説明

リポソーム及び造影剤

【課題】(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(4)かつ、膵臓の造影にも優れ、(5)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する、造影剤用化合物を封入したリポソーム、及び該リポソームを含有する造影剤を提供することである。
【解決手段】糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームであって、造影剤用化合物を封入したことを特徴とするリポソーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームであって、造影剤用化合物を封入したリポソーム及びそれを含有する造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬剤キャリアとして注目されているリポソームの表面に、糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームが研究されている。該リポソームは各種組織の細胞表面上に存在する各種のレクチン(糖鎖認識たんぱく質)に対して特異的な結合活性を有し、各種薬剤、遺伝子の生体内輸送において有用な製剤であることが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、該リポソームに造影剤化合物、特に非イオン性ヨード造影剤化合物を内包した例は知られておらず、その体内動態についても研究された例は知られていない。一方、ヨード原子を含有する造影剤単体は、汎用的には低分子量の有機ヨード剤として提供され、水に溶けるため、尿路撮影、血管造影、CTの造影のように、通常、静脈血管内投与で用いられる。ヨード造影剤は、投与されて数分間は血管内に滞留するが、急速に全身に分布し、通常は腎臓で排泄されて尿中に出る。現在使用されている低分子量・水溶性のヨード造影剤は血管から臓器や組織への移行が早く、血管の中でも特に静脈を明確に造影することが困難であった。
【0003】
血中滞留性を上げるために、今から20年程前、ヨード化けし油をレシチンで分散したオイルエマルジョンタイプの造影剤がいくつか検討された(例えば、非特許文献1参照)。これらは目論見通り血中滞留性が向上し、全身血管の造影能力が格段に向上したが、発熱、悪心、アナフィラキシーショック等の重篤な副作用を引き起こす問題が解決できず、実用化に至っていない。
【0004】
一方、近年、特定臓器の癌疾患の造影が強く求められている。しかしながら、上述の造影剤には臓器特異的な集積性がないため要望を満たすことが困難である。糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームは、表面の親水化度の調整や表面糖鎖及び、リンカー蛋白質の構造最適化により体内各組織、がん細胞等への指向性、移行量を制御することが可能であることが知られている(例えば特許文献1、2参照)。しかしながら、膵臓への臓器特異性を十分に発現できないという欠点を有していた。現在、膵臓疾患、特に膵臓の転移性癌は早期発見が難しく、死亡率の高い疾患として知られており新規な造影剤の開発が切望されている。
【特許文献1】特許第3882034号公報
【特許文献2】国際公開第05/011632号パンフレット
【非特許文献1】Radiology,216,154−162,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(4)かつ、膵臓の造影にも優れ、(5)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する、造影剤用化合物を封入したリポソーム、及び該リポソームを含有する造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0007】
1.糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームであって、造影剤用化合物を封入したことを特徴とするリポソーム。
【0008】
2.前記造影剤用化合物が非イオン性ヨード造影剤化合物であることを特徴とする前記1に記載のリポソーム。
【0009】
3.前記リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンであることを特徴とする前記1または2に記載のリポソーム。
【0010】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載のリポソームを含有することを特徴とする造影剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(4)かつ、膵臓の造影にも優れ、(5)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する造影剤用化合物を含有したリポソーム、リ及び該リポソームを含有する造影剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、本発明の造影剤用化合物を含有する特定構造のリポソームは、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(4)かつ、膵臓の造影にも優れ、(5)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する造影剤を含有するリポソームであり、これを含む造影剤は優れた造影剤であることを見出した。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
《糖鎖がリンカーたんぱく質を介してリポソーム膜に結合したリポソーム》
リポソームとは、通常、膜状に集合した脂質層及び内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。
【0015】
(糖鎖)
本発明におけるリポソームは、糖鎖により修飾されたものである。なお、これらの糖鎖中の糖として具体的には、単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースを表すが、好ましくはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロース、アルファ−1,2−マンノビオース二糖、アルファ1,3マンノビオース二糖、アルファ1,4マンノビオース二糖、アルファ−1,6−マンノビオース二糖、アルファ−1,3−アルファ−1,6−マンノトリオース三糖、オリゴマンノース3五糖、オリゴマンノース4b六糖、オリゴマンノース5七糖、オリゴマンノース6八糖、オリゴマンノース7九糖、オリゴマンノース8十糖、オリゴマンノース9十一糖、3′−シアリルラクトース三糖、6′−シアリルラクトース三糖、3′−シアリルラクトサミン三糖、6′−シアリルラクトサミン三糖、ルイスX型三糖、シアリルルイスX型四糖、ラクトース二糖、2′−フコシルラクトース三糖、ジフコシルラクトース四糖及び3−フコシルラクトース三糖を表す。
【0016】
本発明においては、これら糖鎖はリンカー蛋白質を介してリポソーム表面に結合している。この場合のリポソームの構造をこれら糖鎖の化学構造とともに図1〜23に示す。なお、これらの図は模式図であり、糖鎖−リンカー蛋白質は、実際にはリポソーム表面に多数結合している。
【0017】
(リンカー蛋白質)
リンカー蛋白質としては、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)等の動物の血清アルブミンが挙げられるが、特にヒト血清アルブミンが好ましい。
【0018】
本発明のリポソームの脂質膜の成分として、一般にリン脂質が好ましく使用される。本発明に用いられるリン脂質は通常公知のもので制限はない。ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン等のリン脂質である。卵黄、大豆その他の動植物材料に由来するリン脂質、それらの水素添加物、水酸化物の誘導体といった半合成のリン脂質、または合成加工品等、限定されることなく用いられる。リン脂質の構成脂肪酸も特に限定されることはなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のどちらでもよい。
【0019】
具体的な中性リン脂質の例として、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルエノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
【0020】
(造影剤用化合物)
本発明に用いられる造影剤用化合物は、従来公知のものであれば制限はなく、具体的にはMRI造影剤用化合物、ヨード造影剤用化合物が好ましく用いられる。MRI造影剤用化合物としては、好ましくはDTPA誘導体が挙げられ、Gd(III)−DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸のガドリニウム(III)錯体)が好ましい、さらに欧州特許EP0071564号公報、及び特表平10−511934号公報が記載する金属錯体が重要である。ヨード化合物が本発明の化合物としてより好ましく、さらに非イオン性ヨード化合物が特に好ましく、水溶性であることが好ましく、具体的にはヨウ化フェニル基、例えば2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有する非イオン性ヨード化合物が好適である。好ましい非イオン性ヨード化合物として、具体的にはイオヘキソール、イオペントール、イオジキサノール、イオプロミド、イオトロラン、イオメプロール、N,N′−ビス〔2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エチル〕−5−〔(2−ヒドロキシ−1−オキソプピル)−アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼン−ジカルボキシアミド(イオパミドール);メトリザミド等が挙げられる。
【0021】
非イオン性ヨード化合物は、これらの例示に限定されるものではない。また、非イオン性ヨード化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、化合物は遊離形態の他に、その塩、水和物等も含めて言及することがある。特に好適なヨード系化合物として、高度に親水性であり、かつ高濃度でも浸透圧が高くならないイオメプロール、イオパミドール、イオトロラン、イオジキサノール等が挙げられる。イオトラン、イオジキサノールといった二量体非イオン性ヨード化合物では、ヨウ素担持効率が高く、同一ヨード濃度の造影剤を調製しても全体のモル数が低いために浸透圧を低下させる利点がある。
【0022】
造影剤用化合物のリポソームへの封入濃度は、該化合物の性質、意図する製剤の投与経路及び臨床上の指標といった要因に基づき任意に設定することができる。リポソーム内に封入された造影剤用化合物の量は、典型的には添加された全造影剤用化合物の5〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜25質量%である。この内包率は、リポソーム粒子の細密充填の限界を下回るために、リポソームにおける造影物質の保持安定性は損なわれない。本発明のリポソームの構成成分は上記に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、FEBS Lett.,223,42(1987);Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85,6949(1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem.Lett.,2145(1989);Biochim.Biophys.Acta,1148,77(1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim.Biophys.Acta,1029,91(1990);FEBS Lett.,268,235(1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0023】
《リポソームの形成方法》
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で形成してもよい。形成法の例としては、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)、“Liposomes”(M.J.Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラまたはマルチラメラ等のいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の化合物の1種または2種以上を配合することも可能である。
【0024】
本発明に用いられるリポソームは、通常のものでも使用できるが、その表面は親水性化されていることが望ましい。本発明のリポソーム自体の製法について、具体的に述べると、例えば、まず、フォスファチジルコリン類、コレステロール、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類を配合成分とする脂質と界面活性剤コール酸ナトリウムとの混合ミセルを調製する。とりわけ、フォスファチジルエタノールアミン類の配合は親水性化反応部位として、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類の配合はリンカー蛋白質の結合部位として必須のものである。そして、これにより得られる混合ミセルの限外濾過を行うことによりリポソームを作製する。続いて、リポソーム膜の脂質フォスファチジルエタノールアミン上に架橋用の2価試薬とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとを用いてリポソーム表面を親水性化する。
【0025】
リポソームの親水性化は、従来公知の方法、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等を共有結合により結合させたリン脂質を用いてリポソームを作製する方法(特開2001−302686号)等も用いることが可能ではあるが、本発明においては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化することが特に好ましい。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化するには、例えばジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質を用いて、常法により得たリポソーム溶液にビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3′−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬加えて反応させることにより、リポソーム膜上のジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質に2価試薬を結合させ、次いでトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを、該2価試薬の一方の結合手と反応させることにより、リポソーム表面にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを結合せしめる。
【0026】
本発明における、糖鎖によるリポソームの修飾手段について具体的に述べると、例えば、糖鎖はリンカー蛋白質を介してリポソーム結合させるが、リンカー蛋白質をリポソームに結合する手段としては、まず、リポソームを、NaIO4、Pb(O2CCH34、NaBiO3等の酸化剤で処理して、リポソーム膜面に存在するガングリオシドを酸化し、次いで、NaBH3CN、NaBH4等の試薬を用いて、リンカー蛋白質とリポソーム膜面上のガングリオシドを、還元的アミノ化反応により結合させる。このリンカー蛋白も、親水性化するのが好ましく、これにはリンカー蛋白質にヒドロキシ基を有する化合物を結合させるが、例えば、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3′−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンをリポソーム上のリンカー蛋白質と結合させればよい。
【0027】
具体的に述べると、まず、リンカー蛋白質の全てのアミノ基に架橋用2価試薬の一端を結合する。そして、各種糖鎖の還元末端をグリコシルアミノ化反応して得られる糖鎖グリコシルアミン化合物を調製し、この糖鎖のアミノ基とリポソーム上の上記で結合された架橋2価試薬の一部分の他の未反応末端とを結合する。
【0028】
次に、このようにして得られる糖鎖結合リポソーム膜面上蛋白質の表面に糖鎖が結合していない未反応で残っている大部分の2価試薬未反応末端を用いて親水性化処理を行う。つまり、このリポソーム上蛋白質に結合している2価試薬の未反応末端とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの結合反応を行い、リポソーム表面を親水性化することにより、本発明のリポソームを得ることができる。
【0029】
次いで、糖鎖を、上記リポソーム上のリンカー蛋白質と結合させる。例えば、まず、糖鎖を構成する糖類の還元末端を、NH4HCO3、NH2COONH4等のアンモニウム塩を用いてグリコシルアミノ化し、次いで、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3′−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、リポソーム膜面上に結合したリンカー蛋白質と、上記グリコシルアミノ化された糖類とを結合させ、図1〜23に示されるようなリポソームを得る。
【0030】
次にリポソーム粒子のサイズ及びその分布について詳述する。「中心粒径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径を指している。なお、粒子径または粒径は、粒子の直径を意味する。粒径の調整は、処方またはプロセス条件で行うことができる。例えば、上記の超臨界の圧力を大きくすると形成されるリポソーム粒径は小さくなる。リポソームの粒子径の分布をより狭い範囲に揃えるには、作製されるリポソームの懸濁液を一定サイズの孔径を有する濾過膜、好ましくはポリカーボネート膜等に強制的に透過させてもよい。この場合、濾過膜として0.05〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.15〜0.2μmの孔径のフィルターを装着した静圧式押出し装置に通すことにより、リポソーム多重層膜の脂質膜枚数を減らすとともに、中心粒径として100〜300nmの最適寸法を有する均一なリポソームを効率よく調製することができる。
【0031】
具体的には、各種の静圧式押出し装置、例えば「エクストルーダー」(商品名、日油リポソーム製)等を使用して、フィルターを強制的に透過させる。フィルターは、ポリカーボネート系、セルロース系等のタイプを適宜使用することができる。このような「押出し」操作工程を取り入れることにより、上記サイジングに加えて、リポソーム分散液の交換、濾過滅菌も併せて可能になるという利点もある。
【0032】
引き続きリポソーム分散液を、遠心分離、ゲル濾過等の方法により未保持の薬剤を除去して精製したり、濃縮、希釈、凍結乾燥等の操作を任意に行ってもよい。本発明の造影剤入りリポソームの中心粒径は、通常50〜300nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは50〜130nmである。糖鎖を結合させた場合の糖鎖の結合密度は、リポソームに結合させるリンカー蛋白質1分子当り1〜60個、好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個である。また、リポソーム1粒子当りは、リンカー蛋白質を用いる場合は、1〜30000個、好ましくは1〜20000個、さらに好ましくは1〜10000個、あるいは100〜30000個、好ましくは100〜20000個、さらに好ましくは100〜10000個、あるいは500〜30000個、好ましくは500〜20000個、さらに好ましくは500〜10000個である。リンカー蛋白質を用いない場合は、リポソーム1粒子当り1〜50000個、好ましくは1〜300000個、さらに好ましくは1〜100000個以上の糖鎖を結合させることができる。
【0033】
造影剤用化合物のリポソーム内部への封入は、周知の方法を用いればよく、例えば、造影剤用化合物の含有溶液とフォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはフォスファチジルグリセロール類及びコレステロール類を含む脂質を用いてリポソームを形成することにより、薬剤等はリポソーム内に封入される。
【0034】
《造影剤》
次に、本発明のリポソームを含有する造影剤について詳述する。
【0035】
注射のために製剤化された本発明の造影剤は、迅速で簡便な注射を可能にするよう適度な粘度のみを有するべきである。粘度は、10.20×10-4kgf・s/m2(10mPa・s、10cP)未満、好ましくは5.10×10-4kgf・s/m2(5mPa・s、5cP)未満、より好ましくは2.04×10-4kgf・s/m2(2mPa・s、2cP)未満である。
【0036】
また、注射のために製剤化された本発明の造影剤は過度の浸透圧を有するべきではない。なぜなら、これは毒性を増加させ得るからである。浸透圧は、3000ミリオスモル/kg未満、好ましくは2500ミリオスモル/kg未満、最も好ましくは900ミリオスモル/kg未満である。
【0037】
本発明の造影剤は、無機または有機の酸及び塩基から誘導される塩を含有することができる。塩の具体例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、及びアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を有する塩等を包含する。
【0038】
また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロマイド)ならびにその他のような薬剤で4級化され得る。それによって、水溶性または油溶性あるいは水分散性または油分散性の生成物が得られる。本発明の好ましい塩は、N−メチル−D−グルカミン、カルシウム及びナトリウム塩である。
【0039】
本発明の造影剤は、任意のキャリア、アジュバントもしくはビヒクルを含有することができる。本発明の造影剤に使用され得るキャリア、アジュバント及びビヒクルは、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝性物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及びラノリンを包含するが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の造影剤は、注射可能な無菌の調合薬の形態(例えば、注射可能な無菌の水性または油性の懸濁液)であり得る。この懸濁液は、当該分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて製剤され得る。注射可能な無菌の調合薬はまた、無毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶媒中における、無菌の注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であってもよい。用いられ得る受容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張食塩水である。さらに、従来では、無菌の不揮発油が溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成のモノ−またはジ−グリセリドを含む任意の刺激のない不揮発油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能なオイル(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油)と同様に、注射可能物の調製、特にこれらのポリオキシエチル化した変形物において有用である。これらのオイル溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、Ph.Helvまたは類似のアルコール)を含み得る。
【0041】
本発明の造影剤は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、鼻腔投与、頬投与、膣投与または従来の無毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント及びビヒクルを含有する投薬製剤中に埋め込まれたリザーバを介して投与され得る。本明細書に使用されるように用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下、肝臓内、病変内及び頭蓋内注射または点滴技術を含む。
【0042】
経口投与される場合、本発明の薬学的組成物は任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。錠剤を経口使用する場合、一般的に使用されるキャリアには、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。代表的には、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた添加される。カプセル形態の経口投与に対して、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用に水性懸濁液を必要とする場合、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と配合される。所望の場合、特定の甘味料、香味料または着色料もまた添加してもよい。あるいは、直腸投与のために座薬形態で投与される場合には、本発明の造影剤は、室温で固体であるが直腸温で液体である適切な非刺激性の賦形剤とを混合して調製され得、その結果直腸内で溶け薬剤を放出する。このような物質として、ココアバター、ビーズワックス及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0043】
また、前述のように、特に、処置標的が局所施用によって容易に接近可能な領域または器官(目、皮膚または下部腸道(lower intestinal tract)を含む)を含む場合に、本発明の造影剤は局所投与され得る。適切な局所製剤は、これらの各領域または器官用に容易に調製される。
【0044】
下部腸道に対する局所施用は、直腸用座薬製剤または適切な浣腸製剤でなされ得る。局所−経皮性パッチもまた使用してよい。局所施用に対して、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解される活性成分を含有する、適切な軟膏に製剤され得る。本発明の造影剤の局所投与のためのキャリアは、鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を包含するが、それらに限定されない。あるいは、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、適切なローションまたはクリームに製剤されてもよい。適切なキャリアは、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を包含するが、それらに限定されない。
【0045】
眼使用に対して、本発明の造影剤は防腐剤(例えば、ベンジルアルコニウムクロライド)を含有してもしなくてもよい。pH調節された等張の無菌生理食塩水中に微小化された懸濁液として、または好ましくはpH調節された等張の無菌生理食塩水中の溶液として製剤され得る。あるいは、眼使用に対して本発明の造影剤は、ペトロラタムのような軟膏に製剤され得る。
【0046】
鼻腔エーロゾルまたは吸入による投与に対して、本発明の造影剤は、製薬的製剤の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、生体利用性を増大させる吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0047】
投薬は、診断用画像化機器の感度、ならびに造影剤の組成に依存する。しかし、任意の特定の患者に対する特定の投薬処方もまた、種々の因子(年齢、体重、健康状態、性別、治療食、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ及び処置する内科医の判断を含む)に依存することが理解されるべきである。
【0048】
本発明では造影剤の適切な投薬の投与に続いて、MRI画像化またはX線画像化が行われる。MRI画像化は、パルス系列(反転回復(IR);スピンエコー(SE);エコー断層(EPI);飛行時間(TOF);ターボフラッシュ;グラディエントエコー(GE))及び画像化パラメーターの値(エコー時間(TE);反転時間(TI);繰り返し時間(TR);フリップ角等)の選択は、要求される診断情報に支配される。一般的には、T1−加重された画像を得ることが望まれる場合、TEはT1−加重を最大とするために30ミリ秒未満(または最小値)であるべきである。逆に、T2の測定が所望される場合、TEは競合するT1効果を最小にするために30ミリ秒より大きくあるべきである。TI及びTRは、T1−及びT2−加重された画像の両方に対して、ほぼ同じに保たれる;一般的に、TI及びTRは、それぞれ、約5〜1000ミリ秒及び2〜1000ミリ秒のオーダーである。
【0049】
X線画像化は、従来公知の方法による脳血管撮影、選択的血管撮影、四肢血管撮影、ディジタルX線撮影法による静脈性血管撮影、コンピューター断層撮影における造影、静脈性尿路撮影等による画像化であることが好ましい。本発明の造影剤は全身血管、及び肝臓、特に膵臓の造影に優れているので選択的血管撮影、コンピューター断層撮影における腹部造影が最適な撮像方法である。
【実施例】
【0050】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例1 造影剤化合物封入リポソームの調製
造影剤化合物封入前のリポソームは、既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合の合計脂質量45.6mgにコール酸ナトリウムを46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜(造影剤化合物封入前のリポソーム)を得た。得られた脂質膜に非イオン性ヨード化合物を含有する造影剤溶液(日局イオパミドール溶液306.2mg/ml(ヨード含有量150mg/ml)、トロメタモールを1mg/ml、エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mlを含有し、適量の塩酸及び水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整)5mlを注入した。次に超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施することにより、非イオン性ヨード化合を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmで加圧濾過した。得られた試料をスペクトラプロ社製、バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の生理食塩水(9.0×10-1質量%、1000g)中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかった非イオン性ヨード化合物等を除去した、均一リポソーム(平均粒径100nm)10mlを調製した。
【0052】
実施例2 リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
実施例1で調製したリポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ、溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate(BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、さらに7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 4mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
【0053】
実施例3 リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.,242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBH3CN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リポソーム液を得た。
【0054】
実施例4 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,2マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,2マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,2マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,2マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,2マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図1で示されるアルファ1,2マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A2)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0055】
実施例5 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,3マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,3マンノビオース二糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,3マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,3マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,3マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図2で示されるアルファ1,3マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A3)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0056】
実施例6 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,4マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,4マンノビオース二糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,4マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,4マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,4マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図3で示されるアルファ1,4マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A4)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0057】
実施例7 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,6マンノビオース二糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図4で示されるアルファ1,6マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A6)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0058】
実施例8 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖の結合
アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖の結合を行った。その結果、図5で示されるアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A36)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0059】
実施例9 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース3五糖鎖の結合
オリゴマンノース3五糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース3五糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース3五糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース3五糖鎖の結合を行った。その結果、図6で示されるオリゴマンノース3五糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man3)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0060】
実施例10 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース4b六糖鎖の結合
オリゴマンノース4b六糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース4b六糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース4b六糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース4b六糖鎖の結合を行った。その結果、図7で示されるオリゴマンノース4b六糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man4b)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0061】
実施例11 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース5七糖鎖の結合
オリゴマンノース5七糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース5七糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース5七糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース5七糖鎖の結合を行った。その結果、図8で示されるオリゴマンノース5七糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man5)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0062】
実施例12 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノースオリゴマンノース6八糖鎖の結合
オリゴマンノース6八糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース6八糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース6八糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース6八糖鎖の結合を行った。その結果、図9で示されるオリゴマンノース6八糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man6)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0063】
実施例13 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース7九糖鎖の結合
オリゴマンノース7九糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース7九糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース7九糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース7九糖鎖の結合を行った。その結果、図10で示されるオリゴマンノース7九糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man7)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0064】
実施例14 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース8十鎖の結合
オリゴマンノース8十糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース8十糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース8十糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース8十糖鎖の結合を行った。その結果、図11で示されるオリゴマンノース8十糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man8)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0065】
実施例15 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース9十一糖鎖の結合
オリゴマンノース9十一糖鎖(CalbiochemCo.,USA)50μgを0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース9十一糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース9十一糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース9十一糖鎖の結合を行った。その結果、図12で示されるオリゴマンノース9十一糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man9)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0066】
実施例16 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3′−シアリルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
3′−シアリルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、または、2)200μg、または、3)1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3′−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3′−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3′−シアリルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図13で示される3′−シアリルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)3SL−1、2)3SL−2、3)3SL−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0067】
実施例17 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への6′−シアリルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
6′−シアリルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、または、2)200μg、または、3)1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して6′−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM00膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の6′−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに6′−シアリルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図14で示される6′−シアリルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)6SL−1、2)6SL−2、3)6SL−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0068】
実施例18 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3′−シアリルラクトサミン糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
3′−シアリルラクトサミン糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、または、2)200μg、または、3)1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3′−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3′−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3′−シアリルラクトサミン糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図15で示される3′−シアリルラクトサミン糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)3SLN−1、2)3SLN−2、3)3SLN−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0069】
実施例19 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への6′−シアリルラクトサミン糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
6′−シアリルラクトサミン糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、または、2)200μg、または、3)1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して6′−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3′−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;PierceCo.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の6′−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに6′−シアリルラクトサミン糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図16で示される6′−シアリルラクトサミン糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)6SLN−1、2)6SLN−2、3)6SLN−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0070】
実施例20 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上の親水性化処理
実施例4〜19の手段により調製された各24種類の糖鎖が結合したリポソームについて、それぞれ別々に以下の手順によりリポソーム上のHSA蛋白質表面の親水性化処理を行った。24種の糖鎖結合リポソーム2mlに、別々に、tris(hydroxymethyl)aminomethan13mgを加えて、25℃で2時間、その後7℃で一晩攪拌した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過し未反応物を除去して、最終産物である親水性化処理された24種類の糖鎖結合リポソーム複合体(略称:A2、A3、A4、A6、A36、Man3、Man4b、Man5、Man6、Man7、Man8、Man9、3SL−1、3SL−2、3SL−3、6S−1、6SL−2、6SL−3、3SLN−1、3SLN−2、3SLN−3、6SLN−1、6SLN−2、6SLN−3)各2ml得た。これを表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から分かるように、本発明のリポソームは良好な平均粒径を示した。
【0073】
実施例21
ヨード化合物の内包率の測定
表1記載の試料を等張の食塩水で透析し、透析終了後にエタノールを添加してリポソームを破壊し、吸光度の測定によりリポソーム内のヨード化合物量を求めた。試料中の全ヨード化合物量に対する比率を内包率(質量%)として表した。
【0074】
結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2から分かるように、本発明のコレステロール誘導体を用いたリポソームは良好な内包率を示した。
【0077】
実施例22
実施例20で作製した、リポソームを含有する造影剤及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス一匹当たり3ml注入で、ヨウ素量が2500mgI/kgの投与量となる造影剤を調製した。
【0078】
実施例23
急性毒性試験
上記造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより、投与後24時間以内に死亡したマウスの数をカウントした。検体数を20として得られた結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
表3に示すように、本発明の造影剤は生体に対する毒性が低いことが分かる。
【0081】
実施例24
実施例20で作製した、リポソームを含有する造影剤及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス一匹当たり0.3ml注入で、ヨウ素量が250mgI/kgの投与量となる造影剤を調製した。
【0082】
実施例25
組織内分布の評価
この造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより組織内分布を評価した。投入後、5分、30分、2時間、24時間の肝臓、膵臓及び血液内のヨウ素の濃度を、誘導結合プラズマ発光分析装置(Urtima−2、JyobinYvon社製)にて測定した。検体数を20として得られた結果の平均値を表4に示す。なお、投与後24時間以内に死亡したり、重篤な障害が生じる検体はなかった。
【0083】
【表4】

【0084】
表4より、本発明の造影剤は全身血管及び肝臓の造影に優れ、かつ膵臓の造影にも優れ、さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】アルファ1,2マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図2】アルファ1,3マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図3】アルファ1,4マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図4】アルファ1,6マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図5】アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図6】オリゴマンノース3五糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図7】は、オリゴマンノース4b六糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図8】オリゴマンノース5七糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図9】オリゴマンノース6八糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図10】オリゴマンノース7九糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図11】オリゴマンノース8十糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図12】オリゴマンノース9十一糖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図13】3′−シアリルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図14】6′−シアリルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図15】3′−シアリルラクトサミン三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図16】6′−シアリルラクトサミン三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図17】ルイスX型三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図18】シアリルルイスX型四糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
【図19】ラクトース二糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図20】2′−フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図21】ジフコシルラクトース四糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図22】3−フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図23】1−マンノース鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合したリポソームであって、造影剤用化合物を封入したことを特徴とするリポソーム。
【請求項2】
前記造影剤用化合物が非イオン性ヨード造影剤化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンであることを特徴とする請求項1または2に記載のリポソーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソームを含有することを特徴とする造影剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−51782(P2009−51782A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220803(P2007−220803)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】