説明

ルミネッセント材料を含む発光ダイオードデバイス

本発明は、基板(2、12)に配置される発光ダイオード(1、11)と波長変換構成要素(3、13、14)を含む発光ダイオードデバイスを提供する。波長変換構成要素(3、13)は、ルミネッセント材料として、ガーネット型結晶構造を持つMn4+活性フッ化物化合物を含む。Mn4+活性フッ化物化合物は、好ましくは、一般式{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表され、式中のAは、Na+およびK+からなる組から選択される少なくとも1種であり、および、式中のBは、Al3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+およびIn3+からなる組から選択される少なくとも1種であり、並びに、式xの範囲は0.02から0.2であり、yの範囲は0.0(0.0を含む)から0.4であり、およびdの範囲は0(0を含む)から1である。該化合物は、最も好ましくは、{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddである。また、本発明は該材料の調製のための方法ばかりではなく、該材料も提供する。記載されたタイプおよび構造のルミネッセント材料は、非常に安定しており、湿潤環境に対して感受性が低いので、LEDデバイスの波長変換構成要素として使用するには、好都合であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に配置された発光ダイオード、およびMn4+活性フッ化物化合物を含む波長変換構成要素を含む発光ダイオードデバイスに関する。本発明は、ルミネッセント材料ばかりではなく、該ルミネッセント材料を調製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードデバイス(短縮してLEDデバイスと称する)は、将来の用途に対して有望な照明特性を持つ、新しい半導体光源として広く知られている。これらのLEDデバイスは、最終的には、白熱電球などの現在の光源の多くを置き換える。これらは、特に、ディスプレイ照明、警告灯、表示灯および装飾灯に有用である。
放射光の色は、半導体材料の種類によって異なる。III−V族合金GaNなどから製造されたLEDは、電磁スペクトルの緑色から紫外(UV)の範囲の光を放射する能力があることでよく知られている。この10年間で、該「青色」または「(近)UV」のLEDから放出された放射線(の一部)を、より長い波長の放射線に変換する方法が開発された。蛍光体は、この目的のためにルミネッセント材料として広く使用されている。これらの蛍光体は、高化学純度および正確に制御された組成の結晶無機化合物である。これらは、少量の、特に選択された元素(「活性化因子」)を含み、これによって効率的なルミネッセント材料となる。
【0003】
着色LEDに加えて、いわゆる「白色光LED」の開発も非常に重要である。この分野における興味深い構成は、青色/UV LEDによって生成された光の一部を変換する工程と、前記生成された光の非変換部分と変換部分を混合する工程とから、白色または白色に類似する光を得ることをベースにする。この領域では、青色放射GaInN LEDが、非常に有名である。Ce3+活性イットリウムアルミニウムガーネット(YAG−Ce)およびEu2+活性オルソシリケート(BOSE、OSE)は、この目的のためによく知られている蛍光体である。
冒頭段落に記載されているようなLEDデバイスは、例えば国際特許公開WO2009/012301−A2号に記載されているように既知である。この書類では、Mn4+活性フッ化物化合物が、これらのデバイスの波長変換構成要素のルミネッセント材料として適用される、多くのLEDデバイスについて詳細に説明されている。多くのK2[XF6]:Mn4+(X=NbまたはTa)およびK3[XF7]:Mn4+(X=Bi、Y、LaまたはGd)蛍光体化合物の放射スペクトルおよび励起スペクトルが示されている。これらのルミネッセント材料は、電磁スペクトルの赤色スペクトル領域(600〜660nm)で狭帯域放射または線放射を示すように見受けられる。「温白色」光を生成できる、波長変換構成要素に該ルミネッセント材料を含むLEDデバイスには、これは非常に魅力的である。温白色は、5000K未満の相関色温度(CTT)を持つ光である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知のLEDデバイスには、いくつかの不利益がある。説明されるべき第1の不利益は、波長変換構成要素に使用されるフッ化物化合物に関し、フッ化物の多くは(多かれ、少なかれ)有毒である。第2の不利益は、これらのフッ化物化合物のハンドリングに関し、フッ化物化合物は湿潤環境に対して比較的感受性が高いので、実際にはハンドリングが容易ではない。これらの材料を(湿気の多い)空気中に長期間さらすと、材料の表面に薄い水膜が形成され、(表面)分解する。この不利益な特性は、純粋材料(保管寿命が短くなる)およびそれを使用するLEDデバイスの両方に影響を及ぼす(時間経過によって性能が劣化する)。
本発明は、既知のデバイスの少なくとも上述の欠点を回避することを目的とする。
さらに、本発明は、毒性が低く、および湿潤環境に対して感受性が低いMn4+活性フッ化物化合物を含有する、波長変換構成要素を含む新しいLEDデバイスを提供することを目的とする。
さらなる目的は、好ましくは温白色光を生成する可能性があるデバイスを提供する、LEDデバイスの使用に魅力的なルミネッセント特性を持つ、新規なクラスのMn4+活性フッ化物化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、これらの目的および他の目的は、基板に配置された発光ダイオードと、ルミネッセント材料としてMn4+活性フッ化物化合物を含む波長変換構成要素とを含む発光ダイオードデバイスを提供することによって達成され、ここでMn4+活性フッ化物化合物はガーネット型結晶構造を持つ。
ガーネット型結晶構造を持つMn4+活性フッ化物化合物の湿潤環境に対する感受性は、国際特許公開WO2009/012301に記載された既知の化合物の湿潤環境に対する感受性に比べて著しく低いという、本発明者らによって得られた知見に本発明は基づく。該記載された化合物はガーネット型結晶構造を持たない。さらに、本発明者らは、新しく発明されたルミネッセント化合物の化学的に不活性な特性を考慮すると、前記特許公報に開示された類似の既知の化合物に比較して、これらの毒性は低いと信じる。ルミネッセント化合物のこれらの特性によって、LEDデバイスにおけるその適用は、デバイスの製造および使用の両方で、より魅力的になる。
【0006】
ガーネット型結晶構造を持つフッ素化合物は、一般式:{A3}[B2](C3)F12で表すことができ、ここでFはフッ化物を表し、並びにA、BおよびCは、金属または金属に類似する元素のイオンを表す。これらの3つのタイプのイオンは、それぞれ、ガーネット結晶構造の十二面体サイト、八面体サイトおよび四面体サイト上に位置する。一般的に、元素AおよびCは一価(+)であり、元素Bは三価(3+)である。しかしながら、特に八面体サイトでは、電荷補償による置換が可能であり、これらのサイトでは二価金属イオンと四価金属イオンの組み合わせも見られる。
ガーネット構造にMn4+とF-イオンの両方が存在することが、電磁スペクトルの赤色スペクトル領域で興味深い狭帯域放射、すなわち線放射を提供するためには不可欠であると信じられる。これは、約600nmから約660nmの間の領域を意味する。
【0007】
本発明のLEDデバイスの好ましい実施形態は、式{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddによって表されるMn4+活性フッ化物蛍光体化合物によって特徴付けられ、ここで式中のAは、Na+およびK+からなる組から選択される少なくとも一つの元素であり、および、式中のBは、Al3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+およびIn3+からなる組から選択される少なくとも一つの元素であり、並びに、式xの範囲は0.02から0.2であり、yの範囲は0.0(0.0を含む)から0.4(すなわち0.0≦y<0.4)であり、およびdの範囲は0(0を含む)から1(すなわち0≦d<1)である。
上述の発明は、原理上は、すべての可能性がある、ガーネット型結晶構造を持つMn4+活性フッ化物化合物によって達成できるが、特に、十二面体サイトにNa+および/またはK+が存在し、八面体サイトにAl3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+および/またはIn3+が存在し、並びに四面体サイトにLi+が存在する化合物が好ましい。ガーネットの空間構造による要件と組み合わせたイオン半径の検討に基づくと、これらの好ましい化合物は、非常に安定した結晶の化合物を形成すると信じられる。
【0008】
Mn4+イオンは、ガーネット結晶構造の八面体サイトに位置すると信じられる。イオン半径演算から、Mg2+は、好ましくは、電荷を補償するために同一結晶サイトに存在することが示される。好ましい化合物中のMn4+量は、総B3+イオン含有量に基づいて、1モル%から10モル%の範囲である。Mn4+イオンの量が多くなると、いわゆる「自己消光(self quenching)」を発生しやすい。1モル%未満のMn4+が、ガーネット構造の八面体サイトに存在する場合には、LEDデバイスで、活性化効果はほとんど、または、まったく見られない。該材料では、Mn4+の吸収は無視できる。自己消光効果と所望の吸光度レベルの両方の最適マッチングを達成させる条件としては、5モル%から8モル%の量のMn4+が好ましい。
LEDデバイスの好ましい実施形態では、Mg2+もガーネット構造の八面体サイトに存在する。Mn4+の存在によって、ガーネット構造で電荷不均衡が発生するが、これはMg2+の存在によって、相殺できる。Mg2+の量は、Mn4+の量よりもいくらか広い範囲で選択できる。したがって好ましいガーネット化合物のMg2+の量は、総B3+イオン含有量に基づいて、0モル%から20モル%の範囲であってもよく、この範囲には、0モル%値を含む。Mg2+イオンの量が多くなると、格子欠陥、例えばアニオン空格子点のような負の影響が発生する。電荷補償とルミネッセンス効率の両方の最適なマッチングを達成させる条件としては、1モル%から10モル%の量のMg2+が好ましい。
【0009】
実験から、F-の量は、結晶単位胞当たり12原子の化学量論量から少しはずれ得ることが分かった。この偏差は、因子dによって示され、その範囲は0(0を含む)から1である。電荷補償効果によって、少量のF-は、酸素によって置換できることを強調しておく。これは、八面体サイトの三価イオンの一部が、Ti4+のような大きい価数のイオンによって置換された場合に発生できる。通常の条件では、ガーネット構造中の総F-量に基づいて、これは約8モル%未満であり、好ましくは4モル%未満である。ガーネット構造で、F-の代わりにO2-の量が多くなると、最も一般的には蛍光体化合物の放射が、より深紅色にシフトし、これは好ましくない。
本発明のLEDデバイスのより好ましい実施形態は、Mn4+活性フッ化物化合物の組成が、実質的に、式{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表されることによって特徴付けられる。記号の範囲は、前述した通りである。実験データから、前述されたより広いクラスのガーネット型化合物の範囲内では、この種の化合物は極めて安定しているということが結論付けられた。この安定性のために、LEDデバイスにおけるこれらの化合物の適用は、デバイスの製造および使用の両方において、とても魅力的になる。
【0010】
本発明のLEDデバイスのさらに興味深い実施形態の特徴は、波長変換構成要素がセラミック小片板として形成されることである。この特徴は、白色光を生成するために使用されるべきLEDデバイスで特に価値がある。原理上は、ルミネッセント材料は、追加の充填剤材料の有無にかかわらず、シート状に材料を押圧して、特定の加熱手順にしたがってこれらのシートを焼結し、および、例えば(レーザ)彫刻および破断によって、前記焼結シートから所望の寸法の小片板を分離して形成できる。このようにしてセラミック小片板を正確な厚さに製造できるので、該小片板で形成された波長変換構成要素は、(近)紫外または青色LED光を白色光に変換するLEDデバイスにとても適切である。
本発明のLEDデバイスの別の興味深い実施形態の特徴は、波長変換構成要素が、多量のMn4+活性フッ化物化合物が取り込まれる、樹脂材料の本体部形状として形成されることである。前記形状の本体は、例えばレンズまたは板として形成できる。しかしながら、他の構造も、本発明の範囲内で可能である。樹脂中のガーネット型結晶構造を持つフッ化物化合物の量は、所望の変換光の量、本体の体積等によって決定できる。
【0011】
本発明はまた、Mn4+活性フッ化物化合物を含む新しいルミネッセント材料も提供する。この材料は、化合物がガーネット型結晶構造を持つことによって特徴付けられる。この組成の材料は、比較的無毒であり、湿潤環境に対する感受性が比較的低く、および、電磁スペクトルの近赤領域で興味深い放射スペクトルを示す(600nm〜660nm)。
特に興味深いことに、該材料は式{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表され、式中のAは、Na+およびK+からなる組から選択される少なくとも一つの元素であり、および、式中のBは、Al3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+およびIn3+からなる組から選択される少なくとも一つの元素であり、並びに、式中のxの範囲は0.02から0.2であり、yの範囲は0.0(0を含む)から0.4であり、およびdの範囲は0(0を含む)から1である。この材料は、蛍光体が塗布されるLEDデバイスに有利に使用することができる。これは、特に、実質的に、その組成が式{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表されるルミネッセント材料に有効である。上述された理由により、Mn4+の量が1モル%から10モル%であり、Mg2+の量が1モル%から20モル%のルミネッセント材料が好ましい。しかしながら、最も好ましい組成は、Mn4+含有量が5モル%から8.0モル%であり、Mg2+含有量が1モル%から10モル%である。
【0012】
本発明の別の興味深い態様は、上述された段落に記載されているルミネッセント材料を調製するための方法に関する。この方法は、以下の工程を含むことによって特徴付けられる:
少なくとも20体積%のHFを含有する水中に、K2MnF6を溶解させた第1の水溶液を調製する工程と;
所望のガーネットを構成する残りの金属の塩の第2の水溶液を、前記ガーネット組成に対応するモル比で調製する工程と;
結果として生じる混合物を撹拌しながら、両方の溶液を化学量論量で混合する工程と;
結果として生じるガーネット組成物を前記混合物から分離する工程。
第1の水溶液および第2の水溶液を調製する手順が重要でないことは当業者にとって明白である。しかしながら、これらの溶液を混合する間に、このように形成される混合物を撹拌しながら、第2の溶液を第1の溶液に添加することは非常に好ましい。Mn4+の化学量論量が、第1の溶液の中ですでに利用できる化学量論量である、他の金属量に合うように、添加される第2の溶液の量を選択することに注意すべきである。
【0013】
第1の水溶液が少量のNaHF2を含有することは好ましい。この化合物を添加することによって、Mn4+の量の低減が妨げられる。溶液を混合し、および混合物を5分間撹拌した後に、結果として生じる混濁溶液を濾過し、および2−プロパノールで何度か洗浄する。次に、得られた粉末を真空下110℃で乾燥させる。適切な粒子サイズを得るために、粉末をすり鉢で機械的にすりつぶすことができる。このようにして得られた粉末はX線で解析され、さらに、本発明のLEDデバイスの波長変換構成要素に使用される。
ガーネット型結晶構造を持つ発明されたMn4+活性フッ化物化合物は、その物質だけで、LEDデバイスで所望の光の性能を得られるばかりではなく、発明された化合物の複合材料および混晶でもそのような性能を得られることが見い出されたことを強調しておく。複合材料は、有限の大きさで識別できる2以上の材料から構成されるものと定義され、例えばコアシェル材料、複合セラミックまたは被膜粒子である。その一方、混晶は、原子スケールで構成元素が均一に分布する。
【0014】
したがって、本発明はまた、{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-dd型ガーネットと、これに限定されるわけではないが、YAG(Y3Al512)、Mg3Al2Si312またはCa3Al2Si312を含有するガーネット酸化物A32(CO43の複合材料に関する。これらの複合材料は、好ましくは、{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-dd型蛍光体粒子に酸化物ガーネットがコーティングされており、またはコアシェル材料であって、ここで{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-dd型は酸化物ガーネットシェルに覆われている。コーティングとシェルの違いは、主にそれぞれの材料の相対量であり、ここでコーティングは全材料の10%w/w未満であり、コアシェル材料のシェルは50%w/w以上である。該コーティングまたはコアシェル材料の利点は、湿度に対して高い安定性を持つことであり、および、蛍光体の屈折率を変化させられることである。安定性が増すことによって、有毒性がさらに低減されることも期待できる。
同一利点が、{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddと酸化物ガーネットとの混晶に期待でき、混晶の一般式は(1−a){Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-dd*32(CO43である。該混晶の形成によって、最大励起波長および最大放射波長を変化させ、並びに温度消光特性に影響を与えられることが見い出された。
本発明は、図面を参照することによって、多くの実施形態について説明され、図示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のLEDデバイスの第1の実施形態を示す。
【図2】本発明のLEDデバイスの第2の実施形態を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態の放射スペクトルの図を示す。
【図4】本発明の第2の実施形態の放射スペクトルの図を示す。
【図5】ガーネット型結晶構造を持つ発明された化合物{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12の試料のx線パターン図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態の概略図である。この図は、LEDデバイスの断面を示し、しばしばサブマウントと称する、基板(2)に接続されている半導体発光ダイオード(1)を含む。ダイオード(1)および基板(2)は、半田または(金属含有)接着剤等の、適切な接続手段によって接続されている。
ダイオード(1)はGaInN型であり、動作中に波長450nmの光を放射する。この実施形態では、前記光は、放射表面(4)を介してLED(1)から放出される。凸レンズ形状の本体として形成される波長変換構成要素(3)は、LED(1)に隣接して配置される。このレンズは、ほとんどが高温耐性シリコーン樹脂から形成され、その粒子の中にはガーネット型結晶構造を持つ、Mn4+活性フッ化物化合物が取り込まれている。後者の化合物は、レンズのルミネッセント材料として機能する。この実施形態では、前記シリコーン樹脂は、16体積%の{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12を含有し、その粒子サイズは約10マイクロメータである。シリコーンの種類は、その屈折率が蛍光体化合物の屈折率、すなわち1.34とほとんど同一となるように選択される。(ほとんど)同一の屈折率を使用することによって、波長変換構成要素(3)によるLED光の散乱損失が、可能な限り小さくなる。
【0017】
他の実施形態では、発明されたルミネッセント材料は、整合する屈折率を持つ高透明フッ素樹脂(例えば3MDyneon(登録商標)THV2030GまたはTHV220)と混合される。結果として生じる複合材料は、既知の技術を使用して適切な形状に変形できる。これらの形状はLEDの光機能部分として、または単に色変換のためだけの構成要素として使用できる。
ルミネッセント化合物の量、および波長変換構成要素(3)の寸法は、LED(1)によって生成されるすべての青色光が、波長約630nmを持つ赤色光に変換されるように選択される。本明細書に記載されたLEDデバイスの代表的な光放出の放射スペクトルが図3に示される。この図では、放射強度I(任意の単位)が、波長λ(nm)の関数として測定される。放出される赤色LED光の色を適用するために、他の(既知の)タイプの追加の蛍光体を使用できることを強調しておく。従って、本発明は、波長変換構成要素(3)中に、ガーネット型結晶構造の単一の蛍光体だけを含むLEDデバイスに限定されるわけではなく、この蛍光体と他の(既知の)蛍光体との混合物も適用することができる。
【0018】
図2は、白色光生成LEDデバイスとして設計された、本発明の第2の実施形態の概略断面を示す。この図は、半田バンプ(図示せず)を使用して、基板(12)に取り付けられる、従来の青色または(近)UV生成発光ダイオード(11)を示す。基板(12)は、LED(11)が電気的に接続される(図示せず)その表面に金属導体パッドを持つ。これらの半田パッドによって、LED(11)は電源に接続できる。この例では、LED(11)はAlInGaN型であり、および、約420nm〜470nmのピーク波長を持つ青色光を放出する。他のピーク波長を持つ他の半導体材料も、本発明の範囲内で使用できることは当然のことである。
セラミック小片板(13)および(14)として形成される2つの波長変換構成要素は、LED(11)に隣接して配置される。小片板(13、14)およびLED(11)は、(高温耐性シリコーン材料または低融点ガラスなどの)接着剤によって、または、機械的なクランプによって、相互に取り付けることができる。本発明の実施形態では、接着剤が使用される。好ましくない吸収をできるだけ小さく維持するために、構成要素(13)と構成要素(14)との間だけではなく、LED(11)と構成要素(13)との間の接着剤層も可能な限り薄くする。
【0019】
この実施形態では、構成要素(13)は赤色蛍光体板として形成され、一方、構成要素(14)は黄色蛍光体板として形成される。両方の板の表面寸法は、LED(11)の光放射表面(15)の表面寸法とほとんど同一であるが、両方の板は(白色)放出光に対して重要な影響を及ぼさない程度にいくらか大きめである。LED(11)が十分に小さい場合には、LED(11)からの青色放射の側面放射は無視できる。両方の構成要素の厚さは、通常は50マイクロメータ〜300マイクロメータの間である。小片板の実際の厚さは、言うまでもなく、LED光のスペクトルパワー分布および小片板に存在する蛍光体化合物の種類によって異なる。
説明される実施形態では、構成要素(13)の赤色蛍光体小片板には、ガーネット型結晶構造を持つ純粋なMn4+活性フッ化物蛍光体化合物が調製される。この目的のために該蛍光体化合物は、実質的に、ガーネット型結晶構造を持つ式{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12で表される。構成要素(14)の黄色蛍光体小片板に対しては、化合物Y3Al512:Ce(「CeがドープされたYAG」)が使用された。
【0020】
LED(11)および両方の波長変換構成要素(13、14)上では、レンズ構造に形成された光学構成要素(16)が配置され、LEDデバイスの放射パターンが最適化される。この光学構成要素の適切な選択によって、ランバートパターンばかりではなく、光学導波路構造を良好に結合させることができるパターンをも得ることができる。生成された白色光で均一な照度分布が得られるように、光学構成要素(16)を設計することもできる。これによって、本発明のLEDデバイスは、LCD型用途におけるバックライトに非常に適切となる。
【0021】
図4は、図2の、説明された白色光生成LEDデバイスの代表的な放射スペクトルを示す。この図では、放射強度I(任意の単位)が、波長λ(nm)の関数として測定される。スペクトルは、最大放射が630nm近辺である、約600nm〜約660nmの赤色スペクトル領域の放射を示す。
LEDデバイスの波長変換構成要素(3、13)に使用されるルミネッセント材料は、前述のように実質的に、式{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12で表され、およびガーネット型結晶構造を持つ。前記材料は、室温で、ドーパントとしてMn4+を含有するHF水溶液から共沈殿物として得られた。前記{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12を調製するために、化学量論量の開始材料NaCl、LiCl、MgCl2*6H2OおよびAlCl3*6H2Oと、少量のNaHF2とを水に溶解し、次に、K2MnF6を含有する48%HF水溶液に添加した。HF溶液中のMn4+濃度は1モル%であった。沈殿物を濾過し、2−プロパノールで繰り返し洗浄し、および、次に真空110℃で乾燥させた。得られた生成物をすり鉢ですりつぶした。
【0022】
図5は、沈殿物の1つの代表的な試料で、Cu−Kα放射を使用して測定されたX線粉末パターンスペクトルを示す。この図では、カウント数(N)が、回折角2シータの関数として示される。この測定によって、これらの試料は、ガーネット型結晶構造を持つ{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12と特定された。この試料では、いかなる特別な相も検出されなかった。
さまざまな他の開始材料を使用して、水溶液から共沈殿によって、発明のガーネット型フッ化物蛍光体を生成することが可能であることを強調しておく。特に水酸化物、ナイトレート、アルコキシド、およびカーボネートは、共沈殿方法に使用するための他の良好な開始材料である。K+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+および/またはIn3+の塩などの他の金属イオン塩も開始材料として使用できる。これらの開始材料を使用する場合には、他の組成物のガーネット型結晶構造を持つMn4+活性フッ化物蛍光体化合物も調製できる。
【0023】
前述のように調製された、ある量の{Na3}[Al1.94Mn0.03Mg0.03](Li3)F12の粉末を、平均粒子サイズが約5マイクロメータになるまで、さらに強力に機械的にすりつぶす。その後に粉末は板にプレスされ、および、炉内で、軸方向圧力2kバール、200℃で焼結された。室温に冷却後、このようにして得られたセラミック板はレーザで分割され、およびそれぞれの小片板に分けられた。これらの小片板は、本発明のLEDデバイスの波長変換構成要素として使用された。
本発明は、図面および前述の記載を参照して、詳細に図示され、説明されたが、該図面および記載は、説明の便宜のためであり、すなわち例示的であり、制限的ではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるわけではない。例えば、他の(光学)構成要素がLEDと波長変換構成要素との間に存在する実施形態、または2つ以上のLEDを1つの変換構成要素と組み合わせて動作する実施形態で、本発明を動作させることも可能である。
【0024】
開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、明細書、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求の範囲に記載されている発明を実施できる当該技術分野における当業者によって、理解され、実施できる。特許請求の範囲では、用語「を含む(comprising)」は他の構成要素または工程を排除せず、および不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されていることによって、これらの手段の組み合わせが、有利な点を有するために使用することができないことを意味しない。特許請求の範囲に記載されている、いかなる参照記号も本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配置される発光ダイオードと、
ルミネッセント材料として、Mn4+活性フッ化物化合物を含む波長変換構成要素を含む発光ダイオードデバイスであって、
前記Mn4+活性フッ化物化合物はガーネット型結晶構造である発光ダイオードデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の発光ダイオードデバイスにおいて、
前記Mn4+活性フッ化物化合物は、式{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表され、式中のAは、Na+およびK+から成る組から選択される少なくとも1種であり、および、式中のBは、Al3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+およびIn3+から成る組から選択される少なくとも1種であり、並びに、式中0.02<x<0.2、0.0≦y<0.4、および0≦d<1である発光ダイオードデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の発光ダイオードデバイスにおいて、
前記Mn4+活性フッ化物化合物材料の組成は、実質的に式{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddで表される発光ダイオードデバイス。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の発光ダイオードデバイスにおいて、
前記波長変換構成要素は、セラミック小片板として形成される発光ダイオードデバイス。
【請求項5】
請求項1、2または3に記載の発光ダイオードデバイスにおいて、
前記波長変換構成要素は、多量の前記Mn4+活性フッ化物化合物が取り込まれる、樹脂材料の本体部形状として形成される発光ダイオードデバイス。
【請求項6】
Mn4+活性フッ化物化合物を含むルミネッセント材料であって、前記化合物はガーネット型結晶構造であるルミネッセント材料。
【請求項7】
請求項6に記載のルミネッセント材料において、
組成は式{A3}[B2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddによって表され、式中のAは、Na+およびK+から成る組から選択される少なくとも1種であり、および、式中のBは、Al3+、B3+、Sc3+、Fe3+、Cr3+、Ti4+およびIn3+から成る組から選択される少なくとも1種であり、並びに、式中0.02<x<0.2、0.0≦y<0.4、および0≦d<1であるルミネッセント材料。
【請求項8】
請求項7に記載のルミネッセント材料において、
前記Mn4+活性フッ化物化合物の組成は、実質的に、式{Na3}[Al2-x-yMnxMgy](Li3)F12-ddによって表されるルミネッセント材料。
【請求項9】
請求項6、7または8に記載の組成を持つルミネッセント材料を調製するための方法であって、
少なくとも20体積%のHFを含有する水中に、K2MnF6を溶解させて第1の水溶液を調製する工程と、
所望のガーネットを構成するための残りの金属の塩の第2の水溶液を、前記ガーネット組成に対応するモル比で調製する工程と、
結果として生じる混合物を撹拌しながら、両方の溶液を化学量論量で混合する工程と、
結果として生じるガーネット組成物を前記混合物から分離する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載のルミネッセント材料を調製するための方法であって、
前記第1の水溶液はNaHF2を含有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514655(P2013−514655A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543956(P2012−543956)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055733
【国際公開番号】WO2011/073871
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】