説明

リン脂質をベースとする医薬製剤およびその製造および使用方法

医薬製剤およびその製造および使用方法を記載し、クレームする。該製剤は、リン脂質および1またはそれ以上の薬理学的に活性な化合物、その医薬的に許容される塩、またはそのプロドラッグの分散物である。特定の態様において、医薬活性化合物はアンサマイシンであり、全製剤は中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(クロスリファレンス)
本願は、米国仮出願No.60/669,591(2005年4月7日出願)の利益を主張する(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0002】
本発明は、一般的には医薬製剤およびその製造および使用方法に関し、より詳細には、本発明は中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まないアンサマイシンのリン脂質製剤、より詳細には17-アリルアミノ-17-デスメチル-ゲルダナマイシン (17-AAG)のリン脂質製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、本発明の理解に有用な情報を含む。本明細書に記載のあらゆる情報が、先行技術であるか、本発明に関連するか、または具体的にまたは暗示的に参照したあらゆる刊行物が先行技術であることを承認しない。
【0004】
アンサマイシンは、長鎖により架橋されたベンゾキノン、ベンゾヒドロキノン、ナフトキノンまたはナフトヒドロトキノン部分のいずれかを含む「アンサ」構造を特徴とする抗生物質分子である。ゲルダナマイシン (GDM)およびその合成半合成類似体17-アリルアミノ-17-デスメチル-ゲルダナマイシン (17-AAG)は、アンサマイシンのベンゾキノンクラスに属する。微生物Streptomyces hygroscopicusから最初に単離されたGDMは、最初はある種のキナーゼの強力な阻害剤であることが確認され、後に特に「分子シャペロン」例えば熱ショックタンパク質90 (HSP90)を標的にすることによりキナーゼの分解を促進することにより作用することが示された。次に、種々の他のアンサマイシンが多かれ少なかれそのような活性を持つことが証明され、17-AAGはその中で最も有望であり、現在、集中的な臨床試験がNational Cancer Institute (NCI)により行われている。例えば、Federal Register、66(129):35443-35444; Erlichman et al.、Proc. AACR 2001、42、abstract 4474参照。
【0005】
HSP90は、情報伝達、細胞周期調節、および転写制御に関与する重要なタンパク質を含む広範なタンパク質のホールディング、活性化、および組み立てに関与する遍在性シャペロンタンパク質である。研究者らは、HSP90シャペロンタンパク質が、重要な情報伝達タンパク質、例えばステロイドホルモンレセプターおよびプロテインキナーゼ(例えば、Raf-1、EGFR、v-Srcファミリーキナーゼ、Cdk4、およびErbB-2を含む)と結合することを報告した(Buchner J. TIBS 1999、24、136-141; Stepanova、L. et al. Genes Dev. 1996、10、1491-502; Dai、K. et al. J. Biol. Chem. 1996、271、22030-4)。研究は、さらに、ある種のコシャペロン(co-chaperone)、例えば、HSP70、p60/Hop/Sti1、Hip、Bag1、HSP40/Hdj2/Hsj1、イムノフィリン、p23、およびp50がその機能においてHSP90を助けるかもしれないことを示唆する(例えば、Caplan、A. Trends in Cell Biol. 1999、9、262-68参照)。
【0006】
アンサマイシン抗生物質、例えばヘルビマイシンA (HA)、ゲルダナマイシン、および17-AAGは、HSP90のN末端結合ポケットにしっかりと結合することにより抗癌効果を示すと考えられる (Stebbins、C. et al.、Cell、1997、89:239-250)。このポケットは、高度に保存され、DNAギナーゼのATP-結合部位と低い相同性を有する(Stebbins、C. et al.、上記; Grenert、J.P. et al. J. Biol. Chem. 1997、272、23843-50)。さらに、ATPおよびADPは、ともにこのポケットと低親和性に結合し、弱いATPアーゼ活性を有することを示した(Proromou、C. et al. Cell 1997、90、65-75; Panaretou、B. et al. EMBO J. 1998、17、4829-36)。In vitroおよびin vivo試験において、このN末端ポケットのアンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤による占有はHSP90機能を変化させ、タンパク質ホールディングを阻害することが示された。アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤は高濃度でタンパク質基質のHSP90に対する結合を妨げることが示された(Scheibel、T.H. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999、96、1297-302; Schulte、T. W. et al. J. Biol. Chem. 1995、270、24585-8; Whitesell、L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994、91、8324-8328)。アンサマイシンは、シャペロン関連タンパク質基質のATP依存性放出を阻害することも示された(Schneider、C.L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci., USA 1996、93、14536-41; Sepp-Lorenzino et al. J. Biol. Chem. 1995、270、16580-16587)。いずれの場合でも、該基質はプロテアソーム中のユビキチン依存性プロセスにより分解する(Schneider、C. L.、上記; Sepp-Lorenzino、L. et al. J. Biol. Chem. 1995、270、16580-16587; Whitesell、L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994、91、8324-8328)。
【0007】
この基質の不安定化は、腫瘍および非形質転換細胞にも生じ、情報伝達調節因子のサブセット、例えば、Raf(Schulte、T. W. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1997、239、655-9; Schulte、T. W. et al. J. Biol. Chem. 1995、270、24585-8)、核ステロイドレセプター(Segnitz、B.; U. Gehring J. Biol. Chem. 1997、272、18694-18701; Smith、D. F. et al. Mol. Cell. Biol. 1995、15、6804-12)、v-Src(Whitesell、L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994、91、8324-8328)、およびある種の貫膜チロシンキナーゼ(Sepp-Lorenzino、L. et al. J. Biol.Chem. 1995、270、16580-16587)、例えばEGFレセプター(EGFR)、およびHer2/Neu(Hartmann、F. et al. Int. J. 癌 1997、70、221-9; Miller、P. et al. 癌 Res. 1994、54、2724-2730; Mimnaugh、E. G. et al. J. Biol. Chem. 1996、271、22796-801; Schnur、R. et al. J. Med. Chem. 1995、38、3806-3812)、CDK4、および突然変異体p53に特に有効であることが示された(Erlichman et al. Proc. AACR 2001、42、abstract 4474)。このタンパク質のアンサマイシン誘導損失は、ある種の制御経路の選択的破壊をもたらし、細胞周期の特定の期における成長停止(Muise-Heimericks、R. C. et al. J. Biol. Chem. 1998、273、29864-72)、およびそのように処置した細胞のアポトーシスおよび/または細胞分化をもたらす(Vasilevskaya、A. et al. 癌 Res.、1999、59、3935-40)。
【0008】
抗癌および抗腫瘍活性に加え、HSP90阻害剤は、抗炎症剤、抗感染症薬、自己免疫治療剤;卒中、虚血、心臓疾患の治療剤、および神経再生の促進に有用な薬としての使用を含む、種々の他の使用も関与していた(例えば、Rosen et al. PCT公開公報WO 02/09696(PCT/US01/23640); Degranco et al. WO 99/51223(PCT/US99/07242); Gold、米国特許6,210,974 B1; DeFranco et al.、米国特許6,174,875参照)。上記と幾分重複するが、限定されるものではないが、強皮症、多発筋炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、肝硬変、ケロイド形成、間質性腎炎、および肺線維症を含む繊維形成疾患も治療可能でありうることが文献に報告されている(Strehlow、WO 02/02123(PCT/US01/20578)。さらにHSP90調節、モジュレーター(調節物質)、その使用が国際出願No.PCT/US03/04283、PCT/US02/35938、PCT/US02/16287、PCT/US02/06518、PCT/US98/09805、PCT/US00/09512、PCT/US01/09512、PCT/US01/23640、PCT/US01/46303、PCT/US01/46304、PCT/US02/06518、PCT/US02/29715、PCT/US02/35069、PCT/US02/35938、PCT/US02/39993、PCT/US03/10533、PCT/US03/02686、and 米国仮出願No. 60/293,246、60/371,668、60/331,893、60/335,391、60/128,593、60/337,919、60/340,762、および60/359,484に報告されている。
【0009】
すなわち、アンサマイシンは、多くの障害の治療および/または予防に大いに有望である。しかしながら、多くの他の脂溶性薬と同様に、アンサマイシンは、医薬製剤、特に注射可能な静脈内用製剤に製造するのが難しい。今までに脂質小胞および油中水型エマルジョンを使用する試みがなされたが、これらは、今までのところ、複雑な処理工程、不快または臨床的に許容できない溶媒の使用、製剤の不安定性、および/または注射部位への刺激を含んでいた。一般的には、Vemuri、S. and Rhodes、C.T.、Preparation and characterization of liposomes as therapeutic delivery systems:a review、Pharmaceutica Acta Helvetiae 1995、70、pp. 95-111参照。PCT/US99/30631(WO 00/37050として2000年6月29日に公開)も参照。
【0010】
したがって、別の製剤方法、およびこれら欠点の1またはそれ以上を改善または打ち消す製品の必要性があり、本発明はその要求を満たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の要約)
本発明は、医薬製剤およびその製造および使用方法を特徴とする。該製剤は、リン脂質、および1またはそれ以上の医薬的に活性な化合物、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの複合体からなる分散物である。
【0012】
多くの態様において、医薬的に活性な化合物はアンサマイシンであり、全部の製剤は中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まない。該製剤は、ろ過滅菌、凍結乾燥、および/または凍結することができ、用いる化合物の特定の脂溶性/疎水性に応じて、乳化のような既知の方法を用いて非複合形である場合より水性生理学的単位容量あたり脂溶性化合物のより高い濃度が得られる利点をもたらす。希釈性も本発明の製剤および方法により増強され、これは静脈内注射で用いるときに該注射部位における対象の耐容性である。理論に縛られることなく、出願人は、後者は本発明の製剤に用いるリン脂質の生理学的適合性が大きく、その割合が比較的大きいことによると考える。
【0013】
本発明の第1の局面は医薬製剤に関する。これら医薬製剤は、それぞれ医薬的有効量のアンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩またはプロドラッグ、および水性分散性粒子を形成するための医薬的に許容されるリン脂質を含み、また、該製剤は、中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まず、該リン脂質は該製剤の少なくとも5%w/wの濃度で存在する。ある態様において、該中および長鎖トリグリセリドは、約1%w/vまたはそれ以下の混合濃度(組み合わせた濃度)で存在する。
【0014】
あらゆる医薬的に活性なアンサマイシンは、本発明の医薬製剤に用いることができよう。ある態様において、該アンサマイシンは以下の化合物から選ばれる。
【0015】
【化1】

【0016】
ある態様において、アンサマイシンは17-AAGである。ある他の態様において、17-AAGは、塩酸塩またはリン酸塩の形である。ある他の態様において、17-AAGは、高融点形または多形体、低融点形、非晶質形、または上記形のあらゆる組み合わせである。ある態様において、低融点形の17-AAGは、DSC融点175℃以下、および5.85度、4.35度、および7.90度の2シータ角に位置するピークを含む粉体X線回折パターンを特徴とする。ある他の態様において、低融点形の17-AAGは、DSC融点約156℃、および5.85度、4.35度、および7.90度の2シータ角に位置するピークを含む粉体X線回折パターンを特徴とする。さらに他の態様において、低融点多形体の17-AAGはDSC融点約172℃を特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の医薬製剤中のアンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度は、約0.5mg/mL、約5.0mg/mL、約50mg/mL、またはそれ以上の濃度であってよい。
【0018】
本発明の医薬製剤のある態様のリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、およびPhospholipon(ホスホリポン)90Gから選ばれる1またはそれ以上のメンバーを含んでよい。ある特定の態様において、該リン脂質はPhospholipon 90Gを含む。水性分散性粒子の粒子サイズは、超音波処理、高剪断乳化、微細流動化、および制御されたポアサイズのフィルターを通した押し出しの1またはそれ以上を用いて減じることができる。水性分散性粒子の粒子サイズは、約200nmまたはそれ以下である。ある態様において、該粒子サイズは、約100〜200nmである。他の態様において、該粒子サイズは約50nm〜200nmであり、他の態様において該粒子サイズはコロイド状である。さらに、本発明の医薬製剤のある態様には、抗凍結剤、等張性修飾剤(tonicity modifier)、および充填剤の1またはそれ以上としての役割を果たす1またはそれ以上の賦形剤を含む。
【0019】
本発明の第2の局面は、アンサマイシンの医薬製剤の製造方法に関する。該製造方法には、以下の工程を含む:
(a) アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグ、ならびに医薬的に許容されるリン脂質を含む分散粒子を形成し、
(b) 所望により該分散粒子のサイズを減じ、
(c) 所望により工程(a)または(b)の生成物を凍結し、
(d) 所望により工程(c)の生成物を解凍し、
(e) 所望により工程(a)-(d)のあらゆる生成物を凍結乾燥し、
(f) 所望により工程(e)の生成物を再水和する
(ここで、該製剤は中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まない)。
【0020】
ある態様において、本発明の方法は、さらに、抗凍結剤、等張性修飾剤、および充填剤の1またはそれ以上としての役割を果たす1またはそれ以上の賦形剤を加えることを含みうる。
【0021】
該方法は、アンサマイシン、具体的には、ゲルダナマイシン、17-AAG、DMAG、化合物563、化合物237、化合物956、化合物1236、またはその混合物の医薬製剤を製造するためのものである。ある態様において、該方法は、17-AAG、ゲルダナマイシン、またはDMAGの医薬製剤を製造するためのものである。特定の態様において、該方法は、17-AAGの医薬製剤を製造するためのものである。他の態様において、該方法は、高融点、低融点、非晶質形の17-AAG、またはそのあらゆる組み合わせの医薬製剤を製造するためのものである。ある特定の態様において、該方法は、低融点形の17-AAGの医薬製剤を製造するためのものである。
【0022】
本発明の方法により製造される医薬製剤中のアンサマイシン、その医薬的に許容される塩、またはそのプロドラッグの濃度は、ある態様において少なくとも約0.5mg/mL、他の態様において少なくとも約5.0mg/mL、さらに他の態様において少なくとも約50mg/mLまたはそれ以上である。
【0023】
本発明の方法に用いるリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、Phospholipon 90G、またはそのあらゆる組み合わせが含まれる。ある態様において、用いるリン脂質には、ホスファチジルコリン、Phospholipon 90G、Phospholipon 90G、またはそのあらゆる組み合わせが含まれる。他の態様において、用いる該リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、Phospholipon 90G、またはそのあらゆる組み合わせを含む。ある特定の態様において、用いる該リン脂質には、Phospholipon 90Gが含まれる。
【0024】
該医薬製剤の製造方法は、分散粒子の粒子サイズを減じる工程を含んでよい。ある態様において、該粒子サイズの削減は、1またはそれ以上の超音波処理、高剪断乳化、微細流動化、および制御されたポアサイズのフィルターを通した押し出しを用いて達成される。ある態様において、該削減は、高剪断乳化および/または微細流動化を用いて達成される。他の態様において、該削減は、高剪断乳化および/または制御されたポアサイズのフィルターを通した押し出しを用いて達成される。ある態様において、該方法は、粒子サイズがコロイド状、約50〜200nm、約100〜200nm、または約200nmまたはそれ以下である分散粒子を生成する。ある態様において、粒子サイズは約100〜200nmである。他の態様において、粒子サイズは約200nmまたはそれ以下である。さらに他の態様において、粒子サイズはコロイド状である。
【0025】
本発明の第3の局面は、医薬的有効量の、本発明の第1の局面であるあらゆる医薬製剤、またはあらゆる製造方法により製造した医薬製剤を哺乳動物に投与することにより哺乳動物の障害を治療または予防する方法に関する。
【0026】
該治療方法を用いて、虚血、増殖性障害、感染症、神経学的障害、腫瘍、白血病、慢性リンパ性白血病、新生物、癌、カルチノーマ、後天性免疫不全症候群、および悪性疾患を治療してよい。該方法が適用可能な増殖性障害には、腫瘍、炎症性疾患、真菌感染症、酵母感染症、およびウイルス感染症がある。
【0027】
本発明の治療方法のある態様において、アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩またはプロドラッグは、医薬製剤中、約1〜1.5% (w/w)の濃度、または約0.5〜50mg/mlの濃度で投与される。
【0028】
該治療方法のある態様において、該医薬製剤中のアンサマイシンは、ゲルダナマイシン、DMAG、17-AAG、化合物563、化合物237、化合物956、および化合物1236から選ばれる。ある態様において、アンサマイシンは17-AAGである。他の態様において、17-AAGは、高融点、低融点、非晶質形の17-AAG、またはそのあらゆる組み合わせから選ばれる。さらに他の態様において、アンサマイシンは低融点形の17-AAGを含む。
【0029】
本発明の第4の局面は、医薬の製造における本発明のリン脂質製剤の使用である。
【0030】
本発明のさらに別の局面は、上記HSP90介在疾患および病状の治療的および予防的処置のための医薬の製造における本発明のリン脂質製剤の使用である。
【0031】
本発明のあらゆる上記局面および態様は、実用的であればどのようにも組み合わせることができると理解すべきであり、当業者は種々の態様を本発明の精神内で有用なように組み合わせる方法を認識するであろう。
(参照による取り込み)
【0032】
本明細書に記載のすべての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的および個々に参照により取り込まれることを示すのと同程度に、参照により本明細書に取り込まれる。
(図面の簡単な説明)
【0033】
本発明の新規な特徴を、添付の特許請求の範囲に具体的に記載する。本発明の特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理を利用する例示的態様を記載した以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより得られるであろう。
【0034】
図1は、7.40、6.08、および11.84の2シータ角のピークを示す高融点形の17-AAGの粉体X線回折パターンを示す。
【0035】
図2は、5.85、4.35、および7.90の2シータ角のピークを示す低融点形の17-AAGの粉体X線回折パターンを示す。
【0036】
図3は、高融点形の17-AAGの示差走査熱量測定法(DSC)によるスキャンを示す。
【0037】
図4は、低融点形の17-AAGのDSCスキャンを示す。
【0038】
図5は、エタノール中の低融点および高融点17-AAG対時間(min)の固有の溶解速度(mg/cm2)を示す。
【課題を解決するための手段】
【0039】
(本発明の詳細な説明)
本発明の好ましい態様を本明細書に示し説明したが、そのような態様は例示のためのみに提供されることは当業者に明らかであろう。当業者は、本発明から離れることなく多くの変化、変更、および置換を思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の態様に対する種々の代わりの方法を本発明の実施に用いてよいことを理解すべきである。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、該特許請求の範囲内の方法および構造およびその等価物がそれによりカバーされることを意図する。
【0040】
本発明は、アンサマイシンのリン脂質ベースの医薬製剤およびその製造および使用方法を特徴とする。本願出願人は、水溶性またはわずかに水溶性のアンサマイシンまたは水に不溶性のアンサマイシンの水溶性塩を医薬的に許容されるリン脂質の分散物に製剤化することができることをみいだした。さらに、本願出願人は、種々の多形体形の結晶アンサマイシンが種々の溶解特性を有すること、例えば、17-AAGが高融点形より著しく高い溶解速度を有する低融点形を有することをみいだした。これら特性を利用して、本願出願人は、水に不溶性の薬剤、例えばアンサマイシンのための患者に投与するのに適した製剤を発明した。そのような製剤の製造は、比較的簡単であり、典型的には臨床的に許容される試薬を利用し、保存安定性をもたらす生成物をもたらす。
【0041】
本発明はPCT/US03/10533に記載のエマルジョン製剤と異なり、本発明製剤はより低レベルの中鎖トリグリセリド(MCT)および長鎖トリグリセリドを含む。MCTは、中枢神経系への効果、例えば傾眠、悪心、眠気、およびEEGの変化をもたらしうる、オクタノエートの代謝物形成をもたらすことができる。Cotter et al.、Am. J. Clin. Nutr. 1090 50:794-800; Miles et al.、Journal of Parenteral and Enteral Nutrition 1991 15:37-41; Traul et al.、Food Chem. Toxicol. 2000 38:79-98参照。さらに、本発明の製剤は、静脈内投与において十分耐容性である。
【0042】
本発明を本明細書でアンサマイシン、17-AAGを用いて例示するが、本明細書に記載の新規薬物製剤化方法は、他の脂溶性、低水溶性の薬剤に適用されると理解すべきである。さらに、該方法は、限定されるものではないが、実施例の項の実施例1〜12に例示したもの、例えばゲルダナマイシン、17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノゲルダナマイシン(DMAG)、および17-AAGを含む多くの他のアンサマイシンに適用されることも理解すべきである。さらに、本明細書に記載の新規薬物製剤化方法は、17-AAGの高融点および低融点形の両方に適用されると理解すべきである。さらに、該製剤は開示した化合物の多形体、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、およびプロドラッグに適用される。
I. 定 義
【0043】
以下のクレーム用語は以下の意味を有し、以下に具体的に記載しないクレーム用語は当該分野で用いられる通常の意味を有する。
【0044】
用語「プロドラッグ」または「医薬的に許容されるプロドラッグ」は、該プロドラッグを哺乳動物対象に投与したときに医薬的に活性な薬剤の放出がin vivoで生じる、担体と共有結合した医薬的に活性な薬剤である。本発明化合物のプロドラッグは、修飾された基が常套的操作またはin vivoで開裂して所望の化合物を生じるように該化合物に存在する官能基を修飾することにより製造される。プロドラッグには、ヒドロキシ、アミン、またはスルフィドリル基が哺乳動物対象に投与したときに開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、またはスルフィドリル基を形成するあらゆる基と結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、限定されるものではないが、本発明の化合物中のアルコールまたはアミン官能基のアセテート、ホルメート、またはベンゾエート誘導体、または本発明化合物中のアルコールまたはフェノール官能基のリン酸エステル、ジメチルグリシンエステル、アミノアルキルベンジルエステル、アミノアルキルエステルまたはカルボキシアルキルエステルなどが含まれる。プロドラッグは、例えばREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、20版、Ch. 47、pp. 913-914に記載のような薬物送達に多様な利点をもたらす。
【0045】
「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。適切な酸の例には、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸(エジシレート)、ガラクトシル-d-グルコン酸などが含まれる。他の酸、例えばシュウ酸は、それ自身医薬的に許容されるものではないが、本発明化合物およびその医薬的に許容される酸付加塩を得るための中間体として有用な塩の製造に用いることができる。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム、N-(C1-C4アルキル)4+塩などが含まれる。これらのいくつかの典型的例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウムなどが含まれる。特許請求の範囲が「化合物(例えば化合物「x」)またはその医薬的に許容される塩」を記載し、該化合物のみを示す場合は、該特許請求の範囲は、選択肢または接続において、そのような化合物の医薬的に許容される塩または塩(複数)を含むと解釈すべきである。
【0046】
「医薬的有効量」は、医薬的および/または予防的効果をもたらすことができる量を意味する。もちろん、医薬的および/または予防的効果を得るために本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、例えば、投与する特定の化合物、投与経路、治療する病状、および治療する個体を含む、症例を取り囲む特定の環境により決定されるであろう。典型的1日用量(単回量または分割用量で投与される)は、本発明の活性化合物を約0.01mg/kg〜約50-100mg/kg体重の用量レベルで含むであろう。好ましい1日用量は、一般的には約0.05mg/kg〜約20mg/kg、理想的には約0.1mg/kg〜約10mg/kgであろう。クリアランス速度、半減期、および最大耐容用量(MTD)のような因子をさらに決定すべきであるが、当業者は標準的手順を用いてこれらを決定することができる。
【0047】
本明細書に記載の化合物のいくつかは、1またはそれ以上のキラル中心を含んでいてよく、したがってエナンチオマーおよびジアステレオマー形で存在してよい。本発明の範囲は、全ての異性体自体、およびシスおよびトランス異性体の混合物、ジアステレオマーの混合物、エナンチオマー(光学異性体)の混合物にも及ぶことを意図する。さらに、よく知られた技術を用いて種々の形を分離することができ、本発明のある態様は、特定のエナンチオマーまたはジアステレオマーの精製または豊富化された種を特徴とし得る。さらに、本発明化合物のあるものは、プロトンの配置および二重結合の対応する位置により異なる異性体である互変異性体として存在し得る。本発明の範囲は、すべての互変異性体形に及ぶことを意図する。さらに、本明細書に記載の化合物は、該化合物または該化合物のイオンと1またはそれ以上の溶媒分子との混合物を表す溶媒和物として存在しうる。本発明の範囲は、本明細書に記載の混合物のすべての溶媒和物形に及ぶことを意図する。
【0048】
用語「分散物」、「コロイド」、および「エマルジョン」は、REMINGTON'S THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、20版、Gennaro、A.R. Ed.、(2000)と一致した当該分野における意味を有し、互いに完全に混和性でない2またはそれ以上の成分からなる多相系を表す。分散物は、分散した粒子のサイズに基づいて異なる群に分類しうる。コロイド状分散物は約1nm〜0.5μmの範囲の分散粒子を特徴とする。粗分散物は、粒子サイズ0.5μm以上を特徴とし、サスペンジョンとエマルジョンを含む。大部分、分散物の異なるタイプは光散乱および/または例えば電子顕微鏡検査を含む顕微鏡技術により検出することができる。
【0049】
「凍結乾燥」は、例えば昇華により試料から液体を除去または実質的に除去することである。溶媒/水性層の除去は、あらゆる方法を用いて達成することができるが、一般に医薬的に活性な薬剤の機能的完全性を保存するのに適する限り、室温および窒素流を含むあらゆる妥当な温度および圧で減圧下、すなわち真空下で達成される。用語「凍結乾燥する」および「凍結乾燥した」は、必ずしも溶媒および/または溶液を100%除去したことを意味せず、それより少ない除去を伴う。実質的除去は典型的には約95%除去である。
【0050】
「不活性雰囲気条件」は、標準的雰囲気条件の空気より比較的反応性が低いものである。純粋または実質的に純粋な窒素ガスの使用は、そのような不活性雰囲気条件の一例である。当業者は他のものをよく知っている。
【0051】
用語「水和する」または「再水和する」は、水性溶液、例えば水または生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、緩衝生理食塩水、または水中5%ブドウ糖を加えることを意味する。
【0052】
「医薬的に許容される担体」は、生物に顕著な刺激をもたらさない、投与した化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を表す。
【0053】
用語「賦形剤」は、化合物の処理、投与、および物理特性を助けるために医薬組成物に加える無毒性の医薬的に許容される物質を表す。賦形剤の例には、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖(マンニトール、ショ糖および/またはブドウ糖を含む)、およびデンプン種、セルロース誘導体、ゼラチン、種々の緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、および/またはマレイン酸ナトリウム)、アミノ酸、糖酸(例えばグルココロネートおよび/またはグルコネート)、およびチキソトロピック剤、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、および/またはポロキサマー(コポリマー)が含まれ得る。
【0054】
用語「安定剤」は、必要ではないが「充填剤」または「凍結乾燥剤」と同意義でありうる(逆もある)。「充填剤」は、一般的には、乾燥製剤マトリックスがそのコンフォメーションを維持するのを可能にすることにより凍結乾燥製剤に機械的支持を提供する一種の賦形剤である。典型的には、充填剤は糖である。本明細書で用いられる糖には、限定されるものではないが、モノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライド、およびポリサッカライドが含まれる。具体例には、限定されるものではないが、フルクトース、グルコース、マンノース、トレハロース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、ショ糖、ブドウ糖、およびデキストランが含まれる。糖には、糖アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ズルシトール、キシリトール、およびアラビトールも含まれる。糖の混合物も本発明にしたがって用いてよい。種々の充填剤、例えばグリセロール、糖、糖アルコール、および単糖類および二糖類も等張化剤の機能を果たし得る。本発明で用いる充填剤は、物理化学的考慮のみに限定され、例えば溶解性、凍結、乾燥、保存、および再水和中の滴サイズおよびエマルジョン完全性を保存する能力、活性薬剤/化合物との反応性の欠如、および投与経路によっても限定される。一般的には、充填剤は、薬剤に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性がないかまたは極めて限られている。充填剤担体に加え、充填剤の役割を果たすかまたは果たさない他の担体には、例えば、当該分野でよく知られ、容易に利用可能なアジュバント、賦形剤、および希釈剤が含まれる。本発明の典型的な充填剤はショ糖である。理論に縛られる事なく、ショ糖は、凍結、次いで凍結乾燥すると非晶質ガラス状物を形成し、分散物を形成することにより製剤の潜在的安定性の増強をもたらすと考えられる(薬剤-リン脂質複合体は硬いガラス状物中に含まれる)。安定性は、凍結乾燥により失われた水の代わりとして作用する糖によっても増強することができる。水分子のかわりに糖分子は、水素結合を介して界面リン脂質と結合するようになる。これらの特性を持つ、置換してよい他の充填剤には、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン(PVP)およびマンニトールが含まれる。
【0055】
用語「アンサマイシン」は、長脂肪族鎖で架橋されたベンゾキノン、ベンゾヒドロキノン、ナフトキノンまたはナフトヒドロトキノン部分のいずれかを含む「アンサ」構造を有する化合物を特徴づける広い用語である。ナフトキノンまたはナフトヒドロトキノンクラスの化合物は、それぞれ臨床的に重要な薬剤であるリファンピシンンおよびリファマイシンにより例示される。ベンゾキノンクラスの化合物は、ゲルダナマイシン(その合成誘導体17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(DMAG)を含む)、ジヒドロゲルダナマイシン、およびヘルバマイシンにより例示される。ベンゾヒドロキノンクラスはマクベシンにより例示される。本明細書で用いている用語「アンサマイシン」は、アンサマイシンの医薬的に許容される塩、および個体に投与すると程度の差はあるが薬理学的に活性な化合物に代謝されるアンサマイシンプロドラッグも含み得る。プロドラッグは、典型的には、対象患者中の薬理学的化合物の溶解性、送達、および/または生物学的存在および持続性の1またはそれ以上を増強するために用いられる。
【0056】
用語「リン脂質」には、モノ-またはジ-エステルとしてリン酸を含むあらゆる脂質が含まれる。本発明のリン脂質は、合成、天然、または半合成であってよく、必ずしもではないが、既知の細胞膜リン脂質、例えばホスホグリセリドおよびスフィンゴミエリンと同一性を有してよい。
【0057】
本明細書で用いている用語「ホスホグリセリド」は、2個のグリセロールヒドロキシル基を介して2本の脂肪酸鎖にエステル化し、残りのヒドロキシル基を介してリン酸にエステル化し、中間体ホスファチデートを形成する、グリセロールバックボーンを有する、グリセロール、3個の炭素アルコールから誘導された化合物を表す。典型的には、該脂肪酸鎖は、14〜24個の炭素原子、最も一般的には16〜18個の炭素原子を含む。該鎖は飽和または不飽和であってよい。次に、そのリン酸基自身を種々の異なるアルコールの1つのヒドロキシル基、最も一般的にはセリン、エタノールアミン、コリン、グリセロール、およびイノシトールにエステル化する。典型的ホスホグリセリドには、限定されるものではないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)が含まれる。スフィンゴミエリンは、長不飽和炭化水素鎖を含むアミノアルコールであるスフィンゴシンから誘導される。スフィンゴミエリンにおいて、スフィンゴシンバックボーンのアミノ基は、アミド結合により脂肪酸と結合する。さらに、スフィンゴシンの第1ヒドロキシル基はホスホリルコリンにエステル化される。例えば、Stryer、BIOCHEMISTRY、2版、pp. 206-211 (1981)参照。
【0058】
さらに、ホスホグリセリドはレシチンも含む。「レシチン」は、リン酸のコリンエステルと結合するステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸の天然の混合物である。本発明で使用するための好ましいリン脂質は、ダイズレシチン、例えばPhospholipon 90G (American Lecithen Company (Oxford、CT、USA)により供給される)である。他の市販供給源および製造方法は、当業者によく知られている。例えば、TWEEN(登録商標)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)およびPoloxamer 188は、正しく機能すると思われる他の市販試薬である。
【0059】
本発明のリン脂質は、典型的には約0.5〜20% w/vの濃度(水、および/または界面活性剤が溶解する他の成分の量に基づいて)で存在する。一般的には、リン脂質は、約0.5〜10% w/v、典型的には約1〜8% w/vの濃度で存在する。
【0060】
酸化的分解または脂質の過酸化を抑制または最小化するために、抗酸化剤、例えばα-トコフェロールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを酸素除去(例えば、窒素およびアルゴンのような不活性ガスの存在下で製剤化および/または遮光容器の使用)に加えてまたはその代わりに加えてよい。
【0061】
本明細書で用いている用語「トリグリセリド」は、グリセロールのトリエステルを表す(HO-CH(CH2OH)2)。3個のエステル基は同じであるか、その3個のうち2個が同じで3個目が異なっているか、または3個とも異なっていてもよい。
【0062】
本明細書で用いている用語「短鎖トリグリセリド」は、8個以下の直鎖状炭素原子を含むエステル基を含むトリグリセリドを表す。
【0063】
本明細書で用いている用語「中鎖トリグリセリド」は、8〜12個の直鎖状炭素原子を含むエステル基を含むトリグリセリドを表す。
【0064】
本明細書で用いている用語「長鎖トリグリセリド」は、12個以上の直鎖状炭素原子を含むエステル基を含むトリグリセリドを表す。
【0065】
用語「約」は、示した特定のエンドポイントを含み、20%以下の超過であることを意味する。すなわち、該範囲は拡大する。
【0066】
用語「所望により」は、該用語に続く工程または成分が該方法または製剤の部分であってもなくてもよいことを意味する。
【0067】
中および長鎖トリグリセリドに伴う用語「実質的に欠く(含まない)」は、これら事項が単独で全製剤の5%w/v (合計で10%w/v)またはそれ以下を含むことを意味する。すなわち、約0〜5%中または長鎖トリグリセリド種のあらゆる範囲が「実質的に欠く(含まない)」を構成する。
II. 製剤の製造
A. アンサマイシンの製造
【0068】
本発明のアンサマイシンは、合成、天然、またはその2つの組み合わせ、すなわち「半合成」であってよく、ダイマーおよび結合変異体、およびプロドラッグ形を含みうる。本発明の種々の態様において有用なある典型的ベンゾキノンアンサマイシンおよびその製造方法には、限定されるものではないが、例えば、米国特許No.3,595,955 (ゲルダナマイシンの製造について記載)、No. 4,261,989、No. 5,387,584、およびNo. 5,932,566に記載のもの、および以下の「実施例」の項(実施例1〜12)に記載のものが含まれる。Streptomyces hygroscopicus (ATCC 55256)培養から得られるゲルダナマイシン誘導体、4,5-ジヒドロゲルダナマイシンおよびそのヒドロキノンの生化学的精製はCullen et. al.、WO 93/14215に記載され、ゲルダナマイシンの触媒的水素添加による4,5-ジヒドロゲルダナマイシンの別の合成方法も知られている。例えば、「Progress in the Chemistry of Organic Natural Products」、Chemistry of the Ansamycin Antibiotics、1976 33:278参照。本発明の種々の態様に関連して用いることができる他のアンサマイシンは、上記「背景技術」の項に記載の文献に記載されている。さらに、ゲルダナマイシンおよびDMAGは、例えば、それぞれCN Biosciences(Merck KGaAの関連会社、Darmstadt、Germany、本社:San Diego、California、USA (cat. no. 345805))およびEMD/Calbiochem(Merck KGaAの関連会社、Darmstadt、Germany)から市販されている。
【0069】
17-AAGは、窒素雰囲気下、乾燥THF中アリルアミンとの反応を介してゲルダナマイシンから製造することができる。粗生成物はH2O:EtOH (90:10)中でスラリーにして精製し、得られた洗浄した結晶は毛細管融点技術による融点が206〜212℃である。17-AAGの第2生成物は、2-プロピルアルコール(イソプロパノール)から粗生成物を溶解し、再結晶して得ることができる。この第二 17-AAG生成物は、毛細管融点技術による融点が147〜153℃である。2つの17-AAG生成物は、「高融点形または多形体」および「低融点形」と呼ばれる。低融点形の安定形は、高融点形が精製される溶媒(H2O:EtOH (90:10))中、結晶をスラリーにすることにより試験することができ、高融点形への変換は観察されなかった。2つの多形体形の17-AAGの製造の詳細については実施例1〜2参照。高融点形および低融点形に加え、17-AAGが非晶質形を有することはよく知られている。
【0070】
異なる多形体形の存在は、粉体X線回折および示差走査熱量測定法 (DSC)により評価することができる。著しく異なる粉体X線回折パターンは、該物質が異なる結晶構造を有することを示唆する。図1は、7.40度、6.08度、および11.84度の2シータ角にピークを含む高融点形の粉体X線回折パターンを示す。図2は、5.85度、4.35度、および7.90度の2シータ角にピークを含む低融点17-AAGの粉体X線回折パターンを示す。粉体X線回折パターンが顕著に異なるため、高融点および低融点17-AAGは異なる結晶形の17-AAGを含む。
【0071】
高融点形および低融点形の17-AAGの粉体X線回折パターンのピーク位置および強度をそれぞれ表1および表2に示す。
表1. 高融点17-AAGの粉体X線回折パターン
【0072】
【表1】

表2. 低融点17-AAGの粉体X線回折パターン
【0073】
【表2】

【0074】
多形体の化合物はその融点により特徴づけることができる。示差走査熱量測定法 (DSC)は、化合物の融点を測定するのに用いる一般的技術である。図3は、204℃の単吸熱を示す高融点17-AAGのDSCスキャンである。図4は、2つの異なる吸熱(主なものが156℃に中心があり、小さいものは172℃に中心がある)を示すDSCスキャンである。各吸熱は、少なくとも1の多形体形の存在を示す。すなわち、2つの吸熱の存在は、低融点17-AAGが少なくとも2の多形体形からなり得ることを示す。さらに、吸熱事象は、低融点多形体の融点の上限をマークする約176℃で終わる。
【0075】
DSCに加え、他の熱分析技術を用いて該多形体の融点を測定することができ、熱重量分析(TGA)および毛細管(capillary)融点が用いられる他の一般的方法である。
【0076】
高融点および低融点形の17-AAGの熱分析データ(すなわちDSCおよびTGA)を下記表3に要約する。高融点形および低融点形の融点も毛細管融点法で分析し、結果を実施例1〜3に報告する。毛細管融点法により得られた融点とDSCを介して得られたものを比較すると各データセットにわずかな矛盾があることがわかる。この矛盾は、用いた分析技術に起因しうる。毛細管融点測定法は融解サイクルの発生および完結の可視的測定に依存し、17-AAGの非常に暗色の結晶はこれらの正しい決定を困難にする。
表3. 高融点対低融点17-AAGの熱分析

【0077】
活性医薬成分の溶解速度は、その多形体状態により影響を受けうる。高融点形および低融点形の17-AAGの固有溶解速度はエタノール(17-AAGが可溶性である)中で測定した。低融点形の17-AAGは、高融点形 (0.550mg/cm2/min)より固有の溶解速度が60%高かった(0.885mg/cm2/min)(図5参照)。
【0078】
低融点形のより高い溶解速度は、より効率的な製造プロセスを提供しうる。さらに、より急速な溶解は、化合物は消化管中では溶液から吸収されるため、経口投与したときの化合物のバイオアベイラビリティを改善することができ、該低融点形は急速に溶解して飽和溶解度を維持し、吸収に利用可能であるという利点がある。
【0079】
本発明は、該製剤の製造における、すべての多形体形のアンサマイシン、特に全ての多形体形の17-AAG(多形体混合物または単一多形体、または非晶質形)の使用を予期する。
B. 投与製剤の製造
【0080】
本発明の製剤は、医薬組成物を製造するための当該分野で知られたあらゆる方法に従って製造してよい。一般的には、医薬活性化合物を溶解して粗水性リン脂質分散物とし、次いで分散物の粒子サイズを減少させる。これら分散物は、ろ過により容易に滅菌することができ、反復凍結解凍サイクルに安定であり、凍結乾燥物として保存することもできる。
【0081】
本発明の製剤のpHは、適切な酸および塩基、例えば塩酸および水酸化ナトリウムを用いて操作することができる。一般的には、リン脂質粒子は緩衝水性媒質、例えば酢酸ナトリウム緩衝液に分散させる。酢酸ナトリウムの使用に加えてまたはそれに変えて、他の緩衝液、例えばヒスチジン(5mM以下、pH-5)、乳酸(〜10-20mM; pH〜4)、バリン(〜10-50mM、pH-3)などを用いることができる。
【0082】
分散物および粒子サイズの削減(減少)は、種々のよく知られた技術、例えば機械的混合、乳化(例えば、ポリトロンまたはGaulin高エネルギー形機器を使用)、渦巻き撹拌(vortexing)、および超音波処理により行うことができる。超音波処理は、バス形またはプローブ形機器を用いて行うことができる。ミクロ流動化剤は、例えばMicrofluidics Corp., Newton, Mass.から市販されており、さらに米国特許4,533,254(例えば、種々の市販のポリカーボネート膜中に含まれる狭い穴の加圧通過を用いる)に記載されている。使用可能な低圧装置も存在する。これら高圧および低圧装置を用いて粒子サイズを選択および/または調節することができる。マイクロチャンネルフィルターは高圧下でろ過し、特定の分散粒子サイズ直径を選択することができる。加熱、振盪、および/または超音波処理を用いて粒子サイズを減じることもできる。
【0083】
液体分散物の滅菌は、種々のろ過技術により達成することができる。ろ過には、より大きな直径のフィルター、例えば0.45ミクロンフィルター(Gelmanミニカプセルフィルター、Pall Corp., East Hills, N.Y., USA)、次いでより小さいフィルター(例えば0.2ミクロンフィルター)を通す予備ろ過が含まれうる。一般的には、フィルター媒質は、セルロースアセテート(例えば、Sartobran(登録商標), Sartorius AG, Goettingen, Germany)である。固定圧を適用してスムーズで連続的な流れを維持することができる。あるいはまた、該製剤は、0.2ミクロンまたはそれ以下のフィルターを通して直接押出してよい。あらゆる事象において、0.2ミクロンまたはそれ以下のポアサイズのマイクロチャンネルフィルターを通す押出しは効果的にろ過滅菌し、さらなるろ過滅菌を不要にする。
【0084】
本発明の製剤および方法のある態様は、適切な時点で凍結乾燥および再水和を含みうる。凍結乾燥は、保存、輸送、および取り扱いに比較的安定で好都合な生成物をもたらす。溶媒除去を達成する市販のロータリーエバポレーション装置が存在する。他の装置および方法は当業者に知られている。凍結乾燥の典型的条件は実施例15に記載されているが、他の条件は当業者に知られている。水和および適切な濃度に調節すると患者に静脈内またはその他の投与を行うのに好都合なことがある。
【0085】
ある態様において、有効医薬成分、例えば17-AAGは、1% (w/w)水性リン脂質分散物として製剤化される。該製剤は、高剪断混合物中のリン脂質の水性分散物中で17-AAGを短期間混合し、次いで徐々に撹拌して同伴空気を除去することにより製造する。前記のあらゆるリン脂質、例えば、Phospholipon 90G、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミンを用いることができる。製剤工程中に、他の賦形剤、例えば緩衝剤、等張化調節剤、および加工助剤を加えてよい。
【0086】
17-AAG分散物を微細流動化し、分散物の粒子サイズを典型的には200nm以下(平均粒子サイズ)に減じることができる。分散物は、無菌0.2ミクロンSartorius Sartobran Pカプセルフィルター(500cm2) (Sartorius AG、Goettingen、Germany)を用い、60 psi以下の圧を用いてスムーズで連続的な流れを維持してろ過滅菌することができる。当該分野で知られた標準的技術を用いてろ液を速やかに加工し、他の製剤、例えば注射可能、経口用溶液剤、錠剤またはカプセル剤とすることができる。ろ液を将来用いるために回収し、凍結し、または凍結乾燥することもできる。
【0087】
あるいはまた、該製剤は、最初にリン脂質分散物を製造し、次いで以下の医薬活性成分を加えることにより製造することができる。無菌水中1〜20%(w/v)リン脂質を混合し、次いで該混合物をホモゲナイズし、次に微細流動化するためのより均一な分散物を得る。界面活性剤分散物を微細流動化装置(Microfluidizer)を通過させて微細流動化し、一般的には粒子サイズ200nm以下、典型的には100〜200nmを達成することができる。次に、活性医薬成分および他の賦形剤を加え、次いでpHを、希水酸化ナトリウムおよび/または塩酸、および10mM酢酸ナトリウム3水和物、ホスフェート、または等価な緩衝剤を用いて約5〜8に調整する。特定の製剤の製造を実施例13および14に記載する。
III. 薬物製剤の特徴付けおよび評価
A. HPLCを用いる活性成分の安定性測定
【0088】
活性医薬成分、例えば17-AAGの化学安定性は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により評価することができる。医薬活性アンサマイシンをその分解産物から分離することができる特異的アッセイ方法を開発することができる。分解の程度は、医薬活性アンサマイシンと関連するHPLCピークのシグナルの低下から、そして/または分解産物と関連するHPLCピークのシグナルの増加により評価することができる。該製剤の他の成分と比較してアンサマイシンは、345nmのその最大吸収で容易かつ極めて特異的に検出される。
B. リン脂質の化学的および物理的安定性の特徴づけおよび評価
【0089】
リン脂質および分解産物は、分散物/エマルジョンから抽出した後に測定することができる。次に、脂質混合物を、二次元薄層クロマトグラフィ(TLC)系またはHPLC系を用いて分離することができる。TLCにおいて、単一成分に対応するスポットを除去し、リン含量をアッセイすることができる。試料中の総リン含量を、例えば分光光度計を用いる方法により、水に対して825nmで発現した青色の強度を測定し、定量測定することができる。HPLCにおいて、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を正確かつ精密に分離および定量することができる。脂質は、203〜205nmの領域に検出することができる。UVスペクトルの200nm波長領域で、不飽和脂肪酸は高い最大吸収を示すが、飽和脂肪酸は低い最大吸収を示す。例として、VemuriおよびRhodes(上記)は、Licrosorb DiolおよびLicrosorb S 1-60における卵黄PCおよびPGの分離について記載した。分離には、アセトニトリル-メタノールと1%ヘキサン-水 (74:16:10 v/v/v)の移動相を用いた。8分間で、PCからのPGの分離が観察された。保持時間はそれぞれ約1.1および3.2minであった。
C. 分散物の評価
【0090】
分散物の可視的出現、平均滴サイズ、およびサイズ分布は観察および維持の重要なパラメーターである。これらパラメーターを評価するための多くの方法がある。例えば、動的光散乱および電子顕微鏡は、使用できる2つの技術である。例えば、SzokaおよびPapahadjopoulos, Annu. Rev. Biophys. Bioeng., 1980 9:467-508参照。特に、形態学的特性は、凍結割断電子顕微鏡法を用いて達成することができる。性能の劣る光学顕微鏡を用いることもできる。結晶固体の存在は、偏光顕微鏡法により測定することができる。この顕微鏡技術は当該分野でよく知られている。分散物の滴サイズ分布は、例えば粒子サイズ分布分析器、例えばCAPA-500(Horiba Limited (Ann Arbor, MI, USA)製造)、Nanatrac (Mierotrac, Largo, FL, USA), Coulter Counter (Beckman Coulter Inc., Brea, CA, USA)、またはZetasizer (Malvern Instruments, Southborough, MA, USA)を用いて測定することができる。
IV. 他の製剤化および投与方法
A. 他の製剤
【0091】
静脈内投与は本発明の種々の局面および態様において記載しているが、当業者は、該方法は他の投与方法、例えば、経口、エアロゾル、非経口的、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、腫瘍内、または腫瘍周囲に適応するように修飾しまたは容易に適合させることができると認識するであろう。以下の説明は、大部分が当業者に知られているが、本発明の他の可能性を例示するための背景として提供する。以下の説明は、本明細書に記載の先の説明と一部重複すると理解されよう。医薬組成物は、常套的混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、粉末化(levigating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスを利用して製造し得る。医薬的に許容される組成物は、常套的方法で、活性化合物を医薬的に用いることができる製剤に加工するのを促進する賦形剤および助剤を含む1またはそれ以上の生理学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。いくつかの賦形剤およびその製剤製造における使用はすでに記載した。他のものは当該分野で知られており、例えば、PCT/US99/30631、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Meade Publishing Co., Easton, PA (最新板)、およびGoodman AND Gilman's THE PHARMACEUTICAL BASIS OF THERAPEUTICS, Pergamon Press, New York, N.Y. (最新版)に記載されている。注射用には、該薬剤を水性溶液、一般的には生理学的に適合性の緩衝剤、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または緩衝生理食塩水を用いて製剤化してよい。経粘膜投与には、浸透すべきバリアーに適した浸透剤を製剤に用いる。そのような浸透剤は、一般的に当該分野で知られている。前記および凍結乾燥ケーキを水和した本発明製剤は、例えばボーラス注射または連続注入により注射により即時またはほぼ即時非経口投与に十分適している。注射用製剤は、保存料を添加したアンプルまたは多用量容器中に存在してよい。上記のように、凍結乾燥生成物は本発明の態様であり、アンプルまたは他の包装(所望により遮光)は、この凍結乾燥生成物を含んでよく、次いでこれを患者に投与する前に好都合に(再)水和することができる。
B. 用量範囲
【0092】
進行固形癌の成人患者における17-AAGの第I相薬理試験により、3週間ごとに5日間、1日1回1時間注入により投与したときの最大耐容用量(MTD)は40mg/m2と決定された。Wilson et al., 2001 Am. Soc. Clin. Oncol., abstract, Phase I Pharmacologic Study of 17-(Allylamino)-17-Demethoxygeldanamycin (AAG) in Adult Patients with Advanced Solid Tumors。この試験において、終末半減期、クリアランス、および定常期容量の平均±SDは、それぞれ2.5±0.5時間、41.0±13.5 L/時間、および86.6±34.6L/m2と決定された。血漿Cmaxレベルは、40および56mg/m2で1860±660nMおよび3170±1310nMと決定された。これらの値を手引きに用い、本発明の製剤の有用な患者の用量範囲は、活性成分約0.40mg/m2〜400mg/m2(m2は表面積を表す)を含むと予期される。
【実施例】
【0093】
実施例1:17-AAGの製造
乾燥2Lフラスコ中の1.45 Lの乾燥THF中の45.0g (80.4mmol)のゲルダナマイシンに、50mlの乾燥THF中36.0ml(470mmol)のアリルアミンを30分間かけて滴加した。反応混合物を窒素下、室温で4時間撹拌し、その時点でTLC分析は反応が完結したことを示した[(GDM:明黄色:Rf=0.40;(5%MeOH-95%CHCl3);17-AAG:紫色:Rf=0.42 (5%MeOH-95%CHCl3)]。溶媒を回転蒸発により除去し、粗物質を25℃で420mlのH2O:EtOH (90:10)中でスラリーとし、ろ過し、45℃で8時間乾燥して40.9g (66.4mmol)の17-AAGを紫色結晶として得た(収率82.6%、純度>98%(HPLCで254nmにてモニターした))。m.p. 206-212℃. 1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例2:低融点形の17-AAGの製造
【0094】
実施例1から得た粗17-AAGを80℃で800mL 2-プロピルアルコール(イソプロパノール)に溶解し、次いで室温に冷却した。ろ過し、次いで45℃で8時間乾燥して、44.6g (72.36mmol)の17-AAGを紫色結晶として得た(収率90%、純度>99%(HPLCで254nmにてモニターした))。m.p. = 147〜153℃. 1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例3:低融点形の17-AAGの溶媒安定性
【0095】
実施例2から得た17-AAG生成物を、25℃で400mlのH2O:EtOH (90:10)中に溶解した。ろ過し、次いで45℃で8時間エイジングして42.4g (68.6mmol)の17-AAGを紫色結晶として得た(収率95%、純度>99%(HPLCで254nmにてモニターした))。m.p. = 147-175℃。1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例4:化合物237:ダイマーの製造
【0096】
3,3-ジアミノ-ジプロピルアミン(1.32g、9.1mmol)を、N2下火炎乾燥フラスコ中、DMSO (200ml)中のゲルダナマイシン (10g、17.83mmol)の溶液に滴加し、次いで室温で撹拌した。反応混合物を12時間後水で希釈した。沈殿物が形成され、これをろ過して粗生成物を得た。粗生成物をシリカクロマトグラフィ(5% CH3OH/CH2Cl2)にかけて目的とするダイマーを紫色固体として得た。フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル)後に純粋な紫色生成物を得た;収率:93%;m.p. 165℃;1H NMR (CDCl3) 0.97 (d, J = 6.6 Hz, 6H, 2CH3), 1.0 (d, J = 6.6 Hz, 6H, 2CH3), 1.72 (m, 4H, 2CH2), 1.78 (m, 4H, 2CH2), 1.80 (s, 6H, 2CH3), 1.85 (m, 2H, 2CH), 2.0 (s, 6H, 2CH3), 2.4 (dd, J = 11 Hz, 2H, 2CH), 2.67 (d, J = 15 Hz, 2H, 2CH), 2.63 (t, J = 10 Hz, 2H, 2CH), 2.78 (t, J = 6.5 Hz, 4H, 2CH2), 3.26 (s, 6H, 20CH3), 3.38 (s, 6H, 20CH3), 3.40 (m, 2H, 2CH), 3.60 (m, 4H, 2CH2), 3.75 (m, 2H, 2CH), 4.60 (d, J = 10 Hz, 2H, 2CH), 4.65 (Bs, 2H, 20H), 4.80 (bs, 4H, 2NH2), 5.19 (s, 2H, 2CH), 5.83 (t, J = 15 Hz, 2H, 2CH=), 5.89 (d, J = 10 Hz, 2H, 2CH=), 6.58 (t, J = 15 Hz, 2H, 2CH=), 6.94 (d, J = 10 Hz, 2H, 2CH=), 7.17 (m, 2H, 2NH ), 7.24 (s, 2H, 2CH=), 9.20 (s, 2H, 2N-H);MS (m/z) 1189 (M+H)。
【0097】
対応するHCl塩を以下の方法により製造した:EtOH (5ml, 0.12 3N)中のHCl溶液を、室温でTHF (15ml)およびEtOH (50ml)中の化合物237 (1g、上記で製造)の溶液に加えた。反応混合物を10分間撹拌した。該塩を沈殿させ、ろ過し、大量のEtOHで洗浄し、次いで真空乾燥した。あるいはまた、「メシレート」塩を、HClの代わりにメタンスルホン酸を用いて形成させることができる。
実施例5:化合物914の製造
【0098】
10mLのジオキサン中のゲルダナマイシン (500mg, 0.89mmol)に室温で二酸化セレニウム(IV) (198mg, 1.78 mmo1)を加えた。反応混合物を100℃に加熱し、3時間撹拌した。室温に冷却し、次いで溶液を酢酸エチルで希釈し、水およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、次いで真空乾燥した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)後に純粋な最終黄色生成物を得た;収率:75%;1H NMR (CDCl3) δ 0.97(d, J=7.OHz, 3H, CH3), 1.01(d, J=7.OHz, 3H, CH3), 1.75(m, 3H, CH2+CH), 2.04(s, 3H, CH3), 2.41(d, J=9.9Hz, 1H, CH2), 2.53(t, J=9.9Hz, 1H, CH2), 2.95(m, 1H, CH), 3.30(m, 2H, CH+OH), 3.34(s, 6H, 2CH3), 3.55(m, 1H, CH), 4.09(m, 1H, CH2), 4.15(s, 3H, CH3), 4.25(m, 1H, CH2), 4.41(d, J=9.8Hz, 1H, CH), 4.80(bs, 2H, CONH2), 5.32(s, 1H, CH), 5.88(t, J=10.4Hz, 1H, CH=), 6.04(d, J=9.7Hz, 1H, CH=), 6.65(t, J=11.5Hz, 1H, CH=), 6.95(d, J=11.5Hz, 1H, CH=), 7.32(s, 1H, CH-Ar), 8.69(s, 1H, NH);MS (m/z) 575.6 (M -1)。
実施例6:化合物967の製造
【0099】
3mLのTHF中の化合物914 (50mg, 0.05mmol)に、アリルアミン(3.5mg, 0.06mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を回転蒸発により除去した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)後に純粋な紫色生成物を得た;収率:90%;1H NMR (CDC13) δ 0.89(d, J=6.6Hz, 3H, CH3), 1.03 (d, J=6.9Hz, 3H, CH3), 1.78(m, 1H, CH), 1.82(m, 2H, CH2), 2.04 (s, 3H, CH3), 2.37(dd, J=13.7Hz, 1H, CH2), 2.65(d, J=13.7Hz, 1H, CH2), 2.90(m, 1H, CH), 3.33(s, 3H, CH3), 3.34(s, 3H, CH3), 3.45(m, 2H, CH+OH), 3.58(m, 1H, CH), 4.14(m, 3H, CH2+CH2), 4.16(m, 1H, CH2), 4.42(s, 1H, OH), 4.43(d, J=1OHz, 1H, CH), 4.75(bs, 2H, CONH2), 5.33(m, 2H, CH2=), 5.35(s, I H, CH), 5.91(m, 2H, CH=+CH=), 6.09(d, J=9.9Hz, 1H, CH=), 6.46(t, J=5.8Hz, 1H, NH), 6.66(t, J=11.6Hz, 1H, CH=), 6.97(d, J=11.6Hz, 1H, CH=), 7.30(s, 1H, CH), 9.15(s, 1H, NH)。
実施例7:化合物956の製造
【0100】
化合物956を、アリルアミンのかわりにアゼチジンを用いる以外は化合物967について記載したのと同じ方法で製造した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)後に純粋な最終紫色生成物を得た;収率:89%;1H NMR (CDCl3) δ 0.99 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 1.04 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 1.77 (m, 1H, CH), 1.80 (m, 2H, CH2), 2.06 (s, 3H, CH3), 2.26 (m, 1H, CH2), 2.50(m, 2H, CH2), 2.67 (d, 1H, CH2), 2.90 (m, 1H, CH), 3.34 (s, 3H, CH3), 3.36 (s, 3H, CH3), 3.48 (m, 2H, OH+CH), 3.60 (t, J = 6.8Hz, 1H, CH), 4.11 (dd, J=12Hz, J=4.5Hz, 1H, CH2), 4.30 (dd, J=12Hz, J=4.5Hz, 1H, CH2), 4.45 (d, J = 10.0Hz, 1H, CH), 4.72 (m, 5H, 2CH2+OH), 4.78 (bs, 2H, NH2), 5.37 (s, 1H, CH), 5.89 (t, J = 10.5Hz, 1 H, CH=), 6.10 (d, J = 10 Hz, 1 H, CH=), 6.66 (t, J = 12Hz, 1 H, CH=), 7.00 (d, J = 12Hz, 1H, CH=), 7.17 (s, 1H, CH=), 9.20 (s, 1H, CONH);MS(m/z) 602 (M+1)。
実施例8:化合物529の製造
【0101】
EtOAc中の17-アミノゲルダナマイシン (1mmol)の溶液を室温でNa2S2O4 (0.1M、300ml)で処理した。2時間後、水性層をEtOAcで2回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮して、18,21-ジヒドロ-l7-アミノゲルダナマイシンを黄色固体として得た。この固体を無水THFに溶解し、カニューレで塩化ピコリノイル(1.1mmol)およびMS4A (1.2 g)の混合物に移した。2時間後、EtN(i-Pr)2 (2.5mmol)をさらに反応混合物に加えた。一夜撹拌した後、反応混合物をろ過し、次いで減圧濃縮した。次に、水を残渣に加え、これをEtOAcで3回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィで精製して17-ピコリノイル-アミノゲルダナマイシン、化合物529を黄色固体として得た。Rf = 0.52(80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中)。 m.p. = 195-197℃. 1H NMR (CDCl3) δ 0.91 (d, 3H), 0.96 (d, 3H), 1.71-1.73 (m, 2H), 1.75-1.79 (m, 4H), 2.04 (s, 3H), 2.70-2.72 (m, 2H), 2.74-2.80 (m, 1H), 3.33-3.35 (m, 7H), 3.46-3.49 (m, 1H), 4.33 (d, 1H), 5.18 (s, 1H), 5.77 (d, 1H), 5.91 (t, 1H), 6.57 (t, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.51-7.56 (m, 2H), 7.91 (dt, 1H), 8.23 (d, 1H), 8.69-8.70 (m, 1H), 8.75(s, 1H), 10.51 (s, 1 H)。
実施例9:化合物1046の製造
【0102】
化合物1046を、塩化ピコリノイルの代わりに4-クロロメチル-ベンゾイルクロリドを用い、化合物529について記載の方法に従って製造した。(3.1g、81%)。
Rf = 0.45(80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中)。 1H NMR CDCl3 δ 0.89 (d, 3H), 0.93 (d, 3H), 1.70 (br s, 2H), 1.79 (br s, 4H), 2.04 (s, 3H), 2.52-2.58 (m, 2H), 2.62-2.63 (m, 1H), 2.76-2.79 (m, I H), 3.33 (br s, 7H), 3.43-3.45 (m, 1H), 4.33 (d, 1H), 4.64 (s, 2H), 5.17 (s, 1H), 5.76 (d, 1H), 5.92 (t, 1H), 6.57 (t, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.49 (s, 1H), 7.55 (d, 2H), 7.91 (d, 2H), 8.46 (s, 1H), 8.77 (s, 1H)。
実施例10:化合物1059の製造
【0103】
THF (5ml)中の化合物1046 (0.14g、0.2mmol)の溶液に、ヨウ化ナトリウム (30mg、0.2mmol)およびモルホリン(35μL、0.4mmol)を加えた。得られる混合物を10時間加熱還流し、次いで室温に冷却し、減圧濃縮した。残渣を、EtOAc (30ml)に再溶解し、水(10ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、再度濃縮した。次に、残渣をEtOH (10ml)で再結晶させ、化合物1059を黄色固体として得た(100mg, 66%)。Rf= 0.10(80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中)。 1H NMR CDCl3 δ 0.93 (s, 3H), 0.95 (d, 3H), 1.70 (br s, 2H), 1.78 (br s, 4H), 2.03 (s, 3H), 2.48 (br s, 4H), 2.55-2.62 (m, 3H), 2.74-2.79 (m, 1H), 3.32 (br s, 7H), 3.45 (m, 1H), 3.59 (s, 2H), 3.72-3.74 (m, 4H), 4.32 (d, 1H), 5.15 (s, 1H), 5.76 (d, 1H), 5.91 (t, 1H), 6.56 (t, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.87 (d, 2H), 8.47 (s, 1H), 8.77 (s, 1H)。
実施例11:化合物1236の製造
【0104】
化合物1236を、モルホリンの代わりにベンジルエチルアミンを用い、化合物1059について記載した方法に従って製造した。
Rf = 0.43(80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中)。 1H NMR CDCl3 δ 0.925 (s, 3H), 0.95 (d, 3H), 1.09 (t, 3H), 1.70 (br s, 2H), 1.79 (br s, 4H), 2.04 (s, 3H), 2.50-2.62 (m, 5H), 2.75-2.79 (m, 1H), 3.32 (br s, 7H), 3.46 (m, 1H), 3.59 (s, 2H), 3.63 (s, 2H), 4.33 (d, 1H), 5.16 (s, 1H), 5.78 (d, 1H), 5.91 (t, 1H), 6.57 (t, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.25-7.27 (m, 1H), 7.32-7.38 (m, 4H), 7.48 (s, 1H), 7.53 (d, 2H), 7.85 (d, 2H), 8.47 (s, 1H), 8.77 (s, 1H)。
実施例12:化合物563: 17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシンの製造
【0105】
EtOAc中の17-アミノゲルダナマイシン (1mmol)の溶液を室温でNa2S2O4 (0.1M、300ml)で処理した。2時間後、水性層をEtOAcで2回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して18,21-ジヒドロ-17アミノゲルダナマイシンを黄色固体として得た。この固体を無水THFに溶解し、カニューレで塩化ベンゾイル(1.1mmol)およびMS4A (1.2 g)の混合物に移した。2時間後、EtN(i-Pr)2 (2.5mmol)をさらに反応混合物に加えた。一夜撹拌した後、反応混合物をろ過し、減圧濃縮した。次に水を残渣に加え、これをEtOAcで3回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィで精製して17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシンを得た。Rf = 0.50(80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中)。m.p. = 218-220℃. 1H NMR (CDCl3) 0.94 (t, 6H), 1.70 (br s, 2H), 1.79 (br s, 4H), 2.03 (s, 3H), 2.56 (dd, 1H), 2.64 (dd, IH), 2.76-2.79 (m, IH), 3.33 (br s, 7H), 3.44-3.46 (m, 1H), 4.325 (d, IH), 5.16 (s, 1H), 5.77 (d, 1H), 5.91 (t, 1H), 6.57 (t, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.52 (t, 2H), 7.62 (t, 1H), 7.91 (d, 2H), 8.47 (s, 1H), 8.77 (s, 1H)。
実施例13:特定の製剤の態様
【0106】
1〜20% (w/v) リン脂質-界面活性剤/水性溶液を注射用無菌水で調製した。リン脂質/水性溶液をホモゲナイズし、次の微細流動化のためのより均質な分散物を得た。次に、界面活性剤分散物を、Model 11OS 微細流動化装置 (Microfluidics Inc., Newton, MA, USA)(約110 psiの定圧で操作 (60〜95 psiの圧で操作))を通過させて微細流動化した。薬剤を、1:1〜1:20 (薬剤:リン脂質溶液)の範囲のモル比でリン脂質/水性溶液(1〜20mg/mL)に溶解した。用いる薬剤は、化合物237、化合物956および化合物1236、およびその医薬的に許容される塩およびプロドラッグであった。ショ糖、マンニトール、および/またはブドウ糖を110% w/vの範囲で加え、次いでpHを、希塩酸および10mM酢酸ナトリウム3水和物、ホスフェート、または等価な緩衝剤を用いて約5〜8に調製した。薬剤:リン脂質複合体の平均粒子サイズは約20〜150nmであった(レーザー光散乱技術により測定)。分散物を、0.45ミクロンGelmanミニカプセルフィルター(Pall Corp., East Hills, NY, USA)に通し、次いで滅菌0.2ミクロンSartorius Sartobran Pカプセルフィルター(500cm2) (Sartorius AG, Goettingen, Germany)に通した。60 PSi以下の圧を用いてスムーズで連続的な流れを維持した。これら態様のパラメータ内で製造される特定の製剤には以下のものが含まれる:
〜2-8mg/mL薬剤(薬剤:リン脂質モル比は1:8〜1:20)、10%ショ糖を有する6.2% リン脂質-界面活性剤 (Phospholipon 90) 分散物溶液(10mM酢酸ナトリウム3水和物緩衝液および/または希水酸化ナトリウムを用いてpH5または7に緩衝した)、
〜2mg/mL薬剤(モル比は1:10 薬剤:リン脂質)および1%マンニトール、5%ブドウ糖を有する1.2% リン脂質-界面活性剤 (Phospholipon 90) 分散物溶液(10mM酢酸ナトリウム3水和物緩衝液および希水酸化ナトリウムを用いてpH5に緩衝した)、
1:5〜1:20のモル比でTWEEN(登録商標)80界面活性剤に溶解した薬剤の2〜4mg/mL溶液(10mMリン酸緩衝液でpH7.0または7.2に調整した)、
薬剤:Poloxomerのモル比が1:5 (最終薬剤濃度:〜4mg/mL)のPoloxamer 188の13.2% w/v溶液を製造した(10mMリン酸緩衝液でpH7に緩衝した)。
実施例14:17-AAG水性リン脂質分散物の製造
【0107】
17-AAGを1% (w/w)水性リン脂質分散物として製剤化した。L-ヒスチジンおよびショ糖を水に溶解した。リン脂質を加え、高剪断ミキサーを用い、約3500 rpmで5分間、リン脂質を分散させた。17-AAGをリン脂質分散物に加え、高剪断ミキサーで混合して、17-AAGを該リン脂質に混合/分散した。生成物を高剪断ミキサーから取り出し、次いで徐々に混合(渦巻き撹拌でない)してほとんどの同伴空気を逃がした。次に、エタノールとTWEEN(登録商標)80の50/50 (w/w)混合物0.7gを撹拌17-AAG分散物に加え、次いで1時間混合して、さらに同伴空気を逃がした。17-AAG分散物を16〜19,000 psiで微細流動化し、分散物の粒子サイズを約5μm〜0.1-0.5μm(平均粒子サイズ)に減じた。製剤組成は以下の通りである。

実施例15:凍結乾燥
【0108】
用いることができる典型的凍結乾燥スキームは下記表に記載のものを含む。
【表3】

実施例16:静脈内注射および耐容性
【0109】
低水溶性アンサマイシンの水溶性塩(例えば化合物237-メシレート)は、水性溶液に製剤化すると静脈内注入でラット尾静脈に刺激性であることがわかった。上記化合物237-メシレートの分散製剤は、該溶液製剤と同じ用量および同じ注入間隔で投与したとき静脈刺激の証拠を示さなかった。該溶液剤と分散製剤の薬物動態は非常に似ていた。本発明の方法を用いて化合物237の塩酸塩およびリン酸塩を含む分散製剤も製造した。これら製剤は、化合物237の水性溶液より耐容性も遙かによかった。分散製剤は、ゲルダナマイシンの水溶性およびわずかに水溶性の誘導体を用いても製造した。具体的には、DMAGを含む同様の分散物を同様に製剤化し、マウスおよびラットに尾静脈注射すると良好な耐容性を示した。
* * *
【0110】
前記実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明の種々の態様の単なる例示である。本発明の範囲および精神から離れることなく本発明に種々の置換および修飾をなしてよいことは当業者に容易に明らかであろう。すなわち、そのようなさらなる態様は、本発明および下記特許請求の範囲の範囲内である。本明細書に記載の試薬は、例えばSigma-Aldrichから市販されているか、または当業者に知られ、および/または本明細書の一部を構成する刊行物に記載の常套的方法を用いて過度な実験を行うことなく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】7.40、6.08、および11.84の2シータ角のピークを示す高融点形の17-AAGの粉体X線回折パターンを示す。
【図2】5.85、4.35、および7.90の2シータ角のピークを示す低融点形の17-AAGの粉体X線回折パターンを示す。
【図3】高融点形の17-AAGの示差走査熱量測定法(DSC)によるスキャンを示す。
【図4】低融点形の17-AAGのDSCスキャンを示す。
【図5】エタノール中の低融点および高融点17-AAG対時間(min)の固有の溶解速度(mg/cm2)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、その医薬的に許容される塩またはプロドラッグを含む水性分散性粒子、および
医薬的に許容されるリン脂質(該リン脂質は該製剤の少なくとも5%w/wの濃度で存在する)
を含む、中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まない医薬製剤。
【請求項2】
該中および長鎖トリグリセリドが約1%w/vまたはそれ以下の混合濃度で存在する請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
該アンサマイシンが
【化1】

からなる群から選ばれる請求項1記載の医薬製剤。
【請求項4】
該アンサマイシンが17-AAGである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項5】
該17-AAGが、高融点17-AAG、低融点17-AAG、非晶質形の17-AAGまたはそのあらゆる組み合わせである請求項4記載の医薬製剤。
【請求項6】
該アンサマイシンが、DSC融点175℃以下、および5.85度、4.35度、および7.90度の2シータ角に位置するピークを含む粉体X線回折パターンを特徴とする低融点形の17-AAGを含む請求項1記載の医薬製剤。
【請求項7】
該アンサマイシンが、DSC融点約156℃、および5.85度、4.35度、および7.90度の2シータ角に位置するピークを含む粉体X線回折パターンを特徴とする低融点多形体の17-AAGを含む請求項1記載の医薬製剤。
【請求項8】
該アンサマイシンが、DSC融点約172℃を特徴とする低融点多形体の17-AAGである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項9】
該アンサマイシンが、17-AAGの医薬的に許容される塩酸塩またはリン酸塩である請求項1記載の医薬製剤。
【請求項10】
該製剤中の該アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度が少なくとも0.5mg/mLである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項11】
該製剤中の該アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度が少なくとも5.0mg/mLである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項12】
該製剤中の該アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度が少なくとも50mg/mLである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項13】
該分散性粒子が粒子サイズを減じるように処理されており、該処理が、超音波処理、高剪断乳化、微細流動化、制御されたポアサイズのフィルターを通した押し出し、またはそのあらゆる組み合わせを含む請求項1記載の医薬製剤。
【請求項14】
該水性分散性粒子の粒子サイズが約100nm〜約200nmである請求項1記載の医薬製剤。
【請求項15】
該水性分散性粒子の粒子サイズが約200nmまたはそれ以下である請求項1記載の医薬製剤。
【請求項16】
該水性分散性粒子がコロイド状である請求項1記載の医薬製剤。
【請求項17】
該リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、Phospholipon 90Gまたはそのあらゆる組み合わせを含む請求項1記載の医薬製剤。
【請求項18】
さらに1またはそれ以上の賦形剤を含む請求項1記載の医薬製剤。
【請求項19】
該1またはそれ以上の賦形剤が、抗凍結剤、等張性修飾剤、充填剤またはそのあらゆる組み合わせを含む請求項18記載の医薬製剤。
【請求項20】
哺乳動物に医薬的有効量の請求項1記載の医薬製剤を投与することを含む哺乳動物の障害を治療または予防する方法。
【請求項21】
該障害が、虚血、増殖性障害、感染症、後天性免疫不全症候群、神経学的障害、腫瘍、白血病、慢性リンパ性白血病、新生物、癌、カルチノーマまたは他の悪性疾患を含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
該増殖性障害が、腫瘍、炎症性疾患、真菌感染症、酵母感染症、およびウイルス感染症からなる群から選ばれる請求項21記載の方法。
【請求項23】
該製剤中の該アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度が約1%〜約1.5% (w/w)である請求項20記載の方法。
【請求項24】
該製剤中の該アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグの濃度が約0.5mg/ml〜約50mg/mlである請求項20記載の方法。
【請求項25】
該アンサマイシンが
【化2】

からなる群から選ばれる請求項20記載の方法。
【請求項26】
該アンサマイシンが17-AAGである請求項20記載の方法。
【請求項27】
該17-AAGが、高融点17-AAG、低融点17-AAG、非晶質形の17-AAGまたはそのあらゆる組み合わせである請求項26記載の方法。
【請求項28】
該17-AAGが低融点形の17-AAGを含む請求項26記載の方法。
【請求項29】
医薬の製造における請求項1記載の医薬製剤の使用。
【請求項30】
該医薬が、HSP90介在疾患の治療的または予防的処置のためのものである請求項29記載の使用。
【請求項31】
(a) アンサマイシン、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変異性体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、またはプロドラッグ、ならびに医薬的に許容されるリン脂質を含む分散粒子を形成し、
(b) 所望により該分散粒子のサイズを減じ、
(c) 所望により工程(a)または(b)の生成物を凍結し、
(d) 所望により工程(c)の生成物を解凍し、
(e) 所望により工程(a)-(d)のあらゆる生成物を凍結乾燥し、
(f) 所望により工程(e)の生成物を再水和する、
ことを含む、中および長鎖トリグリセリドを実質的に含まない医薬製剤の製造方法。
【請求項32】
該中および長鎖トリグリセリドが約1%w/vまたはそれ以下の混合濃度で存在する請求項31記載の方法。
【請求項33】
該アンサマイシンが、
【化3】

からなる群から選ばれる請求項31記載の方法。
【請求項34】
該アンサマイシンが17-AAGである請求項31記載の方法。
【請求項35】
該17-AAGが、高融点17-AAG、低融点17-AAG、非晶質形の17-AAGまたはそのあらゆる組み合わせであるである請求項34記載の方法。
【請求項36】
該アンサマイシンが低融点形の17-AAGを含む請求項31記載の方法。
【請求項37】
該リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、Phospholipon 90Gまたはそのあらゆる組み合わせを含む請求項31記載の方法。
【請求項38】
該リン脂質がPhospholipon 90Gを含む請求項31記載の方法。
【請求項39】
該削減工程が存在し、超音波処理、高剪断乳化、微細流動化、制御されたポアサイズのフィルターを通した押し出しまたはそのあらゆる組み合わせを含む請求項31記載の方法。
【請求項40】
該分散粒子の粒子サイズが約200nmまたはそれ以下である請求項31記載の方法。
【請求項41】
該製剤がコロイド分散物である請求項31記載の方法。
【請求項42】
該製剤が、さらに1またはそれ以上の賦形剤を含む請求項31記載の方法。
【請求項43】
該1またはそれ以上の賦形剤が、抗凍結剤、等張性修飾剤、充填剤またはそのあらゆる組み合わせを含む請求項42記載の方法。
【請求項44】
哺乳動物に医薬的有効量の請求項31記載の方法により製造した医薬製剤を投与することを含む、哺乳動物における障害の治療または予防方法。
【請求項45】
該アンサマイシンが、
【化4】

からなる群から選ばれる請求項44記載の方法。
【請求項46】
該アンサマイシンが17-AAGである請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−535844(P2008−535844A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505529(P2008−505529)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/012871
【国際公開番号】WO2006/110473
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504172359)コンフォーマ・セラピューティクス・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】CONFORMA THERAPEUTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】