスを除き全てのパルプ試験にTappi標準が用いられ、フリーネスはカナダ標準フリーネス(CSF)試験方法が用いられた。
【0032】
比較された3つのプロセスの第1のプロセスにおいて、チップの含浸(予備調整または予備処理)段階(1段階のチップ含浸のみ)において、全てのアルカリ化学薬剤が適用され(全アルカリ度(TA) 3.3%で, H2O2 2.4%, DTPA 0.2%, MgSO4 0.07%,Na2SiO3 3%)、その後大気圧でリファイニングされた。その為、本シリーズは“チップ”と名付けられた。
【0033】
第2のシリーズは、チップの含浸段階において、全アルカリ過酸化物化学薬剤の約2/3(すなわちTA 2.4%, H2O2 1.6%, DTPA 0.08%, MgSO4 0.04%,Na2SiO3 2.4% )を用い、および第1リファイナーの眼の部分で全化学薬剤の約1/3(TA 1.0%, H2O2 1.0%, DTPA 0.19%, MgSO40.05%,Na2SiO3 0.9% )を用いた。このシリーズは“チップ+リファイナー”と名付けられ、本発明に対応する。
【0034】
第3のシリーズは“リファイナー”と名付けられ、上記2つのシリーズと同じチッププレスでチップが先ずプレスされ、その後全てのアルカリ過酸化物化学薬剤(TA 4.2%, H2O2 3.3%, DTPA 0.36%, MgSO4 0.11%,Na2SiO3 4.3% )が、第1リファイナーの眼の部分で適用された。
【0035】
全てのシリーズにおいて、第1リファイニングから得られたパルプは、第2段階のリファイニング前に、蓋をされたドラム中に15分間保持された(これにより80−90℃の温度になった)。各段階間において洗浄は全く行われなかった。
【0036】
図2は、各シリーズのプロセス条件と結果のいくつかをまとめたものである。パルプは全て第2段階のリファイニングにより得られたものである。メカニカルパルプの過酸化物漂白において、アルカリ黒色化反応の可能性を防止しあるい低減するために、より高温下においては、TA/H2O2の比をより低くすることが一般に好ましい。この理由により、表1に示されるように、最も低い TA/H2O2の比1.27が、“リファイナー”シリーズに用いられ、2番目に低い1.31は“チップ+リファイナー”シリーズに用いられ、最も高い1.37は“チップ”シリーズに用いられた。“リファイナー”シリーズにおいて、TAの供給量が大きい(4.2%)のは、リファイニング中にリファイニングエネルギーにより発生する高温と熱によってpHが余りにも早く、余りにも低く低下するのを防ぐためである。適度な残存過酸化物量とpHが図2のシリーズのそれぞれにおいて維持された。
【0037】
化学的には、“チップ”シリーズと“チップ+リファイナー”シリーズ間で最も相違する点は、後者がより多くのアルカリ過酸化物化学薬剤をリファイナー化学処理段階へより積極的に投入している点である。
【0038】
研究に付された異なるプロセス後における第2リファイニング後のパルプから得られたデータが、図3から図8に図示される。図3は、特定エネルギー消費(SEC)との関係におけるパルプフリーネスの改良に対する異なった化学薬剤の添加効果を示すものであり、SECにはチップの予備処理段階で消費されたエネルギーも含まれる。“チップ+リファイナー”シリーズは“チップ”シリーズよりもSECが僅かに少ないが、両シリーズは、リファイナーで漂白するシリーズである“リファイナー”シリーズよりも平均してほぼ200kwh/odmt低いSECを用いた。但し、後者のシリーズは前2者のシリーズよりも多量の苛性化学薬剤が適用され、“チップ+リファイナー”シリーズと同一の残留pH8.2であった。このことから、高温下においてリファイナーの眼にアルカリ化学薬剤を加えることにより、アルカリがパルプ特性の改良にほとんど貢献しない非生産的反応ないし副反応に消費されることが明らかである。
【0039】
商業運転においては、SECは、硬質木材(hardwoods)の化学メカニカルパルプ化のラボ実験で測定されるよりも一般に低いことは指摘されるべきである。図3のSEC値は、それ故、絶対値よりも比較目的で使用されるのが好ましい。
【0040】
多くのパルプ特性、特に強度特性は、ハンドシート密度に依存するため、この特性もSECのもとで分析され、結果が図4に示される。この場合、より苛酷なリファイナー化学処理であるP−RC APMPシリーズ、すなわち“チップ+リファイナー”シリーズは、ハンドシート密度の改良に最も効果的であり、次いで“チップ”シリーズと“リファイナー”シリーズが続く。これらの結果は化学メカニカルパルプ化において、プロセスエネルギー効率は化学薬剤の量のみに依存するのだけではなく、どのように化学薬剤が用いられるかにも依存することを実証している。
【0041】
しかしながら、パルプの固有特性の改良に関しては、図5および図6に示すように、3つのシリーズでほとんど差異がなく、これは、リファイニング前に化学薬剤が加えられる限り繊維強度特性の改良に関するメカニズムは同じであることを示唆している。
【0042】
パルプの光学特性の改良に関しては、メカニカルパルプ化においては、パルプの明度はしばしばフリーネスに依存する。図7は、各シリーズの異なるフリーネスにおける明度を示している。興味深いことに、“チップ+リファイナー”シリーズと“リファイナー”シリーズは、化学漂白剤の使用量が前者H2O2 2.6% /TA 3.4% に対して後者がH2O2 3.3% /TA 4.2%と前者の化学漂白剤の使用量が後者よりも少ないにも拘わらず、“チップ+リファイナー”シリーズは“リファイナー”シリーズと同等の明度を有する。全ての化学薬剤を含浸段階で加える“チップ”シリーズもまた漂白効率が小さく、“チップ+リファイナー”シリーズよりも2ポイント以上低いことを示している。このことは、P−RC APMPプロセスにおけるチップ含浸とリファイニングとの間で化学薬剤がどのように分配されるかにより漂白効率が変動しやすいことを示唆している。この場合、全ての化学薬剤をチップ含浸において加えることと全ての化学薬剤をリファイナーの眼において加えることとを折衷させることが、漂白および過酸化物消費に最も効率的であると思われる。
【0043】
図8は研究された全てのシリーズにおいて光散乱特性の改良に差異がないことを示すものであり、このことは、パルプ表面の改良メカニズムも化学薬剤がリファイニング前に加えられる限り同一であることを示唆している。
【0044】
実施例B
下記の実施例は、第1リファイナーがその入口において無視し得る程度のゲージ圧に、ケーシングにおいて低圧(約140kPa)に維持される異なったリファイニング構成を示す。
【0045】
本リファイニング構成の利点は、以下の項目を含む。
1)特に高処理量のリファイナー(300t/d以上)の場合に、リファイナーからの排出時における蒸気の取扱い易さがより優れていること。
2)リファイナーから段階間の高コンシステンシー塔(HC)への搬送が容易であること。
3)第1リファイニングから発生する蒸気の一部を利用し得ること(サイクロンを用いてスチームとパルプ繊維とを分離することにより)。
4)現存するTMPシステムをP−RC APMPプロセスへ転換することが容易であること。
【0046】
これらの実施例は、ケーシング中を低圧(140kPa)に、入口を大気圧にして第1リファイナーを運転することが、入口とケーシングの両方を大気圧にして運転した場合と同等の漂白効率を与えることを示すものである。第1リファイナーの入口における温度とプレート間の温度は、発色成分の除去反応およびヘミセルロースのアルカリ加水分解反応を加速させて、パルプがリファイナープレートからケーシングに到達する前にpHがかなり低下することがある。
【0047】
第1リファイナーからサイクロン排出部におけるパルプは、以下の実施例においてpH9.3−9.7と測定されたが、このpHにおいて過酸化物は測定された高温(80−90℃)においても安定化が容易であった。
【0048】
以下の実施例における材料と条件は、下記の通りである。
木材:カナダ東部のパルプ工場より得られたポプラ(Aspen)とシラカバ(birch)のチップが本研究に用いられた。
【0049】
チップの含浸:通常のパイロットチップ含浸システムが本研究に用いられた。研究された全てのP−RC APMP運転において、DTPAのみがチップ含浸の第1段階に用いられた。その後、チップは第2段階においてアルカリ過酸化物(AP)化学薬剤に含浸された。AP処理されたチップは、その後リファイニング前に30〜45分間 (蒸気処理されることなく)保持された。
【0050】
大気圧リファイニングシステム:アンドリッツ社製36インチ(92cm)径ダブルディスク401システムが通常のP−RC APMPプロセス研究に用いられた。このシステムは、覆いのない測定用ベルトと、傾きを有する一対のスクリューフィーダーと、リファイナーと、覆いのない排出用ベルトから構成されている。このシステムは第1リファイニングおよびリファイニングの後段階の両者において用いられた。第1リファイニングに用いられた時は、排出されたパルプはドラム中に集められ、蓋をして一定期間高温(80−90℃)に維持された。
【0051】
加圧リファイニングシステム:アンドリッツ社製36インチ(92cm)径のシングルディスク加圧システムが、大気圧の入口/加圧ケーシングのために改造された。改造前のリファイナーシステムは、通常のTMPシステムにおける標準的な構成を全て有するものである。システムを、入口において大気圧で運転するために、垂直な蒸気管の頂部にバルブが設けられ、リファイニング中は開放状態を維持された。実験中、化学薬剤で含浸されたチップが圧縮されないように、プラグ式スクリューフィーダー(PSF)が50rpmで運転された(TMPにおける通常の速度は10〜20rpmである)。APで含浸されたチップはチップ容器に保管され、チップ容器からチップブロワーへ排出された。その後チップはサイクロンへ吹き飛ばされ、PSFを備えるコンベアーへ排出された。リファイナーへの供給前に、チップが垂直蒸気管中に投入された。リファイニング中、第1リファイナーは入口においてゼロ圧力に、ケーシングにおいて140kPaに制御された。第1パルプはケーシングからサイクロンに吹き飛ばされ、排出され、ドラム中に集められた後、大気圧リファイニング運転と同様に処理された。
【0052】
パルプ試験:明度試験にはTAPPI標準が用いられた。過酸化物残量は標準ヨード滴定を用いて測定された。
【0053】
ポプラとシラカバの市販木材チップのP−RCAPMPパルプ化において、加圧されたケーシングと大気圧の入口を有する第1リファイナー運転が、通常の大気圧リファイニングと比較された。その結果、両リファイニング構成は、同等の漂白効率を与えることが示された。幾つかの装置においては、加圧ケーシングを使用することにより、P−RC APMPプロセスにおけるプロセス、工事、運転をかなり簡略化することができる。
【0054】
図9は、ポプラのP−RC APMPパルプ化に用いられた化学条件と、第1リファイナーを用いる大気圧運転および加圧運転で得られる明度の結果とを示している。両者において、同様のAP化学処理が適用され、同様の化学薬剤消費量(全アルカリ度TA5.2〜5.4%、H3.7〜3.9%)であると、大気圧運転時とケーシングの加圧運転時において、それぞれISO84.2%とISO84.7%と同等の明度を示した。
【0055】
両者において残存pH(8.8−9.0)は、理想値(約7.0−8.5)よりも僅かに高く、H残存量(パルプo.d.で1.5〜2.0%)も通常(0.5〜1.0%)よりも高く、このことは、両者において化学処理が最適化されれば、パルプ特性をさらに改良することができることを示唆している。
【0056】
表1に示した漂白効率(ISO 84.2〜84.7%へ到達するためにH3.7〜3.9%、TA 5.2〜5.4%の消費)は、ポプラから得られたTMPまたはCTMPパルプのH漂白において通常観察される漂白効率と同等またはそれ以上である。
【0057】
図10は、シラカバのP−RC APMPパルプ化の条件と結果を示す。この特定のシラカバチップはポプラよりも僅かに漂白することが困難であった。同様のAP化学処理を用いたところ、大気圧および加圧のケーシングにおいて、ISO 82.4〜82.6%の明度に到達するためにTA 3.1−3.2%、H 3.4−3.6%という同様の漂白効率を与えた。この場合、化学薬剤残存量(TA 0.1−0.2%、H 0.5−0.6%、pH8)は理想的なH漂白条件の範囲内にあった。
【0058】
実施例C
この実施例は、とりわけ、化学薬剤の配合と分布が最適化されたときに、リファイナーの化学処理段階におけるアルカリ過酸化物薬剤が、加圧されたリファイニングシステムの中間ラインに適用されて、通常の大気圧の入口圧力を有するP−RC APMPと同様の漂白効率を達成することを示すものである。中間ラインにおける滞留時間は非常に短いので、同様のプロセスを高圧リファイニングシステム、例えば4バール(400kPa)以上で運転するシステムで用いてもよい。
【0059】
木材:硬質木材〔シラカバ(birch)とカエデ(maple)〕の全てが、チップの形状で搬入され、その後のプロセス前に別々に攪拌された。軟質木材〔トウヒ(spruce)、マツ(pine)およびそれらの混合物〕は丸太の形状で搬入され、後続のプロセス前に、表皮を剥がされ、チップ化され、攪拌された。
【0060】
チップの含浸:木材チップは、特記した場合を除き、アンドリッツ社製560GSインプレサファイナー(Impressafiner)システムを用いて、アルカリ過酸化物(AP)薬剤(水酸化ナトリウム(NaOH)、過酸化水素(H2O2)、DTPA、硫酸マグネシウム(MgSO4)および珪酸ナトリウム(Na2SiO3)を含む)で2回含浸された。幾つかのケースにおいては、RT−プレサファイナー(RT-Pressafiner)が第1段階の含浸処理(プレス前における1.4バール(140kPa)、20秒間のスチーム処理))で用いられた。
【0061】
リファイニング:アンドリッツ社製の91cm(36インチ)径を有するシングルディスク36−1CP型リファイニングシステムが、加圧運転および入口は大気圧/ケーシングは加圧された運転全てに対して用いられ、アンドリッツ社製の91cm (36インチ)径を有するダブルディスク401型システムが、大気圧リファイニング運転の全てに対して用いられた。典型的には、他の箇所で記述されている場合を除き、401型リファイニングシステムが第2および第3リファイニングの全てで用いられた。
【0062】
プロセス説明:P−RC(予備調整と、それに続くリファイナーでの化学処理であり、ここで、アルカリ過酸化物薬剤がチップの予備処理とリファイニング段階間で分布される)プロセスが、全てのトライアル運転に使用された。中間ラインにアルカリ過酸化物薬剤が添加される運転において、ブローラインから排出されたパルプが、85℃〜95℃の温度に維持するために、ドラム中のプラスチック製袋の下に覆われたが、上記温度は、リファイナーで用いられる特定のリファイニングエネルギー、化学薬剤添加量、原料の性質に依存して定まるものである。
【0063】
パルプ試験:カナダ標準フリーネス(CSF)試験方法が全てのフリーネス試験に用いられ、Tappi標準法が全ての光学特性試験に用いられた(明度はTappi T218 OM−83により、光の分散係数と吸光係数はTappi T425 OM−86(但しハンドシートの場合はTappi 205 OM−88)により測定された)。図15は、アルカリ過酸化物薬剤を、リファイナーの化学薬剤(RC)処理段階における、リファイナーの眼か中間ラインのいずれかで適用して得た結果を示している。シラカバ(birch)とカエデ(maple)の木材が本実施例で使用された。各木材のチップには、化学薬剤による予備処理(予備調整)が適用された。シラカバの場合、チップは、第1段階の含浸では0.3%DTPAにより処理され、次いで、第2段階の含浸では0.2%MgSO、4.4%珪酸塩、2.8%TAおよび2.8%Hで処理された。カエデの場合、チップは、第1段階の含浸では0.5%DTPAで処理され、次いで、第2段階の含浸では、0.2%DTPA、0.1%MgSO、2.0%珪酸塩、1.6%TAおよび2.6%Hで処理された。予備調整されたチップは、次いで、リファイナーの化学薬剤(RC)処理段階において同程度の量のアルカリ過酸化物薬剤を受け入れたが、受け入れは、異なる2つの位置、すなわちリファイニング前におけるリファイナーの眼と、リファイニング直後の中間ラインとで行われた。
【0064】
シラカバの場合、両シリーズ(A1およびA2)で、全部で5.2%のHと、全部で4.6%のアルカリ(TA)を使用し、同程度の量のH残分(1.0〜1.1%)と最終pH(8.9〜9.0)を有していた。最終的なpHは比較的高く、これは、保持時間が長くなると、パルプの明度が高くなることを示していた。リファイナーの眼においてアルカリ過酸化物を添加するシリーズ(A1)の試料は、アルカリ過酸化物が中間ラインで添加されたシリーズ(A2)の試料と同様の明度を有し、ISO84.8%対ISO84.2%であった。明度のわずかな相違は、少なくとも部分的には、フリーネスが、前者が285mLであり、後者が315mLと僅かに相違するからと思われる。化学的には、両シリーズは同様の吸光係数を有し、前者が0.27m/kgであり、後者が0.25m/kgであった。
【0065】
カエデ木材の試料の場合は、アルカリ過酸化物薬剤を中間ラインで添加したA4の場合、明度がISO81.9%で、アルカリ過酸化物薬剤をリファイナーの眼で添加したA3の場合の明度ISO79.2%よりも明度が実際に高かった。この相違は、前者が低いフリーネス(295mL対320mL)と、低い吸光係数(0.32m/kg対0.5m/kg)を有するためであった。
【0066】
軟質木材、すなわち、トウヒ(spruce)と赤マツ(red pine)についても、化学薬剤の添加位置を変えたときの効果を調べるために検討された。図16に結果を要約するが、ここでも、アルカリ過酸化物薬剤をリファイナーの眼か中間ラインで添加することにより、同様の明度が達成された。トウヒの場合、チップは最初に0.3%DTPA、0.05%MgSO、0.7%珪酸塩、0.2%TAおよび0.5%Hで含浸処理し、次いで、第2段階の含浸では0.1%DTPA、0.08%MgSO、1.8%珪酸塩、1.4%TAおよび1.9%Hで処理された。赤マツの場合、チップは第1段階の含浸では、0.4%TA、0.5%H、0.2%DTPA、0.04%MgSOおよび0.5%珪酸塩で処理され、第2段階の含浸では、0.4%TA、0.6%H、0.14%DTPA、0.05%MgSOおよび0.4%珪酸塩で処理された。トウヒのチップには、同程度の量のアルカリ過酸化物薬剤を用いているが、例えば図16に示される例では、ブローラインで添加するシリーズであるA6の場合、明度がISO78.8%であり、リファイナーの眼に最終段階のアルカリ過酸化物薬剤を添加するシリーズであるA5の場合の明度ISO78.2%と、明度が同等ないし僅かに高かった。この明度の僅かな相違は、フリーネスが47mL対49mLと僅かに相違することと、吸光係数が0.56m/kg対0.60m/kgと僅かに相違することが組み合わされた結果と思われる。
【0067】
赤マツの場合は、ブローラインで化学薬剤を添加するシリーズA8が、リファイナーの眼で化学薬剤を添加するシリーズA7と比べて、明度がISO 71.8%対ISO 71.2%と僅かに高く、吸光係数が0.84m/kg対1.01m/kgと低いが、フリーネスが99mL対82mLと高かった。この場合、明度に関する効果に関する限り、吸光係数の相違はフリーネスの相違に依ると思われる。アルカリ過酸化物薬剤処理量は、両シリーズで同じであった。
【0068】
図17に示すように、トウヒとマツとの軟質木材混合物がリファイナーの化学処理段階で高圧リファイニング処理に付された。この場合、RT−プレサファイナーが第1含浸段階で用いられ、第2含浸段階でアンドリッツ社製560GS型インプレサファイナーが用いられた。この化学処理では、チップの第1含浸段階で0.4%TA、0.6%H、0,18%DTPA、0.03%MgSOおよび0.3%珪酸ナトリウムが用いられ、チップの第2含浸段階で0.4%TA、0.7%H、0,15%DTPA、0.05%MgSOおよび0.4%珪酸ナトリウムが用いられ、リファイナーの化学処理段階(シリーズA9の場合、リファイナーの眼、シリーズA10の場合、中間ライン)で、0.9%TA、1.5%H、0,18%DTPA、0.09%MgSOおよび1.8%珪酸ナトリウムが用いられた。シリーズA9およびシリーズA10が実施され、両者は化学薬剤の添加量と処方が同様であったが、一方(シリーズA9)が第1リファイナーで2.1バール(210kPa)の圧力を有し、他方(シリーズA10)が4.2バール(420kPa)の圧力を有していた。図17は、結果を示し、高圧のシリーズA10が同様の漂白効率と明度を達成できることを示している(1.7%TA、2.8%Hを用い、ISO 73.7%〜73.4%に到達した)。各試料は同様の吸光係数(0.96〜1.1m/kg)を有していた。
【0069】
これらの結果は、化学薬剤が最適に添加された場合には、極めて高圧(4.2バール(420kPa)または60psi(414kPa))で処理された場合でも同様の漂白効率と明度(少なくともISO70〜75%の範囲)が達成され得ることを示している。高圧でリファイニングすることにより、低圧でリファイニングしたときよりも高品質のスチームをより高い効率で回収することができ、高フリーネスパルプに対する結束繊維(繊維束)を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本発明は、以下の図面を参照することにより、より良く理解することができる。これらの図面において:
【図1】図1は一般的なP−RC APMPプロセスを示すブロック図である。
【図1A】図1Aはリグノセルロース材料を、ケーシングが大気圧のリファイナーに搬送し、大気圧で排出する工程を示すブロック図である。
【図1B】図1Bはリグノセルロース材料を加圧したケーシングを有するリファイナーに搬送し、加圧下で排出する工程を示すブロック図である。
【図1C】図1Cは、大気圧のケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプを、搬送手段を介して高コンシステンシー塔へ搬送する工程を示すブロック図である。
【図1D】図1Dは、大気圧のケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプを直接高コンシステンシー塔へ搬送する工程を示すブロック図である。
【図1E】図1Eは、加圧されたケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプを、搬送手段を介して高コンシステンシー塔へ搬送する工程を示すブロック図である。
【図1F】図1Fは本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧されたケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプを高コンシステンシー塔へ搬送する工程を示す。
【図2】図2は、P−RCを2つの従来技術のプロセスと比較した表である。
【図3】図3は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおける、エネルギー消費に対するフリーネスのグラフである。
【図4】図4は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおける、エネルギー消費に対する密度のグラフである。
【図5】図5は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおける引張強さ増加による引張強さを示すグラフである。
【図6】図6は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおける破裂強さの増加を示すグラフである。
【図7】図7は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおける明度の増加を示すグラフである。
【図8】図8は、P−RCと2つの従来技術のプロセスにおけるフリーネスの関数としてのパルプの光散乱係数を示すグラフである。
【図9】図9は、P−RCによるポプラ木材チップの大気圧ケーシングプロセス対加圧ケーシングプロセスの比較表である。
【図10】図10は、P−RCによるシラカバ木材チップの大気圧ケーシングプロセス対加圧ケーシングプロセスの比較表である。
【図11】図11は、本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧したケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプに、コントロールバルブ後の中間ラインで化学薬剤を添加して、保持塔に搬送する工程を示す。
【図12】図12は、本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧したケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプに、中間ラインにおけるセパレーターの入口前でアルカリ過酸化物薬剤を添加して、保持塔に搬送する工程を示す。
【図13】図13は、本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧したケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプに、中間ラインにおけるセパレーターでアルカリ過酸化物薬剤を添加して、保持塔に搬送する工程を示す。
【図14】図14は、本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧したケーシングを有するリファイナーで製造された第1パルプに、中間ラインにおけるセパレーターの排出部でアルカリ過酸化物薬剤を添加して、保持塔に搬送する工程を示す。
【図15】図15は、本発明による、シラカバ木材チップとカエデ木材チップへ化学薬剤を添加するプロセスである、リファイナーの眼で添加するプロセス対ブローラインで添加するプロセスの比較表である。
【図16】図16は、本発明による、トウヒ木材チップと赤マツ木材チップへ化学薬剤を添加するプロセスである、リファイナーの眼で添加するプロセス対ブローラインで添加するプロセスの比較表である。
【図17】図17は、本発明による、高圧下において木材チップへ化学薬剤を添加するプロセスである、リファイナーの眼で添加するプロセス対ブローラインで添加するプロセスの比較表である。
【図18】図18は、本発明の具体例に対応するブロック図であり、加圧されたリファイナーで製造されたパルプを塔へ搬送する工程対中間ラインで製造されたパルプを塔へ搬送する工程を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
リグノセルロース材料を第1プレス装置に供給し;
リグノセルロース材料をプレスし;
第1プレス装置からリグノセルロース材料を排出し;
第1プレス装置から排出したリグノセルロース材料を第1アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸し、第1反応時間の間、含浸状態を維持し;
該含浸処理したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給し;
前記含浸処理したリグノセルロース材料を、少なくとも約80℃の温度を有する第1次パルプを形成するためにリファイニングし;
第1次パルプの温度が少なくとも約80℃である間に、大気圧超のケーシングから中間ラインへ第1次パルプ流を搬送し;
第1次パルプの温度が少なくとも約80℃である間に、前記中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加え;
中間ライン中で反応混合物を形成するように、前記中間ライン溶液と前記第1次パルプ流を混合し;
少なくとも約80℃の温度を有する前記反応混合物を保持槽中に排出し;
前記保持槽中で前記反応混合物を保持して漂白された材料を製造する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項2】
第1反応時間の間、第1予備処理溶液に含浸したリグノセルロース材料を第2プレス装置に供給し;
前記リグノセルロース材料をプレスし、第2プレス装置から排出し;
第2プレス装置から排出したリグノセルロース材料を第2アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸し、第2反応時間の間、第2含浸状態を維持する;
工程をさらに含む、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項3】
リファイナーにおいてアルカリ過酸化物リファイナー溶液をリグノセルロース材料に加える工程をさらに含む、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項4】
前記含浸処理したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給する工程が、
大気圧超のケーシングを少なくとも約240kPaの圧力に維持することを含む、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項5】
前記混合工程の直後において、前記反応混合物をセパレーター中に導入し、分離されたパルプが、その後前記保持槽中に排出される、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項6】
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加える工程が、
ブローバルブの直後に中間ライン溶液を加えることを含む、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項7】
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加える工程が、
セパレーターの直前で中間ライン溶液を加えることを含む、請求項5に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項8】
大気圧超のケーシングから中間ラインへ第1次パルプ流を搬送する工程において、
第1次パルプが、約90℃〜約155℃の温度であり、約20%〜約60%のコンシステンシーを有することをさらに含む、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項9】
反応混合物を保持槽中で約60℃〜約95℃の温度および約20%〜約40%のコンシステンシーに保持する、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項10】
反応混合物を保持槽中で約85℃〜約95℃の温度および約30%のコンシステンシーに保持する、請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項11】
含浸溶液がアルカリ、過酸化物および安定化剤を含み;
中間ライン溶液がアルカリ、過酸化物および安定化剤を含み;かつ、
前記中間ライン溶液の温度が約80℃未満である、
請求項1に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項12】
第1含浸溶液が0.3%DTPAを含み;
第2含浸溶液が0.2%MgSO、4.4%珪酸塩、2.8%TAおよび2.8%Hを含み;
中間ライン溶液が0.16%DTPA、0.16%MgSO、2.3%珪酸塩、残量が0.5%である1.8%TAおよび残量が1.1%である2.4%Hを含む、
請求項2に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項13】
第1含浸溶液が0.5%DTPAを含み;
第2含浸溶液が0.2%DTPA、0.1%MgSO、2.0%珪酸塩、1.6%TAおよび2.6%Hを含み;
中間ライン溶液が0.13%DTPA、0.13%MgSO、2.5%珪酸塩、残量が0.1%である1.2%TAおよび残量が2.1%である2.1%Hを含む、
請求項2に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項14】
第1含浸溶液が0.3%DTPA、0.05%MgSO、0.7%珪酸塩、0.2%TAおよび0.5%Hを含み;
第2含浸溶液が0.1%DTPA、0.08%MgSO、1.8%珪酸塩、1.4%TAおよび1.9%Hを含み;
中間ライン溶液が0.22%DTPA、0.11%MgSO、1.1%珪酸塩、残量が0.2%である0.9%TAおよび残量が1.7%である1.2%Hを含む、請求項2に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項15】
第1含浸溶液が0.4%TA、0.5%H、0.2%DTPA、0.04%MgSOおよび0.5%珪酸塩を含み;
第2含浸溶液が0.14%DTPA、0.05%MgSO、0.5%珪酸塩、0.4%TAおよび0.6%Hを含み;
中間ライン溶液が0.18%DTPA、0.06%MgSO、1.8%珪酸塩、残量が0.1%である1.2%TAおよび残量が1.1%である1.8%Hを含む、請求項2に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項16】
第1含浸溶液が0.4%TA、0.6%H、0.18%DTPA、0.03%MgSOおよび0.3%珪酸塩を含み;
第2含浸溶液が0.15%DTPA、0.05%MgSO、0.4%珪酸塩、0.4%TAおよび0.7%Hを含み;
中間ライン溶液が1.7%TAおよび残量が1.1%である2.8%Hを含む、
請求項2に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項17】
化学メカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
リグノセルロース材料を第1プレス装置に供給し;
リグノセルロース材料をプレスし;
第1プレス装置からリグノセルロース材料を排出し;
第1プレス装置から排出したリグノセルロース材料を第1化学漂白予備処理溶液に含浸し、第1反応時間の間、含浸状態を維持し;
第1予備処理溶液を含浸したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給し;
前記リグノセルロース材料を、少なくとも約80℃の温度を有する第1次パルプを形成するためにリファイニングし;
第1次パルプの温度が少なくとも約80℃である間に、ケーシングから中間ラインへ第1次パルプを排出し;
第1次パルプの温度が少なくとも約80℃である間に、前記第1次パルプを含む中間ラインにおいてアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加え;
前記中間ライン溶液と前記第1次パルプを混合し;
前記中間ライン溶液と第1次パルプとの混合物の温度が少なくとも約80℃である間に、前記中間ライン溶液と第1次パルプとの混合物を保持塔中に排出し;
前記混合物を保持塔中で保持し;
前記第1次パルプをさらなる第2次パルプに製造する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項18】
アルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
予備処理し、少なくとも第1アルカリ過酸化物予備処理溶液を含浸したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシングを有する第1リファイナー中でリファイニングし;
少なくとも約80℃の温度であるリグノセルロース材料を、少なくとも1つの溶液入口部を有する中間ライン中に排出し;
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を少なくとも1つの溶液入口部経由で注入し;
前記中間ライン溶液と前記リグノセルロース材料を中間ラインで混合し;
少なくとも約80℃の温度で、前記リグノセルロース材料を中間ラインから排出し;
前記排出したリグノセルロース材料を反応時間中維持する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項19】
リファイニング工程が、第1リファイナーにアルカリ過酸化物のリファイナー溶液を加えることをさらに含む、請求項18に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項20】
少なくとも1つの溶液入口部経由でアルカリ過酸化物中間ライン溶液をリグノセルロース材料を含む中間ラインに注入する工程が、
ブローバルブの直後に設けられた少なくとも一つの溶液入口部経由でアルカリ過酸化物中間ライン溶液を注入することを含む、請求項18に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項21】
アルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
リグノセルロース材料を第1プレス装置に供給し;
リグノセルロース材料をプレスし;
第1プレス装置からリグノセルロース材料を排出し;
第1プレス装置から排出した前記リグノセルロース材料を第1アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸し、第1反応時間の間、含浸状態を維持し;
前記含浸処理したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給し;
前記含浸処理したリグノセルロース材料を、第1次パルプを形成するためにリファイニングし;
大気圧超のケーシングから中間ラインへ第1次パルプ流を排出し;
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加え;
前記中間ライン溶液と前記第1次パルプ流を混合して反応混合物を形成し;
前記反応混合物を保持槽中に排出し;
前記保持槽中で前記反応混合物を保持して漂白された材料を製造する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項22】
第1反応時間の間、第1予備処理溶液に含浸したリグノセルロース材料を第2プレス装置に供給し;
前記リグノセルロース材料をプレスし、第2プレス装置から排出し;
第2プレス装置から排出したリグノセルロース材料を第2アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸し、第2反応時間の間、第2含浸状態を維持する;
工程をさらに含む、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項23】
リファイナーにおいてアルカリ過酸化物リファイナー溶液をリグノセルロース材料に加える工程をさらに含む、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項24】
大気圧超のケーシングから中間ラインへ第1次パルプ流を排出する工程において、
中間ラインがブローバルブを有しており、アルカリ過酸化物中間ライン溶液を該ブローバルブの直後で加えることを含む、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項25】
大気圧超のケーシングから第1次パルプ流を排出する工程において、中間ラインがブローバルブとそれに続くセパレーターを有し、かつ、
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加える工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液をセパレーターの直前で加えることを含む、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項26】
大気圧超のケーシングから第1次パルプ流を排出する工程において、中間ラインが、ブローバルブとそれに続くセパレーターを有し、かつ、
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加える工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液をセパレーターで加えることを含む、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項27】
大気圧超のケーシングから第1次パルプ流を排出する工程において、中間ラインがブローバルブとそれに続くセパレーターを有し、かつ、
中間ライン中の第1次パルプ流にアルカリ過酸化物中間ライン溶液を加える工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液をセパレーターの直後で加えることを含む、請求項24に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項28】
前記含浸処理したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給する工程において、
大気圧超のケーシングを少なくとも約240kPaの圧力に維持する、請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項29】
含浸溶液がアルカリ、過酸化物および安定化剤を含み、
中間ライン溶液がアルカリ、過酸化物および安定化剤を含み、かつ、
前記中間ライン溶液の温度が第1次パルプ流の温度よりも低い、
請求項21に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項30】
第1含浸溶液が0.3%DTPAを含み;
第2含浸溶液が0.2%MgSO、4.4%珪酸塩、2.8%TAおよび2.8%Hを含み;
中間ライン溶液が0.16%DTPA、0.16%MgSO、2.3%珪酸塩、残量が0.5%である1.8%TAおよび残量が1.1%である2.4%Hを含む、
請求項22に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項31】
第1含浸溶液が0.5%DTPAを含み;
第2含浸溶液が0.2%DTPA、0.1%MgSO、2.0%珪酸塩、1.6%TAおよび2.6%Hを含み;
中間ライン溶液が0.13%DTPA、0.13%MgSO、2.5%珪酸塩、残量が0.1%である1.2%TAおよび残量が2.1%である2.1%Hを含む、
請求項22に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項32】
第1含浸溶液が0.3%DTPA、0.05%MgSO、0.7%珪酸塩、0.2%TAおよび0.5%Hを含み;
第2含浸溶液が0.1%DTPA、0.08%MgSO、1.8%珪酸塩、1.4%TAおよび1.9%Hを含み;
中間ライン溶液が0.22%DTPA、0.11%MgSO、1.1%珪酸塩、残量が0.2%である0.9%TAおよび残量が1.7%である1.2%Hを含む、請求項22に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項33】
第1含浸溶液が0.4%TA、0.5%H、0.2%DTPA、0.04%MgSOおよび0.5%珪酸塩を含み;
第2含浸溶液が0.14%DTPA、0.05%MgSO、0.5%珪酸塩、0.4%TAおよび0.6%Hを含み;
中間ライン溶液が0.18%DTPA、0.06%MgSO、1.8%珪酸塩、残量が0.1%である1.2%TAおよび残量が1.1%である1.8%Hを含む、請求項22に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項34】
第1含浸溶液が0.4%TA、0.6%H、0.18%DTPA、0.03%MgSOおよび0.3%珪酸塩を含み;
第2含浸溶液が0.15%DTPA、0.05%MgSO、0.4%珪酸塩、0.4%TAおよび0.7%Hを含み;
中間ライン溶液が1.7%TAおよび残量が1.1%である2.8%Hを含む、
請求項22に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項35】
化学メカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
リグノセルロース材料をプレス装置に供給し;
リグノセルロース材料をプレスし;
プレス装置からリグノセルロース材料を排出し;
プレス装置から排出したリグノセルロース材料を化学漂白予備処理溶液に含浸し;
予備処理溶液に含浸したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシング内に入口と回転ディスクを有するリファイナーに供給し;
前記リグノセルロース材料を、第1次パルプを形成するためにリファイニングし;
ケーシングから中間ラインへ第1次パルプを排出し;
前記中間ラインにおいて前記第1次パルプにアルカリ過酸化物溶液を加え;
前記中間ライン溶液と前記第1次パルプを混合し;
前記中間ライン溶液と第1次パルプとの混合物を保持塔へ搬送し;
前記保持塔からの第1次パルプを第2次パルプに加工する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項36】
アルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
予備処理し、少なくとも第1アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸したリグノセルロース材料を、大気圧超のケーシングを有する第1リファイナー中でリファイニングし;
少なくとも1つの溶液入口部を有する中間ライン中に前記リグノセルロース材料を排出し;
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を前記少なくとも1つの溶液入口部経由で注入し;
前記中間ライン溶液と前記リグノセルロース材料を混合し;
前記リグノセルロース材料を中間ラインから排出し;
前記排出したリグノセルロース材料を反応時間中保持する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項37】
リファイニング工程が、第1リファイナーにアルカリ過酸化物のリファイナー溶液を加えることをさらに含む、請求項36に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項38】
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を少なくとも1つの溶液入口部経由でリグノセルロース材料を含む中間ラインへ注入する工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を、ブローバルブの直後に設けられた、少なくとも一つの溶液入口部経由で注入することを含む、請求項36に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項39】
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を少なくとも1つの溶液入口部経由でリグノセルロース材料を含む中間ラインへ注入する工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を、セパレーターの直前に設けられた、少なくとも一つの溶液入口部経由で注入することを含む、請求項36に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項40】
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を少なくとも1つの溶液入口部経由でリグノセルロース材料を含む中間ラインへ注入する工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を、セパレーターに設けられた、少なくとも一つの溶液入口部から注入することを含む、請求項36に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項41】
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を少なくとも一つの溶液入口部経由でリグノセルロース材料を含む中間ラインへ注入する工程が、
アルカリ過酸化物中間ライン溶液を、セパレーターの排出部に設けられた、少なくとも一つの溶液入口部から注入することを含む、請求項36に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。
【請求項42】
アルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法であって、次の諸工程:
予め、予備処理し、少なくとも第1アルカリ過酸化物予備処理溶液に含浸し、リファイニングした、リグノセルロース基礎材料を、ケーシングを有するリファイナーでさらにリファイニングし;
前記リグノセルロース基礎材料を少なくとも一つの溶液入口部を有する中間ラインに排出し;
少なくとも一つの溶液入口部経由でアルカリ過酸化物中間ライン溶液を注入し;
前記中間ライン溶液と前記リグノセルロース基礎材料とを混合し;
前記中間ラインから前記リグノセルロース基礎材料を排出し;
排出したリグノセルロース基礎材料を反応時間の間保持する;
諸工程を含むことを特徴とするメカニカルパルプ化方法。
【請求項43】
リファイナーのケーシングが大気圧超である、請求項42に記載のアルカリ過酸化物を用いるメカニカルパルプ化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−521404(P2007−521404A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510190(P2005−510190)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/031341
【国際公開番号】WO2005/042830
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504011047)アンドリッツ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】