リンク作動装置
【課題】 外径寸法が小さいコンパクトな構成であり、拘束、支持、案内等をする物とリンク機構との接触を回避しやすいリンク作動装置を提供する。
【解決手段】 リンク作動装置1は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブ2,3と、二組のリンク機構4A,4Bとを有する。リンク機構4A,4Bは、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構であり、リンクハブ2,3に対して回転可能に端部リンク5,6を連結し、入力側および出力側の端部リンク5,6を中央リンク7に対して回転可能に連結してなる。一組のリンク機構4Bに、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とを互いに連動して回転変位させる連動手段9を設ける。一組のリンク機構4Aに、回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータ23,24を設ける。
【解決手段】 リンク作動装置1は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブ2,3と、二組のリンク機構4A,4Bとを有する。リンク機構4A,4Bは、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構であり、リンクハブ2,3に対して回転可能に端部リンク5,6を連結し、入力側および出力側の端部リンク5,6を中央リンク7に対して回転可能に連結してなる。一組のリンク機構4Bに、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とを互いに連動して回転変位させる連動手段9を設ける。一組のリンク機構4Aに、回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータ23,24を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットの関節部、産業機械等における三次元空間での物品の取り回しや複雑な加工等の作業を広範囲な領域で、高速かつ精密に実行するために用いられるリンク作動装置に関し、特に医療分野において人の関節部回りに装着して関節機能の回復や運動補助に用いるのに適したリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記リンク作動装置として、入力側のリンクハブと出力側のリンクハブを、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構で連結し、入力側のリンクハブに対して出力側のリンクハブを姿勢変更可能とした構成が提案されている(例えば特許文献1,2)。四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構は、入力側および出力側の各リンクハブにそれぞれ回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンクと、これら入力側および出力側の端部リンクに回転可能に連結された中央リンクとでなる。特許文献1には、リンク機構を直線で表現した幾何学モデルにおいて、中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが鏡像対称を成す形状である例と、点対称を成す形状である例とが開示されている。また、特許文献2には、前記入力側部分と出力側部分とが点対称を成す形状である例が開示されている。
【0003】
上記特許文献1,2を含めて、従来のリンク作動装置は、リンク機構の数が三組であった。これは、リンク機構をリンクだけで構成する場合に、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を規定するために必要な最低限のリンク機構の数は三組であることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4476603号公報
【特許文献1】特開2004−009276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク作動装置のリンク機構の数が三組であると、例えば図15に示すように、各リンク機構104(104A,104B,104C)がほぼ120°の間隔で配置されることとなる。この場合、各リンク機構104の相互間距離が狭く、一つのリンク機構104Aにおけるリンクハブ103(102)と端部リンク106(105)の回転対偶部112(111)と、他のリンク機構104Bにおける端部リンク106(105)と中央リンク107の回転対偶部114(113)とが接近した状態となる。そこで、両回転対偶部112(111),114(113)が互いに干渉するのを避けるために、回転対偶部114(113)を外径側に逃がした形状としている。その結果、リンク作動装置101全体の外径が大きいという課題があった。
【0006】
また、三節連鎖のリンク機構を有するリンク作動装置は、入力側のリンクハブに対して出力側のリンクハブが、回転方向が2自由度の動きが可能であることから、医療分野での利用が注目されている。例えば、人の関節部回りに装着して関節機能の回復や運動補助に用いることが考えられている。しかし、リンク機構の数が三組のリンク作動装置は、各リンク機構104の相互間距離が狭いため、人の関節部回りに装着した場合、いずれかのリンク機構104の一部がどうしても患者の身体に当ってしまう。そのため、人の関節部回りに装着して使用することは実質上困難であった。
【0007】
この発明の目的は、外径寸法が小さいコンパクトな構成であり、拘束、支持、案内等をする物とリンク機構との接触を回避しやすいリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のリンク作動装置は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有する。この発明のリンク作動装置は、上記構成において、前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことを特徴とする。連動手段を設けるリンク機構と、アクチュエータを設けるリンク機構とは同じであっても違っていてもよい。また、二つ以上のアクチュエータのうち、少なくとも二つのアクチュエータの設置箇所は、中央リンクの中央部に対する入力側と出力側で対称でない配置とする。なお、この明細書で「回転対偶軸」とは、回転対偶の回転中心軸を言う。
【0009】
この構造において、リンクハブとそれに連結される端部リンクの入力側と出力側それぞれは、球面リンク機構を構成しており、それぞれの球面リンク機構は、入力側と出力側の端部リンクが中央リンクを介して連結されている。ここで各リンク機構の二つの中央リンクは、それぞれの球面リンク機構が重なる円の円周上の並進運動に限定された1自由度となる。入力側および出力側の球面リンク機構は、節の曲率半径を無限大とすれば平面上の四節リンク機構であり、入力側、出力側のそれぞれが独立して1自由度を有している。入力側と出力側の端部リンク間に連動手段が無い場合は、二つの中央リンクの1自由度と入力側と出力側の球面リンク機構の各1自由度とで3自由度となる。ここで、このリンク作動装置では、入力側と出力側の端部リンク間に連動手段を設けたため、それぞれの球面リンク機構は連動し、両球面リンク機構で1自由度となる。以上のように、このリンク作動装置は、中央リンクの1自由度と前記球面リンク機構の1自由度を合わせた2自由度の機構となる。なお、中央リンクの位置変位は、入力側と出力側のリンクハブ間においては角度変化となり、以上から入力側と出力側のリンクハブ間は、2方向の角度変化が可能な構造となる。
このように入力側と出力側の球面リンク機構に加えて、入力側と出力側の端部リンク間に連動手段を設けたことにより、二組のリンク機構に関して、それぞれのリンク機構で、中央リンクの中央部に対して入力側と出力側のリンクハブ、入力側と出力側の端部リンク、および中央リンクの位置が同時に決まる。このため、二つのアクチュエータを中央リンクの中央部に対して対称な位置に配置しても1自由度の位置制御にしかならず、1自由度がフリーのままとなる。従って、2自由度の位置制御をするには、中央リンクの中央部に対して対称でない位置にアクチュエータを配置する必要がある。
この2自由度機構は、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、入力側のリンクハブの中心軸と出力側のリンクハブの中心軸の最大折れ角を90°以上とすることが可能であり、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。上記中心軸は、入力側と出力側のリンクハブが互いに平行である状態での、それぞれのリンクハブ内における二つの端部リンクとの回転対偶軸の交点であるリンクハブ中心を結ぶ軸を指す。
【0010】
二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれのリンクハブと端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係とし、さらに二組のリンク機構のうちの一組に、入力側の端部リンクと出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けたことにより、リンク機構の数が二組であっても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を規定することができる。リンク機構の数が二組であって、従来の三組と比べて少ないため、各リンク機構同士の干渉を回避し易く、設計の自由度が高い。それにより、リンク作動装置全体の外径が小さいコンパクトな構成とすることが可能である。また、リンク機構の数が少ないため、低コスト化を実現できる。
【0011】
リンク機構の回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことにより、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を2自由度の回転方向に任意に変更できる。
これら二つ以上のアクチュエータは二組のリンク機構のうちの一組に設けられているため、このアクチュエータが設けられたリンク機構の側に、アクチュエータやその周辺部品が偏って集まっている。よって、このリンク作動装置を、物の拘束、支持、案内等に用いる場合、例えば人の関節部回りに装着する場合、アクチュエータが設けられたリンク機構の側が身体等の被拘束物等から離れて位置するように装着すれば、リンク機構等と患者の身体等の被拘束物等との接触を回避できる。
また、リンク機構の数が二組であるため、入側のリンクハブに対して出力側のリンクハブが可能な範囲内でどのような姿勢にあるときでも、二組のリンク機構のどの部位も位置しない周方向の範囲を比較的広くとることができ、リンク機構と身体との接触も防ぎやすい。
【0012】
この発明において、前記二組の各リンク機構は、これらリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンクの中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であっても良い。
この場合、入力側の端部リンクと出力側の端部リンクの可動範囲が、周方向範囲で同じになるので、入力側のリンクハブと出力側のリンクハブとの間の空間において、端部リンクおよび中央リンクが侵入しない領域が広くなる。この各リンクが侵入しない領域から、前記空間に物品を入れることが可能となる。また、この領域では、各リンク作動装置に他の物品を接近させてもよいため、本装置をロボット、産業機械等に取付けたときにコンパクトとなる。
さらに、中央リンクと二つの端部リンクの組立て体を入力側と出力側のリンクハブに組み付ける際に、取付け部の回転対偶軸が入力側と出力側で周方向位置が一致しているため、前記組立て体を一方向から組み付けることができ、組立て性が向上する。
【0013】
この発明において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記端部リンクと前記中央リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けることで、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。
【0014】
また、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記リンクハブと前記中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。リンクハブと中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータが直動アクチュエータである場合、リンクハブ、端部リンク、中央リンク、および直動アクチュエータで閉じられたリンク構成となり、リンク機構に作用する荷重を直動アクチュエータで受けるため、リンク作動装置の剛性が向上する。
【0015】
この発明において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータが直動アクチュエータである場合、入力側の端部リンク、中央リンク、出力側の端部リンク、および直動アクチュエータで閉じられたリンク構成となり、リンク機構に作用する荷重を直動アクチュエータで受けるため、リンク作動装置の剛性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
この発明のリンク作動装置は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有するものにおいて前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたため、外径寸法が小さいコンパクトな構成であり、拘束、支持、案内等をする物とリンク機構との接触を回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図2】同リンク作動装置のリンク作動装置本体の斜視図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】同リンク作動装置本体を展開した状態の一部破断展開図である。
【図5】同リンク作動装置本体を直線で表現した図である。
【図6】同リンク作動装置本体に付与するトルクの大きさの変化を示すグラフである。
【図7】(A)は同リンク作動装置本体の一状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図8】(A)は同リンク作動装置本体の異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図9】(A)は同リンク作動装置本体のさらに異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図10】(A)は同リンク作動装置本体のさらに異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図11】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図12】同リンク作動装置のアクチュエータの一例を示す断面図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図14】(A)は構成の異なるリンクハブの一状態を示す図、(B)は同リンクハブの異なる状態を示す図である。
【図15】従来のリンク作動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。このリンク作動装置1は、リンク作動装置本体1aと、このリンク作動装置本体1aを駆動する二つのアクチュエータ23,24とでなる。リンク作動装置本体1aから説明する。
【0019】
図2および図3はリンク作動装置本体1aをそれぞれ異なる角度から見た斜視図、図4は同リンク作動装置本体1aを展開した状態の一部破断展開図である。図2ないし図4に示すように、このリンク作動装置本体1aは、入力側および出力側のリンクハブ2,3を有し、これらリンクハブ2,3を二組のリンク機構4A,4Bで連結したものである。リンク機構4A,4Bは、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構であり、入力側のリンクハブ2に一端が回転自在に連結された入力側の端部リンク5と、出力側のリンクハブ3に一端が回転自在に連結された出力側の端部リンク6と、これら端部リンク5,6の他端に両端がそれぞれ回転自在に連結された中央リンク7とで構成される。
【0020】
上記二組のリンク機構4A,4Bは、幾何学的に同じ形状である。幾何学的に同じ形状とは、図5のようにリンク機構を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが互いに同じ形状であることを言う。また、それぞれのリンク機構4A,4Bは、直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク7の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状である。言い換えると、中央リンク7と端部リンク5,6の二つの回転対偶の並び方向に対して垂直な横断面F1を対称面として、前記入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称である。上記横断面F1は、中央リンク7と2つの端部リンク5,6の回転対偶軸O3,O4の成す角度を2等分する平面であるとも言える。
【0021】
各リンク機構4A,4Bの入力側および出力側の端部リンク5,6は、共に球面リンク構造である。球面リンク構造とは、図4に示すように、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)、および端部リンク5(6)と中央リンク7の回転対偶軸O3(O4)が、すべて球面リンク中心P1(P2)を通る構造を言う。
【0022】
二組のリンク機構4A,4Bは、それぞれの回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)が互いに交差する位置関係にある。つまり、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°でない。そして、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°よりも大きい側に、各リンク機構4A,4Bの中央リンク7が位置している。図示例では、小さい方の軸間角度αが120°とされている。
なお、図4の状態では、二組のリンク機構4A,4Bが、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2を通り、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度を二等分する縦断面F4に対して互いに鏡像対称となる位置に配置されている。
【0023】
端部リンク5,6と中央リンク7の各回転対偶軸O3,O4は、ある交差角をもっていても良いし、平行であっても良い。図示例では、回転対偶軸O3,O4の軸間角度γは90°とされている。また、入力側および出力側のリンクハブ2,3が同一平面上に位置する図4の状態において、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)と回転対偶軸O3(O4)の軸間角度βは、75°とされている。
【0024】
図3および図4において、一方のリンク機構4Bの入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とは、連動手段9により、互いに連動して回転変位するようになっている。連動手段9が設けられたリンク機構4Bは、後述するアクチュエータ23,24が設けられていない方のリンク機構である。
この実施形態の場合、連動手段9は、入力側の端部リンク5および出力側の端部リンク6に対してそれぞれ回転自在な一対のかさ歯車10,11を互いに噛み合わせた構成である。一対のかさ歯車10,11は同諸元のものであり、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6が、互いの回転方向が反対で、かつ回転変位角度が同じになるように連動する。このように、連動手段9が複数のかさ歯車10,11等の歯車の噛み合いによるものであると、入力側の端部リンク5および出力側の端部リンク6の回転変位に滑り等による誤差が生じないため、精度良く連動させることができ、またコンパクトである。
【0025】
連動手段9は、同諸元の一対のかさ歯車10,11の噛み合いによるものに限らない。かさ歯車の代わりにリンク機構、カム、ベルト等を用いてもよい。なお、前記軸間角度γ(図4)が0°のときには、平歯車を用いる。また、一対の歯車の歯数を互いに異ならせても良い。その場合、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の回転変位角度が異なる。さらに、歯車以外の別の手段、例えばロータリアクチュエータやモータ等のアクチュエータで入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の相互回転を制御してもよい。
【0026】
図4に示すように、リンクハブ2(3)は、球面リンク中心P1(P2)を中心として、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)が位置する平面F2(F3)(図3)に沿って拡がる円弧状であり、その両端に軸受内包部13がそれぞれ設けられている。軸受内包部13は内部に二つの転がり軸受14を有し、これら転がり軸受14により、端部リンク5,6の基端に一体に設けた回転軸15を回転自在に支持する。回転軸15の軸心は、回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bと一致する。二つの転がり軸受14は間隔を開けて配置されており、その間隔部に端部リンク5,6の基端が位置している。軸受内包部13には、端部リンク5,6の基部が回転可能に嵌る溝13aが形成されている。この溝13aにより端部リンク5,6の回転範囲を規制することで、先に説明したように、各リンク機構4A,4Bの中央リンク7が常に回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°よりも大きい側に位置する。
【0027】
転がり軸受14は、外輪14aが軸受内包部13の内周に圧入等により嵌合し、内輪14bが回転軸15の外周に圧入等により嵌合している。転がり軸受14は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。転がり軸受14としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受を用いても良い。また、転がり軸受14の代わりに滑り軸受を用いてもよい。
【0028】
また、中央リンク7の両端部には転がり軸受17が設けられ、この転がり軸受17により、端部リンク5,6の先端に一体に設けた回転軸18を回転自在に支持する。回転軸18の軸心は、回転対偶軸O3,O4と一致する。転がり軸受17は、外輪17aが中央リンク7の端部に圧入等により嵌合し、内輪17bが回転軸18の外周に圧入等により嵌合している。転がり軸受17は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。転がり軸受17としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受を用いても良い。また、転がり軸受17の代わりに滑り軸受を用いてもよい。
【0029】
リンクハブ2,3は先に説明したような円弧状であり、それぞれその内部に、前記平面F2,F3に対して垂直な方向すなわち中心軸C1,C2(図2)の方向に貫通した中空部20を有する。このリンク作動装置1が人の関節部回りに装着されるものである場合、中空部20の広さは、関節部に続く部位が挿通可能な広さとされる。この中空部20は、一対の軸受内包部13間に形成された開口部21を介してリンクハブ2,3の外部と連通している。開口部21の幅Wは、前記関節部に続く部位が通れる程度とする。開口部21は、入力側および出力側のリンクハブ2,3のいずれについても、各回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bに対して同じ側に位置する。つまり、図2のように、入力側のリンクハブ2と出力側のリンクハブ3が互いに平行になる姿勢において、両リンクハブ2,3の開口部21が、共に同じ側を向く。
【0030】
図1において、二組のリンク機構4A,4Bのうちの片方のリンク機構4Aに、二つのアクチュエータ23,24が設けられている。第1のアクチュエータ23は、入力側のリンクハブ2に固定され、入力側の端部リンク5の基端に設けられた回転軸15を回転させる。すなわち、第1のアクチュエータ23は、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ24は、中央リンク7に固定され、入力側の端部リンク5の先端に設けられた回転軸17を回転させる。すなわち、第2のアクチュエータ24は、入力側の端部リンク5と中央リンク7の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第1、第2のアクチュエータ23,24は、例えば電動モータである。
【0031】
リンク作動装置本体1aは、四つの回転対偶からなる三節連鎖構造の二組のリンク機構4A,4Bで入力側および出力側のリンクハブ2,3を連結したものであるが、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度を180°以外とし、かつ一方のリンク機構4Bに、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とを互いに連動して回転変位させる連動手段9を設けたことにより、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢が一義的に決まる、回転の自由度が2自由度の構造となっている。
【0032】
リンク機構4Aに設けた第1のアクチュエータ23により、入力側のリンクハブ2に対する入力側の端部リンク5の回転角を制御することで、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を決定する2自由度の回転のうち1自由度の回転位置が決められる。また、第2のアクチュエータ24により、入力側の端部リンク5に対する中央リンク7の回転角を制御することで、もう1自由度の回転位置が決められる。
【0033】
この実施形態のように、二組のリンク機構4A,4Bにおいて、端部リンク5,6の角度、長さ、および端部リンク5,6の幾何学的形状が入力側と出力側で等しく、また、中央リンク7についても入力側と出力側で形状が等しいとき、中央リンク7の対称面に対して中央リンク7と、入力側および出力側のリンクハブ2,3と連結される端部リンク5,6との角度位置関係を入力側と出力側で同じにすれば、幾何学的対称性から入力側のリンクハブ2および入力側の端部リンク5と、出力側のリンクハブ3および出力側の端部リンク6とは同じに動く。
【0034】
このリンク作動装置1の具体的な動作を説明する。図6は、アクチュエータ23,24により入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更するときの、リンク機構4A,4Bに作用するトルクの変化を、図7の状態におけるトルクで無次元化した図である。図7ないし図10は、リンク作動装置1を簡略化したモデルで表現した正面図、底面図、および斜視図であって、それぞれ図6におけるA,B,C,D各時点における姿勢を示している。このモデルでは、入力側のリンクハブ2の回転対偶軸O1A,O1B(図4)を含む平面F2(図3)を鉛直状態にし、かつ開口部21を重力G方向に配置した場合を示している。なお、図7ないし図10には、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2を球体で示してあり、リンクハブ3の中心P2に錘を配置している。錘は装置重量に比べて十分重く設定している。
【0035】
図7は、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が平行である状態を示している。このとき、重力Gに抗して出力側のリンクハブ3およびリンク機構4A,4Bの各リンク5,6,7の姿勢を維持するために、リンク機構4A,4Bに、アクチュエータ23,24(図1)によってそれぞれ同じ値の所定値のトルクが作用している。図7の状態から、リンク機構4A,4Bに作用する各トルクを前記所定値よりも小さくすると、図8のように、出力側のリンクハブ3が、リンク機構4A,4Bの各中央リンク7が互いに干渉するまで下方に回動する。また、図7の状態から、リンク機構4Aの入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5との角度を固定し、リンク機構4Bに作用するトルクを小さくすると、図9のように、リンク機構4Aが全体的に縮み、かつリンク機構4Bが全体的に伸びて、出力側のリンクハブ3が前方(同図(A)における手前側)に傾いた姿勢となる。さらに、リンク機構4Aに作用するトルクおよびリンク機構4Bに作用するトルクを前記所定値に対してそれぞれ別個に変化させると、図10のように、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が捩れた姿勢となる。全状態において、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心P1,P2間の距離は変化しない。
【0036】
図7ないし図10に示すように、このリンク作動装置1は、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、入力側のリンクハブ2の中心軸C1と出力側のリンクハブ3の中心軸C2の折れ角θ(図8(A))の最大値(最大折れ角)を90°以上とすることができる。また、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の旋回角φ(図10(B))を0°〜360°の範囲で設定できる。折れ角θは、入力側のリンクハブ2の中心軸C1に対する出力側のリンクハブ3の中心軸C2の傾斜角度のことであり、旋回角φは、入力側のリンクハブ2の中心軸C1に対して出力側のリンクハブ3が傾斜した水平角度のことである。
【0037】
このリンク作動装置1は、連動手段9により、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6を、中央リンク7に対する回転方向が互いに逆で、かつ回転変位角度が同じとなるように連動させる。それにより、入力側のリングハブ2に対して出力側のリンクハブ3の姿勢を変更するとき、常に、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2の中間点に位置して球面リンク中心P1,P2を結ぶ直線に対して垂直な平面F5が、中央リンク7と端部リンク5,6の二つの回転対偶の並び方向に対して垂直な横断面F1と一致する。これにより、入力側と出力側が前記横断面F1に対して対称に動くことで、入力側の変位に対して出力側も同じ変位となり、変動した変位とならないため、操作性が良い。
【0038】
各リンク機構4A,4Bにおける4つの回転対偶、つまり、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5との連結部分、出力側のリンクハブ3と出力側の端部リンク6との連結部分、および入力側および出力側の端部リンク5,6と中央リンク7との二つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0039】
このリンク作動装置1は、リンク機構4A,4Bの数が二組であって、従来の三組と比べて少ないため、各リンク機構4A,4B同士の干渉を回避し易く、設計の自由度が高い。それにより、リンク作動装置1全体の外径が小さいコンパクトな構成とすることが可能である。また、リンク機構4A,4Bの数が少ないため、低コスト化を実現できる。さらに、二組のリンク機構4A,4Bの形状が同じであるため、部品の種類を減らすことができ、このことからも低コスト化を実現できる。
【0040】
各リンク機構4A,4Bの中央リンク7は、二組のリンク機構4A,4Bのリンクハブ2,3と端部リンク5,6の各回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bが成す角度が180°よりも大きい側に位置している。そのため、構造的に、一方のリンク機構4A(4B)のリンクハブ2,3と端部リンク5,6の回転対偶部が、他方のリンク機構4B(4A)の端部リンク5,6と中央リンク7の回転対偶部に干渉しにくい。このことから、前記干渉を避けるために、端部リンク5,6と中央リンク7の回転対偶部を外径方向に張り出して設ける必要がなくなり、外径寸法が小さいコンパクトな構成にできる。
【0041】
入力側および出力側のリンクハブ2,3の中空部20に、リンクハブ2,3の外部と連通する開口部21が設けられているため、中空部20に人の四肢等を入れ易い。リンク機構の数が二組であるため、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が可能な範囲内でどのような姿勢にあるときでも、二組のリンク機構4A,4Bのどの部位も位置しない周方向の範囲を比較的広くとることができ、リンク機構4A,4Bと身体との接触も防ぎやすい。
【0042】
また、前記アクチュエータ23,24がいずれも同じリンク機構4Aに設けられているため、中空部20から外径方向に見た場合に、このリンク機構4Aの側に、アクチュエータ23,24やその周辺部品が偏って集まっている。よって、このリンク作動装置1を人の関節部回りに装着する際、アクチュエータ23,24が設けられたリンク機構4Aの側が身体から離れて位置するように装着すれば、リンク機構等と患者の身体との接触を回避できる。
【0043】
また、二組のリンク機構4A,4Bは、中央リンク7の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であり、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の可動範囲が、周方向に付き同じである。そのため、入力側のリンクハブ2と出力側のリンクハブ3との間の空間において、端部リンク5,6および中央リンク7が侵入しない周方向の領域が広くなり、この領域から前記空間に物品を入れることが可能となる。また、この領域では、各リンク5,6,7と他の部材とを接近させてもよいため、例えば、本装置を四肢に取付けたときに身体との接触を回避し易く、また、自然な姿勢を保ち易い。 さらに、中央リンク7と二つの端部リンク5,6の組立て体を入力側と出力側のリンクハブ2,3に組み付ける際に、取付け部(図示せず)の回転対偶軸が入力側と出力側で周方向位置が一致しているため、前記組立て体を一方向から組み付けることができるため、組立て性が向上する。
【0044】
図11は異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1も、一組のリンク機構4Aに二つのアクチュエータ23,25が設けられている。第1のアクチュエータ23は、前記同様の入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ25は、入力側のリンクハブ2と中央リンク7に一体の取付部材26とに両端が連結された、直線方向に伸縮動作を行う直動アクチュエータである。すなわち、第2のアクチュエータ25は、入力側のリンクハブ2と中央リンク7との相対距離を変更させるアクチュエータである。リンクハブ2と第2のアクチュエータ25の連結部27、および取付部材26と第2のアクチュエータ25の連結部28は、いずれも球対偶とされている。直動アクチュエータである第2のアクチュエータ25としては、例えばボールねじを用いた機構や、流体圧シリンダ装置を採用できる。
【0045】
このように二つのアクチュータ23,25を設けても、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。リンクハブ2と中央リンク7との相対距離を任意に変更する第2のアクチュエータ25を直動アクチュエータとすると、リンクハブ2、端部リンク5、中央リンク7、および第2のアクチュエータ25で閉じられたリンク構成となり、リンク機構4Aに作用する荷重を第2のアクチュエータ25で受けるため、リンク作動装置1の剛性が向上する。
【0046】
図12に、ボールねじを用いた直動アクチュエータの一例を示す。直動アクチュエータである第2のアクチュエータ25は、一端がリンクハブ2(図11)に連結されるねじ軸30にナット31が螺合しており、これらねじ軸30とナット31とでボールねじ32が構成されている。ナット31は、他方の取付部材26(図11)にロッド33aを介して連結される外筒体33に、二つの軸受34により回転自在に支持されている。ナット31の外周には平歯車36が設けられ、この平歯車36に他の平歯車37が噛み合っている。他の平歯車37は、前記外筒体33の外周に設置したモータ38の出力軸38aに取り付けられている。モータ38を回転させることで、一対の平歯車37,36を介してナット31が回転し、ボールねじ32によりねじ軸30がナット31に対して進退する。それにより、ねじ軸30の先端とロッド33aの先端間の距離が変わる。つまり、第2のアクチュエータ25が伸縮作動する。
【0047】
図13はさらに異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1も、一組のリンク機構4Aに二つのアクチュエータ23,40が設けられている。第1のアクチュエータ23は、前記同様に、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ40は、入力側の端部リンク5に一体の取付部材41と出力側の端部リンク6に一体の取付部材42とに両端が連結された、直線方向に伸縮動作を行う直動アクチュエータである。すなわち、第2のアクチュエータ25は、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6との相対距離を変更させるアクチュエータである。取付部材41と第2のアクチュエータ40の連結部43、および取付部材42と第2のアクチュエータ25の連結部44は、いずれも球対偶とされている。
【0048】
このように二つのアクチュータ23,40を設けても、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。入力側および出力側の端部リンク5,6間の相対距離を変更する第2のアクチュエータ40が直動アクチュエータであると、入力側の端部リンク5、中央リンク7、出力側の端部リンク6、および第2のアクチュエータ40で閉じられたリンク構成となり、リンク機構4Aに作用する荷重を第2のアクチュエータ40で受けるため、リンク作動装置1の剛性が向上する。
【0049】
図14は、リンクハブの異なる構成を示す。このリンクハブ2(3)は、中空部20の外周に沿って周方向に並ぶ二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)に分割されている。これら二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)のそれぞれに、二組のリンク機構4A,4Bのうちの一組ずつの端部リンク5(6)が回転可能に連結されている。二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は、結合部70,71により互いに結合されている。
【0050】
一方の結合部70はヒンジ構造であって、二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は、支点軸70a回りに互いに回動自在である。もう一方の結合部71は、片方のリンクハブ分割体2a(3a)に形成されたボルト穴71aに対して、他方のリンクハブ分割体2b(3b)に設けたボルト71bを入れ、このボルト71bにナット71cを締め付けることにより、両リンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)が互いに結合される。支点軸70aを中心にしてハブ分割体2a,2b(3a,3b)を回動させることで、図14(A)のように、中空部が結合部71側で開放した状態と、同図(B)のように中空部20が閉じられた状態とにできる。
【0051】
このように、リンクハブ2(3)を二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)に分割したことにより、中空部20内に関節部に続く部位を容易に入れることができる。二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は結合部70,71により互いに結合可能であるため、リンク作動装置1を関節部回りに安全かつ容易に装着することができる。2箇所の結合部70,71のうち1箇所の結合部70をヒンジ構造とすると、二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)が分離しないので、取扱いが容易である。
【符号の説明】
【0052】
1…リンク作動装置
2…入力側のリンクハブ(リンク機構構成部材)
3…出力側のリンクハブ(リンク機構構成部材)
4A,4B…リンク機構
5…入力側の端部リンク(リンク機構構成部材)
6…出力側の端部リンク(リンク機構構成部材)
7…中央リンク(リンク機構構成部材)
9…連動手段
23,24,25,40…アクチュエータ
O1A,O1B…入力側のリンクハブと入力側の端部リンクの回転対偶軸
O2A,O2B…出力側のリンクハブと出力側の端部リンクの回転対偶軸
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットの関節部、産業機械等における三次元空間での物品の取り回しや複雑な加工等の作業を広範囲な領域で、高速かつ精密に実行するために用いられるリンク作動装置に関し、特に医療分野において人の関節部回りに装着して関節機能の回復や運動補助に用いるのに適したリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記リンク作動装置として、入力側のリンクハブと出力側のリンクハブを、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構で連結し、入力側のリンクハブに対して出力側のリンクハブを姿勢変更可能とした構成が提案されている(例えば特許文献1,2)。四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構は、入力側および出力側の各リンクハブにそれぞれ回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンクと、これら入力側および出力側の端部リンクに回転可能に連結された中央リンクとでなる。特許文献1には、リンク機構を直線で表現した幾何学モデルにおいて、中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが鏡像対称を成す形状である例と、点対称を成す形状である例とが開示されている。また、特許文献2には、前記入力側部分と出力側部分とが点対称を成す形状である例が開示されている。
【0003】
上記特許文献1,2を含めて、従来のリンク作動装置は、リンク機構の数が三組であった。これは、リンク機構をリンクだけで構成する場合に、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を規定するために必要な最低限のリンク機構の数は三組であることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4476603号公報
【特許文献1】特開2004−009276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク作動装置のリンク機構の数が三組であると、例えば図15に示すように、各リンク機構104(104A,104B,104C)がほぼ120°の間隔で配置されることとなる。この場合、各リンク機構104の相互間距離が狭く、一つのリンク機構104Aにおけるリンクハブ103(102)と端部リンク106(105)の回転対偶部112(111)と、他のリンク機構104Bにおける端部リンク106(105)と中央リンク107の回転対偶部114(113)とが接近した状態となる。そこで、両回転対偶部112(111),114(113)が互いに干渉するのを避けるために、回転対偶部114(113)を外径側に逃がした形状としている。その結果、リンク作動装置101全体の外径が大きいという課題があった。
【0006】
また、三節連鎖のリンク機構を有するリンク作動装置は、入力側のリンクハブに対して出力側のリンクハブが、回転方向が2自由度の動きが可能であることから、医療分野での利用が注目されている。例えば、人の関節部回りに装着して関節機能の回復や運動補助に用いることが考えられている。しかし、リンク機構の数が三組のリンク作動装置は、各リンク機構104の相互間距離が狭いため、人の関節部回りに装着した場合、いずれかのリンク機構104の一部がどうしても患者の身体に当ってしまう。そのため、人の関節部回りに装着して使用することは実質上困難であった。
【0007】
この発明の目的は、外径寸法が小さいコンパクトな構成であり、拘束、支持、案内等をする物とリンク機構との接触を回避しやすいリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のリンク作動装置は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有する。この発明のリンク作動装置は、上記構成において、前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことを特徴とする。連動手段を設けるリンク機構と、アクチュエータを設けるリンク機構とは同じであっても違っていてもよい。また、二つ以上のアクチュエータのうち、少なくとも二つのアクチュエータの設置箇所は、中央リンクの中央部に対する入力側と出力側で対称でない配置とする。なお、この明細書で「回転対偶軸」とは、回転対偶の回転中心軸を言う。
【0009】
この構造において、リンクハブとそれに連結される端部リンクの入力側と出力側それぞれは、球面リンク機構を構成しており、それぞれの球面リンク機構は、入力側と出力側の端部リンクが中央リンクを介して連結されている。ここで各リンク機構の二つの中央リンクは、それぞれの球面リンク機構が重なる円の円周上の並進運動に限定された1自由度となる。入力側および出力側の球面リンク機構は、節の曲率半径を無限大とすれば平面上の四節リンク機構であり、入力側、出力側のそれぞれが独立して1自由度を有している。入力側と出力側の端部リンク間に連動手段が無い場合は、二つの中央リンクの1自由度と入力側と出力側の球面リンク機構の各1自由度とで3自由度となる。ここで、このリンク作動装置では、入力側と出力側の端部リンク間に連動手段を設けたため、それぞれの球面リンク機構は連動し、両球面リンク機構で1自由度となる。以上のように、このリンク作動装置は、中央リンクの1自由度と前記球面リンク機構の1自由度を合わせた2自由度の機構となる。なお、中央リンクの位置変位は、入力側と出力側のリンクハブ間においては角度変化となり、以上から入力側と出力側のリンクハブ間は、2方向の角度変化が可能な構造となる。
このように入力側と出力側の球面リンク機構に加えて、入力側と出力側の端部リンク間に連動手段を設けたことにより、二組のリンク機構に関して、それぞれのリンク機構で、中央リンクの中央部に対して入力側と出力側のリンクハブ、入力側と出力側の端部リンク、および中央リンクの位置が同時に決まる。このため、二つのアクチュエータを中央リンクの中央部に対して対称な位置に配置しても1自由度の位置制御にしかならず、1自由度がフリーのままとなる。従って、2自由度の位置制御をするには、中央リンクの中央部に対して対称でない位置にアクチュエータを配置する必要がある。
この2自由度機構は、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、入力側のリンクハブの中心軸と出力側のリンクハブの中心軸の最大折れ角を90°以上とすることが可能であり、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。上記中心軸は、入力側と出力側のリンクハブが互いに平行である状態での、それぞれのリンクハブ内における二つの端部リンクとの回転対偶軸の交点であるリンクハブ中心を結ぶ軸を指す。
【0010】
二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれのリンクハブと端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係とし、さらに二組のリンク機構のうちの一組に、入力側の端部リンクと出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けたことにより、リンク機構の数が二組であっても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を規定することができる。リンク機構の数が二組であって、従来の三組と比べて少ないため、各リンク機構同士の干渉を回避し易く、設計の自由度が高い。それにより、リンク作動装置全体の外径が小さいコンパクトな構成とすることが可能である。また、リンク機構の数が少ないため、低コスト化を実現できる。
【0011】
リンク機構の回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことにより、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を2自由度の回転方向に任意に変更できる。
これら二つ以上のアクチュエータは二組のリンク機構のうちの一組に設けられているため、このアクチュエータが設けられたリンク機構の側に、アクチュエータやその周辺部品が偏って集まっている。よって、このリンク作動装置を、物の拘束、支持、案内等に用いる場合、例えば人の関節部回りに装着する場合、アクチュエータが設けられたリンク機構の側が身体等の被拘束物等から離れて位置するように装着すれば、リンク機構等と患者の身体等の被拘束物等との接触を回避できる。
また、リンク機構の数が二組であるため、入側のリンクハブに対して出力側のリンクハブが可能な範囲内でどのような姿勢にあるときでも、二組のリンク機構のどの部位も位置しない周方向の範囲を比較的広くとることができ、リンク機構と身体との接触も防ぎやすい。
【0012】
この発明において、前記二組の各リンク機構は、これらリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンクの中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であっても良い。
この場合、入力側の端部リンクと出力側の端部リンクの可動範囲が、周方向範囲で同じになるので、入力側のリンクハブと出力側のリンクハブとの間の空間において、端部リンクおよび中央リンクが侵入しない領域が広くなる。この各リンクが侵入しない領域から、前記空間に物品を入れることが可能となる。また、この領域では、各リンク作動装置に他の物品を接近させてもよいため、本装置をロボット、産業機械等に取付けたときにコンパクトとなる。
さらに、中央リンクと二つの端部リンクの組立て体を入力側と出力側のリンクハブに組み付ける際に、取付け部の回転対偶軸が入力側と出力側で周方向位置が一致しているため、前記組立て体を一方向から組み付けることができ、組立て性が向上する。
【0013】
この発明において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記端部リンクと前記中央リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けることで、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。
【0014】
また、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記リンクハブと前記中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。リンクハブと中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータが直動アクチュエータである場合、リンクハブ、端部リンク、中央リンク、および直動アクチュエータで閉じられたリンク構成となり、リンク機構に作用する荷重を直動アクチュエータで受けるため、リンク作動装置の剛性が向上する。
【0015】
この発明において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータとを設けても良い。
このように二つのアクチュータを設けても、入力側のリンクハブに対する出力側のリンクハブの姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータが直動アクチュエータである場合、入力側の端部リンク、中央リンク、出力側の端部リンク、および直動アクチュエータで閉じられたリンク構成となり、リンク機構に作用する荷重を直動アクチュエータで受けるため、リンク作動装置の剛性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
この発明のリンク作動装置は、入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有するものにおいて前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたため、外径寸法が小さいコンパクトな構成であり、拘束、支持、案内等をする物とリンク機構との接触を回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図2】同リンク作動装置のリンク作動装置本体の斜視図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】同リンク作動装置本体を展開した状態の一部破断展開図である。
【図5】同リンク作動装置本体を直線で表現した図である。
【図6】同リンク作動装置本体に付与するトルクの大きさの変化を示すグラフである。
【図7】(A)は同リンク作動装置本体の一状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図8】(A)は同リンク作動装置本体の異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図9】(A)は同リンク作動装置本体のさらに異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図10】(A)は同リンク作動装置本体のさらに異なる状態を示す正面図、(B)は底面図、(C)は斜視図である。
【図11】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図12】同リンク作動装置のアクチュエータの一例を示す断面図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。
【図14】(A)は構成の異なるリンクハブの一状態を示す図、(B)は同リンクハブの異なる状態を示す図である。
【図15】従来のリンク作動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の底面図である。このリンク作動装置1は、リンク作動装置本体1aと、このリンク作動装置本体1aを駆動する二つのアクチュエータ23,24とでなる。リンク作動装置本体1aから説明する。
【0019】
図2および図3はリンク作動装置本体1aをそれぞれ異なる角度から見た斜視図、図4は同リンク作動装置本体1aを展開した状態の一部破断展開図である。図2ないし図4に示すように、このリンク作動装置本体1aは、入力側および出力側のリンクハブ2,3を有し、これらリンクハブ2,3を二組のリンク機構4A,4Bで連結したものである。リンク機構4A,4Bは、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構であり、入力側のリンクハブ2に一端が回転自在に連結された入力側の端部リンク5と、出力側のリンクハブ3に一端が回転自在に連結された出力側の端部リンク6と、これら端部リンク5,6の他端に両端がそれぞれ回転自在に連結された中央リンク7とで構成される。
【0020】
上記二組のリンク機構4A,4Bは、幾何学的に同じ形状である。幾何学的に同じ形状とは、図5のようにリンク機構を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが互いに同じ形状であることを言う。また、それぞれのリンク機構4A,4Bは、直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク7の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状である。言い換えると、中央リンク7と端部リンク5,6の二つの回転対偶の並び方向に対して垂直な横断面F1を対称面として、前記入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称である。上記横断面F1は、中央リンク7と2つの端部リンク5,6の回転対偶軸O3,O4の成す角度を2等分する平面であるとも言える。
【0021】
各リンク機構4A,4Bの入力側および出力側の端部リンク5,6は、共に球面リンク構造である。球面リンク構造とは、図4に示すように、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)、および端部リンク5(6)と中央リンク7の回転対偶軸O3(O4)が、すべて球面リンク中心P1(P2)を通る構造を言う。
【0022】
二組のリンク機構4A,4Bは、それぞれの回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)が互いに交差する位置関係にある。つまり、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°でない。そして、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°よりも大きい側に、各リンク機構4A,4Bの中央リンク7が位置している。図示例では、小さい方の軸間角度αが120°とされている。
なお、図4の状態では、二組のリンク機構4A,4Bが、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2を通り、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度を二等分する縦断面F4に対して互いに鏡像対称となる位置に配置されている。
【0023】
端部リンク5,6と中央リンク7の各回転対偶軸O3,O4は、ある交差角をもっていても良いし、平行であっても良い。図示例では、回転対偶軸O3,O4の軸間角度γは90°とされている。また、入力側および出力側のリンクハブ2,3が同一平面上に位置する図4の状態において、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)と回転対偶軸O3(O4)の軸間角度βは、75°とされている。
【0024】
図3および図4において、一方のリンク機構4Bの入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とは、連動手段9により、互いに連動して回転変位するようになっている。連動手段9が設けられたリンク機構4Bは、後述するアクチュエータ23,24が設けられていない方のリンク機構である。
この実施形態の場合、連動手段9は、入力側の端部リンク5および出力側の端部リンク6に対してそれぞれ回転自在な一対のかさ歯車10,11を互いに噛み合わせた構成である。一対のかさ歯車10,11は同諸元のものであり、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6が、互いの回転方向が反対で、かつ回転変位角度が同じになるように連動する。このように、連動手段9が複数のかさ歯車10,11等の歯車の噛み合いによるものであると、入力側の端部リンク5および出力側の端部リンク6の回転変位に滑り等による誤差が生じないため、精度良く連動させることができ、またコンパクトである。
【0025】
連動手段9は、同諸元の一対のかさ歯車10,11の噛み合いによるものに限らない。かさ歯車の代わりにリンク機構、カム、ベルト等を用いてもよい。なお、前記軸間角度γ(図4)が0°のときには、平歯車を用いる。また、一対の歯車の歯数を互いに異ならせても良い。その場合、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の回転変位角度が異なる。さらに、歯車以外の別の手段、例えばロータリアクチュエータやモータ等のアクチュエータで入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の相互回転を制御してもよい。
【0026】
図4に示すように、リンクハブ2(3)は、球面リンク中心P1(P2)を中心として、回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)が位置する平面F2(F3)(図3)に沿って拡がる円弧状であり、その両端に軸受内包部13がそれぞれ設けられている。軸受内包部13は内部に二つの転がり軸受14を有し、これら転がり軸受14により、端部リンク5,6の基端に一体に設けた回転軸15を回転自在に支持する。回転軸15の軸心は、回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bと一致する。二つの転がり軸受14は間隔を開けて配置されており、その間隔部に端部リンク5,6の基端が位置している。軸受内包部13には、端部リンク5,6の基部が回転可能に嵌る溝13aが形成されている。この溝13aにより端部リンク5,6の回転範囲を規制することで、先に説明したように、各リンク機構4A,4Bの中央リンク7が常に回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度が180°よりも大きい側に位置する。
【0027】
転がり軸受14は、外輪14aが軸受内包部13の内周に圧入等により嵌合し、内輪14bが回転軸15の外周に圧入等により嵌合している。転がり軸受14は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。転がり軸受14としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受を用いても良い。また、転がり軸受14の代わりに滑り軸受を用いてもよい。
【0028】
また、中央リンク7の両端部には転がり軸受17が設けられ、この転がり軸受17により、端部リンク5,6の先端に一体に設けた回転軸18を回転自在に支持する。回転軸18の軸心は、回転対偶軸O3,O4と一致する。転がり軸受17は、外輪17aが中央リンク7の端部に圧入等により嵌合し、内輪17bが回転軸18の外周に圧入等により嵌合している。転がり軸受17は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。転がり軸受17としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受を用いても良い。また、転がり軸受17の代わりに滑り軸受を用いてもよい。
【0029】
リンクハブ2,3は先に説明したような円弧状であり、それぞれその内部に、前記平面F2,F3に対して垂直な方向すなわち中心軸C1,C2(図2)の方向に貫通した中空部20を有する。このリンク作動装置1が人の関節部回りに装着されるものである場合、中空部20の広さは、関節部に続く部位が挿通可能な広さとされる。この中空部20は、一対の軸受内包部13間に形成された開口部21を介してリンクハブ2,3の外部と連通している。開口部21の幅Wは、前記関節部に続く部位が通れる程度とする。開口部21は、入力側および出力側のリンクハブ2,3のいずれについても、各回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bに対して同じ側に位置する。つまり、図2のように、入力側のリンクハブ2と出力側のリンクハブ3が互いに平行になる姿勢において、両リンクハブ2,3の開口部21が、共に同じ側を向く。
【0030】
図1において、二組のリンク機構4A,4Bのうちの片方のリンク機構4Aに、二つのアクチュエータ23,24が設けられている。第1のアクチュエータ23は、入力側のリンクハブ2に固定され、入力側の端部リンク5の基端に設けられた回転軸15を回転させる。すなわち、第1のアクチュエータ23は、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ24は、中央リンク7に固定され、入力側の端部リンク5の先端に設けられた回転軸17を回転させる。すなわち、第2のアクチュエータ24は、入力側の端部リンク5と中央リンク7の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第1、第2のアクチュエータ23,24は、例えば電動モータである。
【0031】
リンク作動装置本体1aは、四つの回転対偶からなる三節連鎖構造の二組のリンク機構4A,4Bで入力側および出力側のリンクハブ2,3を連結したものであるが、リンクハブ2(3)と端部リンク5(6)の回転対偶軸O1A,O1B(O2A,O2B)の軸間角度を180°以外とし、かつ一方のリンク機構4Bに、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6とを互いに連動して回転変位させる連動手段9を設けたことにより、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢が一義的に決まる、回転の自由度が2自由度の構造となっている。
【0032】
リンク機構4Aに設けた第1のアクチュエータ23により、入力側のリンクハブ2に対する入力側の端部リンク5の回転角を制御することで、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を決定する2自由度の回転のうち1自由度の回転位置が決められる。また、第2のアクチュエータ24により、入力側の端部リンク5に対する中央リンク7の回転角を制御することで、もう1自由度の回転位置が決められる。
【0033】
この実施形態のように、二組のリンク機構4A,4Bにおいて、端部リンク5,6の角度、長さ、および端部リンク5,6の幾何学的形状が入力側と出力側で等しく、また、中央リンク7についても入力側と出力側で形状が等しいとき、中央リンク7の対称面に対して中央リンク7と、入力側および出力側のリンクハブ2,3と連結される端部リンク5,6との角度位置関係を入力側と出力側で同じにすれば、幾何学的対称性から入力側のリンクハブ2および入力側の端部リンク5と、出力側のリンクハブ3および出力側の端部リンク6とは同じに動く。
【0034】
このリンク作動装置1の具体的な動作を説明する。図6は、アクチュエータ23,24により入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更するときの、リンク機構4A,4Bに作用するトルクの変化を、図7の状態におけるトルクで無次元化した図である。図7ないし図10は、リンク作動装置1を簡略化したモデルで表現した正面図、底面図、および斜視図であって、それぞれ図6におけるA,B,C,D各時点における姿勢を示している。このモデルでは、入力側のリンクハブ2の回転対偶軸O1A,O1B(図4)を含む平面F2(図3)を鉛直状態にし、かつ開口部21を重力G方向に配置した場合を示している。なお、図7ないし図10には、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2を球体で示してあり、リンクハブ3の中心P2に錘を配置している。錘は装置重量に比べて十分重く設定している。
【0035】
図7は、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が平行である状態を示している。このとき、重力Gに抗して出力側のリンクハブ3およびリンク機構4A,4Bの各リンク5,6,7の姿勢を維持するために、リンク機構4A,4Bに、アクチュエータ23,24(図1)によってそれぞれ同じ値の所定値のトルクが作用している。図7の状態から、リンク機構4A,4Bに作用する各トルクを前記所定値よりも小さくすると、図8のように、出力側のリンクハブ3が、リンク機構4A,4Bの各中央リンク7が互いに干渉するまで下方に回動する。また、図7の状態から、リンク機構4Aの入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5との角度を固定し、リンク機構4Bに作用するトルクを小さくすると、図9のように、リンク機構4Aが全体的に縮み、かつリンク機構4Bが全体的に伸びて、出力側のリンクハブ3が前方(同図(A)における手前側)に傾いた姿勢となる。さらに、リンク機構4Aに作用するトルクおよびリンク機構4Bに作用するトルクを前記所定値に対してそれぞれ別個に変化させると、図10のように、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が捩れた姿勢となる。全状態において、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心P1,P2間の距離は変化しない。
【0036】
図7ないし図10に示すように、このリンク作動装置1は、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、入力側のリンクハブ2の中心軸C1と出力側のリンクハブ3の中心軸C2の折れ角θ(図8(A))の最大値(最大折れ角)を90°以上とすることができる。また、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の旋回角φ(図10(B))を0°〜360°の範囲で設定できる。折れ角θは、入力側のリンクハブ2の中心軸C1に対する出力側のリンクハブ3の中心軸C2の傾斜角度のことであり、旋回角φは、入力側のリンクハブ2の中心軸C1に対して出力側のリンクハブ3が傾斜した水平角度のことである。
【0037】
このリンク作動装置1は、連動手段9により、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6を、中央リンク7に対する回転方向が互いに逆で、かつ回転変位角度が同じとなるように連動させる。それにより、入力側のリングハブ2に対して出力側のリンクハブ3の姿勢を変更するとき、常に、入力側および出力側の球面リンク中心P1,P2の中間点に位置して球面リンク中心P1,P2を結ぶ直線に対して垂直な平面F5が、中央リンク7と端部リンク5,6の二つの回転対偶の並び方向に対して垂直な横断面F1と一致する。これにより、入力側と出力側が前記横断面F1に対して対称に動くことで、入力側の変位に対して出力側も同じ変位となり、変動した変位とならないため、操作性が良い。
【0038】
各リンク機構4A,4Bにおける4つの回転対偶、つまり、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5との連結部分、出力側のリンクハブ3と出力側の端部リンク6との連結部分、および入力側および出力側の端部リンク5,6と中央リンク7との二つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0039】
このリンク作動装置1は、リンク機構4A,4Bの数が二組であって、従来の三組と比べて少ないため、各リンク機構4A,4B同士の干渉を回避し易く、設計の自由度が高い。それにより、リンク作動装置1全体の外径が小さいコンパクトな構成とすることが可能である。また、リンク機構4A,4Bの数が少ないため、低コスト化を実現できる。さらに、二組のリンク機構4A,4Bの形状が同じであるため、部品の種類を減らすことができ、このことからも低コスト化を実現できる。
【0040】
各リンク機構4A,4Bの中央リンク7は、二組のリンク機構4A,4Bのリンクハブ2,3と端部リンク5,6の各回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bが成す角度が180°よりも大きい側に位置している。そのため、構造的に、一方のリンク機構4A(4B)のリンクハブ2,3と端部リンク5,6の回転対偶部が、他方のリンク機構4B(4A)の端部リンク5,6と中央リンク7の回転対偶部に干渉しにくい。このことから、前記干渉を避けるために、端部リンク5,6と中央リンク7の回転対偶部を外径方向に張り出して設ける必要がなくなり、外径寸法が小さいコンパクトな構成にできる。
【0041】
入力側および出力側のリンクハブ2,3の中空部20に、リンクハブ2,3の外部と連通する開口部21が設けられているため、中空部20に人の四肢等を入れ易い。リンク機構の数が二組であるため、入力側のリンクハブ2に対して出力側のリンクハブ3が可能な範囲内でどのような姿勢にあるときでも、二組のリンク機構4A,4Bのどの部位も位置しない周方向の範囲を比較的広くとることができ、リンク機構4A,4Bと身体との接触も防ぎやすい。
【0042】
また、前記アクチュエータ23,24がいずれも同じリンク機構4Aに設けられているため、中空部20から外径方向に見た場合に、このリンク機構4Aの側に、アクチュエータ23,24やその周辺部品が偏って集まっている。よって、このリンク作動装置1を人の関節部回りに装着する際、アクチュエータ23,24が設けられたリンク機構4Aの側が身体から離れて位置するように装着すれば、リンク機構等と患者の身体との接触を回避できる。
【0043】
また、二組のリンク機構4A,4Bは、中央リンク7の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であり、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6の可動範囲が、周方向に付き同じである。そのため、入力側のリンクハブ2と出力側のリンクハブ3との間の空間において、端部リンク5,6および中央リンク7が侵入しない周方向の領域が広くなり、この領域から前記空間に物品を入れることが可能となる。また、この領域では、各リンク5,6,7と他の部材とを接近させてもよいため、例えば、本装置を四肢に取付けたときに身体との接触を回避し易く、また、自然な姿勢を保ち易い。 さらに、中央リンク7と二つの端部リンク5,6の組立て体を入力側と出力側のリンクハブ2,3に組み付ける際に、取付け部(図示せず)の回転対偶軸が入力側と出力側で周方向位置が一致しているため、前記組立て体を一方向から組み付けることができるため、組立て性が向上する。
【0044】
図11は異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1も、一組のリンク機構4Aに二つのアクチュエータ23,25が設けられている。第1のアクチュエータ23は、前記同様の入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ25は、入力側のリンクハブ2と中央リンク7に一体の取付部材26とに両端が連結された、直線方向に伸縮動作を行う直動アクチュエータである。すなわち、第2のアクチュエータ25は、入力側のリンクハブ2と中央リンク7との相対距離を変更させるアクチュエータである。リンクハブ2と第2のアクチュエータ25の連結部27、および取付部材26と第2のアクチュエータ25の連結部28は、いずれも球対偶とされている。直動アクチュエータである第2のアクチュエータ25としては、例えばボールねじを用いた機構や、流体圧シリンダ装置を採用できる。
【0045】
このように二つのアクチュータ23,25を設けても、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。リンクハブ2と中央リンク7との相対距離を任意に変更する第2のアクチュエータ25を直動アクチュエータとすると、リンクハブ2、端部リンク5、中央リンク7、および第2のアクチュエータ25で閉じられたリンク構成となり、リンク機構4Aに作用する荷重を第2のアクチュエータ25で受けるため、リンク作動装置1の剛性が向上する。
【0046】
図12に、ボールねじを用いた直動アクチュエータの一例を示す。直動アクチュエータである第2のアクチュエータ25は、一端がリンクハブ2(図11)に連結されるねじ軸30にナット31が螺合しており、これらねじ軸30とナット31とでボールねじ32が構成されている。ナット31は、他方の取付部材26(図11)にロッド33aを介して連結される外筒体33に、二つの軸受34により回転自在に支持されている。ナット31の外周には平歯車36が設けられ、この平歯車36に他の平歯車37が噛み合っている。他の平歯車37は、前記外筒体33の外周に設置したモータ38の出力軸38aに取り付けられている。モータ38を回転させることで、一対の平歯車37,36を介してナット31が回転し、ボールねじ32によりねじ軸30がナット31に対して進退する。それにより、ねじ軸30の先端とロッド33aの先端間の距離が変わる。つまり、第2のアクチュエータ25が伸縮作動する。
【0047】
図13はさらに異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1も、一組のリンク機構4Aに二つのアクチュエータ23,40が設けられている。第1のアクチュエータ23は、前記同様に、入力側のリンクハブ2と入力側の端部リンク5の回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータである。第2のアクチュエータ40は、入力側の端部リンク5に一体の取付部材41と出力側の端部リンク6に一体の取付部材42とに両端が連結された、直線方向に伸縮動作を行う直動アクチュエータである。すなわち、第2のアクチュエータ25は、入力側の端部リンク5と出力側の端部リンク6との相対距離を変更させるアクチュエータである。取付部材41と第2のアクチュエータ40の連結部43、および取付部材42と第2のアクチュエータ25の連結部44は、いずれも球対偶とされている。
【0048】
このように二つのアクチュータ23,40を設けても、入力側のリンクハブ2に対する出力側のリンクハブ3の姿勢を回転方向が2自由度で任意に変更できる。入力側および出力側の端部リンク5,6間の相対距離を変更する第2のアクチュエータ40が直動アクチュエータであると、入力側の端部リンク5、中央リンク7、出力側の端部リンク6、および第2のアクチュエータ40で閉じられたリンク構成となり、リンク機構4Aに作用する荷重を第2のアクチュエータ40で受けるため、リンク作動装置1の剛性が向上する。
【0049】
図14は、リンクハブの異なる構成を示す。このリンクハブ2(3)は、中空部20の外周に沿って周方向に並ぶ二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)に分割されている。これら二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)のそれぞれに、二組のリンク機構4A,4Bのうちの一組ずつの端部リンク5(6)が回転可能に連結されている。二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は、結合部70,71により互いに結合されている。
【0050】
一方の結合部70はヒンジ構造であって、二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は、支点軸70a回りに互いに回動自在である。もう一方の結合部71は、片方のリンクハブ分割体2a(3a)に形成されたボルト穴71aに対して、他方のリンクハブ分割体2b(3b)に設けたボルト71bを入れ、このボルト71bにナット71cを締め付けることにより、両リンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)が互いに結合される。支点軸70aを中心にしてハブ分割体2a,2b(3a,3b)を回動させることで、図14(A)のように、中空部が結合部71側で開放した状態と、同図(B)のように中空部20が閉じられた状態とにできる。
【0051】
このように、リンクハブ2(3)を二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)に分割したことにより、中空部20内に関節部に続く部位を容易に入れることができる。二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)は結合部70,71により互いに結合可能であるため、リンク作動装置1を関節部回りに安全かつ容易に装着することができる。2箇所の結合部70,71のうち1箇所の結合部70をヒンジ構造とすると、二つのリンクハブ分割体2a,2b(3a,3b)が分離しないので、取扱いが容易である。
【符号の説明】
【0052】
1…リンク作動装置
2…入力側のリンクハブ(リンク機構構成部材)
3…出力側のリンクハブ(リンク機構構成部材)
4A,4B…リンク機構
5…入力側の端部リンク(リンク機構構成部材)
6…出力側の端部リンク(リンク機構構成部材)
7…中央リンク(リンク機構構成部材)
9…連動手段
23,24,25,40…アクチュエータ
O1A,O1B…入力側のリンクハブと入力側の端部リンクの回転対偶軸
O2A,O2B…出力側のリンクハブと出力側の端部リンクの回転対偶軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有するリンク作動装置において、
前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことを特徴とするリンク作動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記二組の各リンク機構は、これらリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であるリンク作動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記端部リンクと前記中央リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記リンクハブと前記中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【請求項1】
入出力側にそれぞれ配されたリンクハブに対して回転可能に端部リンクを連結し、入力側および出力側の端部リンクを中央リンクに対して回転可能に連結することにより、前記入力側の端部リンク、中央リンク、および出力側の端部リンクで構成される、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を有するリンク作動装置において、
前記四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構を二組有し、これら二組のリンク機構は、入力側および出力側のいずれについても、それぞれの前記リンクハブと前記端部リンクの各回転対偶軸が同一平面上にあって、かつ互いに交差する位置関係であり、二組のリンク機構のうちの一組に、前記入力側の端部リンクと前記出力側の端部リンクとを互いに連動して回転変位させる連動手段を設けると共に、二組のリンク機構のうちの一組に、前記回転対偶の回転角を任意に変更可能か、または、前記各リンクまたは前記リンクハブである複数のリンク機構構成部材のうちの二つのリンク機構構成部材間の相対距離を変更させる二つ以上のアクチュエータを設けたことを特徴とするリンク作動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記二組の各リンク機構は、これらリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンクの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが互いに鏡像対称を成す形状であるリンク作動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記端部リンクと前記中央リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記リンクハブと前記中央リンクとの相対距離を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記二つ以上のアクチュエータとして、前記リンクハブと前記端部リンクの回転対偶の回転角を変更させるアクチュエータと、前記入力側および出力側の端部リンク間の相対距離を変更させるアクチュエータとを設けたリンク作動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−96524(P2013−96524A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241071(P2011−241071)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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