説明

ルーフラック取付構造及びルーフラック取付方法

【課題】ルーフラックが受ける荷重を車体が分散して受けるようにする。
【解決手段】ルーフラック3の長手方向中間のルーフ1に対する中間取付部9において、ブラケット25の一方の端部であるルーフラック側接合部23aを、ルーフラック3の取付具11に対応するルーフ1の裏面1aに取付板21を介して連結する一方、ブラケット25の他方の端部である補強部材接合部23dを、車幅方向に延設されるルーフボウ25の車室側に突出する突出部25bの平面部25b1に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のルーフ上にルーフラックを取り付けるルーフラック取付構造及びルーフラック取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にルーフラックは、ボルト・ナットによって車体のルーフに締結する取付構造とされているが、この際ルーフラックのルーフへの取付部に補強部材の一端を連結し、この補強部材の他端をボディサイド側に連結した取付構造が知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−95185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ルーフラックに例えば荷物積載用のキャリアを取り付け、このキャリアに荷物を積載した状態で車両が旋回走行すると、ルーフラックが荷物の慣性力により、旋回外側に向けて倒れる方向に荷重を受ける。
【0004】
しかしながら上記した従来の構造では、ルーフラックが受ける上記の荷重を旋回外側に対応するボディサイド側が集中して受けるため、ボディサイド側の荷重負荷が大きく、改善が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、ルーフラックが受ける荷重を車体が分散して受けるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ルーフラックのルーフへの取付部は、ルーフラックのルーフへの取付部位に対応するルーフ裏面取付部と、ルーフの裏面に設けた補強部材とを互いに連結する連結部材を備え、この連結部材の補強部材との連結部を、連結部材のルーフ裏面取付部との連結部より車幅方向内側に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ルーフラックが車幅方向外側に向けて受ける荷重は、ボディサイド側で受けると同時に、連結部材を介してルーフ裏面取付部との連結部より車幅方向内側に配置したルーフ裏面の補強部材との連結部へ伝達されるようにした。これにより、ルーフラックが車幅方向外側に向けて受ける荷重は、連結部材に対し引張り荷重として作用し、効率よくルーフ裏面の補強部材で受けることができるため、ボディサイド側への荷重の集中を抑えることができ、ルーフラックが受ける荷重を車体に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係わるルーフラック取付構造を示す、図2のA−A断面図、図2は、ルーフラック取付構造を備えた車体の要部を示す斜視図である。また、図3はルーフラック取付構造の斜視図、図4は同平面図である。
【0010】
図2に示すように、ルーフ1上の車幅方向両外側近傍位置に、車体前後方向に延設されるルーフラック3を取り付けている。このルーフラック3は、その長手方向(車体前後方向)両端部3a,3bをルーフ1に取り付けるとともに、この両端取付部5,7相互間の中間部に中間取付部9を設定してある。すなわち本実施形態では、ルーフラック3を、該ルーフラック3の長手方向両端部3a,3bと、長手方向両端部3a,3b相互間の中間部との少なくとも3箇所にてルーフ1に取り付けていることになる。
【0011】
上記した図3,図4は、図2における車幅方向左側の中間取付部9周辺を示しており、以後は、この車幅方向左側の中間取付部9の取付構造について説明するが、車幅方向右側の中間取付部9については、図示してある左側の中間取付部9に対して左右対称な構造であるのでその説明は省略する。
【0012】
ルーフラック3は、図1に示すように、断面形状がほぼ台形となる中空部材であり、中間取付部9においては、台形の下底に対応する底面部3cの下面に取付具11を例えば溶接によって装着して一体化している。取付具11は、ルーフラック3と同様に断面形状がほぼ台形の中空部材であり、ルーフラック3の底面部3cに固定する上面部11aと、車幅方向両側の斜面部11b,11cと、ルーフ1に対向する取付面部11dとを備えている。
【0013】
そして、取付面部11dを、例えばゴム製からなる座板13を介してルーフ1上にセットし、取付面部11dに形成したボルト挿入孔11eにボルト15を挿入し、このボルト15を、後述するブラケット23に取り付けてあるウエルドナット17に締結する。なお、ボルト15の挿入及び締結作業は、取付具11の上面部11aと車幅方向外側の斜面部11bとにわたり形成してある作業穴11fから行う。この作業穴11fにはカバー19を着脱可能に取り付けてあり、作業時にはカバー19を取り外す。
【0014】
取付具11の取付面部11dに対応するルーフ1の裏面1aには、ルーフラック固定用の座面を構成する取付板21を介して連結部材であるブラケット23を配置し、これらを前記したボルト15及びウエルドナット17によって締結固定する。この際ウエルドナット17は、ブラケット23の取付板21と反対側の室内側に固定してある。
【0015】
なお、上記したようにブラケット23は、ボルト15によって取付具11に対応する位置のルーフ1に固定するが、このボルト15による固定の前に、取付板21とともに、図4に示すスポット溶接部S1にてルーフ裏面1aにあらかじめスポット溶接固定する。
【0016】
ブラケット23は、板状部材をプレス成形したものであり、ルーフ裏面取付部となる取付板21に接合するルーフラック側接合部23aと、このルーフラック側接合部23aから車室下方に向けて屈曲しかつやや車幅方向内側に向けて屈曲する屈曲部23bと、この屈曲部23bの下端から車体前後方向前方かつ車幅方向内側に向けて延設される平面状の延長部23cとをそれぞれ備えている。なお、上記した屈曲部23bは、ルーフ裏面取付部である取付板21の近傍に設定してある。
【0017】
そして、延長部23cの先端付近のルーフ1の裏面1aには、図4に示すように、車幅方向に延設されるルーフボウ25を、ルーフ1を補強するための補強部材として取り付けている。ルーフボウ25は、図4のB−B断面図である図5に示すように、ルーフ1の裏面1aに接合する車体前後方向両側の接合フランジ25aから、車体下方の車室側に向けて突出する突出部25bを備えて断面ハット形状を呈している。
【0018】
突出部25bの先端側はほぼ水平な平面部25b1としてあり、この平面部25b1の下面に、前記したブラケット23の延長部23cの先端付近に相当する部位の補強部材接合部23dを接合し、さらに平面部25b1のルーフ1側に補強板27を載置したうえで、これら3者を図3,図4のスポット溶接部S2にて接合固定する。
【0019】
なお、ブラケット23の補強部材接合部23dは、図4に示すように、車幅方向内側(図4中で上側)に向けて屈曲する延長部23cに対し、車体前方に向けてさらに屈曲し、ルーフラック側接合部23aとほぼ平行に車体前後方向に延設されている。
【0020】
このようなブラケット23は、図4に示すように、ルーフボウ25との補強部材接合部23dを介しての連結部を、該ブラケット23のルーフ裏面取付部である取付板21との連結部より車幅方向内側に設定していることになる。
【0021】
上記したブラケット23は、ルーフボウ25に補強板27とともにあらかじめ前記したスポット溶接部S2にて溶接固定して一体化して組立部品化しておき、この組立部品化したルーフボウ25をその接合フランジ25aを介してルーフ1の裏面1aに接着剤を用いて接着固定するとともに、ブラケット23をそのルーフラック側接合部23aを介して取付板21とともにルーフ1の裏面1aにスポット溶接固定する。
【0022】
その後、ルーフラック3をルーフ1に固定する。すなわち、ルーフラック3の長手方向両端部3a,3bをルーフ1に例えば図示しないボルト・ナットによって固定し、さらに中間取付部9において、図1に示したように取付具11を介してボルト15を用いてブラケット23とともにルーフ1に固定する。
【0023】
ルーフ1の車幅方向外側の端部1bは、下方に向けて屈曲させた後さらに車幅方向外側に延長して端部フランジ1b1を形成し、この端部フランジ1b1の下部に対向する位置に、前記したルーフボウ25の車幅方向外側の端部25cを配置し、これら端部フランジ1b1と端部25cとの間に、車体のボディサイドを構成するボディサイドアウタ29の端部フランジ29aとルーフサイドインナ31の端部フランジ31aを重ねるようにして配置して、これらをスポット溶接によって互いに固定する。
【0024】
なお、このスポット溶接の上部には凹部33が形成され、該凹部33に図示しないルーフモールを充填配置する。
【0025】
このようなルーフラック取付構造において、ルーフラック3に例えば図示しないキャリアを取り付けて、該キャリアに荷物を積載した状態で車両が旋回走行したときに、ルーフラック3が荷物の慣性力により、旋回外側に向けて倒れる方向に荷重を受けた場合を想定する。
【0026】
このとき図1中で右側(車幅方向左側)が上記した旋回方向外側だとすると、ルーフラック3は、図1中の矢印Fで示す車体外側に向けて荷重を受けることになり、この際ルーフラック3は、取付具11の車幅方向外側縁部のC部を支点として、ボルト15による締結部近傍が持ち上げられる方向に力を受けるとともに、旋回外側(図1中で右側)のボディサイドに荷重が付与される。
【0027】
ところが本実施形態では、ボルト15による締結部にブラケット23の一方の端部であるルーフラック側接合部23aを連結するとともに、他方の端部である補強部材接合部23dを、ルーフラック側接合部23aより車幅方向内側でルーフボウ25に連結している。このため、上記ルーフラック3を持ち上げようとする力はブラケット23に対し引張り荷重として作用し、効率よくルーフボウ25に伝達される。これにより、図1中で右側のボディサイドアウタ29を備えるボディサイド側への荷重の集中を抑えることができ、ルーフラック3が受ける荷重を車体全体に分散させることができる。
【0028】
特に、本実施形態では、ルーフラック3が前記した荷重を受けたときに変形しやすい長手方向中間部の中間取付部9において、ブラケット23をルーフボウ25に連結しているので極めて効果的である。
【0029】
また、本実施形態では、ルーフラック3が受ける前記した荷重を受ける補強部材として、ルーフ1を補強するためのルーフボウ25を利用することで、新たな部材を設けることなく、荷重分散を行うことができる。特にこのルーフボウ25は、取付板21に対して車体前後方向にずれた位置に設定されていて、車幅方向両側の側部部材としてのボディサイド(ボディサイドアウタ29)に連結されていることから、図1中で図示されていない反対側のボディサイドにも荷重が伝達され、車体全体への荷重分散に極めて有効である。
【0030】
また、ブラケット23に屈曲部23bを設けているので、剛性確保に有効であり、さらにこの屈曲部23bをルーフ裏面取付部に相当する取付板21近傍に設定することで、ルーフボウ25に作用する荷重をこの屈曲部23bで効率よく受けることができ、荷重分散に極めて効果的である。
【0031】
また、上記したブラケット23は、取付板21に接合するルーフラック側接合部23aと、このルーフラック側接合部23aから車室下方に向けて屈曲する屈曲部23bと、この屈曲部23bの下端から車体前後方向前方かつ車幅方向内側に向けて延設される平面状の延長部23cと、この延長部23cの先端側に位置して補強部材であるルーフボウ25の突出部25bの下面に接合される補強部材接合部23cとを備えたものであって、板状部材をプレス成形によって容易に製造可能である。
【0032】
さらに、本実施形態では、ブラケット23のルーフボウ25への連結部を、車幅方向内側の適宜位置に設定できるので、ブラケット23を取り付ける際のレイアウト性が向上する。
【0033】
また、ブラケット23を、ルーフボウ25にあらかじめ取り付けて組立部品化し、この組立部品をルーフ1の裏面1aに取り付けた後、ルーフラック3をルーフ1上に取り付けることで、ブラケット23を別途後付けして取り付ける場合に比較して取付作業が容易となり、作業効率が向上する。
【0034】
なお、本実施形態では、ブラケット23を備えた取付部を中間取付部9に設定しているが、ルーフラック3の長手方向両端部3a,3bにおける両端取付部5,7に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係わるルーフラック取付構造を示す、図2のA−A断面図である。
【図2】図1のルーフラック取付構造を備えた車体の要部を示す斜視図である。
【図3】図1のルーフラック取付構造を示す斜視図である。
【図4】図1のルーフラック取付構造を示す平面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ルーフ
1a ルーフの裏面
3 ルーフラック
3a,3b ルーフラックの長手方向両端部
5,7 両端取付部(ルーフラックの長手方向両端部のルーフへの取付部)
9 中間取付部
21 取付板(ルーフ裏面取付部)
23 ブラケット(連結部材)
23a ブラケットのルーフラック側接合部
23b ブラケットの屈曲部
23c ブラケットの延長部
23d ブラケットの補強部材接合部
25 ルーフボウ(補強部材)
25a ルーフボウの接合フランジ
25b ルーフボウの突出部
29 ボディサイドアウタ(車体の側部部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向外側近傍のルーフ上に車体前後方向に延設されるルーフラックを取り付け、このルーフラックの前記ルーフへの取付部は、ルーフラックのルーフへの取付部位に対応するルーフ裏面取付部と、前記ルーフの裏面に設けられる補強部材とを互いに連結する連結部材を備え、前記連結部材の前記補強部材との連結部を、前記連結部材の前記ルーフ裏面取付部との連結部より車幅方向内側に設定したことを特徴とするルーフラック取付構造。
【請求項2】
前記ルーフラックを、該ルーフラックの長手方向両端部と、長手方向両端部相互間の中間部との少なくとも3箇所にて前記ルーフに取り付け、前記連結部材を備えた取付部は、前記中間部の中間取付部に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のルーフラック取付構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記ルーフの裏面にて車幅方向に延設されるルーフボウであることを特徴とする請求項1または2に記載のルーフラック取付構造。
【請求項4】
前記ルーフボウは、前記ルーフ裏面取付部に対して車体前後方向にずれた位置に設定されていて、車幅方向両端が車体の側部部材に連結されていることを特徴とする請求項3に記載のルーフラック取付構造。
【請求項5】
前記補強部材は、前記ルーフ裏面に接合する接合フランジに対して車室側へ突出する突出部を備え、前記連結部材は、この突出部と前記ルーフ裏面取付部とを連結してこれら相互間に屈曲部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のルーフラック取付構造。
【請求項6】
前記屈曲部を、前記ルーフ裏面取付部の近傍に設定したことを特徴とする請求項5に記載のルーフラック取付構造。
【請求項7】
前記連結部材は、板状部材をプレス成形したものであり、前記ルーフ裏面取付部に接合するルーフラック側接合部と、このルーフラック側接合部から車室下方に向けて屈曲する前記屈曲部と、この屈曲部の下端から車体前後方向かつ車幅方向内側に向けて延設される平面状の延長部と、この延長部の先端側に位置して前記補強部材の突出部の下面に接合される補強部材接合部とを備えていることを特徴とする請求項5または6記載のルーフラック取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のルーフラック取付構造に使用する前記連結部材を、前記補強部材にあらかじめ取り付けて組立部品化し、この組立部品を前記ルーフの裏面に取り付けた後、前記ルーフラックをルーフ上に取り付けることを特徴とするルーフラック取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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