説明

リモートコントロール装置

【課題】
情報端末などの音声出力端子を用いて、種々の電気機器の遠隔操作に対応することのできる赤外線リモコン装置を安価に提供すること。
【解決手段】
変調手段104と赤外線発光手段105とから構成され、これらの手段を駆動する電力と制御信号を情報端末101などの音声信号線103から得て動作するリモコン装置102。複数のリモコンの制御コマンドを記録した情報端末101を用いて任意の電気製品の遠隔操作が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線発光信号によって遠隔操作が可能な、テレビジョン機器(以下テレビと記載)や空調機器などの電気製品に利用されるリモートコントロール(以下リモコンと記載)装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線リモコンを用いた電気製品の遠隔操作において、赤外線発光手段を持たないスマートフォンなどの情報端末を用いて遠隔操作を行う手段として、無線LANを経由して電気製品を制御する方法がある。例えば特許文献1では、無線LANによってビデオレコーダとテレビを制御する手段が開示されている。開示手段によると、制御信号はネットワーク対応のビデオレコーダで受信し、ビデオレコーダから映像受信アダプタに転送され、映像受信アダプタに内蔵された赤外線LEDを赤外線リモコンの発光パターンに合わせて発光させ、テレビを遠隔操作している。
【0003】
また、特許文献2では無線LANを経由して、テレビなどの電気製品に対応した赤外線リモコンのコマンドパターンを発光する手段が開示されている。開示手段によると、無線LAN受信手段と赤外線発光手段を1つのセットボックスとし、情報端末から送られたコマンドをセットボックス内で解釈し、操作対象機器に対応した赤外線信号を生成し、赤外線LEDを発光させ、テレビなどの電気製品を操作している。
【0004】
しかしながら、これら従来技術では、無線LANなどの通信回線を実現する手段と、前記通信回線経由で送られるコマンドを解釈し赤外線リモコンの発光パターンを生成する手段と、赤外線LEDを発光させる手段が必要であり、複雑な構造となっていた。よって、これらの手段を実現するためには情報端末と分離した装置を設け、その装置は電池や商用電源などの電源を要する構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−219486号公報
【特許文献2】特開2005−252987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、情報端末などの音声出力端子に接続し、駆動電力と赤外線発光パターン信号を音声信号線から得て動作する、安価な赤外線リモコン送信手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来技術の課題を解決するために、請求項1にかかる発明のリモコン装置は、変調手段と、前記変調手段に接続された赤外線発光手段とでリモコン装置を構成している。
【0008】
本構成によって、音声信号を電力として変調手段と赤外線発光手段が動作し、変調がかかった赤外線発光パターンで赤外線発光信号を送信する。
【0009】
また、請求項2にかかる発明のリモコン装置は、赤外線リモコンの制御命令のビットパターンと同じ波形の音声信号を入力とする。
【0010】
本構成によって、電気製品などの専用リモコンを模擬した赤外線発光パターンの送出ができ、任意の電気製品を制御することができる。
【0011】
デジタル信号で音声を記録し再生する機器の多くは、サンプリングレートの上限が48kHzであり、再生できる音声の最高周波数はナイキストのサンプリング定理により24kHzである。一方、多くの電気製品のリモコン装置では、周波数が38〜40kHz、デューティー比が1:3のパルス幅変調(以下、PWMと記載)がかけられた赤外線発光パターンが用いられており、音声信号をそのまま発光パターンとすることができない。しかしながら、リモコンの制御命令信号のビットレートは1.5kbps程度以下であるため、制御命令は48kHzサンプリングの音声信号として再生が可能である。音声信号として入力される制御信号に、変調手段によって上記条件のPWMをかけ、赤外線発光手段で明滅発光することで、電気製品のリモコンに対応した赤外線信号を送信することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明のリモコン装置は、一方のチャンネルを変調前の赤外線リモコンのビットパターンと同じ音声波形の信号とし、他方のチャンネルを前記音声波形の逆の位相を持つ音声波形信号としたステレオ信号を入力とし、差動電圧をもって変調手段と赤外線発光手段を駆動する。
【0013】
本構成によって、左右の音声信号線の間に、共通帰線と音声信号線間の電圧以上の電圧を得ることができ、共通帰線と音声信号線間の電圧では、変調手段と赤外線発光手段を駆動するに足りない場合においても、駆動電圧を確保できる効果がある。
【0014】
また、請求項4にかかる発明のリモコン装置は、整流手段と、前記整流手段に接続された電力蓄積手段と、変調手段と、前記変調手段に接続された赤外線発光手段を有する。
【0015】
本構成によって、信号線と電力供給線を分けることができ、変調手段と赤外線発光手段の駆動電力を電力蓄積手段から安定して供給することができ、変調手段にマイコンなど高機能な実現手段を用いることができる。これによって、変調周波数やデューティー比が可変とでき、より広範なリモコンに対応できる効果がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリモコン装置によれば、電池などの電源を要しない安価な構成で、スマートフォンなどの情報端末の音声信号出力に接続して、任意の電気製品などの遠隔操作ができるリモコン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるブロック図
【図2】本発明の実施の形態1におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例
【図3】明滅する赤外線の点滅パターン波形の例
【図4】逆電圧防止手段の具体的構成を示す回路図
【図5】本発明の実施の形態2におけるブロック図
【図6】本発明の実施の形態2におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例
【図7】本発明の実施の形態3におけるブロック図
【図8】本発明の実施の形態3におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態1におけるリモコン装置のブロック図である。また、図2は実施の形態1におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例である。さらに、図3は明滅する赤外線の点滅パターン波形の例である。
【0020】
図1において、情報端末101は音声出力端子を備えた情報端末であり、複数のリモコンのコマンドを、後術する音声波形を構成するデータとして記録しておく。また、出力音量は最大の状態にしておくことが望ましい。リモコン102は本発明の実施の形態1におけるリモコン装置を示している。音声信号線103は、情報端末101の音声出力端子のモノラル信号、乃至ステレオ信号の右または左のいずれかのチャンネル、乃至ステレオ信号の両チャンネル、のいずれに接続しても良い。変調手段104は音声信号によって入力される赤外線リモコンのビットパターンにPWMをかける手段であり、音声信号線103と共通帰線に接続され、共通帰線を基準電位として、音声信号線103に変調手段104の動作電圧以上の電圧が出ている状態(以下ON状態と記載)で発振し、動作電圧以下の電圧が出ている状態(以下OFF状態と記載)で発振が止まる。赤外線発光手段105は変調手段104の出力信号によって明滅する赤外線信号を発光する手段である。変調手段104と赤外線発光手段105の電力は音声信号線から供給されるため、低電圧で動作し、低消費電力の電子回路で構成することが望ましい。例えば、変調手段104は、トランジスタと抵抗、コンデンサで構成される非安定マルチバイブレータ回路や、CMOSインバータと抵抗、コンデンサで構成される発振回路など、単純なものでよい。赤外線発光手段105は高効率の赤外線発光ダイオード等とトランジスタ等のスイッチング素子を用いるとよい。
【0021】
図2はリモコンの規格の1つである、家電製品協会フォーマットによる発光パターンに合わせた、実施の形態1におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例である。音声信号波形201は共通帰線のGND電位202を中心に正負の振幅をもつ交流波形であり、ON状態およびOFF状態の持続時間は最短で0.35msである。ON状態とOFF状態を最短時間で繰り返すとしても周波数は1.43kHzであり、一般的な音声出力端子から出力が可能な波形である。また、順方向電圧203は、変調手段104と赤外線発光手段105に供給される電力の電圧であり、電圧の大きさは情報端末の音声出力端子の電力供給能力に依存する。
【0022】
図3は明滅する赤外線の発光パターン波形の例である。櫛形の波形はPWM波204を示しており、音声信号波形201のON状態の場合にのみ、赤外線発光手段105からPWMがかけられた赤外線発光信号が送信される。
【0023】
リモコン102を用いて電気製品を操作する際、情報端末101は利用者の操作やプログラムされた手順に従って、特定の音声信号を音声出力端子から出力する。変調手段104は音声信号のON状態によって電力が供給され、赤外線発光手段105に変調信号を供給する。赤外線発光手段105も変調手段104と同様に音声信号を電力源として動作し、音声信号がON状態のときの電力を変調信号によってスイッチングして明滅パターンを発光する。
【0024】
なお、音声信号はGND電位を中心に振幅を持つ交流であるため、変調手段104と赤外線発光手段105に逆電圧がかかる。実現手段によっては逆電圧が不具合をきたす場合があるため、情報端末101と変調手段104の間に逆電圧を防止する手段を挿入してもよい。例えば、図4(a)に示すダイオード301による逆流阻止が考えられる。ダイオードは順方向電圧降下が小さいショットキーバリア型を用いると良い。ダイオードによる電圧降下が変調手段104か赤外線発光手段105の動作に支障をきたす場合は、図4(b)に示すようにGND側から音声信号線に向けたダイオード301とヘッドフォンのインピーダンスと同等の抵抗器302を接続し、電流を還流させてもよい。以下の実施の形態2と実施の形態3においても同様に本手段を用いてもよい。
【0025】
なお、実施の形態1の情報端末101は、任意の音声信号の保存が可能で、音声出力端子を持つ機器、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、ミュージックプレイヤー、ゲーム機、などに置き換えが可能であることはいうまでもない。以下の実施の形態2と実施の形態3においても同様に情報端末101の置き換えは可能である。
【0026】
図5は本発明の実施の形態2におけるリモコン装置のブロック図である。また、図6は実施の形態2におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例である。
【0027】
図5と図6において、実施の形態1と同様の機能を果たす要素は同一の参照符号を付し、説明を省略する。図5において、順相音声信号線106は実施の形態1の音声信号線103と同じであるが、後術する逆相音声信号線107と区別するため順相音声信号線106と表記する。逆相音声信号線107は順相音声信号線106によって供給される信号と逆の位相をもつ音声波形を、情報端末からリモコン102に供給する信号線である。順相音声信号線106と逆相音声信号線107は情報端末のステレオ音声出力に接続する。本構成では、情報端末101から左右のチャンネルで逆相の信号をリモコン102に送信し、差動電圧によってリモコン102を動作させる。
【0028】
以下に差動電圧によるリモコン102の動作について説明する。それぞれの信号線を接続するチャンネルの左右は問わないが、仮に左チャンネルに順相音声信号線106を接続し、右チャンネルに逆相音声信号線107を接続することとする。図6はリモコンの規格の1つである、家電製品協会フォーマットによる発光パターンにわせた、実施の形態2におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例である。図6(a)の左チャンネルの順相音声信号波形205は、実施の形態1における音声信号波形201と同条件の波形であるが、後術する逆相音声信号波形206と区別するため順相音声信号波形205と表記する。図6(b)の右チャンネルの逆相音声信号波形206はGND電位202を中心に順相音声信号波形205とは逆の位相を持った波形である。図6(c)は、GND電位202を基準に順相音声信号波形205と逆相音声信号波形206を重ね合わせて表記したものである。ON状態のときに変調手段104と赤外線発光手段105に供給される電力の電圧は、左チャンネルの電圧から右チャンネルの電圧を引いた差動電圧207となり、実施の形態1の構成の順方向電圧203の約2倍の電圧を得ることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、実施の形態1の片チャンネルの電力供給に対して約2倍の電圧を得ることができ、片チャンネルの電力供給ではリモコン102の動作に十分な電圧の確保が困難な電力供給能力が低い情報端末においても、リモコン102を機能させることができるという利点を有する。
【0030】
なお、変調手段104と赤外線発光手段105の実現方法と動作は、実施の形態1の場合と同様である。
【0031】
図7は本発明の実施の形態3におけるリモコン装置のブロック図である。また、図8は実施の形態3におけるリモコン装置に入力する音声信号の波形の例である。
【0032】
図7と図8において、実施の形態1または実施の形態2と同様の機能を果たす要素は同一の参照符号を付し、説明を省略する。図7において、電力供給線108は音声信号によってリモコン102の動作に必要な電力を供給する線である。整流手段109は交流を直流に変換するものであり、一般的なブリッジ型整流回路を用いればよい。電力蓄積手段110はキャパシタまたはリチウムイオン電池などの2次電池で構成され、必要に応じて昇圧回路を併設してもよい。図8(b)において、電力供給波形208は電力供給線108によって供給される電力の波形の例である。本構成では、情報端末101からリモコン102に送る信号と電力を別々の回線で送信する。
【0033】
以下に音声信号による電力供給について説明する。信号線、電力供給線を接続するチャンネルの左右は問わないが、仮に左チャンネルに音声信号線103を接続し、右チャンネルに電力供給線108を接続することとする。電力供給線108によって供給される電力供給波形208は、情報端末の右チャンネル音声出力端子から供給されるため、交流による電力供給となる。このときに音声信号周波数はいくらであってもかまわないが、情報端末の音声アンプの効率から、数kHzの周波数であることが望ましい。また、波形についても、正弦波、矩形波など、どのような波形であってもかまわないが、デジタル機器から出力しやすい矩形波を用いることよい。情報端末101から電力供給線108を経由してリモコンに供給される電力は、整流手段109を経て電力蓄積手段110に蓄積される。これによって、変調手段104と赤外線発光手段105は情報端末101からの入力信号波形によらず、電力蓄積手段110から安定して電力の供給を受けることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、変調手段104と赤外線発光手段105に対して安定した電力供給が可能になり、変調手段104にマイコンなどの高機能な素子を用いることで、変調周波数やデューティー比の変更など、高度な機能が実現でき、対応できるリモコンの種類が広がるという効果が得られる。
【0035】
なお、赤外線発光手段105の実現方法と動作は、実施の形態1の場合と同様である。
【0036】
なお、変調手段にマイコンを用いる場合、図6(a)に示す音声信号201は、振幅変調、周波数変調、位相変調などの変調がなされたデジタルデータとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明にかかるリモコン装置は、簡易な構成で小型に実現ができ、たとえば情報端末接続して情報端末のプログラムで制御することで、複数の電気製品の遠隔操作に対応ができるので、汎用的なリモコン装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
101 情報端末
102 リモコン
103 音声信号線
104 変調手段
105 赤外線発光手段
106 順相音声信号線
107 逆相音声信号線
108 電力供給線
109 整流手段
110 電力蓄積手段
201 音声信号波形
202 GND電位
203 順方向電圧
204 PWM波
205 順相音声信号波形
206 逆相音声信号波形
207 差動電圧
208 電力供給波形
301 ダイオード
302 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調手段と前記変調手段に接続された赤外線発光手段とから構成され、前記変調手段と前記赤外線発光手段の駆動電力と制御信号を音声信号から得ることを特徴としたリモコン装置。
【請求項2】
前記音声信号は変調前の赤外線リモコンのビットパターンと同じ波形であることを特徴とする請求項1に記載のリモコン装置。
【請求項3】
前記音声信号は一方のチャンネルを変調前の赤外線リモコンのビットパターンと同じ音声波形の信号とし、他方のチャンネルを前記音声波形の逆の位相を持つ音声波形信号としたステレオ信号であることを特徴とする請求項1に記載のリモコン装置。
【請求項4】
前記音声信号は一方のチャンネルを制御信号チャンネルとし、他方のチャンネルを電源供給チャンネルとしたステレオ信号であり、前記電源供給チャンネルに接続された整流手段と前記整流手段に接続された電力蓄積手段を備え、電力蓄積手段からの電力供給と、前記制御信号チャンネルの制御信号によって動作することを特徴とする請求項1に記載のリモコン装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−156711(P2012−156711A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13260(P2011−13260)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(391016842)岐阜県 (70)
【Fターム(参考)】