説明

ルーバー装置および建具

【課題】操作部材の傷付きが防止できるとともに、ロック角度が微調節可能でかつロックとロック解除の操作性および判別性に優れたルーバー装置および建具を提供すること。
【解決手段】ロック部材25のロックギア253と主動ギア243との噛合いによって操作ダイヤル242の回転が規制されるので、操作ダイヤル242表面の傷が防止できるとともに、ギアの歯の間隔に応じた回転角度単位で操作ダイヤル242を回転規制することができる。従って、ギアの歯の間隔に応じた細かいピッチでスラット14の回動ロック角度を微調節することができ、利用者の好みに応じた角度でスラット14がロックできる。さらに、操作ダイヤル242と操作つまみ252とがバルコニー側に突出して設けられるので、操作性および視認性が向上でき、ロック部材25の状態が利用者から容易に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバー装置および建具に関し、詳しくは、回動自在に支持された複数のスラットと、これらのスラットを回動操作可能な操作部とを有したルーバー装置、このルーバー装置を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長手方向の回動軸回りに回動可能な複数のスラット(羽根)を有したルーバーであって、これらのスラットを回動させるための操作部を有したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたルーバーは、周囲に凹凸を有した操作用のハンドルと、このハンドルに一体に形成された第1のギアと、このギアと噛み合う第2のギアと、第2のギアと複数のスラットとを連結するアームとを有し、ハンドルを回転させることで、第1のギアを介して第2のギアが回動し、これに連結されたアームを介してスラットが回動するように構成されている。そして、操作部には、そのケースの上下に渡るロックボタンと、ロックボタンに連動するストッパとが設けられ、ロックボタンの下端部を押し上げることで、ストッパがハンドルの凹部に嵌り込んでハンドルの回転が規制され、ロックボタンの上端部を押し下げることで、ストッパがハンドルの凹部から外れてハンドルが回転操作できるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−32646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のルーバーにおける操作部では、ストッパがハンドルの凹部に嵌り込んでハンドルの回転を規制するように構成されているため、回転が規制された状態つまりロック状態で、ハンドルを回転操作しようとしたりスラットを回動させる力が作用したりすると、ストッパとハンドルとが擦れてハンドルが傷付く可能性がある。さらに、ストッパがハンドルの凹部に嵌り込むことから、一の凹部と次の凹部との間隔に応じたハンドルの回転角度単位でしか回転規制できず、これに伴いスラットの回動ロック角度が段階的になってしまい、利用者の所望する角度でスラットがロックできないこともある。
また、ロックボタンの押動部がケースの上下に設けられているので、ロックボタンの操作がしにくいとともに、ロック状態か否かが利用者から判別しにくい。このため、ロックを掛けたつもりでもロックされておらず、意図せずスラットが回動してしまったり、逆にロックされた状態でハンドルを操作してしまったりなどの不都合が生じる。
【0005】
本発明の目的は、操作部材の傷付きが防止できるとともに、ロック角度が微調節可能でかつロックとロック解除の操作性および判別性に優れたルーバー装置および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のルーバー装置は、互いに対向する一対の枠材間に回動自在に支持された複数のスラットと、これらのスラットを回動操作可能に前記枠材に設けられた操作部と、この操作部の操作を前記複数のスラットに伝達する伝達部とを有したルーバー装置であって、前記操作部は、前記枠材に固定される操作部本体と、この操作部本体に回転自在に支持された操作部材と、前記操作部本体にスライド自在に支持されたロック部材とを備え、前記操作部材は、前記枠材の見込み方向一方側に露出して回転操作可能な操作ダイヤルと、この操作ダイヤルと一体回転可能に設けられた主動ギアとを有し、前記伝達部は、前記枠材に回転自在に支持されて前記主動ギアと噛合う従動ギアと、この従動ギアに連結されて前記枠材の長手方向に移動自在に設けられた連動部材と、この連動部材と前記複数のスラットの各々とを連結する複数の連結部材とを有して構成され、前記ロック部材は、前記枠材の見込み方向一方側に露出した操作つまみと、前記主動ギアに噛合可能なロックギアとを有し、前記操作つまみの操作により、前記ロックギアが主動ギアに噛合って前記操作ダイヤルの回転を規制するロック位置と、前記ロックギアと主動ギアとの噛合いが解除される非ロック位置との間をスライド操作可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、ロック部材のロックギアが主動ギアに噛合って操作ダイヤルの回転を規制することで、ギアの歯の間隔に応じた回転角度単位で操作ダイヤルを回転規制することができ、この回転角度に応じてスラットの回動ロック角度を細かいピッチで微調節することができる。また、操作ダイヤルの表面に当接せずに、主動ギアにロックギアが噛合うことで、操作ダイヤルが傷付くことがなく、操作部の美観が維持できる。さらに、ロック部材の操作つまみが枠材の見込み方向一方側に露出して設けられ、つまり操作ダイヤルと同一の側に操作つまみが位置することで、操作つまみが操作しやすくなるとともに、利用者から視認しやすくできる。従って、ロック部材がロック位置にあるか、または非ロック位置にあるかが利用者から容易に判別でき、ロック位置にあるにも関わらず操作ダイヤルを誤操作したりスラットを持って回動させたりや、非ロック位置のままになっていて風などで意図せずにスラットが回動してしまうことなどが防止できる。
【0008】
この際、本発明のルーバー装置では、前記操作部の操作ダイヤルと操作つまみとは、それぞれ前記操作部本体から見込み方向一方側に突出して設けられていることが好ましい。 このような構成によれば、操作ダイヤルおよび操作つまみがともに操作部本体よりも見込み方向一方側に突出して設けられることで、これらの操作性を一層向上させることができる。さらに、操作つまみが一方側に突出して設けられているので、ロック部材におけるロック位置または非ロック位置の判別性を高めることができる。
【0009】
さらに、本発明のルーバー装置では、前記ロック部材と前記操作部本体との間には、前記ロック位置と前記非ロック位置との各位置において当該ロック部材を位置決めする位置決め手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、ロック位置や非ロック位置において位置決め手段によってロック部材を位置決めすることで、ロック部材が途中位置つまりロックギアと主動ギアとが中途半端に噛合った状態となることが防止でき、部品の破損が防止できるとともに、ロックまたはロック解除が確実に実行できる。
【0010】
一方、本発明の建具は、前記いずれかのルーバー装置を組み込んだ面状体を備え、前記面状体は、上框、下框および左右の縦框を四周框組みした枠体を有して構成され、前記左右の縦框間に前記複数のスラットが回動自在に支持されるとともに、当該縦框に前記操作部および伝達部が設けられ、前記縦框は、見込み方向に延びて前記スラットを軸支する第1見込み面と、この第1見込み面の見込み方向一方端から見付け方向外側に延びる見付け面と、前記第1見込み面に連続して前記見付け面よりも見込み方向一方側に延びる第2見込み面とを少なくとも有して形成され、前記縦框の見付け面に前記操作部の操作部本体が固定され、前記第1見込み面に前記伝達部の従動ギアが軸支され、前記見付け面には、前記従動ギアを見込み方向一方側に挿通させる挿通孔が形成され、当該見付け面よりも見込み方向一方側における前記操作部本体内部にて前記従動ギアと前記操作部の主動ギアとが噛合わされていることを特徴とする。
【0011】
以上の建具によれば、前述と同様に、建具に設けたルーバー装置において、操作ダイヤルの傷付きが防止できるとともに、スラットのロック角度が微調節可能でかつロックとロック解除の操作性および判別性を優れたものにできる。さらに、縦框の見付け面と第2見込み面とでL字形に形成された部分に操作部本体が位置し、この操作部本体の見込み方向一方側に操作ダイヤルおよび操作つまみが設けられているので、縦框と干渉することなく操作ダイヤルや操作つまみの操作性が良好にできるとともに、操作部本体が目立たず、建具の外観意匠性が良好にできる。また、第1見込み面に軸支された従動ギアが挿通孔を介して見込み方向一方側に延び、操作部本体内部で主動ギアと噛合うことで、ギア同士の噛合い位置を操作部本体で覆うことができ、ゴミや水滴等の付着を防止して円滑な動作が確保できる。
【0012】
この際、本発明の建具では、前記縦框の見付け面には、前記操作ダイヤルを挿通させる挿通孔が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、見付け面に挿通孔を設けて操作ダイヤルを挿通することで、操作部本体が見込み方向一方側に出っ張ることなく操作ダイヤルの径寸法を大きくすることができ、径寸法の大きな操作ダイヤルにより操作性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の建具では、前記面状体は、上レールに吊り下げ支持され、かつ、下レールに案内されて前記上下レールに沿って左右に移動可能に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、前述のような特長を有したルーバー装置が組み込まれた面状体を左右移動可能に設けたことで、透光と遮光とが切り換え可能な可動間仕切りや可動被覆部材として本発明の建具が利用可能になる。ここで、被覆部材としては、バルコニーやベランダ、外廊下などの建物の屋外空間や、窓先等に設置され、外部からの視線を遮る(遮視)ために用いられるものである。このような可動間仕切りや可動被覆部材を構成する面状体にルーバー装置を組み込むことで、遮光や通風等の機能を追加することができ、利用者の安心感や快適性を高めることができる。
【0014】
さらに、本発明の建具では、前記操作部の操作ダイヤルと操作つまみとは、それぞれ前記縦框の第2見込み面よりも見込み方向一方側に突出して設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、操作ダイヤルおよび操作つまみがともに縦框の第2見込み面よりも見込み方向一方側に突出して設けられることで、縦框との干渉をなくして操作性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である被覆装置1を示す正面図である。図2および図3は、それぞれ被覆装置1を示す縦断面図および横断面図である。
図1〜図3において、被覆装置1は、集合住宅等のバルコニーの床2に固定された手摺3の見込み方向屋外側に配置され、手摺3に沿って移動可能に設けられている。具体的には、被覆装置1は、バルコニーの天井4に取り付けられた上レール5と、バルコニーの床2に取り付けられた下レール6と、これらの各レール5,6に案内される面状体としての被覆部材10とを備えて構成されている。また、上レール5および下レール6の左右両端側におけるバルコニーの壁7(または柱)には、各レール5,6の端部に接続される見切り材(縦材)8が固定されている。すなわち、上レール5、下レール6および左右の見切り材8は、四周枠組みされて建物の躯体に固定されている。
【0016】
上レール5および下レール6は、手摺3と平行な方向つまりバルコニーの見付け方向に延びて設けられ、ぞれぞれ固定部材5A,6Aおよびアンカーボルト5B,6Bを介して天井4および床2に取り付けられている。
上レール5は、略角筒状に形成され、その上面には、固定部材5Aにビス止め固定される一対のヒレ部が形成され、その下面には、その長手方向に連続する開口(溝)5Cが形成されており、この開口5Cを挟んで配置される2つの水平面部5Dによって、後述する被覆部材10の戸車15Bが転動案内される。すなわち、上レール5によって被覆部材10が吊り下げ支持されるようになっている。
一方、下レール6は、略板状に形成され、その下面には、固定部材6Aにビス止め固定される一対のヒレ部が形成され、その上面には、下レール6の長手方向に連続する一条のガイドレール6Cが形成されている。そして、下レール6のガイドレール6Cによって、後述する被覆部材10の摺動片12Aが摺動案内されるようになっている。
【0017】
被覆部材10は、全体枠状に四周框組みされた上框11、下框12および左右の縦框13と、この枠内に回動自在に支持された複数のスラット14とを備えている。複数のスラット14は、左右の縦框13間に渡って支持され、各スラット14が上下方向に並んで配置されている。そして、各スラット14は、その長手方向(水平方向)に沿った回転軸回りに回動可能に支持され、図2に実線で示すように、各スラット14が略垂直になって上下のスラット14同士の端部が見込み方向に重なる全閉状態や、仮想線(二点鎖線)で示すように、各スラット14が略水平になる全開状態を含んで開閉動作可能に構成されている。すなわち、被覆部材10には、開閉可能な複数のスラット14を有するルーバー装置が組み込まれている。そして、スラット14は、長方形状の矩形中空断面を有したアルミ形材製であり、全閉状態において、上側となる端面のバルコニー側縁から上方に突出する突片と、下側となる端面の屋外側縁から下方に突出する突片とを有して形成されている。
【0018】
被覆部材10の上框11には、その上側に突出して上レール5に沿って移動する上吊り式の戸車装置15が取り付けられている。この戸車装置15は、断面コ字状に形成されてボルトを介して上框11に連結された支持プレート15Aと、この支持プレート15Aの側面に回転自在に取り付けられた一対の戸車15Bとを備えている。戸車15Bは、上レール5の水平面部5D上を転動し、これにより戸車装置15が上レール5に沿って移動可能になっている。
一方、下框12の下面には、樹脂製の摺動片12Aが固定されている。この摺動片12Aには、下レール6のガイドレール6Cが挿入される溝が形成されている。従って、被覆部材10はガイドレール6Cに案内されて見込み方向(バルコニーの内外方向)には移動せず、ガイドレール6Cの長手方向のみにスライド移動可能に設けられている。
【0019】
また、図3に示すように、被覆部材10の左右の縦框13のうち、バルコニー側から見て左側の縦框13には、当該被覆部材10をスライド移動不能にロックするためのロック装置16が設けられ、右側の縦框13には、当該被覆部材10のスラット14を開閉操作するための開閉操作装置20が設けられている。
ロック装置16は、縦框13のバルコニー側に取り付けられた操作つまみ16Aと、縦框13の内部に設けられて操作つまみ16Aに連結された適宜なリンク機構と、このリンク機構に連結されて上下移動可能なロッド棒と、ロッド棒上端に取り付けられて上レール5に係合可能な係合部と、係合部を上レール5側に付勢するばねとを備えている。そして、操作つまみ16Aは、ロック位置と非ロック位置とに移動可能になっており、操作つまみ16Aを操作しない状態では、ばねの付勢力で係合部が上レール5に係合して被覆部材10がスライド不能にロックされ、操作つまみ16Aを非ロック位置に移動操作することで、係合部が上レール5から離れてロックが解除され、被覆部材10がスライド操作できるようになっている。
【0020】
次に、開閉操作装置20について、図4〜図7も参照して説明する。
図4は、開閉操作装置20が設けられた位置における縦框13の横断面図である。図5は、開閉操作装置20の縦断面図である。図6は、開閉操作装置20の伝達部22を示す側面図である。図7および図8は、それぞれ開閉操作装置20の操作部21をバルコニー側から見た縦断面図および正面図である。
縦框13は、図4に示すように、アルミ形材製であって、見込み方向に沿った第1見込み面部131と、この見込み面部131から見付け方向外側に延びる一対の見付け面部(一方側であるバルコニー側の第1見付け面部132、他方側である屋外側の第2見付け面部133)と、各見付け面部132,133の先端から互いに近づく方向に延びる突出片部134,135とを有して形成されている。さらに、縦框13は、第1見込み面部131に連続して第1見付け面部132よりもバルコニー側に延びる第2見込み面部136と、第1見込み面部131に連続して第2見付け面部133よりも屋外側に延びる第3見込み面部137とを有して形成されている。そして、縦框13は、突出片部134,135間に渡って固定される縦框カバー材138を有し、縦框13には、第1見込み面部131と、第1および第2の見付け面部132,133と、縦框カバー材138とで囲まれた縦框中空部139が形成されている。
【0021】
開閉操作装置20は、縦框13におけるバルコニー側の第1見付け面部132と第2見込み面部136との交差部に設けられる操作部21と、縦框中空部139に設けられて操作部21の操作力を複数のスラット14に伝達する伝達部22とを有して構成されている。操作部21は、縦框13に固定される操作部本体23と、この操作部本体23に回転自在に支持された操作部材24と、操作部本体23にスライド自在に支持されたロック部材25とを備えて構成されている。一方、伝達部22は、縦框13の第1見込み面部131に回転自在に支持される従動ギア26と、この従動ギア26に連結されて縦框13の長手方向に移動自在に設けられた連動部材27と、この連動部材27と複数のスラット14の各々とを連結する複数の連結部材28とを有して構成されている。
【0022】
操作部本体23は、金属板材から曲げ加工により形成されて縦框13の第1見付け面部132に固定されるベース部材231と、このベース部材231を覆って固定されるケース部材232とを有して構成されている。ベース部材231には、後述する操作部材24の回転軸241が支持されるとともに、ロック部材25を上下スライド自在に支持するピン233が設けられている。また、ベース部材231およびケース部材232のバルコニー側側面には、後述する操作部材24の操作ダイヤル242とロック部材25の操作つまみ252とをバルコニー側に挿通させる挿通孔234,235が形成されている。そして、ケース部材232のバルコニー側側面は、縦框13の第2見込み面部136先端と略同一見込み位置に設けられ、ケース部材232の他の側面は、縦框13の第1見付け面部132先端と略同一見付け位置に設けられている。
【0023】
操作部材24は、ベース部材231に支持される回転軸241と、この回転軸241に軸支される操作ダイヤル242と、この操作ダイヤル242と一体回転可能に設けられた主動ギア243とを有して構成されている。操作ダイヤル242は、全体円盤状に形成され、その外周面に適宜な凹凸が形成されるとともに、操作部本体23の挿通孔234から縦框13の見込み方向バルコニー側に突出して設けられ、バルコニー側から回転操作可能になっている。また、主動ギア243は、操作部本体23内部において従動ギア26と噛合うように設けられており、この主動ギア243の回転が従動ギア26に対して減速されて伝達されるようなギア比に設定されている。
【0024】
ロック部材25は、ベース部材231に上下スライド自在に支持されるロック部材本体251と、このロック部材本体251からバルコニー側に突出した操作つまみ252と、ロック部材本体251の下端部に形成されて操作部材24の主動ギア243に噛合可能なロックギア253とを有して構成されている。ロック部材本体251には、ベース部材231のピン233が挿通されて案内される長孔251Aが形成されている。また、操作つまみ252は、操作部本体23の挿通孔235から縦框13の見込み方向バルコニー側に突出して設けられ、バルコニー側からスライド操作可能になっている。そして、ロックギア253は、主動ギア243に噛合可能な適宜な本数の凹状歯形を有して形成されている。このようなロック部材25は、ロックギア253が主動ギア243に噛合しない非ロック位置(図5、図7に実線で示す位置)と、ロックギア253が主動ギア243に噛合するロック位置(図5、図7に仮想線で示す位置)との間を上下スライド移動できるようになっている。
【0025】
また、ロック部材本体251には、ベース部材231の内壁面に対して突没自在に設けられたボール254と、このボール254をベース部材231に向かって付勢するばね255とが設けられている。そして、ベース部材231の内壁面には、ロック位置と非ロック位置とにそれぞれ対応した図示しない凹みが形成されており、これらの凹みにボール254が係止されることで、ロック部材25がロック位置と非ロック位置とに位置決めされるようになっている。すなわち、ロック部材25のボール254およびばね255と、ベース部材231の凹みとで位置決め手段が構成されている。
【0026】
一方、伝達部22の従動ギア26は、全体扇形で略180°の周長を有して形成され、所定高さ位置の1つのスラット14を支持する回転軸141によって縦框13の第1見込み面部131内面に回転自在に支持され、その外周に主動ギア243と噛み合う歯が形成されている。また、縦框13の第1見付け面部132には、従動ギア26を挿通させる挿通孔132Aが形成されており、従動ギア26の一部を第1見付け面部132よりもバルコニー側に突出させ、これにより従動ギア26が主動ギア243と噛み合うように構成されている。さらに、挿通孔132Aは、操作ダイヤル242の位置において見付け方向外側に拡大されており、操作ダイヤル242の一部を挿通させるように形成されている。すなわち、操作ダイヤル242の一部は、挿通孔132Aを介して第1見付け面部132よりも屋外側に突出して設けられている。
【0027】
連結部材28は、その一端側が各スラット14の回転軸141に軸支され、かつスラット14に回転不能に連結されるとともに、他端側が連結ピン281を介して連動部材27に連結されている。そして、従動ギア26位置における連結部材28の連結ピン281は、連動部材27を貫通して、回転軸141と偏心した位置において従動ギア26に連結されている。従って、主動ギア243を介して従動ギア26が回転されると、連動部材27が上下駆動されるとともに連結部材28が回動し、その一端側に連結されたスラット14が回動される。すなわち、操作部21の操作ダイヤル242の回転操作が主動ギア243から従動ギア26に伝達され、従動ギア26から連動部材27および連結部材28を介して各スラット14に伝達されるようになっている。また、連動部材27には、各スラット14位置に対応して屋外側に開口した上下一対の切欠き271が形成されており、操作部21による回動操作の始点(後述する図9の位置)および終点(後述する図11の位置)において、切欠き271に回転軸141を受け入れ可能になっている。さらに、受け入れた回転軸141が切欠き271の底部に当接することで、始点および終点を超えて回動操作ができない、つまり操作ダイヤル242の回転操作が規制されるようになっている。
【0028】
次に、図9〜図11に基づいて開閉操作装置20およびスラット14の動作を説明する。
図9には、スラット14の全閉状態における開閉操作装置20が示され、図10には、スラット14の全開状態における開閉操作装置20が示されている。また、前述した図6には、スラット14が屋外側に向かって下がる遮光状態における開閉操作装置20が示され、図11には、スラット14が屋外側に向かって上がる透光状態(遮視状態)における開閉操作装置20が示されている。
【0029】
先ず、図9に示すように、スラット14の全閉状態では、従動ギア26の外周一端側(始点側であり、図9の右下側)の歯が主動ギア243と噛み合い、連結部材28の連結ピン281が上方に位置して連動部材27が上側に移動している。この全閉状態では、連動部材27の一対の切欠き271のうち、下側の切欠き271に回転軸141が入り込み、切欠き271の底部と回転軸141とが当接することで、この位置よりも上方に連動部材27が移動不能となっている。従って、従動ギア26は、図9に示す状態から反時計回りには回転できず、これにより主動ギア243が時計回りには回転できず、操作ダイヤル242の下方への回転操作が規制されている。このような全閉状態では、上下に隣接するスラット14同士の互いの端部が見込み方向に重なり、これらのスラット14によって屋外とバルコニーとが仕切られ、屋外からの光や風、視線等が遮られるようになっている。
【0030】
以上のような全閉状態から、操作ダイヤル242を上方(図9における反時計回り)へ回転操作すると、主動ギア243を介して従動ギア26が時計回りに回転する。この従動ギア26の回転に伴って連動部材27および連結部材28の連結ピン281が下方かつバルコニー側に移動する。さらに、連結部材28が回動することで、その一端側(回転軸141側)に連結されたスラット14が時計回りに回転し、図6に示すように、スラット14が屋外側に向かって下がり傾斜を有し日光を遮ることができる遮光状態となる。このような遮光状態では、上下に隣接するスラット14同士の間に、屋外側からバルコニーに向かって上がる傾斜を有した隙間が形成されるので、屋外からの風がバルコニーに導入可能で上方からの視線が遮られるようになっている。
【0031】
以上のような遮光状態から、さらに操作ダイヤル242を上方へ回転操作することで、主動ギア243、従動ギア26、連動部材27および連結部材28を介してスラット14が時計回りに回転し、図10に示すように、スラット14が略水平な全開状態となる。このような全開状態では、上下に隣接するスラット14同士の間に、屋外側からバルコニーに向かう隙間が形成されるので、屋外からの風がバルコニーに導入可能で、上方からの日光や下方からの視線の大半を遮ることができるようになっている。
【0032】
以上のような全開状態から、さらに操作ダイヤル242を上方へ回転操作することで、図11に示すように、スラット14が屋外側に向かって上がり傾斜を有することで、日光を透過させるとともに、下方からの視線を遮ることができる透光状態(遮視状態)となる。このような透光状態では、上下に隣接するスラット14同士の間に、屋外側からバルコニーに向かって下がる傾斜を有した隙間が形成されるので、屋外からの日光や風がバルコニーに導入可能になっている。
そして、以上の各状態において、操作部21におけるロック部材25を操作してロックギア253を主動ギア243に噛合させることで、従動ギア26、連動部材27および連結部材28の移動が規制されてスラット14をロックすることができる。また、ロックギア253と主動ギア243との噛合いを解除することで、前述のような操作ダイヤル242の回転操作が可能になり、スラット14を任意の角度に調節できるようになっている。 また、操作ダイヤル242を前述と逆向きに回転操作することで、全開状態や透光状態から全閉状態に向かってスラット14を開閉させることが可能である。
【0033】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、ロック部材25のロックギア253と主動ギア243との噛合いによって操作ダイヤル242の回転が規制されるので、操作ダイヤル242表面の傷が防止できるとともに、ギアの歯の間隔に応じた回転角度単位で操作ダイヤル242を回転規制することができる。従って、ギアの歯の間隔に応じた細かいピッチでスラット14の回動ロック角度を微調節することができ、利用者の好みに応じた角度でスラット14がロックでき、利便性を高めることができる。
【0034】
(2)さらに、操作部材24の操作ダイヤル242とロック部材25の操作つまみ252とが同一方向に突出して設けられ、バルコニー側からできるようになっているので、操作ダイヤル242や操作つまみ252が操作しやすくなるとともに、利用者から視認しやすくできる。従って、ロック部材25がロック位置にあるか非ロック位置にあるかが利用者から容易に判別でき、ロック位置にあるにも関わらず操作ダイヤル242を誤操作したり、スラット14を持って回動させたりなどや、非ロック位置のままになっていて風などで意図せずにスラット14が回動することなどが防止できる。
【0035】
(3) また、ロック部材25のボール254およびばね255と、ベース部材231の凹みとで構成された位置決め手段が設けられているので、ロックギア253と主動ギア243とが中途半端に噛合う位置にロック部材25が止まることが防止でき、部品の破損が防止できるとともに、ロックまたはロック解除が確実に実行できる。
【0036】
(4)さらに、縦框13の第1見付け面132と第2見込み面136とでL字形に形成された部分に操作部本体23が設けられ、この操作部本体23からバルコニー側に突出して操作ダイヤル242および操作つまみ252が設けられているので、縦框13との干渉が防止でき、操作ダイヤル242や操作つまみ252の操作性が良好にできるとともに、操作部本体23が目立たず、被覆装置1の外観意匠性が良好にできる。
【0037】
(5)また、被覆部材10が上レール5および下レール6に案内されて左右にスライド移動可能に構成されているので、利用者の好みに応じて被覆部材10を移動させ、移動させた位置でスラット14を開閉操作することができる。従って、所定の部屋の前方位置ではスラット14を全閉状態としたり、他の部屋の前方位置ではスラット14を全開状態としたり、あるいは遮光状態や遮視状態としたりすることで、利便性を格段に向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、被覆装置1の被覆部材10にルーバー装置を組み込んだ例を説明したが、本発明の建具は、このような被覆装置1に限らず、左右スライド可能に設けられた適宜な間仕切り装置等であってもよく、また、一般的な窓の屋外側に移動不能に固定された面格子等であってもよい。さらに、前記実施形態では、被覆部材10の縦框13にスラット14が支持されたルーバー装置を説明したが、スラットを回動自在に支持する枠材としては、縦框に限らず、窓枠を構成する縦枠でもよく、また縦に延びる部材に限らず横材間にスラットが上下に延びて支持されていてもよい。
【0039】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す正面図である。
【図2】前記建具を示す縦断面図である。
【図3】前記建具を示す横断面図である。
【図4】前記建具に設けられる開閉操作装置を示す横断面図である。
【図5】前記開閉操作装置の縦断面図である。
【図6】前記開閉操作装置の伝達部を示す側面図である。
【図7】前記開閉操作装置の操作部を示す縦断面図である。
【図8】前記開閉操作装置の操作部を示す正面図である。
【図9】前記建具に設けられたルーバー装置の全閉状態を示す側面図である。
【図10】前記ルーバー装置の全開状態を示す側面図である。
【図11】前記ルーバー装置の透光状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…建具である被覆装置、5…上レール、6…下レール、10…面状体ある被覆部材、11…上框、12…下框、13…一対の枠材である縦框、14…スラット、21…操作部、22…伝達部、23…操作部本体、24…操作部材、25…ロック部材、26…従動ギア、27…連動部材、28…連結部材、131…第1見込み面部、132…第1見付け面部、132A…挿通孔、136…第2見込み面部、241…回転軸、242…操作ダイヤル、243…主動ギア、252…操作つまみ、253…ロックギア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の枠材間に回動自在に支持された複数のスラットと、これらのスラットを回動操作可能に前記枠材に設けられた操作部と、この操作部の操作を前記複数のスラットに伝達する伝達部とを有したルーバー装置であって、
前記操作部は、前記枠材に固定される操作部本体と、この操作部本体に回転自在に支持された操作部材と、前記操作部本体にスライド自在に支持されたロック部材とを備え、前記操作部材は、前記枠材の見込み方向一方側に露出して回転操作可能な操作ダイヤルと、この操作ダイヤルと一体回転可能に設けられた主動ギアとを有し、
前記伝達部は、前記枠材に回転自在に支持されて前記主動ギアと噛合う従動ギアと、この従動ギアに連結されて前記枠材の長手方向に移動自在に設けられた連動部材と、この連動部材と前記複数のスラットの各々とを連結する複数の連結部材とを有して構成され、
前記ロック部材は、前記枠材の見込み方向一方側に露出した操作つまみと、前記主動ギアに噛合可能なロックギアとを有し、前記操作つまみの操作により、前記ロックギアが主動ギアに噛合って前記操作ダイヤルの回転を規制するロック位置と、前記ロックギアと主動ギアとの噛合いが解除される非ロック位置との間をスライド操作可能に構成されているルーバー装置。
【請求項2】
前記操作部の操作ダイヤルと操作つまみとは、それぞれ前記操作部本体から見込み方向一方側に突出して設けられている請求項1に記載のルーバー装置。
【請求項3】
前記ロック部材と前記操作部本体との間には、前記ロック位置と前記非ロック位置との各位置において当該ロック部材を位置決めする位置決め手段が設けられている請求項1または請求項2に記載のルーバー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のルーバー装置を組み込んだ面状体を備え、
前記面状体は、上框、下框および左右の縦框を四周框組みした枠体を有して構成され、前記左右の縦框間に前記複数のスラットが回動自在に支持されるとともに、当該縦框に前記操作部および伝達部が設けられ、
前記縦框は、見込み方向に延びて前記スラットを軸支する第1見込み面と、この第1見込み面の見込み方向一方端から見付け方向外側に延びる見付け面と、前記第1見込み面に連続して前記見付け面よりも見込み方向一方側に延びる第2見込み面とを少なくとも有して形成され、
前記縦框の見付け面に前記操作部の操作部本体が固定され、前記第1見込み面に前記伝達部の従動ギアが軸支され、前記見付け面には、前記従動ギアを見込み方向一方側に挿通させる挿通孔が形成され、当該見付け面よりも見込み方向一方側における前記操作部本体内部にて前記従動ギアと前記操作部の主動ギアとが噛合わされている建具。
【請求項5】
前記縦框の見付け面には、前記操作ダイヤルを挿通させる挿通孔が形成されている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記面状体は、上レールに吊り下げ支持され、かつ、下レールに案内されて前記上下レールに沿って左右に移動可能に設けられている請求項4または請求項5に記載の建具。
【請求項7】
前記操作部の操作ダイヤルと操作つまみとは、それぞれ前記縦框の第2見込み面よりも見込み方向一方側に突出して設けられている請求項4から請求項6のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−52243(P2009−52243A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218567(P2007−218567)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】