説明

リードスイッチ制御装置および押しボタンスイッチ

【課題】 磁石の移動距離を短くし,リードスイッチを確実にオンオフするリードスイッチ制御装置および押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】 リードスイッチ制御装置は、リードスイッチ2の電極軸と直角に交叉する方向に磁石4が移動することでリードスイッチ2がオンオフ動作するようにしたもので、磁石4の磁極軸Mが、リードスイッチ2の電極軸と直交しかつ磁石4の移動方向軸(Z軸)に直交する直交軸(Y軸)に対して、Z軸−Y軸平面上にあり、直交軸(Y軸)から傾斜している。押しボタンスイッチは、上記のリードスイッチ制御装置を備え、ケーシングに対して出没変位自在に設けられた押しボタンにより、磁石を所定の方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスイッチ制御装置と、このリードスイッチ制御装置を備えた押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
乗降客が少ない路線の電車や気動車には、不必要にドアが開放されたままになって、冬場の暖房や夏場の冷房による車内温度が低下したり、また、上昇したりするのを防止するために、停車時に乗降客自らが開閉操作できる半自動ドアを備えたものがある。
【0003】
このような車両では、ドア収容部の車外側と車内側とにそれぞれ、ドア開閉用のスイッチとして押しボタンスイッチが設置されている。
【0004】
この種の押しボタンスイッチには、従来、図8に示すように、ケーシング内に固定的に設けられたリードスイッチ21と、ケーシングに対して出没自在の押しボタン22とを備え、押しボタン22の前記リードスイッチ21側の周面にはリードスイッチ21動作用の磁石23が取り付けられている押しボタンスイッチがある。なお、図8では、ケーシングの図示を省略している。
【0005】
上記構成の押しボタンスイッチでは、接点部分がリードスイッチであることで、比較的高い電圧での使用が可能になり、また、リードスイッチが押しボタンの変位経路の脇に位置するので、全体の厚みが押しボタンの長さにその変位ストロークを加えた程度の厚みに収まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−184973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、リードスイッチと磁石とで押しボタンスイッチ等のリードスイッチ制御装置を構成する場合、リードスイッチに対する磁石の作用を検討してみると、改良の余地があり、さらに磁石の移動距離を短くしてオンオフの動作を確実にする構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リードスイッチに対して、その電極軸と直角に交叉する方向に磁石が移動することで上記リードスイッチがオンオフ動作するようにしたリードスイッチ制御装置であって、上記磁石の磁極軸が、上記リードスイッチの電極軸と直交しかつ上記磁石の移動方向軸(Z軸)に直交する直交軸(Y軸)に対して、Z軸−Y軸平面上にあり、上記直交軸(Y軸)から傾斜している、ことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、上記のリードスイッチ制御装置を備えた押しボタンスイッチであって、上記磁石を移動させる手段として、ケーシングに対して出没変位自在に設けられた押しボタンを有する、ことを特徴としている。
【0010】
リードスイッチのリード片に働く磁界強度には、リードスイッチと磁石との間の距離だけでなく、リードスイッチに対する磁石の磁極軸(SN軸)の角度(簡単には、磁石のいずれかの磁極がリードスイッチにどれほど正対しているか)が大きく関係するのであって、上記磁界強度は、距離の効果と磁極の角度の効果との積になっている。
【0011】
リードスイッチ方向に対する磁極軸の角度θが、θ=0ならば、S極またはN極がリードスイッチに正対することになり、リードスイッチのリード片に作用する磁界強度は最大となり、θ=90°ならば、リードスイッチのリード片のどの位置においても、磁石のS極,N極から同じ距離にあり、同じ強さで作用を受けるので,S極またはN極に磁化されることはない。リード片の間に働く磁界の強さは0になり、リード片間のギャップを通る磁束は存在しなくなる。このときギャップに働く吸引力は0となる。
【0012】
本発明のように、磁石の磁極軸が磁石の移動方向軸の側に傾斜している(傾斜角度α)場合、リードスイッチ側から見ると、磁石のリードスイッチ側の磁極は、磁石の移動方向のいずれか一方に向いている。磁石がリードスイッチと最短距離の位置にあるとき、既にリードスイッチ方向に対する磁極軸の角度は、上記した傾斜角度αだけ傾斜しているが、磁石が、リードスイッチ最短距離の位置から、傾斜側に移動すると、その移動に伴い、リードスイッチ方向に対する磁極軸の角度はαからさらに大きくになって90°に近づく。そのため、リードスイッチに働く磁界強度は角度の効果により急激に減少し、全体としての磁界強度は著しく小さくなる。
【0013】
このように、磁石の傾斜側では、磁石がごく短い距離を移動するだけで、リードスイッチに働く磁界強度が大きく増減変化して、リードスイッチのオンオフが切り換わる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,磁石の傾斜側では、磁石がごく短い距離を移動するだけで、リードスイッチに働く磁界強度が大きく増減変化するから、磁石の移動距離を短縮でき,且つ磁石移動に伴うリードスイッチのオン領域及びオフ領域は狭くならず,オンオフ動作を確実にすることができる。
【0015】
また、押しボタンスイッチでは、押しボタンの押し込み操作方向の厚み(通常は前後の厚み)を薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る押しボタンスイッチの正面図。
【図2】図1の(2)−(2)線における断面図。
【図3】磁石とリードスイッチの位置関係を示す図。
【図4】従来の押しボタンスイッチの磁石とリードスイッチの位置関係図。
【図5】図4の位置関係における磁石位置と磁界強度(距離の効果と角度の効果)との関 係を表した特性図。
【図6】本発明の磁石とリードスイッチの位置関係図。
【図7】図6の位置関係における磁石位置と磁界強度(距離の効果と角度の効果)との関 係を表した特性図。
【図8】従来の押しボタンスイッチの概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2に基づいて、本発明の一実施形態に係る押しボタンスイッチを説明すると、上記実施形態に係る押しボタンスイッチは、ケーシング1と、リードスイッチ2と、押しボタン3と、リードスイッチ2を開閉動作させるための磁石(永久磁石)4とを備えている。
【0018】
ケーシング1は合成樹脂製で、内部にリードスイッチ2が装着されている。リードスイッチ2は、その電極軸(長手方向軸)がケーシング1の左右を向く所定の向きとなっている。
【0019】
押しボタン3は、合成樹脂製の短寸の軸体で、その軸体の軸方向であってリードスイッチ2の電極軸と直交する方向に一定ストローク摺動しうるようケーシング1内に保持され、少なくともその前面部がケーシング1から出没変位するようになっている。この押しボタン3の中途部には、摺動範囲を規制するための鍔3aが一体に形成され、後部には、押しボタン3に突出方向の弾力を付勢するバネ5が設けられている。ケーシング1の前面は、押しボタン3の鍔3aを受け止める蓋板6が取り付けられている。
【0020】
磁石4は、押しボタン3の軸体外周面のうち、押しボタン3が限度まで押し込まれたときにリードスイッチ2に最も近接する位置に埋め込む形で取り付けられており、したがって、押しボタン3の押し込み操作に伴い、磁石4がリードスイッチ2より前方に離れた位置から、リードスイッチ2の電極軸と直交する方向に移動してリードスイッチ2に近接し、リードスイッチ2を閉成させるようになっている。
【0021】
上記構成において、本発明の特徴とするところは、押しボタン3に取り付けられた磁石4の磁極軸(SN軸)Mが、押しボタン3の軸体の中心からリードスイッチ2の電極軸と直角に交叉するように設定された直交軸(Y軸)に対して、磁石4の移動方向軸の側に角度α傾斜していることである。さらに詳しく言うと、後に図6で説明するように、磁石4の磁極軸Mが、リードスイッチ2の電極軸(X軸)と磁石4の移動方向軸(Z軸)とに直交する直交軸(Y軸)に対して、Y軸−Z軸平面上にあり、かつ磁石4の移動方向軸(Z軸)の側へ角度α傾斜していることである。
【0022】
上記のように、本発明では、磁石4の磁極軸Mが磁石4の移動方向軸の側に傾斜していることで、磁石4がリードスイッチ2より離れた位置からリードスイッチ2最短距離の位置に移動するとき、最短距離の位置の手前において、リードスイッチ2に働く磁界強度が急激に変化することになり、リードスイッチ2のオンオフ動作のために必要な磁石4の移動距離が短くなるのであるが、そのことを、図3ないし図7に基づいて、単純な例から順に説明する。
【0023】
まず、図3に示すように、リードスイッチ2の電極軸をX軸とし、このX軸上の所定の位置でX軸と直交する軸をY軸とし、磁石4はY軸上の位置yで、その磁極軸(SN軸)MがY軸に対して角度θだけ傾斜している場合を考える。
【0024】
このとき、リードスイッチ2のリード片間のギャップに働く磁界強度Bは、ほぼ次のようになる。
【0025】
B=(B0/L3)cosθ ………………………(数式1)
ただし、Boは定数,Lは、磁石とリードスイッチの距離(=y)であり、リードスイッチ2のリード片に働く磁界強度は,ほぼ距離Lの3乗に逆比例し,ほぼθの余弦に比例する。
【0026】
磁極軸Mの角度θに関して,θ=0ならば、S極またはN極がリードスイッチ2に正対し,リードスイッチ2のリード片に作用する磁界強度は最大となる。θ=90°ならば、リードスイッチ2のリード片のどの位置においても、磁石4のS極、N極から同じ距離にあり、同じ強さで作用を受けるので,S極またはN極に磁化されることはない。そのため、リード片の間に働く磁界の強さは0になり,ギャップを通る磁束は存在しなくなる。このときギャップに働く吸引力は0となる。
【0027】
次に、図8に示す従来例のように、磁石がリードスイッチに対して移動する場合を考える。従来例では、図4に示すように、磁石4が、X軸およびY軸に直交する方向、すなわち、Z軸の方向に移動する。この場合、磁石4の磁化方向すなわち磁極軸MはY軸に平行である。なお、図4において、X軸はリードスイッチ2が示された位置で紙面と直交している。
【0028】
磁石4がリードスイッチ2の最短距離にあるとき磁界が強く、これをオンの位置をz=0とする。磁石4がオンの位置からZ軸に沿って左右いずれかにzだけ移動したとき,リードスイッチ2はオフとなり,これをオフの位置とする。磁石4がzにあるとき,磁石4とリードスイッチ2の距離L、および磁極軸Mとリードスイッチ方向(L方向)のなす角度θは、数式2、数式3となる。
【0029】
L=√(y2+z2) …………………(数式2)
θ=tan-1(z/y) …………………(数式3)
リードスイッチ2のリード片に働く磁界強度の値は、数式2および数式3の値を数式1に代入することで得られる。
【0030】
図5は,磁石4が移動方向軸(Z軸)上を移動するとき,リードスイッチ2のギャップに働く磁界強度を、距離の効果(数式1において、1/L3に相当)と角度の効果(数式1において、cosθに相当)とに分けて示している。
【0031】
zが増加すると,距離の効果でギャップの磁界が減少する共に,角度の効果により磁界が減少し,距離の効果と角度の効果の相乗効果によりギャップ磁界が大幅に減少する(なお、ギャップ磁界強度は図示せず)。
【0032】
しかしながら、いずれの方向への移動でも、角度の効果の増減の割合は、距離の効果に比べ緩やかで、磁界強度全体の減少度は急峻とは言えない。
【0033】
図6は、本発明でのリードスイッチ2と磁石4の位置関係を示す。磁石4は、従来の押しボタンスイッチと同様に、リードスイッチ2の電極軸(X軸)上の位置xが一定で,さらにX軸と直交するY軸方向の距離yも一定とし、X軸とY軸に直交するZ軸方向に移動する。磁石4の磁極軸Mは、Y軸−Z軸平面上にあり、かつY軸に対して角度α傾いた状態で、移動手段である押しボタン3に取り付けられている。なお、図は、磁極軸Mが左に傾斜した場合を示している。この場合も、リード片に働く磁界強度は数式1で表され,リードスイッチに対する距離Lと磁極軸の角度θは、数式4、数式5となる。
【0034】
L=√(y2+z2) …………………(数式4)
θ=tan-1(z/y)+α (磁石が左に移動)………(数式5a)
θ=tan-1(z/y)−α (磁石が右に移動)………(数式5b)
数式4のLは数式2と同じであるが、角度θは、磁石4が左(傾斜側)に移動するときは傾斜角度αだけ大きな値を示し、磁石4が右(反傾斜側)に移動するときは傾斜角度αだけ小さな値を示す。
【0035】
図7は、数式3の値を数式1に代入した結果,磁石の位置zに対する磁界強度の略図である。なお、図7では、傾斜角度αを30°に設定している。
【0036】
図5と比べて距離の効果は同じであるが、磁界強度に対する角度の効果は、磁石4の移動方向の左右によって著しく異なる。磁石4のZ軸右方向の移動に対して角度の効果による減少は小さく,ほとんど距離の効果だけになる。磁石4のZ軸左方向の移動に対して、角度の効果によりギャップ磁界強度は急速に減少する。zがさらに左方向で大きくなると、θは90°以上となり,磁界の極性が逆になると共に、cosθの絶対値は大きくなるが,距離の効果による減少が大きいので、磁界強度の絶対値が大きくなることはなく,リードスイッチ2をオンにすることはない。
【0037】
本発明は上記の特性を利用しており、磁石4の反傾斜方向の位置に押しボタンスイッチのオン、磁石4の傾斜方向の位置に押しボタンスイッチのオフを定めれば,磁石4の移動距離が短縮でき,且つ磁石4の移動に伴うリードスイッチ2のオン領域及びオフ領域は狭くならず,オンオフ動作を確実にすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング
2 リードスイッチ
3 押しボタン
4 磁石
M 磁極軸
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスイッチに対して、その電極軸と直角に交叉する方向に磁石が移動することで上記リードスイッチがオンオフ動作するようにしたリードスイッチ制御装置であって、
上記磁石の磁極軸が、上記リードスイッチの電極軸と直交しかつ上記磁石の移動方向軸(Z軸)に直交する直交軸(Y軸)に対して、Z軸−Y軸平面上にあり、上記直交軸(Y軸)から傾斜している、ことを特徴とするリードスイッチ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリードスイッチ制御装置を備えた押しボタンスイッチであって、
上記磁石を移動させる手段として、ケーシングに対して出没変位自在に設けられた押しボタンを有する、ことを特徴とする押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−60536(P2011−60536A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207995(P2009−207995)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(594124281)大光電気株式会社 (4)
【出願人】(593185050)
【Fターム(参考)】