説明

リリーフ弁

【課題】流体圧力に基づいて外部への流体の放出量を変化させる機能を有しつつ、簡易な構造で小型化に対応できるリリーフ弁を提供する。
【解決手段】リリーフ弁22は、一次室36の流体圧力が第1所定値より大きい第2所定値を超えた場合、一次室36と外部を連通させる連通手段52を有する。この構成より、リリーフ弁32は、流路の流体圧力が第1所定値より大きくなった場合、外部への流体の放出量を更に増加させて流路の流体圧力を低下させることができるとともに、簡易な構造で小型化に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリリーフ弁の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
リリーフ弁は、流路に設けられ、この流路の流体圧力が所定値を超えると、流路内の流体を外部に放出するバルブである。
【0003】
従来のリリーフ弁は、流路から流体が流入する一次室と外部に開放された二次室とこれらの室を連通する連通孔とを有するハウジングと、二次室に設けられ、連通孔を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するばね部材とを有する例がある。このように構成されるリリーフ弁においては、一次室の流体圧力が所定値以下の場合、弁体はばね部材の付勢力により連通孔を塞いで一次室と二次室とを遮断する。一方、一次室の流体圧力が所定値を超えてばね部材の付勢力より大きくなると、ばね部材が開弁方向に弾性変形するので、弁体が連通孔から離れて一次室と二次室を連通させる。この動作により、一次室側の流体が二次室を介して外部に放出され、一次室の流体圧力、すなわち流路の流体圧力を低下させることができる。
【0004】
下記特許文献1には、圧力調整ハンドルにより押しねじを回動させて弁の開閉を行い、流路を流れる流体の圧力を調整する圧力調整弁が記載されている。この圧力調整弁においては、圧力調整ハンドルが弁本体の筒部を覆うキャップ状に形成されている。そして、その筒部には、圧力調整ハンドルの環状の裾縁の位置により弁の開閉状態が目視できるように着色マークが設けられている。
【0005】
下記特許文献2には、パイロットバルブとこのバルブを閉弁方向に付勢する設定用スプリングとを内蔵したバルブボディを有するリリーフバルブが記載されている。このリリーフバルブにおいては、外部からのパイロット圧力を設定用スプリングに加え、このスプリングの圧縮度合いを変化させることにより、通常のリリーフバルブの圧力セット値とは異なる圧力セット値を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−36513号公報
【特許文献2】特開平11−132347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のリリーフ弁は、流路の流体圧力が所定値を超えると、流路内の流体を外部に放出することができる。このようなリリーフ弁は、高圧の流体を収容する供給源と流体の供給先である装置とを接続する流路であって、流体圧力を減圧する減圧弁より二次側の流路に用いられる場合がある。この場合、リリーフ弁には二次側の流路内の許容圧力が所定値として設定されており、減圧弁の不具合により二次側の流路内の流体圧力が所定値を超えると、リリーフ弁は流体を外部に放出して流路内の流体圧力が許容圧力以下になるように流体圧力を調整する。
【0008】
しかしながら、減圧弁の不具合とともに供給源の制御不良により、二次側の流路にその所定値より高い圧力の流体が供給された場合、従来のリリーフ弁では、放出量が限られているため流路の流体圧力を許容圧力より低下させるのに時間が掛かってしまい、装置などが損傷してしまう問題があった。
【0009】
リリーフ弁の放出量を増大させるために、リリーフ弁内の開口面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、開口面積を単に増大しただけでは、リリーフ弁が大型化してしまう問題がある。
【0010】
本発明の目的は、リリーフ弁が流路内の流体を外部に放出しているにもかかわらず流路の流体圧力が所定値より大きくなった場合、外部への流体の放出量を更に増加させて流路の流体圧力を低下させることができ、しかも簡易な構造で小型化に対応できるリリーフ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、流路から流体が流入する一次室を有するハウジングと、ハウジングに収容された弁本体であって、外部に開放された二次室と、一次室と二次室とを連通する連通孔と、連通孔を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するとともに、一次室の流体圧力が第1所定値を超えると開弁方向に弾性変形して一次室と二次室を連通させる弾性部材とを有する弁本体と、一次室の流体圧力が第1所定値より大きい第2所定値を超えた場合、一次室と外部を連通させる連通手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、連通手段は、ハウジングと弁本体の間に形成され、一次室と外部を連通する外部連通路と、外部連通路を封止する封止部材と、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ハウジングに対して弁本体をスライドさせるスライド機構と、を有し、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、弁本体がハウジングに対してスライドすることにより封止部材と弁本体またはハウジングとの間に隙間が形成され、一次室と外部が連通することができる。
【0013】
また、スライド機構は、弁本体が所定の距離をスライドした場合、弁本体のスライドを規制する規制部を有することができる。
【0014】
また、スライド機構は、さらに、弁本体をハウジングに固定する固定部と、弁本体またはハウジングに設けられ、固定部を係止する係止部と、を有し、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、固定部は係止部から外れ弁本体がスライドすることができる。
【0015】
また、固定部は、弁本体またはハウジングの一方に形成された長穴であって、弁本体がスライドする方向に形成された長穴を貫通して、弁本体またはハウジングの他方に螺合するネジ部材であり、係止部は、前記長穴の開口部を絞るように形成された突起部であり、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ネジ部材が突起部を変形させることで、ネジ部材が前記長穴の延びる方向に沿って移動可能になることができる。
【0016】
また、スライド機構は、さらに、弁本体をハウジングに固定する固定部を有し、固定部は、弁本体またはハウジングの一方に連結され、弁本体またはハウジングの他方の接触面に接触するように設けられ、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、固定部と前記接触面の間には最大静止摩擦力を超える力が働いて弁本体がスライドすることができる。
【0017】
また、規制部により弁本体のスライドを規制されたとき、弁本体の少なくとも一部がハウジングから突出することができる。
【0018】
また、スライド機構は、さらに、封止部材より弁本体のスライド側に位置し、弁本体をハウジングに固定する固定部と、固定部と封止部材との間に、弁本体の筒部の一部になるように設けられ、所定の力が加わると塑性変形する塑性変形部と、を有し、一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、塑性変形部が弁体のスライド方向において縮むように変形し、塑性変形部より封止部材側にある弁本体がスライドすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリリーフ弁によれば、リリーフ弁が流路内の流体を外部に放出しているにもかかわらず流路の流体圧力が所定値より大きくなった場合、外部への流体の放出量を更に増加させて流路の流体圧力を低下させることができ、しかも簡易な構造で小型化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態のリリーフ弁の構造を示す断面図である。
【図3】弁体が開弁した状態を示す断面図である。
【図4】弁本体がスライドした状態を示す断面図である。
【図5】図2のA方向から見た図である。
【図6】図4のB方向から見た図である。
【図7】別の態様のスライド機構を示す断面図である。
【図8】弁本体がスライドしたときの、スライド機構を示す断面図である。
【図9】別の態様のスライド機構を示す断面図である。
【図10】弁本体がスライドしたときの、スライド機構を示す断面図である。
【図11】別の態様のスライド機構を示す断面図である。
【図12】弁本体がスライドしたときの、スライド機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るリリーフ弁の実施形態について、図を用いて説明する。一例として、燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムを挙げ、この燃料電池システムの流路であって、燃料ガスが流れる燃料ガス流路に設置されるリリーフ弁について説明する。なお、本発明は、燃料電池システムの燃料ガス流路に限らず、流体が流れる流路に設置されるリリーフ弁にも適用することができる。
【0022】
まず、燃料電池自動車に搭載される燃料電池システム10について図1を用いて説明する。燃料電池システム10は、燃料ガスと酸化ガスとを電気化学反応させて発電を行なう燃料電池12を有する。なお、燃料電池システム10に用いられる燃料ガスは水素であり、酸化ガスは空気である。
【0023】
燃料電池12には、これのアノード(図示せず)に燃料ガスを供給する燃料ガス流路14と、燃料電池12のカソード(図示せず)に酸化剤ガスを供給する酸化ガス流路(図示せず)とが接続されている。
【0024】
燃料電池12は、例えばフッ素樹脂などの高分子材料により形成されたプロトン導電性の膜体である電解質膜を有する固体高分子型の燃料電池である。この電池の単位セル(図示せず)は、電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、二枚のセパレータでさらに挟んで構成される。この単位セルを複数積層することにより、燃料電池12が構成される。
【0025】
燃料電池システム10は、燃料ガスを燃料電池12に供給する供給源として、タンク16を有する。タンク16は、燃料ガスを高圧状態(例えば70MPa)にして貯蔵する。タンク16と燃料電池12とは、燃料ガス流路14で接続される。
【0026】
燃料ガス流路14には、タンク16から燃料電池12に向けて主止弁18と減圧弁20とリリーフ弁22とが順に取り付けられている。また、減圧弁20と燃料電池12との間の燃料ガス流路14には、燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ24が設けられている。
【0027】
主止弁18は、電気信号により電磁石を駆動して弁を開閉する電磁弁である。主止弁18は、自動車の停止時、具体的にはイグニッションスイッチがオフである場合、閉状態となり、自動車の運転時、具体的にはイグニッションスイッチがオンである場合、開状態となるように制御される。また、主止弁18は、圧力センサ24からの電気信号により弁を開閉する。
【0028】
減圧弁20は、タンク16から導入される燃料ガスの圧力(例えば70MPa)を、燃料ガスの供給先である燃料電池14に適した圧力(例えば1MPa)まで減圧する装置である。なお、減圧弁20の減圧値は調整することができる。
【0029】
圧力センサ24は、燃料ガスの圧力が異常に上昇したことを検出すると、減圧弁20に不具合が生じたものと判断し、主止弁18へ閉弁するように電気信号を出力する。この信号が主止弁18に入力されると、主止弁18は閉状態となりタンク16から燃料電池12への燃料ガスの供給が遮断される。ここで、減圧弁20に不具合、例えば調圧異常が生じたと判断される燃料ガスの圧力値のことを、以降、第1所定値(例えば2MPa)という。
【0030】
リリーフ弁22は、燃料ガス流路14を流れる燃料ガスの圧力が異常に上昇した場合、燃料ガスを外部へ放出する装置である。具体的には、リリーフ弁22は、燃料ガスの圧力が第1所定値を超えた場合、燃料ガスを外部へ放出する。これにより、減圧弁20より下流に設けられる燃料ガス流路14及び燃料電池12などが、燃料ガスの圧力により損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0031】
通常、燃料電池システム10においては、減圧弁20の不具合とともに圧力センサ24または主止弁18が故障した場合、主止弁18を閉弁させることができないので、リリーフ弁22によってタンク16の残圧を全て抜いている。しかしながら、従来のリリーフ弁では、放出量が限られているためシステム内の燃料ガスの圧力を低下させるのに時間が掛かってしまい、減圧弁の上流側に設けられる部材より耐圧性能が低い減圧弁の下流側の部材、例えば燃料ガス流路及び燃料電池などが損傷してしまう問題があった。
【0032】
この問題を解決するために、本実施形態のリリーフ弁22は、燃料ガスの圧力が第1所定値より大きい第2所定値(例えば10MPa)を超えた場合、燃料ガスの放出量を増大させる構造を有する。これにより、リリーフ弁22は、上述のように減圧弁20の不具合とともに圧力センサ24または主止弁18が故障した場合であっても、タンク16及び燃料ガス流路14の燃料ガスの圧力を早期に低下させることができる。以下、リリーフ弁22の具体的な構造について図を用いて説明する。
【0033】
図2は、本実施形態のリリーフ弁22の構造を示す断面図である。図3は、弁体が開弁した状態を示す断面図である。図4は、弁本体がスライドした状態を示す断面図である。図5は、図2のA方向から見た図である。そして、図6は、図4のB方向から見た図である。
【0034】
リリーフ弁22は、流路(図示せず)に接続されるハウジング30と、ハウジング30に収容される弁本体32とを有する。
【0035】
ハウジング30は、弁本体32を収容する収容室34を有する。収容室34の一端(図の上方)は流路に接続され、他端(図の下方)は外部に開放されている。収容室34は、弁本体32の外形より大きく形成されており、収容室34の一端側にハウジング30と弁本体32で区画形成される一次室36を有する。なお、収容室34の一端側は、後述する弁体44が閉弁する方向であり、この方向を以降、閉弁方向と記す。また、収容室34の他端側は、弁体44が開弁する方向であり、この方向を以降、開弁方向と記す。
【0036】
弁本体32には、これの内部に略円筒状の空間である二次室38が形成されている。二次室38は、開弁方向が外部に開放されている。また、弁本体32には、一次室36と二次室38を連通する連通孔40と、連通孔40の二次室38側の開口を縁取るように弁座42とが形成されている。
【0037】
二次室38には、連通孔40を開閉する弁体44が設けられている。弁体44は、弁座42に対応するシール部46を有する。シール部46が弁座42に密着すると、連通孔40はシール部46により覆われて閉弁状態となる。一方、シール部46が弁座42から離れると、一次室36と二次室38が連通して開弁状態となる。
【0038】
また、二次室38には、弾性部材であるばね48とばね台座50とを有する。ばね台座50は、二次室38の開弁方向端部に、例えばねじ結合により着脱可能に設けられる。ばね台座50には貫通孔50aが形成されており、貫通孔50aを介して二次室38が外部に連通する。ばね48は、その一端がばね台座50に当接し、他端が弁体44に当接している。ばね48により弁体44には閉弁方向に付勢する付勢力が加えられている。この付勢力を発生させるばね48の圧縮量は、一次室36の流体圧力が第1所定値を超えると、ばね48が開弁方向に弾性変形するように設定されている。なお、ばね台座50を開弁方向または閉弁方向に移動させることにより、ばね48の圧縮量を変化させることができ、弁本体32の調圧を行うことができる。
【0039】
弁本体32が流路内の流体を外部に放出する動作について説明する。一次室36は流路に接続されているので、一次室36内は流路を流れる流体により満たされている。このため、一次室36内の流体圧力は、流路を流れる流体の圧力と同一となっている。一次室36の流体圧力が第1所定値を超えると、ばね48が開弁方向に弾性変形して弁体44が開弁方向に移動する。これにより、シール部46が弁座42から離れ、一次室36と二次室38が連通して開弁状態となる(図3に示される状態)。そうすると、一次室36の流体が、図3に示される矢印のように二次室38を通って外部に放出され、一次室36の流体圧力、すなわち流路の流体圧力を低下させることができる。その後、一次室36の流体圧力が第1所定値以下になると、ばね48が閉弁方向に弾性変形して弁体44が閉弁方向に移動する。これにより、シール部46が弁座42に密着し、一次室36と二次室38が遮断され開弁状態となる(図2に示される状態)。
【0040】
本実施形態のリリーフ弁32は、一次室36の流体圧力が第1所定値より大きい第2所定値を超えた場合、一次室36と外部を連通させる連通手段52を有する。この構成より、リリーフ弁32は、流路の流体圧力が第1所定値より大きくなった場合、外部への流体の放出量を更に増加させて流路の流体圧力を低下させることができるとともに、簡易な構造で小型化に対応することができる。以下、連通手段52について詳述する。
【0041】
連通手段52は、一次室36と外部を連通する外部連通路54と、外部連通路54を封止する封止部材56と、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ハウジング30に対して弁本体32をスライドさせるスライド機構58と有する。
【0042】
外部連通路54は、ハウジング30と弁本体32の間に形成される。すなわち、外部連通路54は、収容室34の一部である。収容室34は、開弁方向に向けて徐々に開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、収容室34には、開弁方向に向けて第1内周面34aと第2内周面34bと第3内周面34cと第4内周面34bとが順に形成され、第1内周面34aの内径より第2内周面34bの内径のほうが大きく、第2内周面34bの内径より第3内周面34cの内径のほうが大きく、第3内周面34cの内径より第4内周面34dの内径のほうが大きく形成されている。なお、本実施形態の収容室34は内径が異なる4種の内周面を有する場合について説明したが、この構成に限定されない。開弁方向に向けて徐々に開口面積が大きくなるのであれば、収容室34は内径が異なる複数、例えば3種または5種の内周面を有することができる。または、収容室34は1つの内周面であって、徐々に内径が変化する、すなわち円錐状の内周面のみを有することもできる。
【0043】
そして、収容室34に収容される弁本体32は、開弁方向に向けて徐々に外形が大きくなるように形成される。具体的には、弁本体32には、開弁方向に向けて第1外周面32aと第2外周面32bとが順に形成され、第1外周面32aの外径より第2外周面32bの外径のほうが大きく形成されている。そして、弁本体32の第1外周面32aは、これの外径が収容室34の第2内周面34bの内径より小さくなるように形成され、弁本体32の第2外周面32bは、これの外径が収容室34の第3内周面34cの内径より僅かに小さくなるように形成されている。これにより、弁本体32が収容室34に収容されたとき、弁本体32の第1外周面32aと第2外周面32bと、これらの外周面に対向する収容室34の第2内周面34bと第3内周面34cと第4内周面34dとの間に隙間が形成される。この隙間が外部連通路54であり、一次室36と外部と連通する通路となる。なお、本実施形態の弁本体32は外径が異なる2種の外周面を有する場合について説明したが、この構成に限定されない。開弁方向に向けて徐々に外形が大きくなるのであれば、弁本体32は外径が異なる複数、例えば3種の外周面を有することができる。または、弁本体32は1つの外周面であって、徐々に外径が変化する、すなわち円錐状の外周面のみを有することもできる。
【0044】
封止部材56は、弁本体32の第2外周面32bに、これの外側から環状に設けられる。封止部材56は、例えばOリングであり、弁本体32が収容室34に収容されるとき、収容室34の第3内周面34cに隙間なく嵌合し、第2外周面32bと第3内周面34cとの隙間を封止する。これにより、流体が、外部連通路54を通って、一次室36から外部に流出することを防止することができる。なお、本実施形態においては、封止部材56が第2外周面32bと第3内周面34cとの隙間を封止する場合について説明したが、この構成に限定されない。外部連通路54を封止することができるのであれば、封止部材56は、弁本体32と収容室34が互いに対向する他の面の隙間を封止することもできる。なお、本実施形態においては、封止部材56が弁本体32に設けられる場合について説明したが、外部連通路54を封止するのであればハウジング30に設けられてもよい。
【0045】
スライド機構58は、弁本体32をハウジング30に固定するボルト60を有する。ハウジング30には、弁本体32がスライドする方向、すなわち開弁方向に沿って延びる長穴62が形成される。長穴62は、ボルト60の軸部60aが貫通したときに軸部60aに対して間隔が空くように形成される。そして、弁本体32には、軸部60aに形成されるねじ山に係合する係合穴64が形成される。これらの穴62,64にボルト60の軸部60aを図2に示す矢印A方向に向けて差し込むことにより、ボルト60は、軸部60aがハウジング30を貫通するとともに、軸部60aの先端が弁本体32に螺合し、弁本体32をハウジング30に固定することができる。なお、本実施形態においては、長穴62が収容室34の第4内周面34bに、係合穴64が弁本体の第2外周面32bにそれぞれ形成されているが、弁本体32と収容室34が互いに対向する他の面にそれぞれ形成されてもよい。
【0046】
また、スライド機構58は、ボルト60を係止する係止部66と、弁本体32が所定の距離をスライドした場合、弁本体32のスライドを規制する規制部68とを有する。係止部66と規制部68は、長穴62に形成される。図5に示されるように、長穴62には、これの幅を、軸部60bの直径L1より小さい長さL2まで絞る突起部が形成されており、この突起部が係止部66に相当する。これにより、ボルト60は長穴62の閉弁方向端部に係止される。また、係止部66は、これに所定値以上の荷重が加わると変形する特性を有する。この荷重は、一次室36の流体圧力が第2所定値であるときの、弁本体32を介してボルト60に伝達される荷重になるように予め設定されている。このため、図6に示されるように、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ボルト60が係止部66を変形させて開弁方向に移動、すなわち弁本体32が開弁方向にスライドすることができる。そして、ボルト66は長穴62の開弁方向端部に当接するので、弁本体32も停止する。すなわち、長穴62の開弁方向端部が、弁本体32のスライドを規制する規制部68に相当する。規制部68が弁本体32のスライドを規制することにより、弁本体32が収容部34から飛び抜けて他の装置に衝突してしまうことを防ぐことができる。また、弁本体32が所定の距離をスライドすることにより、弁本体32の一部がハウジング30から突出するので、減圧弁20や圧力センサ24などの不具合により一次室36の流体圧力が第2所定値を超えていることを目視により確認することができる。なお、係止部66の変形は、ボルト60が係止部66から外れて開弁方向に移動することができるのであれば、弾性変形であっても塑性変形であってもよい。
【0047】
リリーフ弁22が、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、流路内の流体を外部に放出する動作について説明する。一次室36の流体圧力が第2所定値を超えると、係止部66がボルト60からの荷重を受けて変形し、ボルト60が係止部66から外れて開弁方向に向かって規制部68まで移動、すなわち弁本体32が所定の距離を開弁方向に移動する。これにより、弁本体32に設けられた封止部材56も所定の距離を開弁方向に移動し、封止部材56に対応する収容室34の内周面が、第3内周面34cから第4内周面34dになる。第4内周面34dの内径は第3内周面34cの内径より大きいので、封止部材56と第4内周面34dの間に隙間が形成される。すなわち、封止部材56とハウジング30との間に隙間が形成され、一次室36と外部が連通して開弁状態となる(図4に示される状態)。そうすると、一次室36の流体が、図4に示される矢印のように二次室38を通るとともに外部連通路54を通って外部に放出されるので、流体の放出量が増加し、一次室36の流体圧力、すなわち流路の流体圧力を低下させることができる。
【0048】
次に、別の態様のスライド機構70について、図7,8を用いて説明する。図7は、別の態様のスライド機構70を示す断面図であり、図8は、弁本体32がスライドしたときの、スライド機構70を示す断面図である。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
スライド機構70は、弁本体32をハウジング30に固定するボルト60を有する。弁本体32には、弁本体32がスライドする方向、すなわち開弁方向に沿って延びる長穴72が形成される。長穴72は、ボルト60の軸部60aが貫通したときに軸部60aに対して間隔が空くように形成される。そして、ハウジング30には、軸部60aに形成されるねじ山に係合する係合穴74が形成される。これらの穴72,74にボルト60の軸部60aを差し込むと、ボルト60は、軸部60aがハウジング30に螺合するとともに、軸部60aの先端が弁本体32を貫通する。そして、軸部60aの先端に、ナット等の嵌合部材76をねじ込むことにより、弁本体32をハウジング30に固定することができる。
【0050】
長穴72には、図には示さないが、上記実施形態と同様の係止部66と規制部68とが形成されている。この構成により、この態様も上記実施形態と同様に、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ボルト60が係止部66から外れて弁本体32が所定の距離を開弁方向にスライドすることができ、一次室36と外部を連通させることができる。
【0051】
次に、さらに別の態様のスライド機構78について、図9,10を用いて説明する。図9は、別の態様のスライド機構78を示す断面図であり、図10は、弁本体32がスライドしたときの、スライド機構78を示す断面図である。なお、上述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
スライド機構78は、弁本体32をハウジング30に固定する固定部80を有する。固定部80は、外部連通路54と外部を連通する貫通穴80aを有する。固定部76は、ハウジング30に連結され、弁本体32の接触面に接触するように設けられる。具体的には、固定部76は、ねじ接合により収容室34の第4内周面34dに連結され、弁本体32の第2外周面32bに接するように設けられる。固定部76と第2外周面32bとに働く摩擦力により、弁本体32はハウジング30に固定される。固定部76と第2外周面32bの接触面の摩擦力は、一次室36の流体圧力が第2所定値であるときに、最大静止摩擦力になるように予め設定されている。このため、図10に示されるように、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、固定部76と第2外周面32bに働く摩擦力が最大静止摩擦力を超えるため、弁本体32が開弁方向にスライドすることができる。そして、弁本体32が所定の距離を移動すると、固定部80が弁本体32に形成される段部82に当接するので、弁本体32が停止して弁本体32の飛び抜けを防止する。すなわち、段部82が、上述した実施形態の規制部68に相当する。
【0053】
この構成により、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、弁本体32が固定部80に対してスライドすることができ、図10に示されるように、封止部材56とハウジング30との間に隙間が形成され、一次室36と外部を連通させることができる。
【0054】
次に、さらに別の態様のスライド機構84について、図11,12を用いて説明する。図11は、別の態様のスライド機構84を示す断面図であり、図12は、弁本体32がスライドしたときの、スライド機構84を示す断面図である。なお、上述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
スライド機構84は、封止部材52より弁本体32のスライド側、すなわち開弁方向に位置し、弁本体32をハウジング30に固定する固定部86を有する。固定部86は、弁本体32に一体に設けられ、収容部34の第4内周面34dにねじ接合される。また、固定部86は、外部連通路54と外部を連通する貫通穴86aを有する。
【0056】
また、スライド機構84は、固定部86と封止部材52との間に、弁本体32の筒部の一部になるように設けられる塑性変形部88を有する。具体的には、塑性変形部88は、弁本体32の第2外周面に環状に設けられる。塑性変形部88は、所定の荷重が加わると塑性変形する特性を有する。この荷重は、一次室36の流体圧力が第2所定値であるときの、弁本体32に伝達される荷重になるように予め設定されている。
【0057】
この構成により、一次室36の流体圧力が第2所定値を超えた場合、塑性変形部材90が開弁方向において縮むように変形するので、塑性変形部材90より閉弁方向側にある弁本体32が開弁方向にスライドすることができる。そうすると、図12に示されるように、封止部材56とハウジング30との間に隙間が形成され、一次室36と外部を連通させることができる。
【0058】
これらの実施形態においては、リリーフ弁22が燃料ガス流路14に単体で配置される場合について説明したが、この構成に限定されない。リリーフ弁22が他の装置、例えばリリーフ機能付き減圧弁に一体に設けられてもよい。この場合、上述した実施形態のハウジング30を減圧弁のハウジングとすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 燃料電池システム、12 燃料電池、14 燃料ガス流路、16 タンク、18 主止弁、20 減圧弁、22 リリーフ弁、24 圧力センサ、30 ハウジング、32 弁本体、34 収容室、36 一次室、38 二次室、40 連通孔、44 弁体、46 シール部、48 ばね、52 連通手段、54 外部連通路、56 封止部材、58,70,78,84 スライド機構、60 ボルト、62,72 長穴、66 係止部、68 規制部、80,86 固定部、88 塑性変形部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路から流体が流入する一次室を有するハウジングと、
ハウジングに収容された弁本体であって、外部に開放された二次室と、一次室と二次室とを連通する連通孔と、連通孔を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するとともに、一次室の流体圧力が第1所定値を超えると開弁方向に弾性変形して一次室と二次室を連通させる弾性部材とを有する弁本体と、
一次室の流体圧力が第1所定値より大きい第2所定値を超えた場合、一次室と外部を連通させる連通手段と、
を有することを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
請求項1に記載のリリーフ弁において、
連通手段は、
ハウジングと弁本体の間に形成され、一次室と外部を連通する外部連通路と、
外部連通路を封止する封止部材と、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ハウジングに対して弁本体をスライドさせるスライド機構と、
を有し、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、弁本体がハウジングに対してスライドすることにより封止部材と弁本体またはハウジングとの間に隙間が形成され、一次室と外部が連通する、
ことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項3】
請求項2に記載のリリーフ弁において、
スライド機構は、弁本体が所定の距離をスライドした場合、弁本体のスライドを規制する規制部を有する、
ことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項4】
請求項3に記載のリリーフ弁において、
スライド機構は、さらに、
弁本体をハウジングに固定する固定部と、
弁本体またはハウジングに設けられ、固定部を係止する係止部と、
を有し、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、固定部は係止部から外れ弁本体がスライドする、
ことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項5】
請求項4に記載のリリーフ弁において、
固定部は、弁本体またはハウジングの一方に形成された長穴であって、弁本体がスライドする方向に形成された長穴を貫通して、弁本体またはハウジングの他方に螺合するネジ部材であり、
係止部は、前記長穴の開口部を絞るように形成された突起部であり、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、ネジ部材が突起部を変形させることで、ネジ部材が前記長穴の延びる方向に沿って移動可能になる、
ことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項6】
請求項3に記載のリリーフ弁において、
スライド機構は、さらに、弁本体をハウジングに固定する固定部を有し、
固定部は、弁本体またはハウジングの一方に連結され、弁本体またはハウジングの他方の接触面に接触するように設けられ、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、固定部と前記接触面の間には最大静止摩擦力を超える力が働いて弁本体がスライドする、
ことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1つに記載のリリーフ弁において、
規制部により弁本体のスライドを規制されたとき、弁本体の少なくとも一部がハウジングから突出することを特徴とするリリーフ弁。
【請求項8】
請求項3に記載のリリーフ弁において、
スライド機構は、さらに、
封止部材より弁本体のスライド側に位置し、弁本体をハウジングに固定する固定部と、
固定部と封止部材との間に、弁本体の筒部の一部になるように設けられ、所定の力が加わると塑性変形する塑性変形部と、
を有し、
一次室の流体圧力が第2所定値を超えた場合、塑性変形部が弁体のスライド方向において縮むように変形し、塑性変形部より封止部材側にある弁本体がスライドする、
ことを特徴とするリリーフ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−276073(P2010−276073A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127447(P2009−127447)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】