説明

リベットの止着構造およびリベット

【課題】 一対の板材間を容易に結合できると共に、リベットの外周と各板材との間の水密又は液密構造を形成でき、リベット自体に回り止め手段を付与させること。
【解決手段】 リベット13の少なくとも中間部以下を筒状にして本体3を構成し、本体3の上端部に僅かにフランジ部4を一体に突設し、そのフランジ部4の外周に歯形状部5を形成する。そして、フランジ部4と本体3の境に環状溝6を形成する。そのリベット13を用いて、第1部材1の下孔7にそれを挿入し、第2部材2内に第1部材1の下端部を圧入して拡開部8を形成し、その拡開部8を第2部材2の塑性変形部14で全体的に被覆する。そして歯形状部5を下孔7の孔縁部に咬着して、フランジ部4を第1部材1に埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己穿孔型リベットの止着構造およびそれに用いるリベットに関し、より詳しくは止着が容易で、一対の板材間を本リベットで結合したとき、両板材の表面側にも裏面側にも気密、水密構造を形成できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
自己穿孔型リベットによる一対の板材の結合は、筒状に形成されたリベットおよびリベッティグ装置を用い、重ね合わせた一対の金属板の一方側(上板側)にリベットを押し当て、金属板の上板面からリベットを圧入し、上板にリベットで穿孔を行いつつ、そのリベットの下端部をラッパの口状に拡開すると共に、下板を塑性変形させて、リベットの拡開部の外周を被覆するように構成したものである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−106316号公報
【特許文献2】特開平11−033664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリベットの止着構造は、下板側の水密性は保たれるものの、上板側ではリベットとの境界部が断面弧状に変形し、水密性が保たれ難い欠点があった。即ち、リベットが貫通する上板の孔縁部とリベット頭部との間に大きな塑性変形による分離が生じ、頭部と上板の穿孔部周辺との密着を行い得ず、上板側とリベットとの気密・水密性を確保することができない欠点があった。
また、結合しようとする上板と下板とは、共に下穴のないものであり、より大きな動力を要すると共に、大きな残留歪みが上板側にも残り、強度および耐腐蝕性が悪くなる欠点があった。また、そのリベットにボルト孔が形成されたりボルト部を突設したものでは、上板側とリベットとの係合はリベットの拡開部と下板側との結合強度のみに依存することになり、充分な締付けトルクを与えることができなかった。この種のリベットでは上板と下板の材質は、軟鋼、硬鋼、高張力鋼、アルミニューム、プラスチック等の同種または異種の組み合わせが可能であるが、締結板厚の合計は、鋼で6mm、アルミニュームで10mm程度であり、高張力鋼などの板材の硬度が高くなると締結できる板厚は小さくなる。また、構造部材としてのリベット締結を行う場合には、上板、下板の板厚が厚くなる傾向にあり、その場合にはリベット締結が不向きであった。
【0005】
そこで本発明は、係る欠点を取り除き、容易にリベッットを止着できると共に、上板とリベットとの水密性を良好に保ち、下板のそれとも水密性を保ち且つ、残留歪みの少ないリベットの止着構造およびそれを用いるリベットを提供することを課題とする。
また、ボルト孔やボルト部を有するリベットにおいて、締結トルクを高くすることができるリベットの止着構造およびそれを用いるリベットを提供することも課題とする。さらに、締結する上板と下板の板厚を厚くすることができ、構造部材の締結としてのリベットの止着構造およびそれを用いるリベットを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、第1部材(1) と第2部材(2) とが重ね合わされて、両者間がリベットで止着されるリベットの止着構造において、
そのリベットは、少なくとも中間部以下を筒状部(3a)とした本体(3) を有し、その筒状部(3a)より上側の外周に僅かにフランジ部(4) が一体に突設され、そのフランジ部(4) の外周に回り止め用の歯形状部(5) が形成され、そのフランジ部(4) と本体(3) の外周との境に環状溝(6) を形成したものが用いられ、
前記第1部材(1) には、前記フランジ部(4) の外周直径に整合する下孔(7) が予め穿設され、その下孔(7) の底が第2部材(2) の平面で閉塞され、
前記本体(3) が前記第1部材(1) の下孔(7) に挿入され、圧入により本体(3) の前記筒状部の少なくとも先端部をラッパの口状に拡開した拡開部(8) が第2部材(2) 内に進入し、前記圧入に伴う第2部材(2) の塑性変形部(14)が前記拡開部(8) の内外周の全体を被覆すると共に、前記フランジ部(4) の歯形状部(5) が前記下孔(7) の孔縁部に咬着して埋設されたことを特徴とするリベットの止着構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記本体(3) の前記フランジ(4) の側に、ボルト孔(9) が螺刻され、またはボルト部(10)が一体に突設されたリベットの止着構造である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の構造に使用されるリベットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリベットの止着構造は、本体3の先端部のラッパ状の拡開部8が第2部材2内に進入し、その拡開部8の内外周の全体が第2部材2によって被覆されるため、第2部材2の外面側の気密・液密性を保持すると共に、フランジ部4の歯形状部5が下孔7の孔縁に咬着して埋設されたものであるから、第1部材1の下孔7の孔縁部を完全に閉塞し、リベット外周と下孔7の孔縁部との気密性及び水密性を確保し得る。しかも、本構造は予め第1部材1に下孔7が穿設されているため、下孔7の孔縁部とフランジ部4の歯形状部5とを容易に咬着して埋設することができ、その埋設部の異常変形を可及的に防止して、第1部材1側の水密性を確保し得ると共に、体裁の良い止着構造となり得る。
【0010】
上記構造において、本体3にボルト孔9を螺刻し、或いはボルト部10を一体に突設することができる。その場合には、リベットに他の部材を締結固定することができる。
【0011】
上記構造に用いられるリベットは、その止着作業が円滑に行われると共に、第1部材1側及び第2部材2側の気密性および水密性を容易に確保し得る。
また、フランジ部4と本体3の境に環状溝6が設けられているから、歯形状部5が下孔7の孔縁部に咬着したとき、下孔7の孔縁部の変形部分を環状溝6側に容易に移動し得る。それにより、歯形状部5の孔縁部への埋設を容易に行うと共に、気密性、水密性を向上させる。
そして、第1部材1にリベット13のフランジ部4に設けた歯形状部5が咬着して埋設されるため、第2部材2とリベット13の拡開部8でのラッパ状の圧入固着と相俟って、リベットのボルト孔またはボルト部に、ボルトまたはナットを締結する時、その締結トルクに抗することが出来、十分な締結トルクを付加することが可能となる。
さらに、第1部材1は下孔が設けられているため、その板厚を任意の厚さとすることができる。そして、第2部材2の厚みを、その第2部材2のみにリベット13が圧入されるための適当なものにすれば足りる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明のリベットの止着構造であり、図2は同構造に用いられるリベットの一部破断正面図、図3は同リベットを用いてリベッター装置により止着構造を形成する説明図である。
この例のリベットは図2,図3に示す如く、その本体3が上端を閉塞した筒状に形成され、その筒状の下端開口の内縁3bが縦断面ハの字状に面取りされている。
本体3の上端外周にはフランジ部4が一体に突設され、そのフランジ部4の外直径が本体3の外直径よりも僅かに大である。そしてフランジ部4の外周にはローレット加工等による回り止め用の歯形状部5が形成されている。この歯形状部5の形状は、縦溝状(平歯車状)、はす歯状、アヤメ状とすることができる。また、ローレットの溝の形状は三角波状、台形波状、矩形波状とすることができる。
そして、フランジ部4と本体3との境には、本体3の外直径より小なる環状溝6が形成されている。
【0014】
次に、このようにしてなるリベット13によって結合される第1部材1,第2部材2は図3に示す如く互いに重ね合わされ、上側に位置する第1部材1に下孔7が予め穿設される。下孔7の内直径は本体3の外直径と同一か僅かに大であると共に、フランジ部4の外周より小である。また、第2部材2には孔は穿設されない。従って、第1部材1の下孔7の底面は第2部材2により閉塞される。
係る状態で、第1部材1,第2部材2は重ね合わせ状態で水平に支持される。そしてリベッター装置からリベット13が下孔7内に供給される。それと共に、リベッター装置の上金型11がフランジ部4の上面を押圧し、下金型12が第2部材2の下面を支持する。そして本体3の筒状部3aの下端部を第2部材2に圧入させる。すると、第2部材2が塑性変形し下金型12の凹部15及びその中央に設けられた山部15aに案内され、図1に示す如く本体3の下端部はラッパの口状に拡開し、そこに拡開部8が形成される。
【0015】
それと共に、第2部材2が塑性変形し、その塑性変形部14が拡開部8の内外周全体を被覆する。それと共に、リベット13のフランジ部4に形成された歯形状部5が第1部材1の下孔7の孔縁部に咬着する。このとき、下孔7の孔縁部の塑性変形部分が環状溝6に移動する。そして図1の如く、第1部材1に歯形状部5が埋設され、気密及び液密構造を形成する。また、第2部材2側においては拡開部8を塑性変形部14によって完全に被蔽するため、第2部材2の外面側に拡開部8が露出することなく、第2部材2の外面側にも気密・液密構造が形成される。
なお、リベット13の少なくとも外表面の硬度を、第1部材1,第2部材2の材料の硬度よりも大きくすることが好ましい。図1に示した止着構造は、フランジ部4の歯形状部5が第1部材1の下孔7の孔縁部に埋設・咬着されるため、歯形状部5がリベット13の回り止め手段および封鎖手段を形成する。
【実施例2】
【0016】
第1部材1と第2部材2をリベット締結する場合に、図1に示すリベットに図6および図7に示すような丸頭等の頭部16を設け、その頭部16の直径をフランジ部4のそれより十分大きくすることができる。図1の例においては、第1部材1の材料強度が第2部材のそれより弱い場合、リベット13による締結力(引張力)は歯形状部5と第2部材との咬着強度により決まるが、図6、図7の例ではフランジ部4の直径より大なる頭部16の存在により、締結力を高めることができる。即ち、リベットの拡開部8と頭部16との間で第1部材と第2部材とを締結することができる。なお、この例ではフランジ部4と頭部16との境にも環状溝6aが形成され、これによりフランジ部4の全外周に歯形状部5を加工することが容易となる。
【実施例3】
【0017】
次に、図4は本発明のリベットの他の例であり、この例が図2のそれと異なる点は、本体3が全長に渡って筒状に形成されていると共に、その中間部より上方にボルト孔9が形成されたものである。この例のリベット13は、中間部以下が図1の如く拡開され、そのボルト孔9部分は変形されない。そして、そこにボルトが螺着締結されるものである。リベットの上端外周のフランジ部4には歯形状部5が形成されているため、ボルト締結時の回り止めがされる。なお、そのボルトと本体3の上面との間には、必要に応じてパッキン等を介して気密又は液密構造を形成することができる。
【実施例4】
【0018】
次に、図5は本発明のリベットのさらに他の例であり、この例は本体3のフランジ部4の上面に一体にボルト部10が突設されたものである。そしてこのボルト部10に他の部材のボルト孔が挿通され、図示ないナットを介してそれが締結されるものである。
なお、リベット13の下部については図1と同様に第2部材2内に進入してラッパの口状に拡開され、第1部材1と第2部材2とを結合するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のリベットの止着構造の縦断面図。
【図2】同止着構造に用いられるリベット13の一部破断正面図。
【図3】同リベット13を用いて止着構造を形成する説明図。
【0020】
【図4】本発明のリベットの他の例を示す縦断面図。
【図5】本発明のリベットのさらに他の例を示す一部破断正面図。
【図6】本発明のリベットのさらに他の例を示す正面図。
【図7】同リベットの一部破断正面図。
【符号の説明】
【0021】
1 第1部材
2 第2部材
3 本体
3a 筒状部
3b 内縁
4 フランジ部
5 歯形状部
6 環状溝
6a 環状溝
【0022】
7 下孔
8 拡開部
9 ボルト孔
10 ボルト部
11 上金型
12 下金型
13 リベット
14 塑性変形部
15 凹部
15a 山部
16 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(1) と第2部材(2) とが重ね合わされて、両者間がリベットで止着されるリベットの止着構造において、
そのリベットは、少なくとも中間部以下を筒状部(3a)とした本体(3) を有し、その筒状部(3a)より上側の外周に僅かにフランジ部(4) が一体に突設され、そのフランジ部(4) の外周に回り止め用の歯形状部(5) が形成され、そのフランジ部(4) と本体(3) の外周との境に環状溝(6) を形成したものが用いられ、
前記第1部材(1) には、前記フランジ部(4) の外周直径に整合する下孔(7) が予め穿設され、その下孔(7) の底が第2部材(2) の平面で閉塞され、
前記本体(3) が前記第1部材(1) の下孔(7) に挿入され、圧入により本体(3) の前記筒状部の少なくとも先端部をラッパの口状に拡開した拡開部(8) が第2部材(2) 内に進入し、前記圧入に伴う第2部材(2) の塑性変形部(14)が前記拡開部(8) の内外周の全体を被覆すると共に、前記フランジ部(4) の歯形状部(5) が前記下孔(7) の孔縁部に咬着して埋設されたことを特徴とするリベットの止着構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記本体(3) の前記フランジ(4) の側に、ボルト孔(9) が螺刻され、またはボルト部(10)が一体に突設されたリベットの止着構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の構造に使用されるリベット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−118047(P2007−118047A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314314(P2005−314314)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(391002052)日本ドライブイット株式会社 (15)
【Fターム(参考)】