説明

リファキシミンの新規多形、その製造方法、及び医薬製剤中でのその使用

本発明の対象は、経口用および局所用のリファキシミンを含む医薬製剤の製造において有用であると共に、粗リファキシミンをエチルアルコールに加熱溶解すること、水を定められた温度で定められた時間加えることにより生成物の結晶化を引き起こすこと、および続いて、最終生成物中の設定含水量に至るまで制御条件下に乾燥することにより実施される結晶化プロセスにより得られる、リファキシミンδおよびリファキシミンεと呼ばれる抗生物質リファキシミン(INN)の結晶多形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景技術)
リファキシミン(INN;メルクインデックス,XIII版,8304を参照)は、リファマイシンクラスに属する抗生物質であって、まさに、これは伊国特許IT1154655号に説明され請求項に記載されているピリド−イミダゾ・リファマイシンである。一方、欧州特許EP0161534号には、リファマイシンO(メルクインデックス,XIII版,8301)から出発してそれを製造するための方法が説明され請求項に記載されている。
【0002】
これらの両特許が、一般的な方法によるリファキシミンの精製を記載しており、適当な溶媒または溶媒系中で結晶化を行うことができると言っている。一部の実施例において、反応から生じる生成物を、エチルアルコール/水の7:3混合物から結晶化することができ、大気圧および減圧下のいずれにおいても乾燥することができることを簡略化して示しているが、結晶化および乾燥の実験条件も、得られた生成物の特徴を示す結晶学的特性も全く記載されていない。
【0003】
異なる多形の存在は全く気付かれていなかったことから、生成物そのものの結晶学的特徴は別として、化学的観点から適当な純度を有する均質生成物を得ることを目的として、両特許に記載された実験条件が検討された。
【0004】
予想外にも、複数の多形が存在しており、その形成は、溶媒に加えて、結晶化および乾燥が行われる時間および温度の条件に依存することが今回分かった。
【0005】
これらの規則正しい多形は、後に、本出願で報告されているそれぞれの特定のディフラクトグラムに基づき、慣習的にリファキシミンδ(図1)およびリファキシミンε(図2)と同定される。
【0006】
リファキシミンの多形は、粉末X線回折の技術により特徴付けられる。
【0007】
これらの多形の同定および特徴と同時に、それらを得るための実験条件の定義は、リファキシミンのようなヒトおよび獣の両方のための医薬製剤として販売されている、薬理学的活性を付与された化合物にとって非常に重要である。実際、医薬製剤中に含まれる活性成分として用いることができる化合物の多形が、薬物の薬理毒物学的特性に影響を与え得ることが知られている。経口または局所形で薬剤として投与される活性成分の異なる多形により、生物学的利用可能性、可溶性、安定性、色、圧縮性、流動性および加工性のようなその多くの特性を改良することができ、その結果、毒物学的安全性、臨床的有効性および生産効率のプロフィールが改良される。
【0008】
前述したことは、薬剤の市場への参入に対する承認を管理する当局が、活性成分の製造法を、製造バッチの多形に関して均一かつ信頼性ある結果が提供されるように、標準化し制御することを要求するという事実により厳然と確認される(CPMP/QWP/96,2003−新規活性物質の化学に関するガイダンスノート(Note for Guidance on Chemistry of new Active Substance);CPMP/ICH/367/96−ガイダンス仕様ノート:新規薬剤物質および新規薬剤製品に対する試験手順および許可基準:化学物質(guidance specifications: test procedures and acceptance crieria for new drug substances and new drug products: chemical substances);施行日:2000年5月)。
【0009】
Henwood S.Q.,de Villiers M.M.,Liebenberg W. and Loetter A.P.,薬剤開発および工業薬学(Drug Development and Industrial Pharmacy),第26巻4号、403〜408頁(2000年)において、異なる製造者が製造したリファンピシン(INN)の異なる製造バッチは、異なる多形特性を示すことから互いに異なっており、その結果、それぞれの薬理学的特性の結果的変化と共に、異なる溶解プロフィールを示すことが確認されたことにより、前述の標準化の必要性は、リファマイシン抗生物質の分野において、さらに強化された。
【0010】
先行特許IT1154655号およびEP0161534号に一般的に開示されている結晶化および乾燥工程を適用すると、ある実験条件下においてはリファキシミンの結晶形が乏しく、また他のある実験条件下においてはリファキシミンの他の結晶多形が得られることが分かった。さらに、例えば保存条件および周囲の相対湿度のような前記特許に全く開示されていない一部のパラメーターが、多形を決めるための驚くべき効果を有することが分かった。
【0011】
結晶化、乾燥および保存のために用いられる条件にかかわらず、記載された条件の範囲内でどのような方法が選択されても、単一の均質な生成物が常に得られると考えられており、本特許出願の対象であるリファキシミンの多形は全く知られておらず、仮説として取り上げられることすらなかった。
【0012】
今回、δおよびε形の形成は、結晶化溶媒中の水の存在、生成物が結晶化される温度、および乾燥段階の終りに生成物中に存在する水の量に依存することが発見された。
【0013】
そして、リファキシミンのδ形およびε形が合成され、これらが本発明の対象である。
【0014】
特に、δ形は、乾燥固体物中の残留含水量が2.5%〜6%(w/w)、より好ましくは3%〜4.5%であることを特徴とし、ε形は、制御された温度下でのδ形からの多形転化の結果である。
【0015】
これらの結果は、極めて重要である。なぜなら、これらは、生成物の多形の決定に重要であると考えられていなかった幾つかの加工ステップの工業的な製造条件、例えば、結晶化生成物に対して含水量の厳格な範囲に維持すること、最終生成物の乾燥工程において、ε形を得るための乾燥を続ける前に形−すなわちδ形−を得なければならないこと、最終生成物の保存条件、または生成物を保存する容器の特徴、を決めるからである。
【0016】
リファキシミンは、嫌気性菌株を含む感染性下痢を引き起こす局在化胃腸細菌に対して、胃腸管内で広い抗菌活性を奏する。リファキシミンは、その化学的および物理的な特徴により全身的吸収が非常に少ないことを特徴とすることが報告されている(Descombe J.J. et al.,健常ボランティアにおける経口投与後のリファキシミンの薬物動態的研究(Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers),Int J Clin.Pharmacol.Res.,第14巻2号,51〜56頁(1994年))。
【0017】
我々は、リファキシミンの2つの同定された多形に基づき、リファキシミンの異なる多形、すなわち、リファキシミンδおよびリファキシミンεを投与することにより、全身吸着の水準を調節することができることを発見し、これは本発明の一部である。血中0.001〜0.3μg/mlの範囲で、おおよそ100倍の吸着の相違を有することができる。
【0018】
生物学的利用可能性における証明された相違は、リファキシミンδおよびεの2つの多形の薬理学的および毒物学的挙動を区別することができるので、重要である。
【0019】
実際、リファキシミンεは経口経路を通して極僅かにしか吸収されないが、リファキシミンδは穏やかな吸収を示す。
【0020】
リファキシミンεは実用的には吸収されず、胃腸管の場合を含む局所作用によってしか作用せず、毒性が非常に低いという利点を有する。
【0021】
他方、穏やかに吸収されるリファキシミンδは、全身の微生物に対して好適に用いることができ、それら自体を隠して局所抗生物質の作用を部分的に免れることができる。
【0022】
特に適切なリファキシミンの治療的使用に伴ってあり得る悪影響は、生物の抗生物質に対する菌耐性を誘発することである。一般的に言えば、抗生物質を用いる治療の実施において、抵抗性菌株の選択により、同じまたは他の抗生物質に対する菌耐性を誘発することは、常に起こりえることである。
【0023】
リファキシミンの場合、この影響は特に関係がある。なぜなら、リファキシミンはリファマイシンファミリーに属しており、その一員であるリファンピシンは結核治療において広く用いられているからである。現在行われている結核の短期治療は、リファンプシン、イソニアジド、エタンブトールおよびピラジナミドの4つの活性薬剤成分を含む組み合わせ治療であり、それらのうちリファンピシンは、極めて重要な役割を果たす。従って、リファンピシンへの抵抗を選択することにより治療の効果を台無しにする薬剤は危険である(Kremer L et al.,「結核の再発生:対策と治療(Re−emergence of tuberculosis: strategies and treatment)」,Expert Opin. Investig. Drugs,第11巻2号,153〜157頁(2002年))。
【0024】
リファキシミンとリファンピシンとの構造の類似性を見ると、原理的には、リファキシミンを用いることで、M.tuberculosisの抵抗性菌株を選択し、リファンピシンへの交差抵抗を誘発することは、起こりえることである。この有害事象を避けるために、全身的に吸収されたリファキシミンの量を制御することが重要である。
【0025】
この観点で、リファキシミンのδおよびε形の全身吸収において見られる相違が重要である。なぜなら、0.1〜1μg/mlの範囲におけるようなリファキシミンの抑制濃度以下においても、抵抗性突然変異体の選択が起こりえることが示されたからである(Marchese A. et al.,扱いにくいクロストリジウム属に対するリファキシミン、メトロニダゾールおよびバンコマイシンの体外活性、アンモニア生成種を含む典型的な嫌気性および好気性菌に対して自然に発生する抵抗性突然変異体の選択率(In vitro activity of rifaximin, metronidazole and vancomycin against clostridium difficile and the rate of selection of spontaneously resistant mutants against representative anaerobic and aerobic bacteria, including ammonia−producing species),Chemotherapy,第46巻4号,253〜266頁(2000年))。
【0026】
前述事項によれば、前述のリファキシミン多形の存在を教示すると共に、異なる薬理学的特性を有する純粋な単一形を製造するための種々の工業的経路を生み出した本発明の重要性が明らかに増強される。
【0027】
前述のδおよびε形を、リファキシミンを含む医薬製剤の製造において純粋かつ均質な製品として有効に用いることができる。
【0028】
前述のように、EP0161534号において説明され請求項に記載されているリファマイシンOからリファキシミンを製造する方法は、得られた生成物の精製および同定の観点が欠けている。すなわち、工業用途にはほとんど適していない16〜72時間といった非常に長い反応時間については合成観点からの制限もあることを示しており、さらに、反応混合物中に形成される場合がある酸化リファキシミンのその場還元を提供していない。
【0029】
従って、本発明のさらなる対象は、リファキシミンのδおよびε形を工業的に製造するための改良された方法であって、ここでは、生成物として、またそのような活性成分を含む医薬製剤の製造において特定された均一な活性成分としての使用として、請求項に記載されている。
【0030】
(発明の説明)
既述のように、本発明の対象は、リファキシミン(INN)として知られている抗生物質のδ形とε形、その製造方法、および経口または局所用の医薬製剤の製造におけるそれらの使用である。
【0031】
本発明の対象となる方法は、水とエチルアルコールとの1:1〜2:1の体積比の混合溶媒中、1モル当量のリファマイシンOを、過剰量の、好ましくは2.0〜3.5モル当量の2−アミノ−4−メチルピリジンと、40℃〜60℃の温度で2〜8時間反応させることを含む。
【0032】
反応の終了時、その反応物(reaction mass)を室温まで冷却し、強力な攪拌下に、水、エチルアルコールおよび濃塩酸の混合物中でアスコルビン酸溶液を加えて、反応中に形成される少量の酸化リファキシミンを還元し、最後に、濃塩酸をさらに加えることによりpHを約2.0にして、反応に用いた過剰の2−アミノ−4−メチルピリジンを効果的に除去する。懸濁液を濾過し、得られた固体を反応に用いたものと同じ水/エチルアルコール混合溶媒で洗う。そのような半終了生成物を「粗リファキシミン(raw rifaximin)」と呼ぶ。
【0033】
粗リファキシミンは、次の精製ステップに直接用いることができる。あるいは、半終了生成物を長時間保存することが予想される場合、粗リファキシミンを、減圧下に65℃より低い温度で6〜24時間乾燥することができ、そのような半終了生成物を「乾燥粗リファキシミン」と呼ぶ。
【0034】
このように得られた粗リファキシミンおよび/または乾燥粗リファキシミンを、45℃〜65℃の温度でエチルアルコールに溶解し、水、好ましくはその溶解に用いたエチルアルコールの重量に対して15%〜70%の重量の水を加えることにより結晶化させ、および、得られた懸濁液を攪拌下に50℃〜0℃の温度で4〜36時間保持することにより精製する。
【0035】
懸濁液を濾過し、得られた固体を水で洗い、減圧または常圧下に乾燥剤を用いてまたは用いることなく室温〜105℃の温度で2〜72時間乾燥させる。
【0036】
δおよびε形の達成は、結晶化のために選択された条件に依存する。特に、結晶化が実施される混合溶媒の組成、結晶化の後に反応混合物を維持する温度、および温度を維持する時間が重要であることを見出した。
【0037】
より正確には、温度をまず28℃〜32℃の値にして結晶化を開始させ、次に、懸濁液を40℃〜50℃の温度にしてこの温度で6〜24時間維持し、次に、懸濁液を急速に0℃で15分〜1時間冷却し、濾過し、固形物を水で洗い、次に乾燥すると、δおよびεリファキシミンが得られる。
【0038】
乾燥工程は、リファキシミンの多形であるδおよびε形を得る際に重要な役割を果たし、例えばKarl Fisher法のような水投与量に適した適当な方法により、乾燥下の生成物中に存在する残留水含量を確認する必要がある。
【0039】
乾燥中にリファキシミンδを得るためには、実際には、最終残留水含量が2.5%(w/w)〜6%(w/w)、より好ましくは3%〜4.5%であることに依存しており、この水割合の臨界的限界が達成される圧力および温度の実験的条件には依存しない。
【0040】
吸着の乏しいε形を得るためには、δ形から出発する必要があり、また乾燥剤の存在下または不存在下に室温または高温で減圧または大気圧下に乾燥を続ける必要があり、乾燥は、ε形への転化が達成されるのに必要な時間まで延長されることが条件とされる。
【0041】
リファキシミンのδ形とε形の両方が吸湿性であり、これらは、周囲の圧力および湿度が適当な条件である間、水を可逆的に吸収し、他の形に転化されやすい。
【0042】
ある1つの形から他の形への転化は、本発明の範囲において非常に重要である。なぜなら、医薬製剤の製造のために望まれる形を得るための別の製造方法となり得るからである。従って、有効な工業的な方法においてリファキシミンδからリファキシミンεに転化させるための工程は、本発明の重要な一部である。
【0043】
リファキシミンδをリファキシミンεに転化するための方法は、乾燥剤の存在下または不存在下に室温または高温で減圧または大気圧下にリファキシミンδを乾燥し、これを、転化が得られるまでの時間、通常、6〜36時間維持することを含む。
【0044】
前述の事項から、生成物を保存している間、湿度の制御された環境中や、外部環境との激しい水交換を起こさない密閉容器中に生成物を保存することにより、周囲の条件が生成物の含水量を変化させないように注意しなければならない。
【0045】
リファキシミンδと呼ばれる多形は、2.5%〜6%、好ましくは3.0%〜4.5%の含水量、および、5.7°±0.2、6.7°±0.2、7.1°±0.2、8.0°±0.2、8.7°±0.2、10.4°±0.2、10.8°±0.2、11.3°±0.2、12.1°±0.2、17.0°±0.2、17.3°±0.2、17.5°±0.2、18.5°±0.2、18.8°±0.2、19.1°±0.2、21.0°±0.2、21.5°±0.2の回折角2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラム(図1に報告されている)を特徴とする。リファキシミンεと呼ばれる多形は、7.0°±0.2、7.3°±0.2、8.2°±0.2、8.7°±0.2、10.3°±0.2、11.1°±0.2、11.7°±0.2、12.4°±0.2、14.5°±0.2、16.3°±0.2、17.2°±0.2、18.0°±0.2、19.4°±0.2の回折角2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラム(図2に報告されている)を特徴とする。
【0046】
ディフラクトグラムは、Bragg−Brentanoの配置を有するPhilips X’Pertの装置により、以下の作業条件下に行った。
【0047】
X線管:銅
用いた放射線:K(α1)、K(α2)
発電機の電圧および電流:KV40,mA40
モノクロメーター:グラファイト
ステップサイズ:0.02
ステップ当たりの時間:1.25秒
出発および最終角2θ値:3.0°÷30.0°
分析サンプル中に存在する水含量の評価は、常に、Karl Fisher法で行った。
【0048】
リファキシミンδおよびリファキシミンεは、生物学的利用可能性に関して著しい相違を示すので、互いに異なる。
【0049】
2つの多形の生物学的利用可能性についての研究は、ビーグルメスイヌで行い、一方の形のカプセルを100mg/kgの投与量で経口投与し、投与前および投与から1、2、4、6、8および24時間後に各動物の頸静脈から血液サンプルを採取し、へパリンを含む試験管にサンプルを移し、血漿を遠心分離により分離した。
【0050】
血漿を、有効なLC−MS/MS法でリファキシミンごとに検定し、観察された最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達する時間(tmax)、および濃度−時間曲線(AUC)における面積を計算した。
【0051】
以下の表1に報告されている実験データは、明らかに、リファキシミンεがほとんど吸収されず、リファキシミンδが0.1〜1.0μg/mlの範囲の値(Cmax=0.308μg/ml)で吸収されることを示している。
【0052】
【表1】

【0053】
前述の実験結果は、さらに、2つのリファキシミン多形に存在する相違を指摘している。
【0054】
δおよびε形は、経口および局所の両方のための、リファキシミンを含み抗生活性を有する医薬製剤の製造において好適に用いることができる。経口用の医薬製剤は、マンニトール、ラクトースおよびソルビトールのような希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ガムおよびポリビニルピロリドンのような結合剤;タルク、ステアリン酸塩、水素化植物油、ポリエチレングリコールおよびコロイド状二酸化ケイ素のような潤滑剤;デンプン、セルロース、アルギン酸塩、ガムおよび網状ポリマーのような崩壊剤;着色剤、風味剤および甘味剤のような通常の賦形剤と共に、リファキシミンδおよびεを含む。
【0055】
経口投与される全ての固形製剤、例えば、被覆および非被覆錠剤、軟質および硬質ゼラチン製カプセル、糖衣丸剤、トローチ、オブラート、ペレット、および密封包装中の粉末を本発明で用いることができる。
【0056】
局所用の医薬製剤は、白色ワセリン、白色ろう、ラノリンおよびそれらの誘導体、ステアリルアルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪ポリオキシエチレンアルコールのエーテル、脂肪ポリオキシエチレン酸のエステル、ソルビタンモノステアレート、グリセリルモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、コロイド状アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウムのような通常の賦形剤と共に、リファキシミンδおよびεを含む。
【0057】
全ての局所製剤、例えば、軟膏、ポマード、クリーム、ゲルおよびローションを本発明の範囲内で用いることができる。
【0058】
本発明を、幾つかの実施例により以下に説明するが、発明を制限すると解すべきではない。記載された結果から、実際、前記結晶化および乾燥の条件を組み合わせることによってδおよびε形を得ることができることが明らかである。
【0059】
<実施例1>
(粗リファキシミンおよび乾燥粗リファキシミンの調製)
メカニカルスターラー、温度計および還流冷却器を備える三つ口フラスコに、室温で、脱塩水120ml、エチルアルコール96ml、リファマイシンO63.5gおよび2−アミノ−4−メチルピリジン27.2gを順次仕込む。仕込んだ後、その物(mass)を47±3℃で加熱し、この温度で5時間攪拌を続け、次に、20±3℃まで冷却し、脱塩水9ml、エチルアルコール12.6ml、アスコルビン酸1.68gおよび濃塩酸9.28gからなる別途調製された混合物を、30分間で加える。添加終了時、その物を20±3℃の内部温度で30分間攪拌を続け、次に、同じ温度で、濃塩酸7.72gをpHが2.0になるまで滴下する。
【0060】
添加終了時、その物を、20℃の内部温度で30分間攪拌を続け、次に、沈澱を濾過し、脱塩水32mlとエチルアルコール25mlからなる混合物で洗う。このように得られた「粗リファキシミン」(89.2g)を、減圧下に室温で12時間乾燥して、水含量が5.6%である「乾燥粗リファキシミン」を得る。生成物をさらに乾燥して、含水量が3.3%の乾燥粗リファキシミン62.2gが得られる。このディフラクトグラムは、5.7°±0.2、6.7°±0.2、7.1°±0.2、8.0°±0.2、8.7°±0.2、10.4°±0.2、10.8°±0.2、11.3°±0.2、12.1°±0.2、17.0°±0.2、17.3°±0.2、17.5°±0.2、18.5°±0.2、18.8°±0.2、19.1°±0.2、21.0°±0.2、21.5°±0.2の角度2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラムを特徴とする多形δに相当する。生成物は吸湿性である。
【0061】
<実施例2>
(リファキシミンεの調製)
実施例1を繰り返してδ形を得た後、固体粉末をさらに減圧下に温度65℃で24時間乾燥する。得られた生成物は、7.0°±0.2、7.3°±0.2、8.2°±0.2、8.7°±0.2、10.3°±0.2、11.1°±0.2、11.7°±0.2、12.4°±0.2、14.5°±0.2、16.3°±0.2、17.2°±0.2、18.0°±0.2、19.4°±0.2の角度2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラムを特徴とするリファキシミンεである。
【0062】
<実施例3>
(経口投与によるイヌでの生物学的利用可能性)
20週齢で5.0〜7.5kgの8匹の純血種ビーグルメスイヌを、4匹ずつの2つのグループに分けた。
【0063】
以下の手順に従って、これらのグループのうち第1のグループをリファキシミンδで処理し、第2のグループをリファキシミンεで処理した。
【0064】
各イヌに、ゼラチンカプセルで一方のリファキシミン多形の100mg/kgを経口投与し、分散前および投与から1、2、4、6、8および24時間後に、各動物の頸静脈から各2mlの血液サンプルを採血した。
【0065】
各サンプルを、凝集防止剤としてのヘパリンを含む試験管に移し、遠心分離した。血漿を各500μlの2つの画分に分け、−20℃で凍結した。
【0066】
この血漿に含まれるリファキシミンを、有効なLC−MS/MS法により検定し、標準的非コンパートメント解析に従って、以下のパラメーターを計算した。
【0067】
Cmax=血漿中のリファキシミンの観察された最大血漿濃度
Tmax=Cmaxが達成される時間
AUC=線形台形公式により計算された濃度−時間曲線における面積
表1に報告された結果は、実際に吸収されないリファキシミンεに対し、いかにリファキシミンδが吸収されるか(40倍以上)を明確に示している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】リファキシミンδの粉末X線ディフラクトグラム
【図2】リファキシミンεの粉末X線ディフラクトグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5%(w/w)〜6%(w/w)、好ましくは3.0%〜4.5%の含水量、および、5.7°±0.2、6.7°±0.2、7.1°±0.2、8.0°±0.2、8.7°±0.2、10.4°±0.2、10.8°±0.2、11.3°±0.2、12.1°±0.2、17.0°±0.2、17.3°±0.2、17.5°±0.2、18.5°±0.2、18.8°±0.2、19.1°±0.2、21.0°±0.2、21.5°±0.2の回折角2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラムを特徴とする、リファキシミンδと呼ばれる抗生物質リファキシミンの多形。
【請求項2】
7.0°±0.2、7.3°±0.2、8.2°±0.2、8.7°±0.2、10.3°±0.2、11.1°±0.2、11.7°±0.2、12.4°±0.2、14.5°±0.2、16.3°±0.2、17.2°±0.2、18.0°±0.2、19.4°±0.2の回折角2θの値においてピークを示す粉末X線ディフラクトグラムを特徴とする、リファキシミンεと呼ばれる抗生物質リファキシミンの多形。
【請求項3】
水とエチルアルコールとの1:1〜2:1の体積比の混合溶媒中、1モル当量のリファマイシンOを、過剰量の、好ましくは2.0〜3.5モル当量の2−アミノ−4−メチルピリジンと、40℃〜60℃の温度で2〜8時間反応させること、その反応物を、室温で、水、エチルアルコールおよび濃塩酸の混合物中でアスコルビン酸溶液で処理すること、その反応物を濃塩酸によりpHを2.0にすること、懸濁液を濾過すること、得られた固体を前記反応で用いたものと同じ水/エチルアルコール混合溶媒で洗うこと、および、このように得られた粗リファキシミンを、45℃〜65℃の温度でエチルアルコールに溶解し、水、好ましくはその溶解に用いたエチルアルコールの重量に対して15%〜70%の重量の水を加えることにより沈澱を引き起こし、懸濁液の温度を攪拌下に50℃〜0℃の間の値に4〜36時間低下させ、最後に、懸濁液を濾過し、得られた固体を水で洗い、減圧下または常圧条件下に乾燥剤を用いてまたは用いることなく室温〜105℃の温度で2〜72時間乾燥させることにより精製することを特徴とする、リファキシミンδおよびεの製造方法。
【請求項4】
粗リファキシミンのエタノール溶液に水を加えた後、温度を28℃〜32℃の間の値まで下げて結晶化を開始させ、そのように得られた懸濁液を攪拌下に40℃〜50℃に6〜24時間保ち、次に、0℃に15分〜1時間冷却してから濾過し、得られた固体を含水量が2.5%(w/w)〜6%(w/w)、好ましくは3.0%〜4.5%になるまで乾燥する、リファキシミンδの製造のための請求項3に記載の方法。
【請求項5】
減圧下または大気圧で室温または高温で乾燥剤の存在下または不存在下にリファキシミンδを乾燥するが、乾燥は、ε形への転化が達成されるのに必要な時間まで延長される、リファキシミンεの製造のための請求項3に記載の方法。
【請求項6】
希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、風味剤および甘味剤のような通常の賦形剤と一緒の、抗生活性を有する経口用の医薬製剤の調製における、リファキシミンδの使用。
【請求項7】
希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、風味剤および甘味剤のような通常の賦形剤と一緒の、抗生活性を有する経口用の医薬製剤の調製における、リファキシミンεの使用。
【請求項8】
経口用の製剤が、被覆および非被覆錠剤、硬質および軟質ゼラチンカプセル、糖衣丸剤、トローチ、オブラート、ペレット、および密封包装中の粉末から選択される、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
局所用の抗生活性を有する医薬製剤の調製におけるリファキシミンδの使用。
【請求項10】
局所用の抗生活性を有する医薬製剤の調製におけるリファキシミンεの使用。
【請求項11】
局所用の製剤が、軟膏、ポマード、クリーム、ゲルおよびローションから選択される請求項9または10に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−531623(P2008−531623A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557398(P2007−557398)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001755
【国際公開番号】WO2006/094662
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(304044793)アルファ ワッセルマン ソシエタ ペル アチオニ (8)
【氏名又は名称原語表記】ALFA WASSERMANN S.P.A.
【Fターム(参考)】