説明

リンパ腫患者の早期予後用のバイオマーカーとしてのAPRILに対する抗体

本発明は、APRIL(TALL−2としても公知である増殖誘導TNFリガンド)に対して向けられた抗体、特にモノクローナル抗体Aprily−2と、モノクローナル抗体Aprily−2を産生するハイブリドーマ細胞と、メンブランに固着されたAPRILに対する抗体とAprily−2の組み合わせの、高いリスクの患者(>60歳および国際予後指標 >2)の、B細胞リンパ腫の治療に対する耐性の診断およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の臨床的進行の予後への使用と、に関する。抗体の調製に有用であるStalkと呼ばれるアミノ酸配列GTGGPSQNGEGYPが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、APRIL(TALL−2としても公知である)に対して向けられた抗体と、APRILに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞と、高いリスクを有する患者の、B細胞リンパ腫病原力の診断およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の臨床的進行の予後におけるこのような抗体の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
APRIL(TALL−2としても公知である増殖誘導TNFリガンド)およびBAFF(BLys、TALL−1としても公知である)は、密接に関連したTNFスーパーファミリーのリガンドである。これらは、BCMAおよびTACIの2種の受容体を共有するが、BAFFは、第3の受容体BAFF−R(BR3としても公知である)に結合している(カールド,S.L.(Kalled,S.L.)、アンブロース,C.(Ambrose,C.)およびシュー,Y.M.(Hsu,Y.M.)、「Curr Dir Autoimmun」8、206〜42ページ、2005年)。BAFF−R、TACIおよびBCMAは、体液性免疫応答におけるこれらの2種のTNF−リガンドの役割に従って主にB細胞で発現される。BAFF/BAFF−R経路は、末梢B細胞の成熟に重要であり、およびB細胞に同時刺激を与えると共にlgスイッチを誘導することにより体液性応答にも関与する。APRILはB細胞の発達には明らかな役割を有していないが、BAFFと同様に、体液性応答に関与している(カスティギリ,E.(Castigli,E.)ら、「Proc Natl Acad Sci USA」101、3903〜8ページ、2004年)。BAFF/APRIL経路の調節不全は、数々の自己免疫疾患に付随している(マッケイF.(Mackay,F.)、シエッロ,F.(Sierro,F.)、グレイ,S.T.(Grey,S.T.)およびゴードン,T.P.(Gordon,T.P.)、「Curr Dir Autoimmun」8、243〜65ページ、2005年)。
【0003】
自己免疫性病理学における役割に追加して、APRILおよびBAFFは、腫瘍の発達に関係している(マッケイF.(Mackay,F.)およびタンギーS.G.(Tangye,S.G.)、「Curr Opin Pharmacol」4、347〜54ページ、2004年)。動物モデルにおいては、APRILおよびBAFF過剰発現は、B細胞腫瘍症の進行を誘起する。これらの2種のTNFリガンドのB細胞腫瘍への関与は、ヒト株細胞で実証されている。非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)株細胞が、これらの2種のTNFリガンドを異常に発現して、インビトロでの生存/増殖の利点をもたらしていると報告された。患者において、BAFFおよびAPRILの異常な発現は、上昇した血清濃度(seric concentration)によって確かめられた。
【0004】
近年において、プロテオグリカンの硫酸グリコサミノグリカン側鎖へのAPRILの結合が実施された(インゴールド,K.(Ingold,K.)ら、「J Exp Med」201、1375〜83ページ、2005年)。対照的に、BAFFはプロテオグリカンに結合せず、APRIL機能におけるプロテオグリカンの役割に対する疑問が提起されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、可溶性APRILに対して向けられたモノクローナル抗体Aprily−2、およびAprily−2を産生するハイブリドーマ細胞に関する。さらに、本発明は、モノクローナル抗体Aprily−2と、メンブランに固着されたAPRIL断片に対して向けられたモノクローナルまたはポリクローナル抗体との組み合わせの、高いリスクを有する患者における、B細胞リンパ腫の治療に対する耐性の診断およびびまん性大細胞型B細胞(DLBCL)リンパ腫の臨床的進行の予後における使用に関し、特に、Aprily−2およびAPRILのストーク(stalk)領域に対する1種の抗体の組み合わせの使用、および関連する診断方法およびこのような抗体を含有するキットに関する。さらに、本発明は、抗体を調製するために有用であるAPRILのストーク領域のアミノ酸配列に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、可溶性APRILに対して向けられたモノクローナル抗体Aprily−2、およびこのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。
【0007】
可溶性APRILに対して向けられたモノクローナル抗体は、大腸菌(E.coli)における発現により得られる組み換え型ヒトAPRIL(92〜233)でマウスを免疫化することにより得られる。ハイブリドーマ細胞は、標準的な条件下で記載されるとおり調製される。可溶性APRILに対するモノクローナル抗体(mAb)Aprily−2を産生するハイブリドーマ株細胞Aprily−2を80μg/mlの濃度で、パスツール研究所の国立培養微生物収集所(CNCM)、25、F−75724パリ(Paris)CEDEX15、ドクトルルー通り(rue du Docteur Roux)に、2005年9月23日に、番号CNCM I−3500で寄託した。
【0008】
モノクローナル抗体Aprily−2は、分泌されたAPRILを局在化することが可能である。ストーク(Stalk)(GTGGPSQNGEGYP、配列番号1)と呼ばれる定義されたAPRIL配列に対する二次抗体は、APRILをヒト組織のインビトロで産生する細胞の同定を高い信頼性で可能にする。この配列(配列番号1)もまた本発明の目的である。
【0009】
これまで生成されたAPRILに対する抗体のいずれも、新たに合成されるAPRILが早期分裂してしまうので、APRILを産生する細胞を同定することができない。APRIL処理後の細胞と関連したままであるストークと呼ばれるAPRILの特定の断片のAPRIL産生細胞における安定性が重要である。実際、これが、APRILを産生する細胞において検出可能である主なAPRIL生成物である(図1a)。ヒトAPRIL(例えばポリクローナル抗体Stalk−1)の配列GTGGPSQNGEGYP(配列番号1)に対して向けられたいずれの抗体もこの15kDaストーク断片を同定することが可能である。
【0010】
このような抗体の組み合わせ、すなわちモノクローナル抗体Aprily−2およびストーク断片に対して向けられた任意の(モノクローナルまたはポリクローナル)抗体では、APRILを容易に検出することが可能である。このような方法は、本発明のさらなる態様である。APRILは、DLBCLなどの高悪性度B細胞リンパ腫の約半分で強く発現されることが観察されている。他の半分は健常な組織と比していかなる発現上昇も示さなかった。強いAPRIL発現上昇を示すDLBCL病変において、詳細な分析により、APRILは主に浸潤性好中球により(まれに組織球により)産生され、その一方で分泌されたAPRILが腫瘍細胞に濃縮されることが明らかにされた。DLBCL病変におけるAPRILの役割を、異なるレベルのAPRIL発現を有する患者の遡及試験で、インビボで試験した。腫瘤病変におけるAPRILの高発現と、臨床的リスクの高い患者における従来の治療に対する応答の欠如との間の強い相関関係がみられ、ヒトリンパ腫病原力(治療に対する耐性)におけるAPRILの役割を示していた。臨床的リスクの高い患者は、60歳を超える患者および/または国際予後指標(IPI)>2を有する患者として定義される。国際予後指標(IPI)は、リンパ腫病期をさらに明確にするために策定された。IPIは、i)一般的健康状態(全身状態としても公知である)、ii)腫瘍侵襲の病期(Ann Arbor病期分類)、iii)乳酸脱水素酵素(LDH)という名の高血清酵素の存在または不存在(腫瘍サイズと相関する)、およびiv)結節外部位の数などの4つの要素を考慮に入れて、疾病再発のリスクおよび全生存率を予測する。各病期は、1ポイントとして正のカウントがスコアされるとき;60歳を超える年齢およびIPI>2は、高いリスクの患者と関連している(ウィルダー,R.B.(Wilder,R.B.)ら、「Cancer」、94、3083〜3088ページ、2002年)。
【0011】
高悪性度B細胞リンパ腫におけるAPRIL発現上昇は腫瘍の治療に対する耐性を強化し、これが、臨床的リスクの高い患者についての治療失敗を説明する可能性が高い。記載の抗体、すなわちモノクローナル抗体Apriliy−2と、ストークと呼ばれるAPRIL断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体との組み合わせは、患者腫瘍生検におけるAPRIL発現を評価する第1の好適なペアである。
【0012】
上述の抗体ぺアは、疾病診断時に、現在の標準的な治療に対応できない重要なリスクを有する患者の免疫組織化学による容易な同定に有用である。このような早期の診断は、現在適用されているものより集中的な治療に適格である患者の認識を補助するであろう。費用の節約に追加して、このような早期の診断は、高悪性度B細胞リンパ腫、すなわちB細胞リンパ腫の高悪性形態の治療における成功率の向上を補助するであろう。本発明は、B細胞リンパ腫の高悪性形態(治療に対する耐性)の診断方法に関し、ここで、B細胞リンパ腫生検標本が、モノクローナル抗体Aprily−2の結合、およびAPRILのストーク断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体の結合に対して分析され、2種の抗体が標本に結合している場合に高悪性形態と診断される。
【0013】
腫瘍生検におけるAPRIL判定もまた、低悪性度リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫などの他のB細胞腫瘍についての重要な予後値を有する。加えて、これは、癌腫およびメラノーマなどの固体腫瘍について有用である。
【0014】
分泌された、メンブラン結合APRILを選択的に認識する抗体の同定
インサイチュAPRIL発現を試験するために、異なる特異性を有するAPRIL−特異的抗体が選択される。本発明のモノクローナル抗体、Aprily−2は、フューリン(furin)開裂に際して分泌されたAPRILのC−末端TNF相同ドメインを認識する。ポリクローナルウサギ抗血清Stalk−1は、APRIL細胞外ドメインにおける膜−近位配列を認識する。本願明細書において以下ストークと呼ぶこのドメインは、フューリン開裂後も細胞膜に結合したままである。パラフィン中に固定および包理されたAPRIL−形質移入化細胞への選択的染色がこれらの抗体で得られ、免疫組織化学的使用についての特異性が示されている。
【0015】
Stalk−1およびAprily−2は、免疫組織化学(IHC)により陽性染色を生成する。結果が表1、2および3に集計されている。Stalk−1およびAprily−2により、腫瘍生検からの溶解物(lysate)中に検出されたタンパク質生成物を生化学的に特徴付けた。ウェスタンブロット分析は、Aprily−2が主な18kDaバンドを同定し、一方でStalk−1はIHC陽性生検における14kDaバンドを検出することを示している(図1a)。このようなバンドはIHC陰性生検においては観察されなかった。Aprily−2により認識される18kDaバンドは、分泌されたAPRILのサイズと適合する。Stalk−1により認識される14kDaバンドは、開裂後のAPRILストーク領域の予想されたサイズと適合し、これはまた、DC溶解物における主たるバンドとして観察される(図1a、右パネル)。この後者の実験において、完全長APRIL(32kDa)は著しくは検出されず、APRILのほとんどは合成後に急速に開裂され、分泌されることを示している。特異性が、競合実験において評価される。ウェスタンブロット分析前の、対応する抗体への可溶性acrpAPRlLまたはストークペプチドの追加は、18kDaおよび14kDaバンドの認識をそれぞれ無効にし(図1b)、これらのタンパク質が関連するエピトープを発現していることを実証している。分析は開裂したAPRILのストークがAPRIL−産生細胞中に安定のままであることを示しており、Stalk−1を、APRIL−産生細胞を検出する役立つツールとしている。対照的に、Aprily−2は、分泌されたAPRILを検出する。
【0016】
DLBCL生検におけるAPRILの強い発現上昇
Stalk−1およびAprily−2を用いて、NHLおよび健常な扁桃腺対照のパラフィン包理化組織から調製した多発性腫瘍アレイを染色した。これらのうち、DLBCL病変の50%が、分泌されたAPRIL(Aprily−2染色)について強度に陽性であった。残りの症例は、細胞の局所的な染色のみを示した(表1)。対照的に、粘膜関連リンパ組織(MALT)、濾胞細胞(FCL)、マントル細胞(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MGZL)、ならびに結節性慢性リンパ性白血病(CLL)からの組織は局所的なAprily−2染色のみを有していた。扁桃腺などの非腫瘤性リンパ組織において、局所的なAprily−2染色が観察された。同一のNHLアレイをStalk−1で染色し、Aprily−2について陽性であった症例の95%超がまた、Stalk−1で染色された(表1)。それ故、分泌されたAPRILの検出において、腫瘍病変におけるAPRIL−産生細胞の存在と相関する。総合すると、これは、APRIL発現は、DLBCL病変の50%において顕著に上昇したことを示す。
【0017】
表1:APRIL発現は、高悪性度B細胞リンパ腫、ホジキン様リンパ腫および多発性骨髄腫において強く上昇している
多発性B細胞リンパ腫アレイおよび健常な組織を、Aprily−2(2μg/ml)またはStalk−1(5μg/ml)抗体で免疫染色した。強い染色(高)または局所的な(低/陰性)染色の複数の症例が示されている。
【0018】
【表1】

【0019】
APRILは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキン様リンパ腫および多発性骨髄腫(表1)、さらに、いくつかの他の癌腫(表2)および皮膚癌(表3)において、発現上昇されている。
【0020】
表2:APRIL発現は、種々の癌腫において強く上昇している
癌腫組織アレイおよび健常な組織を、Aprily−2(2μg/ml)またはStalk−1(5μg/ml)抗体で免疫染色した。陽性染色(+)が示されている。
【0021】
【表2】

【0022】
表3:APRIL発現は、種々の皮膚癌において強く上昇している
皮膚癌生検(基底細胞癌および転移性メラノーマ)および健常な組織を、Aprily−2(2μg/ml)またはStalk−1(5μg/ml)抗体で免疫染色した。多数の陽性染色が、4種の基底細胞癌および8種の転移性メラノーマについて示されている。
【0023】
【表3】

【0024】
詳細な分析のために、Aprily−2およびStalk−1染色を、DLBCL病変からの切片全体で特徴付けた。Aprily−2は細胞を囲む斑状の染色を顕色化し、いくつかの細胞は腫瘍細胞に一致する形態学を有している。同様のパターンがまた、可溶性APRIL(Aprily−6およびAprily−8)に対する他の2種のモノクローナル抗体で観察された。対照的に、Stalk−1は、細胞染色を顕色化した。Aprily−2およびStalk−1染色は、acrpAPRlLおよびストークペプチドと、それぞれ競合した。Stalk−1で染色された細胞は、いずれも腫瘍細胞に一致する形態学を有していなかった。DLBCL患者の50%における低または検出不可能なAPRIL発現は、Stalk−1およびAprily−2の両方についての全切片の染色で確認された。この実験は、腫瘤病変におけるAPRILのソースは腫瘍自体ではなく、むしろストローマであることを強く示唆している。一旦分泌されると、開裂したAPRILは、APRIL−産生細胞から解離するように考えられる。
【0025】
腫瘍−浸潤性好中球はAPRILを産生する
APRIL−産生細胞をインサイチュで正確に同定した。Stalk−1での免疫ペルオキシダーゼ染色の高濃縮分析は、陽性細胞は、好中球の大きい特徴である三小葉核(trilobular nucleus)を有することを容易に示す。加えて、内皮の形態学を有する少数の陽性に標識化された細胞がまた、切片において観察される。好中球の同一性は、共に好中球についての一般的なマーカーである抗CD15および抗エラスターゼでのStalk−1染色を組み合わせることにより確認される。これらの切片において、ほとんどすべての抗ストーク陽性細胞はまた、好中球マーカーで染色される。APRIL産生好中球を病変中に局在化させた。Stalk−1染色をCD20染色と組み合わせ、B細胞リンパ腫マーカーとして用いた。APRIL−産生細胞は、腫瘍病巣に近接して位置されている。Stalk−1およびCD20染色の間に重複が見られないため、腫瘍細胞はAPRILを発現しない。併せると、これは、DLBCL腫瘍細胞により進入された組織を浸潤する好中球が、APRILの主な供給源であることを示している。
【0026】
APRILを産生する好中球が炎症に必要とされる。
APRIL発現をさらに特徴付けるために、健常なボランティアからの好中球を試験した。健常なドナーから単離された末梢血好中球はAPRIL mRNAを発現し、およびStalk−1で染色される。対照的に、末梢好中球はAprily−2で染色されない。Aprily−2およびStalk−1染色の間のこの矛盾は、完全長APRILで形質移入された293T細胞では観察されない。これは、形質移入された293T細胞とは対照的に、内在性の完全長または開裂APRILは好中球で検出されないことを裏付ける。非腫瘤の炎症組織を浸潤する好中球をまたテストした。好中球により高度に浸潤されるとして知られている急性虫垂炎は、Stalk−1で染色された大量の細胞を含有する。高倍率に濃縮すると、染色された細胞はDLBCL病変におけるStalk−1陽性細胞と同一の形態学を有する。これは、成熟した循環好中球は恒常的にAPRILを発現し、およびDLBCL進行を含む炎症性反応におけるAPRILの産生は、漸増した好中球により保障されることを示している。
【0027】
プロテオグリカンはAPRILの分泌を阻害する
APRILは細胞表面プロテオグリカンに相互作用することが既に示されている。プロテオグリカンへのAPRILの相互作用を、細胞を含まない(セルフリー)エライザ(ELISA)アッセイにおいて、捕獲のためにマウス肉腫由来の精製したヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を用い、および検出のためにAprily−9を用いて確認した。この場合、プロテオグリカン結合部位に欠く組み換え型APRILH98ではない組み換え型APRILA88が、被覆プロテオグリカンに結合する(図2a)。huAPRILと、マウスプロテオグリカンのヘパラン硫酸側鎖とのこの相互作用は、APRILは、何がタンパク質核であろうと、広い範囲のヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用しやすいことを示している。加えて、これは、他の細胞タンパク質のいずれも相互作用には必要とされないことを示す。プロテオグリカンの、APRILの分泌物への影響を評価した。プロテオグリカンを発現すると知られている293T細胞を、APRILA88またはAPRILH98をコードするプラスミドで形質移入した。図2bは、いくつかの293T−形質移入細胞が高レベルのAPRILA88を保持し、一方で、APRILH98では、僅かに中程度のレベルの細胞保持があったことを示す。細胞保持は、上澄中の分泌されたAPRILの定量化により確認される。APRILH98で形質移入された293T細胞は、約2〜3μg/mlの組み換え型タンパク質を分泌し、一方で、APRILA88で達成された分泌物は十分の一であった(図2b)。APRILを産生する好中球がプロテオグリカンを分泌するかをテストした。APRILA88の細胞表面への結合がプロテオグリカン発現を評価する。図2cは、末梢好中球がAPRILに結合しないことを示す。対照的に、L363株細胞(シンデカン−1を発現する多発性骨髄腫細胞)はAPRILに結合し、この結合は、ヘパリンによって完全に阻害される。これは、末梢好中球は、APRILに結合することが可能である、検出可能ないずれのプロテオグリカンも欠いていることを示す。好中球によるAPRIL結合性プロテオグリカン発現の欠損は、APRILを分泌する完全な適格性を与える。
【0028】
プロテオグリカンは、腫瘍病変におけるDLBCL細胞に近接して分泌されるAPRILを濃縮する
DLBCL病変におけるプロテオグリカン発現を評価した。シンデカン−1は発現されない。対照的に、シンデカン−4の発現が分析した症例(n=6)の半分で観察される。分泌されたAPRILは、腫瘍病変におけるシンデカン−4発現部位に位置される。Aprily−2染色は、常に、シンデカン−4発現部位に完全な重複で位置され、APRILのシンデカン−4とのインサイチュでの密接な相互作用を強く示唆している。いくつかのシンデカン−4が遊離している事実は、APRILは飽和量で産生されていないこと、またはAPRILは腫瘍病変において消費され、一方でプロテオグリカンは消費されないことのいずれかを示している。シンデカン−4を発現する細胞を同定するために、CD20およびシンデカン−4染色を組み合わせた。DLBCL腫瘍細胞は均質にシンデカン−4を発現する。シンデカン−4染色は、膜状のCD20染色と比して内環を構成し、おそらく、シンデカン−4の細胞内局在化を反映している。シンデカン−4発現はまた、腫瘍床の周囲の組織において観察され、いずれの腫瘍細胞に欠ける。Aprily−2染色をCD20染色と組み合わせた。分泌されたAPRILは、腫瘍に近接して濃縮され、いくつかは直接的に腫瘍細胞に結合し、およびいくつかは、非腫瘤性細胞に結合する。後者が、シンデカン−4を発現する非腫瘍細胞に最も相当する可能性がある。これらの細胞は、常に、主に腫瘍末梢に局在化され、腫瘍細胞により浸潤されていない組織切片からは存在していない。しかも、分泌されたAPRILは、腫瘍末梢で濃縮され、および腫瘍床の深部に存在していない。腫瘍細胞へのAPRILの結合は、高倍率の濃縮でAprily−2免疫ペルオキシダーゼ染色で確認することが可能である。総合すると、この分析は、APRILは、一旦好中球により分泌されると、腫瘍および組織プロテオグリカンに結合した腫瘍末梢で蓄積されることを示す。
【0029】
DLBCL腫瘍細胞は、APRILについてのBCMAおよびプロテオグリカン共受容体を発現する
APRIL受容体発現を、DLBCL病変において調べた。ホルムアルデヒド−固定化組織で内在性のBCMAまたはTACIを検出する抗体は、現在まで入手不可能である。従って、患者から樹立されたDLBL株細胞を用いた。RT−PCRによるメッセンジャーRNA発現分析は、テストした株細胞のすべてでBCMAの発現を示し、一方で、SU−DHL6の1種のみがTACI(図3a)を発現することを示す。このRT−PCR分析において、DLBCL株細胞においてAPRILが発現しないことが確認される。抗TACIおよびBCMA mAbが用いられて、タンパク質発現が検出される。抗TACI、およびBCMA mAbの特異性は、形質移入化−293T細胞で確認される(図3b)。TACIタンパク質発現はSU−DHL−6において検出され、一方で、OCI−Ly7(図3c)およびSU−DHL−4および−7においては見られない。抗TACI1A1mAbは、TACIの第2の富システインドメインに結合し、これらのDLBL株細胞におけるTACIタンパク質の不在を裏付ける。表面BCMAの発現はDLBCLでかろうじて検出可能であるが、細胞透過処理の後は顕著なBCMA染色が常に見られる。APRIL結合を、プロテオグリカン−結合部位を含有するacrpAPRlLで評価した。acrpAPRlLは、すべてのDLBCL株細胞に均質に結合する(図3c)。しかしながら、ヘパリンでの阻害が評価されるとき、完全な阻害はOCI−Ly7で観察されるが、SU−DHL6では阻害は見出されない。加えて、BCMA−lgはSU−DHL6への結合を阻害するが、OCI−Ly7への結合は阻害しない。これは、SU−DHL6がTACIをAPRILへの表面受容体としてプロテオグリカンなしで発現する一方で、OCI−Ly7は表面プロテオグリカンをTACI無しで発現することを示す。BCMAについて、発現は、DLBCL系において、主な細胞内プールと共に均質に発現される。併せて、これは、DLBCL系中のAPRIL−R発現における不均一性を示す。DLBCL腫瘍細胞の大部分はBCMAおよびプロテオグリカン共受容体を発現する。
【0030】
DLBCL患者の腫瘍病変における高APRIL発現は、生存率比の低下に関連している。
DLBCLにおけるAPRILの役割を、生検サンプルにおけるAPRIL発現について分析した233人の患者の遡及的な臨床的分析により評価した。データを入手してから、疾病病期、循環LDHのレベル、インサイチュ増殖指数、DLBCLタイプおよび年齢を先ず判定した。「高APRIL発現」および「低APRIL発現」の間に、病期、LDHレベル、腫瘍増殖指数、および年齢の観点で顕著な差異はなかった。加えて、APRIL発現の低および高レベルが胚中心および活性化された2種のDLBCLサブタイプにおいて観察され、診断時での、APRIL発現のレベルと、および標準的な臨床的パラメータとの間の明白な相関がないことを示していた。CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロン)治療後の生存率比および再発までの時間を次いで分析した。APRIL発現について分析した233人の患者から、100人が追跡可能な臨床的データを有していた。興味深いことに、高いリスクの患者(>60歳およびIPI>2)については、治療への応答の不在により計測した生存率において非常に大きい低減(p=0.0009)が「高APRIL発現体」群において見られた(図4b)。しかも、患者の同一の固体群(>60歳/IPI>2および高APRIL)について、疾病を有さない期間は、APRIL低固体群(p=0.02)についてのものよりはるかに短かった(図4b)。これらの所見は、APRILは腫瘍を促進する役割をDLBCLにおいて有することを強く示唆している。
【0031】
実験結果の考察
APRIL発現上昇が、DLBCL症例の約50%で見られる。陽性サンプルにおけるAPRILの主なソースは好中球である。腫瘍細胞によるAPRIL発現についてのエビデンスは見出されなかった。腫瘍細胞によるAPRIL産生は、もし生じていても、腫瘍−浸潤性好中球と比して、インサイチュできわめて低い。DLBCL細胞によるAPRILの低産生は、APRILが外因的に追加されたときのこれらのDLBCL株細胞で観察された生存率効果をきわめてよく説明することが可能であるため、株細胞で得られた結果と矛盾するものではない。腫瘍−浸潤性好中球によるAPRILのインサイチュ発現は、骨髄系列の細胞に限定されたインビトロ発現と一貫する。しかしながら、これは、APRILが好中球によって選択的にインサイチュで産生され、およびDLBCLを浸潤する単球/マクロファージなどの骨髄系列の他の細胞によっては産生されないことを示す。B細胞リンパ腫におけるAPRILのこの宿主由来産生は、このようなリンパ腫は、低悪性度リンパ腫として分類される他のB細胞リンパ腫/白血病(MALT、CLL、FCL、MCL、MGZL)と比して、高悪性度の、より明白な宿主細胞浸潤で進行すると分類されるため、DLBCL病変における選択的発現上昇を説明すると考えられる。これらの後者のB細胞腫瘍において、APRIL発現レベルは、浸潤された非腫瘍性浸潤化扁桃腺において見出されるものに匹敵する。
【0032】
分泌されたAPRILが、腫瘍細胞に結合していることを見出した。この局在化は、APRILに結合するHSPGによって補償された。場合により、腫瘍発現HSPGをシンデカン−4として同定した。他のDLBCL症例において、シンデカン−4は発現されなかったが、観察したAprily−2染色は、他のHSPGとの関連を示している特徴的な終点と同等であった。断続的なAPRIL/HSPG染色は、リガンド結合で誘起されるプロテオグリカンクラスター形成をきわめて反映しやすい。腫瘍細胞によって浸潤された組織において、プロテオグリカンは、受容体発現腫瘍細胞に近接する浸潤性好中球により分泌されたこのリガンドを濃縮するために役立つ。このプロセスの効率を最大化するために、APRIL産生好中球はプロテオグリカンを含まない。プロテオグリカン共受容体官能性は、腫瘍細胞発現プロテオグリカンによりシスで、および腫瘍周囲の細胞に発現されたプロテオグリカンによりトランスで媒介できることが可能である。
【0033】
B細胞におけるAPRIL同時刺激は、BCMA、TACI、または両方の誘発により実施されることが可能である。TACIは、DLBCL腫瘤の細胞で一定に発現されない。BCMAは、テストされたDLBCL株細胞において均一に発現される。均一なBCMA発現は、BCMAがAPRIL共刺激性シグナルの伝達に役立つことを強く示唆している。BCMA染色は、無処置DLBCL腫瘍細胞では低いが、透過処理後では著しく増強され、ゴルジ装置に位置されたBCMAの細胞内プールの存在下では一定である。BCMAに追加して、DLBCL腫瘤の細胞はAPRILに結合するプロテオグリカンを発現する。低レベルのBCMA発現は、APRILを細胞表面で濃縮するプロテオグリカンなどの共受容体についての依存性を示し得る。
【0034】
B細胞腫瘍中のAPRILなどの高濃度のB細胞共刺激性分子は、腫瘍進行および病原力の増強を助力する連続的な生存率/増殖性シグナルをもたらす。低リスクの患者(>60歳およびIPI<2)については、化学療法およびリツキシマブを組み合わせる治療で達成される現在の効力では、APRILについての役割の検出は明らかに不可能である。しかしながら、このような治療に対する応答に劣ると知られている高いリスクの患者(>60歳およびIPI>2)については、腫瘍病変における高APRIL発現は、強く低減された生存率比と関連している。診断後のDLBCL株細胞および患者進化はAPRILに依存しているという事実は、腫瘍形成プロセスにおけるこの分子についての後形質転換の役割を示唆している。高いリスクの患者において、APRILは、従って、治療強度の調整における役立つ予後ツールであり、この群の患者におけるAPRILの高発現を伴う被験者に対する役立つ治療的な目標を表す。
【0035】
B細胞リンパ腫の臨床的進行の予後
本願明細書中において上記に説明した実験の結果に基づいて、可溶性APRIL(病変において分泌されたAPRILの定量化)に対するモノクローナル抗体Aprily−2と、APRILを産生する細胞を同定する、メンブランに固着されたAPRILのストーク断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体と(配列番号1)の組み合わせが、B細胞リンパ腫病原力(治療に対する耐性)の診断において有用である。Aprily−2と、Stalk−1と呼ばれる、メンブランに固着されたAPRILに対するポリクローナル抗体との組み合わせの使用が特に好ましい。
【0036】
特に、前述の抗体の組み合わせは、B細胞リンパ腫の病原力の予後診断するために、および可能性のある臨床的予後を予想するために用いられ得る。このような予後は、対応する治療的処置の考察に役立つ。高いリスクの患者(IPI>2)におけるB細胞リンパ腫の予後におけるこのような方法が特に有用である。
【0037】
B細胞リンパ腫の診断における有用なキット。
本発明は、さらに、モノクローナル抗体Aprily−2およびメンブランに固着されたAPRILのストーク断片、例えばStalk−1に対する1種のポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含むキットに関する。キットは、他のB細胞リンパ腫バイオマーカーに向けられた抗体をさらに含有し得、さらに、標準的な器具、溶液および診断上のテストを実施するため使用説明書、APRILまたはAPRIL断片および基準としての対照ペプチド等を含有し得る。ポリクローナル抗体Stalk−1およびモノクローナル抗体Aprily−2を含む対応するキットが好ましい。
【実施例】
【0038】
実施例
抗原調製
組み換え型ヒトAPRIL(92〜233)を細菌中で産生した。APRIL発現ベクターで形質転換した細胞を、8mlのLブロス(LB)とAK(アンピシリン100μg/ml+カナマイシン50μg/ml)との中に播種し、一晩、37℃で増殖させた。8mlの一晩培養物は400mlのLB+AK中に希釈され、37℃で増殖される。イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)が0.5mMの最終濃度で添加され、および細胞が37℃で6時間増殖される。細菌が回収され、ペレットがリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁され、およびフレンチプレス中に溶解される。細胞溶解物が2mlのエッペンドルフ(Eppendorf)管に移され、13000rpm、室温で5分間遠心分離される。組み換え型ヒトAPRILを封入体中に含有するペレットが、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)サンプル緩衝剤中に再懸濁され、超音波処理され、還元され、およびSDSゲル上に充填される。組み換え型ヒトAPRILに対応するバンドが、電気泳動で溶出される(electroeluted)。
【0039】
免疫化
3匹のマウスに、各々PBSおよびフロイント完全アジュバント中に希釈した150μgの組み換え型ヒトAPRIL(92〜233)を注射した。14日後、マウスをフロイント完全アジュバント中の同量の抗原で追加免疫した。28日後、マウスを組み換え型ヒトAPRIL(92〜233)に対するこれらの免疫応答を評価するために出血させ、エライザ(ELISA)を、異なる希釈度の血清で実施した。陽性の血清を有するマウスを、45日後に、PBS中の組み換え型ヒトAPRIL(92〜233)で再度追加免疫した。3日後、脾臓を回収した。
【0040】
細胞融合、スクリーニングおよびサブクローニング
脾臓を、無菌ガラス−ガラスホモジナイザーにおいて、10mlのRPMI−1640中にホウケイ酸乳棒を用いて6〜8回のストロークで均質化した。懸濁液を、50mlファルコン(Falcon)チューブに移し、細胞を300×gで、10分間、室温で遠心沈殿した。細胞を、10mlのRPMI−1640培地中に再懸濁させ、形質細胞を計数した。10〜20×10個の脾臓細胞および10〜20×10個の骨髄腫細胞クローン(P3−X63Ag8またはNSI)(比10/1)を融合のために混合し、およびスピンさせた。0.5mlの予熱したPEG1500を、ペレットに管壁を伝わせて滴下させ、およびチューブを、各分で穏やかに攪拌しながら、3分間、37℃で維持した。5mlのRPMI−1640培地(37℃で予熱した)を、管壁を伝わせて10分間(0.5ml/分)かけて添加し、続いて、1分間、37℃でインキュベートした。5mlのRPMI−1640培地を、再度、5〜6分間かけて添加した。細胞を10分間、300×gで、室温で遠心分離することによりペレット化し、6mlの完全RPMI−1640培地中に再懸濁させ、1時間、37℃で、COインキュベータ中にインキュベートした。細胞融合懸濁液を、6×96−ウェルプレート中のマウスマクロファージ(支持細胞層)上に穏やかに塗布した(100μl/ウェル)。融合の24時間後、HAT(ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン)を含有する選択培地(RPMI−1640)を細胞に添加した。96−ウェルプレートからの上澄を、エライザ(ELISA)により抗体分泌物についてテストした。エライザ(ELISA)による集密的な、陽性クローンを、細胞をマクロファージ支持細胞層と1×HATとを含有する24−ウェルプレートに移すことにより増幅した。陽性クローンを、限界希釈により2回サブクローン化に供し、エライザ(ELISA)により抗体分泌物についてスクリーンした。エライザ(ELISA)による集密的な、陽性サブクローンを、細胞をマクロファージ支持細胞層と1×HATとを含有する24−ウェルプレートに移すことにより増幅した。最終的なサブクローンを、マクロファージおよびHAT補充無しで徐々に培地に順応させた。最後に、順応したときに、最終ハイブリドーマを樹立した。
【0041】
モノクローナル抗体(mAb)の産生および精製
ハイブリドーマ細胞は、完全RPMI−1640培地中に増幅され、無菌PBSで2回洗浄され、および100000細胞/mlでOpti MEM I血清を含まない培地(スイス、バーゼルのギブコBRLライフテクノロジー(Gibco BRL,Life Technology,Basel,Switzerland)中に再懸濁される。T175フラスコまたはローラボトルが、それぞれ、100mlおよび800ml細胞懸濁液で播種される。細胞は、10〜14日間増殖される。上澄がろ過され、および4℃または−20℃で、アジ化ナトリウムと共にまたはなしで保存される。精製はジャンボセップ(Jumbosep)(商標)(米国ニューヨーク州イーストヒルの、ポール社(PALL Corp.,East Hills,NY,USA))システムを用いて行われる。ハイブリドーマ上澄が無菌PBSで広範に洗浄され、スピンカラムを用いて濃縮される。
【0042】
細胞および試薬
RPMI、10%プールヒト血清(米国ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich,Saint Louis,MO,USA))中で増殖したOCI−Ly7を除き、すべての株細胞をRPMI、10%FCS中で増殖させた。患者から樹立したDLBCL株細胞SU−DHL4、SU−DHL6、SU−DHL7およびOCI−Ly7は、A.ビストナー博士(Dr A.Wiestner)(米国メリーランド州ベセスダ(Bethesda,MD,USA))により提供された。L363は、MM患者から樹立された株細胞であり、トーマスマッテス博士(Dr Thomas Matthes)(スイスジュネーブ(Geneva,Switzerland))により提供された。HEK−293T細胞をDMEM、10%FCS中で増殖させた。樹状細胞を、記述のとおり、GMCSF/IL−4で処理した末梢単球から得た(ユアール,B.(Huard,B.)ら、「Int Immunol」16、467〜75ページ、2004年)。多形核細胞(PMN)および末梢血白血球(PBL)を健常なドナーから単離した。血液を、クエン酸ナトリウム(3.8%)から回収した。赤血球を、PBSデキストランT500(スイスオッテルフィンゲンのアマシャムバイオサイエンシズ(Amersham Biosciences,Otelfingen,Switzerland))での沈降により除去した。浮いている細胞を、遠心分離によりフィコールパック(Ficoll−Paque)(アマシャムバイオサイエンシズ(Amersham Biosciences))の層上に分離した。ペレット化した細胞は95%を超えるCD15細胞を含有するPMNであった。浮いている細胞はPBLであった。PMNの活性化を防ぐために、すべての分離ステップは4℃で、5μg/mlポリミキシンBの存在下に実施した。ヘパリン(リケミン(Liquemin)、5000i.u./ml)はロシュファーマ(Roche Pharma)(スイスライナッハ(Reinach,Switzerland))製であった。以下の抗体、抗TACI(クローン1A1)、抗BCMA(クローンVicky1、ラットlgG2a)、APRILの細胞外部分(88〜233)に対するマウス中に形成される抗APRIL(クローンAprily−1、−5、および−8、すべてのlgG1)、およびStalk−1とも呼ばれるポリクローナル抗体ED(APRILペプチドGTGGPSQNGEGYPに対するウサギポリクローナル抗体、配列番号1)は、アポーテック社(Apotech Corp.)(スイスエパリンゲス(Epalinges,Switzerland))から入手した。ACRP30(16〜108)に融合された組み換え型APRIL(88〜233)、本願明細書中以下acrpAPRlLと呼ぶMegaAPRILおよびその対照、本願明細書中以下acrpCTRLと呼ぶ無頭ACRP30、およびBCMA(2−54)−lgもまた、アポーテック(Apotech)製であった。ウサギ血清抗シンデカン1、抗シンデカン4は、サンタクルーズバイオテクノロジー(Santa−Cruz Biotechnology)(米国カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz,CA,USA))製であった。抗CD15(クローンC3D−1、lgM)、抗エラスターゼ(クローンNP57、lgG1)、および抗CD20(クローンL26、lgG2a)は、ダコ(DAKO)(スイスザグ(Zug,Switzerland))製であった。
【0043】
発現構築物および産生
Flag−リガンドに対する発現ベクターは既に記載されている(ホラー,N.(Holler,N.)ら、「Mol Cell Biol」23、1428〜40ページ、2003年)。HuAPRILA88(88−233)、huAPRILH98(98−233)は、293T細胞中に、Opti MEM I血清を含まない培地で産生した(スイスバーゼルのギブコBRLライフテクノロジー(Gibco BRL,Life Technology,Basel,Switzerland))。上澄を、セントリコン遠心フィルタデバイス(カットオフ10kDa)(米国マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア(Millipore,Bedford,MA,USA))で、使用前に10倍に濃縮した。Opti MEM上澄中のリガンド濃度を、検出抗体としてのAprily−1および標準として精製したacrpAPRlLでのウェスタンブロット分析により定量化した。
【0044】
フローサイトメトリ
抗体染色について、細胞をPBS中に洗浄し、30分間、4℃で、一次抗体と共にインキュベートした。細胞をPBS中で1回洗浄し、セカンダリアレクサ(Alexa)488−接合ヤギ抗マウス血清(米国オレゴン州のユージーンのモレキュラープローブズ(Molecular Probes,Eugene,OR,USA))と共に、さらに30分間、4℃でインキュベートした。ファクスキャン(FACSCAN)およびセルクエスト(Cellquest)(米国カリフォルニア州サンノゼのベクトンディッキンソン(Becton Dickinson,San Jose,CA,USA))を用いて、分析前に細胞をPBS中で1回洗浄した。リガンド染色を、抗Flag、5μg/ml(lgG1、クローンM2、シグマ(Sigma))を二次試薬として用いたこと以外は同様に実施し、染色を、フィコエリトリン−接合ヤギ−抗マウスlgG1(米国ペンシルベニア州ウェストグローブのジャックソンイムノリサーチ(Jackson Immunoresearch,West Grove,PA,USA))での追加のステップで顕色化した。全染色のために、既に記載されているとおり、細胞を、PBS、1%ホルムアルデヒド、1%サポニンで固定/透過処理した(ユアール,B.(Huard,B.)およびカールソン(Karlsson,L.)、「Nature」403、325〜8ページ、2000年)。
【0045】
エライザ(ELISA)
APRlL/プロテオグリカン相互作用について、マイクロプレートを、一晩、4℃で、1μg/mlの精製ヘパラン硫酸プロテオグリカン(シグマ(Sigma))でコートした。プレートを、PBS、0.05%NaN、1%BSA、5%スクロースで、1時間、室温(RT)でブロックし、PBS中に希釈した可溶性APRIL、BSA0.1%と共に、4時間、RTでインキュベートした。検出はAprily−9(1μg/ml)で行い、続いて、西洋ワサビペルオキダーゼ(HRP)接合ヤギ抗マウスlgG血清(ジャックソンイムノリサーチ(Jackson lmmunoresearch))により行った。テトラメチルベンジジン(シグマ(Sigma))をHRPの基質として用いた。PBS、0.05%トゥイーン(Tween)20での2回の洗浄を各ステップの間に実施した。細胞上澄中のAPRILの定量化のために、マイクロプレートを、一晩、4℃で、1μg/mlのBCMA−lgでコートした。プレートを、上述のとおり、細胞上澄での2時間のインキュベーションの前にブロックした。標準はacrpAPRlL(アポーテック(Apotech))であった。検出をAprily−5(1μg/ml)で実施し、洗浄および顕色化を上記のとおり実施した。
【0046】
遺伝子発現分析:
細胞からTRIzol試薬(スイスバーゼルのギブコBRLライフテクノロジー(Gibco BRL,Life Technology,Basel,Switzerland))を用いて調製した全RNA(25ng)を、1ステップRT−PCRキット(スイスのキアゲン社(Qiagen AG,Switzerland)製の1ステップRT−PCRキット)を用いて逆転写し、および増幅した。この試験で用いたすべてのプライマーはゲノムDNA上のイントロン配列にかかっていた。hTACIについては5’−ctgggtacctgcatgtcctg−3’(配列番号2)および5’−agacttggccggactttgac−3’(配列番号3)を、hBCMAについては5’−gggcagtgctcccaaaat−3’(配列番号4)および5’−tcgttttcgtggtgacaaga−3’(配列番号5)を、およびhAPRILについては5’−atgccagcctcatctccttt−3’(配列番号6)および5’−tcctggattcggacaccata−3’(配列番号7)を、それぞれ、前および逆方向プライマーとして用いた。対照作用プライマーは前方5’−ttaacgagaagctgtgctacgtc−3’(配列番号8)および逆5’−atagtcctgcttgcttgctgatccac−3’(配列番号9)であった。変性を94℃で1分間、アニーリングを55℃で1分間、および伸長を72℃で1分間実施し、40サイクルを非定量的試験について適用した。増幅したmRNAを、アガロースゲル上に可視化し、臭化エチジウム染色した。単位複製配列特異性を、各プライマーぺアについて3種の選択した酵素で制限分析により確認した。
【0047】
免疫組織化学
生検試料を、改訂欧州米国リンパ腫(REAL)分類に準拠して分類した。組織マイクロアレイを、(コノネン,J.(Kononen,J.)ら、「Nat Med」4、844〜7ページ、1998年)に既に記載のとおり構成した。パラフィン−包理化ブロック(ドナーブロック)で形態学的に典型的な領域を注意して選択した後、1.6mmのコア組織生検をパンチ採取し、第2のパラフィン−包理化ブロック(収納ブロック)に移した。腫瘍不均一性および組織損失を克服するために、各腫瘍の異なる領域から3つのコア生検を実施した。脱パラフィンの後、切片を10分間、メタノールと0.6%過酸化水素との中で、RTでインキュベートし、続いてPBS溶液で洗浄した。スライドを0.01Mクエン酸緩衝剤pH6.0中で、3分間煮沸した。抗体でのインキュベーションを1時間かけてRTで行った。免疫ペルオキシダーゼ染色については、第2の試薬は、HRPに接合したヤギlg抗ウサギまたは抗マウスlgG(ジャックソンイムノリサーチ(Jackson lmmunoresearch))であり、続いて、ストレプトABコンプレックス(streptABComplex)/HRP(ダコ(Dako))および3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ(Sigma))であった。2色免疫蛍光染色については、FITCまたはフィコエリトリンに接合したアイソタイプ−特異的ヤギ抗マウス血清(ジャックソンイムノリサーチ(Jackson lmmunoresearch))およびアレクサ(Alexa)−488に接合したヤギlg抗ウサギlgG(オランダレイデンのモレキュラープローブズ(Molecular probes,Leiden,Netherlands)を用いた。イメージを、光または蛍光顕微鏡下にアクシオフォト(Axiophot)1(独国オベルコーエンのカールザイス社(Carl Zeiss AG,Oberkochen,Germany))で可視化し、アクシオカム(axiocam)(カールザイス社(Carl Zeiss AG))カラーCCDカメラで撮影し、およびアクシオビジョン(axioVision)(商標)ソフトウェア(カールザイス社(Carl Zeiss AG))がインストールされたペンティアムIII(Pentium Ill)コンピュータで処理した。細胞染色について、細胞をマウスの腸管に注入した。注入された腸管をパラフィン中に固定および包理した。得られたブロックを、次いで、免疫染色のために基準組織として処理した。
【0048】
患者経過観察および統計学的分析
DLBCLと診断されたすべての患者を見て、それらの標本をジュネーブ大学病院(Geneva University Hospital)およびバーゼル大学病院(Basel University Hospital)で採取した。これらの患者からの臨床的データの、遡及研究を実施した。プロジェクトは、ジュネーブ大学病院倫理委員会(Geneva University Hospital Ethics Committee)によってレビューされ承認された。病期、乳酸塩脱水素酵素レベル、DLBCLサブタイプおよび年齢は、チャートレビューにより得た。生検の日のインサイチュAPRIL発現は上記のとおり記録した。生存率は、生検の日からリンパ腫による死亡の日までで計測した。共羅患率が患者の除外をもたらした。最後の経過観察日に生存していた患者については評価を打ち切った(曲線上のチェックマーク)。カプランマイヤー全生存率曲線を、プリズム(Prism)ソフトウェア(グラフパッドソフトウェア社(Graphpad Softwear inc.)で実施した。群間での比較は対数ランク統計学的テストに基づいていた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図面の簡単な説明
【図1】分泌されたAPRILおよびAPRILを産生する細胞を同定する抗APRIL抗体の特徴付け(a)IHC−陽性および陰性DLBCL組織サンプルからの抽出物(20μg)を、Aprily−2(2μg/ml)およびStalk−1(5μg/ml)でウェスタンブロット法により分析した。分泌されたAPRILに関連する18kDaのバンドがAprily−2で明らかにされ(左パネル)、一方で、Stalk−1が14kDaのバンドを同定する(中央パネル)。同様の14kDa反応性を、Stalk−1でDC溶解物(20μg)上に観察した(右パネル)。反応性は、3つのIHC−陽性および2つのIHC−陰性腫瘍溶解物を表す。(b)ウェスタンブロット特異性を阻止実験で確認した。Aprily−2を、10μg/mlのacrpAPRlL(ACRP30[16−108]に融合したAPRIL[88−233])またはacrpCTRLでプレインキュベートした。Stalk−1を、ウェスタンブロット分析の前に、10μg/mlのストークペプチドまたは無関係のペプチドとプレインキュベートした。
【図2】細胞プロテオグリカンがAPRIL分泌を阻害する(a)マウス肉腫(1μg/ml)からの被覆ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)への三量体APRILA88およびAPRILH98の結合を、エライザ(ELISA)においてAprily−9(1μg/ml)で明らかにした。(b)293T細胞を、APRILA88またはAPRILH98をコードするプラスミドで形質移入した。3日後に細胞を回収し、固定/透過処理し、およびAprily−1で染色した。蛍光をフローサイトメトリにより分析した。上澄を回収し、サンドイッチエライザ(ELISA)において、捕獲としてBCMA−lgで定量化し、および検出としてAprily−5で定量化した。(c)acrpAPRILA88の結合を健常なドナーから単離したPMNで評価し、フローサイトメトリにより分析した。Acrp30を陰性対照(CTRL)として用いた。acrpAPRlLA88の、ヘパリン[H](1/100)の存在下または非存在下でのL363への結合が陽性対照として示される。Aprily−1、Aprily−5およびAprily−9は、Aprily−2に関連する可溶性APRILに対するモノクローナル抗体である。
【図3】DLBCL腫瘍細胞は、BCMAおよびプロテオグリカン共受容体を発現する(a)DLBCL系におけるTACI、BCMAおよびAPRILmRNA発現を、RT−PCRにより分析した(40サイクル)。陽性対照(+)は、TACIおよびBCMAについては末梢CD19B細胞であり、APRILについてはDCであった。HOを陰性対照として用いた。(b)抗TACIおよびBCMA mAb(モノクローナル抗体)の特異性が、形質移入された293T細胞で示されている。(c)DLBCL系でのAPRIL−R発現のフローサイトメトリ分析を、示した試薬で実施した。無処置細胞での表面発現が示されている。BCMAについては、細胞透過処理後の総発現もまた示されている。対照染色(lgG1アイソタイプ対照)が点線で示されている。 acrpAPRlLの結合で得られたデータが太線で示され、およびヘパリン[H](1/100)またはBCMA−lg(50μg/ml)(細線)でプレインキュベートされた場合に細線で示される。対照染色(acrpCTRL)は点線で示されている。SU−DHL−4および−7が、OCI−Ly7への同等の染色を有していた。
【図4】DLBCL患者における高APRIL発現は、生存率の低下と関連しているAPRIL発現に応じて層別化した患者において生存率を遡及的に調べた。(a)すべての患者。点線:低APRIL、普通線:高APRIL。S=全生存率、月(m)での時間(T)。(b)>60歳およびIPI>2の高いリスクの患者。点線:低APRIL、普通線:高APRIL。S=全生存率、DfS=無病生存率、月(m)での時間(T)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性APRILに対して向けられるモノクローナル抗体Aprily−2。
【請求項2】
CNCMに番号I−3500で寄託されたモノクローナル抗体Aprily−2を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体Aprily−2と、APRILのストーク断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体との組み合わせの、高いリスクを有する患者の、B細胞リンパ腫病原力の診断およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床的進行の予後における使用。
【請求項4】
国際予後指標 >2を有する患者におけるB細胞リンパ腫の臨床的進行の予後における、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
60歳を超える患者におけるB細胞リンパ腫の臨床的進行の予後における、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
ポリクローナル抗体Stalk−1およびモノクローナル抗体Aprily−2の組み合わせの、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
B細胞リンパ腫生検標本が、請求項1に記載のモノクローナル抗体Aprily−2の結合、およびAPRILのストーク(stalk)断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体の結合について分析され、およびこれらの2種の抗体が標本に結合している場合に高悪性形態と診断されるB細胞リンパ腫の高悪性形態の診断方法。
【請求項8】
APRILのストーク断片に対する抗体がポリクローナル抗体Stalk−1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アミノ酸配列GTGGPSQNGEGYP(配列番号1)。
【請求項10】
請求項1に記載のモノクローナル抗体Aprily−2およびAPRILのストーク断片に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含むキット。
【請求項11】
ポリクローナル抗体Stalk−1およびモノクローナル抗体Aprily−2を含む、請求項10に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−509948(P2009−509948A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531708(P2008−531708)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066625
【国際公開番号】WO2007/039489
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ペンティアム
2.PENTIUM
【出願人】(508090033)アポテック コーポレーション (1)
【出願人】(503469382)ユニバーシティ オブ ジュネーブ (2)
【Fターム(参考)】