説明

リーダライタ装置

【課題】ICタグとの通信において、通信ができなかったときにあらためてリーダライタ装置の出力を上げる場合、再度通信処理が必要になり、処理遅延が発生する。また、常に最大出力で電波を発射していると電波干渉を誘引する。
【解決手段】ICタグの処理内容に応じ、大きな電力を必要とするコマンドを実行するときは、出力が自動的に最大になることを特徴とするリーダライタ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグと無線通信を行うリーダライタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、電磁波等によってリーダライタ装置とデータを送受信する。通信可否を決定する主要因は、ICタグが動作するだけの電力をリーダライタ装置から獲得できるかであり、一般的にICタグの動作電力は、動作する内容が書込み動作であった場合、読取り動作に比べて大きな動作電力が必要になる。確実な通信をするためにリーダライタ装置の発射する電力を調整することが多い。
しかしながら、リーダライタ装置の発射する電力が増大すると、電波干渉という弊害が生じるため、さまざまな発射電力の調整が行われている。発射電力は上位制御機器からの制御命令にて行われるのが一般的であるが、リーダライタ装置が自動的に調整する方法も検討されている。例えば、リーダライタの発射電力を最小レベルから通信可能となるまで、逐次、上げていく方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
またICタグは、電力不足の状態では何も応答がないためリーダライタ装置からはICタグの有無を検知できないため、別のセンサにて対象の有無を検知する機能を有し、対象を検知しているにもかかわらずICタグと通信ができていない場合は、リーダライタの電力を上げるという方法がある(特許文献2参照)。
【0004】
さらに上記の方法では、繰り返し処理を行うことにより、不要な時間、電力を必要とすることから、予め距離と必要とされる電力をパラメータテーブル化しておき、その距離から適正電力を選択する方法がある。(特許文献3参照)
また、不正盗聴を防止する等の目的で、リーダライタ装置からの命令により通信距離を制限することができる機能を有しているICタグが存在する(特許文献4参照)。このICタグが通信距離制限されている状態では、遠距離からの通信を制限するために一定以上の電力が供給されないとICタグが動作しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−197781号公報
【特許文献2】特開2007−264910号公報
【特許文献3】特開2005−328452号公報
【特許文献4】特開2006−268359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2で示される公知技術では、通信ができなかったときにあらためてリーダライタ装置の出力を上げることで通信を可能としているため、通信が成功するまでに複数回の試行が必要になり、通信が成功するまでの時間が長くなる。特にICタグの消費電力が大きくなる書込み動作についてはその傾向は顕著である。
【0007】
特許文献3で示される公知技術は、距離と電力を一意に規定している。しかしながらICタグが必要とする動作電力は、動作内容により異なるため、一般的に使われる回数が多い読取り動作をもとに距離と電力の関係が設定されていると、書込み動作では電力不足が発生してしまう。また、書込み動作をもとに距離と電力の関係が設定されていると、読取り動作では、本来必要な電力以上の過大な電力で電波を発射するため電波干渉を誘引する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明はICタグへの動作内容により、出力を変更する。つまり、書込み動作を行う場合に、設定されている出力電力設定にかかわらず、自動的に最大出力にて電波を発射する。これにより、適正な出力電力値を得るまでの複数回の試行を不要とし、読取り動作においては、不要に大きな電力で電波を発射することを回避できる。
【0009】
また、通信距離制限されている場合においても、ICタグへの動作内容として、通信距離制限を解除する命令を発行するとき、および通信距離制限が設定されているかどうかを確認する命令を発行するときは、設定されている出力電力設定にかかわらず、自動的に最大出力にて電波を発射する。前記通信距離制限が設定されているかどうかを確認する命令を実行した結果、ICタグが通信距離制限設定されていた場合は、設定されている出力電力設定にかかわらず、自動的に最大出力にて電波を発射する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリーダライタ装置は、ICタグへの書込み処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例におけるシステム構成図である。
【図2】本実施例におけるデータ構成図である。
【図3】本実施例装置の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例におけるシステム構成図である。101は制御機器、102はリーダライタ装置、103はICタグである。リーダライタ装置には、制御機器からコマンドを受信する受信部と、出力電力値、タグ種別情報及び基本情報を格納する記憶部と、受信したコマンドから、そのコマンドに対応する出力電力値を抽出するリーダライタ制御部と、そのコマンドに対応する出力値でコマンドの電波を発射する発射部とを備えている。
【0014】
図2は、本実施例におけるデータ構成図である。リーダライタ装置102には、出力電力値、タグ種別情報、および基本情報が格納されており、ICタグ103には、タグ状態情報、タグID情報、タグユーザ情報が格納されている。出力電力値は、リーダライタ装置102が発射する電波の電力を決定する情報である。タグ種別情報は、リーダライタ装置102と通信するICタグが、通信距離を制限することができる機能を有しているか、否かの情報である。基本情報は、リーダライタ装置102のファームウェアバージョンや使用するチャンネルの情報などである。タグ状態情報は、通信距離を制限することができる機能を有しているICタグであった場合、通信距離制限されているか否かを示す情報である。ICタグが通信距離を制限することができる機能を有していない場合は、本情報は存在しない。タグID情報は、ID(個体識別)情報であり、タグユーザ情報は、ユーザが任意の情報を読み書きするものであり、トレーサビリティシステムなどで利用される。
【0015】
リーダライタ装置102は、制御機器101からのコマンドを受け動作する。前記コマンドは、リーダライタ装置102の出力電力値、タグ種別情報、および基本情報を読み書きするコマンドや、ICタグ103のタグID情報やタグユーザ情報を読み書きするコマンド、タグ状態情報を読取りしたり、状態を変更したりするコマンドから成る。
【0016】
図3は、本実施例の装置の制御フロー図である。以下、本制御フローに従い、本実施例の装置の動作を説明する。
リーダライタ装置102には初期設定として、制御機器101から出力電力値、タグ種別情報が既に設定されている。トレーサビリティシステムは、タグID情報、タグユーザ情報を読取りすることで実現されるので、制御機器101からリーダライタ装置102に発行されるコマンドの多くは、ICタグ103のタグID情報、タグユーザ情報の読取りである。そこで前記、情報の読取りコマンドに適した出力電力値が、初期設定として設定されている。ここでは中が設定されているとする。タグ種別情報は、リーダライタ装置102が組み込まれているシステムで使用するICタグが通信距離を制限することができる機能を有しているかを設定する。
【0017】
リーダライタ装置102のリーダライタ制御部は、制御機器101からのコマンドを受ける(S201)と、まずタグ種別判定(ステップS202)により、設定されていたタグ種別情報が、通信距離制限機能を有しているのか否かで処理が分かれる。
【0018】
ICタグ103が通信距離制限機能を有していない場合、コマンド判定1(ステップS203)により実行する動作が、ICタグ103への書込みコマンドか、読取りコマンドかを判定する。読取りコマンドであった場合、設定されている出力電力値で電波を発射(S204)してICタグ103と通信(S205)する。書込みコマンドであった場合は、出力電力値を最大に変更(ステップS206)してから、電波を発射(ステップS204)し、ICタグ103と通信(ステップS205)する。
【0019】
ICタグ103が通信距離制限機能を有している場合、コマンド判定2(ステップS207)で実行しようとしているコマンドが通信距離制限解除のコマンドか否かを判別する。通信距離制限解除のコマンドであった場合、出力電力値を最大に変更(ステップS206)してから電波を発射(ステップS204)し、ICタグ103と通信(ステップS205)する。通信距離制限解除以外のコマンドであった場合、タグ状態判定1(ステップS208)でICタグ103が通信距離制限されている状態か否かが判明しているか判定する。判明していない場合は、出力電力値を最大に変更(ステップS206)してから、電波を発射(ステップS204)し、ICタグ103へ通信距離設定状態確認コマンドを発行(ステップS209)する。判明している場合は、タグ状態判定2(ステップS210)でICタグ103が通信距離制限されているか否かを判定し、通信距離制限されている場合は、出力電力値を最大に変更(ステップS206)してから電波を発射(ステップS204)し、ICタグ103と通信(ステップS205)する。通信距離制限されていない場合は、コマンド判定1(ステップS203)にて、実行するコマンドが、ICタグ103への書込みコマンドか、読取りコマンドかを判定し、以降、ICタグ103が通信距離制限機能を有していない場合と同様の処理を行う。
【0020】
以上により、リーダライタ装置102は、ICタグ103への動作内容、つまり制御機器101からのコマンドにより、ICタグ103が大きな電力を必要としているときを迅速に判定し、そのときのみ、大きな電力の電波を発射することが可能となる。
【0021】
なお、本実施例では、通信距離を制限されたICタグに対して自動的に最大出力で電波を発射する、という処理を実施しているが、ICタグに具備されている通信距離制限機能は、通常、電波法で認可された最大出力においても不正盗聴を防止できるレベルに設定されている、逆に言うとある程度の電力がICタグに供給されなければICタグが動作できない前提で設計されているため、自動的に最大出力で電波を発射するということは、ICタグとの通信を適切に行えるようになり、かつ不正盗聴防止機能は確保されることを意味する。
【0022】
本実施例により、ICタグへの書込み処理を迅速に行うことができる。そのため、読み書きが混在して行われるデータキャリー型のICタグシステムなどで有効である。また、ICタグがリーダライタ装置からの命令により通信距離を制限することができる機能を有しているときでも、必要な処理は、迅速に実施できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ICタグへの書込み処理、およびICタグが通信距離制限機能を有している場合の通信に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
101 制御機器
102 リーダライタ装置
103 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグと無線通信を行うリーダライタ装置において、
前記ICタグへのコマンド情報毎に対応する出力電力値を格納する記憶部と、
前記ICタグへの前記コマンド情報を受信する受信部と、
前記受信したコマンド情報に対応する出力電力値を前記記憶部から抽出する制御部と、
前記抽出した出力電力値で電波を発射する発射部と、
を有することを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリーダライタ装置において、
前記ICタグが通信距離を制限することができる機能を有しているときは、通信距離制限解除の命令の電波を最大出力で発射することを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリーダライタ装置において、
前記ICタグが通信距離を制限することができる機能を有しているときは、通信距離の制限状態を確認するコマンドの電波を最大出力で発射することを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のリーダライタ装置において、
前記通信距離制限状態を確認する命令の通信を最初に行うことを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項5】
請求項2乃至4に記載のリーダライタ装置において、
前記ICタグが、通信距離の制限がされているときは、最大出力でコマンドの電波を発射することを特徴とするリーダライタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−262489(P2010−262489A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113147(P2009−113147)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】