説明

リール装置

【課題】大型化することなく巻き取り長さを長くすることができるリール装置を得る。
【解決手段】線状体を巻き取るリール本体8を回転可能に支持すると共に、リール本体8と同軸上に回転軸18を配置し、線状体16をリール本体8に巻き取る方向に付勢する付勢部材20の一端をリール本体8側に他端を回転軸18側に接続する。そして、線状体16の引き出し・巻き取りを検出するセンサ28と、回転軸18を回転駆動する電動モータ24と、回転軸18の回転を規制する規制機構22とを設ける。更に、センサ28により検出される線状体16の引き出し・巻き取りに応じて電動モータ24を制御して回転軸18をリール本体8の回転方向と同方向に回転させ、リール本体8の回転に回転軸18の回転を追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ、ケーブル、ホース等の線状体をリール本体から引き出す、あるいは、巻き取るリール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤ、ケーブル、ホース等の線状体をリール本体から引き出す、あるいは、リール本体に巻き取るリール装置が知られている。このようなリール装置では、特許文献1に示すように、リール本体を回転可能に支持した支点軸を設け、ゼンマイばねの一端をリール本体に接続し、ゼンマイばねの他端を支点軸に接続して、線状体をリール本体に巻き取る方向に付勢している。
【特許文献1】特開平6−18204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした従来のものでは、線状体を巻き取る巻き取り長さが長いリール装置では、ゼンマイばねが大型になり、大型化してしまうという問題があった。
また、線状体をリール本体から引き出す際に、ゼンマイばねが巻かれるので、線状体を引き出すに従って、線状体に加わる張力が増加する。そのため、線状体を引き出す際に、線状体を引き出すに従って大きな力を必要としてしまうという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、大型化することなく巻き取り長さを長くすることができるリール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
線状体を巻き取るリール本体を回転可能に支持すると共に、前記リール本体と同軸上に回転軸を配置し、前記線状体を前記リール本体に巻き取る方向に付勢する付勢部材の一端を前記リール本体側に他端を前記回転軸側に接続し、かつ、前記線状体の引き出し・巻き取りを検出するセンサと、前記回転軸を回転駆動する駆動源と、前記回転軸の回転を規制する規制機構とを有し、更に、前記センサにより検出される前記線状体の引き出し・巻き取りに応じて前記駆動源を制御して前記回転軸を前記リール本体の回転方向と同方向に回転させ、前記リール本体の回転に前記回転軸の回転を追従させる制御手段を設けたことを特徴とするリール装置がそれである。
【0006】
前記センサは前記リール本体の回転を検出して前記線状体の引き出し・巻き取りを検出するものでもよい。その際、前記制御手段は前記センサにより検出される前記リール本体の回転速度と、前記回転軸の回転速度とを同一に制御するようにしてもよい。
【0007】
また、前記センサは前記線状体に加わる張力を検出して前記線状体の引き出し・巻き取りを検出するものでもよい。更に、前記制御手段は前記付勢部材による付勢力を前記線状体の引き出し・巻き取りに応じて変化させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリール装置は、付勢部材の変形が僅かであっても、回転軸が電動モータによりリール本体の回転に追従して回転されるので、線状体が長くても大型化することなく、線状体を引き出す、あるいは、巻き取ることができるという効果を奏する。
【0009】
また、センサによりリール本体の回転を検出することにより、リール本体と回転軸との回転速度を容易に同一にできる。更に、付勢力を引き出し・巻き取りに応じて変化させることも容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1は装置本体で、装置本体1は底板2と、底板2から間隔をあけて立設された左右側板4,6とを備えている。左右側板4,6の間には、リール本体8が配置されており、リール本体8は円筒部10と、円筒部10の両端に設けられた鍔板部12,14とを備え、内部は中空に形成されている。
【0011】
円筒部10の外周には、例えば、ワイヤ、電力あるいは信号ケーブル、油圧、空気圧、水等のホース等の線状体16を巻掛けることができるように形成されている。リール本体8と同軸上にリール本体8を貫通して回転軸18が配置されており、回転軸18は左右側板4,6を貫通して外側に突出されると共に、回転軸18には左右側板4,6が回転可能に支持されている。
【0012】
リール本体8の内部にはゼンマイばねを用いた付勢部材20が収納されており、付勢部材20の一端は円筒部10の内周に接続されている。また、付勢部材20の他端はリール本体8の内部の回転軸18に接続されており、付勢部材20の付勢力により、リール本体8に線状体16を巻き取る方向にリール本体8が付勢されている。
【0013】
付勢部材20は、ゼンマイばねに限らず、ねじりばね等でもよく、また、付勢部材20にゼンマイばねを用いた場合、線状体16が引き出されて、リール本体8と回転軸18との間に生じる回転差によりゼンマイばねが巻かれるが、例えば、回転差が最大1/2〜1回転程度でゼンマイばねが完全に巻かれた状態となってもよい。1/2〜1回転の回転差が生じるまでの間は、付勢部材20の付勢力が確保できるように構成すればよい。線状体16が全て引き出されるまで、付勢部材20の付勢力が生じるように、大きなゼンマイばね等を用いる必要はない。
【0014】
左側板4から外側に突き出した回転軸18には、規制機構22を介して、駆動源としての電動モータ24が連結されている。規制機構22には回転軸18の回転を規制するもので、例えば、規制機構22として電磁ブレーキを用い、電磁ブレーキにより回転軸18の回転の規制と回転の許容とを切り換えることができるように構成してもよい。
【0015】
電磁ブレーキに限らず、ウォーム・ホィール歯車機構を用いて電動モータ24の回転を回転軸18に伝達すると共に、電動モータ24の駆動を停止した際には回転軸18が付勢部材20の付勢力により回転されないようにセルフロックがなされるものでもよい。即ち、電動モータ24が回転駆動された際には、回転軸18の回転を許容し、電動モータ24が停止された際には、回転軸18の回転を規制できるものであればよい。
【0016】
電動モータ24は制御手段としての制御回路26に接続されており、制御回路26にはセンサ28が接続されている。センサ28は線状体16の引き出し・巻き取りを検出するもので、本実施形態では、リール本体8の回転に応じてパルス信号を出力するエンコーダを用いているが、これに限らず、ポテンショメータ等を用いてもよい。
【0017】
また、センサ28には、リール本体8の回転を検出するものに限らず、線状体16に加わる張力を検出するものでもよい。例えば、付勢部材20と回転軸18との間に荷重センサを設けて、線状体16に加わる張力を検出するようにしてもよい。
【0018】
次に、前述した本実施形態のリール装置の作動を、制御回路26において行われるリール制御処理と共に図2によって説明する。
例えば、線状体16の後端は、リール本体8に係止されると共に、図示しない移動体に線状体16の先端が接続され、線状体16が少し引き出されて、その状態で、リール本体8と回転軸18との間に、付勢部材20による付勢力が作用して、線状体16はリール本体8に巻き取られる方向に付勢され、線状体16には付勢部材20の付勢力に応じた張力が作用している。その際、電動モータ24は駆動されることなく、規制機構22により回転軸18の回転は規制された状態にある。
【0019】
この状態から、線状体16が引き出されると、それに伴ってリール本体8が回転する。そして、リール制御処理を繰り返し実行して、センサ28からの信号を読み込む(ステップ100。以下S100という。以下同様。)。リール本体8が回転すると、センサ28はリール本体8の回転に応じた信号を制御回路26に出力する。
【0020】
次に、回転があったか否かをセンサ28からの信号に基づいて判断する(S110)。センサ28からの出力信号に変化がないときには、リール本体8は回転されていない、即ち、線状体16は引き出されたり、あるいは、巻き取られたりした状態にはないと判断して(S110:NO)、電動モータ24を駆動することなく、規制機構22に電磁ブレーキを用いているときには、電磁ブレーキにより回転軸18の回転を規制する(S115)。規制機構22にウォーム・ホィール歯車機構のセルフロックを用いている場合には、電動モータ24の停止により、付勢力等の外力による回転軸18の回転は規制される。そして、一旦、本制御処理を終了して、一定時間毎に本制御処理を繰り返し実行する。
【0021】
センサ28から信号が出力され、リール本体8が回転され線状体16が引き出され、あるいは、巻き取られたと判断すると(S110:YES)、センサ28からの信号に基づいて、リール本体8の回転の方向と速度とを算出する(S120)。
【0022】
続いて、リール本体8の回転方向が引き出し方向か、巻き取り方向かを判断する(S130)。リール本体8の回転方向が引き出し方向であるときには(S130:YES)、電動モータ24をリール本体8の回転方向と同方向に正回転駆動させて、リール本体8の回転に回転軸18の回転を追従させる(S140)。その際、規制機構22に電磁ブレーキを用いているときには、電磁ブレーキによる回転軸18の制動を解除する。規制機構22にウォーム・ホィール歯車機構のセルフロックを用いている場合には、電動モータ24を回転駆動することにより、外力による回転軸18の回転の規制は解除される。
【0023】
また、リール本体8の回転方向が巻き取り方向であるときには(S130:NO)、電動モータ24をリール本体8の回転方向と同方向に逆回転駆動させて、リール本体8の回転に回転軸18の回転を追従させる(S150)。
【0024】
例えば、回転を追従させる際に、図3(イ)に示すように、リール本体8の回転速度と回転軸18の回転速度とを同一にすると、線状体16の引き出し量あるいは巻き取り量が増加しても、付勢部材20の付勢力に変化はなく、一定の張力が加わった状態で線状体16が引き出され、あるいは巻き取られる。
【0025】
付勢部材20の変形によるリール本体8と回転軸18との間の回転の許容量が僅かであっても、回転軸18が電動モータ24によりリール本体8の回転に追従して回転されるので、線状体16の引き出し量が膨大、あるいは巻き取し量が膨大であっても、一定の張力が加わった状態でリール本体8から線状体16を引き出すことができ、あるいは、リール本体8に線状体16を巻き取ることができる。従って、装置を小型化できる。
【0026】
また、図3(ロ)に示すように、リール本体8の回転量が増加するに従って、付勢部材20の付勢力が減少するようにすることもできる。その際には、リール本体8の回転速度よりも回転軸18の回転速度が僅かに速くなるように追従させて、電動モータ24の回転を制御すればよい。
【0027】
あるいは、図3(ハ)に示すように、リール本体8の回転量が増加するに従って、付勢部材20の付勢力が増加するようにすることもできる。その際には、リール本体8の回転速度よりも回転軸18の回転速度が僅かに遅くなるように追従させて、電動モータ24の回転を制御すればよい。
【0028】
更に、図3(ニ)に示すように、例えば、線状体16が引き出される際には、リール本体8の回転速度と回転軸18の回転速度とを同一に制御して、付勢部材20の付勢力を一定にし、その後、線状体16を巻き取る際には、リール本体8の回転速度よりも回転軸18の回転速度を僅かに速くなるように制御し、付勢部材20の付勢力が減少するようにすることもできる。尚、線状体16を引き出す際には、付勢部材20の付勢力が増加するように制御し、巻き取る際には、付勢部材20の付勢力が一定となるように制御することもできる。
【0029】
また、図3(ホ)に示すように、引き出し、あるいは巻き取り量が予め設定して所定量となるまでは、リール本体8の回転速度と回転軸18の回転速度とを同じに制御して、付勢部材20の付勢力を一定にし、所定量を越えた後、リール本体8の回転速度よりも回転軸18の回転速度を僅かに遅くなるように制御して、付勢部材20の付勢力が増加するようにすることもできる。
【0030】
本制御処理を繰り返し実行して、S110の処理により、リール本体8の回転が停止されたと判断すると(S110:NO)、電動モータ24の駆動を停止すると共に、規制機構22に電磁ブレーキを用いているときには、電磁ブレーキにより回転軸18の回転を規制する(S115)。規制機構22にウォーム・ホィール歯車機構のセルフロックを用いている場合には、電動モータ24の駆動を停止することにより、回転軸18の回転は規制される。
【0031】
これにより、リール本体8の回転が停止した後も、付勢部材20による付勢力は維持され、線状体16には付勢部材20の付勢力による張力が付与された状態が保持される。よって、電動モータ24が停止していても、線状体16には張力が付与された状態が維持されて、線状体16が垂れ下がったりするのを防止できる。
【0032】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態としてのリール装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態の制御回路において行われるリール制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の付勢力と引き出し・巻き取り量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1…装置本体 2…底板
4…左側板 6…右側板
8…リール本体 16…線状体
18…回転軸 20…付勢部材
22…規制機構 24…電動モータ
26…制御回路 28…センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を巻き取るリール本体を回転可能に支持すると共に、前記リール本体と同軸上に回転軸を配置し、前記線状体を前記リール本体に巻き取る方向に付勢する付勢部材の一端を前記リール本体側に他端を前記回転軸側に接続し、
かつ、前記線状体の引き出し・巻き取りを検出するセンサと、前記回転軸を回転駆動する駆動源と、前記回転軸の回転を規制する規制機構とを有し、更に、前記センサにより検出される前記線状体の引き出し・巻き取りに応じて前記駆動源を制御して前記回転軸を前記リール本体の回転方向と同方向に回転させ、前記リール本体の回転に前記回転軸の回転を追従させる制御手段を設けたことを特徴とするリール装置。
【請求項2】
前記センサは前記リール本体の回転を検出して前記線状体の引き出し・巻き取りを検出することを特徴とする請求項1に記載のリール装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記センサにより検出される前記リール本体の回転速度と、前記回転軸の回転速度とを同一に制御することを特徴とする請求項2に記載のリール装置。
【請求項4】
前記センサは前記線状体に加わる張力を検出して前記線状体の引き出し・巻き取りを検出することを特徴とする請求項1に記載のリール装置。
【請求項5】
前記制御手段は前記付勢部材による付勢力を前記線状体の引き出し・巻き取りに応じて変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のリール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143686(P2009−143686A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323161(P2007−323161)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(592159966)中発販売株式会社 (10)
【Fターム(参考)】