説明

ルミネセンス性金属酸化物フィルム

本発明は、さまざまな用途において有用なことがあるルミネセンス性膜を含む物品および方法に関する。本発明のルミネセンス性膜は、金属酸化物ナノ粒子の層を含んでよく、場合によって、分析物と相互作用して検出可能な信号を発生させることがあり、それによって、分析質の存在および/または分析質の量を測定することができる。実施態様によっては、ルミネセンス性膜と分析物との間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起ってよい。そのような物品および方法は、例えば生物アッセイまたはセンサにおいて有用なことがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ルミネセンス性膜を含む物品および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
半導体ナノ結晶すなわち量子ドットは、さまざまな用途で有用となり得る高度に発光性の材料である。カドミウム含有ナノ結晶および鉛含有ナノ結晶などのある種の半導体ナノ結晶は、調節可能な発光と狭いバンド幅とを示し、それによって、生物標識法の蛍光プローブなどの光学デバイスおよび診断法において有用となり得ることが示された。しかし、そのような半導体ナノ結晶を広く利用する可能性は、固有の毒性によって制約を受けることがある。固有毒性の低いルミネセンス性ナノ粒子を代替物として使用してよいが、多くは光安定性が良くなく、水溶液中の溶解度が低い。例えば、ルミネセンス性ナノ粒子は、日光に長時間暴露されると水溶液中で大きな凝集体を形成することがある。さらに、ルミネセンス性ナノ粒子は、乾燥させ長期間にわたって保存すると溶液に溶けなくなり、そのため、多くの用途での使用に適さなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、改善された方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要約
本発明は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子薄膜の形成のための方法を提供する。本方法は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を含む層を基板の表面上に形成させる工程、および基板を、150℃を超えない温度で、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を表面にアニール(anneal)するのに十分な時間加熱する工程を含む。本方法では、加熱する前にルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は特定の組の励起条件下で第1の発光を有し、加熱した後にルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は該特定の組の励起条件下で第1の発光の少なくとも80%の強度を有する第2の発光を有する。
【0005】
本発明は、分析物を結合させる方法も提供する。本方法は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を、分析物を含む疑いのある試料と接触させ、分析物が存在すると、分析物とルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の相互作用によって分析物をルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に固定化することを含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、標的分析物の測定のための物品に関する。本物品は、基板と、基板の表面上に形成され基板に接着したルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む層とを含む。本物品中で、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含む。
【0007】
本発明の別の態様は、蛍光共鳴エネルギー移動ドナーに関する。本蛍光共鳴エネルギー移動ドナーは、分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含むルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含み、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、蛍光共鳴エネルギー移動ドナーであり、分析物は、蛍光共鳴エネルギー移動アクセプタである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
詳細な説明
本発明は、さまざまな用途において有用となり得るルミネセンス性膜を含む物品および方法に関する。本発明のルミネセンス性膜は、金属酸化物ナノ粒子の層を含み、場合によって、分析物と相互作用して検出可能な信号を発生し、それによって、分析物の存在および/または分析物の量を測定することができる。実施態様によっては、下記でさらに詳しく考察するように、ルミネセンス性膜と分析物との間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起ってよい。そのような物品および方法は、例えば、生物アッセイにおいて、または生物センサとして有用となり得る。
【0009】
ルミネセンス性金属酸化物粒子(例えばZnO)は、発光する性質および低い毒性によって、例えば生物アッセイおよびデバイスにおいて有用となり得る。しかし、多くのルミネセンス性金属酸化物粒子は、溶液中で不安定となり、使用が制限される。例えば、ある種のルミネセンス性金属酸化物粒子は、水溶液中で日光に長時間暴露されると、大きな凝集体を形成し、低濃度で不安定となることがある。ルミネセンス性金属酸化物の安定性を向上させる一手法は、固相膜中に組み込むことを含む。しかし、金属酸化物膜を形成させるための一般的な従来方法は、高温(500〜700℃)での焼成を含み、一般的にルミネセンスの著しく低下した膜を作り出す。本発明は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子の安定性を場合によって向上させる物品および方法を提供し、さまざまな用途において利用する。本発明の特定の実施態様は、ZnOおよびその他のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子、ナノ結晶または類似物など、高度に発光性のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子の層を含む膜の作製および使用を含む。
【0010】
本発明の一態様は、安定なルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子膜(例えば層)を形成させるための方法を提供する。一実施態様では、本方法は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む層を基板の表面上に形成させる工程を含む。層は、例えば、スピンキャスト(spin-casting)法、ドロップキャスト(drop-casting)法またはその他の析出技法によって、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子の溶液または懸濁液からの析出によって形成させ、次に、ゆっくり乾燥させた後、アニールするとよい。本発明は、一態様では、乾燥工程がルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の均一性に影響を及ぼし得るという認識を含む。実施態様によっては、スピンキャスト膜を40℃前後で乾燥させると均一な膜が得られた。実施態様によっては、スピンキャスト膜を室温でゆっくり乾燥させた。次に、乾燥した膜を、比較的温和であるがルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を表面にアニールするのに十分な温度で、適切な時間加熱するとよい。本明細書で用いられる用語「アニール」は、基板と、この基板上に形成された層とを加熱して、溶液中に浸漬および/または溶液中で超音波処理しても層が基板に接着しているように、層を安定化させることを指す。場合によって、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、アニール後に表面と共有結合を形成している。
【0011】
実施態様によっては、アニールプロセスの間に150℃を超えない温度で基板を加熱するとよい。他の実施態様では、140℃を超えない、130℃を超えない、120℃を超えない、または110℃を超えない温度で膜を加熱するとよい。層の光学的性質を低下させずに基板の表面に安定な(例えば、アニールされた)層を形成させるのに十分な時間、膜を加熱してもよい。一実施態様では、膜を約10分間アニールしてよい。アニール工程の温度および継続時間は、膜の均一性およびルミネセンス(例えば蛍光、りん光および類似放射)など、結果として得られる膜の性質に影響を及ぼすことがある。当業者は、本開示を利用すれば不必要な実験をせずに、金属酸化物に合わせてアニール温度と時間との組み合わせを選び、金属酸化物のルミネセンスをまったくまたはほとんど低下させずに良質の膜を作り出すことができよう。
【0012】
本発明の好ましいルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子膜は、アニールした後、頑丈で光安定である。実施態様によっては、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、アニールした後、ルミネセンス特性を実質的に保持する。例えば、本発明のアニール条件(膜を基板に対してアニールさせるのに十分な温度および時間加熱すること)へ曝露される前、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、特定の組の励起条件下で第1の発光を有してよい。そのような条件への曝露の後、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、同じ特定の組の励起条件下で第2の発光を有してよく、第2の発光は、少なくとも1つの発光波長で、第1の発光の少なくとも80%の強度を有する。「発光波長」は、対象材料がアニールの前と後との両方で発光する波長であり、アッセイまたは類似技法において有用な信号伝達機能を果すことができる波長を意味する。別の実施態様では、第2の発光は、第1の発光の少なくとも90%の強度を有する。膜のルミネセンス特性が大部分実質的に保持されるのは、アニール温度が比較的低いためと考えてよい。図3に示すように、本発明の一比較測定におけるアニール膜のルミネセンス強度は、アニール温度が高くなると低下する。この例で、膜を500℃に加熱するとルミネセンスの98%強が低下した。実施態様によっては、例えばスピンキャスト)層のアニール前のルミネセンス強度の少なくとも90%を保持させるために、110℃を超えない温度で本発明のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層をアニールするとよい。
【0013】
実施態様によっては、ルミネセンス性金属酸化物膜または層は、顕著な均一性を有する。すなわち、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、凝集体を形成するのではなく、層内および基板の表面上に均一に分布してよい。場合によって、アニールした後、例えば金属酸化物ナノ粒子上のヒドロキシ基と基板(例えばガラス基板)の表面基(例えばシラノール基)との間の共有結合の形成によって、膜を溶けにくくしてよい。場合によって、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、少なくとも1つの発光波長におけるルミネセンスをあまり低下させずに(例えば、1%、2%、5%、10%、15%または20%未満低下させ)、室温(約25℃)および/または室温近く(すなわち約4℃と約25℃との間)で長期間(例えば1週間、1ヶ月、3ヶ月または6ヶ月、あるいは1年間)保存することができる。他の実施態様では、本発明のアニール膜は、少なくとも30℃、35℃、40℃または45℃の温度で貯蔵しても、上記のように安定である。
【0014】
図1に示す説明用の実施態様で、ルミネセンス性ZnO膜は、ZnOナノ粒子の溶液から調製してよい。ルミネセンス性粒子10の溶液(例えば水溶液)は、表面にアミン基で官能化したシランコーティングを含み、基板20上に析出させて(例えばスピンキャスト、ドロップキャストまたは類似法)物品30を形成させ、40℃で乾燥させた後、110℃でアニールしてZnO膜40を形成させてよい。ZnO膜は、高度に均一で、頑丈で、光安定である。ZnO膜は、対応するルミネセンス性ZnOナノ粒子溶液と比較すると、光安定性は勝り、反応性は同程度である。
【0015】
本発明は、基板と、基板の表面上に形成され基板の表面に接着したルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層とを含み、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子が複数の官能基を含む物品も提供する。場合によっては、官能基をルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の表面に存在させ、表面に特定の性質を付与してよい。すなわち、官能基は、層の表面に存在させたとき、特定の実体または実体群への親和性などの特定の性質を表面上に付与することができる官能基を含んでよい。実施態様によっては、官能基は、結合の相手として働き、分析物と結合(例えば共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合または類似結合)を形成してよい。当業者は、本開示を利用して、不必要な実験をせずにそのような官能基を選ぶことができよう。適当な官能基の例は、‐OH、‐CONH‐、‐CONHCO‐、‐NH、‐NH‐、‐COOH、‐COOR、‐CSNH‐、‐NO‐、‐SO‐、‐RCOR‐、‐RCSR‐、‐RSR、‐ROR‐、‐PO−3、‐OSO−2、‐COO、‐SOO、‐RSOR‐、‐CONR、‐CH、‐PO、‐2‐イミダゾール、‐N(CH、‐NR、‐PO、‐CN、‐(CF‐CF(n=1〜20、好ましくは1〜8、3〜6または4〜5で表示値も含む)、オレフィンおよび類似物を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、結合相手は、アミン、カルボン酸、リン酸塩、ヒドロキシルおよびチオールの中から選んでよい。特定の実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、表面に存在するアミンを含み、他の実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、表面に存在するカルボン酸を含む。
【0016】
実施態様によっては、例えば、2つの生体分子の間の結合または結合の形成によって標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手によって官能基をさらに官能化してよい。結合相手は、キレート化基、親和性標識(例えば、ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジン結合対または類似対の片割れ)、抗体、ペプチドまたは蛋白質配列、核酸配列、またはさまざまな生物、生化学またはその他の化学種と選択的に結合する部分であってよい。一実施態様では、結合相手は、アビジンを含んでよい。
【0017】
本発明の別の態様は、分析物と結合させるための方法に関する。本発明のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、分析物を含む疑いのある試料と接触させ、分析物が存在すると、分析物とルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の相互作用によって、分析物をルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に固定化させてよい。分析物は、本明細書に記載されているように2つの生体分子の間の結合または、場合によって結合の形成によってルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と相互作用してよい。
【0018】
本明細書で用いられる「結合」は、任意の疎水性、非特異性または特異性相互作用を含んでよく、「2つの生物学的分子の間の結合」は、相互親和性または結合能力、一般的に特異性または非特異性結合または相互作用を示す対応する分子の対の間の相互作用を指す。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層とフルオロフォアとの相互作用は、場合によって、蛋白質/炭水化物相互作用、リガンド/受容体相互作用、またはその他の生物結合相手同士などの特異性相互作用によって促進されてよい。用語「結合相手」は、特定の分子と結合することができる分子を指す。用語「特異性相互作用」は、当分野において用いられる通常の意味、すなわち、分子同士が他の非対応分子に対する場合より高い認識または親和性を有する、分子の対の間の相互作用を有するものとする。ビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプトアビジンが特異性相互作用の例である。
【0019】
分析物と優先的に結合するルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の能力は、複数の用途において利点としてよい。例えば、一実施態様では、本発明は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子とフルオロフォアとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のための方法を提供する。用語「蛍光共鳴エネルギー移動」すなわち「FRET」は、当分野において既知であり、励起状態化学種(すなわちFRETドナー)からアクセプタ化学種(すなわちFRETアクセプタ)への励起エネルギーの移動を指し、アクセプタ化学種からの発光が観測される。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、FRETが起るように相互作用することがある。相互作用は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物との相互作用を含み、分析物はフルオロフォアである。場合によって、分析物は、フルオロフォアを含んでよい。例えば、分析物を、結合または結合性相互作用によってフルオロフォアと結合させてよく、あるいは他の方法によってフルオロフォアと会合させてよい。本明細書で用いられる用語「分析物」は、分析物と会合しているフルオロフォアを含むと理解するべきである。
【0020】
本発明は、本明細書に記載されている物品が分析物とFRETを行い、このとき、エネルギードナーとエネルギーアクセプタとの間のエネルギー移動が分析物によって容易になる方法を提供してよい。例えば、フルオロフォアを含む分析物(分析物はそれ自体フルオロフォアであってよく、および/または、分析物はフルオロフォアに取り付けられるかまたは他の方法で固定化されてよい)をルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と接触させてよく、この場合、ルミネセンス性金属酸化物層はFRETドナーであり、フルオロフォアはFRETアクセプタである。分析物をルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に固定化し、これによって、当業者であれば理解するように、FRETが起るのに十分なほどフルオロフォアをルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に接近させてよい。ルミネセンス性金属酸化物層をエネルギー源へ曝露させると、ルミネセンス性金属酸化物層励起エネルギーが形成され、このエネルギーは次にフルオロフォアへ移動し、フルオロフォアからの発光を引き起すことができる。発光によって分析物を測定(例えば観測、定量等)してよい。そのような方法によれば、フルオロフォアは電磁放射による直接励起を受けなくてよく、フルオロフォアの光退色が減り、小型有機分子、蛍光染料、緑色蛍光蛋白質および類似物などのフルオロフォアの寿命が長くなりおよび/または性能が向上することがある。場合によって、FRETの結果としてフルオロフォアの発光が増幅され、蛍光発光の定量の信頼性が高まってよい。本発明の方法は、フルオロフォア濃度が低いシステムにおいても有利となることがある。
【0021】
特異性相互作用を用いて分析物とルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層とを互いに接近させ、これによって、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層(例えばエネルギードナー)と、分析物(例えばエネルギーアクセプタ)と会合したフルオロフォアとをエネルギー移動に参加させることができる。例えば、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はリガンドを含み、分析物はそのリガンドに対する受容体を含むとよい。一実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はビオチンを含み、分析物はアビジンまたはストレプトアビジンを含むとよい。あるいは、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、ビオチン‐アビジン複合体を含み、分析物はビオチンを含むとよい。別の例では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はオリゴヌクレオチド(DNAおよび/またはRNA)を含み、分析物は実質的に相補性のオリゴヌクレオチドを含むとよい。当業者であれば、特定の用途に適合するような結合相手同士の適切な対を選ぶことができる。
【0022】
実施態様によっては、FRETを容易にするのに十分な程度にルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物とを互いに接近させることを中間結合部によって容易にしてよい。例えば、中間結合部は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物とに特異的に結合してよい。発色団同士が互いに接近する限り、中間結合部、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層および分析物は任意の順序で相互作用してよい。例えば、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と中間結合部とが最初に相互作用し、次に分析物がルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と中間結合部との一方または両方と相互作用してよく、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物とが最初に相互作用し、次にルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物との一方または両方が分析物と相互作用してよく、分析物、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層および分析物がすべて同時に相互作用してよい、等である。特定の実施態様では、図8に図式的に示すように、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物とはそれぞれビオチンを含み、中間結合部はアビジンを含む。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層および/または分析物と中間結合部とが相互作用すると、発光が生じる。この発光にはしきい値があり、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層および/または分析物は、中間体結合部が存在しないとき、この発光しきい値レベルより大きな発光を生じない。
【0023】
別の態様では、本発明はFRETドナーを提供し、FRETドナーはルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含み、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含み、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子と分析物との間で本明細書に記載されているようにFRETを起させてよい。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の励起波長の電磁エネルギーを照射してルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子励起エネルギーを発生させ、このエネルギーを次にフルオロフォアへ移動させ、フルオロフォアからの発光を引き起してよい。効率的なFRETを容易にするように、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子とフルオロフォアとを選んでよい。例えば、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、フルオロフォアの吸収スペクトルと重なり合う発光スペクトルを有するとよい。
【0024】
場合によって、フルオロフォアは、有機蛍光染料であってよく、その場合、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の波長で励起させると、層から染料へのFRETが起り、その結果、染料からの発光ピークが生じる。図9は、本発明の例となる実施態様を図式的に示す。この場合、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を励起させると、結合したローダミン染料からの発光ピークが生じる結果となる。蛍光染料の例は、フルオレセイン、ローダミンB、テキサスレッド(商標)X、スルホローダミン、カルセインおよび類似染料物を含むがそれらに限定されない。
【0025】
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層をFRETドナーとして用いると、この層は検出可能な信号を発生させるための有効な集光ツールとして作用することがあるので、いくつかの用途で有利となり得る。その結果、本発明の物品および方法を組み込んだデバイス(例えばセンサ)およびアッセイを所定の分析物に対して高感度、選択性にすることができる。例えば、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層からのFRETによる有機染料の発光強度を有機染料直接励起による同じ有機染料の発光強度より著しく高くすることができる。これは、例えば低濃度の分析物を有するシステムでは有利なことがある。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層からのFRETによる発光強度の増幅は、バイオアッセイ、生物学的分子の蛍光標識化、生物学的分子およびその他の化学物質の検出および定量ならびに類似技法における分析物の測定において特に有用となり得る。
【0026】
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、化学的分析物または生物学的分析物などの分析物を測定するためのデバイス(例えばセンサ)および方法にも有用となり得る。この場合、分析物をルミネセンス性金属酸化物層に固定化し、層と分析物との間で本明細書に記載されているようにFRETを起させることができる。本明細書で用いられる用語「測定する」は、一般に、例えば定量的または定性的に化学種または信号の分析、および/または化学種または信号の有無の検出を指す。「測定する」は、例えば、定量的にまたは定性的に2つ以上の化学種または信号の間の相互作用の分析、および/または相互作用の有無を検出することも指してよい。本発明は、試料中の生物実体を測定する、例えば、試料中の生物実体の存在、種類、量等を測定するための物品および方法を提供してよい。試料は、生物実体の存在を測定する対象となる任意の適当な試料源、例えば、食物、水、植物、動物、体液(例えばリンパ液、唾液、血液、尿、ミルクおよび胸部分泌物等)、組織試料、環境試料(例えば空気、水、土壌、植物、動物等)または類似物から採取してよい。一実施態様では、生物実体は、病原体である。
【0027】
例えば、本発明は、一実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を、フルオロフォアを含む分析物を含む疑いのある試料と接触させることを含む方法を提供する。この方法では、本明細書に記載されているように、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はエネルギー供与体であり、フルオロフォアはエネルギーアクセプタである。分析物が存在する場合、本明細書に記載されているように、フルオロフォアからの発光の測定によって分析物を測定してよい。
【0028】
図8は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層が層の表面に存在する結合相手としてビオチンを含む実施態様の例を示す(図8A)。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層をアビジンおよび蛍光標識化ビオチンと接触させると、アビジンとビオチン部分との間の相互作用によってアビジンおよび蛍光標識化ビオチンは層と結合する(図8B)。図9に示すように、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の励起波長の電磁エネルギーを照射すると、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子励起エネルギーを発生させ、このエネルギーは次に蛍光標識へ移動し、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層からではなく蛍光標識からかなりの部分の発光を起させることができる。この発光の発生によって、試料中に存在する分析物の存在および/または量を示すことができる。
【0029】
本発明のさまざまな実施態様は、エネルギードナーからエネルギーアクセプタへのエネルギーの移動を提供する。実施態様によっては、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はエネルギードナーであり、フルオロフォアはエネルギーアクセプタであってよい。あるいは、他の実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層はエネルギードナーであるように選ばれ、フルオロフォアはエネルギーアクセプタであってよい。当業者であれば、エネルギードナーおよび/またはアクセプタとして用いられる適切な材料を選ぶことができる。
【0030】
例えば、FRET機構におけるエネルギーアクセプタまたはドナーは、吸光度および/または発光の波長によって選ぶとよい。エネルギーは、Foerster移動、Dexter機構、またはFoerster移動とDexter機構との組み合わせによってエネルギードナーからエネルギーアクセプタへ移動してよい。Foerster移動がエネルギードナーとアクセプタとの間のエネルギー移動の機構である場合、エネルギー移動の度合いは、エネルギードナー発光とエネルギーアクセプタ吸光度との間のスペクトル重なり合いの量によって変化してよい。Dexter機構によるエネルギー移動が起ることができる場合、エネルギー移動の量は、エネルギードナーとアクセプタとの間のスペクトル重なり合いに実質的に依存しないことがある。本明細書で用いられる「スペクトル重なり合い」は、当分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。すなわち、2つのスペクトルを規格化し重ね合わせたとき、同時に両方の曲線の下にある面積(すなわち、積分によって測定される)が存在する。
【0031】
FRETを含む別の組の実施態様では、第1の発色団(例えばエネルギードナー)は第1の発光寿命を有し、第2の発色団(例えばエネルギーアクセプタ)は第1の発光寿命より少なくとも約5倍大きな、場合によって、少なくとも約10倍大きな、少なくとも約15倍大きな、少なくとも約20倍大きな、少なくとも約25倍大きな、少なくとも約35倍大きな、少なくとも約50倍大きな、少なくとも約75倍大きな、少なくとも約100倍大きな、少なくとも約125倍大きな、少なくとも約150倍大きな、少なくとも約200倍大きな、少なくとも約250倍大きな、少なくとも約350倍大きな、少なくとも約500倍大きな等の第2の発光寿命を有してよい。
【0032】
さらに別の組の実施態様では、第2の発色団は、場合によって、第1の発色団の発光を、例えば少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約30倍、少なくとも約100倍、少なくとも約300倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約3000倍、または少なくとも約10,000倍またはそれ以上強めてよい。
【0033】
場合によって、分析物が存在するとFRETは新しいしきい値発光を生じさせることがある。この場合、新しいしきい値発光と分析物のない場合の発光との重なり合いは最低限である。一組の実施態様では、新しいしきい値発光は、優勢な非しきい値発光のピーク極大より波長が少なくとも約100nm高いピーク極大を有するとよい。すなわち、エネルギードナーとエネルギーアクセプタとは、少なくとも約100nm異なる最大発光波長を有するとよい。他の場合には、新しいしきい値発光は、優勢な非しきい値発光のピーク極大より波長が少なくとも約150nm高いピーク極大を有するとよい。さらに他の場合には、新しいしきい値発光は、優勢な非しきい値発光のピーク極大より波長が少なくとも約200nm、約250nm、約300nmまたはそれ以上高いピーク極大を有するとよい。
【0034】
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、スピンキャスト法、ドロップキャスト法または低速蒸発法などの溶媒キャスト技法を含む当業者に既知の任意の適当な方法によって形成してよい。アニール工程の温度および継続時間は、特定の用途に適合するように変化させてよい。実施態様によっては、アニール温度および時間は、基板への接着強さおよび層の光学的性質などの特定の性質を最適化するように変化させてよい。例えば、温度および時間は、場合によっては共有結合の形成によって、層を基板の表面に接着させるのに十分であるように選んでよい。これは、アニールした層を溶液中に浸漬しおよび/または溶液中で超音波照射して層が接着したままで残るかまたは基板から剥離するかを求めて試験して評価するとよい。同様に、いくつかの温度および/または時間間隔で層のルミネセンスを観測し、光学的性質が低下し始めるか、どの温度および/または時間で低下し始めるかを測定するとよい。
【0035】
官能基および/または結合相手は、既知の方法を用いてルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子に取り付けてよい。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子の表面を官能化するために、ナノ粒子は、場合によって最初に調節量の塩基の存在下で官能化シランと反応させ、これによって、官能化シランに実質的に一回の加水分解反応だけを行わせ、ナノ粒子と共有結合を形成するとよい。シラン共役の度合いおよび比率は、反応系内の温度および塩基の量を変化させることによって調節することができる。第1の工程から単離した中間体を次に溶媒中に懸濁させ、次に過剰の塩基と反応させて官能化シラン部分の粒子内シラン化を完了させるとよい。
【0036】
シラン共役は、塩基性媒質中で加水分解されてナノ粒子の周囲のシリカシェルを形成するトリメトキシシリル、メトキシシリルまたはシラノール基を一端に有するものを含むさまざまな種類のシラン類を用いて実行してよい。シラン類は、有機官能基も含んでよい。有機官能基の例は、リン酸エステルおよびホスホン酸エステル基、アミン基、チオール基、カルボニル基(例えばカルボン酸および類似物)、C〜C20アルキル、C〜C20アルケン、C〜C20アルキン、アジド基、エポキシ基または本明細書に記載されているその他の官能基を含む。これらの官能基は、ナノ粒子へのシラン共役の前または後に、当分野で既知の方法を用いて官能化シラン類と結合させてよい。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子およびルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の表面に官能基を存在させてもよい。
【0037】
本明細書に記載されているように、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手も含んでよい。結合相手は、媒質中、例えば溶液中で別の生物学的分子または化学分子に結合することができる生物学的分子または化学分子を含んでよい。例えば、結合相手は、蛋白質、核酸、糖蛋白質、炭水化物、ホルモンおよび類似物を含む生物学的分子の対の間で起る相互作用によって、分析物と生物的に結合することができるとよい。具体的な例は、抗体/ペプチド対、抗体/抗原対、抗体フラグメント/抗原対、抗体/抗原フラグメント対、抗体フラグメント/抗原フラグメント対、抗体/ハプテン対、酵素/基質対、酵素/阻害剤対、酵素/補因子対、蛋白質/基質対、核酸/核酸対、蛋白質/核酸対、ペプチド/ペプチド対、蛋白質/蛋白質対、小分子/蛋白質対、グルタチオン/GST対、抗GFP/GFP融合蛋白質対、Myc/Max対、マルトース/マルトース結合蛋白質対、炭水化物/蛋白質対、炭水化物誘導体/蛋白質対、金属結合標識/金属/キレート、ペプチド標識/金属イオン‐金属キレート対、ペプチド/NTA対、レクチン/炭水化物対、受容体/ホルモン対、受容体/エフェクタ対、相補性核酸/核酸対、リガンド/細胞表面受容体対、ウイルス/リガンド対、蛋白質A/抗体対、蛋白質G/抗体対、蛋白質L/抗体対、Fe受容体/抗体対、ビオチン/アビジン対、ビオチン/ストレプトアビジン対、薬物/標的対、亜鉛フィンガー/核酸対、小分子/ペプチド対、小分子/蛋白質対、小分子/標的対、マルトース/MBP(マルトース結合蛋白質)などの炭水化物/蛋白質対、小分子/標的対または金属イオン/キレート化剤対を含む。
【0038】
本発明のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、参照によってそれぞれ本明細書に組み込まれるJanaら、Chem. Mater. 2004, 16, 3931-3935、Meulenkampら、J. Phys. Chem. B 1998,102, 5566、Abdullahら、Adv. Func. Mater. 2003, 13, 800に記載されている方法を含む当分野で既知の方法を用いて合成してよい。用語「ナノ粒子」は、最大断面寸法が1μmを超えない粒子を指してよい。ナノ粒子は、例えば、無機または有機、重合体、セラミック、半導体、金属、非金属、結晶性(例えば、「ナノ結晶」、非晶質または組み合わせである材料で作ってよい。ナノ粒子は、典型的には、任意の断面寸法が250nmより小さく、より典型的には、任意の断面寸法が100nmより小さく、好ましくは任意の断面寸法が50nmより小さい。実施態様によっては、ナノ粒子は約2から約50nmの直径を有するとよい。実施態様によっては、ナノ粒子は、約2から約20nmの直径を有するとよい。さらに別の実施態様では、ナノ粒子は、約2から約3ナノメートルの直径を有するとよい。
【0039】
本発明において用いてよい金属酸化物は、1〜17族金属の酸化物であってよい。適当な金属酸化物ナノ粒子の例は、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケルおよび酸化クロムを含むがそれらに限定されない。特定の実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、ZnOナノ粒子を含む。当業者であれば、特定の用途に適合するように適切な金属酸化物を選ぶことができる。
【0040】
さまざまな選別試験を使用して本発明に用いられる金属酸化物の適切な選択を決定してよい。例えば、場合によって、ガラス基板などの基板に接着する金属酸化物の能力によって金属酸化物を選んでよい。場合によって、遊離のヒドロキシル基を表面に含む金属酸化物ナノ粒子の層は、層と基板との間の共有結合の形成によって、ガラス基板に接着することができることがある。場合によって、比較的温和な温度(例えば150℃)で金属酸化物のナノ粒子をアニールし、基板に接着させるように、金属酸化物を選ぶとよい。一選別試験は、本明細書に記載されているように基板上に金属酸化物ナノ粒子の層を形成させ、基板をアニールすることを含んでよい。次に、アニール膜を溶液中に浸漬および/または溶液中で超音波照射し、膜が接着したままで残るかまたは基板から剥離するかを測定するとよい。
【0041】
別の選別試験は、ルミネセンスを示し、アニールした後にルミネセンスを実質的に保持する金属酸化物の能力の評価を含んでよい。金属酸化物ナノ粒子の層を基板上に形成させ、その光学特性(例えば吸光度、発光等)を測定してよい。アニールした後に、層の光学特性を測定し、アニールする前に測定した光学特性と比較してよい。場合によって、アニールした後にルミネセンスの少なくとも80%または少なくとも90%を保持する金属酸化物ナノ粒子が本発明において用いるために望ましいことがある。
【0042】
特定の用途(例えば生物学的分子に関連する用途)では、ZnOなどの実質的に非毒性の金属酸化物を利用することが望ましいこともある。金属酸化物は、細胞、蛋白質および類似物などの生物学的分子と相互作用するが、生物学的分子を撹乱しおよび/または損傷することがないかまたはほとんどない能力によって選んでよい。簡単な選別試験は、生物学的分子(例えば細胞培養培地および類似物)を含む試料へ金属酸化物ナノ粒子を加え、金属酸化物ナノ粒子に対する生物学的分子の応答を観測することを含んでよい。
【0043】
一組の実施態様では、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、分析物、すなわちルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と相互作用すると放射を放出することができる分子またはその他の部分と相互作用してよい。用語「分析物」は、分析される任意の化学的実体、生化学的実体、または生物的実体(例えば分子)を指してよい。場合によって、本発明のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、分析物に対して高い特異性を有してよく、例えば、化学センサ、生物センサまたは爆薬センサであってよい。分析物は、発色団またはフルオロフォアであってよく、あるいは発色団またはフルオロフォアを含んでよい。例えば、分析物は、市販の分析物、例えばフルオレセイン、ローダミンB、テキサスレッド(商標)X、スルホローダミン、カルセイン等であってよいがそれらに限定されない。特定の実施態様では、分析物自体は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を含んでよい。場合によって、分析物とルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の相互作用は、本明細書に記載されるように中間結合基によって容易になってよい。場合によって、分析物とルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の相互作用は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の発光を変化させてもよい。場合によって、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層と分析物とは、DexterまたはFoersterエネルギー移動機構などのエネルギー交換機構によって相互作用してよい。
【0044】
場合によって、分析物の発光が下記でさらに考察するようにルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の発光とスペクトルとあまり重なり合わないように、分析物を選んでよい。従って、迷光(バックグラウンド)発光を減少させるように分析物を選び、本発明のさまざまな実施態様において感度を増大させ、高感度センサを提供してよい。
【0045】
場合によって、分析物は、本発明の物品に固定化されてよい。本明細書で用いられる別の部材「に固定化された」部材は、相手の部材に固定されるか、あるいは、例えば、第3の部材に固定され他方の部材も第3の部材に固定されるか、または他の方法で並進的に他方の部材と会合することによって、間接的に固定される。例えば、分析物は、層に取り付けられている結合相手に分析物を固定する場合、層に取り付けられている結合相手を固定した中間結合部に分析物を固定する場合等に、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に固定化される。実施態様によっては、分析物は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層の少なくとも一部と相互作用することができる部分を含む。例えば、この部分は、共有結合などの結合を形成して、または本明細書に記載されている結合(例えば生物結合)によって、層と相互作用してよい。
【実施例】
【0046】
全般的な手順。すべての化学物質は、特に明記しない限り販売元(Alfa Aesar,Gelest, LancasterおよびSigma-Aldric)から購入し、精製しないでそのまま用いた。テトラメチルローダミン染料およびその誘導体は、Invitrogenから購入した。試料の吸収スペクトルは、Agilent8453紫外可視分光光度計を用いて室温で取得した。ルミネセンススペクトルは、Jobin Yvon Horiba Fluorologルミネセンス分光光度計により室温で測定した。AFM顕微鏡像は、VeccoMultimode原子間力顕微鏡で撮影した。スピンコーティングは、Laurell WS-400B-6NPP-LITEスピンコータ上で実行した。
【0047】
実施例1
図1に例を示したように、アミン末端金属酸化物ナノ粒子の水溶液をガラス基板上にスピンキャストし、アニールしてルミネセンス性膜を形成させて、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を形成させた。
【0048】
使用直前に、アミン官能化ZnO(NH‐ZnO)ナノ粒子(〜30mg)を10mLの脱イオン水に溶かし、0.21μmの膜注射器フィルタを通してろ過した。NH‐ZnOナノ粒子溶液の濃度は、UV可視分光光度法によって330nmの波長で定量した。Disco DAD3350オートマチックダイシングソーによってパイレックス(登録商標)ガラス基板を所望のサイズにダイシングし、使用する直前にNaOH溶液、HCl溶液および脱イオン水中で順番に超音波処理によって洗浄した。保存溶液の粘度が高かったので、低い回転速度を用いた。2cm×2cmの基板の場合、680μLのNH‐ZnO保存溶液(0.3mg/mL)をガラス表面上に滴下させ、240rpmで10分間回転させた。1cm×1cmの基板の場合、120μLのNH‐ZnO保存溶液(0.3mg/mL)をガラス表面上に滴下させ、500rpmで10分間回転させた。
【0049】
すべての溶媒が蒸発するまでコーティングを40℃でゆっくり乾燥させると、均一な膜が得られた。室温で膜を乾燥させると、円形パターンが表れた。40℃より高温で乾燥させると、おそらく格子歪みによって、ルミネセンス強度の減少した膜ができた。しかし、NH‐ZnO膜は、水中での2分間の超音波処理によって再溶解させることができた。NH‐ZnO膜とガラス基板との間の接着強さを増大させるために、被覆された基板を110℃で10分間アニールした。図1Bによると、NH‐ZnO膜は、おそらくZnOナノ粒子の裸のOH基とガラス基板の表面シラノール基との間の共有結合形成によって、アニールした後溶解抵抗性になった。
【0050】
実施例2
本比較例では、均一な発光性膜の調製において、アニール温度の温和さが重要なことを示した。図3に示したように、膜を500℃に加熱するとルミネセンスの98%強が失われた(例えば消光された)。アニール温度を110℃に下げると、膜のルミネセンス強度の少なくとも90%が保持された。他の詳細は、実施例1に記載したものと同じかまたは同様であった。
【0051】
実施例3
実施例1に記載したように作製したルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子膜の表面官能化、均一性、光学特性および安定性を評価した。
【0052】
第一アミン基と迅速に反応するフルオレスカミンをNH‐ZnO膜へ加えると、フルオレスカミンが膜へ結合することが示され、膜の表面にNH基が存在することを示した。
【0053】
膜の原子間力顕微鏡(AFM)像を得た。図4Aに示すように、水性(例えば水)溶液からの膜スピンコートNH‐ZnOは、良好な均一性を有する。これに対して、メタノール中のNH‐ZnOナノ粒子溶液からスピンコートした膜は、ガラス表面上でナノ粒子の凝集体を作り出し、ガラス表面のNH‐ZnO被覆率は25%未満であった(図4B)。
【0054】
図2は、水中2分間の超音波処理後の(a)アニール後および(b)アニール前のZnOナノ粒子層の吸収スペクトルを示す。アニール後のNH‐ZnO膜は、溶液中のNH‐ZnOナノ粒子と同様に、350nmより上で鋭く減少する広い吸収をUV領域に示した(図2A)。膜の発光ピークは、溶液の場合の545nmに対比して、あまり移動せず537nmとなった。アニール前のZnOナノ粒子層は、超音波処理した後に、吸光度スペクトルを実質的に示さず、基板の表面にナノ粒子がもはや接着していないことを示した(図2B)。
【0055】
溶液中で、NH‐ZnOナノ粒子は、太陽光に長時間曝露させると凝集体を形成することが観測され、溶液のルミネセンス強度は、紫外線(図5A)へ曝露させると20%の減少を示した。これに対して、NH‐ZnO膜は、UV照射した後、頑丈さを示した。膜を345nmで10分間連続的に励起すると、545nmのルミネセンス強度は、少なくとも20%増大した(図5B)。ルミネセンスの増加は、連続照射下のZnOの格子完成による可能性がある。NH‐ZnO膜を外気中4℃で3ヶ月間保管した後、元の膜のルミネセンスの少なくとも60%を保持していた。
【0056】
実施例4
実施例1に記載したように作製したNH‐ZnOナノ粒子層の特定のルミネセンス特性に影響を及ぼす分析物の能力を評価した。本発明のルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、ルミネセンス性コア(例えばZnO)と、保護外層(例えばシラン層)とを含んでよい。保護外層は、ナノ粒子の表面の緊密充填構造体であってよい。外層は、末端アミン基を有するアルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、末端アミン基は、アルデヒドと可逆的に反応してイミンを形成してよい。外層が存在すると、例えば、電磁放射(例えば紫外線)に曝露されたとき、ルミネセンス性コアに化学的安定性および光化学的安定性が提供される。ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層をアルデヒド置換分析物と接触させると、イミン形成によってルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層とアルデヒド置換分析物との間に共有結合が形成され、外層をナノ粒子の表面から分散させる結果となることがある。すなわち、イミン部分の表面からの距離が増大するように、鎖は伸長する。場合によって、これは、ナノ粒子の表面に対する外層の親和性の変化によるものであってよい。場合によって、例えば、外層に結合した分析物のサイズによるアルキル鎖またはヘテロアルキル鎖の伸長によって、外層を分散させてよい。例えば、分析物は、蛋白質またはその他の生物学的分析物などの緊密充填外層の形成を妨げる立体的にかさ高い分析物であってよい。外層の緊密充填構造が溶解すると、光安定性が低下し、電磁放射(例えば紫外線、可視光、赤外線等)に曝露されると光退色が起り、分析物の存在または量を示す結果となることがある。
【0057】
一例では、NH‐ZnO膜をホウ酸塩緩衝液中または水中のo‐フタルデヒドと接触させた(図6)。NH‐ZnO膜を6‐ウェルまたは24‐ウェルプレートに入れた。各ウェルに水中または10mMホウ酸塩緩衝液中の1mMのo‐フタルデヒド溶液を加えた後、プレートをフラットパネル透光器(Wealtec)からの紫外線(λmax=365nm、50W)に2分間曝露させ、発光スペクトルを得た。
【0058】
アルデヒド置換分析物が存在しないと、ホウ酸塩緩衝液中のNH‐ZnO膜のルミネセンス強度は、水中より著しく高いことが観測され(それぞれ図6Bおよび図6D)、緩衝液が存在するとNH‐ZnOナノ粒子を安定化させることを示した。o‐フタルデヒドが存在すると、NH‐ZnO膜のルミネセンス強度は、2分間のUV照射後、減少した。図6に、ホウ酸塩緩衝液中で1mMのo‐フタルデヒドが存在するとき(図6A)および存在しないとき(図6B)のZnO膜のルミネセンス強度の百分率を示す。膜のルミネセンス強度は、アルデヒドが存在すると約50%減少した。水中で1mMのo‐フタルデヒドが存在するとき(図6C)および存在しないとき(図6D)のZnO膜のルミネセンス強度の百分率も測定した。膜のルミネセンス強度は、アルデヒドの存在下でわずかに減少した。これは、アルデヒドとNH‐ZnO膜の表面アミン基とのイミンを形成する反応と、その後のNH‐ZnOナノ粒子の保護外層の分散によるものであってよい。分散によって、NH‐ZnOナノ粒子は光退色しやすくなることがある。
【0059】
実施例5
FRETアクセプタ(例えば有機蛍光性染料)をNH‐ZnO膜に直接取り付けて、実施例1に記載したように作製したNH‐ZnO膜のFRETドナーとして用いるための可能性を評価した。
【0060】
NH‐ZnO膜をスクシンイミジルエステル活性化テトラメチルローダミン(TMR)染料で処理した。図7Aは、NH‐ZnO膜の吸収スペクトル(点線)と、345nmで励起した発光スペクトル(実線)とを示す。図7Bは、TMRスクシンイミジルエステル染料の吸収スペクトル(点線)と、545nmで励起した発光スペクトル(実線)とを示す。NH‐ZnO膜の発光スペクトルとTMR染料の吸収スペクトルとの間のスペクトル重なり合いが広いことを理由として、TMRを選んだ。
【0061】
フルオレスカミンを加えて実質的にすべてのアミノ基がTMR分子で官能化されていることを検証した。表面NH基の濃度が低いため、グラフト化TMR基からの吸収を観測することはできなかった(図7C)。しかし、図7Cに示したように、ZnO膜を直接励起(345nmで)すると、537nmに生じると予測されるZnO膜に関連する発光ピークではなく、TMR染料からの発光に帰属される580nmの発光ピークが結果として得られた。これらの観測結果によれば、励起エネルギーは、ルミネセンス性ZnO膜からその表面上にグラフトされたTMR染料へ移動した。
【0062】
実施例6
実施例1に記載したように作製したルミネセンス性アミン官能化ZnO(NH‐ZnO)膜を生物アッセイに用いるためにさらに官能化した。NH‐ZnO膜を、標的分析物と選択的に結合することができる生物結合相手で官能化した。本実施例では、NH‐ZnO膜を、アビジン部分と選択的に結合することができるビオチン部分、あるいはアビジン‐ビオチン集合体で官能化した。図8Aに図式的に示すように、NH‐ZnO膜の表面をN‐ヒドロキシスクシンイミド‐ビオチン(NHS‐ビオチン)で官能化した。これには、記載されているように0.01mg/mLのNHS‐ビオチンを含む10mMのホウ酸塩緩衝液中に膜を4℃で6時間浸漬させた。次に、膜を溶液から取り出し、脱イオン水で2回すすいだ。この手順を3回繰り返してビオチン官能化膜(ビオチン‐ZnO膜)を得た。NHS‐ビオチンの半減期は短いので、この浸漬を3回繰り返し、浸漬ごとに新たに調製したNHS‐ビオチン溶液を用いてビオチン官能化度を増大させた。フルオレスカミンを加えてビオチン官能化の度合いを評価した。膜のルミネセンス強度を観測した後、アミノ基の70%がビオチンに変換されたと決定した。対照実験として、NHS‐ビオチンを含まないホウ酸塩緩衝液中にZnO膜を浸漬させ、ルミネセンス強度をビオチン化ZnO膜のものと比較した。ビオチン化ZnO膜のルミネセンス強度は、非官能化ZnO膜より50%低いことを見いだした。
【0063】
実施例7
次に、ビオチン‐ZnO膜(FRETドナー)から有機蛍光染料(FRETアクセプタ)への信号伝達のための機構として蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて、ビオチン‐ZnO膜(実施例6)を生物センサとして使用した。
【0064】
図8Bは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のためのTMR置換ビオチン/アビジン/ビオチン‐ZnO膜構造体の逐次集合を図式的に示す。最初に、ビオチン‐ZnO膜をアビジンの溶液に浸漬した後、続いてTMR標識化ビオチンの溶液に浸漬して所望の集合体を形成させた。図10Aは、TMR染料を結合していないビオチン‐ZnO膜の、ZnO膜の励起波長(345nm)で励起した発光スペクトルを示す。図10Bに示すTMR‐ビオチン/アビジン/ビオチン‐ZnO膜構造集合体の発光スペクトルを見ると、345nmで励起したとき、ZnO膜からのルミネセンスは減り、TMR染料からのルミネセンスは強められている。これは、ZnO層と、ZnO層に結合したテトラメチルローダミン染料との間で、ビオチン‐アビジン‐ビオチン集合体によって図9に図式的に示すFRETが起ることを示している。
【0065】
さらに、ZnO膜からのFRETによるTMR染料からの発光強度は、545nmでの染料の直接励起の後のTMR染料からの発光強度より著しく大きく(図10C)、ZnO膜の集光能力の例を示していた。これに対して、溶液中のTMR‐ビオチン分子からの発光強度は、545nmで染料を励起した後(図10E)の方が345nmで励起した後の発光強度(図10D)より約60%大きかった。これは、FRETのための強力な集光性ツールとして作用するルミネセンス性ZnO膜の能力の例を示してよい。
【0066】
本明細書に本発明のいくつかの実施態様を記載し、例示してきたが、本明細書に記載した機能を実行し、および/または結果もしくは利点を得るためのさまざまな他の手段および構造体は当業者には容易に想起され、そのような変化形、変更形および改良形はそれぞれ本発明の範囲内にあるものとする。さらに全体として、本明細書に記載したすべてのパラメータ、材料、反応条件および構成は例を示すことを意図し、実際のパラメータ、材料、反応条件および構成が本発明の教示を用いる対象である特定の用途に依存することは、当業者には自明である。当業者は、通常程度の実験を用いて、本明細書に記載した本発明の特定の実施態様に対する多くの均等物を認識し、あるいは確認することができる。従って、以上の実施態様は単なる例として示されたものであり、添付の請求項と請求項の均等物との範囲内で、具体的に記載されたものと異なる形で本発明を実施してよいと理解される。本発明は、本明細書に記載したそれぞれの個別の特徴、システム、材料および/または方法を目的とする。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、材料および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、材料および/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0067】
請求項において(ならびに上記明細書において)、「を含む」、「を備える」、「を帯びる」、「を有する」、「を含有する」、「で構成される」、「で作られる」、「で形成される」、「が関与する」および類似句などのすべての移行句または包含移行句は、開放端型である、すなわち「を含むがそれらに限定されない」を意味し、従って、その句の後に列挙された項目および項目の均等物ならびに別の項目も包含すると解釈する。移行句または包含句「からなる」および「基本的にからなる」だけは、それぞれ、閉鎖句または半閉鎖句として解釈される。本発明の明細書および請求項で用いられる不定冠詞「a」および「an」は、別の意味を有すると明示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解するべきである。
【0068】
本発明において明細書および請求項の中で用いられる句「および/または」は、この句によって結合された要素の「どちらかまたは両方」すなわちある場合には結合形として存在し、他の場合には分離形として存在する要素を意味すると理解するべきである。具体的に特定された要素に関連があってもなくても「および/または」句によって具体的に特定された要素以外の他の要素が任意選択として存在してよい。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」を指すとき、一実施態様ではAだけ(任意選択としてB以外の要素を含む)、別の実施態様ではBだけ(任意選択としてA以外の要素を含む)、さらに別の実施態様ではAとBとの両方(任意選択として他の要素を含む)を指してよい等である。本発明において明細書および請求項中で用いられる「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解するべきである。例えば、一覧中の項目を分けているとき、「または」あるいは「および/または」は、包含的であり、すなわち少なくとも一つを含むが、要素の数または一覧の二つ以上、および任意選択として、別の非一覧項目を含むと解釈する。これに対して、「の1つだけ」または「の正確に1つ」などの限定用語は、明らかに示された複数の要素または要素の一覧の正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で用いられる用語「または」は、「どちらか」、「の1つ」、「の1つだけ」または「の正確に1つ」などの排他用語の後に続くとき、排他的代替物(すなわち「一方または他方であるが両方ではない」)だけを示すと解釈する。
【0069】
本発明において本明細書および本請求項で用いられる、1つ以上の要素の一覧を対象とする句「少なくとも1つの」は、別の意味を示さない限り、要素の一覧の中の任意の1つ以上の要素から選ばれる少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧の中に具体的に列挙されたそれぞれの要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素の一覧の中の要素の任意の組み合わせを除外しないと理解するべきである。この定義によって、句「少なくとも1つの」が指す要素の一覧中で具体的に特定されている要素以外の要素が、具体的に特定されているものと関連があってもなくても、任意選択として存在することも可能である。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(あるいは「AまたはBの少なくとも1つ」または「「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」も等価である)は、一実施態様では、Bが存在しないとして任意選択として2つ以上のAを含む少なくとも1つのA(任意選択としてB以外の要素を含む)を指し、別の実施態様では、Aが存在しないとして任意選択として2つ以上のBを含む少なくとも1つのB(任意選択としてA以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施態様では、任意選択として2つ以上のAを含む少なくとも1つのAと、任意選択として2つ以上のBを含む少なくとも1つのBと(任意選択として他の要素を含む)を指してよい等である。
【0070】
本明細書中で引用したすべての参考文献は、特許および公開された出願を含め、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書と、参照によって組み込まれおよび/または本明細書中で参照された文書とが矛盾する開示および/または相反する用語の使用を含み、および/または組み込まれた/参照された文書が本明細書中で用いられるかまたは定義されたものと異なって用語を用いるかまたは定義している場合には、本明細書を優先させる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の一実施態様によるルミネセンス性金属酸化物層の作製を図式的に示す。
【図2】図2は、水中で2分間超音波処理した後の(a)アニール後および(b)アニール前のZnOナノ粒子層の吸収スペクトルを示す。
【図3】図3は、さまざまな温度でアニールした後のZnOナノ粒子層のルミネセンス強度の百分率を示す。
【図4】図4は、(a)ZnOナノ粒子の水溶液および(b)ZnOナノ粒子のメタノール溶液からスピンコートしたZnOナノ粒子膜のAFM像を示す。
【図5】図5は、(a)ZnOナノ粒子溶液および(b)ZnO膜の時間変化ルミネセンス測定を示す。
【図6】図6は、ホウ酸塩緩衝液中で1mMのo‐フタルデヒドが(a)存在するときおよび(b)存在しないときのZnO膜のルミネセンス強度の百分率と、水中で1mMのo‐フタルデヒドが(c)存在するときおよび(d)存在しないときのZnO膜のルミネセンス強度の百分率とを示す。これらの膜は、紫外線(λmax=365nm)に20分間曝露させた。
【図7】図7は、吸収スペクトル(点線)および発光スペクトル(実線)を示す。(a)ZnO膜、励起は345nm、(b)テトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル染料、励起は545nm、および(c)テトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル染料をグラフトしたZnO膜、励起は345nmである。
【図8】図8Aは、ビオチンによるZnO層の官能化を図式的に示す。図8Bは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のためのテトラメチルローダミン置換ビオチン/アビジン/ビオチン‐ZnO構造の逐次集合を図式的に示す。
【図9】図9は、ルミネセンス性ZnO層と、ビオチン‐アビジン‐ビオチン集合体によってZnO層に結合したテトラメチルローダミン色素との間のFRETの発生を図式的に示す。
【図10】図10は、発光スペクトルを示す。(a)ビオチンをグラフト化したZnO膜、励起は345nm、(b)ビオチン/アビジン/テトラメチルローダミン置換ビオチン集合をグラフトしたZnO膜、励起は345nm、(c)ビオチン/アビジン/テトラメチルローダミン置換ビオチン集合をグラフトしたZnO、励起は545nm、(d)テトラメチルローダミン置換ビオチンの水溶液、励起は545nm、および(e)テトラメチルローダミン置換ビオチンの水溶液、励起は345nmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子薄膜の形成のための方法であって、
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を含む層を基板の表面上に形成させる工程、および
該基板を、150℃を超えない温度で、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を該表面にアニールさせるのに十分な時間加熱する工程、
を含み、
加熱する前に、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、特定の組の励起条件下で第1の発光を有し、加熱時に、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、該特定の組の励起条件下で該第1の発光の強度の少なくとも80%を有する第2の発光を有する、方法。
【請求項2】
加熱する前に、前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、特定の組の励起条件下で第1の発光を有し、加熱時に、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、該特定の組の励起条件下で該第1の発光の強度の少なくとも90%を有する第2の発光を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、ZnOナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的分析物は、生物学的分析物または化学的分析物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、アミン、カルボン酸、リン酸塩、ヒドロキシルおよびチオールの中から選ばれる官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記官能基は、アミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記官能基は、カルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記形成させる工程は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む溶液から前記層をスピンキャストすることまたはドロップキャストすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記形成させる工程は、ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む溶液から前記層をスピンキャストすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基板を、130℃を超えない温度で、前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を前記表面にアニールさせるのに十分な時間加熱する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板を、110℃を超えない温度で、前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を前記表面にアニールさせるのに十分な時間加熱する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
加熱時に、前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、前記表面と共有結合を形成する、請求項1に記載の方法
【請求項15】
分析物を結合させる方法であって、
ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を、分析物を含む疑いのある試料に曝露させ、該分析物が存在する場合、該分析物と該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の相互作用によって該分析物を該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に対して固定化されるようになる工程を含む方法。
【請求項16】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、ZnOナノ粒子を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物と前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の前記相互作用は、2つの生物学的分子の間の結合を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記分析物と前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層との間の前記相互作用は、共有結合を形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、前記分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記結合相手は、アミン、カルボン酸、リン酸塩、ヒドロキシルおよびチオールの中から選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記結合相手は、アミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記結合相手は、カルボン酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記結合相手は、生物学的分子を含む、請求項15に記載の物品。
【請求項24】
前記結合相手は、ビオチンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記分析物は、フルオロフォアを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記フルオロフォアは、蛍光染料を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法であって、
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層を、前記分析物を含む疑いのある前記試料に曝露させる工程であって、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層は、蛍光共鳴エネルギー移動ドナーであり、前記フルオロフォアは、蛍光共鳴エネルギー移動アクセプタである、工程、
該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層をエネルギー源に曝露させてルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子励起エネルギーを形成させる工程、
該分析物が存在する場合、該励起エネルギーを該フルオロフォアへ移動させ、該フルオロフォアからの発光を引き起させる工程、および
該発光の測定によって、該分析物を測定する工程、
をさらに含む方法。
【請求項28】
標的分析物の測定のための物品であって、
基板と、該基板の表面上に形成され該基板の表面に接着しているルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む層とを含み、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、該標的分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含む、物品。
【請求項29】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、ZnOを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記結合相手は、アミン、カルボン酸、リン酸塩、ヒドロキシルおよびチオールの中から選ばれる、請求項28に記載の物品。
【請求項31】
前記結合相手は、アミンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記結合相手は、カルボン酸である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記結合相手は、生物学的分子を含む、請求項28に記載の物品。
【請求項34】
前記結合相手は、ビオチンを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項35】
前記標的分析物は、生物学的分析物または化学的分析物である、請求項28に記載の物品。
【請求項36】
前記標的分析物は、フルオロフォアを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項37】
前記フルオロフォアは、蛍光染料を含む、請求項28に記載の物品。
【請求項38】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、共有結合によって前記基板の前記表面に接着している、請求項28に記載の物品。
【請求項39】
前記標的分析物は、2つの生物学的分子の間の結合によって前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に結合している、請求項28に記載の物品。
【請求項40】
前記標的分析物は、結合の形成によって前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に結合している、請求項28に記載の物品。
【請求項41】
前記結合は、共有結合、イオン結合、水素結合または配位結合である、請求項40に記載の物品。
【請求項42】
蛍光共鳴エネルギー移動ドナーであって、分析物と優先的に結合するように選ばれる結合相手を含むルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含み、該ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、蛍光共鳴エネルギー移動ドナーであり、該分析物は、蛍光共鳴エネルギー移動アクセプタである、蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項43】
基板と、該基板の表面上に形成され該基板の表面に接着している前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子を含む層とをさらに含む、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項44】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、ZnOを含む、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項45】
前記結合相手は、アミン、カルボン酸、リン酸塩、ヒドロキシルおよびチオールの中から選ばれる、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項46】
前記結合相手は、アミンである、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項47】
前記結合相手は、カルボン酸である、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項48】
前記結合相手は、生物学的分子を含む、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項49】
前記結合相手は、ビオチンを含む、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項50】
前記標的分析物は、生物学的分析物または化学的分析物である、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項51】
前記標的分析物は、フルオロフォアを含む、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項52】
前記フルオロフォアは、蛍光染料を含む、請求項D7に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項53】
前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子は、共有結合によって前記基板の前記表面に接着している、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項54】
前記標的分析物は、2つの生物学的分子の間の結合によって前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に結合している、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項55】
前記標的分析物は、結合の形成によって前記ルミネセンス性金属酸化物ナノ粒子層に結合している、請求項42に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。
【請求項56】
前記結合は、共有結合、イオン結合、水素結合または配位結合である、請求項55に記載の蛍光共鳴エネルギー移動ドナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−520101(P2009−520101A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547203(P2008−547203)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/001941
【国際公開番号】WO2007/078297
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508201466)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (13)
【Fターム(参考)】