リングギヤ
【課題】コストの上昇を抑制しつつも、耐久性の高いリングギヤを提供する。
【解決手段】内燃機関のフライホイール12に設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータ10のスタータピニオンギヤ11が噛合されて回転駆動されるリングギヤ1であって、前記リングギヤ1が周方向において複数に分割されて複数のリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成され、複数の前記リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、前記内燃機関の始動時に前記スタータピニオンギヤ11が最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記リングギヤ構成部材小片1a,1cを、他の前記リングギヤ構成部材小片1b,1dよりも耐久性の高い材料により形成した。
【解決手段】内燃機関のフライホイール12に設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータ10のスタータピニオンギヤ11が噛合されて回転駆動されるリングギヤ1であって、前記リングギヤ1が周方向において複数に分割されて複数のリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成され、複数の前記リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、前記内燃機関の始動時に前記スタータピニオンギヤ11が最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記リングギヤ構成部材小片1a,1cを、他の前記リングギヤ構成部材小片1b,1dよりも耐久性の高い材料により形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のフライホイールの周縁部に設けられるリングギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、軸トルクを平均化し回転を円滑にするために、クランク軸に慣性モーメントの大きな円盤であるフライホイールが設置される。そして、フライホイールの周縁部には、内燃機関の始動時にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤと噛み合って回転駆動されることで、内燃機関に始動トルクを伝達する環状のリングギヤが設けられている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0003】
一般的にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤは、軸方向にスライド可能に設けられており、内燃機関の始動時に回転されつつ軸方向に移動されてリングギヤの歯部に噛み合わされる。つまり、スタータピニオンギヤは、内燃機関の始動の度にリングギヤの歯部に向かってリングギヤの側方から飛び込む仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−15352号公報
【特許文献2】特開2003−314416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、内燃機関が停止される時は、いずれかのシリンダが圧縮行程にある時にピストンにかかる負荷で停止されるため、内燃機関停止時のクランク軸の角度は、限定された一定の範囲内となる傾向を持つ。
【0006】
このため、内燃機関始動時にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤと、フライホイールの周縁部のリングギヤとが接続されるときの、リングギヤにおけるスタータピニオンギヤとの接続箇所(以下、スタータピニオンギヤの飛込み箇所という)が決まった位置となり、リングギヤにおけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所の摩耗が問題となっていた。
【0007】
なお、摩耗を抑制するために従来の一部材で形成されたリングギヤを耐久性の高い材料で形成することも考えられるが、この場合、高価な材料を多く用いる必要があるため、コストが増大してしまうという問題がある。
【0008】
以上のことから、本発明は、コストの上昇を抑制しつつも、耐久性の高いリングギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の解決するための第1の発明に係るリングギヤは、
内燃機関のフライホイールに設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータのピニオンギヤが噛合されて回転駆動されるリングギヤであって、
前記リングギヤが周方向において複数に分割されて複数の小片部材により構成され、
複数の前記小片部材のうち、前記内燃機関の始動時に前記ピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記小片部材が、他の前記小片部材よりも耐久性の高い材料により形成される
ことを特徴とする。
【0010】
上記の解決するための第2の発明に係るリングギヤは、第1の発明に係るリングギヤにおいて、
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
複数の前記リングギヤ構成部材は、少なくとも隣接する前記リングギヤ構成部材同士で分割位置が重ならないように積層される
ことを特徴とする。
【0011】
上記の解決するための第3の発明に係るリングギヤは、第1の発明に係るリングギヤにおいて、
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
前記ピニオンギヤが飛び込む側と反対側に位置する前記リングギヤ構成部材が、一部材により形成される
ことを特徴とする。
【0012】
上記の解決するための第4の発明に係るリングギヤは、第2の発明又は第3の発明に係るリングギヤにおいて、
複数の前記リングギヤ構成部材のうちの一つが、前記ピニオンギヤとのバックラッシュを詰めるべく、他の前記リングギヤ構成部材に対して歯の位置を周方向にずらして配置される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リングギヤが周方向において複数に分割された小片部材により構成され、複数の小片部材のうち内燃機関の始動時にピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する小片部材が、他の小片部材よりも耐久性の高い材料により形成されるため、コストの上昇を抑制しつつも、耐久性の高いリングギヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るリングギヤを各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るリングギヤが設置されたフライホイールの断面を示した模式図である。
【図4】4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
【図5】3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係るリングギヤ及び従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤにおける飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量のグラフを示した図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係るリングギヤを各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係るリングギヤを各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るリングギヤを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係るリングギヤの第1の実施例について説明する。
図3は、本実施例に係るリングギヤ1が設置されたフライホイール12の断面を示した模式図である。なお、図3においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
図3に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、内燃機関のクランク軸に設置されるフライホイール12の周縁部に圧入により嵌め込まれている。リングギヤ1の中心軸は、フライホイール12の中心軸と一致している。
【0017】
はじめに、4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所と、3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所について説明する。
【0018】
図4は、4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
図4に示すように、4気筒の内燃機関においては、リングギヤ1におけるセルフスタータモータ10(図1参照)のスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所は、図4中に破線で示した円の位置のいずれかとなる。
【0019】
図4に示すように、4気筒の内燃機関の場合、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に90°ごとに4等分され4つのリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成する。そして、リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、スタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1cを耐久性の高い材料により形成する。
【0020】
図5は、3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
図5に示すように、3気筒の内燃機関においては、リングギヤ1におけるスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所は、図5中に破線で示した円の位置のいずれかとなる。
【0021】
図5に示すように、3気筒の内燃機関の場合、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に60°ごとに6等分され6つのリングギヤ構成部材小片8a〜8fにより構成する。そして、リングギヤ構成部材小片8a〜8fのうち、スタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片8a、リングギヤ構成部材小片8c及びリングギヤ構成部材小片8eを耐久性の高い材料により形成する。
【0022】
次に、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
以下、停止クランク角制御が実施される4気筒の内燃機関に設置される4分割のリングギヤ1を例として説明する。
【0023】
図1は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図2は、本実施例に係るリングギヤ1を各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図1においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図2に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片1a〜1d)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、4つのリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成されている。
【0025】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1cを耐久性の高い材料により形成した。
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接により、リングギヤ構成部材小片1a〜1dがそれぞれ結合されることでリングギヤ1を構成している。
【0026】
また、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片1a〜1dの製造効率と、リングギヤ構成部材小片1a〜1dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ1を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片1a〜1dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0027】
図6は、本実施例に係るリングギヤ及び従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤにおける飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量のグラフを示した図である。
なお、図6においては、本実施例に係るリングギヤのスタータピニオンギヤ11の飛込み回数に対するリングギヤ1の摩耗量の値を実線で示し、従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤ11の飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量の値を破線で示している。
また、本実施例に係るリングギヤ1のリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1c以外のリングギヤ構成部材小片1b及びリングギヤ構成部材小片1dと、従来の一部材で形成されたリングギヤは、同一の材料により形成している。
【0028】
例えば、リングギヤ摩耗量の限界値を2mmと仮定した場合、図6より、従来の一部材で形成されたリングギヤは、飛込み回数が2万回強でリングギヤ摩耗量の限界値に達することが分かる。
これに対し、本実施例に係るリングギヤ1は、飛込み回数が4万回弱でリングギヤ摩耗量の限界値に達することが分かる。このように、本実施例に係るリングギヤ1は、従来の一部材で形成されたリングギヤに比べ、耐久性が高いということが分かる。
【0029】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1によれば、停止クランク角制御が実施される内燃機関におけるフライホイール12に設置されるリングギヤ1において、高い耐久性を実現することができる。
【0030】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、高い耐久性を実現しつつも、リングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1c、又は、リングギヤ構成部材小片8a、リングギヤ構成部材小片8c及びリングギヤ構成部材小片8eのみを耐久性の高い材料で形成するため、コストの増大を抑制することができる。
【実施例2】
【0031】
以下、本発明に係るリングギヤの第2の実施例について説明する。
第1の実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を周方向において複数の部材に分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当する部材を耐久性の高い材料で形成することとした。
【0032】
しかしながら、第1の実施例に係るリングギヤのように、リングギヤ1を周方向に複数の部材に分割する構成とした場合、従来の一部材により形成したリングギヤに比べ、どうしても分割位置における強度が弱くなってしまう。
【0033】
そこで、本実施例に係るリングギヤ1においては、後述するようにリングギヤ1を軸方向において積層構造とすることにより、リングギヤ1の周方向における分割位置の強度の低下を抑制することとした。
【0034】
以下、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
図7は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図8は、本実施例に係るリングギヤ1を各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図7においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0035】
図7に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図8に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、軸方向に3つの環状の歯車(リングギヤ構成部材2〜4)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材2〜4を3層積層させることにより構成されている。
【0036】
なお、本実施例においては、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材2〜4を3層積層させることにより構成する場合を例として説明するが、これ以外にも、2層又は4層以上積層させて構成することも可能である。
【0037】
また、図8に示すように、リングギヤ構成部材2〜4は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4d)に分かれている。すなわち、リングギヤ構成部材2〜4は、それぞれ4つのリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dにより構成されている。
【0038】
また、リングギヤ構成部材小片3a〜3dは、リングギヤ構成部材小片2a〜2d、及び、リングギヤ構成部材小片4a〜4dに対し、周方向にずらして配置されている。
すなわち、リングギヤ構成部材小片2aとリングギヤ構成部材小片2bとが接合される位置(分割位置)、及び、リングギヤ構成部材小片4aとリングギヤ構成部材小片4bとが接合される位置(分割位置)には、リングギヤ構成部材小片3aが重なる構成となっている。このように、分割位置における強度の低下を抑えるように互いに補うように組み合わされている。
【0039】
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接部7(図7,8参照)においてリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dがそれぞれ溶接されることにより、リングギヤ1を構成している。
【0040】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片2a,3a,4a及びリングギヤ構成部材小片2c,3c,4cを耐久性の高い材料により形成した。
【0041】
また、本実施例においては、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dの製造効率と、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ構成部材2〜4を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0042】
さらに、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材2〜4のうちの1枚を他のリングギヤ構成部材2〜4に対して歯の位置を周方向にずらして配置することにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰めることができる。なお、ずらしたリングギヤ構成部材2〜4を馴染み性の良い材質とすることにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰める効果をより高めることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を軸方向において積層構造とし、それぞれ隣接するリングギヤ構成部材2〜4同士でリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dに分割される位置が重ならないように分割位置をずらして組み合わせている。
【0044】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、第1の実施例に係るリングギヤ1により奏する効果に加え、リングギヤ1の分割位置における強度の低下を抑制することができる。
【実施例3】
【0045】
以下、本発明に係るリングギヤの第3の実施例について説明する。
一般的に、スタータピニオンギヤ11は、図3,9中に矢印Iで示すように、リングギヤ1に対してリングギヤ1の回転軸方向から飛び込んできて噛み合う構成となっている。このため、リングギヤ1の歯は、スタータピニオンギヤ11が飛び込んで来る側の面の磨耗がより激しくなる。
【0046】
そこで、本実施例に係るリングギヤ1においては、後述するようにリングギヤ1を2層構造として磨耗の激しいスタータピニオンギヤ11の飛び込んで来る側の部材のみを小片部材に分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当する小片部材を耐久性の高い材料で形成することとした。これにより、本実施例に係るリングギヤ1によれば、耐久性を向上させつつ、コストの増大をより一層抑制することができる。
【0047】
以下、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
図9は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図10は、本実施例に係るリングギヤ1を各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図9においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0048】
図9に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図10に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、軸方向に2つの環状の歯車(リングギヤ構成部材5,6)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材5,6を2層積層させることにより構成されている。
【0049】
なお、本実施例においては、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材5,6を2層積層させることにより構成する場合を例として説明するが、これ以外にも、3層以上積層させて構成することも可能である。
【0050】
また、図10に示すように、リングギヤ構成部材6は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片6a〜6d)に分かれている。すなわち、リングギヤ構成部材6は、4つのリングギヤ構成部材小片6a〜6dにより構成されている。
【0051】
また、リングギヤ構成部材小片6aとリングギヤ構成部材小片6bとが接合される位置(分割位置)には、リングギヤ構成部材5が重なる構成となっている。このように、リングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材6は、リングギヤ構成部材6の分割位置における強度の低下を抑えるように組み合わされている。
【0052】
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接部7(図9,10参照)においてリングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材小片6a〜6dがそれぞれ溶接されることにより、リングギヤ1を構成している。
【0053】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片6a〜6dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片6a及びリングギヤ構成部材小片6cを耐久性の高い材料により形成した。
【0054】
また、本実施例においては、リングギヤ構成部材小片6a〜6dの製造効率と、リングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材小片6a〜6dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ構成部材6を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片6a〜6dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0055】
さらに、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材5,6のうちの1枚を他のリングギヤ構成部材5,6に対して歯の位置を周方向にずらして配置することにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰めることができる。なお、ずらしたリングギヤ構成部材5,6を馴染み性の良い材質とすることにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰める効果をより高めることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を2層構造として磨耗の激しいスタータピニオンギヤ11の飛び込んで来る側のリングギヤ構成部材6のみをリングギヤ構成部材小片6a〜6dに分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当するリングギヤ構成部材小片6a及びリングギヤ構成部材小片6cを耐久性の高い材料で形成することとした。
【0057】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、第1の実施例に係るリングギヤ1と同様に耐久性を向上させることができ、さらに、第1の実施例に係るリングギヤ1に比べ、コストの増大をより一層抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば、リングギヤ、特に、内燃機関のフライホイールの周縁部に設けられるリングギヤに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 リングギヤ
1a〜1d リングギヤ構成部材小片
2〜4 リングギヤ構成部材
2a〜2d,3a〜3d,4a〜4d リングギヤ構成部材小片
5,6 リングギヤ構成部材
6a〜6d リングギヤ構成部材小片
7 溶接部
8a〜8f リングギヤ構成部材小片
10 セルフスタータモータ
11 スタータピニオンギヤ
12 フライホイール
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のフライホイールの周縁部に設けられるリングギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、軸トルクを平均化し回転を円滑にするために、クランク軸に慣性モーメントの大きな円盤であるフライホイールが設置される。そして、フライホイールの周縁部には、内燃機関の始動時にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤと噛み合って回転駆動されることで、内燃機関に始動トルクを伝達する環状のリングギヤが設けられている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0003】
一般的にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤは、軸方向にスライド可能に設けられており、内燃機関の始動時に回転されつつ軸方向に移動されてリングギヤの歯部に噛み合わされる。つまり、スタータピニオンギヤは、内燃機関の始動の度にリングギヤの歯部に向かってリングギヤの側方から飛び込む仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−15352号公報
【特許文献2】特開2003−314416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、内燃機関が停止される時は、いずれかのシリンダが圧縮行程にある時にピストンにかかる負荷で停止されるため、内燃機関停止時のクランク軸の角度は、限定された一定の範囲内となる傾向を持つ。
【0006】
このため、内燃機関始動時にセルフスタータモータのスタータピニオンギヤと、フライホイールの周縁部のリングギヤとが接続されるときの、リングギヤにおけるスタータピニオンギヤとの接続箇所(以下、スタータピニオンギヤの飛込み箇所という)が決まった位置となり、リングギヤにおけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所の摩耗が問題となっていた。
【0007】
なお、摩耗を抑制するために従来の一部材で形成されたリングギヤを耐久性の高い材料で形成することも考えられるが、この場合、高価な材料を多く用いる必要があるため、コストが増大してしまうという問題がある。
【0008】
以上のことから、本発明は、コストの上昇を抑制しつつも、耐久性の高いリングギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の解決するための第1の発明に係るリングギヤは、
内燃機関のフライホイールに設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータのピニオンギヤが噛合されて回転駆動されるリングギヤであって、
前記リングギヤが周方向において複数に分割されて複数の小片部材により構成され、
複数の前記小片部材のうち、前記内燃機関の始動時に前記ピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記小片部材が、他の前記小片部材よりも耐久性の高い材料により形成される
ことを特徴とする。
【0010】
上記の解決するための第2の発明に係るリングギヤは、第1の発明に係るリングギヤにおいて、
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
複数の前記リングギヤ構成部材は、少なくとも隣接する前記リングギヤ構成部材同士で分割位置が重ならないように積層される
ことを特徴とする。
【0011】
上記の解決するための第3の発明に係るリングギヤは、第1の発明に係るリングギヤにおいて、
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
前記ピニオンギヤが飛び込む側と反対側に位置する前記リングギヤ構成部材が、一部材により形成される
ことを特徴とする。
【0012】
上記の解決するための第4の発明に係るリングギヤは、第2の発明又は第3の発明に係るリングギヤにおいて、
複数の前記リングギヤ構成部材のうちの一つが、前記ピニオンギヤとのバックラッシュを詰めるべく、他の前記リングギヤ構成部材に対して歯の位置を周方向にずらして配置される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リングギヤが周方向において複数に分割された小片部材により構成され、複数の小片部材のうち内燃機関の始動時にピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する小片部材が、他の小片部材よりも耐久性の高い材料により形成されるため、コストの上昇を抑制しつつも、耐久性の高いリングギヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るリングギヤを各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るリングギヤが設置されたフライホイールの断面を示した模式図である。
【図4】4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
【図5】3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係るリングギヤ及び従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤにおける飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量のグラフを示した図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係るリングギヤを各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係るリングギヤの構成を示した斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係るリングギヤを各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るリングギヤを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係るリングギヤの第1の実施例について説明する。
図3は、本実施例に係るリングギヤ1が設置されたフライホイール12の断面を示した模式図である。なお、図3においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
図3に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、内燃機関のクランク軸に設置されるフライホイール12の周縁部に圧入により嵌め込まれている。リングギヤ1の中心軸は、フライホイール12の中心軸と一致している。
【0017】
はじめに、4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所と、3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所について説明する。
【0018】
図4は、4気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
図4に示すように、4気筒の内燃機関においては、リングギヤ1におけるセルフスタータモータ10(図1参照)のスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所は、図4中に破線で示した円の位置のいずれかとなる。
【0019】
図4に示すように、4気筒の内燃機関の場合、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に90°ごとに4等分され4つのリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成する。そして、リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、スタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1cを耐久性の高い材料により形成する。
【0020】
図5は、3気筒の内燃機関におけるスタータピニオンギヤの飛込み箇所を示した模式図である。
図5に示すように、3気筒の内燃機関においては、リングギヤ1におけるスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所は、図5中に破線で示した円の位置のいずれかとなる。
【0021】
図5に示すように、3気筒の内燃機関の場合、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に60°ごとに6等分され6つのリングギヤ構成部材小片8a〜8fにより構成する。そして、リングギヤ構成部材小片8a〜8fのうち、スタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片8a、リングギヤ構成部材小片8c及びリングギヤ構成部材小片8eを耐久性の高い材料により形成する。
【0022】
次に、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
以下、停止クランク角制御が実施される4気筒の内燃機関に設置される4分割のリングギヤ1を例として説明する。
【0023】
図1は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図2は、本実施例に係るリングギヤ1を各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図1においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図2に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片1a〜1d)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、4つのリングギヤ構成部材小片1a〜1dにより構成されている。
【0025】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片1a〜1dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1cを耐久性の高い材料により形成した。
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接により、リングギヤ構成部材小片1a〜1dがそれぞれ結合されることでリングギヤ1を構成している。
【0026】
また、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片1a〜1dの製造効率と、リングギヤ構成部材小片1a〜1dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ1を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片1a〜1dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0027】
図6は、本実施例に係るリングギヤ及び従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤにおける飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量のグラフを示した図である。
なお、図6においては、本実施例に係るリングギヤのスタータピニオンギヤ11の飛込み回数に対するリングギヤ1の摩耗量の値を実線で示し、従来の一部材で形成されたリングギヤのスタータピニオンギヤ11の飛込み回数に対するリングギヤの摩耗量の値を破線で示している。
また、本実施例に係るリングギヤ1のリングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1c以外のリングギヤ構成部材小片1b及びリングギヤ構成部材小片1dと、従来の一部材で形成されたリングギヤは、同一の材料により形成している。
【0028】
例えば、リングギヤ摩耗量の限界値を2mmと仮定した場合、図6より、従来の一部材で形成されたリングギヤは、飛込み回数が2万回強でリングギヤ摩耗量の限界値に達することが分かる。
これに対し、本実施例に係るリングギヤ1は、飛込み回数が4万回弱でリングギヤ摩耗量の限界値に達することが分かる。このように、本実施例に係るリングギヤ1は、従来の一部材で形成されたリングギヤに比べ、耐久性が高いということが分かる。
【0029】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1によれば、停止クランク角制御が実施される内燃機関におけるフライホイール12に設置されるリングギヤ1において、高い耐久性を実現することができる。
【0030】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、高い耐久性を実現しつつも、リングギヤ構成部材小片1a及びリングギヤ構成部材小片1c、又は、リングギヤ構成部材小片8a、リングギヤ構成部材小片8c及びリングギヤ構成部材小片8eのみを耐久性の高い材料で形成するため、コストの増大を抑制することができる。
【実施例2】
【0031】
以下、本発明に係るリングギヤの第2の実施例について説明する。
第1の実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を周方向において複数の部材に分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当する部材を耐久性の高い材料で形成することとした。
【0032】
しかしながら、第1の実施例に係るリングギヤのように、リングギヤ1を周方向に複数の部材に分割する構成とした場合、従来の一部材により形成したリングギヤに比べ、どうしても分割位置における強度が弱くなってしまう。
【0033】
そこで、本実施例に係るリングギヤ1においては、後述するようにリングギヤ1を軸方向において積層構造とすることにより、リングギヤ1の周方向における分割位置の強度の低下を抑制することとした。
【0034】
以下、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
図7は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図8は、本実施例に係るリングギヤ1を各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図7においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0035】
図7に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図8に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、軸方向に3つの環状の歯車(リングギヤ構成部材2〜4)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材2〜4を3層積層させることにより構成されている。
【0036】
なお、本実施例においては、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材2〜4を3層積層させることにより構成する場合を例として説明するが、これ以外にも、2層又は4層以上積層させて構成することも可能である。
【0037】
また、図8に示すように、リングギヤ構成部材2〜4は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4d)に分かれている。すなわち、リングギヤ構成部材2〜4は、それぞれ4つのリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dにより構成されている。
【0038】
また、リングギヤ構成部材小片3a〜3dは、リングギヤ構成部材小片2a〜2d、及び、リングギヤ構成部材小片4a〜4dに対し、周方向にずらして配置されている。
すなわち、リングギヤ構成部材小片2aとリングギヤ構成部材小片2bとが接合される位置(分割位置)、及び、リングギヤ構成部材小片4aとリングギヤ構成部材小片4bとが接合される位置(分割位置)には、リングギヤ構成部材小片3aが重なる構成となっている。このように、分割位置における強度の低下を抑えるように互いに補うように組み合わされている。
【0039】
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接部7(図7,8参照)においてリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dがそれぞれ溶接されることにより、リングギヤ1を構成している。
【0040】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片2a,3a,4a及びリングギヤ構成部材小片2c,3c,4cを耐久性の高い材料により形成した。
【0041】
また、本実施例においては、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dの製造効率と、リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ構成部材2〜4を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0042】
さらに、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材2〜4のうちの1枚を他のリングギヤ構成部材2〜4に対して歯の位置を周方向にずらして配置することにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰めることができる。なお、ずらしたリングギヤ構成部材2〜4を馴染み性の良い材質とすることにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰める効果をより高めることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を軸方向において積層構造とし、それぞれ隣接するリングギヤ構成部材2〜4同士でリングギヤ構成部材小片2a〜2d,3a〜3d,4a〜4dに分割される位置が重ならないように分割位置をずらして組み合わせている。
【0044】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、第1の実施例に係るリングギヤ1により奏する効果に加え、リングギヤ1の分割位置における強度の低下を抑制することができる。
【実施例3】
【0045】
以下、本発明に係るリングギヤの第3の実施例について説明する。
一般的に、スタータピニオンギヤ11は、図3,9中に矢印Iで示すように、リングギヤ1に対してリングギヤ1の回転軸方向から飛び込んできて噛み合う構成となっている。このため、リングギヤ1の歯は、スタータピニオンギヤ11が飛び込んで来る側の面の磨耗がより激しくなる。
【0046】
そこで、本実施例に係るリングギヤ1においては、後述するようにリングギヤ1を2層構造として磨耗の激しいスタータピニオンギヤ11の飛び込んで来る側の部材のみを小片部材に分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当する小片部材を耐久性の高い材料で形成することとした。これにより、本実施例に係るリングギヤ1によれば、耐久性を向上させつつ、コストの増大をより一層抑制することができる。
【0047】
以下、本実施例に係るリングギヤ1の構成について説明する。
図9は、本実施例に係るリングギヤ1の構成を示した斜視図である。また、図10は、本実施例に係るリングギヤ1を各層ごと及び各部材ごとに分解した様子を示した斜視図である。なお、図9においては、矢印Iによりスタータピニオンギヤ11の飛び込み方向を示す。
【0048】
図9に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、周面に歯が形成された環状の歯車となっている。
図10に示すように、本実施例に係るリングギヤ1は、軸方向に2つの環状の歯車(リングギヤ構成部材5,6)に分かれている。すなわち、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材5,6を2層積層させることにより構成されている。
【0049】
なお、本実施例においては、リングギヤ1は、各リングギヤ構成部材5,6を2層積層させることにより構成する場合を例として説明するが、これ以外にも、3層以上積層させて構成することも可能である。
【0050】
また、図10に示すように、リングギヤ構成部材6は、周方向に90°ごとに4等分され4つの部材(リングギヤ構成部材小片6a〜6d)に分かれている。すなわち、リングギヤ構成部材6は、4つのリングギヤ構成部材小片6a〜6dにより構成されている。
【0051】
また、リングギヤ構成部材小片6aとリングギヤ構成部材小片6bとが接合される位置(分割位置)には、リングギヤ構成部材5が重なる構成となっている。このように、リングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材6は、リングギヤ構成部材6の分割位置における強度の低下を抑えるように組み合わされている。
【0052】
そして、本実施例に係るリングギヤ1においては、溶接部7(図9,10参照)においてリングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材小片6a〜6dがそれぞれ溶接されることにより、リングギヤ1を構成している。
【0053】
本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材小片6a〜6dのうち、図4に示すスタータピニオンギヤ11の飛込み箇所にあたるリングギヤ構成部材小片6a及びリングギヤ構成部材小片6cを耐久性の高い材料により形成した。
【0054】
また、本実施例においては、リングギヤ構成部材小片6a〜6dの製造効率と、リングギヤ構成部材5とリングギヤ構成部材小片6a〜6dを組み合わせてリングギヤ1を構成する際の組立効率を考え、リングギヤ構成部材6を周方向に4等分することとしたが、これ以外にも、2,3等分又は5等分以上とすることも可能であり、さらに、各リングギヤ構成部材小片6a〜6dを分割する大きさをそれぞれ変えることも可能である。
【0055】
さらに、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ構成部材5,6のうちの1枚を他のリングギヤ構成部材5,6に対して歯の位置を周方向にずらして配置することにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰めることができる。なお、ずらしたリングギヤ構成部材5,6を馴染み性の良い材質とすることにより、リングギヤ1のバックラッシュを詰める効果をより高めることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施例に係るリングギヤ1においては、リングギヤ1を2層構造として磨耗の激しいスタータピニオンギヤ11の飛び込んで来る側のリングギヤ構成部材6のみをリングギヤ構成部材小片6a〜6dに分割する構成とした上で、スタータピニオンギヤ11の飛び込み箇所の領域に相当するリングギヤ構成部材小片6a及びリングギヤ構成部材小片6cを耐久性の高い材料で形成することとした。
【0057】
したがって、本実施例に係るリングギヤ1によれば、第1の実施例に係るリングギヤ1と同様に耐久性を向上させることができ、さらに、第1の実施例に係るリングギヤ1に比べ、コストの増大をより一層抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば、リングギヤ、特に、内燃機関のフライホイールの周縁部に設けられるリングギヤに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 リングギヤ
1a〜1d リングギヤ構成部材小片
2〜4 リングギヤ構成部材
2a〜2d,3a〜3d,4a〜4d リングギヤ構成部材小片
5,6 リングギヤ構成部材
6a〜6d リングギヤ構成部材小片
7 溶接部
8a〜8f リングギヤ構成部材小片
10 セルフスタータモータ
11 スタータピニオンギヤ
12 フライホイール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のフライホイールに設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータのピニオンギヤが噛合されて回転駆動されるリングギヤであって、
前記リングギヤが周方向において複数に分割されて複数の小片部材により構成され、
複数の前記小片部材のうち、前記内燃機関の始動時に前記ピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記小片部材が、他の前記小片部材よりも耐久性の高い材料により形成される
ことを特徴とするリングギヤ。
【請求項2】
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
複数の前記リングギヤ構成部材は、少なくとも隣接する前記リングギヤ構成部材同士で分割位置が重ならないように積層される
ことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤ。
【請求項3】
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
前記ピニオンギヤが飛び込む側と反対側に位置する前記リングギヤ構成部材が、一部材により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤ。
【請求項4】
複数の前記リングギヤ構成部材のうちの一つが、前記ピニオンギヤとのバックラッシュを詰めるべく、他の前記リングギヤ構成部材に対して歯の位置を周方向にずらして配置される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のリングギヤ。
【請求項1】
内燃機関のフライホイールに設けられ、前記内燃機関の始動時にセルフスタータモータのピニオンギヤが噛合されて回転駆動されるリングギヤであって、
前記リングギヤが周方向において複数に分割されて複数の小片部材により構成され、
複数の前記小片部材のうち、前記内燃機関の始動時に前記ピニオンギヤが最初に噛み合う飛び込み箇所を含む部位に相当する前記小片部材が、他の前記小片部材よりも耐久性の高い材料により形成される
ことを特徴とするリングギヤ。
【請求項2】
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
複数の前記リングギヤ構成部材は、少なくとも隣接する前記リングギヤ構成部材同士で分割位置が重ならないように積層される
ことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤ。
【請求項3】
前記リングギヤは、環状の歯車であり前記リングギヤを構成するリングギヤ構成部材を軸方向に複数積層させて構成され、
前記ピニオンギヤが飛び込む側と反対側に位置する前記リングギヤ構成部材が、一部材により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤ。
【請求項4】
複数の前記リングギヤ構成部材のうちの一つが、前記ピニオンギヤとのバックラッシュを詰めるべく、他の前記リングギヤ構成部材に対して歯の位置を周方向にずらして配置される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のリングギヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−112479(P2012−112479A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263098(P2010−263098)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(596021665)株式会社平安製作所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(596021665)株式会社平安製作所 (10)
【Fターム(参考)】
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