説明

レイヤリング用核粒子とその製造方法

【課題】幅広い種類の活性成分を表面に良好にレイヤリングでき、目的とした粒径のレイヤリング後の薬物粒子を高い回収率で得ることのできるレイヤリング用核粒子の提供。
【解決手段】非活性成分からなり、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子であって、糖類を主成分とするコア粒子の表面に、被覆層が形成されたレイヤリング用核粒子。特に被覆層の主成分をセルロース誘導体などの高分子化合物とすることによって、高い効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に活性成分(薬物)が被覆されるためのレイヤリング用核粒子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DDS(Drug Delivery System)において、活性成分の作用部位での活性成分濃度−時間パターンを最適に保つ手法の1つとして、Controlled Release(放出制御)という手法がある。
このような手法を実現するための徐放性製剤(Controlled Release製剤)としては、レイヤリング用核粒子(例えばフロイント産業(株)製「ノンパレル(登録商標)」)の表面に活性成分が被覆(レイヤリング)された後、目的に応じたフィルム基材がさらにコーティングされたもの(例えば特許文献1参照。)や、ハードカプセルに充填されたものなどが知られている。
【0003】
ここでレイヤリング用核粒子は、通常、活性成分を含有しない成分、すなわち非活性成分からなるものであって、中心核となる粒子(以下、中心核粒子という。)を各種造粒装置内で転動させておき、そこへレイヤリング用核粒子の主成分となる粉末を供給するとともに、中心核粒子や粉末を湿潤させるための液体を噴霧して造粒し、ついで、造粒された粒子を乾燥させる方法などにより製造されている。
レイヤリング用核粒子の主成分としては、しょ糖、乳糖などの糖;キシリトール、マンニトールなどの糖アルコール;結晶セルロースおよび/または粉末セルロース;コーンスターチなどのデンプン類が使用されることが多い。
【特許文献1】特開2002−284674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、糖のなかには、一部の活性成分との間に反応性(例えばメイラード反応)があるものがあり、これを主成分とするレイヤリング用核粒子においては、その表面にレイヤリングされる活性成分の種類が制限されてしまうという問題があった。また、糖は比較的機械的強度(硬度)が低く、造粒中の粒子に強いせん断力をかけるとレイヤリング時に磨耗や破損が生じたり、また、水溶性であるため、粒子同士のブロッキングが起こったりしやすく、レイヤリング性に劣るという問題もあった。また、こうして生じたブロッキング粒子は篩い分けなどにより除去されてしまうため、結果的に、目的とした粒径の薬物粒子の回収率が低下してしまう。さらに、レイヤリング時に磨耗や破損が生じると、それに起因したロスが生じ、レイヤリング時の作業性やコストの点でも不利であった。
一方、結晶セルロースを主成分とするレイヤリング用核粒子は、硬度が高く、活性成分との反応性もほとんどない点で好適ではある。ところが、このようなレイヤリング用核粒子は、水不溶性であり、また、水分の吸収性が高いため、レイヤリング用核粒子の表面を水分で湿潤状態に保ちつつその表面に活性成分をレイヤリングすることが難しく、やはりレイヤリング性に問題があった。レイヤリングが難しいと、目的とする活性成分の含量まで効率的にレイヤリングできず、この場合にも、目的とした粒径の薬物粒子の回収率が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、幅広い種類の活性成分を表面に良好にレイヤリングでき、目的とした粒径のレイヤリング済み薬物粒子を高い回収率で得ることのできるレイヤリング用核粒子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、レイヤリング用核粒子の表面に被覆層を形成することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のレイヤリング核粒子は、非活性成分からなり、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子であって、糖類を主成分とするコア粒子の表面に、被覆層が形成されたことを特徴とする。
前記糖類は、糖、糖アルコール、デンプン類、粉末セルロース、結晶セルロースからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記被覆層は、高分子化合物を主成分とすることが好ましい。
前記高分子化合物としては、セルロース誘導体が好適である。
本発明のレイヤリング用核粒子の製造方法は、非活性成分からなり、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子の製造方法であって、糖類を主成分とするコア粒子を製造するコア粒子製造工程と、前記コア粒子の表面に、被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とする。
また、被覆層形成成分含有液をスプレーすることにより、前記被覆層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、幅広い種類の活性成分を表面に良好にレイヤリングでき、高い回収率でレイヤリング済み薬物粒子を得ることのできるレイヤリング用核粒子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレイヤリング用核粒子は、表面に活性成分が被覆されるためのものであって、例えば、徐放性製剤の分野において好適に使用される。レイヤリング用核粒子自体は、活性成分を含まない成分、すなわち非活性成分からなり、図1に示すように、糖類を主成分とするコア粒子11の表面に、被覆層12が形成されて構成されている。
【0009】
ここでコア粒子11の主成分である糖類としては、医薬用または食品用の添加剤として通常用いられている糖、糖アルコール、デンプン類、粉末セルロース、結晶セルロースなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
なお、本明細書において主成分とは、全体の50質量%以上を占める成分のことをいう。
【0010】
糖類としては、しょ糖、白糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖などの糖;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖アルコール;コーンスターチ、コメデンプン、デキストリンなどのデンプン類;粉末セルロール、結晶セルロース等が挙げられる。これらのなかでは、一部の活性成分との間に反応性があるとともに十分な硬度も発現しにくい糖や、水分の吸収性が高く活性成分のレイヤリング性が不十分である結晶セルロースがコア粒子11の主成分である場合に、詳しくは後述するが、被覆層12を形成することによる効果が特に有効となる。
コア粒子11の粒径には特に制限はないが、粒径(篩い分け法)が1〜2000μmであることが好ましい。
【0011】
コア粒子11の表面に形成される被覆層12は、医薬用または食品用の添加剤として通常用いられている高分子化合物を主成分として形成されることが好ましい。
高分子化合物としては、天然高分子化合物、合成高分子化合物のいずれでもよく、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体が好ましく例示できる。その他には、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマーなどのアクリル系ポリマー、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、プルランなどのデンプン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、カンテン、ゼラチン、キサンタンガム、ヘミセルロース、セラック、ゼイン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、カルボキシビニルポリマー、酢酸セルロース、酵母抽出物なども挙げられる。
【0012】
このような被覆層12を設けることによって、レイヤリング用核粒子10の表面にレイヤリングされる活性成分とコア粒子11とは直に接触しなくなる。よって、コア粒子11とレイヤリングされる活性成分との間に反応性がある場合でも反応が抑制され、例えば糖など、一部の活性成分との間に反応性を有するものがコア粒子11の主成分である場合でも、幅広い種類の活性成分を制限なくレイヤリングすることができる。
また、このような被覆層12を設けると、上述の効果に加えて、より硬度の高いレイヤリング用核粒子10を得ることができる。硬度の高いレイヤリング用核粒子10は破損や磨耗が少なく、ヴァリデイションの観点からも好適である。
さらに、このような被覆層12を設けると、コア粒子11の主成分が水分により湿潤しブロッキングしやすい糖である場合に、水分のコア粒子11への浸透を低減でき、レイヤリング時のブロッキングを抑制することができる。ブロッキングで生成したブロッキング粒子は篩い分けなどにより除去されてしまうため、ブロッキングが発生すると、結果的に目的とした粒径の薬物粒子の回収率が低下するが、被覆層12を設けることにより、このような問題も回避できる。一方、コア粒子11の主成分が水の吸収性の高い結晶セルロースである場合でも、このように被覆層12を設けることによって、水の吸収性が低減されて適度な湿潤性を維持でき、効率的にレイヤリングが進行するようになる。効率的にレイヤリングが進行すると、レイヤリングが進行しにくいことによる小粒径の薬物粒子が少なくなり、目的とした粒径の薬物粒子の回収率が向上する。
【0013】
このような効果がより高く得られる点で、被覆層12の主成分として、上述した高分子化合物を選択することが好ましく、なかでもセルロース誘導体が好ましい。被覆層12の主成分がセルロース誘導体であると、より硬度の高いレイヤリング用核粒子10が得られやすい点でも好ましい。より好ましい被覆層12中のセルロース誘導体の割合は80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
なお、被覆層12には、顔料などの着色剤や、被膜形成性を高めるための可塑剤などの添加剤が含まれていてもよい。ただ、添加剤の種類によっては、活性成分との反応性を有するものがある。特に可塑剤においては使用に際して注意が必要であり、なるべく可塑剤を使用しないことが好ましい。
【0014】
また、被覆層12は、糖アルコールを主成分として形成されてもよく、糖アルコールとしては、例えばキシリトール、エリスリトール、マンニトールなどが例示できる。これらのなかでは、特にアミノ基を有する活性成分とのメイラード反応のないD−マンニトールが好適である。
【0015】
被覆層12の厚みには特に制限はないが、コア粒子11の質量を100%とした際に、被覆層12の質量が0.5〜200%となる範囲で形成されることが好ましい。
【0016】
このようなレイヤリング用核粒子10は、糖類を主成分とするコア粒子11を製造するコア粒子製造工程と、製造されたコア粒子11の表面に、被覆層12を形成する被覆層形成工程とを有する方法により製造でき、コア粒子製造工程は、例えば図2に示すような遠心転動造粒装置20により行える。
図2の遠心転動造粒装置20は、粉末を転動させながら造粒する遠心転動室21を備えている。この遠心転動室21は、軸線が鉛直方向となるように配置された円筒状の固定壁22と、この固定壁22の内側に配置され、固定壁22の内壁と所定のクリアランスをあけつつ、中心軸24を中心として水平方向に回転する円形の回転皿23とを有して構成され、粉末を回転皿23の上で転動させることにより、この粉末を球形のコア粒子11に造粒するものである。この例では、回転皿23は、周縁部が徐々に上方に傾斜した形状となっていて、その上で粉末を均質に転動させることができるようになっている。
また、遠心転動室21内には、図示略の熱電対などの温度計が設置されていて、粒子温度を測定できるようになっている。
【0017】
遠心転動室21には粉末供給管(粉末供給装置)25が設けられ、ここからコア粒子11の原料の粉末を散布できるようになっている。また、遠心転動室21にはスプレー装置26も設けられ、粉末の凝集を促すための液体や、バインダーとして作用するような成分を含む液体などを必要に応じて遠心転動室21内に噴霧できるようになっている。さらに、この例では、回転皿23の下方にはエアチャンバ27が形成されていて、このエアチャンバ27内に圧空供給管28から圧縮空気を送り込むことにより、固定壁22の内壁と回転皿23との間のクリアランス部分から遠心転動室21内に高圧の空気(以下、スリットエアという。)が導入され、粉末の混合循環性がより高められるようになっている。なお、図中符号29は、排気口である。
【0018】
この遠心転動造粒装置20を使用してコア粒子11を製造するには、まず、粉末を粉末供給管25から導入し、回転皿23を、その直径が360mm程度のものであれば、例えば40〜400rpmで回転させる。そして、スリットエアを遠心転動室21内に導入しながら、スプレー装置26から液体を噴霧して、粉末を湿潤させつつ造粒する。
導入する粉末の大きさとしては特に制限はないが、その平均粒子径が1〜100μmであるものが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0019】
ここで噴霧する液体(以下、噴霧用液体という場合もある。)としては、水、アルコールなどが挙げられ、造粒される粉末が液体と接触して湿潤することにより互いに凝集するものの場合には、このような噴霧用液体の噴霧が効果的である。
噴霧用液体としては、粉末間のバインダーとして作用するような成分を水に溶解または分散させたものも好適に使用できる。このような成分としては、糖、糖アルコール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどのセルロース誘導体、デンプン類、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのエステル、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。これらの成分は1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよいが、特に糖、糖アルコール、デンプン類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上を使用すると、粉末が糖類を主成分とするものである場合により強いバインダー力が発現し、より硬度の高いコア粒子11が得られやすく好ましい。なお、これらの成分の噴霧用液体中の濃度は、その成分の種類などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
また、コア粒子製造工程では、中心核粒子の存在下で粉末を造粒することもできる。
その場合には、まず、中心核粒子を遠心転動室21内に仕込み、その後、スリットエアを遠心転動室21内に導入しながら回転皿23を回転させる。ついで、粉末供給管25から原料の粉末を遠心転動室11内に導入しながら、スプレー装置16から噴霧用液体を噴霧して、粉末および/または中心核粒子を湿潤させつつ造粒する。このように中心核粒子を使用することによって、中心核粒子の周囲に粉末が凝集しやすくなり、より効率的に造粒が行える。
好ましい中心核粒子としては、グラニュー糖や、糖類粉末を会合させた二次粒子などが挙げられる。糖類粉末を会合させた二次粒子とは、糖類粉末の一次粒子を予め湿潤させ、ある程度の圧力をかけで混合し会合させたものである。中心核粒子の大きさ、形状などは適宜選択できるが、篩い分け法により測定される粒子径が50〜1000μmの範囲のものが好ましい。
また、使用する中心核粒子の量は適宜設定できるが、通常、粉末供給管25から供給される粉末100質量部に対して、50〜1000質量部の範囲である。
【0021】
こうして造粒した後、この未乾燥の湿潤粒子を遠心転動造粒装置20から取り出し、流動層装置(例えば、フロイント産業(株)製流動層造粒コーティング装置「フローコーター」)などの装置に移し替えて乾燥することによって、コア粒子11を得ることができる。
【0022】
ついで、得られたコア粒子11を流動層装置内で加熱空気により流動させつつ、この流動層装置内に被覆層形成成分含有液をスプレーすることによって(被覆層形成工程)、コア粒子11の表面に被覆層12が形成されたレイヤリング用核粒子10を得ることができる。このように被覆層形成工程を流動層装置内で行う方法は、高分子化合物を主成分とする被覆層12を形成する際に特に好ましく、その場合には、被覆層形成成分含有液として、高分子化合物を主成分とする被覆層形成成分が水および/またはアルコールに溶解および/または分散した液を使用すればよい。被覆層形成成分含有液中における被覆層形成成分の濃度には特に制限はないが、1〜30質量%であると、より良好に被覆層12を形成することができる。
一方、D−マンニトールなどの粉末状の糖アルコールを主成分とする被覆層12を形成する場合には、まず、得られたコア粒子11を再度、図2のような遠心転動造粒装置20に投入してこれを回転皿23の上で転動させ、粉末供給管25から糖アルコールを供給し、先に例示した中から選ばれる噴霧用液体をスプレーする。そして、この遠心転動造粒装置20から未乾燥の湿潤粒子を取り出し、流動層装置などの他の乾燥装置に移し替えて乾燥することによって、コア粒子11の表面に糖アルコールを主成分とする被覆層12が形成されたレイヤリング用核粒子10を得ることができる。
なお、被覆層12の形成は、流動層造粒コーティング装置などの流動層装置以外にも、遠心転動造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」、「グラニュレックス」など。)、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など。)などの公知の装置を用いて行うことができる。
【0023】
その他のレイヤリング用核粒子の製造方法としては、遠心転動造粒装置20にマイクロ波導入手段を備えた装置を使用する方法も例示できる。
このような装置としては、図2中の蓋体20に、マイクロ波導入手段としてマイクロ波導波管の一端を接続した構成のものが挙げられる。このような装置によれば、マイクロ波導波管の他端側にマイクロ波発振装置を接続することにより、このマイクロ波発振装置から発振されたマイクロ波が遠心転動室21内に伝送、導入され、遠心転動室21内の粒子にマイクロ波を照射することができる。
【0024】
このような装置を使用すると、コア粒子製造工程と被覆層形成工程とを1つの装置内で連続的に行うことができ、移し替えの作業が不要であるため、非常に効率的に生産性よく、レイヤリング用核粒子10を製造できる。
具体的には、マイクロ波導入手段を備えた遠心転動造粒装置内でコア粒子11を製造し、ついで、マイクロ波を照射しながら、造粒後のコア粒子11を乾燥させ、さらに、コア粒子11に被覆層12を形成する。
【0025】
こうして製造されたレイヤリング用核粒子10には、その表面に活性成分が被覆され、薬物粒子となる。そして、さらに目的に応じたフィルム基材のコーティングや、ハードカプセルへの充填などが必要に応じて実施され、徐放性製剤などの薬剤とされる。活性成分の被覆は、遠心転動造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」、「グラニュレックス」など。)、流動層造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「フローコーター」など。)、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など。)などを用いた公知の方法により行える。
【0026】
このようなレイヤリング用核粒子10は、糖類を主成分とするコア粒子11の表面に被覆層12が形成されたものであって、コア粒子11と被覆される活性成分との間には被覆層12が介在する。よって、コア粒子11との反応性に制限されることなく、幅広い種類の活性成分を表面に良好にレイヤリングできる。
活性成分としては、例えば、催眠・鎮静剤、解熱鎮痛消炎剤、精神神経用剤、自律神経用剤、抗パーキンソン剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、動脈硬化用剤、鎮咳去痰剤、ビタミン剤、滋養強壮薬、抗生物質、胃腸薬などが挙げられる。
また、このレイヤリング用核粒子10は、レイヤリング性(ブロッキング抑制、レイヤリング効率)にも優れるため、高い回収率で目的とした粒径の薬物粒子を得ることもできる。
さらに、被覆層12の主成分が特にセルロース誘導体などの高分子化合物であると、硬度が高くレイヤリング時の破損や磨耗が少ないレイヤリング用核粒子10を提供できる。
【実施例】
【0027】
[コア粒子製造例1]
図2に示す遠心転動造粒装置20の遠心転動室21内に、粒子径(篩い分け法)200〜300μmのグラニュー糖1.5kgを中心核粒子として仕込み、スリットエアを供給しながら回転皿23を160rpmで回転させた。ついで、平均粒子径10μmの精製白糖粉末60質量%とトウモロコシデンプン40質量%からなる混合粉末3kgを粉末供給管25から遠心転動室11内に供給するとともに、5質量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液をスプレー装置26から遠心転動室21内に噴霧し、造粒した。
ついで、得られた未乾燥の湿潤粒子を流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、この流動層装置内に90℃に設定された加熱空気を導入し、粒子の温度が60℃になるまで乾燥した。この造粒物を355〜500μmに篩別したものをコア粒子(1)とした。
【0028】
[コア粒子製造例2]
粉末供給管25から供給する粉末として、混合粉末の代わりに平均粒子径10μmの精製白糖粉末3kgを使用した以外は、コア粒子製造例1と同様にして、造粒した。
ついで、得られた未乾燥の湿潤粒子を流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、この流動層装置内に80℃に設定された加熱空気を導入し、粒子の温度が50℃になるまで乾燥した。この造粒物を355〜500μmに篩別したものをコア粒子(2)とした。
【0029】
[コア粒子製造例3]
図2に示す遠心転動造粒装置20の遠心転動室21内に、平均粒子径50μmの結晶セルロース粉末2kgを仕込み、スリットエアを供給しながら回転皿23を200rpmで回転させた。その状態で精製水をスプレー装置26から遠心転動室21内に噴霧し、粒子径がおよそ355〜500μmに成長するまで造粒した。
ついで、得られた未乾燥の湿潤粒子を流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、コア粒子製造例2と同様にして乾燥した。この造粒物を355〜500μmに篩別したものをコア粒子(3)とした。
【0030】
[実施例1]
コア粒子(1)3kgを流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)へ入れ、このなかに80℃に設定された加熱空気を導入し、5質量%HPMC水溶液をスプレー噴霧して、コア粒子(1)の表面に被覆層を形成した。ここでスプレー噴霧の量は、HPMCの質量がコア粒子(1)の質量の3/100となるようにした。HPMC水溶液をスプレー噴霧した後、粒子の温度が50℃になるまで乾燥し、レイヤリング用核粒子(1)を得て、次の評価を行った。
【0031】
(評価)
(1)摩損度
得られたレイヤリング用核粒子(1)を355〜500μmに篩別した後、その約10gを精密に量りとり(Wt)、内径32mm×深さ65mmのステンレス製円筒容器に入れ、ミキサーミル(SPEX社製)にて10分間振とうを行った。振とう終了後、目開き300μmの篩い(50号)に移して微粉を除去し、篩い上の残留分(Ws)を精密に秤量し、次式(i)により摩損度を求めた。
なお、通常レイヤリング用核粒子において摩損度は、1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%以下である。よって今回の評価では、摩損度が0.3%未満を○、0.3以上1.0%未満を△、1.0%以上を×とし、結果を表に示す。
摩損度(%)=(Wt−Ws)/Wt×100・・・(i)
【0032】
(2)レイヤリング後の薬物粒子の回収率
得られたレイヤリング用核粒子(1)を355〜500μmに篩別した後、その1kgを量りとり、図2に示す遠心転動造粒装置20の遠心転動室21内に仕込み、スリットエアを供給しながら回転皿23を160rpmで回転させた。ついで、活性成分として平均粒子径15μmのアミノフィリン1kgを粉末供給管25から遠心転動室11内に供給するとともに、2質量%HPMC水溶液をスプレー装置26から遠心転動室21内に噴霧して、活性成分がレイヤリングされた未乾燥の薬物粒子を得た。
ついで、この未乾燥の薬物粒子を流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、この流動層装置内に50℃に設定された加熱空気を導入し、粒子の温度が40℃になるまで乾燥した。
こうして得られた乾燥後の薬物粒子から425〜600μmのものを篩分し、乾燥後の薬物粒子全量に対する質量割合を求め、回収率(%)とした。結果を表に示す。
【0033】
(3)レイヤリング後の薬物粒子の色差変化率
上記(2)で得られた乾燥後の薬物粒子約100gをサンプル瓶に入れて密栓し、60℃の恒温器にて7日間保存した。保存前後の色差を測定し、その変化率ΔEを求めた。そして、ΔEが0〜10未満を○、10以上20未満を△、20以上を×とし、結果を表に示す。なお、色差計には、日本電色工業株式会社製:SZ−Σ90を用い、JIS Z−8729、8730に準拠して、L表色系に基づき色差ΔEを測定した。
【0034】
[実施例2]
コア粒子(1)のかわりにコア粒子(2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、レイヤリング用核粒子(2)を得て、評価した。結果を表に示す。
【0035】
[実施例3]
コア粒子(1)のかわりにコア粒子(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、レイヤリング用核粒子(3)を得て、評価した。結果を表に示す。
【0036】
[実施例4]
コア粒子(1)2kgを図2に示す遠心転動造粒装置20の遠心転動室21内に仕込み、スリットエアを供給しながら回転皿23を160rpmで回転させた。ついで、平均粒子径13μmのD−マンニトール1kgを粉末供給管25から遠心転動室11内に供給するとともに、5質量%HPMC水溶液をスプレー装置26から遠心転動室21内に噴霧した。
ついで、内容物を流動層造粒コーティング装置(「フローコーター−5型」、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、この流動層装置内に80℃に設定された加熱空気を導入し、粒子の温度が50℃になるまで乾燥し、レイヤリング用核粒子(4)を得た。
そして、実施例1と同様にして、レイヤリング後の薬物粒子の回収率と色差変化率を評価した。結果を表に示す。
【0037】
[実施例5]
コア粒子(1)のかわりにコア粒子(2)を使用した以外は、実施例4と同様にして、レイヤリング用核粒子(5)を得て、評価した。結果を表に示す。
【0038】
[実施例6]
コア粒子(1)のかわりにコア粒子(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、レイヤリング用核粒子(6)を得て、評価した。結果を表に示す。
【0039】
【表1】

表1に示すように、コア粒子の表面に被覆層が形成された各実施例のレイヤリング用核粒子はレイヤリング性に優れ、高い回収率で目的とする粒径の薬物粒子が得られた。また、コア粒子に糖を使用したレイヤリング用核粒子に、糖と反応性のあるアミノフィリンを活性成分としてレイヤリングした場合(実施例1、2、4、5)でも、被覆層が形成されているために色差変化率が小さく、反応による変色が抑制されたことが示された。また、特に被覆層をセルロース誘導体であるHPMCから形成すると、硬度が高く、摩損度の少ないレイヤリング用核粒子が得られた。
【0040】
[実施例7]
マイクロ波照射手段を備えた遠心転動造粒装置を使用した以外は、コア粒子製造例(1)と同様に造粒し、次に、この未乾燥の湿潤粒子を流動層造粒コーティング装置内へ移し替えずに、マイクロ波照射手段を備えた遠心転動造粒装置内でマイクロ波を照射して乾燥し、コア粒子とした。
そして、引き続きマイクロ波を照射しながら、5質量%HPMC水溶液をスプレー装置26から噴霧して、被覆層を形成した。ここでスプレー噴霧の量は、HPMCの量がコア粒子の質量の3/100となるようにした。
このような実施例7によれば、実施例1よりも短時間でコア粒子の乾燥、被覆層の乾燥を行うことができ、効率的であった。
また、実施例1と同様の各評価を行ったところ、同等の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のレイヤリング用核粒子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法で使用される遠心転動造粒装置の一例について、その要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 レイヤリング用核粒子
11 コア粒子
12 被覆層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非活性成分からなり、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子であって、糖類を主成分とするコア粒子の表面に、被覆層が形成されたことを特徴とするレイヤリング用核粒子。
【請求項2】
前記糖類は、糖、糖アルコール、デンプン類、粉末セルロース、結晶セルロースからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のレイヤリング用核粒子。
【請求項3】
前記被覆層は、高分子化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載のレイヤリング用核粒子。
【請求項4】
前記高分子化合物は、セルロース誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のレイヤリング用核粒子。
【請求項5】
非活性成分からなり、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子の製造方法であって、
糖類を主成分とするコア粒子を製造するコア粒子製造工程と、
前記コア粒子の表面に、被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とするレイヤリング用核粒子の製造方法。
【請求項6】
被覆層形成成分含有液をスプレーすることにより、前記被覆層を形成することを特徴とする請求項5に記載のレイヤリング用核粒子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−7458(P2008−7458A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179684(P2006−179684)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】