リング発振器
【課題】周波数同調方式で通信波を復調する際には、局部発振器の信号の歪によって高調波成分が復調されノイズとなる。これを回避するにはハーモニック・リジェクション機能を有するチューナが効果的であるが、このチューナを得るためには位相が120度ずつ異なる6相信号が必要になる。従来位相が90度ずつ異なる4相の信号は比較的容易に得られていたが、インバータを用いて6相の信号を得ることは容易ではなかった。
【解決手段】反転増幅器を、隣の出力を入力に直接接続するリング発振器を2系列ならべて、それぞれの対応する反転増幅器毎に、入力と出力を互いにキャパシタを介して接続する。このようにすることで、位相が120ずつ異なった6相の信号を得ることができ、ここの反転増幅器の駆動電圧若しくは駆動電流を共通にして制御することで、発振周波数も制御することができる。
【解決手段】反転増幅器を、隣の出力を入力に直接接続するリング発振器を2系列ならべて、それぞれの対応する反転増幅器毎に、入力と出力を互いにキャパシタを介して接続する。このようにすることで、位相が120ずつ異なった6相の信号を得ることができ、ここの反転増幅器の駆動電圧若しくは駆動電流を共通にして制御することで、発振周波数も制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送の画像受信機若しくは音声受信機で用いられるチューナに好適に用いることのできる局部発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送等を受信するチューナにハーモニック・リジェクション・ミキサ(HRM)を用いる場合においては、局部発振器として因数に奇数を含む相数のものが必要となることがある。例えば、第3高調波による妨害波を抑制するために6(2×3)相の局部発振器を用いる。6相の局部発振器信号を得る手段の一つとして、6相信号を出力するリング発振器を用いる方法がある。
【0003】
リング発振器とは、反転増幅器を複数個リング状に接続した発振器である。偶数相信号を出力するリング発振器の構成方法としては、マルチパス方式(特許文献1)と、差動増幅器をリング状に接続し、かつ一周で位相を反転させるように接続する方法(特許文献2、3)が知られている。
【0004】
しかし、マルチパス方式においては、4相出力のものを実現することは容易であるが、6相出力のものを出力することは容易ではない。差動増幅器を用いた方法の例を図14、15に示す。これらはそれぞれ、特許文献2、3に開示されているものである。図14では、ゲインステージ200の次段に定電流源とローパスフィルターからなるバンドパスフィルタを設け、位相の制御を行っている。
【0005】
図15では、差増増幅器100をリング状に3つ連結したリング発振器が開示されている。111および112はPMOSトランジスタである。図15のリング発振器では、トランジスタと接地に愛代に挿入された6つの抵抗Rの部分で6相出力の発振信号が容易に得られる。
【0006】
ところで、テレビチューナの局部発振器は周波数を可変させる必要がある。差動増幅器を用いた場合、周波数を可変させるには各差動増幅器のテール電流を可変させる必要がある。すなわち、差動増幅器を用いたリング発振器の場合は、差動増幅器の数だけ定電流源が必要になる。
【特許文献1】特開2004−96362号公報
【特許文献2】特開平7−74592号公報
【特許文献3】特開2007−142678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
差動増幅器のテール電流はいわば駆動電流でもあるので、低ノイズである必要がある。しかし、低ノイズの定電流源をICチップ上に形成するには多くの面積を必要とするという課題があった。つまり、チューナなどのリング発振器を利用する装置のIC化においては、リング発振器の占める面積は狭いほうが、ICの小型化に有利である。従って、定電流源の数は減らしたいという要求が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題に鑑み想到されたものであり、発振周波数を制御する定電流源の数を一つにしたまま奇数の2倍の相数を持つリング発振器を提供するものである。
【0009】
すなわち、
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力にキャパシタを介して接続され、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力にキャパシタを介して接続されたリング発振器を提供するものである。
【0010】
また、
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器と、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の駆動電源は共通であり、前記駆動電源にはインピーダンス素子が接続されたリング発振器を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いることにより、定電流源を一つとしながら奇数の2倍の相数のリング発振器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態に係わるリング発振器のブロック図を図1に示す。本実施の形態のリング発振器は、インバータV1乃至V6と、コンデンサC1乃至C6と、定電流源Icと、出力端子OUT1乃至6を含む。インバータV1、V2、V3はそれぞれの出力が次のインバータの入力となるように接続されており、インバータV3の出力はインバータV1の入力に接続されている。すなわち、インバータV1乃至V3はリング状に接続されている。なお、本明細書中において、インバータは反転増幅器と同意味として使う。
【0013】
ここで、インバータV1乃至V3は一つの増幅器列を成しているという。インバータV1乃至V3を第1の増幅器列と呼ぶ。また、同様にインバータV4乃至V6もリング状に接続されており、他の増幅器列を構成している。インバータV4乃至V6を第2の増幅器列と呼ぶ。なお、増幅器列自体もリング発振器である。
【0014】
インバータV1の出力は、コンデンサC1を介してインバータV4の入力に接続されており、インバータV1の入力は、コンデンサC2を介してインバータV4の出力に接続されている。
同様にインバータV2の出力は、コンデンサC3を介してインバータV5の入力に接続されており、インバータV2の入力は、コンデンサC4を介してインバータV5の出力に接続されている。
【0015】
また、インバータV3の出力は、コンデンサC5を介してインバータV6の入力に接続されており、インバータV3の入力は、コンデンサC6を介してインバータV6の出力に接続されている。つまり、第1の増幅器列のインバータV1は第2の増幅器列のインバータV4と対応している。同様にインバータV2とV5、およびインバータV3とV6も対応している。
【0016】
インバータV1乃至V6は駆動電源Vccで駆動されており、接地側には定電流源Icが接続されている。出力端子OUT1乃至6はインバータV1乃至V6の出力端に接続されている。
【0017】
次に本発明のリング発振器の動作について説明する。図2には第1の増幅器列だけの構成と信号について示す。第1の増幅器列を見ると、コンデンサを介して出力を接地した3つのインバータがリング状に結合されている。まず、インバータV1の入力が最初にゼロであったとすると、遅延時間t後に出力が1になる。この出力はインバータV2の入力となり、やはり遅延時間t後にインバータV2はゼロの出力となる。同様にこの出力はインバータV3の入力となり、遅延時間t後にインバータV3は1を出力する。インバータV3の出力はインバータV1の入力となり、以下同様の動作を繰り返す。
【0018】
すなわち、インバータV1の出力は時間3t毎に変化し、周期は6tである。インバータV2およびV3の出力も同様である。しかし、インバータV1から見ると、インバータV3の出力は2t分だけ遅れており、インバータV2の出力は4tだけ遅れている。周期が6tであるので、2tは位相で120度に対応し、4tは240度に対応する。
【0019】
このように、第1の増幅器列の出力はOUT1の位相をゼロ度とすると、OUT2は240度、OUT3は120度だけ位相がずれた信号である。この意味でOUT1をP0、OUT2をP240、OUT3をP120と表す。実際には出力端に接続したコンデンサによってOUT1乃至OUT3は正弦波に近い波形として得ることができる。
【0020】
また、それぞれのインバータの反転周期は、入力電圧が変化してから出力電圧が変化するまでの時間tに依存する。この時間はインバータの出力電流と、出力端に接続されたコンデンサの値および信号振幅で決まるため、インバータの駆動電圧若しくは駆動電流を変化させることでインバータの出力電流と信号振幅の比が変化し、発振周波数は変化する。
【0021】
図1に戻って、奇数段のインバータをリング状に接続した場合、リング発振器として動作することは良く知られている。電源を定電流源に接続するリング発振器の場合、二つの等価なリング発振器に対して共通の定電流源に接続した場合、二つのリング発振器は同一の周波数で発振し、条件を整えれば二つの発振器出力信号は互いに位相が180度異なったものとなる。これは、二つのリング発振器の消費電流のリプルにより同期されることによる。
【0022】
図1のリング発振器1は、まさに二つのリング発振器を共通の定電流源に接続した状態となっている。しかし、単に第1の増幅器列および第2の増幅器列を共通の定電流源に接続しただけでは、どの出力端子がどの位相に対応するかが定かではない。それぞれの3段リング発振器は上記の説明のように、位相差120度の3相信号を出力するのであるが、それぞれの3段リング発振器同士の出力端の対応が定まらないからである。
【0023】
そこで、図1で示すように、第1の増幅器列と第2の増幅器列のそれぞれ対応する反転増幅器同士の出力を、位相差が180度となるように容量結合させる。このようにすることで、二つのリング発振器の位相差を確実に180度とし、結果として位相差が60度ずつ異なる6相の発振信号を得ることができる。
【0024】
図1の第1の増幅器列は、図2で説明したように、OUT1、OUT2、OUT3の位相はそれぞれゼロ度、240度、120度である。すなわち、インバータV1乃至V3は−120度の位相回転を与える周波数で発振している。
【0025】
さて、インバータV4の出力には、インバータV1の入力OUT3とインバータV2の出力OUT2が入力されている。すなわち、位相が120度の信号と240度の信号が加えられている。これらの信号の加算はベクトルとして求められその位相は180度である。
【0026】
一方、インバータV4の入力には、インバータV2の出力OUT2とインバータV1の出力OUT1が加えられている。これらの信号の位相はそれぞれ240度とゼロ度である。つまり、インバータV4の入力は300度の位相の信号である。
【0027】
第2の増幅器列の3つのインバータは基本的に大1の増幅器列のインバータと同じであるから、安定的に発振しているとすると、それぞれのインバータは−120度の位相回転を生じる周波数で発振している。すると、入力が300度の位相の信号が入力された場合は、出力信号の位相は180度となり、インバータV4の出力にインバータV1の入力とインバータV2の出力から与えられる信号の位相300度と一致する。同様にインバータV5の出力信号の位相は60度であり、インバータV6の出力信号の位相は300度となる。
【0028】
このように、この第2の増幅器列の3つのインバータの位相関係は第1の増幅器列の位相関係とは180度ずれた関係となっている。また、第1の増幅器列のインバータの出力が容量を介して第2の増幅器列のインバータの入力及び出力に与える信号の位相は一致する。従って、第1の増幅器列及び第2の増幅器列は180度ずれた位相関係で安定に発振する。
【0029】
結果として、出力端子OUT1、OUT2、OUT3からは位相がゼロ度、240度、120度の信号が得られ、OUT4、OUT5、OUT6からは位相が180度、60度、300度の信号を得ることができる。
【0030】
なお、それぞれの増幅器列から見ると、容量結合されたコンデンサは各インバータから見て負荷容量として働く。例えば、インバータV3の出力はコンデンサC1により位相60度の信号に接続され、またコンデンサC6により位相180度の信号に接続されている。コンデンサC1とC6の容量を等しくするので、結果として位相120度の信号に接続されていることと等価になる。
【0031】
このとき、位相60度と位相180度は位相が120度ずれているので、二つの信号の平均値の振幅は、それぞれの信号の半分となる。したがって、インバータV3の出力から見た場合、コンデンサC1またはC6の容量と同じ容量のコンデンサが負荷として接続されていることと等価となる。言い換えると、二つの容量の和の半分の大きさなので、同じ容量となる。容量結合により負荷容量が発生するので、リング発振器としての発振周波数は低下するが、その分、位相ノイズが抑えられることになる。
【0032】
図3には具体的な回路構成の一例を示す。M1とM2はそれぞれPチャンネル、NチャンネルのFETである。それぞれのゲートは接続されていて、この点が入力端子となる。また、M1のドレインとM2のドレインは接続されており、この点が出力端子OUT1となる。M1のソースは駆動電圧Vccと接続されている。一方、M2のソースは定電流源Icに接続されている。
【0033】
このM1およびM2でインバータV1が構成される。同様にM3とM4でインバータV2が構成され、M5とM6でインバータV3が構成されている。また、それぞれのインバータの出力は隣のインバータの入力と接続されている。さらに、出力端子OUT3とM1およびM2の入力端子が接続されているので、インバータV1乃至V3はリング状に接続されている。従ってM1乃至M6で第1の増幅器列が構成されている。同様にM7乃至M12でインバータV4、V5、V6が構成され、第2の増幅器列が構成されている。
【0034】
出力端子OUT1はコンデンサC1を解してM7およびM8の入力端と接続されている。またOUT4はコンデンサC2を介してM1およびM2の入力端と接続されている。すなわち、図1のインバータV1およびV4の接続関係と同じである。M3、M4によるインバータV2とM9、M10によるインバータV5も図1と同様の関係が実現されている。M5、M6によるインバータV3とM11、M12によるインバータV6の関係も同様である。
この回路は定電流源Icの電流量を変化させることで、発振周波数を制御することができる。
【0035】
(実施の形態2)
本発明の補足2の実施例の構成図を図4に示す。これは6相の信号を出力するリング発振器である。実施の形態1では発振周波数を各インバータの駆動電流で制御していたが、本実施の形態のリング発振器では、発振周波数はVcの電圧値を変化させることによって制御する。
【0036】
また、この構成を実現する実際の回路図を図5に例示する。基本的な構成は図3と同じである。各インバータはPチャンネルタイプのFETとNチャンネルタイプそれぞれのドレイン同士を接続して構成される。それぞれのFETのゲートは入力端子として結合される。制御電圧Vcは、PチャンネルタイプのFETのソースとNチャンネルタイプのソースの間に接続され、所定の電圧を印加する。この駆動電圧によってインバータの入力から出力までの時間差が決まり、発振周波数を制御することができる。
【0037】
(実施の形態3)
本発明第3の実施の形態を図6に示す。これは位相が60度ずつずれた6相の信号を出力するものであり、発振周波数は定電流源Icの電流によって決まる。インバータV1からV3により第1の増幅器列が形成され、インバータV4からV6により第2の増幅器列が形成されている。
【0038】
これらの二つの増幅器列の電源電流は一つの定電流源Icによって供給されている。Z1からZ3はそれぞれ二つのインバータの電源で共通する線形または非線形のインピーダンス素子であり、抵抗などである。
【0039】
第1の増幅器列と第2の増幅器列は同等なものであり、両者は同期して同じ周波数で発振するが、インバータV1とインバータV4の合計電流があまり大きくないように動作するため、インバータV1の出力とインバータV4の出力は互いに位相が180度異なったものとなる。その結果、位相が60度ずつ異なった6相の発振出力が得られる。
【0040】
本実施の形態における具体的な回路例を図7に示す。各インバータはそれぞれNチャンネルのFET一つとPチャンネルのFET一つより構成されている点は実施の形態1や2と同じである。インピーダンス素子は電圧Vbをゲート・ソース間にかけられているFETであるM13、M14、M15である。これらはともに線形領域で動作するので、抵抗として動作する。その抵抗の大きさは電圧Vbによって決まる。
【0041】
一般に、インピーダンス素子のインピーダンスが高いとリング発振器の位相ノイズが多くなってしまうが、あまりインピーダンスを下げすぎると、二つのリング発振回路における位相差が180度からずれやすくなる。そこで、インピーダンス素子の抵抗が低電源Icの電流に応じた値となるように、電流に応じて適切にVbの値を調整することが望ましい。
この回路例においては、各インバータ出力に負荷容量Load1乃至Load6が付加されているが、負荷容量Load1乃至Load6を付加しなくてもよい。
【0042】
図8に他の回路例を示す。回路全体の構成は図6と同じである。また、第1の増幅器列と第2の増幅器列の構成も図7と同じである。図7との相違は、インピーダンス素子がバイポーラトランジスタQ1からQ3になっている点であり、バイポーラトランジスタQ1からQ3はベース・エミッタ間の電圧がVbとなっている。このような回路の場合、バイポーラトランジスタQ1からQ3は電流リミッタとして動作する。
【0043】
すなわち、リミット電流以下では短絡状態になるが、リミット電流以上の電流が流れようとすると急に電圧降下が増大してリミット電流以上の電流が流れないようになる。本実施の形態においては、リミット電流の値を一つのインバータに流れる電流の最大値よりもわずかに大きい値に設定する。
【0044】
したがってM1およびM2により構成されるインバータと、M7およびM8により構成されるインバータの動作の位相が180度ずれている場合は、電流リミッタは短絡状態であり続けるが、位相差が60度または300度のときは、電流リミッタに流れようとする電流がリミット電流を超えるので、二つのリング発振回路の位相差が変化するように作用する。その結果、M1およびM2により構成されるインバータとM7およびM8により構成されるインバータの動作の位相は180度となるように自動的に調整される。
【0045】
本回路構成の利点は、インピーダンス素子の挿入によりリング発振器の位相ノイズの劣化を抑えることが出来る点である。通常動作においては、インピーダンス素子である電流リミッタは短絡状態にあるので、インピーダンス素子がリング発振器の位相ノイズに寄与する分は少ない。
【0046】
本回路構成においては、インピーダンス素子として非線形素子である電流リミッタを用いたが、インピーダンス素子として他の種類の非線形素子を用いてもよい。
【0047】
図9にまた他の回路構成例を示す。インピーダンス素子として純粋な抵抗素子R1、R2、R3が用いられている点が図7や8で示した回路と異なる。抵抗素子を用いる利点は、外部からバイアス電圧などを供給する必要がないので、回路が簡素化される点である。
【0048】
(実施の形態4)
本実施の形態を示すブロック図を図10に示す。これまでの実施の形態においては、リング発振器の発振周波数を電源電流により制御していたが、本実施の形態においては電源電圧により制御するようにしてもよい。また、負荷用量Load1からLoad3の容量を変化させることによって発振周波数を制御してもよい。また、その他の方法で制御してもよい。
【0049】
(実施の形態5)
本実施の形態を示すブロック図を図11に示す。これまでの実施の形態においては、インピーダンス素子を電源の正側にのみ挿入していたが、正側と負側の両方に挿入している。リング発振器を構成するインバータは、スルー電流のほかに容量負荷を充放電する電流も含まれるため、電源の正側と負側に流れる電流が異なり、電源の両側にインピーダンス素子を挿入することにより、二つの増幅器列間の位相差を180度に保つ能力を向上させることができる。また、図12に示すように、電源の負側のみにインピーダンス素子を挿入してもよい。
【0050】
(実施の形態6)
本実施の形態を表す構成の例を図13に示す。これは10相の信号を出力するリング発振器である。インバータV1、V2,V3、V7、V8によって構成される第1の増幅器列とV4、V5,V6、V9、V10によって構成される第2の増幅器列はともに5段であり、インピーダンス素子Z1、Z2、Z3、Z7、Z8によりインバータV1、V2,V3、V7、V8の出力信号はインバータV4、V5,V6、V9、V10の出力信号と位相が180度異なるので、位相が36度ずつずれた10相の発振出力信号を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はテレビやラジオのチューナだけでなく、携帯電話や光通信などの局部発振器としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のリング発振器の構成を示す図。
【図2】本発明のリング発振器の動作を説明するための図。
【図3】実施の形態1のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図4】本発明のリング発振器の他の構成を示す図。
【図5】実施の形態2のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図6】実施の形態3のリング発振器の構成を示す図。
【図7】実施の形態3のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図8】実施の形態3の他の具体的な回路の一例を示す図。
【図9】実施の形態3の他の具体的な回路の一例を示す図。
【図10】実施の形態4のリング発振器の構成を示す図。
【図11】実施の形態5のリング発振器の構成を示す図。
【図12】実施の形態5のリング発振器の他の構成を示す図。
【図13】実施の形態6のリング発振器の構成を示す図。
【図14】従来技術を示す図。
【図15】従来技術を示す図。
【符号の説明】
【0053】
V1乃至V6 インバータ
M1乃至M12 FET
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送の画像受信機若しくは音声受信機で用いられるチューナに好適に用いることのできる局部発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送等を受信するチューナにハーモニック・リジェクション・ミキサ(HRM)を用いる場合においては、局部発振器として因数に奇数を含む相数のものが必要となることがある。例えば、第3高調波による妨害波を抑制するために6(2×3)相の局部発振器を用いる。6相の局部発振器信号を得る手段の一つとして、6相信号を出力するリング発振器を用いる方法がある。
【0003】
リング発振器とは、反転増幅器を複数個リング状に接続した発振器である。偶数相信号を出力するリング発振器の構成方法としては、マルチパス方式(特許文献1)と、差動増幅器をリング状に接続し、かつ一周で位相を反転させるように接続する方法(特許文献2、3)が知られている。
【0004】
しかし、マルチパス方式においては、4相出力のものを実現することは容易であるが、6相出力のものを出力することは容易ではない。差動増幅器を用いた方法の例を図14、15に示す。これらはそれぞれ、特許文献2、3に開示されているものである。図14では、ゲインステージ200の次段に定電流源とローパスフィルターからなるバンドパスフィルタを設け、位相の制御を行っている。
【0005】
図15では、差増増幅器100をリング状に3つ連結したリング発振器が開示されている。111および112はPMOSトランジスタである。図15のリング発振器では、トランジスタと接地に愛代に挿入された6つの抵抗Rの部分で6相出力の発振信号が容易に得られる。
【0006】
ところで、テレビチューナの局部発振器は周波数を可変させる必要がある。差動増幅器を用いた場合、周波数を可変させるには各差動増幅器のテール電流を可変させる必要がある。すなわち、差動増幅器を用いたリング発振器の場合は、差動増幅器の数だけ定電流源が必要になる。
【特許文献1】特開2004−96362号公報
【特許文献2】特開平7−74592号公報
【特許文献3】特開2007−142678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
差動増幅器のテール電流はいわば駆動電流でもあるので、低ノイズである必要がある。しかし、低ノイズの定電流源をICチップ上に形成するには多くの面積を必要とするという課題があった。つまり、チューナなどのリング発振器を利用する装置のIC化においては、リング発振器の占める面積は狭いほうが、ICの小型化に有利である。従って、定電流源の数は減らしたいという要求が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題に鑑み想到されたものであり、発振周波数を制御する定電流源の数を一つにしたまま奇数の2倍の相数を持つリング発振器を提供するものである。
【0009】
すなわち、
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力にキャパシタを介して接続され、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力にキャパシタを介して接続されたリング発振器を提供するものである。
【0010】
また、
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器と、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の駆動電源は共通であり、前記駆動電源にはインピーダンス素子が接続されたリング発振器を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いることにより、定電流源を一つとしながら奇数の2倍の相数のリング発振器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態に係わるリング発振器のブロック図を図1に示す。本実施の形態のリング発振器は、インバータV1乃至V6と、コンデンサC1乃至C6と、定電流源Icと、出力端子OUT1乃至6を含む。インバータV1、V2、V3はそれぞれの出力が次のインバータの入力となるように接続されており、インバータV3の出力はインバータV1の入力に接続されている。すなわち、インバータV1乃至V3はリング状に接続されている。なお、本明細書中において、インバータは反転増幅器と同意味として使う。
【0013】
ここで、インバータV1乃至V3は一つの増幅器列を成しているという。インバータV1乃至V3を第1の増幅器列と呼ぶ。また、同様にインバータV4乃至V6もリング状に接続されており、他の増幅器列を構成している。インバータV4乃至V6を第2の増幅器列と呼ぶ。なお、増幅器列自体もリング発振器である。
【0014】
インバータV1の出力は、コンデンサC1を介してインバータV4の入力に接続されており、インバータV1の入力は、コンデンサC2を介してインバータV4の出力に接続されている。
同様にインバータV2の出力は、コンデンサC3を介してインバータV5の入力に接続されており、インバータV2の入力は、コンデンサC4を介してインバータV5の出力に接続されている。
【0015】
また、インバータV3の出力は、コンデンサC5を介してインバータV6の入力に接続されており、インバータV3の入力は、コンデンサC6を介してインバータV6の出力に接続されている。つまり、第1の増幅器列のインバータV1は第2の増幅器列のインバータV4と対応している。同様にインバータV2とV5、およびインバータV3とV6も対応している。
【0016】
インバータV1乃至V6は駆動電源Vccで駆動されており、接地側には定電流源Icが接続されている。出力端子OUT1乃至6はインバータV1乃至V6の出力端に接続されている。
【0017】
次に本発明のリング発振器の動作について説明する。図2には第1の増幅器列だけの構成と信号について示す。第1の増幅器列を見ると、コンデンサを介して出力を接地した3つのインバータがリング状に結合されている。まず、インバータV1の入力が最初にゼロであったとすると、遅延時間t後に出力が1になる。この出力はインバータV2の入力となり、やはり遅延時間t後にインバータV2はゼロの出力となる。同様にこの出力はインバータV3の入力となり、遅延時間t後にインバータV3は1を出力する。インバータV3の出力はインバータV1の入力となり、以下同様の動作を繰り返す。
【0018】
すなわち、インバータV1の出力は時間3t毎に変化し、周期は6tである。インバータV2およびV3の出力も同様である。しかし、インバータV1から見ると、インバータV3の出力は2t分だけ遅れており、インバータV2の出力は4tだけ遅れている。周期が6tであるので、2tは位相で120度に対応し、4tは240度に対応する。
【0019】
このように、第1の増幅器列の出力はOUT1の位相をゼロ度とすると、OUT2は240度、OUT3は120度だけ位相がずれた信号である。この意味でOUT1をP0、OUT2をP240、OUT3をP120と表す。実際には出力端に接続したコンデンサによってOUT1乃至OUT3は正弦波に近い波形として得ることができる。
【0020】
また、それぞれのインバータの反転周期は、入力電圧が変化してから出力電圧が変化するまでの時間tに依存する。この時間はインバータの出力電流と、出力端に接続されたコンデンサの値および信号振幅で決まるため、インバータの駆動電圧若しくは駆動電流を変化させることでインバータの出力電流と信号振幅の比が変化し、発振周波数は変化する。
【0021】
図1に戻って、奇数段のインバータをリング状に接続した場合、リング発振器として動作することは良く知られている。電源を定電流源に接続するリング発振器の場合、二つの等価なリング発振器に対して共通の定電流源に接続した場合、二つのリング発振器は同一の周波数で発振し、条件を整えれば二つの発振器出力信号は互いに位相が180度異なったものとなる。これは、二つのリング発振器の消費電流のリプルにより同期されることによる。
【0022】
図1のリング発振器1は、まさに二つのリング発振器を共通の定電流源に接続した状態となっている。しかし、単に第1の増幅器列および第2の増幅器列を共通の定電流源に接続しただけでは、どの出力端子がどの位相に対応するかが定かではない。それぞれの3段リング発振器は上記の説明のように、位相差120度の3相信号を出力するのであるが、それぞれの3段リング発振器同士の出力端の対応が定まらないからである。
【0023】
そこで、図1で示すように、第1の増幅器列と第2の増幅器列のそれぞれ対応する反転増幅器同士の出力を、位相差が180度となるように容量結合させる。このようにすることで、二つのリング発振器の位相差を確実に180度とし、結果として位相差が60度ずつ異なる6相の発振信号を得ることができる。
【0024】
図1の第1の増幅器列は、図2で説明したように、OUT1、OUT2、OUT3の位相はそれぞれゼロ度、240度、120度である。すなわち、インバータV1乃至V3は−120度の位相回転を与える周波数で発振している。
【0025】
さて、インバータV4の出力には、インバータV1の入力OUT3とインバータV2の出力OUT2が入力されている。すなわち、位相が120度の信号と240度の信号が加えられている。これらの信号の加算はベクトルとして求められその位相は180度である。
【0026】
一方、インバータV4の入力には、インバータV2の出力OUT2とインバータV1の出力OUT1が加えられている。これらの信号の位相はそれぞれ240度とゼロ度である。つまり、インバータV4の入力は300度の位相の信号である。
【0027】
第2の増幅器列の3つのインバータは基本的に大1の増幅器列のインバータと同じであるから、安定的に発振しているとすると、それぞれのインバータは−120度の位相回転を生じる周波数で発振している。すると、入力が300度の位相の信号が入力された場合は、出力信号の位相は180度となり、インバータV4の出力にインバータV1の入力とインバータV2の出力から与えられる信号の位相300度と一致する。同様にインバータV5の出力信号の位相は60度であり、インバータV6の出力信号の位相は300度となる。
【0028】
このように、この第2の増幅器列の3つのインバータの位相関係は第1の増幅器列の位相関係とは180度ずれた関係となっている。また、第1の増幅器列のインバータの出力が容量を介して第2の増幅器列のインバータの入力及び出力に与える信号の位相は一致する。従って、第1の増幅器列及び第2の増幅器列は180度ずれた位相関係で安定に発振する。
【0029】
結果として、出力端子OUT1、OUT2、OUT3からは位相がゼロ度、240度、120度の信号が得られ、OUT4、OUT5、OUT6からは位相が180度、60度、300度の信号を得ることができる。
【0030】
なお、それぞれの増幅器列から見ると、容量結合されたコンデンサは各インバータから見て負荷容量として働く。例えば、インバータV3の出力はコンデンサC1により位相60度の信号に接続され、またコンデンサC6により位相180度の信号に接続されている。コンデンサC1とC6の容量を等しくするので、結果として位相120度の信号に接続されていることと等価になる。
【0031】
このとき、位相60度と位相180度は位相が120度ずれているので、二つの信号の平均値の振幅は、それぞれの信号の半分となる。したがって、インバータV3の出力から見た場合、コンデンサC1またはC6の容量と同じ容量のコンデンサが負荷として接続されていることと等価となる。言い換えると、二つの容量の和の半分の大きさなので、同じ容量となる。容量結合により負荷容量が発生するので、リング発振器としての発振周波数は低下するが、その分、位相ノイズが抑えられることになる。
【0032】
図3には具体的な回路構成の一例を示す。M1とM2はそれぞれPチャンネル、NチャンネルのFETである。それぞれのゲートは接続されていて、この点が入力端子となる。また、M1のドレインとM2のドレインは接続されており、この点が出力端子OUT1となる。M1のソースは駆動電圧Vccと接続されている。一方、M2のソースは定電流源Icに接続されている。
【0033】
このM1およびM2でインバータV1が構成される。同様にM3とM4でインバータV2が構成され、M5とM6でインバータV3が構成されている。また、それぞれのインバータの出力は隣のインバータの入力と接続されている。さらに、出力端子OUT3とM1およびM2の入力端子が接続されているので、インバータV1乃至V3はリング状に接続されている。従ってM1乃至M6で第1の増幅器列が構成されている。同様にM7乃至M12でインバータV4、V5、V6が構成され、第2の増幅器列が構成されている。
【0034】
出力端子OUT1はコンデンサC1を解してM7およびM8の入力端と接続されている。またOUT4はコンデンサC2を介してM1およびM2の入力端と接続されている。すなわち、図1のインバータV1およびV4の接続関係と同じである。M3、M4によるインバータV2とM9、M10によるインバータV5も図1と同様の関係が実現されている。M5、M6によるインバータV3とM11、M12によるインバータV6の関係も同様である。
この回路は定電流源Icの電流量を変化させることで、発振周波数を制御することができる。
【0035】
(実施の形態2)
本発明の補足2の実施例の構成図を図4に示す。これは6相の信号を出力するリング発振器である。実施の形態1では発振周波数を各インバータの駆動電流で制御していたが、本実施の形態のリング発振器では、発振周波数はVcの電圧値を変化させることによって制御する。
【0036】
また、この構成を実現する実際の回路図を図5に例示する。基本的な構成は図3と同じである。各インバータはPチャンネルタイプのFETとNチャンネルタイプそれぞれのドレイン同士を接続して構成される。それぞれのFETのゲートは入力端子として結合される。制御電圧Vcは、PチャンネルタイプのFETのソースとNチャンネルタイプのソースの間に接続され、所定の電圧を印加する。この駆動電圧によってインバータの入力から出力までの時間差が決まり、発振周波数を制御することができる。
【0037】
(実施の形態3)
本発明第3の実施の形態を図6に示す。これは位相が60度ずつずれた6相の信号を出力するものであり、発振周波数は定電流源Icの電流によって決まる。インバータV1からV3により第1の増幅器列が形成され、インバータV4からV6により第2の増幅器列が形成されている。
【0038】
これらの二つの増幅器列の電源電流は一つの定電流源Icによって供給されている。Z1からZ3はそれぞれ二つのインバータの電源で共通する線形または非線形のインピーダンス素子であり、抵抗などである。
【0039】
第1の増幅器列と第2の増幅器列は同等なものであり、両者は同期して同じ周波数で発振するが、インバータV1とインバータV4の合計電流があまり大きくないように動作するため、インバータV1の出力とインバータV4の出力は互いに位相が180度異なったものとなる。その結果、位相が60度ずつ異なった6相の発振出力が得られる。
【0040】
本実施の形態における具体的な回路例を図7に示す。各インバータはそれぞれNチャンネルのFET一つとPチャンネルのFET一つより構成されている点は実施の形態1や2と同じである。インピーダンス素子は電圧Vbをゲート・ソース間にかけられているFETであるM13、M14、M15である。これらはともに線形領域で動作するので、抵抗として動作する。その抵抗の大きさは電圧Vbによって決まる。
【0041】
一般に、インピーダンス素子のインピーダンスが高いとリング発振器の位相ノイズが多くなってしまうが、あまりインピーダンスを下げすぎると、二つのリング発振回路における位相差が180度からずれやすくなる。そこで、インピーダンス素子の抵抗が低電源Icの電流に応じた値となるように、電流に応じて適切にVbの値を調整することが望ましい。
この回路例においては、各インバータ出力に負荷容量Load1乃至Load6が付加されているが、負荷容量Load1乃至Load6を付加しなくてもよい。
【0042】
図8に他の回路例を示す。回路全体の構成は図6と同じである。また、第1の増幅器列と第2の増幅器列の構成も図7と同じである。図7との相違は、インピーダンス素子がバイポーラトランジスタQ1からQ3になっている点であり、バイポーラトランジスタQ1からQ3はベース・エミッタ間の電圧がVbとなっている。このような回路の場合、バイポーラトランジスタQ1からQ3は電流リミッタとして動作する。
【0043】
すなわち、リミット電流以下では短絡状態になるが、リミット電流以上の電流が流れようとすると急に電圧降下が増大してリミット電流以上の電流が流れないようになる。本実施の形態においては、リミット電流の値を一つのインバータに流れる電流の最大値よりもわずかに大きい値に設定する。
【0044】
したがってM1およびM2により構成されるインバータと、M7およびM8により構成されるインバータの動作の位相が180度ずれている場合は、電流リミッタは短絡状態であり続けるが、位相差が60度または300度のときは、電流リミッタに流れようとする電流がリミット電流を超えるので、二つのリング発振回路の位相差が変化するように作用する。その結果、M1およびM2により構成されるインバータとM7およびM8により構成されるインバータの動作の位相は180度となるように自動的に調整される。
【0045】
本回路構成の利点は、インピーダンス素子の挿入によりリング発振器の位相ノイズの劣化を抑えることが出来る点である。通常動作においては、インピーダンス素子である電流リミッタは短絡状態にあるので、インピーダンス素子がリング発振器の位相ノイズに寄与する分は少ない。
【0046】
本回路構成においては、インピーダンス素子として非線形素子である電流リミッタを用いたが、インピーダンス素子として他の種類の非線形素子を用いてもよい。
【0047】
図9にまた他の回路構成例を示す。インピーダンス素子として純粋な抵抗素子R1、R2、R3が用いられている点が図7や8で示した回路と異なる。抵抗素子を用いる利点は、外部からバイアス電圧などを供給する必要がないので、回路が簡素化される点である。
【0048】
(実施の形態4)
本実施の形態を示すブロック図を図10に示す。これまでの実施の形態においては、リング発振器の発振周波数を電源電流により制御していたが、本実施の形態においては電源電圧により制御するようにしてもよい。また、負荷用量Load1からLoad3の容量を変化させることによって発振周波数を制御してもよい。また、その他の方法で制御してもよい。
【0049】
(実施の形態5)
本実施の形態を示すブロック図を図11に示す。これまでの実施の形態においては、インピーダンス素子を電源の正側にのみ挿入していたが、正側と負側の両方に挿入している。リング発振器を構成するインバータは、スルー電流のほかに容量負荷を充放電する電流も含まれるため、電源の正側と負側に流れる電流が異なり、電源の両側にインピーダンス素子を挿入することにより、二つの増幅器列間の位相差を180度に保つ能力を向上させることができる。また、図12に示すように、電源の負側のみにインピーダンス素子を挿入してもよい。
【0050】
(実施の形態6)
本実施の形態を表す構成の例を図13に示す。これは10相の信号を出力するリング発振器である。インバータV1、V2,V3、V7、V8によって構成される第1の増幅器列とV4、V5,V6、V9、V10によって構成される第2の増幅器列はともに5段であり、インピーダンス素子Z1、Z2、Z3、Z7、Z8によりインバータV1、V2,V3、V7、V8の出力信号はインバータV4、V5,V6、V9、V10の出力信号と位相が180度異なるので、位相が36度ずつずれた10相の発振出力信号を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はテレビやラジオのチューナだけでなく、携帯電話や光通信などの局部発振器としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のリング発振器の構成を示す図。
【図2】本発明のリング発振器の動作を説明するための図。
【図3】実施の形態1のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図4】本発明のリング発振器の他の構成を示す図。
【図5】実施の形態2のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図6】実施の形態3のリング発振器の構成を示す図。
【図7】実施の形態3のリング発振器の具体的な回路の一例を示す図。
【図8】実施の形態3の他の具体的な回路の一例を示す図。
【図9】実施の形態3の他の具体的な回路の一例を示す図。
【図10】実施の形態4のリング発振器の構成を示す図。
【図11】実施の形態5のリング発振器の構成を示す図。
【図12】実施の形態5のリング発振器の他の構成を示す図。
【図13】実施の形態6のリング発振器の構成を示す図。
【図14】従来技術を示す図。
【図15】従来技術を示す図。
【符号の説明】
【0053】
V1乃至V6 インバータ
M1乃至M12 FET
【特許請求の範囲】
【請求項1】
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力にキャパシタを介して接続され、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力にキャパシタを介して接続されたリング発振器。
【請求項2】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電流源によって動作遅延時間が変化する請求項1に記載されたリング発振器。
【請求項3】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電圧源によって動作遅延時間が変化する請求項1に記載されたリング発振器。
【請求項4】
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器と、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の駆動電源は共通であり、前記駆動電源にはインピーダンス素子が接続されたリング発振器。
【請求項5】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電流源によって動作遅延時間が変化する請求項4に記載されたリング発振器。
【請求項6】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電圧源によって動作遅延時間が変化する請求項4に記載されたリング発振器。
【請求項7】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の正側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項8】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の負側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項9】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の正側および負側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項10】
前記インピーダンス素子は能動回路である請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項11】
前記インピーダンス素子は電流リミッタである請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項12】
前記インピーダンス素子は抵抗である請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項1】
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力にキャパシタを介して接続され、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器の入力は、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の出力にキャパシタを介して接続されたリング発振器。
【請求項2】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電流源によって動作遅延時間が変化する請求項1に記載されたリング発振器。
【請求項3】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電圧源によって動作遅延時間が変化する請求項1に記載されたリング発振器。
【請求項4】
奇数個の反転増幅器を順次リング状に接続した第1の増幅器列と、
前記第1の増幅器列に属する個々の反転増幅器に対応する反転増幅器を順次リング状に接続した第2の増幅器列を有し、
前記第1の増幅器列に属する前記反転増幅器と、対応する前記第2の増幅器列に属する前記反転増幅器の駆動電源は共通であり、前記駆動電源にはインピーダンス素子が接続されたリング発振器。
【請求項5】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電流源によって動作遅延時間が変化する請求項4に記載されたリング発振器。
【請求項6】
前記第1の増幅器列と前記第2の増幅器列に属する反転増幅器は同一の電圧源によって動作遅延時間が変化する請求項4に記載されたリング発振器。
【請求項7】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の正側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項8】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の負側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項9】
前記インピーダンス素子は前記駆動電源の正側および負側に設けられた請求項4乃至6のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項10】
前記インピーダンス素子は能動回路である請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項11】
前記インピーダンス素子は電流リミッタである請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【請求項12】
前記インピーダンス素子は抵抗である請求項4乃至9のいずれか1の請求項に記載されたリング発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−212976(P2009−212976A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55480(P2008−55480)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】
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