リモコンミラーの駆動装置およびリモコンミラーの組み立て方法
【課題】ミラーハーネスの途中に2個のモータの端子どうしを短絡するスプライス部を不要にしつつ、ミラー装置の外部に短絡箇所を配置できるようにしたリモコンミラーの駆動装置を提供する。
【解決手段】ミラーハーネス64は2個の鏡面角度調整用モータ60,62の4個の端子にそれぞれ接続された4本の電線66〜69を有する。ミラーハーネス64はミラーハウジング54、ミラーベース52を通って車体内86に導かれる。車体内86にはミラースイッチ回路46が配設されている。ミラースイッチ回路46からはモータ60,62に駆動電力を供給する3本の電線107〜109が引き出されている。4本の電線66〜69と3本の電線107〜109は車体内コネクタ92で相互に接続される。このとき2本の電線67,68は1本の電線108に共通に接続され、2本の電線66,69は2本の電線107,109に個別に接続される。
【解決手段】ミラーハーネス64は2個の鏡面角度調整用モータ60,62の4個の端子にそれぞれ接続された4本の電線66〜69を有する。ミラーハーネス64はミラーハウジング54、ミラーベース52を通って車体内86に導かれる。車体内86にはミラースイッチ回路46が配設されている。ミラースイッチ回路46からはモータ60,62に駆動電力を供給する3本の電線107〜109が引き出されている。4本の電線66〜69と3本の電線107〜109は車体内コネクタ92で相互に接続される。このとき2本の電線67,68は1本の電線108に共通に接続され、2本の電線66,69は2本の電線107,109に個別に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鏡面角度を電動調整する車両用のリモコンミラーにおいて鏡面角度調整用アクチュエータ(以下「アクチュエータ」という)のモータに駆動電力を供給する駆動装置に関し、ミラーハーネスの途中に2個のモータの端子どうしを短絡するスプライス部を不要にしつつ、ミラー装置の外部に短絡箇所を配置できるようにしたものである。またこの発明はこの駆動装置を備えたリモコンミラーの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リモコンミラーのアクチュエータは鏡面の垂直方向角度を調整するモータと水平方向角度を調整するモータを備えている。これら2個のモータに駆動用電力を供給する給電路は、2個のモータの各一方の端子に個別に接続される2本の電線と、2個のモータの各他方の端子に共通に接続されて該他方の端子どうしを短絡する1本の電線の合計3本の電線を具え、これら3本の電線を車体側に敷設された3本の電線とコネクタを介して相互に接続して構成される(下記特許文献1の図8参照)。
【0003】
2個のモータの他方の端子に1本の電線を共通に接続する構造として下記特許文献1の図10に記載されたものがあった。その構造を図13に示す。図13(A)は右ドアミラーを示す。ドアミラー10のハウジング11にはアクチュエータ12が内蔵されている。アクチュエータ12には2個のモータ14,16が内蔵されている。モータ14,16の一方の端子には2本の長い電線18,20が接続されている。モータ14,16の他方の端子には2本の短い電線22,24が接続されている。電線22,24の端部は接続点Pにおいて、別途用意された1本の電線26に共通に接続されている。このようにして3本の電線18,20,26にまとめられて束ねられたミラーハーネス28はドアミラー10のミラーベース30を介して車体側に導かれる。車体側の運転席の近傍には運転者が鏡面角度を遠隔操作するための鏡面角度調整操作子32が配設されている。鏡面角度調整操作子32からは3本の電線34,38,36を束ねた車体ハーネス40が引き出されている。ミラーハーネス28と車体ハーネス40はコネクタ42を介して相互に接続され、これにより両ハーネス28,40の電線18,34どうし、電線20,36どうし、電線26,38どうしがそれぞれ接続される。
【0004】
リモコンミラーは同一型式のアクチュエータを使用する場合であっても、左右ミラーの違いによってあるいは車種の違いによって、モータの短絡させる端子が異なる場合がある。例えば特許文献1に記載の前記図13のドアミラーにおいては、(A)の右ミラーは電線22,24どうしを接続点Pにおいて電線26に共通に接続しているが、(B)の左ミラーは電線22,20どうしを接続点Qにおいて電線26に共通に接続している。接続点P,Qにおける電線どうしの接続は一般にスプライス(圧着端子)を用いて行われる。すなわち相互に接続する3本の電線の先端部の被覆を剥いて導線を露出させ、該露出した導線どうしを1個のスプライスで圧着して相互に繋ぎ合わせ、次いで該繋ぎ合わせた部分をビニールテープで被覆してスプライス部を構成している。
【0005】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を構成する作業は手作業で行われるため生産性が悪かった。ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしたリモコンミラーとして特許文献1の図1に記載されたものがあった(以下カッコ内は特許文献1に記された符号を示す)。これはミラーハーネスをアクチュエータ(18)に接続するためにミラーハーネスのアクチュエータ側の端部に装着するアクチュエータコネクタ(36)内に、モータ(20,22)の端子を短絡させる構造を配置したものである。すなわちアクチュエータコネクタ(36)内に収容して2本の電線どうしを短絡する2種類の導体(64,66)を用意して、これら導体(64,66)のいずれをアクチュエータコネクタ(36)内に収容するかでモータ(20,22)の短絡する端子を切り換えるようにしている。
【0006】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にした別のリモコンミラーとして特許文献2に記載されたリモコンミラーがあった(以下カッコ内は特許文献2に記された符号を示す)。これはアクチュエータ(5)内にコネクタ(36)を収容したものである。コネクタ(36)は3個の電源側端子(37,38,39)と該3個の電源側端子(37,38,39)の個別の1個にそれぞれに導通した3個のモータ側端子(40,41,42)を具えている。2個のモータ(M1,M2)の一方の端子(44,52)は個別の電線(45,53)を介してコネクタ(36)の個別のモータ側端子(40,42)に接続され、2個のモータ(M1,M2)の他方の端子(47,50)は個別の電線(48,51)を介してコネクタ(36)の残りの1個のモータ側端子(41)に共通に接続されている。コネクタ(36)の3個の電源側端子(37,38,39)はアクチュエータ(5)のケース(15)の外部に露出している。ミラーハーネス(61)は3本の電線を束ねて構成され、これら3本の電線の先端部は1個のカプラー(60)に接続されている。このカプラー(60)をアクチュエータ(5)のケース(15)の外部に露出しているコネクタ(36)の電源側端子(37,38,39)に接続することにより、ミラーハーネス(61)の3本の電線はコネクタ(36)の3個の電源側端子(37,38,39)の個別の1個にそれぞれ導通する。ミラーハーネス(61)の他端側はドアミラーのミラーベース(1)を介して車体側に導かれる。
【0007】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしたさらに別のリモコンミラーとして特許文献3に記載されたリモコンミラーがあった(以下カッコ内は特許文献3に記された符号を示す)。これはアクチュエータ(A)内にアダプタ(20)を収容したものである。アダプタ(20)は3個の電源側端子(メス端子)(23a,23b,23c)と4個のモータ側端子(メス端子)(22a,22b,22c,22d)を具えている。アダプタ(20)内には2個の電源側端子(23a,23c)と2個のモータ側端子(22a,22c)を個別に接続する導電体(24a,24c)と、残りの1個の電源側端子(23b)と残りの2個のモータ側端子(22b、22d)を共通に接続する導電体(24b,24e)が収容されている。アダプタ(20)はその4個のモータ側端子(22a,22b,22c,22d)に2個のモータ(10A,10B)の全4個の端子(オス端子)(13Aa,13Ab,13Ba,13Bb)を個別に差し込んで該2個のモータ(10A,10B)に取付支持される。一方、ミラーハーネス(30)は3本の電線(31a,31b,31c)を束ねて構成され、これら3本の電線(31a,31b,31c)の端部には個別の端子(オス端子)(33a,33b,33c)が接続されている。これら3個の端子(33a,33b,33c)は1個のコネクタ(32)に装着されている。コネクタ(32)はその3個の端子(33a,33b,33c)をアダプタ(20)の3個の電源側端子(23a,23b,23c)に差し込んで該アダプタ(20)に取付支持され、これによりミラーハーネス(30)の3本の電線(31a,31b,31c)はアダプタ(20)の3個の電源側端子(23a,23b,23c)の個別の1個にそれぞれ導通する。ミラーハーネス(30)はドアミラーのミラーベースを介して車体側に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−66892号公報(図1、図8、図10)
【特許文献2】実開平6−3738号公報(図1、図7、図8)
【特許文献3】特開2006−88788号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1の図1、特許文献2,3に記載のリモコンミラーはミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしているが、いずれも短絡箇所がミラー装置内にある。このためアクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込む前に短絡構造を完成させておく必要がある。これによると、前述のように同一型式のアクチュエータを使用する場合であっても左右ミラーの違いや車種の違いによってモータの短絡させる端子が異なるので、短絡させる端子を誤ったままミラー装置に組み込んでしまい、その後の動作確認テストでその誤りが判明した場合には、ミラー装置を分解して短絡構造を修正したうえで組み立てをやり直さなければならず、修正作業が面倒であった。またアクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合であっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要があり、管理が面倒であった。
【0010】
この発明は上述の問題点に着目してなされたもので、ミラーハーネスの途中に2個のモータの端子どうしを短絡するスプライス部を不要にしつつ、ミラー装置の外部に短絡箇所を配置できるようにしたリモコンミラーの駆動装置を提供しようとするものである。またこの発明はこの駆動装置を備えたリモコンミラーの組み立て方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のリモコンミラーの駆動装置は、2個の直流モータを内蔵して鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整する鏡面角度調整用アクチュエータを具えた車両用リモコンミラーの前記2個のモータに駆動電力を供給する装置において、前記2個のモータの4個の端子に個別に接続された4本の電線を有し、前記リモコンミラーのミラーハウジング内からミラーベースを通って車体内に敷設されたミラーハーネスと、第1電線、第2電線、第3電線の3本の電線を有し、車体内に敷設された車体ハーネスと、前記車体ハーネスの3本の電線の電源側端部がそれぞれ接続され、使用者による鏡面角度調整操作子の鏡面角度調整操作に応じて、該3本の電線のうちの第1電線と第2電線間または第1電線と第3電線間に選択的にかつ極性を可逆的に切り換えてモータ駆動電圧を印加する、車体内に配設されたミラースイッチ回路と、前記ミラーハーネスの4本の電線と前記車体ハーネスの3本の電線とを相互に接続するコネクタであって、前記ミラーハーネスの4本の電線の端子金具を装着するミラーハーネス側部分と前記車体ハーネスの3本の電線の端子金具を装着する車体ハーネス側部分を有し、該ミラーハーネス側部分と該車体ハーネス側部分を相互に連結した状態で、前記ミラーハーネスの4本の電線の4個の端子金具のうち2個を前記車体ハーネスの第1電線の端子金具に共通に接続し、残りの2個を前記車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する導電路を構成する車体内コネクタとを具備してなるものである。
【0012】
この駆動装置によれば、車体内コネクタのミラーハーネス側部分と車体ハーネス側部分との連結により短絡構造を構成するので、ミラーハーネスの途中にスプライス部が不要である。またミラー装置の外部に短絡箇所を配置することができる。これによれば、アクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込んだ後にミラー装置の外側で短絡構造を設定することができるので、アクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要がなくなり、管理が容易となる。またミラー装置を組み立てた後の動作確認で短絡させる端子に誤りがあることが判明しても、ミラー装置を分解せずに車体内コネクタの部分で短絡構造を修正することができるので、修正作業が容易になる。
【0013】
この発明のリモコンミラーの組み立て方法は、この発明の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法であって、前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分が未装着の前記ミラーハーネスを前記ミラーベースに対する前記ミラーハウジングの回動軸を構成する中空シャフトに通し、該ミラーハーネスの該ミラーハウジング側の端部を前記鏡面角度調整用アクチュエータに連結し該鏡面角度調整用アクチュエータを該ミラーハウジング内に装着する第1工程と、前記第1工程の後に前記ミラーハーネスの車体内側の端部を前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分に装着して前記車体ハーネスの第1電線に共通に接続する2本の電線と、該車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する2本の電線の設定を行う第2工程とを具備してなるものである。この組み立て方法によれば、アクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込んだ後にミラー装置の外側で短絡構造を設定することができるので、アクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要がなくなり、管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のリモコンミラーの駆動装置の実施の形態を示す回路図で、左ミラー側部分について示したものである。
【図2】図1の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aの構成例を示す分解斜視図である。
【図3】図2の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視端面図である。
【図5】図3の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B矢視端面図である。
【図6】図1の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aおよび車体ハーネス側部分92Bの構成例を示す図で(ミラーハーネス側部分92Aは図2〜図5で示したものと同じ)、図5(a)のB−B矢視位置に相当する位置で切断した端面図であり、両部分92A,92Bを相互に連結する前の状態で示した図である。
【図7】図6の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bを相互に連結した状態を示す図で、図6と同じ位置で切断した端面図である。
【図8】左右ミラーに同一型式のアクチュエータを使用する場合の、ある車種における左右ミラーのアクチュエータの配置姿勢を示す正面図である。
【図9】図8の左右ミラーにおける2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子との接続設定を示す図表である。
【図10】モータとミラースイッチ間の接続を図9に示す状態に設定する場合のミラースイッチ回路内における電源側の2端子とアクチュエータ側の3端子との接続設定を示す図表である(線で結んだ端子どうしが接続されることを意味する)。
【図11】図8のアクチュエータを別の車種の左右ミラーに使用する場合の、左右ミラーにおける2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子との接続設定を示す図表である。
【図12】モータとミラースイッチ間の接続を図11に示す状態に設定する場合のミラースイッチ回路内における電源側の2端子とアクチュエータ側の3端子との接続設定を示す図表である(線で結んだ端子どうしが接続されることを意味する)。
【図13】特許文献1に記載のリモコンミラーの駆動装置の回路図で、(A)は右ミラーの回路図、(B)は左ミラーの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下この発明の実施の形態を説明する。図1はこの発明を適用したリモコンミラーの左ミラー側部分について示したものである。右ミラー側部分も鏡面角度調整操作子44およびミラースイッチ回路46を左ミラー側部分と共用して左ミラー側部分と同様に構成される。左ドアミラー48は、車体(左側ドア)50の外側面にミラーベース52を固定し、ミラーベース52にミラーハウジング54を格納位置(非使用位置)と復帰位置(使用位置)に変位可能に支持して構成される。ミラーハウジング54内にはミラー板56を支持してミラー板56の鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整するアクチュエータ58が収容配置されている。アクチュエータ58は2個の直流モータ60,62を内蔵している。モータ60は伝達機構(図示せず)を介してミラー板56の垂直方向の鏡面角度を調整し、モータ62は伝達機構(図示せず)を介してミラー板56の水平方向の鏡面角度を調整する。
【0016】
ミラーハーネス64を構成する4本の給電用被覆電線(以下「電線」という)66,67,68,69のドアミラー側端部には圧着端子等の端子金具72,73,74,75がそれぞれ装着されている。これら端子金具72〜75はアクチュエータコネクタ78に装着されている。アクチュエータ58にはその筐体の外側からアクチュエータコネクタ78が着脱可能に装着される。これにより電線66,67の端子金具72,73はモータ60の端子80,81にそれぞれ接続され、電線68,69の端子金具74,75はモータ62の端子82,83にそれぞれ接続される。
【0017】
ミラーハーネス64はミラーハウジング54内から、ミラーベース52に対するミラーハウジング54の回動軸を構成する中空シャフト55の中を通り、さらにミラーベース52を通って車体内86に敷設される。ミラーハーネス64を構成する電線66,67,68,69の車体側端部には圧着端子等の同一構造の端子金具88,89,90,91がそれぞれ装着されている。これら端子金具88〜91は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aに着脱可能に装着されている。車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aには端子金具88〜91を収容して装着する4箇所の装着空間が形成されている。端子金具88〜91はこれら4箇所の装着空間の適宜の空間に収容して装着される。4箇所の装着空間のうち2箇所の装着空間は、該2箇所の装着空間に収容した2個の端子金具どうしを相互に短絡させる構造を有する。
【0018】
車体内86には鏡面角度調整操作子44とミラースイッチ回路46が設置されている。鏡面角度調整操作子44は運転者が鏡面角度を調整するときに操作される。鏡面角度調整操作子44では左右ミラーごとに鏡面角度を垂直方向に変位させる指示操作と鏡面角度を水平方向に変位させる指示操作を行うことができる。ミラースイッチ回路46は鏡面角度調整操作子44の操作に応じて左右ミラーの各アクチュエータの2個のモータに対して駆動電力を供給して、鏡面角度を指示された方向に変位させる働きをする。ミラースイッチ回路46は、12Vバッテリ100の正電極に接続されている12V端子101、12Vバッテリ100の負電極に接続されているGND端子102と、左ドアミラー48のアクチュエータ58に電力を供給する端子として垂直方向鏡面角度調整用モータ60の一方の端子に専用に接続される垂直端子103、水平方向鏡面角度調整用モータ62の一方の端子に専用に接続される水平端子105、両モータ60,62の各他方の端子に共通に接続される共通端子104を具えている。
【0019】
ミラースイッチ回路46は、鏡面角度調整操作子44により垂直方向の鏡面角度調整が指示されたときは、その移動方向(上方向または下方向)に応じて垂直端子103を12V端子101またはGND端子102に接続し、共通端子104をGND端子102または12V端子101に接続して、モータ60を正転方向または逆転方向に駆動して、鏡面角度を指示された方向に変位させる。このとき水平端子105は12V端子101、GND端子102のいずれにも接続されず開放状態となる。またミラースイッチ回路46は、鏡面角度調整操作子44により水平方向の鏡面角度調整が指示されたときは、その移動方向(左方向または右方向)に応じて水平端子105を12V端子101またはGND端子102に接続し、共通端子104をGND端子102または12V端子101に接続して、モータ62を正転方向または逆転方向に駆動して、鏡面角度を指示された方向に変位させる。このとき垂直端子103は12V端子101、GND端子102のいずれにも接続されず開放状態となる。またミラースイッチ回路46は鏡面角度調整操作子44が操作されていないときは垂直端子103、水平端子105、共通端子104を12V端子101、GND端子102のいずれにも接続せず、いずれも開放状態とする。
【0020】
ミラースイッチ回路46の垂直端子103、水平端子105、共通端子104からは車体ハーネス106を構成する3本の電線107,108,109が引き出されている。電線107〜109の先端部には圧着端子等の端子金具112,113,114がそれぞれ装着されている。これら端子金具112〜114は車体内コネクタ92の車体ハーネス側部分92Bに装着されている。車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bは着脱可能に連結される。両コネクタ部分92A,92Bが連結されると、端子金具88,107どうし、端子金具89,90,113どうし、端子91,114どうしがそれぞれ連結され、これにより電線66,107どうし、電線67,68,108どうし、電線69,109どうしがそれぞれ連結される。
【0021】
車体内コネクタ92の構成例を図2〜図7を参照して説明する。図2は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aを示す。ミラーハーネス64を構成する電線66〜69の車体側端部には圧着端子による端子金具88〜91がそれぞれ装着されている。端子金具88〜91は差し込み空間88a〜91a(図5(b))を有する同一構造のメス端子で構成されている。端子金具88〜91の同じ側の側面の一部は切り欠かれて片持ち状に支持されたバネ接片88b,89b,90b,91b(図5(b))が形成されている。車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aは樹脂製の筐体119を具えている。筐体119内には4個の装着空間121,122,123,124が平行に等間隔に並べて形成されている。装着空間121〜124の軸方向の前端部および後端部はそれぞれ開口されている。装着空間121〜124の相互間は壁面127〜129によって仕切られている。壁面128には端子金具89,90どうしを短絡させる切欠128aが形成されている。
【0022】
電線66〜69の先端に装着された端子金具88〜91は、装着空間121〜124の後端開口部121a〜124aから差し込まれて装着空間121〜124にそれぞれ収容される。端子金具88〜91の差し込みは、図4(b)、図5(b)に示すように端子金具88〜91の前端面が筐体119の前面板119aの裏面に当接して係止される。前面板119aには端子金具88〜91の差し込み空間88a〜91aにそれぞれ連通する差し込み穴121b〜124bが形成されている。装着空間121〜124の内周面には図4(b)に示すように、片持ち状に支持された抜け止め片131がそれぞれ形成されている。端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容すると、各装着空間121〜124内の抜け止め片131が端子金具88〜91の後端面角部133にそれぞれ当接する。これにより端子金具88〜91が装着空間121〜124から抜け出るのが防止される。端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容して装着した状態で、装着空間121〜124の後端開口部121a〜124aから細棒状の金具を差し込んで抜け止め片131を退避させることにより、抜け止め片131と端子金具88〜91との係合が外れて、端子金具88〜91を装着空間121〜124から個別に抜き出すことができる。装着空間121〜124に対する端子金具88〜91の装着位置を適宜入れ替えることにより、左右ミラーの違いあるいは車種の違いに対応させることができる。
【0023】
図5(b)に示すように、端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容した状態では、端子金具89のバネ接片89bが壁面128の切欠128aを通して隣接する端子金具90の側面に当接して端子金具89,90どうしが短絡する。端子金具88,90のバネ接片88b,90bは切欠のない壁面128,129に当接するので、ほかの端子金具には接触しない。端の端子金具91のバネ接片91bも筐体119の内壁面に当接してほかの端子金具には接触しない。
【0024】
図6は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bを連結前の状態で示したものである。車体ハーネス106を構成する電線107〜109の端部には圧着端子による端子金具112〜114がそれぞれ装着されている。端子金具112〜114は突出ピン112a〜114aを有する同一構造のオス端子で構成されている。車体内コネクタ車体ハーネス側部分92Bは樹脂製の筐体135を具えている。筐体135内は仕切られて3個の装着空間137,138,139が平行に並べて形成されている。装着空間137,138,139はミラーハーネス側部分92Aの装着空間121,122,124にそれぞれ対面する。装着空間137〜139の軸方向の前端部および後端部はそれぞれ開口されている。筐体135の前端部にはミラーハーネス側部分92Aを差し込んで連結する開口部135aが形成されている。
【0025】
電線107〜109の先端に装着された端子金具112〜114は、装着空間137〜139の後端開口部137a〜139aから差し込まれて装着空間137〜139にそれぞれ収容される。装着空間137〜139内にはストッパ(図示せず)がそれぞれ形成され、端子金具112〜114の中間部が該ストッパに当接して端子金具112〜114の差し込みが係止される。装着空間137〜139の内周面には抜け止め片(図示せず)がそれぞれ形成されている。端子金具112〜114を装着空間137〜139に差し込むと、各装着空間137〜139内の抜け止め片が端子金具112〜114の所定位置に係合し、これにより端子金具112〜114が装着空間137〜139から抜け出るのが防止される。端子金具112〜114を装着空間137〜139に収容した状態では、筐体135内で端子金具112〜114の突出ピン112a〜114aは装着空間137〜139から突出している。
【0026】
図6の連結前の状態からミラーハーネス側部分92Aの筐体119を車体ハーネス側部分92Bの筐体135の開口部135a内に差し込むと、端子金具112,113,114の突出ピン112a,113a,114aは筐体119の前面板119aに形成された差し込み穴121b,123b,124bから端子金具88,90,91の差し込み空間88a,90a,91aに差し込まれる。これにより図7に示すように端子金具88,112どうし、端子金具90,113どうし、端子金具91,114どうしが相互に接続される。また端子金具89,90どうしは端子金具89のバネ接片89bの接触により相互に短絡しているので、端子金具89,90,113どうしが相互に接続される。車体ハーネス側部分92Bに対するミラーハーネス側部分92Aの差し込みは、ミラーハーネス側部分92Aの筐体119の前面板119aが車体ハーネス側部分92Bの筐体135の開口部135a内の底面135bに当接して係止される。この係止された位置では、筐体119,135の一方に形成された爪部と他方に形成された爪係合部等による周知の係合構造(図示せず)が係合状態となり、ミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとの連結状態が保持される。この係合構造の係合状態を手動操作で解除してミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとを引き離すことにより、ミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとの連結を外すことができる。
【0027】
ここで同一型式のアクチュエータを左右ミラー間および異なる車種間で共用する場合の、2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子(図1のミラースイッチ回路46の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)の接続設定の具体例を説明する。この接続設定は、車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aの装着空間121〜124に対するミラーハーネス64の端子金具88〜91の差し込み位置の選択によって行うことができる。
【0028】
はじめに、ある車種におけるアクチュエータの配置姿勢を図8に示す。右ミラーと左ミラーは同一型式のアクチュエータ58−1,58−2を使用している。アクチュエータ58−1,58−2は周知のものを使用することができる。アクチュエータ58−1,58−2内には2個のモータM1,M2(図1のモータ60,62に相当)とウォームギヤ等による伝達機構59,61が内蔵され、モータM1,M2の駆動によりミラー板を直交する2軸の周り方向に傾動させる。左ミラーのアクチュエータ58−2は右ミラーのアクチュエータ58−1の配置姿勢に対して右回り方向に90°回転させた配置姿勢に設定する。90°回転させて使用することにより、右ミラーを上・下方向に変位させるときの動作は左ミラーを右・左方向に変位させるときの動作と等しくなり、右ミラーを右・左方向に変位させるときの動作は左ミラーを上・下方向に変位させるときの動作と等しくなる。鏡面角度調整操作子の操作方向に応じて該当する動作が実現されるように端子の接続設定を行う。
【0029】
いまモータM1の端子をa,b、モータM2の端子をc,dとする。左右ミラーにおけるモータM1,M2の4端子a,b,c,dとミラースイッチ回路の3端子(垂直端子、水平端子、共通端子)との接続設定を図9に示す。またこのときのミラースイッチ回路内における電源側の2端子(図1の12V端子101、GND端子102)と、アクチュエータ側の3端子(図1の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)との接続設定を図10に示す。図9と図10の接続設定によれば、左右ミラーごとに、鏡面角度調整操作子の操作方向に応じた方向に鏡面角度を変位させて鏡面角度調整を行うことができる。
【0030】
次に、別の車種における端子の接続設定を説明する。左右ミラーにおけるアクチュエータ58−1,58−2の配置姿勢は図8と同じである。左右ミラーにおけるモータM1,M2の4端子a,b,c,dとミラースイッチ回路の3端子(垂直端子、水平端子、共通端子)との接続設定を図11に示す。またこのときのミラースイッチ回路内における電源側の2端子(図1の12V端子101、GND端子102)と、アクチュエータ側の3端子(図1の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)との接続設定を図12に示す。図11と図12の接続設定によれば、左右ミラーごとに、鏡面角度調整操作子の操作方向に応じた方向に鏡面角度を変位させて鏡面角度調整を行うことができる。
【0031】
図1の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法の手順の一例を説明する。
(1)ミラーハーネス64の一端にアクチュエータコネクタ78を装着する。このときミラーハーネス64の他端に車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aは未装着である。したがってアクチュエータ58およびミラーハーネス64を左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、リモコンミラーに組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要はない。
(2)ミラーハーネス64の他端をミラーベース52に対するミラーハウジング54の回動軸を構成する中空シャフト55に通す。
(3)アクチュエータコネクタ78をアクチュエータ58に装着する。
(4)アクチュエータ58をミラーハウジング54に直接またはフレーム部を介して装着する。
(5)ミラーハーネス64の他端に車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを装着する。すなわち車種および左右ミラーに応じて、ミラーハーネス64の電線66〜69の端子金具88〜91を車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aの装着空間121〜124の適宜の位置に装着する。
(6)リモコンミラーを組み立て後の動作確認で端子金具88〜91の装着空間121〜124に対する装着位置に誤りがあることが判明した場合は、端子金具88〜91のうち装着位置に誤りがあるものを装着空間から引き抜いて正しい装着空間に装着し直して、装着位置を修正する。
【0032】
なおこの発明で使用する車体内コネクタの短絡構造は前記実施の形態で示したものに限らず、様々な構造に設定することができる。またミラーハーネスは鏡面角度調整アクチュエータ用電線のほか、ミラー電動格納用電線、ミラーヒータ用電線、ミラー内蔵ランプ用電線、ミラー内蔵カメラ用電線等のミラー装置から引き出される各種電線をまとめて束ねたものとして構成することができ、車体内コネクタはこれら各種電線をまとめて車体ハーネスの各電線に接続するものとして構成することができる。
【符号の説明】
【0033】
44…鏡面角度調整操作子、46…ミラースイッチ回路、48…ドアミラー(車両用リモコンミラー)、50…車体、52…ミラーベース、54…ミラーハウジング、55…中空シャフト、58…鏡面角度調整用アクチュエータ(アクチュエータ)、60,62…直流モータ、64…ミラーハーネス、66,67,68,69…ミラーハーネスの電線、80,81,82,83…モータの端子、86…車体内、88,89,90,91…ミラーハーネスの端子金具、88b,89b,90b,91b…バネ接片、92…車体内コネクタ、92A…車体内コネクタのミラーハーネス側部分、92B…車体内コネクタの車体ハーネス側部分、106…車体ハーネス、107,109…車体ハーネスの第2、第3電線、108…車体ハーネスの第1電線、112,113,114…車体ハーネスの端子金具、121,122,123,124…装着空間、127,128,129…壁面、128a…壁面の切欠。
【技術分野】
【0001】
この発明は鏡面角度を電動調整する車両用のリモコンミラーにおいて鏡面角度調整用アクチュエータ(以下「アクチュエータ」という)のモータに駆動電力を供給する駆動装置に関し、ミラーハーネスの途中に2個のモータの端子どうしを短絡するスプライス部を不要にしつつ、ミラー装置の外部に短絡箇所を配置できるようにしたものである。またこの発明はこの駆動装置を備えたリモコンミラーの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リモコンミラーのアクチュエータは鏡面の垂直方向角度を調整するモータと水平方向角度を調整するモータを備えている。これら2個のモータに駆動用電力を供給する給電路は、2個のモータの各一方の端子に個別に接続される2本の電線と、2個のモータの各他方の端子に共通に接続されて該他方の端子どうしを短絡する1本の電線の合計3本の電線を具え、これら3本の電線を車体側に敷設された3本の電線とコネクタを介して相互に接続して構成される(下記特許文献1の図8参照)。
【0003】
2個のモータの他方の端子に1本の電線を共通に接続する構造として下記特許文献1の図10に記載されたものがあった。その構造を図13に示す。図13(A)は右ドアミラーを示す。ドアミラー10のハウジング11にはアクチュエータ12が内蔵されている。アクチュエータ12には2個のモータ14,16が内蔵されている。モータ14,16の一方の端子には2本の長い電線18,20が接続されている。モータ14,16の他方の端子には2本の短い電線22,24が接続されている。電線22,24の端部は接続点Pにおいて、別途用意された1本の電線26に共通に接続されている。このようにして3本の電線18,20,26にまとめられて束ねられたミラーハーネス28はドアミラー10のミラーベース30を介して車体側に導かれる。車体側の運転席の近傍には運転者が鏡面角度を遠隔操作するための鏡面角度調整操作子32が配設されている。鏡面角度調整操作子32からは3本の電線34,38,36を束ねた車体ハーネス40が引き出されている。ミラーハーネス28と車体ハーネス40はコネクタ42を介して相互に接続され、これにより両ハーネス28,40の電線18,34どうし、電線20,36どうし、電線26,38どうしがそれぞれ接続される。
【0004】
リモコンミラーは同一型式のアクチュエータを使用する場合であっても、左右ミラーの違いによってあるいは車種の違いによって、モータの短絡させる端子が異なる場合がある。例えば特許文献1に記載の前記図13のドアミラーにおいては、(A)の右ミラーは電線22,24どうしを接続点Pにおいて電線26に共通に接続しているが、(B)の左ミラーは電線22,20どうしを接続点Qにおいて電線26に共通に接続している。接続点P,Qにおける電線どうしの接続は一般にスプライス(圧着端子)を用いて行われる。すなわち相互に接続する3本の電線の先端部の被覆を剥いて導線を露出させ、該露出した導線どうしを1個のスプライスで圧着して相互に繋ぎ合わせ、次いで該繋ぎ合わせた部分をビニールテープで被覆してスプライス部を構成している。
【0005】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を構成する作業は手作業で行われるため生産性が悪かった。ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしたリモコンミラーとして特許文献1の図1に記載されたものがあった(以下カッコ内は特許文献1に記された符号を示す)。これはミラーハーネスをアクチュエータ(18)に接続するためにミラーハーネスのアクチュエータ側の端部に装着するアクチュエータコネクタ(36)内に、モータ(20,22)の端子を短絡させる構造を配置したものである。すなわちアクチュエータコネクタ(36)内に収容して2本の電線どうしを短絡する2種類の導体(64,66)を用意して、これら導体(64,66)のいずれをアクチュエータコネクタ(36)内に収容するかでモータ(20,22)の短絡する端子を切り換えるようにしている。
【0006】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にした別のリモコンミラーとして特許文献2に記載されたリモコンミラーがあった(以下カッコ内は特許文献2に記された符号を示す)。これはアクチュエータ(5)内にコネクタ(36)を収容したものである。コネクタ(36)は3個の電源側端子(37,38,39)と該3個の電源側端子(37,38,39)の個別の1個にそれぞれに導通した3個のモータ側端子(40,41,42)を具えている。2個のモータ(M1,M2)の一方の端子(44,52)は個別の電線(45,53)を介してコネクタ(36)の個別のモータ側端子(40,42)に接続され、2個のモータ(M1,M2)の他方の端子(47,50)は個別の電線(48,51)を介してコネクタ(36)の残りの1個のモータ側端子(41)に共通に接続されている。コネクタ(36)の3個の電源側端子(37,38,39)はアクチュエータ(5)のケース(15)の外部に露出している。ミラーハーネス(61)は3本の電線を束ねて構成され、これら3本の電線の先端部は1個のカプラー(60)に接続されている。このカプラー(60)をアクチュエータ(5)のケース(15)の外部に露出しているコネクタ(36)の電源側端子(37,38,39)に接続することにより、ミラーハーネス(61)の3本の電線はコネクタ(36)の3個の電源側端子(37,38,39)の個別の1個にそれぞれ導通する。ミラーハーネス(61)の他端側はドアミラーのミラーベース(1)を介して車体側に導かれる。
【0007】
ミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしたさらに別のリモコンミラーとして特許文献3に記載されたリモコンミラーがあった(以下カッコ内は特許文献3に記された符号を示す)。これはアクチュエータ(A)内にアダプタ(20)を収容したものである。アダプタ(20)は3個の電源側端子(メス端子)(23a,23b,23c)と4個のモータ側端子(メス端子)(22a,22b,22c,22d)を具えている。アダプタ(20)内には2個の電源側端子(23a,23c)と2個のモータ側端子(22a,22c)を個別に接続する導電体(24a,24c)と、残りの1個の電源側端子(23b)と残りの2個のモータ側端子(22b、22d)を共通に接続する導電体(24b,24e)が収容されている。アダプタ(20)はその4個のモータ側端子(22a,22b,22c,22d)に2個のモータ(10A,10B)の全4個の端子(オス端子)(13Aa,13Ab,13Ba,13Bb)を個別に差し込んで該2個のモータ(10A,10B)に取付支持される。一方、ミラーハーネス(30)は3本の電線(31a,31b,31c)を束ねて構成され、これら3本の電線(31a,31b,31c)の端部には個別の端子(オス端子)(33a,33b,33c)が接続されている。これら3個の端子(33a,33b,33c)は1個のコネクタ(32)に装着されている。コネクタ(32)はその3個の端子(33a,33b,33c)をアダプタ(20)の3個の電源側端子(23a,23b,23c)に差し込んで該アダプタ(20)に取付支持され、これによりミラーハーネス(30)の3本の電線(31a,31b,31c)はアダプタ(20)の3個の電源側端子(23a,23b,23c)の個別の1個にそれぞれ導通する。ミラーハーネス(30)はドアミラーのミラーベースを介して車体側に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−66892号公報(図1、図8、図10)
【特許文献2】実開平6−3738号公報(図1、図7、図8)
【特許文献3】特開2006−88788号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1の図1、特許文献2,3に記載のリモコンミラーはミラーハーネスの途中にスプライス部を不要にしているが、いずれも短絡箇所がミラー装置内にある。このためアクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込む前に短絡構造を完成させておく必要がある。これによると、前述のように同一型式のアクチュエータを使用する場合であっても左右ミラーの違いや車種の違いによってモータの短絡させる端子が異なるので、短絡させる端子を誤ったままミラー装置に組み込んでしまい、その後の動作確認テストでその誤りが判明した場合には、ミラー装置を分解して短絡構造を修正したうえで組み立てをやり直さなければならず、修正作業が面倒であった。またアクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合であっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要があり、管理が面倒であった。
【0010】
この発明は上述の問題点に着目してなされたもので、ミラーハーネスの途中に2個のモータの端子どうしを短絡するスプライス部を不要にしつつ、ミラー装置の外部に短絡箇所を配置できるようにしたリモコンミラーの駆動装置を提供しようとするものである。またこの発明はこの駆動装置を備えたリモコンミラーの組み立て方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のリモコンミラーの駆動装置は、2個の直流モータを内蔵して鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整する鏡面角度調整用アクチュエータを具えた車両用リモコンミラーの前記2個のモータに駆動電力を供給する装置において、前記2個のモータの4個の端子に個別に接続された4本の電線を有し、前記リモコンミラーのミラーハウジング内からミラーベースを通って車体内に敷設されたミラーハーネスと、第1電線、第2電線、第3電線の3本の電線を有し、車体内に敷設された車体ハーネスと、前記車体ハーネスの3本の電線の電源側端部がそれぞれ接続され、使用者による鏡面角度調整操作子の鏡面角度調整操作に応じて、該3本の電線のうちの第1電線と第2電線間または第1電線と第3電線間に選択的にかつ極性を可逆的に切り換えてモータ駆動電圧を印加する、車体内に配設されたミラースイッチ回路と、前記ミラーハーネスの4本の電線と前記車体ハーネスの3本の電線とを相互に接続するコネクタであって、前記ミラーハーネスの4本の電線の端子金具を装着するミラーハーネス側部分と前記車体ハーネスの3本の電線の端子金具を装着する車体ハーネス側部分を有し、該ミラーハーネス側部分と該車体ハーネス側部分を相互に連結した状態で、前記ミラーハーネスの4本の電線の4個の端子金具のうち2個を前記車体ハーネスの第1電線の端子金具に共通に接続し、残りの2個を前記車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する導電路を構成する車体内コネクタとを具備してなるものである。
【0012】
この駆動装置によれば、車体内コネクタのミラーハーネス側部分と車体ハーネス側部分との連結により短絡構造を構成するので、ミラーハーネスの途中にスプライス部が不要である。またミラー装置の外部に短絡箇所を配置することができる。これによれば、アクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込んだ後にミラー装置の外側で短絡構造を設定することができるので、アクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要がなくなり、管理が容易となる。またミラー装置を組み立てた後の動作確認で短絡させる端子に誤りがあることが判明しても、ミラー装置を分解せずに車体内コネクタの部分で短絡構造を修正することができるので、修正作業が容易になる。
【0013】
この発明のリモコンミラーの組み立て方法は、この発明の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法であって、前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分が未装着の前記ミラーハーネスを前記ミラーベースに対する前記ミラーハウジングの回動軸を構成する中空シャフトに通し、該ミラーハーネスの該ミラーハウジング側の端部を前記鏡面角度調整用アクチュエータに連結し該鏡面角度調整用アクチュエータを該ミラーハウジング内に装着する第1工程と、前記第1工程の後に前記ミラーハーネスの車体内側の端部を前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分に装着して前記車体ハーネスの第1電線に共通に接続する2本の電線と、該車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する2本の電線の設定を行う第2工程とを具備してなるものである。この組み立て方法によれば、アクチュエータおよびミラーハーネスをミラー装置に組み込んだ後にミラー装置の外側で短絡構造を設定することができるので、アクチュエータおよびミラーハーネスを左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、ミラー装置に組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要がなくなり、管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のリモコンミラーの駆動装置の実施の形態を示す回路図で、左ミラー側部分について示したものである。
【図2】図1の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aの構成例を示す分解斜視図である。
【図3】図2の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視端面図である。
【図5】図3の車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B矢視端面図である。
【図6】図1の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aおよび車体ハーネス側部分92Bの構成例を示す図で(ミラーハーネス側部分92Aは図2〜図5で示したものと同じ)、図5(a)のB−B矢視位置に相当する位置で切断した端面図であり、両部分92A,92Bを相互に連結する前の状態で示した図である。
【図7】図6の車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bを相互に連結した状態を示す図で、図6と同じ位置で切断した端面図である。
【図8】左右ミラーに同一型式のアクチュエータを使用する場合の、ある車種における左右ミラーのアクチュエータの配置姿勢を示す正面図である。
【図9】図8の左右ミラーにおける2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子との接続設定を示す図表である。
【図10】モータとミラースイッチ間の接続を図9に示す状態に設定する場合のミラースイッチ回路内における電源側の2端子とアクチュエータ側の3端子との接続設定を示す図表である(線で結んだ端子どうしが接続されることを意味する)。
【図11】図8のアクチュエータを別の車種の左右ミラーに使用する場合の、左右ミラーにおける2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子との接続設定を示す図表である。
【図12】モータとミラースイッチ間の接続を図11に示す状態に設定する場合のミラースイッチ回路内における電源側の2端子とアクチュエータ側の3端子との接続設定を示す図表である(線で結んだ端子どうしが接続されることを意味する)。
【図13】特許文献1に記載のリモコンミラーの駆動装置の回路図で、(A)は右ミラーの回路図、(B)は左ミラーの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下この発明の実施の形態を説明する。図1はこの発明を適用したリモコンミラーの左ミラー側部分について示したものである。右ミラー側部分も鏡面角度調整操作子44およびミラースイッチ回路46を左ミラー側部分と共用して左ミラー側部分と同様に構成される。左ドアミラー48は、車体(左側ドア)50の外側面にミラーベース52を固定し、ミラーベース52にミラーハウジング54を格納位置(非使用位置)と復帰位置(使用位置)に変位可能に支持して構成される。ミラーハウジング54内にはミラー板56を支持してミラー板56の鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整するアクチュエータ58が収容配置されている。アクチュエータ58は2個の直流モータ60,62を内蔵している。モータ60は伝達機構(図示せず)を介してミラー板56の垂直方向の鏡面角度を調整し、モータ62は伝達機構(図示せず)を介してミラー板56の水平方向の鏡面角度を調整する。
【0016】
ミラーハーネス64を構成する4本の給電用被覆電線(以下「電線」という)66,67,68,69のドアミラー側端部には圧着端子等の端子金具72,73,74,75がそれぞれ装着されている。これら端子金具72〜75はアクチュエータコネクタ78に装着されている。アクチュエータ58にはその筐体の外側からアクチュエータコネクタ78が着脱可能に装着される。これにより電線66,67の端子金具72,73はモータ60の端子80,81にそれぞれ接続され、電線68,69の端子金具74,75はモータ62の端子82,83にそれぞれ接続される。
【0017】
ミラーハーネス64はミラーハウジング54内から、ミラーベース52に対するミラーハウジング54の回動軸を構成する中空シャフト55の中を通り、さらにミラーベース52を通って車体内86に敷設される。ミラーハーネス64を構成する電線66,67,68,69の車体側端部には圧着端子等の同一構造の端子金具88,89,90,91がそれぞれ装着されている。これら端子金具88〜91は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aに着脱可能に装着されている。車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aには端子金具88〜91を収容して装着する4箇所の装着空間が形成されている。端子金具88〜91はこれら4箇所の装着空間の適宜の空間に収容して装着される。4箇所の装着空間のうち2箇所の装着空間は、該2箇所の装着空間に収容した2個の端子金具どうしを相互に短絡させる構造を有する。
【0018】
車体内86には鏡面角度調整操作子44とミラースイッチ回路46が設置されている。鏡面角度調整操作子44は運転者が鏡面角度を調整するときに操作される。鏡面角度調整操作子44では左右ミラーごとに鏡面角度を垂直方向に変位させる指示操作と鏡面角度を水平方向に変位させる指示操作を行うことができる。ミラースイッチ回路46は鏡面角度調整操作子44の操作に応じて左右ミラーの各アクチュエータの2個のモータに対して駆動電力を供給して、鏡面角度を指示された方向に変位させる働きをする。ミラースイッチ回路46は、12Vバッテリ100の正電極に接続されている12V端子101、12Vバッテリ100の負電極に接続されているGND端子102と、左ドアミラー48のアクチュエータ58に電力を供給する端子として垂直方向鏡面角度調整用モータ60の一方の端子に専用に接続される垂直端子103、水平方向鏡面角度調整用モータ62の一方の端子に専用に接続される水平端子105、両モータ60,62の各他方の端子に共通に接続される共通端子104を具えている。
【0019】
ミラースイッチ回路46は、鏡面角度調整操作子44により垂直方向の鏡面角度調整が指示されたときは、その移動方向(上方向または下方向)に応じて垂直端子103を12V端子101またはGND端子102に接続し、共通端子104をGND端子102または12V端子101に接続して、モータ60を正転方向または逆転方向に駆動して、鏡面角度を指示された方向に変位させる。このとき水平端子105は12V端子101、GND端子102のいずれにも接続されず開放状態となる。またミラースイッチ回路46は、鏡面角度調整操作子44により水平方向の鏡面角度調整が指示されたときは、その移動方向(左方向または右方向)に応じて水平端子105を12V端子101またはGND端子102に接続し、共通端子104をGND端子102または12V端子101に接続して、モータ62を正転方向または逆転方向に駆動して、鏡面角度を指示された方向に変位させる。このとき垂直端子103は12V端子101、GND端子102のいずれにも接続されず開放状態となる。またミラースイッチ回路46は鏡面角度調整操作子44が操作されていないときは垂直端子103、水平端子105、共通端子104を12V端子101、GND端子102のいずれにも接続せず、いずれも開放状態とする。
【0020】
ミラースイッチ回路46の垂直端子103、水平端子105、共通端子104からは車体ハーネス106を構成する3本の電線107,108,109が引き出されている。電線107〜109の先端部には圧着端子等の端子金具112,113,114がそれぞれ装着されている。これら端子金具112〜114は車体内コネクタ92の車体ハーネス側部分92Bに装着されている。車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bは着脱可能に連結される。両コネクタ部分92A,92Bが連結されると、端子金具88,107どうし、端子金具89,90,113どうし、端子91,114どうしがそれぞれ連結され、これにより電線66,107どうし、電線67,68,108どうし、電線69,109どうしがそれぞれ連結される。
【0021】
車体内コネクタ92の構成例を図2〜図7を参照して説明する。図2は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aを示す。ミラーハーネス64を構成する電線66〜69の車体側端部には圧着端子による端子金具88〜91がそれぞれ装着されている。端子金具88〜91は差し込み空間88a〜91a(図5(b))を有する同一構造のメス端子で構成されている。端子金具88〜91の同じ側の側面の一部は切り欠かれて片持ち状に支持されたバネ接片88b,89b,90b,91b(図5(b))が形成されている。車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aは樹脂製の筐体119を具えている。筐体119内には4個の装着空間121,122,123,124が平行に等間隔に並べて形成されている。装着空間121〜124の軸方向の前端部および後端部はそれぞれ開口されている。装着空間121〜124の相互間は壁面127〜129によって仕切られている。壁面128には端子金具89,90どうしを短絡させる切欠128aが形成されている。
【0022】
電線66〜69の先端に装着された端子金具88〜91は、装着空間121〜124の後端開口部121a〜124aから差し込まれて装着空間121〜124にそれぞれ収容される。端子金具88〜91の差し込みは、図4(b)、図5(b)に示すように端子金具88〜91の前端面が筐体119の前面板119aの裏面に当接して係止される。前面板119aには端子金具88〜91の差し込み空間88a〜91aにそれぞれ連通する差し込み穴121b〜124bが形成されている。装着空間121〜124の内周面には図4(b)に示すように、片持ち状に支持された抜け止め片131がそれぞれ形成されている。端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容すると、各装着空間121〜124内の抜け止め片131が端子金具88〜91の後端面角部133にそれぞれ当接する。これにより端子金具88〜91が装着空間121〜124から抜け出るのが防止される。端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容して装着した状態で、装着空間121〜124の後端開口部121a〜124aから細棒状の金具を差し込んで抜け止め片131を退避させることにより、抜け止め片131と端子金具88〜91との係合が外れて、端子金具88〜91を装着空間121〜124から個別に抜き出すことができる。装着空間121〜124に対する端子金具88〜91の装着位置を適宜入れ替えることにより、左右ミラーの違いあるいは車種の違いに対応させることができる。
【0023】
図5(b)に示すように、端子金具88〜91を装着空間121〜124に収容した状態では、端子金具89のバネ接片89bが壁面128の切欠128aを通して隣接する端子金具90の側面に当接して端子金具89,90どうしが短絡する。端子金具88,90のバネ接片88b,90bは切欠のない壁面128,129に当接するので、ほかの端子金具には接触しない。端の端子金具91のバネ接片91bも筐体119の内壁面に当接してほかの端子金具には接触しない。
【0024】
図6は車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bを連結前の状態で示したものである。車体ハーネス106を構成する電線107〜109の端部には圧着端子による端子金具112〜114がそれぞれ装着されている。端子金具112〜114は突出ピン112a〜114aを有する同一構造のオス端子で構成されている。車体内コネクタ車体ハーネス側部分92Bは樹脂製の筐体135を具えている。筐体135内は仕切られて3個の装着空間137,138,139が平行に並べて形成されている。装着空間137,138,139はミラーハーネス側部分92Aの装着空間121,122,124にそれぞれ対面する。装着空間137〜139の軸方向の前端部および後端部はそれぞれ開口されている。筐体135の前端部にはミラーハーネス側部分92Aを差し込んで連結する開口部135aが形成されている。
【0025】
電線107〜109の先端に装着された端子金具112〜114は、装着空間137〜139の後端開口部137a〜139aから差し込まれて装着空間137〜139にそれぞれ収容される。装着空間137〜139内にはストッパ(図示せず)がそれぞれ形成され、端子金具112〜114の中間部が該ストッパに当接して端子金具112〜114の差し込みが係止される。装着空間137〜139の内周面には抜け止め片(図示せず)がそれぞれ形成されている。端子金具112〜114を装着空間137〜139に差し込むと、各装着空間137〜139内の抜け止め片が端子金具112〜114の所定位置に係合し、これにより端子金具112〜114が装着空間137〜139から抜け出るのが防止される。端子金具112〜114を装着空間137〜139に収容した状態では、筐体135内で端子金具112〜114の突出ピン112a〜114aは装着空間137〜139から突出している。
【0026】
図6の連結前の状態からミラーハーネス側部分92Aの筐体119を車体ハーネス側部分92Bの筐体135の開口部135a内に差し込むと、端子金具112,113,114の突出ピン112a,113a,114aは筐体119の前面板119aに形成された差し込み穴121b,123b,124bから端子金具88,90,91の差し込み空間88a,90a,91aに差し込まれる。これにより図7に示すように端子金具88,112どうし、端子金具90,113どうし、端子金具91,114どうしが相互に接続される。また端子金具89,90どうしは端子金具89のバネ接片89bの接触により相互に短絡しているので、端子金具89,90,113どうしが相互に接続される。車体ハーネス側部分92Bに対するミラーハーネス側部分92Aの差し込みは、ミラーハーネス側部分92Aの筐体119の前面板119aが車体ハーネス側部分92Bの筐体135の開口部135a内の底面135bに当接して係止される。この係止された位置では、筐体119,135の一方に形成された爪部と他方に形成された爪係合部等による周知の係合構造(図示せず)が係合状態となり、ミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとの連結状態が保持される。この係合構造の係合状態を手動操作で解除してミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとを引き離すことにより、ミラーハーネス側部分92Aと車体ハーネス側部分92Bとの連結を外すことができる。
【0027】
ここで同一型式のアクチュエータを左右ミラー間および異なる車種間で共用する場合の、2個のモータの4端子とミラースイッチ回路の3端子(図1のミラースイッチ回路46の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)の接続設定の具体例を説明する。この接続設定は、車体内コネクタ92のミラーハーネス側部分92Aの装着空間121〜124に対するミラーハーネス64の端子金具88〜91の差し込み位置の選択によって行うことができる。
【0028】
はじめに、ある車種におけるアクチュエータの配置姿勢を図8に示す。右ミラーと左ミラーは同一型式のアクチュエータ58−1,58−2を使用している。アクチュエータ58−1,58−2は周知のものを使用することができる。アクチュエータ58−1,58−2内には2個のモータM1,M2(図1のモータ60,62に相当)とウォームギヤ等による伝達機構59,61が内蔵され、モータM1,M2の駆動によりミラー板を直交する2軸の周り方向に傾動させる。左ミラーのアクチュエータ58−2は右ミラーのアクチュエータ58−1の配置姿勢に対して右回り方向に90°回転させた配置姿勢に設定する。90°回転させて使用することにより、右ミラーを上・下方向に変位させるときの動作は左ミラーを右・左方向に変位させるときの動作と等しくなり、右ミラーを右・左方向に変位させるときの動作は左ミラーを上・下方向に変位させるときの動作と等しくなる。鏡面角度調整操作子の操作方向に応じて該当する動作が実現されるように端子の接続設定を行う。
【0029】
いまモータM1の端子をa,b、モータM2の端子をc,dとする。左右ミラーにおけるモータM1,M2の4端子a,b,c,dとミラースイッチ回路の3端子(垂直端子、水平端子、共通端子)との接続設定を図9に示す。またこのときのミラースイッチ回路内における電源側の2端子(図1の12V端子101、GND端子102)と、アクチュエータ側の3端子(図1の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)との接続設定を図10に示す。図9と図10の接続設定によれば、左右ミラーごとに、鏡面角度調整操作子の操作方向に応じた方向に鏡面角度を変位させて鏡面角度調整を行うことができる。
【0030】
次に、別の車種における端子の接続設定を説明する。左右ミラーにおけるアクチュエータ58−1,58−2の配置姿勢は図8と同じである。左右ミラーにおけるモータM1,M2の4端子a,b,c,dとミラースイッチ回路の3端子(垂直端子、水平端子、共通端子)との接続設定を図11に示す。またこのときのミラースイッチ回路内における電源側の2端子(図1の12V端子101、GND端子102)と、アクチュエータ側の3端子(図1の垂直端子103、水平端子105、共通端子104)との接続設定を図12に示す。図11と図12の接続設定によれば、左右ミラーごとに、鏡面角度調整操作子の操作方向に応じた方向に鏡面角度を変位させて鏡面角度調整を行うことができる。
【0031】
図1の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法の手順の一例を説明する。
(1)ミラーハーネス64の一端にアクチュエータコネクタ78を装着する。このときミラーハーネス64の他端に車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aは未装着である。したがってアクチュエータ58およびミラーハーネス64を左右ミラー間あるいは異なる車種間で共通にする場合には、左右ミラー間あるいは異なる車種間で短絡構造が異なっても、リモコンミラーに組み込む前に左右ミラーごとあるいは車種ごとに短絡構造を完成させたアクチュエータとミラーハーネスの組合せを用意して分類して管理しておく必要はない。
(2)ミラーハーネス64の他端をミラーベース52に対するミラーハウジング54の回動軸を構成する中空シャフト55に通す。
(3)アクチュエータコネクタ78をアクチュエータ58に装着する。
(4)アクチュエータ58をミラーハウジング54に直接またはフレーム部を介して装着する。
(5)ミラーハーネス64の他端に車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aを装着する。すなわち車種および左右ミラーに応じて、ミラーハーネス64の電線66〜69の端子金具88〜91を車体内コネクタミラーハーネス側部分92Aの装着空間121〜124の適宜の位置に装着する。
(6)リモコンミラーを組み立て後の動作確認で端子金具88〜91の装着空間121〜124に対する装着位置に誤りがあることが判明した場合は、端子金具88〜91のうち装着位置に誤りがあるものを装着空間から引き抜いて正しい装着空間に装着し直して、装着位置を修正する。
【0032】
なおこの発明で使用する車体内コネクタの短絡構造は前記実施の形態で示したものに限らず、様々な構造に設定することができる。またミラーハーネスは鏡面角度調整アクチュエータ用電線のほか、ミラー電動格納用電線、ミラーヒータ用電線、ミラー内蔵ランプ用電線、ミラー内蔵カメラ用電線等のミラー装置から引き出される各種電線をまとめて束ねたものとして構成することができ、車体内コネクタはこれら各種電線をまとめて車体ハーネスの各電線に接続するものとして構成することができる。
【符号の説明】
【0033】
44…鏡面角度調整操作子、46…ミラースイッチ回路、48…ドアミラー(車両用リモコンミラー)、50…車体、52…ミラーベース、54…ミラーハウジング、55…中空シャフト、58…鏡面角度調整用アクチュエータ(アクチュエータ)、60,62…直流モータ、64…ミラーハーネス、66,67,68,69…ミラーハーネスの電線、80,81,82,83…モータの端子、86…車体内、88,89,90,91…ミラーハーネスの端子金具、88b,89b,90b,91b…バネ接片、92…車体内コネクタ、92A…車体内コネクタのミラーハーネス側部分、92B…車体内コネクタの車体ハーネス側部分、106…車体ハーネス、107,109…車体ハーネスの第2、第3電線、108…車体ハーネスの第1電線、112,113,114…車体ハーネスの端子金具、121,122,123,124…装着空間、127,128,129…壁面、128a…壁面の切欠。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の直流モータを内蔵して鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整する鏡面角度調整用アクチュエータを具えた車両用リモコンミラーの前記2個のモータに駆動電力を供給する装置において、
前記2個のモータの4個の端子に個別に接続された4本の電線を有し、前記リモコンミラーのミラーハウジング内からミラーベースを通って車体内に敷設されたミラーハーネスと、
第1電線、第2電線、第3電線の3本の電線を有し、車体内に敷設された車体ハーネスと、
前記車体ハーネスの3本の電線の電源側端部がそれぞれ接続され、使用者による鏡面角度調整操作子の鏡面角度調整操作に応じて、該3本の電線のうちの第1電線と第2電線間または第1電線と第3電線間に選択的にかつ極性を可逆的に切り換えてモータ駆動電圧を印加する、車体内に配設されたミラースイッチ回路と、
前記ミラーハーネスの4本の電線と前記車体ハーネスの3本の電線とを相互に接続するコネクタであって、前記ミラーハーネスの4本の電線の端子金具を装着するミラーハーネス側部分と前記車体ハーネスの3本の電線の端子金具を装着する車体ハーネス側部分を有し、該ミラーハーネス側部分と該車体ハーネス側部分を相互に連結した状態で、前記ミラーハーネスの4本の電線の4個の端子金具のうち2個を前記車体ハーネスの第1電線の端子金具に共通に接続し、残りの2個を前記車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する導電路を構成する車体内コネクタと
を具備してなるリモコンミラーの駆動装置。
【請求項2】
前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分は前記ミラーハーネスの前記4個の端子金具を装着位置を相互に入れ替え可能に装着する装着空間を有し、該装着空間のうち特定の2箇所の位置に装着した端子金具どうしを相互に短絡させる構造を有する請求項1記載のリモコンミラーの駆動装置。
【請求項3】
前記4個の端子金具は側面にバネ接片を有し、前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分は該4個の端子金具を装着する装着空間を仕切る壁面を有し、該壁面のうち特定の1つの壁面は切欠が形成され、前記バネ接片がこの切欠を通して隣接する端子金具に接触することにより該隣接する端子金具どうしを相互に短絡させる請求項2記載のリモコンミラーの駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法であって、
前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分が未装着の前記ミラーハーネスを前記ミラーベースに対する前記ミラーハウジングの回動軸を構成する中空シャフトに通し、該ミラーハーネスの該ミラーハウジング側の端部を前記鏡面角度調整用アクチュエータに連結し該鏡面角度調整用アクチュエータを該ミラーハウジング内に装着する第1工程と、
前記第1工程の後に前記ミラーハーネスの車体内側の端部を前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分に装着して前記車体ハーネスの第1電線に共通に接続する2本の電線と、該車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する2本の電線の設定を行う第2工程と
を具備してなるリモコンミラーの組み立て方法。
【請求項1】
2個の直流モータを内蔵して鏡面角度を垂直方向および水平方向に電動調整する鏡面角度調整用アクチュエータを具えた車両用リモコンミラーの前記2個のモータに駆動電力を供給する装置において、
前記2個のモータの4個の端子に個別に接続された4本の電線を有し、前記リモコンミラーのミラーハウジング内からミラーベースを通って車体内に敷設されたミラーハーネスと、
第1電線、第2電線、第3電線の3本の電線を有し、車体内に敷設された車体ハーネスと、
前記車体ハーネスの3本の電線の電源側端部がそれぞれ接続され、使用者による鏡面角度調整操作子の鏡面角度調整操作に応じて、該3本の電線のうちの第1電線と第2電線間または第1電線と第3電線間に選択的にかつ極性を可逆的に切り換えてモータ駆動電圧を印加する、車体内に配設されたミラースイッチ回路と、
前記ミラーハーネスの4本の電線と前記車体ハーネスの3本の電線とを相互に接続するコネクタであって、前記ミラーハーネスの4本の電線の端子金具を装着するミラーハーネス側部分と前記車体ハーネスの3本の電線の端子金具を装着する車体ハーネス側部分を有し、該ミラーハーネス側部分と該車体ハーネス側部分を相互に連結した状態で、前記ミラーハーネスの4本の電線の4個の端子金具のうち2個を前記車体ハーネスの第1電線の端子金具に共通に接続し、残りの2個を前記車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する導電路を構成する車体内コネクタと
を具備してなるリモコンミラーの駆動装置。
【請求項2】
前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分は前記ミラーハーネスの前記4個の端子金具を装着位置を相互に入れ替え可能に装着する装着空間を有し、該装着空間のうち特定の2箇所の位置に装着した端子金具どうしを相互に短絡させる構造を有する請求項1記載のリモコンミラーの駆動装置。
【請求項3】
前記4個の端子金具は側面にバネ接片を有し、前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分は該4個の端子金具を装着する装着空間を仕切る壁面を有し、該壁面のうち特定の1つの壁面は切欠が形成され、前記バネ接片がこの切欠を通して隣接する端子金具に接触することにより該隣接する端子金具どうしを相互に短絡させる請求項2記載のリモコンミラーの駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の駆動装置を具えたリモコンミラーを組み立てる方法であって、
前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分が未装着の前記ミラーハーネスを前記ミラーベースに対する前記ミラーハウジングの回動軸を構成する中空シャフトに通し、該ミラーハーネスの該ミラーハウジング側の端部を前記鏡面角度調整用アクチュエータに連結し該鏡面角度調整用アクチュエータを該ミラーハウジング内に装着する第1工程と、
前記第1工程の後に前記ミラーハーネスの車体内側の端部を前記車体内コネクタの前記ミラーハーネス側部分に装着して前記車体ハーネスの第1電線に共通に接続する2本の電線と、該車体ハーネスの第2電線、第3電線に個別に接続する2本の電線の設定を行う第2工程と
を具備してなるリモコンミラーの組み立て方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−35467(P2013−35467A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174433(P2011−174433)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
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