説明

リング状照明装置

【課題】 ワーキングディスタンスの調節範囲を広くとれるリング状照明装置を提供する。
【解決手段】調節リング44の側面に角度θ傾いた長穴61を有しており、ここに調節ロックネジ48が装着され、円筒体42に対して長穴61の任意位置で調節リング44を固定でき、長穴61の位置により、調節リング44は円筒体42に対して上下方向に移動して固定され、同時に段差55の位置も移動する。段差55の位置が下がれば基板41は傾動軸49を支点として基板押しバネ45により下方に押圧されて傾動し、基板41の傾動によりLED1も角度を変え、この角度変化によりワーキングディスタンスが変化し、ワーキングディスタンスの調節範囲を広くすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リング状照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物の形状認識を行う顕微鏡や、画像処理装置等に使用するための照明装置としてLED等の光源を複数個リング状に配置したリング状照明装置が従来から用いられている。これらの用途において、良好なデータを得るためには、照明面に明暗の斑が生じないようにすることが重要である。
そのため従来のリング状照明装置では、目標のワーキングディスタンスを設定し、それに基づいて光源の角度を決めている。
【0003】
【特許文献1】特許第2975893号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の装置では、光源の角度が固定されているため、斑のない照明を得られるワーキングディスタンスが狭いという問題がある。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は複数の光源をリング状に配置し、該リングのリング軸方向に照明するリング状照明装置において、前記光源を装着する装着面を備え、該装着面を前記リング軸方向に傾動可能に支持され、且つリング状に配置された、複数の基板と、該基板上に装着された複数の光源と、前記複数の基板を傾動させ、任意角度の位置で係止する基板傾動装置と、を備えたことを特徴とする。
上記構成において、基板を傾動させることにより光源の角度を変更でき、斑の生じない最適なワーキングディスタンスの範囲を広くすることが可能になる。
好適な実施形態においては、前記複数の基板の内側端部を支持する傾動軸と、該基板を前記リング軸方向に押圧する押圧体と、該基板の外側端部を係止する係止面を備え、該係止面を移動させることにより、前記基板を前記傾動軸を支点として前記押圧体の押圧力により且つ押圧力に抗して傾動させる傾動調節体と、を更に備え、この傾動調節体により、基板の角度を変更することが望ましい。また、該傾動調節体が、前記係止面を端面とする円筒体であり、該円筒体は該円筒体の側面に形成され、該円筒体の長手方向に傾斜する長穴と、該長穴に貫挿する軸片と、を備え、該円筒体を回転させることにより、該円筒体を前記軸片に沿って上下動させ、前記係止面を移動させる、ように構成することが可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のリング状照明装置によれば、光源の角度を調節でき、斑を生じない最適なワーキングディスタンスの範囲を広くすることが可能であるなどの効果がある。そのため、レンズの倍率変更範囲が大きい顕微鏡の照明に最適である。また、画像処理を利用した自動検査装置を設計、製作する際に、設計時に計画した照明装置の取り付け姿勢のまま、容易に被検査物への照射角度を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、円筒体42の下側に複数の基板41が装着され、この基板41に光源であるLED1が複数個装着されている。
【0008】
基板41は、図2及び図3に示すように、リング状の基板を円の中心から放射状に分割したリング片形状をなしており、この実施形態では、6個の基板41によりリング形状を形成している。基板41の下面には複数のLED1が装着され、光源の装着面になっている。このように基板41をリング片形状とすることにより、照明装置全体に隙間無くLED1を装着することが可能になる。
【0009】
LED1は円筒体42の中心軸であるリング軸C方向に傾けてあり、図8に示すように基板41を傾動させることによりワーキングディスタンスを調節できるように構成されている。
【0010】
図3と図4に示すように基板41の外側端部には半円形の突起部50が形成され、また内側端部51には、切欠52が形成され、この切欠52を跨ぐように傾動軸49が装着されている。
図5に示すように、円筒体42には軸受溝53を有する軸受片54が装着されており、この軸受溝53に傾動軸49が係止され、基板41が傾動するようになっている。軸受片54は切欠52内に入る大きさになっている。該傾動軸49は固定リング43により係止されている。
内側端部51の外側寄りにはバネガイドピン46を介して基板押しバネ45が押し当てられており、この基板押しバネ45により基板41は下方向に押しつけられている。
【0011】
一方、基板41の外側端部の突起部50は、図8に示すように調節リング44の内側の段差55に係止されている。突起部50を設けることにより、基板41の角度が変化しても、常に突起部50が段差55に押しつけられるため、基板41の姿勢が安定する。
この調節リング44を上下方向に移動させることにより、基板41を任意の角度で傾動させることが可能なように構成されている。
【0012】
調節リング44は図6に示すように、円筒体42を外側から嵌挿する大きさを有する円筒体であり、前記段差55が円筒体42の下端面に対応する位置になる大きさを有している。
調節リング44は円筒体42に対して遊嵌されており、上下方向に移動可能であり、この上下動により基板41を所定角度傾動させるようになっている。
【0013】
図6に示すように、調節リング44の側面には水平線から角度θ傾いた、即ち調節リング44の長手方向に傾斜する長穴61を有しており、ここに調節ロックネジ48が装着され、図1に示すように円筒体42に対して長穴61の任意位置で調節リング44を固定できるようになっている。
【0014】
長穴61の位置により、調節リング44は円筒体42に対して上下方向に移動して固定され、図8に示すように同時に段差55の位置も移動する。
基板41は傾動軸49を支点として傾動可能であり、且つ基板押しバネ45により下方に押圧されているから、段差55の位置が下がれば図8の右側に示すように基板41は傾動する。
基板41の傾動によりLED1も角度を変え、この角度変化によりワーキングディスタンスも変化させることができる。その結果、図8に示すようにワーキングディスタンスの調節範囲を広くすることが可能になる。
【0015】
以上説明したように、上記構成によれば、調節ロックネジ48を緩めて調節リング44を回動させれば、調節リング44は長穴61の傾斜に応じて上下方向に移動する。任意の位置で調節ロックネジ48により調節リング44を固定すれば、該調節リング44の位置に応じて基板41が傾動し、ワーキングディスタンスの調節が行える。
【0016】
なお、調節リング44を上下方向に移動させる方法として、円筒体42外周にオネジを形成し、調節リング44内周にメネジを形成する構造も考えられるが、汎用ねじでは幅広い上下方向の移動に大きな回転角度が必要となり、リードの大きな特殊ねじでは加工が難しく高価となり、上記実施形態の構成が優れている。
【0017】
上記実施形態では、各基板41に基板押しバネ45を配置してあるが、これに限定されるものではなく、図7に示すように単一の基板押しバネ71により全ての基板41を押圧することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す正断面図。
【図2】本発明の一実施形態を示す底面図。
【図3】本発明の一実施形態の基板41の詳細を示す部分底面図。
【図4】本発明の一実施形態の基板41の詳細を示す部分正面図。
【図5】本発明の一実施形態の基板41の詳細を示す底面からみた斜視図。
【図6】本発明の一実施形態を示す部分破断側面図。
【図7】本発明の他の実施形態を示す正断面図。
【図8】本発明の一実施形態の動作説明図。
【符号の説明】
【0019】
1:LED、41:基板、42:円筒体、43:固定リング、44:調節リング、45:基板押しバネ、46:バネガイドピン、47:取付ネジ、48:調節ロックネジ、49:傾動軸、50:突起部、51:内側端部、52:切欠、53:軸受溝、54:軸受片、55:段差、61:長穴、71:基板押しバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源をリング状に配置し、該リングのリング軸方向に照明するリング状照明装置において、
前記光源を装着する装着面を備え、該装着面を前記リング軸方向に傾動可能に支持され、且つリング状に配置された、複数の基板と、
該基板上に装着された複数の光源と、
前記複数の基板を傾動させ、任意角度の位置で係止する基板傾動装置と、
を備えたことを特徴とするリング状照明装置。
【請求項2】
前記複数の基板の内側端部を支持する傾動軸と、
該基板を前記リング軸方向に押圧する押圧体と、
該基板の外側端部を係止する係止面を備え、該係止面を移動させることにより、前記基板を前記傾動軸を支点として前記押圧体の押圧力により且つ押圧力に抗して傾動させる傾動調節体と、
を更に備えた請求項1のリング照明装置。
【請求項3】
前記傾動調節体が、前記係止面を端面とする円筒体であり、
該円筒体は;
該円筒体の側面に形成され、該円筒体の長手方向に傾斜する長穴と、
該長穴に貫挿する軸片と、を備え、
該円筒体を回転させることにより、該円筒体を前記軸片に沿って上下動させ、
前記係止面を移動させる、
請求項2のリング照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−287456(P2007−287456A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112801(P2006−112801)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000251163)林時計工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】