説明

リモジュリンの活性成分であるトレプロスチニルを製造する改良方法

本発明は、プロスタサイクリン誘導体を製造する改良方法に関する。一つの態様は、ベンゾインデントリオールを、トレプロスチニル(treprostinil)の塩を経由してトレプロスチニルへと変換するおよびトレプロスチニルを精製する改良方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロス・リファレンス
[0001]本出願は、本明細書中にその内容全体がそのまま援用される2007年12月17日出願の米国予備特許出願第61/014,232号から優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、プロスタサイクリン誘導体を製造する方法およびその方法において有用な新規な中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]プロスタサイクリン誘導体は、血小板凝集阻害、胃液分泌減少、病変抑制および気管支拡張などの活性を有する有用な医薬化合物である。
【0004】
[0004]リモジュリン(Remodulin、登録商標)中の活性成分であるトレプロスチニル(treprostinil)は、米国特許第4,306,075号に初めて記載された。トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン誘導体は、Moriarty, et al in J. Org. Chem. 2004, 69, 1890-1902, Drug of the Future, 2001, 26(4), 364-374、米国特許第6,441,245号、同第6,528,688号、同第6,765,117号、同第6,809,223号および同第6,756,117号に記載のように製造された。それらの内容は、本発明の態様を実施する方法を示すために援用される。
【0005】
[0005]米国特許第5,153,222号は、肺高血圧症の処置のためのトレプロスチニルの使用を記載している。トレプロスチニルは、静脈内経路にも皮下経路にも承認されていて、後者は、持続静脈内カテーテルに関連した敗血症性イベントを免れる。米国特許第6,521,212号および同第6,756,033号は、肺高血圧症、末梢血管疾患および他の疾患および状態の処置のための吸入によるトレプロスチニルの投与を記載している。米国特許第6,803,386号は、肺癌、肝癌、脳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌および頭頸部癌などの癌を処置するためのトレプロスチニルの投与を開示している。米国特許出願公開第2005/0165111号は、虚血性病変のトレプロスチニル処置を開示している。米国特許第7,199,157号は、トレプロスチニル処置が、腎機能を改善するということを開示している。米国特許出願公開第2005/0282903号は、ニューロパシー性足潰瘍のトレプロスチニル処置を開示している。2008年2月8日出願の米国出願第12/028,471号は、肺線維症のトレプロスチニル処置を開示している。U.S.6,054,486号は、末梢血管疾患のトレプロスチニルでの処置を開示している。2007年10月17日出願の米国出願第11/873,645号は、トレプロスチニルを含む組合せ療法を開示している。米国公開第2008/0200449号は、定量吸入器を用いたトレプロスチニルの送達を開示している。米国公開第2008/0280986号は、間質性肺疾患のトレプロスチニルでの処置を開示している。2008年2月8日出願の米国出願第12/028,471号は、喘息のトレプロスチニルでの処置を開示している。U.S.7,417,070号、同7,384,978号、および米国公開第2007/0078095号、同第2005/0282901号および同第2008/0249167号は、トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン類似体の経口製剤を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,306,075号
【特許文献2】米国特許第6,441,245号
【特許文献3】米国特許第6,528,688号
【特許文献4】米国特許第6,765,117号
【特許文献5】米国特許第6,809,223号
【特許文献7】米国特許第6,756,117号
【特許文献8】米国特許第5,153,222号
【特許文献9】米国特許第6,521,212号
【特許文献10】米国特許第6,756,033号
【特許文献11】米国特許第6,803,386号
【特許文献12】米国特許出願公開第2005/0165111号
【特許文献13】米国特許第7,199,157号
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0282903号
【特許文献15】米国出願第12/028,471号
【特許文献16】U.S.6,054,486号
【特許文献17】米国出願第11/873,645号
【特許文献18】米国公開第2008/0200449号
【特許文献19】米国公開第2008/0280986号
【特許文献20】U.S.7,417,070号
【特許文献21】U.S.7,384,978号
【特許文献22】米国公開第2007/0078095号
【特許文献23】米国公開第2005/0282901号
【特許文献24】米国公開第2008/0249167号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Moriarty, et al in J. Org. Chem. 2004, 69, 1890-1902, Drug of the Future, 2001, 26(4), 364-374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0006]トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン誘導体は、医薬の観点から極めて重要であるので、これら化合物を、商業生産に適する大規模で合成する有効な方法への要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0007]本発明は、一つの態様において、式I
【0010】
【化1】

【0011】
の化合物、その水和物、溶媒和化合物、プロドラッグまたは薬学的に許容しうる塩の製造方法を提供する。
【0012】
[0008]その方法は、次の工程:
(a)構造IIの化合物をアルキル化剤でアルキル化して、式IIIの化合物を製造すること、
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、w=1、2または3であり;
は、trans−CH=CH−、cis−CH=CH−、−CH(CH−または−C≡C−であり;mは、1、2または3であり;
は、
(1)−C2p−CH(式中、pは、1〜5までの整数である)
(2)フェノキシであって、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであり、Rは、RおよびRが水素またはメチルであって、同じであるまたは異なる場合のみ、フェノキシまたは置換フェノキシであるという条件付きであるもの、
(3)フェニル、ベンジル、フェニルエチルまたはフェニルプロピルであって、芳香環上に、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであるもの、
(4)cis−CH=CH−CH−CH
(5)−(CH−CH(OH)−CH、または
(6)−(CH−CH=C(CHであり;ここにおいて、
−C(L)−Rは一緒に、
(1)(C−C)シクロアルキルであって、1〜3個の(C−C)アルキルで置換されていてもよいもの;
(2)2−(2−フリル)エチル、
(3)2−(3−チエニル)エトキシ、または
(4)3−チエニルオキシメチルであり;
は、α−OH:β−Rまたはα−R:β−OHまたはα−OR:β−Rまたはα−R:β−ORであり、ここにおいて、Rは、水素またはメチルであり、Rは、アルコール保護基であり、そして
は、α−R:β−R、α−R:β−R、またはα−R:β−Rおよびα−R:β−Rの混合物であり、ここにおいて、RおよびRは、水素、メチルまたはフルオロであって、同じであるまたは異なり、但し、RおよびRの一方は、他方が水素またはフルオロである場合のみ、フルオロであるという条件付きである]
(b)工程(a)の式IIIの生成物を塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を塩基Bと接触させて、式I
【0015】
【化3】

【0016】
の塩にすること、
(d)工程(c)の塩を酸と反応させて、式Iの化合物を形成すること
を含む。
【0017】
[0009]本発明は、別の態様において、式IV
【0018】
【化4】

【0019】
の化合物の製造方法を提供する。
【0020】
[0010]その方法は、次の工程:
(a)構造Vの化合物をアルキル化剤でアルキル化して、式VIの化合物を製造すること、
【0021】
【化5】

【0022】
(b)工程(a)の生成物を塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を塩基Bと接触させて、式IV
【0023】
【化6】

【0024】
の塩を形成すること、そして
(d)工程(b)の塩を酸と反応させて、式IVの化合物を形成すること
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0011]本明細書中に記載の方法において別々におよび組合せで用いられるいろいろな用語を、下に定義する。
【0026】
[0012]「を含む」という表現は、「が含まれるが、それに制限されない」を意味する。したがって、他の挙げられていない物質、添加剤、担体または工程が存在してよい。特に断らない限り、「ある一つの(a または an)」は、一つまたはそれ以上を意味する。
【0027】
[0013]C1−3−アルキルは、1〜3個の炭素原子を含有する直鎖または分岐状のアルキル基である。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルが含まれる。
【0028】
[0014]C1−3−アルコキシは、1〜3個の炭素原子を含有する直鎖または分岐状のアルコキシ基である。典型的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシが含まれる。
【0029】
[0015]C4−7−シクロアルキルは、4〜7個の炭素原子を含有する置換されていてもよい単環式、二環式または三環式アルキル基である。典型的なシクロアルキル基には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0030】
[0016]本発明によって考えられる置換基および可変部分の組合せは、安定な化合物の形成をもたらすものだけである。本明細書中で用いられる「安定な」という用語は、製造を可能にする十分な安定性を有する化合物であって、しかもその化合物の完全さを、本明細書中に詳述されている目的に有用である十分な時間維持する化合物を意味する。
【0031】
[0017]本明細書中で用いられる「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件下(in vitro または in vivo)において加水分解して、酸化してまたはそれ以外に反応して、活性化合物を与えることができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、生物加水分解可能アミド、生物加水分解可能エステル、生物加水分解可能カルバメート、生物加水分解可能カーボネート、生物加水分解可能ウレイドおよび生物加水分解可能ホスフェート類似体(例えば、モノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェート)などの生物加水分解可能基を包含する化合物の誘導体が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0032】
[0018]本明細書中で用いられる「水和物」は、ある一つの化合物の形であり、ここにおいて、水分子は、その化合物の構造複合体の不可欠の部分として一定比率で組み合わされている。
【0033】
[0019]本明細書中で用いられる「溶媒和化合物」は、溶媒分子が、その化合物の構造複合体の不可欠の部分として一定比率で組み合わされている化合物の形である。
【0034】
[0020]「薬学的に許容しうる」は、本明細書中において、概して、安全で、無毒性で、しかも生物学的にもそれ以外にも望ましくないものではない医薬組成物を製造する場合に有用であることを意味し、そして獣医学使用にもヒト医薬使用にも有用であることを包含する。
【0035】
[0021]「薬学的に許容しうる塩」は、上に定義のように薬学的に許容しうる塩であって、しかも所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。このような塩には、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸等のような有機酸および無機酸で形成される酸付加塩が含まれる。塩基付加塩は、ナトリウム、アンモニア、カリウム、カルシウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、コリン等のような有機塩基および無機塩基で形成されてよい。本発明に包含されるのは、本明細書中のいずれかの式を有する薬学的に許容しうる塩または化合物である。
【0036】
[0022]その構造に依存して、本明細書中で用いられる「薬学的に許容しうる塩」という句は、ある化合物の薬学的に許容しうる有機または無機の酸または塩基の塩を意味する。代表的な薬学的に許容しうる塩には、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、水溶性塩および水不溶性塩であって、酢酸塩、アムソネート(amsonate)(4,4−ジアミノスチルベン−2,2−ジスルホネート)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム塩、エデト酸カルシウム、カムシレート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラリエート(clavulariate)、二塩酸塩、エデト酸塩、エディシレート、エストレイト、エシレイト、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシラート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエート、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエート、アインボネート(einbonate))、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラメート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシラート、トリエチオジド(triethiodide)および吉草酸塩などのものが含まれる。
【0037】
[0023]本発明は、トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン誘導体を製造する方法、およびその方法において有用な新規な中間体化合物を提供する。本発明による方法は、既存の方法にまさる大規模合成上の利点を与える。例えば、カラムクロマトグラフィーによる精製を削除するので、引火性溶剤の必要量および生じる廃棄物は大きく減少する。更に、塩形成は、カラムクロマトグラフィーよりもはるかに容易な操作である。更に、本発明による方法の生成物は、より高い純度を有することが判明した。したがって、本発明は、より経済的、より安全、より迅速、より未処理で、操作するのに一層容易である方法を提供し、しかもより高い純度を提供する。
【0038】
[0024]本発明の一つの態様は、式I
【0039】
【化7】

【0040】
の化合物、またはその水和物、溶媒和化合物、プロドラッグまたは薬学的に許容しうる塩の製造方法である。
【0041】
[0025]その方法は、次の工程:
(a)構造IIの化合物をアルキル化剤でアルキル化して、式IIIの化合物を製造すること、
【0042】
【化8】

【0043】
[式中、w=1、2または3;
は、trans−CH=CH−、cis−CH=CH−、−CH(CH−または−C≡C−であり;mは、1、2または3であり;
は、
(1)−C2p−CH(式中、pは、1〜5までの整数である)
(2)フェノキシであって、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであり、Rは、RおよびRが水素またはメチルであって、同じであるまたは異なる場合のみ、フェノキシまたは置換フェノキシであるという条件付きであるもの、
(3)フェニル、ベンジル、フェニルエチルまたはフェニルプロピルであって、芳香環上に、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであるもの、
(4)cis−CH=CH−CH−CH
(5)−(CH−CH(OH)−CH、または
(6)−(CH−CH=C(CHであり;ここにおいて、
−C(L)−Rは一緒に、
(1)(C−C)シクロアルキルであって、1〜3個の(C−C)アルキルで置換されていてもよいもの;
(2)2−(2−フリル)エチル、
(3)2−(3−チエニル)エトキシ、または
(4)3−チエニルオキシメチルであり;
は、α−OH:β−Rまたはα−R:β−OHまたはα−OR:β−Rまたはα−R:β−ORであり、ここにおいて、Rは、水素またはメチルであり、Rは、アルコール保護基であり、そして
は、α−R:β−R、α−R:β−R、またはα−R:β−Rおよびα−R:β−Rの混合物であり、ここにおいて、RおよびRは、水素、メチルまたはフルオロであって、同じであるまたは異なり、但し、RおよびRの一方は、他方が水素またはフルオロである場合のみ、フルオロであるという条件付きである]
(b)工程(a)の式IIIの生成物を塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を塩基Bと接触させて、式I
【0044】
【化9】

【0045】
の塩にすること、
(d)工程(c)の塩を酸と反応させて、式Iの化合物を形成すること
を含む。
【0046】
[0026]一つの態様において、式Iの化合物は、少なくとも90.0%、95.0%、99.0%である。
【0047】
[0027]式IIの化合物は、米国特許第6,441,245号に記載のように、式Xの化合物の環化生成物である式XIの化合物から製造することができる。
【0048】
【化10】

【0049】
式中、nは、0、1、2または3である。
【0050】
[0028]式IIの化合物は、或いは、米国特許第6,700,025号に記載のように、式XIIの化合物の環化生成物である式XIIIの化合物から製造することができる。
【0051】
【化11】

【0052】
[0029]本発明の一つの態様は、式IV
【0053】
【化12】

【0054】
の化合物、またはその水和物、溶媒和化合物または薬学的に許容しうる塩の製造方法である。
【0055】
[0030]その方法は、
(a)構造Vの化合物を、ClCHCNなどのアルキル化剤でアルキル化して、式VIの化合物を製造すること、
【0056】
【化13】

【0057】
(b)工程(a)の生成物を、KOHなどの塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を、ジエタノールアミンなどの塩基Bと接触させて、次の構造
【0058】
【化14】

【0059】
の塩にすること、そして
(d)工程(b)の塩を、HClなどの酸と反応させて、式IVの化合物を形成することを含む。
【0060】
[0031]一つの態様において、式IVの化合物の純度は、少なくとも90.0%、95.0%、99.0%、99.5%である。
【0061】
[0032]一つの態様において、その方法は、更に、式IVの塩を単離する工程を更に含む。
【0062】
[0033]一つの態様において、工程(c)における塩基Bは、アンモニア、N−メチルグルカミン、プロカイン、トロメタニン(tromethanine)、マグネシウム、L−リシン、L−アルギニンまたはトリエタノールアミンであってよい。
【0063】
[0034]次の略語を、本明細書および/または請求の範囲において用いるが、それらは、次の意味を有する。
【0064】
「MW」は、分子量を意味する。
【0065】
「Eq.」は、当量を意味する。
【0066】
「TLC」は、薄層クロマトグラフィーを意味する。
【0067】
「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0068】
「PMA」は、リンモリブデン酸を意味する。
【0069】
「AUC」は、曲線下面積を意味する。
【0070】
[0035]前述の考察および下の具体的な実施例から、当業者は、本発明を実施する場合に必要な試薬および溶媒を選択する方法を理解するであろう。
【0071】
[0036]本発明を、ここで、次の実施例に関して記載する。これら実施例は、本発明の範囲を制限すると理解されるべきではなく、単に、詳しく説明するの役立つであろう。
【実施例】
【0072】
実施例1.ベンゾインデントリオールのアルキル化
【0073】
【化15】

【0074】
【表1】

【0075】
[0037]メカニカルスターラーおよび熱電対を装備した50L三つ口丸底フラスコに、ベンゾインデントリオール(1250g)、アセトン(19L)およびKCO(粉末)(1296g)、クロロアセトニトリル(567g)、臭化テトラブチルアンモニウム(36g)を入れた。反応混合物を、室温(23±2℃)で16〜72時間激しく撹拌した。反応の進行を、TLCで監視した。(メタノール/CHCl;1:9、PMAの10%エタノール性溶液で展開)。反応終了後、反応混合物を、Celite パッドで/を用いることなく濾過した。濾過ケークを、アセトン(10L)で洗浄した。濾液を、真空中において50〜55℃で濃縮して、淡褐色の粘稠な液体ベンゾインデンニトリルを生じた。その粗製ベンゾインデンニトリルを、更に精製することなく、そのままで次の工程に用いた。
【0076】
実施例2.ベンゾインデンニトリルの加水分解
【0077】
【化16】

【0078】
【表2】

【0079】
[0038]加熱/冷却システム、メカニカルスターラー、冷却器および熱電対を装備した50Lシリンダー反応器に、メタノール中のベンゾインデンニトリルの溶液(12L)およびKOH溶液(4.25Lの水中に溶解した844gのKOH)を入れた。反応混合物を撹拌し、加熱して還流させた(72.2℃の温度)。反応の進行を、TLCで監視した(TLC目的には、1〜2mLの反応混合物を、3M HClで1〜2のpHへと酸性にし、酢酸エチルで抽出した。その酢酸エチル抽出物を、TLCに用いた;溶離剤:メタノール/CHCl;1:9、PMAの10%エタノール性溶液で展開)。反応終了後(約5時間)、反応混合物を、−5〜10℃に冷却し、そして塩酸溶液(3M,3.1L)で撹拌しながら急冷した。反応混合物を、真空中において50〜55℃で濃縮して、約12〜14Lの凝縮物を得た。その凝縮物は廃棄した。
【0080】
[0039]水性層を、水(7〜8L)で希釈し、そして酢酸エチル(2x6L)で抽出して、酢酸エチル中に可溶性の不純物を除去した。水性層に、酢酸エチル(22L)を加え、反応混合物のpHを、3M HC1(1.7L)を撹拌しながら加えることによって1〜2に調整した。有機層を分離し、そして水性層を、酢酸エチル(2x11L)で抽出した。合わせた有機層を、水(3x10L)で洗浄後、NaHCO溶液(12Lの水中に溶解した30gのNaHCO)で洗浄した。有機層を、飽和NaCl溶液(水(12L)中に溶解した3372gのNaCl)で更に洗浄し、そしていったん濾過して、無水NaSO(950〜1000g)上で乾燥させた。
【0081】
[0040]濾液を、メカニカルスターラー、冷却器および熱電対を装備した72L反応器中に移した。反応器中のトレプロスチニルの溶液に、活性炭(110〜130g)を加えた。その懸濁液を、加熱して少なくとも1時間還流させた(68〜70℃の温度)。濾過のために、Celite(登録商標)545パッド(300〜600g)を、焼結ガラス漏斗中に酢酸エチルを用いて調製した。熱懸濁液を、Celite(登録商標)545パッドを介して濾過した。その Celite(登録商標)545を、洗液のTLCで化合物が認められなくなるまで、酢酸エチルで洗浄した。
【0082】
[0041]濾液(淡黄色)を、次の工程に直接的に用いるために、真空中において50〜55℃でのエバポレーションによって35〜40Lの容量に減少させた。
【0083】
実施例3.トレプロスチニルのトレプロスチニルジエタノールアミン塩(1:1)への変換
【0084】
【化17】

【0085】
【表3】

【0086】
[0042]加熱/冷却システム、メカニカルスターラー、冷却器および熱電対を装備した50Lシリンダー反応器に、酢酸エチル中のトレプロスチニルの溶液(前の工程からの35〜40L)、無水エタノール(5.1L)およびジエタノールアミン(435g)を入れた。撹拌しながら、反応混合物を60〜75℃に0.5〜1.0時間加熱して、透明溶液を得た。その透明溶液を、55±5℃に冷却した。この温度で、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形Bの種(約12g)を、透明溶液に加えた。多形Bの懸濁液を、この温度で1時間撹拌した。懸濁液を、20±2℃に一晩(16〜24時間にわたって)冷却した。トレプロスチニルジエタノールアミン塩を、濾布を装備した Aurora フィルターを用いた濾過によって集め、そして固体を酢酸エチル(2x8L)で洗浄した。トレプロスチニルジエタノールアミン塩を、フード中で自然乾燥するためにHDPE/ガラス容器に移した後、真空オーブン中において高真空下、50±5℃で乾燥させた。
【0087】
[0043]この段階で、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の融点が104℃を超える場合、それを多形Bとみなした。再結晶の必要はない。104℃未満である場合、それを、EtOH−EtOAc中で再結晶させて、融点を増加させる。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例4.トレプロスチニルジエタノールアミン塩(1:1)のヘプタンスラリー
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
[0044]加熱/冷却システム、メカニカルスターラー、冷却器および熱電対を装備した50Lシリンダー反応器に、ヘプタン中のトレプロスチニルジエタノールアミン塩のスラリー(35〜40L)を入れた。その懸濁液を、70〜80℃に16〜24時間加熱した。懸濁液を、22±2℃に1〜2時間にわたって冷却した。塩を、Aurora フィルターを用いた濾過によって集めた。そのケークを、ヘプタン(15〜30L)で洗浄し、そして物質を、Aurora フィルター中で1時間乾燥させた。塩を、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の恒量が得られるまで、フード中で一晩自然乾燥するためにトレーに移した。その物質を、高真空下のオーブン中において50〜55℃で2〜4時間乾燥させた。
【0093】
【表7】

【0094】
実施例5.トレプロスチニルジエタノールアミン塩(1:1)のトレプロスチニルへの変換
【0095】
【化18】

【0096】
[0045]マグネチックスターラーを装備した250mL丸底フラスコに、トレプロスチニルジエタノールアミン塩(4g)および水(40mL)を入れた。その混合物を撹拌して、透明溶液を得た。その透明溶液に、酢酸エチル(100mL)を加えた。撹拌しながら、3M HC1(3.2mL)を、約1のpHに達するまで徐々に加えた。その混合物を10分間撹拌し、有機層を分離した。水性層を、酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(2x100mL)、ブライン(1x50mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させた。トレプロスチニルの酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を真空下において50℃で濃縮して、オフホワイト固体を生じた。その粗製トレプロスチニルを、水中の50%エタノール(70mL)から再結晶させた。純粋なトレプロスチニルを、濾過によって Buchner 漏斗中に集め、そしてケークを、水中の冷20%エタノール性溶液で洗浄した。トレプロスチニルのケークを、一晩自然乾燥させ、そして更に、真空オーブン中において高真空下、50℃で乾燥させて、2.9gのトレプロスチニル(91.4%収率,純度(HPLC,AUC,99.8%)を与えた。
【0097】
【表8】

【0098】
実施例6.従来の方法と、本発明による方法の作業例との比較
【0099】
【表9】

【0100】
【表10】

【0101】
【表11】

【0102】
[0046]本発明によって製造されたトレプロスチニルの品質は、極めて良好である。カラムクロマトグラフィーによるベンゾインデンニトリルの精製は削除する。中間体工程(すなわち、トリオールのアルキル化およびベンゾインデンニトリルの加水分解)によって残った不純物は、炭素処理および塩形成工程の際に除去する。この方法の追加の利点は、(a)粗製トレプロスチニル塩は、原料として周囲温度で貯蔵することができるし、しかも希塩酸での簡単な酸性化によってトレプロスチニルへと変換することができる、そして(b)トレプロスチニル塩は、トレプロスチニルの溶液から単離することなく合成することができることである。この方法は、最終生成物のより良い品質を与え、更には、有意の量の溶剤および中間体の精製における労力を節約する。
【0103】
[0047]前述のことは、具体的な好ましい態様に関するが、本発明が、そのように制限されることはないということは理解されるであろう。開示された態様にいろいろな修飾を行うことができるということ、およびこのような修飾が、本発明の範囲内にあるものであるということは、当業者に考えられるであろう。
【0104】
[0048]本明細書中に引用された公報、特許出願および特許は全て、本明細書中にそのまま援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、wは、1、2または3であり;
は、trans−CH=CH−、cis−CH=CH−、−CH(CH−または−C≡C−であり;mは、1、2または3であり;
は、
(1)−C2p−CH(式中、pは、1〜5までの整数である)、
(2)フェノキシであって、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであり、Rは、RおよびRが水素またはメチルであって、同じであるまたは異なる場合のみ、フェノキシまたは置換フェノキシであるという条件付きであるもの、
(3)フェニル、ベンジル、フェニルエチルまたはフェニルプロピルであって、芳香環上に、1個、2個または3個のクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシで置換されていてもよく、但し、2個以下の置換基は、アルキル以外であるという条件付きであるもの、
(4)cis−CH=CH−CH−CH
(5)−(CH−CH(OH)−CH、または
(6)−(CH−CH=C(CHであり;
−C(L)−Rは一緒に、
(1)(C−C)シクロアルキルであって、1〜3個の(C−C)アルキルで置換されていてもよいもの;
(2)2−(2−フリル)エチル、
(3)2−(3−チエニル)エトキシ、または
(4)3−チエニルオキシメチルであり;
は、α−OH:β−Rまたはα−R:β−OHまたはα−OR:β−Rまたはα−R:β−ORであり、ここにおいて、Rは、水素またはメチルであり、Rは、アルコール保護基であり、そして
は、α−R:β−R、α−R:β−R、またはα−R:β−Rおよびα−R:β−Rの混合物であり、ここにおいて、RおよびRは、水素、メチルまたはフルオロであって、同じであるまたは異なり、但し、RおよびRの一方は、他方が水素またはフルオロである場合のみ、フルオロであるという条件付きである]
の化合物、その水和物、溶媒和化合物、プロドラッグまたは薬学的に許容しうる塩の製造方法であって、
(a)構造IIの化合物をアルキル化剤でアルキル化して、式IIIの化合物を製造すること、
【化2】

(b)工程(a)の式IIIの生成物を塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を塩基Bと接触させて、式I
【化3】

の塩にすること、
(d)工程(c)の塩を酸と反応させて、式Iの化合物を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
式Iの化合物の純度が、少なくとも90.0%、95%または99.0%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの塩を単離する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルキル化剤が、Cl(CHCN、Br(CHCNまたはI(CHCNである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)における塩基が、KOHまたはNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)における塩基Bが、アンモニア、N−メチルグルカミン、プロカイン、トロメタニン(tromethanine)、マグネシウム、L−リシン、L−アルギニン、トリエタノールアミンおよびジエタノールアミンから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)における酸が、HClまたはHSOである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
が、−CHCH−であり;Mが、α−OH:β−Hまたはα−H:β−OHであり;−C(L)−Rが一緒に、−(CHCHであり;そしてwが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式Iの化合物が、式IV
【化4】

の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式IV
【化5】

の化合物、その水和物、溶媒和化合物、プロドラッグまたは薬学的に許容しうる塩の製造方法であって、
(a)式Vの化合物をアルキル化剤でアルキル化して、式VIの化合物を製造すること、
【化6】

(b)工程(a)の式VIの生成物を塩基で加水分解すること、
(c)工程(b)の生成物を塩基Bと接触させて、式IV
【化7】

の塩を形成すること、そして
(d)式IVの工程からの塩を酸と反応させて、式IVの化合物を形成すること
を含む方法。
【請求項11】
式IVの化合物の純度が、少なくとも90.0%、95.0%、99.0%または99.5%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式IVの塩を単離する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アルキル化剤が、ClCHCNである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)における塩基が、KOHである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)における塩基Bが、アンモニア、N−メチルグルカミン、プロカイン、トロメタニン(tromethanine)、マグネシウム、L−リシン、L−アルギニン、トリエタノールアミンおよびジエタノールアミンから成る群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
塩基Bが、ジエタノールアミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)における酸が、HClである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
製造される化合物が、式IV
【化8】

(式中、塩基Bは、アンモニア、N−メチルグルカミン、プロカイン、トロメタニン、マグネシウム、L−リシン、L−アルギニン、トリエタノールアミンおよびジエタノールアミンから成る群より選択される)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
製造される化合物が、次の式
【化9】

の化合物である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−506599(P2011−506599A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539440(P2010−539440)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/013686
【国際公開番号】WO2009/078965
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(502278769)ユナイテッド セラピューティクス コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】