説明

ルシフェラーゼ

【課題】Photinus pyralisの野生型ルシフェラーゼよりも高い熱安定性を具えたルシフェラーゼ活性保有タンパク質を提供する。また発現させるDNA、ベクター及び細胞並びに本タンパク質を用いる発光アッセイの実施のための試験キット及び試薬も提供する。
【解決手段】P. pyralisルシフェラーゼの354位またはLuciola属ルシフェラーゼの356位に位置するグルタミン酸と同等のグルタミン酸を代替アミノ酸、特にリシンで置換する。さらに好ましくは、P. pyralisルシフェラーゼの215位またはLuciola属ルシフェラーゼの217位と同等の位置に第二の置換アミノ酸を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルシフェラーゼ活性を有する新規なタンパク質、及び該タンパク質の発現をコードするDNA及びベクターに係わる。本発明は特に、30℃を越える温度下で熱安定性を有するルシフェラーゼを提供する。
【0002】
ホタルルシフェラーゼは、ATP、Mg2+及び酸素分子の存在下にルシフェリンの酸化を触媒し、その結果光を発生させる。この反応の量子収率は約0.88であり[DeLuca及びMcElroy(1978)並びにSeliger及びMcElroy(1960)参照]、上記発光特性はATPレベルを測定する発光測定(luminometric)アッセイで用いられている。
【0003】
ルシフェラーゼはホタルまたはツチボタルといった昆虫の体から直接取得可能であり、あるいはまた該酵素をコードする組み換えDNA構築物を保有する微生物からの発現によって取得可能である。この酵素を取得できる、またはこの酵素をコードするDNAを得ることができる四つの重要なホタル種は、日本のゲンジボタルLuciola cruciata及びヘイケボタルLuciola lateralis、東ヨーロッパのホタルLuciola mingrelica、並びに北アメリカのホタル(Photinus pyralis)である。ツチボタルLampyris noctilucaもルシフェラーゼ供給源の一つであり、そのルシフェラーゼのアミノ酸配列はPhotinus pyralisのものに対して84%の相同性を有する。
【0004】
野生型ルシフェラーゼ及び組み換えルシフェラーゼの熱安定性は、これらのルシフェラーゼを30℃を越える、特に35℃より高い温度に曝露するとその活性がきわめて急激に失われるようなものである。このような不安定性は、上記酵素を高い周囲温度の下で使用もしくは貯蔵する場合、または加熱によって反応速度を高めなければならない場合当該酵素の欠点となる。日本ホタルのルシフェラーゼをその217位において突然変異させてトレオニン残基をイソロイシン残基によって置換すれば該ルシフェラーゼを熱失活に対して安定化できることが知られている(Kajiyama及びNakano, Biochemistry 32, pp.13795−13799, 1993)。上記のようにして、酵素の熱及びpH安定性並びに比活性が高められた。Photinus pyralis及びLuciola mingrelicaの熱安定化は未だ報告されていない。
【0005】
本発明者はここに、Photinus pyralis、Luciola mingrelica、Luciola lateralis及びLuciola cruciataのいずれもが保存する配列中に存在するグルタミン酸(glutamate)残基を代替アミノ酸、特にリシンまたはアルギニンで置換することによって、野生型ルシフェラーゼより高い熱安定性を有する新規なルシフェラーゼを提供する。上記グルタミン酸はPhotinus pyralisルシフェラーゼの354位に見出されるもので、前記種及び他の種のルシフェラーゼ中に見出される保存アミノ酸配列TPEGDDKPGAの3番目のアミノ酸である。
【0006】
即ち、本発明はその第一の態様において、ルシフェラーゼ活性を有するタンパク質で、Photinus pyralis、Luciola mingrelica、Luciola cruciataまたはLuciola lateralisのそのようなタンパク質に対して60%を越えるアミノ酸配列相同性を有するタンパク質を提供し、このタンパク質はPhotinus pyralisルシフェラーゼの残基354またはLuciola mingrelica、Luciola cruciata及びLuciola lateralisルシフェラーゼの残基356に対応するアミノ酸残基がグルタミン酸以外のアミノ酸であることを特徴とする。
【0007】
上記アミノ酸は天然アミノ酸であっても、また天然アミノ酸の修飾体や天然アミノ酸の類似体といったいわゆる非一般的アミノ酸であってもよい。グルタミン酸以外のアミノ酸の類似体とは、タンパク質への作用において元のアミノ酸と同等である化合物のことであると理解される。典型的な非一般的アミノ酸は、“US and European Patentin Manuals and the Rules of Practice in Patent Cases: application disclosures containing nucleotide and/or amino acid sequences: modified and unusual amino acids”に示されているものである。
【0008】
好ましくは、本発明のタンパク質はアミノ酸配列XGDDKPGAを含み、この配列中のXはグルタミン酸以外のアミノ酸であることを特徴とする。更に好ましくは、本発明のタンパク質はアミノ酸配列TPXGDDKPGAを含み、その際Xは熱安定性の観点から、アスパラギン酸、プロリンまたはグリシン以外の任意のアミノ酸であることが好ましい。更に好ましくは、Xはトリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシンまたはアスパラギンであるが、リシンもしくはアルギニンまたはそのいずれかの類似体であれば最も好ましい。
【0009】
上記保存TPXGDDKPA領域中1個または2個のアミノ酸が相違するルシフェラーゼを有し得る種は幾つか存在するが、前記配列の3位のアミノ酸がグルタミン酸でないように改変されたルシフェラーゼに対応する活性タンパク質は総て本発明により提供されることは明らかである。
【0010】
本発明の好ましい態様において、本発明のタンパク質は、Luciola属ホタルルシフェラーゼのアミノ酸217またはPhotinus pyralisルシフェラーゼのアミノ酸215に対応する位置のアミノ酸が、ヨーロッパ特許出願公開第0524448号に開示されているような疎水性アミノ酸、好ましくはイソロイシン、ロイシンまたはバリンに変更されたアミノ酸を有する。このような変更を行なうと、354位の変更のみの場合よりも熱安定性が向上することが判明した。即ち、これら二つの変更は実質的に互いに独立で、しかも併用可能な効果を有する。
【0011】
本発明は第二の態様において、本発明のタンパク質をコードするDNAを提供し、また第三の態様では、本発明のタンパク質を発現し得るような形態を有する、luc遺伝子(ルシフェラーゼをコードする遺伝子)を含むベクター、特にプラスミドを提供する。上記のような形態とは、ベクターが本発明のタンパク質の発現を制御し得るDNA配列を、微生物宿主細胞への導入時に前記タンパク質が、必要であれば適当な誘導物質の添加により、必要に応じて容易に発現され得るように含む形態のことである。
【0012】
Photinus pyralis、Luciola mingrelica、Luciola cruciata及びLuciola lateralisのluc遺伝子はいずれも公知であり、かつ標準的な分子生物学的技術で単離可能である。Photinus pyralisのluc遺伝子はPromegaから、プラスミドpGEMとして市販されている。即ち、本発明のDNAの調製に用いる出発物質を得るのに好ましい方法及び供給源は、(i)天然のホタルゲノムDNAを用い、このDNAから得たluc遺伝子を、例えばPCRを用いて増幅すること、(ii)pGEM、及び(iii)Kajiyama及びNakanoのpGLf37プラスミドである。ルシフェラーゼ活性、即ちルシフェリンを酸化させて発光を実現する活性を有するタンパク質をコードする更に別の遺伝子も、本発明のDNAを得、かつ遺伝子発現によって究極的に本発明のタンパク質を得るための出発物質の適当な供給源である。
【0013】
本発明のDNAを調製するべく野生型または他の種類のluc遺伝子を操作する上で用いるのに適したベクターは、天然グルタミン酸の代替アミノ酸への改変が行なわれる一方で、DNAを内部に含み得る任意のベクターである。例えばヒドロキシルアミンなどの薬剤を用いて化学的に誘発される突然変異の場合、ベクターは特に重要でなく、突然変異誘発過程前後の遺伝子操作を容易にする適当なベクターは当業者であれば多数想起できよう。
【0014】
luc遺伝子を前記グルタミン酸において特異的に突然変異させることが好ましく、即ち部位特異的突然変異誘発操作が必要となる。この操作はベクターにおいて最も容易に実施でき、当業者にも良く知られている。
【0015】
野生型、及び公知のluc遺伝子、並びに本発明のluc遺伝子の発現に適したベクターには、pKK223−3、pDR540(Boehringer Mannheimから入手可能)及びpT7−7が含まれる。先の2種は、発現がイソプロピル−チオガラクトシド(IPTG)の存在によって誘発されることを可能にするラクトースリプレッサーの制御下にtacプロモーターを有する。pT7−7はT7 RNAポリメラーゼプロモーターによる制御を可能にし、即ちT7 RNAポリメラーゼを有する大腸菌細胞におけるきわめて高レベルの遺伝子発現の基礎となる。これらのベクターうちで、pT7−7ベクターにluc遺伝子を挿入した場合に発現が最高となることが判明した。
【0016】
pKK223−3及びpDR540に挿入されたluc遺伝子由来のルシフェラーゼの発現は野生型N末端配列ルシフェラーゼの発現をもたらし、一方pT7−7に挿入されたluc遺伝子の発現は余分のN末端アミノ酸M−A−R−I−Qとの融合タンパク質の合成をもたらす。luc遺伝子を含有するベクター(構築物pPW204、pPW116及びpPW304と呼称する)それぞれにおけるluc遺伝子のリボソーム結合部位及び開始コドンを、実施例の表1に示す。
【0017】
本発明はその第三の態様において、本発明のタンパク質を発現させ得る細胞、該細胞を用いて本発明のタンパク質を製造する方法、並びに本発明のタンパク質を含む試験キット及び試薬を提供する。本発明はまた、ルシフェリン/ルシフェラーゼ試薬を用いてATPを測定する、当業者に良く知られたアッセイ方法であって、ルシフェラーゼが本発明のタンパク質であることを特徴とする方法も提供する。本発明のルシフェラーゼ調製物は30〜70℃、特に37〜60℃、更には40〜50℃において、野生型ルシフェラーゼ及び組み換え野生型ルシフェラーゼに比較してより熱安定性である。
【0018】
本発明のタンパク質の発現には、細胞自身のDNA中にか、または細胞内に導入されたプラスミドなどのベクター中に存在するDNA配列を用いて異種タンパク質を発現させ得る任意の細胞を用い得る。このような細胞は典型的には、Saccharomyces cerevisiae細胞などの酵母細胞及び大腸菌細胞などの細菌細胞であるが、タンパク質発現という目的に適った宿主生物は当業者ならほかにも多数想起できよう。タンパク質が昆虫タンパク質であるので、昆虫細胞が好ましいともいえる。タンパク質は、天然ルシフェラーゼ及び公知の組み換えルシフェラーゼに類似の構造を有するタンパク質として発現されてもよく、または前記のようなタンパク質と、他のアミノ酸、ペプチド、タンパク質、または他の化学実体、例えば先に触れたM−A−R−I−Q配列との融合体または結合体として発現されてもよい。
【0019】
或る種の宿主は特定の優先コドンを持ち、例えば細菌は場合によっては酵母とは異なるコドンを用いるので、前記のような宿主に導入するDNAは、所与のアミノ酸に関して当該宿主における発現をより好ましく実現する縮重コドンが得られるように改変すれば有利であり得ることは、当業者には明らかであろう。そのような縮重DNAは当然ながら、本発明のDNAの範囲に含まれる。
【0020】
大腸菌BL21(DE3)は適当な宿主の一つで、誘導性lacUV5プロモーターの制御下にその染色体に安定に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼを有し、即ちこの宿主はpT7−7由来の構築物と適合性である。BL21のような大腸菌B株は、lonプロテアーゼ及びompT外膜プロテアーゼを欠く。これらの欠失は、大腸菌における外来タンパク質の発現及び蓄積を安定化する一助となり得る。先に述べた3種の発現構築物をそれぞれ保有する大腸菌BL21(DE3)の粗抽出物をアッセイしたところ、最高レベルのルシフェラーゼ発現は構築物pPW304を保有する細胞において実現することが判明した(表2参照)。
【0021】
本発明の突然変異タンパク質は熱安定性以外の利点も有する。Photinus属354位/Luciola属356位のアミノ酸を突然変異させると、いずれのアミノ酸または類似体でグルタミン酸を置換するかに依存してルシフェリンの酸化の際に発せられる光の波長が変化することが判明した。即ち、本発明は、特異的結合物質のラベルとして用いるルシフェラーゼ、またはそのタンパク質産物が用いられるルシフェリン酸化の際に特定波長の光として自身の存在(identity)を報告し返すリポーター遺伝子も提供する。上記のような特性の獲得では、グリシン、プロリン及びアスパラギン酸などを用いる突然変異も利用できる。本発明のタンパク質はまた、その熱安定性が向上することから、後段に例示するように比較的高温、例えば37℃以上の温度の下でも対応して向上した収率で製造可能であるという利点も有する。
【0022】
本発明のタンパク質、DNA、ベクター及び細胞の一例を、次の非限定的実施例、添付図面、諸表及び配列表を参照しつつ以下に詳述する。別のタンパク質、タンパク質結合体、DNA、ベクター及び細胞、並びにこれらのうちのいずれかを包含するアッセイ及び試験キットも、ここに説明するものに照らせば当業者には想起されよう。
【0023】
図面の簡単な説明
図1は後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpKK223−3から得たプラスミドpPW204の制限酵素地図である。
【0024】
図2は後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpDR540から得たプラスミドpPW116の制限酵素地図である。
【0025】
図3は後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpT7−7から得たプラスミドpPW304の制限酵素地図である。
【0026】
図4はpDR540と、Xho部位を除去したpGEM−luc由来のBamH1/Sst1断片とから得たプラスミドpPW601aの制限酵素地図である。
【0027】
図5は実施例に後述するように所与の温度で20分間インキュベートした組み換え及び野生型Photinus属ルシフェラーゼ(Sigma)の熱失活のグラフである。
【0028】
図6は異なる温度下で増殖させた大腸菌BL21(DE3)pPW304の粗抽出物中のルシフェラーゼ活性のグラフである。
【0029】
図7はpPW304及びpPW304M−1(グルタミン酸354がリシンで置換されるようにコードする本発明のプラスミド)に由来するルシフェラーゼ活性の熱失活のグラフである。
【0030】
図8はSigma野生型、pPW304及びpPW304M−1組み換えルシフェラーゼの37℃での経時失活のグラフである。
【0031】
図9はTaborから得たpT7−7の制限酵素地図である。
【0032】
図10は野生型の354位のグルタミン酸がアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン、メチオニン、アルギニン、リシン、セリン、トレオニン及びシステインでそれぞれ置換されたルシフェラーゼを発現する本発明のルシフェラーゼ発現大腸菌の粗細胞抽出物活性の、40℃のPromega溶解緩衝液中での熱活失を示すグラフである。
【0033】
図11はE354Kリシン変更及びA215Lロイシン変更を有する精製二重突然変異ルシフェラーゼ活性のリン酸緩衝液中47℃での熱失活を、単一突然変異体A215L及びE354Kと比較して示すグラフである。
【0034】
図12は0.02%アジドを加えたpH7.75のHEPES緩衝液中37℃におけるリシンE354K突然変異ルシフェラーゼ、組み換え野生型ルシフェラーゼ及び天然ホタルルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の経時変化を示すグラフである。
【0035】
図13は組み換え野生型、E354K単一突然変異体及びE354K+A215L二重突然変異体の37℃でのルシフェラーゼ発現を、培養細胞密度の尺度としての光学密度の上昇をルシフェラーゼ活性に対してプロットすることによって示すグラフである。
【0036】
図14は1%BSA及び0.02%アジドを含有するpH7.75のHEPES中37℃における、各10ng/mlのA215L単一突然変異、E354K単一突然変異、A215L+E354K二重突然変異、組み換え及びSigma野生型ルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の5時間にわたる経時変化を示すグラフである。
【0037】
図15は1%BSA、0.02%アジド、2mM EDTA及び2mM DTTを含有するpH7.75のHEPES中37℃における、各10ng/mlのA215L単一突然変異、E354K単一突然変異、A215L+E354K二重突然変異、組み換え及びSigma野生型ルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の5時間にわたる経時変化を示すグラフである。
【0038】
配列表
本明細書本文の最後に添付した配列表に、次のDNA及びアミノ酸配列を示す。
【0039】
配列番号1には、Photinus pyralis野生型の1063〜1065位に位置するコドンを突然変異させた、本発明のルシフェラーゼをコードするDNAのDNA配列を示す。リシンを得るには1063位の塩基をAに突然変異させる。
【0040】
配列番号2には、Photinus pyralis野生型のアミノ酸354のグルタミン酸を別のアミノ酸に変更した本発明のタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0041】
配列番号3には、実施例2においてpPW601をSDM突然変異させ、それによって354位にグルタミン酸に替えてリシンを得るのに用いたオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0042】
配列番号4には、実施例5においてpPW601をSDM突然変異させ、それによって215位にロイシンを得るのに用いたオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0043】
配列番号5には、Photinus pyralis野生型のアミノ酸354のグルタミン酸を他の任意のアミノ酸に変更し、かつアミノ酸215をロイシンに変更した本発明のタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【実施例】
【0044】
実施例1:本発明のDNAを含むプラスミドの作製
Boehringer MannheimからプラスミドpKK223−3及びpDR540を得た。pDR540はPharmaciaからも入手可能である。
【0045】
マサチューセッツ州、ボストン所在のHarvard Medical School、生物化学部のStan Taborから、プラスミドpT7−7(Molecular Biology 第II巻,16.2.1.章のCurrent protocols参照)を得たが、該プラスミドは、(図8に示されているように)pT7−5のPvuIIとClaI部位の間に挿入されたT7遺伝子10タンパク質(T7 22857〜22972bp)のT7 RNAポリメラーゼプロモーターφ10及び翻訳開始部位を含んでいる。(5′末端に充填後)融合タンパク質を作製するための単一制限部位は、フレーム0:EcoRI;フレーム1:NdeI、SmaI、ClaI;フレーム2:BamHI、SalI,HindIIIである。元のポリリンカーのSacI部位を欠失により除去し、追加のXbaI部位を開始コドンの上流に設ける。
【0046】
Sigma Chemical Co.からホタルルシフェラーゼ(カタログ番号 L9009の結晶懸濁液から調製)、補酵素A及びATPを得た。甲虫ルシフェリンカリウム塩はPromegaから得た。細胞抽出物をPromegaテクニカルブレティン 101号に記載のように調製した。E.coli培養物の一部を細胞溶解試薬(25mM トリス−リン酸、pH7.8、2mM DTT、2mM EDTA、10% グリセロール、1% トリトン X−100、2.5mg/ml BSA、1.25mg/ml リゾチーム)中で室温で10分間溶解し、次いでアッセイに先立ち、氷上に保存した。
【0047】
コロニーをナイロンフィルター(Hybond N,Amersham)に移し、次いで該フィルターを、0.5mM ルシフェリンを含有する100mM クエン酸ナトリウム緩衝液pH5.0〔Wood & DeLuca,(1987) Anal Biochem 161 501−507ページ〕に浸して、該コロニーが発光する生物発光をモニターして、細胞系のルシフェラーゼ活性をアッセイした。125μlのアッセイ緩衝液(20mM トリシン、1mM MgSO、0.1mM EDTA、33.3mM DTT、0.27mM 補酵素A、0.47mM ルシフェリン、0.53mM ATP及び1〜2μlの試料)を用い、25℃で、in vitroルシフェラーゼアッセイを実施した。アッセイカクテルの最終pHは7.8であり、BioOrbit 1250ルミノメーターを用いて光測定を行った。
【0048】
DNAの非特異的化学突然変異体を作製するために、 Kirondeら(1989)Biochem.J.259,421−426ページの方法に従って、0.1mMリン酸ナトリウムpH6.0中0.8M ヒドロキシルアミン、1mM EDTAを用い、65℃で2時間、luc遺伝子を含むプラスミドを処理した。突然変異を起こしたプラスミドをG60 DNAグレードNickカラム(Pharmacia)上で脱塩し、次いで、E.coli BL21(DE3)に形質転換した。
【0049】
ルシフェラーゼ活性を有する粗細胞抽出物を種々の温度で20分間インキュベートし、残留活性を測定して、熱失活実験を実施した。Sigmaから得た精製ルシフェラーゼを用いた実験では、失活に先立ち、酵素をPromega溶解緩衝液に希釈した。経時変化実験では、溶解緩衝液中50μlの粗細胞抽出物又はSigmaルシフェラーゼを含むエッペンドルフ管を37℃でインキュベートした。アッセイに先立ち、種々の時間に管を取り出し、氷上で冷却した。残留(又は残存)活性は初期の活性の百分率として表した。
【0050】
各構築物、pPW204、pPW116及びpPW304からのルシフェラーゼの相対的発現レベルは、 E.coli BL21(DE3)では0.1:0.5:1.0である。LB中37℃でOD 600が0.3になるまで細胞を増殖させ、次いで、IPTGにより誘発、4時間増殖を継続させた後、粗抽出物を調製し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
表1:実施例1に用いた発現構築物のリボソーム結合部位(下線)及び開始コドン
【0051】
【表1】

【0052】
以下のプロトコルを用い、グルタミン酸を別のアミノ酸に変換するに必要な部位特異的突然変異誘発を実施した。グルタミン酸からリシンへの突然変異は単一AvaI制限部位内に存在し、従って該部位を破壊するので、単一のオリゴヌクレオチドを突然変異誘発及び選択オリゴヌクレオチドとして用いることが可能である。
部位特異的突然変異誘発プロトコル:
選択したプラスミドをリシン用の選択/突然変異誘発オリゴヌクレオチド:5′−CATCCCCCTGGGTGTAATCAG−3′〔下線を付したTは不適正(ミスマッチ)塩基である〕で変性・アニーリングする。突然変異DNA鎖を合成、連結し、一次制限部位全体をAvaIで消化する。
【0053】
Bio−Rad Gene Pulser 2−89型を用い、細胞、この場合はE.coli BMH71−18突然変異S細胞への形質転換を実施した。収穫した細胞と、突然変異を起こしたプラスミド及び親プラスミドを含む精製混合プラスミドプールとを得、AvaIによる二次制限消化を実施して、E.coli JM109細胞に形質転換した。これらの細胞を選択培地(LB寒天+50μg/ml アンピシリン)上に置き、クローンのプラスミドDNAを精製し、AvaI制限部位の欠損を分析してクローンのスクリーニングを行った。いずれの場合にも、Birnboim及びDoly(1979)Nucleic Acids Research 7,1513ページのアルカリ溶解法を用いてプラスミドDNAを精製した。厳密なプロトコルは、Clontech Laboratories Inc(US)からカタログ番号 K1600−1として販売されている、TransformerRTM部位特異的突然変異誘発キット(バージョン2)に記載の通りであった。
【0054】
Pharmacia pDR540と、Xho部位が破壊されたpGEM−lucからのBamHI/SstIフラグメントとから誘導されたpPW116の変異体であるpPW601aの制限地図を図4に示す。上記のように、Clontechの指示に従って、挿入された野生型Photinusのluc遺伝子を、発現されたタンパク質のアミノ酸配列が配列番号2に示されているように354位でリシンに改変されている配列番号1(1063−1065はAAGである)に示されている配列に変換するように部位特異的突然変異誘発を実施した。
【0055】
実施例2:ルシフェラーゼの熱安定性
E.coliにおいて上記のように作製されたベクター中の非改変及び改変(即ち、本発明の)luc遺伝子によって発現された種々のルシフェラーゼの熱安定性を測定し、結果を図5〜図8に示す。
【0056】
50mM リン酸カリウム緩衝液pH7.8、1mM EDTA、0.2%(w/v)BSA、1mM DTT及び10% 硫酸アンモニウム中、43.5℃で50μg/mlのルシフェラーゼ活性のt1/2(半減期)の比較は、以下のような時間で到達する残留50%活性を示す。
【0057】
【表2】

【0058】
上記数値から明らかなように、354グルタミン酸をリシンで置換すると、ルシフェラーゼの熱安定性が少なくとも43.5%まで増大することがわかる。
【0059】
実施例3:ルシフェラーゼの熱安定性
E.coliにおいて実施例1に記載のものと類似の方法で作製したベクター中の本発明の他の354位突然変異に対応するSDM改変luc遺伝子により発現された多くのルシフェラーゼの熱安定性を測定し、結果を図10にグラフで示す。
【0060】
Promega溶解緩衝液中40℃でt1/2の比較を行い、以下のようなt1/2(分)の結果を得た:
【0061】
【表3】

実施例4:37℃及び室温でのルシフェラーゼの安定性
pPW601Kリシン突然変異ルシフェラーゼ(86ng/ml)、組換え野生型ルシフェラーゼ(550ng/ml)及び天然型ルシフェラーゼ(Sigma)(62.5ng/ml)を、1% BSA、保存剤として0.02%アジドを含むpH7.75HEPES緩衝液中37℃で4時間インキュベートした。残留活性を測定するために、D−ルシフェリン基質に1ngのルシフェラーゼを加え、1分当たりの発光カウント数を記録した。
【0062】
37℃で2時間、室温で10日間インキュベートした後の残留活性に関する結果を以下に示す。
【0063】
37℃で2時間後:
E354K突然変異ルシフェラーゼ 残留活性70%
組換え野生型ルシフェラーゼ 残留活性12%
Sigma天然ルシフェラーゼ 残留活性18%
室温で10日後:
E354K突然変異ルシフェラーゼ 残留活性85%
組換え野生型ルシフェラーゼ 残留活性59%
Sigma天然ルシフェラーゼ 残留活性71%
実施例5:354K:215L二重突然変異体の作製及び安定性
実施例1に記載のように、pPW601a E354Kを得、これを、配列番号4のオリゴヌクレオチド、5′−GAATCTGACGCAGAGAGTTCTATGCGG−3′〔下線を付した塩基は突然変異を引き起こす不適正(ミスマッチ)塩基を表す〕を用いて突然変異を起こさせ、pPW601a Photinus pyralisルシフェラーゼの354リシン:215ロイシン二重突然変異体を作製した。熱失活媒体として1mM EDTA、0.2%(w/v)BSA、1mM DTT及び10%硫酸アンモニウムを含むpH7.8リン酸緩衝液を用い、実施例2から4に記載のようにして、実施例1に記載のものと類似の方法によりE.coli中で発現させて得られたルシフェラーゼのDNA配列決定及び熱安定性の測定によりこの突然変異体を確認した。
【0064】
リン酸緩衝液中43.5℃では、32分間にわたる活性の損失は5%未満であったのに対し、47℃では、t1/2は約38分であった。50℃では、二重突然変異体は、16分間のインキュベーション後に15%の活性を保持している。この失活テストの結果を図12にグラフで示す。
【0065】
実施例6:ルシフェラーゼの精製
組換え野生型又は突然変異ルシフェラーゼを発現するE.coli JM109細胞を、50μg/mlのアンピシリンを含むLuria Broth(LB)中30℃で増殖させ、初期対数増殖期の間にIPTG(1mM)により誘発させた。中間の静止期に細胞を収穫し、50mM KCl、1mM ジチオトレイトール、1.2mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)及び1mM EDTAを含む50mM トリス−HCl pH8.0(緩衝液A)に再懸濁した。MSE soniprep 150音波処理装置(振幅:14μ)中で細胞を破壊し、細胞溶解物を30,000×gで30分間遠心した。次いで、粗抽出物の上清を硫酸アンモニウムで分画し、35〜55%飽和の間に沈殿した画分が、ルシフェラーゼ活性を含むことが見いだされ、緩衝液Aに溶解した。
【0066】
0.5mM DTTを含む50mM トリス−HCl pH8.0(緩衝液B)中で平衡にしたPharmacia PD10カラムを用いて抽出物を脱塩し、脱塩抽出物をPharmacia Mono Q アニオン交換カラムにかけ、緩衝液B中0→500mMの直線勾配のNaClを用い流速4ml/分で2mlの画分として溶離した。ルシフェラーゼ活性のピーク画分を捕集し、長期保存するために、0.5mM DTT及び12%(v/v)グリセロールを含む25mM リン酸ナトリウム緩衝液pH7.5に溶解した。
【0067】
実施例7:精製ルシフェラーゼの熱失活
実施例6に記載のように、ルシフェラーゼの無細胞抽出物を含むエッペンドルフ管を準備した。精製したルシフェラーゼ調製物(50μg/ml)を、10%飽和硫酸アンモニウム、1mM ジチオトレイトール及び0.2% ウシ血清アルブミン(BSA)を含む50mM リン酸カリウム緩衝液pH7.8からなる熱安定性緩衝液中でインキュベートした。アッセイに先立ち、設定時間に管を取り出して氷/水浴中で冷却し、定量残留活性を初期活性の百分率として計算した。
【0068】
42〜50℃の温度範囲にわたって熱安定性緩衝液中での失活の半減期を測定して、精製された組換え野生型及び熱安定性ルシフェラーゼのアウレニウスプロットを作成した。次いで、t1/2(分)の自然対数値を1/Kに対してプロットした。等しい失活率に対して、 E354K突然変異体はこの範囲の温度で熱安定性を2℃上昇させるのに対し、A215L突然変異体は5℃上昇させ、二重突然変異体E354K+A215Lは6℃上昇させる。後者は、二重突然変異体の付加的性質を示している。
【0069】
実施例8:E.coliにおいて野生型組換えルシフェラーゼに比べて増大した突然変異ルシフェラーゼの発現
E.coli JM109細胞におけるルシフェラーゼの発現を液状培地中37℃での増殖中にモニターした。増殖中に、熱安定性突然変異体を発現する細胞は、組換え野生型酵素を発現する細胞に比べてより高い活性のルシフェラーゼを蓄積することが判明した。図13は、組換え野生型、E354K+A215L二重突然変異体及びE354Kの培養物について、600nmで増大する光学密度に対してルシフェラーゼ活性をプロッティングした際の上記作用をグラフで示している。単一及び二重突然変異体の熱安定性が増大すると、培養温度37℃でのルシフェラーゼの産生が増大し得ることがわかる。
【0070】
実施例9:37℃での突然変異ルシフェラーゼの安定性に対する緩衝液の作用
1% BSA及び0.02% アジドを含むHEPES pH7.75緩衝液中、A215L、E354K、E354K+A215L、組換え野生型及びSigmaルシフェラーゼそれぞれの10ng/ml溶液を調製し、37℃での熱安定性を、2mM EDTA及び2mM DTTを添加した同一組成物と比較した。結果を図14及び図15に示す。該結果は、A215L及びE354Kの37℃での相対安定性が緩衝液によって変化することを示している。
【0071】
実施例10:D−ルシフェリンの酸化により発光した光の波長に対するアミノ酸置換の影響
D−ルシフェリンを実施例3に記載の種々の本発明ルシフェラーゼで酸化したときに発光した光の波長を測定し、該波長がアミノ酸の突然変異によって変化することを知見した。発光した光の波長は、組換え野生型(E354)とE354Kとでは5nmの変化があり、E354KとE354Iとでは約15nmの変化があった。
【0072】
野生型組換えE.coli微生物はD−ルシフェリンの存在下に黄緑色の発光を示す。D−ルシフェリンを加えた場合の各突然変異E.coliによる発光色は以下の通りであった:
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】










【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpKK223−3から得たプラスミドpPW204の制限酵素地図である。
【図2】後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpDR540から得たプラスミドpPW116の制限酵素地図である。
【図3】後述の実施例に記載するluc遺伝子の挿入によってpT7−7から得たプラスミドpPW304の制限酵素地図である。
【図4】pDR540と、Xho部位を除去したpGEM−luc由来のBamH1/Sst1断片とから得たプラスミドpPW601aの制限酵素地図である。
【図5】実施例に後述するように所与の温度で20分間インキュベートした組み換え及び野生型Photinus属ルシフェラーゼ(Sigma)の熱失活のグラフである。
【図6】異なる温度下で増殖させた大腸菌BL21(DE3)pPW304の粗抽出物中のルシフェラーゼ活性のグラフである。
【図7】pPW304及びpPW304M−1(グルタミン酸354がリシンで置換されるようにコードする本発明のプラスミド)に由来するルシフェラーゼ活性の熱失活のグラフである。
【図8】Sigma野生型、pPW304及びpPW304M−1組み換えルシフェラーゼの37℃での経時失活のグラフである。
【図9】Taborから得たpT7−7の制限酵素地図である。
【図10】野生型の354位のグルタミン酸がアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン、メチオニン、アルギニン、リシン、セリン、トレオニン及びシステインでそれぞれ置換されたルシフェラーゼを発現する本発明のルシフェラーゼ発現大腸菌の粗細胞抽出物活性の、40℃のPromega溶解緩衝液中での熱活失を示すグラフである。
【図11】E354Kリシン変更及びA215Lロイシン変更を有する精製二重突然変異ルシフェラーゼ活性のリン酸緩衝液中47℃での熱失活を、単一突然変異体A215L及びE354Kと比較して示すグラフである。
【図12】0.02%アジドを加えたpH7.75のHEPES緩衝液中37℃におけるリシンE354K突然変異ルシフェラーゼ、組み換え野生型ルシフェラーゼ及び天然ホタルルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の経時変化を示すグラフである。
【図13】組み換え野生型、E354K単一突然変異体及びE354K+A215L二重突然変異体の37℃でのルシフェラーゼ発現を、培養細胞密度の尺度としての光学密度の上昇をルシフェラーゼ活性に対してプロットすることによって示すグラフである。
【図14】1%BSA及び0.02%アジドを含有するpH7.75のHEPES中37℃における、各10ng/mlのA215L単一突然変異、E354K単一突然変異、A215L+E354K二重突然変異、組み換え及びSigma野生型ルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の5時間にわたる経時変化を示すグラフである。
【図15】1%BSA、0.02%アジド、2mM EDTA及び2mM DTTを含有するpH7.75のHEPES中37℃における、各10ng/mlのA215L単一突然変異、E354K単一突然変異、A215L+E354K二重突然変異、組み換え及びSigma野生型ルシフェラーゼの初期活性残存率(%)の5時間にわたる経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルシフェラーゼ活性を有し、かつPhotinus pyralis、Luciola mingrelica、Luciola cruciataまたはLuciola lateralis由来のルシフェラーゼに対して60%を越えるアミノ酸配列相同性を有するタンパク質であって、Photinus pyralisルシフェラーゼの残基354またはLuciola mingrelica、Luciola cruciata及びLuciola lateralisルシフェラーゼの残基356に対応するアミノ酸残基がグルタミン酸以外のアミノ酸であることを特徴とするタンパク質。
【請求項2】
アミノ酸配列XGDDKPGAを含み、この配列中のXはグルタミン酸以外のアミノ酸残基であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
アミノ酸配列TPXGDDKPGAを含み、この配列中のXはグルタミン酸以外のアミノ酸残基であることを特徴とする請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
アミノ酸Xがグリシン、プロリンまたはアスパラギン酸でないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
アミノ酸Xがトリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びアスパラギンのうちのいずれかであるか、またはこれらのアミノ酸のうちのいずれかの類似体または修飾体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
アミノ酸Xがリシン及びアルギニンのいずれか一方であるか、またはこれらのアミノ酸の類似体または修飾体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項7】
配列番号2に示したアミノ酸配列を含み、前記配列中のXaaは請求項5または6に記載のアミノ酸またはその類似体もしくは修飾体であるタンパク質。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするDNA。
【請求項9】
配列番号1に示したヌクレオチド配列を含み、前記配列の1063〜1065位の3個の塩基Nはグルタミン酸以外のアミノ酸をコードするコドンを構成することを特徴とする請求項8に記載のDNA。
【請求項10】
前記コドンが請求項5または6に記載のアミノ酸、類似体または修飾体をコードすることを特徴とする請求項9に記載のDNA。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするluc遺伝子を含むベクター。
【請求項12】
野生型または組み換えluc遺伝子を含むベクターを、Photalis pyralisルシフェラーゼの354位のグルタミン酸またはLuciola mingrelica、Luciola cruciataもしくはLuciola lateralisルシフェラーゼの356位のグルタミン酸をコードするコドンを代替アミノ酸、該アミノ酸の類似体、または該アミノ酸の修飾体をコードするコドンに変更する部位特異的突然変異誘発によって処理することにより取得可能であることを特徴とする請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
代替アミノ酸が請求項5または6に記載のアミノ酸、類似体または修飾体であることを特徴とする請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
内部にluc遺伝子が連結された、pKK223−3、pDR540及びpT7−7の中から選択されることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか1項に記載のDNAまたはベクターを保有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質を発現させ得る細胞。
【請求項16】
大腸菌、S. cerevisiaeまたは昆虫細胞であることを特徴とする請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
ATP測定によるアッセイを実施するための試験キットであって、発光試薬中に存在する請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とするキット。
【請求項18】
光を発生するルシフェリン及びルシフェラーゼを用いてATPを測定するアッセイ方法であって、前記光の量はATPの量に関連し、ルシフェラーゼが請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質であることを特徴とする方法。
【請求項19】
アッセイを30〜70℃の温度で行なうことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アッセイを37〜60℃の温度で行なうことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アッセイを40〜50℃の温度で行なうことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
熱安定化剤の不在下に室温で10日間貯蔵後にそのルシフェラーゼ活性を85%以上維持しているルシフェラーゼ調製物。
【請求項23】
請求項1から7のいずれか1項または請求項22に記載のルシフェラーゼの、特異的結合試薬のためのラベルとしての使用。
【請求項24】
請求項1から7のいずれか1項に記載のルシフェラーゼで標識した特異的結合試薬を含むことを特徴とする試験キット。
【請求項25】
細胞またはDNAの同定のための、請求項8から14のいずれか1項に記載のルシフェラーゼコーディングDNAまたはベクターの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルシフェラーゼ調製物であって、熱安定化剤の不存在下で室温において10日間貯蔵後にそのルシフェラーゼ活性を85%以上保持しているルシフェラーゼ調製物。
【請求項2】
野生型ルシフェラーゼの変異型を含むルシフェラーゼ調製物であって、該調整物は、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.02%アザイドを添加したpH7.75のHEPES緩衝液を含む溶液の存在中で、室温において10日間貯蔵後に、そのルシフェラーゼ活性を85%以上保持しているルシフェラーゼ調整物。
【請求項3】
野生型ルシフェラーゼの変異型を含むルシフェラーゼ調製物であって、該調整物は、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.02%アザイドを添加したpH7.75のHEPES緩衝液を含む溶液の存在中で、37℃において2時間貯蔵後に、そのルシフェラーゼ活性を70%以上保持しているルシフェラーゼ調整物。
【請求項4】
熱安定性が改善されたルシフェラーゼを得る方法であって、野生型ルシフェラーゼを変異させ、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.02%アザイドを添加したpH7.75のHEPES緩衝液を含む溶液の存在中で、室温において10日間貯蔵後に、そのルシフェラーゼ活性を85%以上保持している変異体を選択することを含む方法。
【請求項5】
熱安定性が改善されたルシフェラーゼを得る方法であって、野生型ルシフェラーゼを変異させ、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.02%アザイドを添加したpH7.75のHEPES緩衝液を含む溶液の存在中で、37℃において2時間貯蔵後に、そのルシフェラーゼ活性を70%以上保持している変異体を選択することを含む方法。
【請求項6】
ATPの測定によるアッセイを実施するための試験キットであって、発光試薬中に請求項1から3のいずれか1項に記載のルシフェラーゼ調整物を含むことを特徴とするキット。
【請求項7】
光を発生するルシフェリン及びルシフェラーゼを用いてATPを測定するアッセイ方法であって、前記光の量はATPの量に関連し、ルシフェラーゼが請求項1から3のいずれか1項に記載のルシフェラーゼ調整物であることを特徴とするアッセイ方法。
【請求項8】
アッセイを30〜70℃の温度で行なうことを特徴とする請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項9】
アッセイを37〜60℃の温度で行なうことを特徴とする請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項10】
アッセイを40〜50℃の温度で行なうことを特徴とする請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項11】
特異的結合試薬のためのラベルとしての、請求項1から3のいずれかに記載のルシフェラーゼ調整物からのルシフェラーゼの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−271393(P2006−271393A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163388(P2006−163388)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【分割の表示】特願平7−524486の分割
【原出願日】平成7年3月22日(1995.3.22)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】