説明

レギュレータ回路

【課題】集積回路のピン端子数と外付け部品点数が削減され、集積回路内のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給可能なレギュレータ回路を提供する。
【解決手段】基準電圧VRを発生する基準電圧発生器10と、出力電圧VOを発生する被制御電圧発生器16と、基準電圧発生器10および被制御電圧発生器16に接続され、基準電圧発生器10から供給された基準電圧VRと、被制御電圧発生器16からフィードバックされた出力電圧VOとを比較するウィンドコンパレータ12と、ウィンドコンパレータ12に接続され、出力電圧VOと基準電圧VRとの差分電圧に応じた可変出力信号を被制御電圧発生器16に供給する制御部14とを備え、被制御電圧発生器16は、出力電圧VOの値が基準電圧VRの値に等しくなるまで、可変出力信号に応じて可変の出力電圧VOをウィンドコンパレータ12にフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レギュレータ回路に関し、特に、ローノイズ電源が必要とされる回路の電源レギュレータ回路(以下レギュレータ回路と略する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオードやバイポーラトランジスタを使用したバンドギャップ型のレギュレータ回路が一般的に使用されている。このようなバンドギャップ型のレギュレータ回路は、製造ばらつきがあっても電源電圧のばらつきが小さいので、安定した電源電圧が得られる(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−309052号公報
【特許文献2】特開2000−339049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、バンドギャップ型のレギュレータ回路は、発生する雑音電圧の値が大きい。このため、発生した雑音電圧の除去のために、大容量のバイパスコンデンサを必要とする。したがって、集積化する場合、余分なピン端子と、このピン端子に外部接続するバイパスコンデンサとを必要とする。このような構造は、集積回路の小型化・ピン端子数の削減化を図る上で、好ましいことではない。
【0005】
また、1個の基準電圧を集積回路内の複数のレギュレータ回路、或いは電流ブースターバッファなどに供給する場合、相対的に長い距離の配線を介して、基準電圧をアナログ電圧で供給する必要がある。しかしながら、このとき、相対的に長い距離の配線のために、途中でノイズが混入し、電圧降下などが生じ易い。特に、受信機の局部発振回路は、電源のノイズに非常に敏感であるため、ローノイズ電源が必要とされる。
【0006】
本発明の目的は、集積回路のピン端子数と外付け部品点数が削減され、集積回路内のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給可能なレギュレータ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基準電圧を発生する基準電圧発生器と、出力電圧を発生する被制御電圧発生器と、前記基準電圧発生器および前記被制御電圧発生器に接続され、前記基準電圧発生器から供給された前記基準電圧と、前記被制御電圧発生器からフィードバックされた前記出力電圧とを比較するウィンドコンパレータと、前記ウィンドコンパレータに接続され、前記出力電圧と前記基準電圧との差分電圧に応じた可変出力信号を前記被制御電圧発生器に供給する制御部とを備え、前記被制御電圧発生器は、前記出力電圧の値が前記基準電圧の値に等しくなるまで、前記可変出力信号に応じて可変の前記出力電圧を前記ウィンドコンパレータにフィードバックするレギュレータ回路が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、基準電圧を発生する基準電圧発生器と、バッファ出力電圧を発生する電流ブーストバッファと、前記基準電圧発生器および前記電流ブーストバッファに接続され、前記基準電圧発生器から供給された前記基準電圧と、前記電流ブーストバッファからフィードバックされた前記バッファ出力電圧とを比較するウィンドコンパレータと、前記ウィンドコンパレータに接続され、前記バッファ出力電圧と前記基準電圧との差分電圧に応じた可変出力信号を出力する制御部と、前記制御部に接続され、前記可変出力信号に応じて可変の出力電圧を前記電流ブーストバッファに供給する被制御電圧発生器とを備え、前記電流ブーストバッファは、前記バッファ出力電圧の値が前記基準電圧の値に等しくなるまで、前記可変出力信号に応じて可変の前記バッファ出力電圧を前記ウィンドコンパレータにフィードバックするレギュレータ回路が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、集積回路のピン端子数と外付け部品点数が削減され、集積回路内のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給可能なレギュレータ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路の模式的回路ブロック構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路の具体的な回路構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、(a)ウィンドコンパレータの入出力伝達特性例、(b)NORゲートの入出力特性例。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、(a)クロックCLK入力の動作タイミング波形例、(b)アップカウント動作における出力電圧VOの動作タイミング波形例、(c)NORゲート出力の動作タイミング波形例。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、被制御電圧発生器(VGEN)の被制御電圧発生用可変抵抗器(VAR−R)の模式的回路構成図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、定電流源を使用した被制御電圧発生器(VGEN)の模式的回路構成図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、被制御電圧発生器(VGEN)の具体的な回路構成例。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、被制御電圧発生器(VGEN)の特性例。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路において、アップカウント動作およびダウンカウント動作によるレギュレータ動作の説明図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るレギュレータ回路の模式的回路ブロック構成図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るレギュレータ回路の具体的な回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各回路素子の平面寸法の関係、配置、大きさ等は現実のものとは異なることに留意すべきである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各回路素子の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るレギュレータ回路の模式的回路ブロック構成は、図1に示すように表される。
【0014】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1は、図1に示すように、基準電圧VRを発生する基準電圧発生器(VREF)10と、出力電圧VOを発生する被制御電圧発生器(VGEN)16と、基準電圧発生器(VREF)10および被制御電圧発生器(VGEN)16に接続され、基準電圧発生器(VREF)10から供給された基準電圧VRと、被制御電圧発生器(VGEN)16からフィードバックされた出力電圧VOとを比較するウィンドコンパレータ(COMP)12と、ウィンドコンパレータ(COMP)12に接続され、出力電圧VOと基準電圧VRとの差分電圧に応じた可変出力信号を被制御電圧発生器(VGEN)16に供給する制御部(CONT)14とを備える。
【0015】
被制御電圧発生器16は、出力電圧VOの値が基準電圧VRの値に等しくなるまで、可変出力信号に応じて可変の出力電圧VOをウィンドコンパレータ12にフィードバックする。
【0016】
基準電圧発生器10は、バンドギャップダイオードなどにより構成され、その安定した出力である基準電圧VRは、ウィンドコンパレータ12の基準電圧として供給される。また、ウィンドコンパレータ12には、図1に示すように、被制御電圧発生器16の出力電圧VOも入力される。
【0017】
ウィンドコンパレータ12において、最終目的の出力電圧VOは、基準電圧VRと比較される。出力電圧VOと基準電圧VRとの差分電圧は、ウィンドコンパレータ12から制御部14に供給される。
【0018】
制御部14は、出力電圧VOと基準電圧VRとの差分電圧に応じた可変出力信号を被制御電圧発生器16に供給する。
【0019】
被制御電圧発生器16は、制御部14から供給される可変出力信号に応じて、内部の可変直列抵抗Rsの値を変更して、可変の出力電圧VOを出力する。
【0020】
出力電圧VOは、ウィンドコンパレータ12の入力にフィードバックされる。この動作は、可変の出力電圧VOの値が最終的に基準電圧VRの値に等しくなる、VR=VOになるまで継続する。
【0021】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、被制御電圧発生器16の出力電圧VOは安定化されているが、電流駆動能力が低い。このため、被制御電圧発生器16の出力に電流ブーストバッファ181を接続して、電流駆動能力を上昇させることができる。
【0022】
電流ブーストバッファ181は、図2に示すように、電流ブーストバッファアンプ34によって構成される。
【0023】
ここで、電流ブーストバッファ(BUF)181に並列に他の電流ブーストバッファ(BUF)182〜〜18nを備えていても良い。このように複数の電流ブーストバッファ(BUF)182〜〜18nを備えることで、集積回路内の複数のアナログ回路へ、高電流駆動による電源配信が可能となる。
【0024】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1の具体的な回路構成は、図2に示すように表される。
【0025】
基準電圧発生器10においては、温度変動、電源変動、集積回路の製造工程に伴うプロセス変動に強いバンドギャップダイオード(図示省略)を使用している。この結果、基準電圧発生器10は、安定な基準電圧VRを発生することができる。
【0026】
図2に示すように、この基準電圧VRを抵抗R14、R15、R16で分割し、基準電圧V1および基準電圧V2を得る。ここで、V1=VR×(R14/Rt)、V2=VR×{(R14+R15)/Rt}で表される。また、Rt=R14+R15+R16で表される。
【0027】
また、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、ウィンドコンパレータ12は、基準電圧VRから得られた基準電圧V2と出力電圧VOを比較するコンパレータ20と、基準電圧VRから得られた基準電圧V1と出力電圧VOを比較するコンパレータ22とを備える。ここで、基準電圧V2と基準電圧V1の差電圧ΔV=V2−V1は、ウィンドコンパレータ12を非動作状態とするウインド幅である。
【0028】
ここで、基準電圧V1と基準電圧V2の差電圧ΔV=V2−V1の範囲は、ウィンドコンパレータ12が非動作状態となる不感地帯である。この差電圧ΔV=V2−V1は、被制御電圧発生器16の出力電圧VOをウィンドコンパレータ12の入力にフィードバックするフィードバックループにおいて、フィードバックループの収束する、落ち着く場所として使用される。
【0029】
ここで、基準電圧V1と基準電圧V2の差電圧ΔVの値は、小さすぎるとフィードバックループがハンチングを起こして発振する可能性がある。逆に、差電圧ΔVの値が大きすぎると、電圧精度が悪くなる。このため、発振しない程度に差電圧ΔVの値を小さく設定する必要がある。
【0030】
ウィンドコンパレータ12は、さらに、NORゲート24と、ORゲート26とを備える。
【0031】
ウィンドコンパレータ12では、基準電圧V1と基準電圧V2を基準とし、これらの値とフィードバックされる出力電圧VOの値を比較する。
【0032】
出力電圧VOの細かい変動に対して、敏感になり過ぎないように、不感地帯には、ヒステリシスを設けた方がなお好ましい。
【0033】
コンパレータ20の出力U2は、出力電圧VOと基準電圧V2の大小の比較結果を表し、コンパレータ22の出力U3は、出力電圧VOとV1の大小の比較結果を表す。
【0034】
コンパレータ20の出力U2とコンパレータ22の出力U3で、極性は、逆特性で動作する。すなわち、コンパレータ20の出力U2は、基準電圧V2に対し、同相出力、つまり出力電圧VOが基準電圧V2を超える(VO>V2)と、ハイレベルを出力する。出力電圧VOが基準電圧V2よりも低い(VO<V2)と、出力U2は、ローレベルを出力する。
【0035】
一方、コンパレータ22の出力U3は、基準電圧V1に対し、逆相出力、つまり出力電圧VOが基準電圧V1を超える(VO>V1)と、ローレベルを出力する。出力電圧VOが基準電圧V1より低い(VO<V1)と、出力U3は、ハイレベルを出力する。
【0036】
これらの特性を利用して、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、出力電圧VOを変化させた場合のウィンドコンパレータ12の入出力伝達特性例は、図3(a)に示すように表され、NORゲート24の入出力特性例は、図3(b)に示すように表される。
【0037】
図3(a)から明らかなように、コンパレータ20の出力U2およびコンパレータ22の出力U3は、差電圧ΔV=V2−V1で表される入力電圧範囲内で、不感地帯が作られる。図3(b)から明らかなように、この差電圧ΔV=V2−V1の入力電圧範囲内で、NORゲート24の出力U4は、ハイレベルとなる。
【0038】
また、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、制御部14は、複数ビットを出力するアップ・ダウンカウンタ28と、アップ・ダウンカウンタ28に接続され、複数ビットをデコードして被制御電圧発生器16の可変直列抵抗Rsを選択するセレクタ30とを備えていても良い。
【0039】
また、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、図2の拡張出力ラインREで示されるように、アップ・ダウンカウンタ28の出力に、セレクタ30と並列に1つ以上の別のセレクタを備えていても良い。このように、拡張出力ラインREを用いて、セレクタ30と並列に1つ以上の別のセレクタおよび1つ以上の別の被制御電圧発生器16を配置することによって、複数のレギュレータ回路を構成することができる。このように、複数のレギュレータを構成することによって、集積回路内の複数のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給することが可能となる。
【0040】
被制御電圧発生器用可変抵抗器32の出力電圧VOは、コンパレータ20とコンパレータ22にフィードバックされて、一連のフィードバックループが完成する。また、電流ブーストバッファ(BUF)181〜18nを用いれば、大電流が得られる。
【0041】
電源部分を多数の回路に分配するには、図1に示すように、複数の電流ブーストバッファ(BUF)181〜18nを用いても良い。しかし、あまり距離が離れていると、ノイズが乗ったり、電圧降下を起こす可能性があるので、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、ロジック制御部分から分配を行っている。
【0042】
すなわち、セレクタ30と被制御電圧発生器用可変抵抗器32からなる電圧発生源および電流ブーストバッファ(BUF)181〜18nを別系統に有し、その制御をアップ・ダウンカウンタ28の多数ビット出力で行う、マスタースレーブ方式で拡張を図るようにしている。
【0043】
図2の拡張出力ラインREが制御データラインを表す。このラインは、ロジック回路内に形成されるため、ノイズや電圧降下などの影響は一切ない。したがって、任意の位置に別に安定化電源を設けることができる。
【0044】
その先をさらに電流ブーストバッファ(BUF)181〜18nを用いて分配しても良い。
【0045】
制御部(CONT)14は、アップ・ダウンカウンタ28と、セレクタ30とを備える。
【0046】
もしも出力電圧VOが不感地帯の範囲外にあれば、アップ・ダウンカウンタ28は、クロックCLKを受信してカウントを開始する。カウントの方向は、アップ・ダウンカウンタ28のUP/DNのレベルで決定される。すなわち、もしもUP/DNがハイレベルであるならばアップカウントを行い、UP/DNがローレベルであるならば、ダウンカウントを行う。
【0047】
アップ・ダウンカウンタ28のUP/DNは、コンパレータ22の出力U3に接続されているので、スタート時点が不感地帯よりも低い方にあれば、UP/DNはハイレベルにあるので、アップカウントを行う。スタート時点が不感地帯よりも高い方にあれば、UP/DNはローレベルにあるので、不感地帯の上からカウントを開始するダウンカウントとなる。
【0048】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、クロックCLK入力の波形例は図4(a)に示すように表され、出力電圧VOの動作波形例は図4(b)に示すように表され、NORゲート24の出力U4の動作波形例は図4(c)に示すように表される。
【0049】
図4(b)に示す例では、低いほうからアップカウント動作を行っているので、出力電圧VOはクロック信号CLKに従い増加する。
【0050】
時刻t1において、出力電圧VOの値が不感地帯の範囲内に入ると、NORゲート24の出力U4がハイレベルとなり、ORゲート26が閉じられる。この結果、アップ・ダウンカウンタ28へのクロック供給が停止し、その時の出力電圧VOの値が出力電圧VOとして保持される。これが、求める出力電圧VOである。バランスが崩れて、出力電圧VOの値が不感地帯の範囲から外れると、同様の動作を不感地帯に入るまで繰り返す。
【0051】
尚、第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、アップ・ダウンカウンタ28を適用しているが、動作開始時に必ずリセットが掛かるのであれば、単にアップカウンタ若しくはダウンカウンタを適用することも可能である。
【0052】
アップ・ダウンカウンタ28の出力は、多数ビット構成の信号形式を有する。第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、例として5ビットを使用しているが、このビット幅は任意に変更可能である。
【0053】
5ビットデータは、セレクタ30において、25=32本のラインにデコードされる。どのラインを選択するかはデコード値で決定される。例えば、コードが(00000)であるならば、デコード値は、ゼロが選択される。
【0054】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、被制御電圧発生器16は、可変直列抵抗Rsを備え、制御部14から供給される可変出力信号に応じて、可変直列抵抗Rsの値を変更して、可変の出力電圧VOを発生する。
【0055】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、被制御電圧発生器(VGEN)16の被制御電圧発生用可変抵抗器(VAR−R)32の模式的回路構成は、図5に示すように、電源電圧VDDのハイレベル側Hと接地電位のローレベル側L間に直列接続されたn個の抵抗Rからなる可変直列抵抗Rsと、n個の抵抗Rのそれぞれの接続数を切り替えるスイッチS0〜Snとを備える。
【0056】
セレクタ30の出力は、被制御電圧発生器用可変抵抗器32に接続され、被制御電圧発生用可変抵抗器(VAR−R)32の出力からは、出力電圧VOが得られる。
【0057】
被制御電圧発生器用可変抵抗器32は、図5に示すように、可変直列抵抗Rsが細かく分割された構成を備え、その選択をセレクタ30で行っている。可変直列抵抗Rsの分割数によって、アップ・ダウンカウンタ28の出力ビット数が決定される。すなわち、分割数が多いほど、より細かく電圧制御が可能となる。
【0058】
出力電圧VOの分解能をさらに向上するためには、電源電圧VDDと接地電位間において、被制御電圧発生器用可変抵抗器32に直列接続される抵抗R8と抵抗R10を用いて、電圧のオフセットを掛けても良い。すなわち、同一制御ビット数であっても狭い電圧範囲の制御を行えば、出力電圧VOの分解能が高くなるからである。
【0059】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、定電流源Icを使用した被制御電圧発生器16の模式的回路構成は、図6に示すように表される。
【0060】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、さらに、リップル除去率や出力電圧VOの分解能を上げるため、抵抗R8の代わりに、図6に示すような定電流源Icを使用しても良い。
【0061】
被制御電圧発生器16は、図6に示すように、被制御電圧発生器用可変抵抗器32と、被制御電圧発生器用可変抵抗器32の可変直列抵抗Rsに接続された定電流源Icとを備え、出力電圧VOは、定電流源Icの電流値と可変直列抵抗Rsの値の積で得られる。
【0062】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、被制御電圧発生器16の具体的な回路構成例は、図7に示すように、電源電圧VDDにソースが接続され、かつゲート・ドレイン間が短絡された定電流用pMOSFETM2と、ドレインが定電流用pMOSFETM2のドレインに接続され、ソースが可変直列抵抗Rsに接続されたnMOFETM4と、電源電圧VDDにソースが接続され、かつゲートが定電流用pMOSFETM2のゲートに接続されたpMOSFETM1と、ドレインがpMOSFETM1のドレインに接続され、ソースが接地電位に接続されたnMOFETM3とを備える。
【0063】
ここで、出力電圧VOは、pMOSFETM1のドレインおよびMOSFETM1のドレインの共通接続点から得られる。また、可変直列抵抗Rsは、nMOFETM4のソースと接地電位との間に接続されている。
【0064】
定電流用pMOSFETM2によって供給され、可変直列抵抗Rsを導通する電流をID、nMOFETM3の閾値電圧をVth2、nMOFETM4の閾値電圧をVth1とすると、出力電圧VO=Vth1+Vth2=Vth1+RsIDが得られる。
【0065】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、被制御電圧発生器16の特性例は、図8に示すように、出力電圧VOは可変直列抵抗Rsに比例する関係が得られる。
【0066】
第1の実施の形態に係るレギュレータ回路1において、電源電圧VDDと出力電圧VOの関係は、図9に示すように表される。図9において、ダウンカウント動作の場合には、例えば、2.2Vの初期値から矢印Dで示されるようにダウンカウント動作によって徐々に所望の1.8Vの出力電圧VOに漸近する。一方、図9において、アップカウント動作の場合には、例えば、1.5Vの初期値から矢印Uで示されるようにアップカウント動作によって徐々に所望の1.8Vの出力電圧VOに漸近する。
【0067】
被制御電圧発生器用可変抵抗器32の入力電圧としては、電源電圧VDDを直接使用しても良い。
【0068】
定電流源Icは、必要なDC電流を流しながら交流成分に対して高いインピーダンスを有するため、多少の電源電圧変動に対しても電流値は安定している。したがって、抵抗R8の代わりに、図6に示すような定電流源Icを使用する場合には、出力電圧VOの分解能を減らしても良いので、アップ・ダウンカウンタ28の出力制御ビット数を減らしても良い。
【0069】
第1の実施の形態によれば、集積回路の端子数と外付け部品点数が削減化され、集積回路内のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給可能なレギュレータ回路を提供することができる。
【0070】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るレギュレータ回路の模式的回路ブロック構成は、図10に示すように表され、具体的な回路構成は、図11に示すように表される。
【0071】
第2の実施の形態に係るレギュレータ回路1は、図10および図11に示すように、基準電圧VRを発生する基準電圧発生器(VREF)10と、バッファ出力電圧VOUT1を発生する電流ブーストバッファ(BUF)181と、基準電圧発生器(VREF)10および電流ブーストバッファ(BUF)181に接続され、基準電圧発生器(VREF)10から供給された基準電圧VRと、電流ブーストバッファ(BUF)181からフィードバックされたバッファ出力電圧VOUT1とを比較するウィンドコンパレータ(COMP)12と、ウィンドコンパレータ(COMP)12に接続され、バッファ出力電圧VOUT1と基準電圧VRとの差分電圧に応じた可変出力信号を出力する制御部(CONT)14と、制御部(CONT)14に接続され、可変出力信号に応じて可変の出力電圧VOを電流ブーストバッファ(BUF)181に供給する被制御電圧発生器(VGEN)16とを備える。
【0072】
電流ブーストバッファは(BUF)181、バッファ出力電圧VOUT1の値が基準電圧VRの値に等しくなるまで、可変出力信号に応じて可変のバッファ出力電圧VOUT1をウィンドコンパレータ(COMP)12にフィードバックする。
【0073】
第2の実施の形態に係るレギュレータ回路1においては、図10および図11に示すように、ウィンドコンパレータ12に、電流ブーストバッファ(BUF)181の出力VOUT1からフィードバックを掛けることによって、電流ブーストバッファ(BUF)181を含めた電圧の安定化を図ることができる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0074】
第2の実施の形態によれば、集積回路のピン端子数と外付け部品点数が削減され、集積回路内のアナログ回路への電源配信をローノイズでかつ安定的に供給可能なレギュレータ回路を提供することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0076】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のレギュレータ回路は、携帯電話、スマートフォン、PDA、ポータブル・メディア・プレーヤー、デジタルカメラ、無線LANなどのモバイル製品の電源、受信機の局部発振回路など、ローノイズ電源が必要とされる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…レギュレータ回路
10…基準電圧発生器(VREF)
12…ウィンドコンパレータ(COMP)
14…制御部(CONT)
16…被制御電圧発生器(VGEN)
181〜18n・・・電流ブーストバッファ(BUF)
20、22…コンパレータ
24…NORゲート
26…ORゲート
28…アップ・ダウンカウンタ
30…セレクタ
32…被制御電圧発生器用可変抵抗器
34…電流ブーストバッファアンプ
M1、M2、M3、M4…MOSトランジスタ
Vth1、Vth2…閾値電圧
VO…出力電圧
VOUT、VOUT1〜VOUTn…バッファ出力電圧
VDD…電源電圧
Rs…可変直列抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧を発生する基準電圧発生器と、
出力電圧を発生する被制御電圧発生器と、
前記基準電圧発生器および前記被制御電圧発生器に接続され、前記基準電圧発生器から供給された前記基準電圧と、前記被制御電圧発生器からフィードバックされた前記出力電圧とを比較するウィンドコンパレータと、
前記ウィンドコンパレータに接続され、前記出力電圧と前記基準電圧との差分電圧に応じた可変出力信号を前記被制御電圧発生器に供給する制御部と
を備え、前記被制御電圧発生器は、前記出力電圧の値が前記基準電圧の値に等しくなるまで、前記可変出力信号に応じて可変の前記出力電圧を前記ウィンドコンパレータにフィードバックすることを特徴とするレギュレータ回路。
【請求項2】
前記被制御電圧発生器は、可変直列抵抗を備え、前記制御部から供給される可変出力信号に応じて、前記可変直列抵抗の値を変更して、可変の前記出力電圧を発生することを特徴とする請求項1に記載のレギュレータ回路。
【請求項3】
前記被制御電圧発生器は、前記可変直列抵抗に接続された定電流源を備え、前記出力電圧は、前記定電流源の電流値と前記可変直列抵抗の値の積で得られることを特徴とする請求項2に記載のレギュレータ回路。
【請求項4】
前記基準電圧発生器は、バンドギャップダイオードを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項5】
前記ウィンドコンパレータは、前記基準電圧から得られた第1基準電圧と前記出力電圧を比較する第1コンパレータと、前記基準電圧から得られた第2基準電圧と前記出力電圧を比較する第2コンパレータとを備え、前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の差電圧は、前記ウィンドコンパレータを非動作状態とするウインド幅であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項6】
前記制御部は、複数ビットを出力するアップ・ダウンカウンタと、前記アップ・ダウンカウンタに接続され、前記複数ビットをデコードして前記被制御電圧発生器の前記可変直列抵抗を選択するセレクタとを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項7】
前記アップ・ダウンカウンタの出力に、前記セレクタと並列に1つ以上の別のセレクタを備えることを特徴とする請求項6に記載のレギュレータ回路。
【請求項8】
前記被制御電圧発生器の出力に1つ以上の電流ブーストバッファを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項9】
基準電圧を発生する基準電圧発生器と、
バッファ出力電圧を発生する電流ブーストバッファと、
前記基準電圧発生器および前記電流ブーストバッファに接続され、前記基準電圧発生器から供給された前記基準電圧と、前記電流ブーストバッファからフィードバックされた前記バッファ出力電圧とを比較するウィンドコンパレータと、
前記ウィンドコンパレータに接続され、前記バッファ出力電圧と前記基準電圧との差分電圧に応じた可変出力信号を出力する制御部と、
前記制御部に接続され、前記可変出力信号に応じて可変の出力電圧を前記電流ブーストバッファに供給する被制御電圧発生器と
を備え、前記電流ブーストバッファは、前記バッファ出力電圧の値が前記基準電圧の値に等しくなるまで、前記可変出力信号に応じて可変の前記バッファ出力電圧を前記ウィンドコンパレータにフィードバックすることを特徴とするレギュレータ回路。
【請求項10】
前記被制御電圧発生器は、可変直列抵抗を備え、前記制御部から供給される可変出力信号に応じて、前記可変直列抵抗の値を変更して、可変の前記出力電圧を発生することを特徴とする請求項9に記載のレギュレータ回路。
【請求項11】
前記被制御電圧発生器は、前記可変直列抵抗に接続された定電流源を備え、前記出力電圧は、前記定電流源の電流値と前記可変直列抵抗の値の積で得られることを特徴とする請求項10に記載のレギュレータ回路。
【請求項12】
前記基準電圧発生器は、バンドギャップダイオードを備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項13】
前記ウィンドコンパレータは、前記基準電圧から得られた第1基準電圧と前記出力電圧を比較する第1コンパレータと、前記基準電圧から得られた第2基準電圧と前記出力電圧を比較する第1コンパレータとを備え、前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の差電圧は、前記ウィンドコンパレータを非動作状態とするウインド幅であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項14】
前記制御部は、複数ビットを出力するアップ・ダウンカウンタと、前記アップ・ダウンカウンタに接続され、前記複数ビットをデコードして前記被制御電圧発生器の前記可変直列抵抗を選択するセレクタとを備えることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。
【請求項15】
前記アップ・ダウンカウンタの出力に、前記セレクタと並列に1つ以上の別のセレクタを備えることを特徴とする請求項14に記載のレギュレータ回路。
【請求項16】
前記被制御電圧発生器の出力に1つ以上の電流ブーストバッファを備えることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載のレギュレータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−78969(P2012−78969A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221950(P2010−221950)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(509281357)ソアリス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】