説明

リーチ型フォークリフト

【課題】フォークがガイドレールに引っ掛かることなくスムーズに作業可能にする。
【解決手段】一対のフォーク7と、各フォーク7を車体の前後方向に進退するためのキャリッジと、車体の前後方向に延設された一対のリーチレグ3と、各リーチレグ3の内側に沿って設けられ、キャリッジに設けられたガイドローラを案内するためのガイドレール30とを備え、リーチレグ3は、その前端部にロードホイールカバー8を備え、ロードホイールカバー8は、傾斜部80を備え、傾斜部80は、フォーク7がガイドレール30に引っ掛からないように導くための傾斜面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のフォークを前後方向に進退し上下方向に昇降するリーチ型フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
リーチ型フォークリフトは、一対のフォークで荷役するための荷役車両である(例えば、特許文献1参照)。図3の通り、リーチ型フォークリフトは、車体2に、前側に延出された左右のリーチレグ3を備える。リーチレグ3の前部には、前輪20が設けられる。リーチ型フォークリフトは、左右のリーチレグ3に沿って前後に進退可能なキャリッジ4を備える。
【0003】
キャリッジ4には、マスト5が上下方向に立設される。リーチ型フォークリフトは、マスト5に沿って昇降案内されるリフトブラケット6を備える。リフトブラケット6には左右一対のフォーク7が支持されており、マスト5に沿ってリフトブラケット6と共にフォーク7が昇降する。
【0004】
リーチ型フォークリフトは、左右のリーチレグ3の内側に沿って設けられたレールガイド30を備える。キャリッジ4は、左右にガイドローラ40を備え、ガイドローラ40がガイドレール30で案内されて、キャリッジ4が前後方向に移動する。
【0005】
図3及び図4の通り、リーチ型フォークリフトは、リーチレグ3の前端部に、前輪20を保護するためのロードホイールカバー8を備える。図4(a)はロードホイールカバー8の斜視図、図4(b)はロードホイールカバー8を上から見た平面図、図4(c)はロードホイールカバー8を前から見た正面図である。図4(a)の通り、ガイドレール30は、上側に設けられた上部レール31と、下側に設けられた下部レール32とを備える。上部レール31と下部レール32とは、上下に対向して設けられる。キャリッジ4のガイドローラ40は、上部レール31と下部レール32との間に配置されて案内される。
【0006】
ガイドレール30は、各リーチレグ3の側面に沿って設けられ、車体2の内側に向かって突出する。また、フォーク7は、車体2の左右方向に移動して位置調整できる。フォーク7は、キャリッジ4及びマスト5の進退移動に伴って左右のリーチレグ3のガイドレール30の内側で進退移動するようになっているので、この進退移動の際に、ガイドレール30に衝突しないようになっている。そのため、従来のロードホイールカバー8は、前輪20を保護するためにリーチレグ3の前端部3aのみを覆って保護しており、上部レール31の前端部31a及び下部レール32の前端部32aを覆わないようになっている。
【0007】
しかし、フォークを横方向に移動できるサイドシフトアタッチメントを使用してフォークを左右にスライドさせた場合や、繰り返しの荷役作業によってフォークのガタつきが大きくなった場合、或いはフォークの製作誤差による寸法のバラつき等によって、フォーク7が、左右のストラドアーム3のガイドレール30よりも外側に移動することがある。これにより、図4(b)の通り、フォーク7がガイドレール30の前方に配置されて、その状態でフォーク7が後方移動すると、ガイドレール30の前端部31a,32aに衝突する。また、図4(c)の通り、フォーク7がガイドレール30の上方に位置した状態から下降させてしまうと、フォーク7が上部レール31に衝突する。このように、フォーク7がガイドレール30に引っ掛かってスムーズに作業できないことがある。
【0008】
また、図4(a)の通り、ロードホイールカバー8は、ガイドローラ40がガイドレール30から抜け出ないようにするためのボルト部9を備える。ボルト部9は、上部レール31及び下部レール32の間に配置されて、車体2の左右方向(水平方向)に延設され、車体2の内側に向けて突出する。そして、ガイドローラ40がボルト部9に当たることで、ガイドレール30から抜け出ないようになっている。そのため、フォーク7がボルト部9の上方に配置されて降下すると、ボルト部9がせん断破壊されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−252597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、フォークがガイドレールに引っ掛かることなくスムーズに作業できるリーチ型フォークリフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るリーチ型フォークリフトは、
一対のフォークと、各フォークを車体の上下方向に昇降するためのリフトブラケットと、車体の上下方向に延設され、リフトブラケットの昇降を案内するための一対のマストと、各フォークを車体の前後方向に進退するためのキャリッジと、車体の前後方向に延設された一対のリーチレグと、各リーチレグの内側に沿って設けられ、キャリッジに設けられたガイドローラを案内するためのガイドレールとを備えたリーチ型フォークリフトにおいて、
リーチレグは、その前端部にロードホイールカバーを備え、
ロードホイールカバーは、傾斜部を備え、
傾斜部は、フォークがガイドレールに引っ掛からないように車体の内側に導くための傾斜面を有する。
【0012】
好ましくは、ガイドレールは、上側に設けられた上部レールと、下側に設けられた下部レールとを備え、
傾斜部は、上部レールの前方に配置される上傾斜部と、下部レールの前方に配置される下傾斜部とを備え、
上傾斜部は、車体の内側に向けて前後方向に傾斜する前後傾斜面と、車体の内側に向けて上下方向に傾斜する上下傾斜面とを有し、
前後傾斜面と上下傾斜面とは滑らかに接続されている。
【0013】
好ましくは、
ロードホイールカバーは、上傾斜部と下傾斜部との間に形成され、ガイドローラを通すためのコの字状の切欠部を備える。
【0014】
好ましくは、
下傾斜部は、上下方向に延設されたボルト部を有し、
ボルト部は、その頭部が下部レールから突出し、
ガイドローラは、ボルト部に当たってガイドレールから抜け出ない。
【発明の効果】
【0015】
上記の通り、本発明に係るリーチ型フォークリフトは、リーチレグの前端部にロードホイールカバーを備え、さらにロードホイールカバーは傾斜部を備える。そして、傾斜部は、フォークを左右のリーチレグの間の車体の内側に導いて、ガイドレールに引っ掛からないようにするための傾斜面を有する。
【0016】
これにより、フォークがガイドレールの前方に配置されて、その状態で後方に移動しても、フォークが傾斜面に沿って左右のリーチレグ間の内側に案内されるので、ガイドレールに引っ掛かることなくスムーズに作業できる。また、リーチ型フォークリフトの製造時などにおいて、キャリッジのガイドローラをガイドレールに挿入する際、傾斜面に沿ってスムーズに挿入できるので、製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】リーチ型フォークリフトを示す斜視図。
【図2】ロードホイールカバーを説明する図であって、図2(a)は斜視図、図2(b)は平面図、図2(c)は正面図。
【図3】従来のリーチ型フォークリフトを示す斜視図。
【図4】従来のロードホイールカバーを説明する図であって、図4(a)は斜視図、図4(b)は平面図、図4(c)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明に係るリーチ型フォークリフトについて説明する。
【0019】
図1の通り、リーチ型フォークリフトは、車体2に、前側に延出された左右のリーチレグ3を備える。各リーチレグ3は、その前部に前輪20を備える。リーチレグ3は、その前端部を覆うロードホイールカバー8を備える。ロードホイールカバー8は、障害物の衝突によって前輪20が破損しないように保護する。
【0020】
また、リーチ型フォークリフトは、左右のリーチレグ3に沿って前後に進退可能なキャリッジ4を備える。キャリッジ4には、マスト5が上下方向に立設される。リーチ型フォークリフトは、マスト5に沿って昇降案内されるリフトブラケット6を備える。リフトブラケット6には左右一対のフォーク7が支持されており、マスト5に沿ってリフトブラケット6と共にフォーク7が昇降する。
【0021】
そして、車体2とキャリッジ4とにわたってリーチシリンダ(不図示)が設けられ、このリーチシリンダが伸縮動作することで、キャリッジ4の進退がなされる。また、キャリッジ4には、マスト5に沿ってリフトシリンダ(不図示)が立設されており、このリフトシリンダが伸縮動作することで、リフトブラケット6が昇降する。
【0022】
キャリッジ4は、その下部の左右に一対のガイドローラ40を備える。左右のリーチレグ3は、長手方向に沿ってガイドレール30を備える。各ガイドレール30は、キャリッジ4のガイドローラ40を案内する。このため、各ガイドレール30は、リーチレグ3から突出して互いに対向し、車体2の内側に向けて設けられる。
【0023】
リフトブラケット6は、車体2の左右方向に延設されたシフトバー70を備える。一対のフォーク7は、シフトバー70に取り付けられ、シフトバー70に沿って車体2の左右方向に移動できる。これにより、一対のフォーク7は、運搬する荷役の幅に応じて、車体2の左右方向の位置を調整できる。
【0024】
従って、一対のフォーク7は、リーチレグ3及びガイドレール30に衝突したり引っ掛からないように、各ガイドレール30の車体2の内側で進退するように位置調整される。これにより、フォーク7を進退する際、フォーク7は、リーチレグ3及びガイドレール30に引っ掛からないようになっている。
【0025】
図2に基づいて、ロードホイールカバー8について説明する。図2の通り、ガイドレール30は、上側に設けられた上部レール31と、下側に設けられた下部レール32とを備える。上部レール31及び下部レール32は、リーチレグ3の長手方向に沿って延設され、リーチレグ3の側面から車体2の内側に突出する。
【0026】
上記の通り、通常、フォーク7は、ガイドレール30に引っ掛からないように、左右のガイドレール30の内側に配置される。しかし、繰り返し作業等によって、フォーク7の位置が移動して、ガイドレール30の外側に配置されることがある。その際に、フォーク7がガイドレール30に引っ掛からないように、ロードホイールカバー8は、傾斜部80を備える。
【0027】
傾斜部80は、上傾斜部81と下傾斜部82とを備える。上傾斜部81は、上部レール31の前端部31aの前方に配置される。下傾斜部82は、下部レール32の前端部32aの前方に配置される。上傾斜部81と下傾斜部82とは、上下方向に空間を置いて配置されており、ロードホイールカバー8は、正面から見てコの字状に形成される。従って、ロードホイールカバー8は、上傾斜部81と下傾斜部82との間に形成されたコの字状の切欠部83を備える。
【0028】
上傾斜部81は、車体2の前後方向の内側に向けて傾斜する前後傾斜面81aと、車体2の上下方向の内側に向けて傾斜する上下傾斜面81bと、を備える。前後傾斜面81aと上下傾斜面81bとは滑らかに接続される。また、下傾斜部82は、車体2の前後方向の内側に向けて傾斜する前後傾斜面82aを備える。これら傾斜面は、全体又は一部が傾斜した直線又は円弧形状等からなる。
【0029】
図2(b)の通り、フォーク7がガイドレール30の前方に配置された状態でフォーク7を後退しても、上傾斜部81の前後傾斜面81aと下傾斜部82の前後傾斜面82aとによって、フォーク7は、上部レール31の前端部31a及び下部レール32の前端部32aに引っ掛かることなく、スムーズに車体2の内側に導かれる。
【0030】
また、図2(c)の通り、フォーク7が上部レール31の上方に配置された状態でフォーク7を降下しても、上傾斜部81の上下傾斜面81bによって、フォーク7は、上部レール31に引っ掛かることなく、スムーズに車体2の内側に導かれる。
【0031】
また、リーチ型フォークリフトの製造時等において、ロードホイールカバー8の傾斜部80によって、ガイドレール30に引っ掛かることなく、スムーズにガイドローラ40をガイドレール30に挿入できる。
【0032】
図2(a)の通り、ロードホイールカバー8は、ガイドローラ40がガイドレール30から抜け出ないようにするためのボルト部9を備える。ボルト部9は、ロードホイールカバー8の下傾斜部82に設けられる。ボルト部9は、上下方向に延設されるように下傾斜部82に設けられる。図2(c)の通り、ボルト部9は、その頭部が下部レール32の上面82cより突出するように設けられる。
【0033】
これにより、ガイドローラ40は、ボルト部9に乗り上げて引っ掛かるので、ガイドレール3から抜け出ないようになっている。さらに、ボルト部9は、上下方向に延設されるので、フォーク7がボルト部9に向けて降下してもせん断破壊され難い。
【0034】
キャリッジ4及びマスト5を車体から取り外す際に、ボルト部9を取り外して、コの字状の切欠部83にガイドローラ40を通すことで、キャリッジ4及びマスト5を前方に引き抜くことができるので、ロードホイールカバー8をリーチレグ3から取り外す必要がなく、作業効率に優れた構造となっている。
【符号の説明】
【0035】
1 リーチ型フォークリフト
2 車体
3 リーチレグ
4 キャリッジ
5 マスト
6 リフトブラケット
7 フォーク
8 ロードホイールカバー
80 傾斜部
81 上傾斜部
82 下傾斜部
83 コの字状の切欠部
81a 上傾斜部の前後傾斜面
81b 上傾斜部の上下傾斜面
82a 下傾斜部の前後傾斜面
20 前輪
30 ガイドレール
31 上部レール
32 下部レール
32c 下部レールの上面
40 ガイドローラ
9 ボルト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフォークと、前記各フォークを車体の上下方向に昇降するためのリフトブラケットと、車体の上下方向に延設され、前記リフトブラケットの昇降を案内するための一対のマストと、前記各フォークを車体の前後方向に進退するためのキャリッジと、車体の前後方向に延設された一対のリーチレグと、前記各リーチレグの内側に沿って設けられ、前記キャリッジに設けられたガイドローラを案内するためのガイドレールとを備えたリーチ型フォークリフトにおいて、
前記リーチレグは、その前端部にロードホイールカバーを備え、
前記ロードホイールカバーは、傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前記フォークが前記ガイドレールに引っ掛からないように車体の内側に導くための傾斜面を有することを特徴とするリーチ型フォークリフト。
【請求項2】
前記ガイドレールは、上側に設けられた上部レールと、下側に設けられた下部レールとを備え、
前記傾斜部は、前記上部レールの前方に配置される上傾斜部と、前記下部レールの前方に配置される下傾斜部とを備え、
前記上傾斜部は、前記車体の内側に向けて前後方向に傾斜する前後傾斜面と、前記車体の内側に向けて上下方向に傾斜する上下傾斜面とを有し、
前記前後傾斜面と前記上下傾斜面とは滑らかに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のリーチ型フォークリフト。
【請求項3】
前記ロードホイールカバーは、前記上傾斜部と前記下傾斜部との間に形成され、ガイドローラを通すためのコの字状の切欠部を備えることを特徴とする請求項2に記載のリーチ型フォークリフト。
【請求項4】
前記下傾斜部は、上下方向に延設されたボルト部を有し、
前記ボルト部は、その頭部が前記下部レールから突出し、
前記ガイドローラは、前記ボルト部に当たって前記ガイドレールから抜け出ないことを特徴とする請求項2又は3に記載のリーチ型フォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43761(P2013−43761A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183787(P2011−183787)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】