説明

レクチンアフィニティー血液透析による血液のウイルス除去方法

本発明は、高マンノース型表面糖タンパク類を持つ病原体あるいは高マンノース型糖タンパク類を含む病原体のフラグメントに結合するレクチンを用いて、体外において感染血液あるいは血漿からそれらを除去する方法に関する。すなわち、本発明は、個体から血液あるいは血漿を採取するステップ、多孔性中空糸膜の多孔質の外側部分にレクチン分子が固定された膜に血液あるいは血漿を通過させるステップ、通過した血液あるいは血漿を収集するステップ、及び通過血液あるいは血漿を個体に再注入するステップを含む、個体のウイルス量を低減させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染を処置するための治療手順の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くのウイルスが人間に対し病原性を持つと指摘されている。これらのウイルスには薬もワクチンも効かないものが多い。薬物治療が利用可能なケースでも、耐性変異の発生及び薬の副作用から治療の有効性がしばしば制限される。このようなウイルスの例として、C型肝炎ウイルス及びヒト免疫不全症ウイルス(HIV)が挙げられる。
【0003】
HIVは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスである。HIVは免疫系の特定の細胞に感染し、それによって感染した個体の免疫反応を損わせる。HIV感染者は米国内に100万人以上、世界中で1300万人以上いると推定されている。HIV感染症の臨床経過としては、通常、長期の無症候状態があり、そしてその後に、個体を日和見感染及び腫瘍に感染し易くさせる、T4リンパ球の減少が続く。
【0004】
HIV-1複製は、主に、末梢リンパ節や脾臓のようなリンパ器官に大部分が存在するCD4+リンパ球内で発生する。HIV-1もまたマクロファージや、中枢神経系内のミクログリアのようなマクロファージ様細胞中で見つけることができる(Cohen等 Immunol Rev 159: 31-48, 1997)。
【0005】
血漿のHIV-1濃度及び末梢血中のHIV-1感染リンパ球の存在は、HIV-1に感染した患者の臨床状態と強く相関する(Ferre等. J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 10 (Suppl 2): S51-56,1995 ; O'Brien等. N Engl J Med 334 (7): 426-431,1996)。循環ビリオンの半減期は6時間であり、一方、末梢血中のHIV-1感染細胞の半減期は1.6日である。毎日1010より多いビリオンが血液循環中へ放出される可能性がある(Ho等. J Biol Regul Homeost Agents 9 (3): 76-77,1995 ; Ho等. Nature 373 (6510): 123-126, 1995; Wei等. Nature 373 (6510): 117- 122, 1995)。宿主免疫系がHIV感染を抑制し、臨床症状を抑える能力は、ウイルス負荷に正比例する。抗レトロウイルス療法、ヌクレオシド類似体、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤は、免疫系が、残留する感染症を制御あるいは除去できるようにウイルス負荷を減じることを目標としている(Fauci, Harrisons Principles of Internal Medicine : 1791-1856,1998)。
【0006】
HIV感染症は、表面ケモカイン受容体のみならずCD4にも結合するgp120によって仲介される。細胞内でビリオンは脱殻し、ウイルスのRNAは二本鎖DNAに逆転写される。プロウイルスDNAは、細胞核に入り宿主ゲノム内に組み込まれ、ウイルスRNAに転写され、ウイルス蛋白に翻訳される。成熟ビリオンが組み立てられ、出芽によって細胞から放出される(Fauci等. Ann Intern Med 124 (7): 654-663, 1996)。ダイイング・セルも無傷のビリオン及びそのフラグメントを含む内容物を全て血液中に放出し得る。したがって、HIV感染個体の循環血液は、無傷ビリオン及びウイルス蛋白、特に毒性のあるウイルス表面蛋白を含んでいる。
【0007】
AIDSの顕著な特徴は、CD4+T細胞の漸減であり、最終的には免疫系が日和見感染を防げなくなる。HIVがAIDSを引き起こすまでのメカニズムは完全には理解されていないが、臨床データは、感染T細胞の死に加えて、多くの非感染T細胞が死んでいくこと、及びHIV由来のエンベロープ蛋白が深く関わっている可能性があることを示唆する。
【0008】
主要HIVエンベロープ糖タンパク質gp120は、インビトロで顕著な生物学的作用を有することが明らかにされている。gp120はCD4+T細胞にアポトーシスを引き起こし、そして抗エンベロープ抗体及び補体の存在下でgp120とCD4+細胞が結合すると、その細胞がオプソニン化され、排除のための標的にされる。その複合効果で、非感染免疫細胞が破壊される。さらに、HIVエンベロープ蛋白はHIV関連性高ガンマグロブリン血症に関与している。AIDS患者では、gp120濃度は平均29ng/mlであり、ウイルスの濃度より桁違いに高い。
【0009】
現在、HIV感染症に対する治療法はない。逆転写酵素及びプロテアーゼ阻害剤がHIVの治療のために承認されている。典型的な治療計画は承認された薬を併用するものであり、HAART (高活性抗レトロウイルス療法)と呼ばれている。16を超える薬及び複合薬が、HIV感染症を治療するために、FDAによって承認されているが、薬剤耐性変異体の発生及び治療不可能なウイルスの蓄積(例えば、記憶T細胞内)がそれらの実用性を制限している。不運にも、効果的なHIVワクチンは現れそうにない。その原因の一部は、HIVゲノムの急速な変異及びウイルス蛋白の免疫原性エピトープの非接触性にある。したがって、新しい治療が緊急に必要とされている。
【0010】
体外治療は、全身性疾患を治療するための治療方法として使用できる。プロテインAを除く血漿の体外灌流、血漿分離交換法及びリンパ球除去は全てHIV感染症及びそれがもたらす血小板減少症に対する免疫調節治療として使用されてきた(Kiprov等. Curr Stud Hematol Blood Transfus 57: 184-197, 1990 ; Mittehnan等. Semin Hematol 26 (2 Suppl 1) : 15-18,1989 ; Snyder等. Semin Hematol 26 (2 Suppl 1) : 31-41, 1989 ; Snyder等. Aids 5 (10): 1257-1260,1991)。これらの治療法は全て、HIV感染中に生成される免疫複合体及び他の体液性メディエータを除去することによって効き目を現すとされている。それらは直接HIVウイルスを除去しない。ウイルスの複製を制限するメカニズムとして、体外フォトフォレーシスが初期試験された(Bisaccia等. J Acquir Immune Defic Syndr 6 (4): 386-392, 1993; Bisaccia等. Ann Intern Med 113 (4): 270-275,1990)。しかしながら、これらの治療はいずれも、ウイルス及びウイルス蛋白の両方を効果的に除去できない。
【0011】
血液製剤からHIVを除去するクロマトグラフ法が提案されてきた。1997年、モトムラ等が、体液からHIV及び関連物質を除去するためのスルホン酸化多孔性イオン交換体の塩を提案した(米国特許第5,667,684号)。タカシマ及びその共働者ら(米国特許第5,041,079号)は、患者の体液からHIVを体外除去するための弱酸性あるいは弱アルカリ性表面を持つ固形物質を含むイオン交換剤を提供した。両者は、Porath及びJansonの研究(米国特許第3,925,152号) で報告された方法、すなわち、塩基性窒素含有基及び酸性カルボン酸基あるいはスルホン酸基(米国特許第3,925,152号)の両方を有する両性置換基を含む不溶性の有機性重合体からなる吸着剤に、荷電コロイド粒子(例えば、ウイルス変種)の混合物を通すことによって分離する方法に類似している。しかしながら、これらのクロマトグラフ物質はいずれもウイルス選択性がなく、多くの他の必須物質をクリアに除去できないであろう。それゆえ、それらはインビボの血液浄化法として有用ではない。
【0012】
免疫吸着法もまたウイルス感染の治療法として提案されている。1980年に、Termah等が、病原体を除去するため、表面積の大きいらせん状の膜に固定した免疫吸着剤を有する装置を含む、疾患の体外治療用血漿分離交換装置について記述している(米国特許第4,215,688号)。この装置は、血液を直接扱うための方法を想定しておらず、また免疫学的に反応する毒物の存在を必要とする。1987年及び1988年に、Ambrus及びHorvathは、非対称の、毒素浸透性膜の外層上に組み込んだ抗体あるいは抗原捕捉マトリクスに基づく血液精製装置について記述している(米国特許第4,714,556号及び第4,787,974号)、しかしながら、病原体除去の実施例はその中に記載されていない。1991年に、Lopukhin等は、セファロース4Bあるいはシリカに結合したとき、組み換え型HIVプロテインを注入されたラビットの血液からHIVプロテインを体外除去できる、HIVプロテインに対するラビット抗血清を報告した(Lopukhin等. Vestn Akad Med Nauk SSSR 11 : 60-63,1991)。しかしながら、この方法は血液の体外吸収が必要な場合には効果がなく、血液から遊離のHIVウイルス粒子を除去するメカニズムを提供するものではない(Lopukhin等、1991, supra)。米国特許第6,528,057号は、抗体及びアンチセンスDNAを使用するウイルス及びウイルス核酸の除去について記述している。
【0013】
レクチンは、多糖類及び糖タンパク質類に選択的に結合する蛋白質であり、植物及び動物中に広く分布している。その多くは特異性が不十分で実用的でないが、最近、あるレクチンがエンベロープウイルスに高い選択性を示すことが発見された(De Clercq等 Med Res Rev 20 (5): 323-349,2000)。この性質を有するレクチンの中には、スノードロップからスノードロップ凝集素(GNA:Galanthus nivalis agglutinin )として抽出されるレクチン、ラッパ水仙からラッパ水仙凝集素(NPA:Narcissus pseudonarcissus agglutinin)として抽出されるレクチン、及び「シアノビリン(cyanovirin)」と呼ばれる藍藻類ノストックエリプソスポルムから抽出されるレクチンがある(Boyd等. Antimicrob Agents Chemother 41 (7): 1521-1530,1997 ; Hammar等. Ann N Y Acad : Sci 724: 166-169, 1994 ;Kaku等. Arch Biochem Biophys 279 (2): 298-304,1990)。GNAは非毒性であり、十分安全であるので、遺伝子組み換え米及びポテトに組み込まれてきた(Bell等. Transgenic Res 10 (1) : 35-42, 2001; Rao等. Plant J 15 (4): 469-477, 1998)。これらのレクチンは、HIV表面蛋白質に見られるような高マンノース型内容物を有する糖タンパク質類に結合する(Chervenak等. Biochemistry 34 (16): 5685-5695,1995)。GNAは、ヒト血漿中のHIV gp120(Hinkula等. J Immunol Methods 175 (1): 37-46,1994 ; Mahmood等. J Immunol Methods 151 (1-2): 9-13,1992 ; Sibille等. Vet Microbiol 45 (2-3): 259-267,1995)、及び、血清中の猫免疫不全ウイルス(FIV)のエンベロープ蛋白質(Sibille等. Vet Microbiol 45 (2-3): 259-267, 1995)を検査するためにELISAで用いられてきた。GNAは、HIV(1型及び2型)、サル免疫不全ウイルス (SIV) (Gilljam等. AIDS Res Hum Retroviruses 9 (5): 431-438,1993)由来のエンベロープ糖タンパク質類に結合し、培養液中で病原体の成長を阻害するが(Amin等. Apmis 103 (10): 714-720,1995 ; Hammar等. AIDS Res Hum Retroviruses 11 (1) : 87-95, 1995)、このようなインビトロの研究は、HIV感染血液サンプル中で見受けられる複雑な蛋白質環境を反映していない。それゆえ、インビトロで高マンノース型糖タンパク質類と結合する能力のあるレクチンが、HIV感染血液サンプル中のそうした分子と結合できるかどうかは分かっていない。それどころか、HIVに感染した個体中に典型的に存在するgp120に対する高濃度の抗体は、GNAなどのレクチンが結合する高マンノース型糖タンパク質部を隔絶するだろうと一般に考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、レクチンがウイルスのエンベロープ糖タンパク質類に結合することは知られていたが、インビボの透析あるいは血漿分離交換法に使用可能な、血液からHIVあるいは他のエンベロープウイルスを直接吸着するためにレクチンを使用する先行技術は開発されていなかった。それゆえ、現在もなおHIV及び他のウイルス感染を治療するための新規な治療方法が必要とされている。特に、他の治療及び/または免疫反応の有効性を増加させるために、ウイルス量を減じる新規な方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高マンノース型糖タンパク質類を持つ病原体あるいはそのフラグメントに結合するレクチンを用いて、体外において感染血液あるいは血漿からそれらを除去する方法に関する。すなわち、本発明は、個体から血液あるいは血漿を採取するステップ、前記血液あるいは血漿を、多孔性中空糸膜であって膜の多孔質の外側部分にレクチン分子が固定されている膜に通過させるステップ、通過した血液あるいは血漿を収集するステップ、及び前記通過血液あるいは血漿を個体に再注入するステップを含む、個体のウイルス量を低減させる方法を提供する。
【0016】
固定されたレクチンを有する中空糸に血液を通過させることによって、高マンノース型糖タンパク質類を有するビリオン及びそのフラグメントは、前記レクチンに結合し、それによって、流出物中のウイルス量が減少する。ある実施形態では、本発明は、HIV1型・2型及びSIVの多くのサブタイプのウイルスエンベロープ蛋白に結合するレクチンを使用する。本発明の方法は、血液中のビリオン数を減少させ、毒性を持ちうる感染血液中のウイルス表面蛋白の濃度を迅速且つ効率的に減少させる。この方法が、C型肝炎ウイルス(HCV)などの、HIV-1型と同時に発生することが多い他の感染症の排除に役立つことは、当業者に明白である(Fauci等, 1998年, supra)。
【0017】
従って、本発明の目的は、ウイルスに感染した個体の血液中のウイルス量を減少させる方法を提供することである。ある実施形態では、ビリオンあるいはその蛋白フラグメントあるいはそのコンビネーションは、ウイルスに感染した個体の血液から除去される。
【0018】
本発明の別の目的は、ウイルスの高マンノース型糖タンパク質類に親和性を有するレクチンが固定された中空糸に血液を体外循環させることによって、血中のウイルス量を減少させる方法を提供することである。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、中空糸を含む装置であって、糸の外面が、ウイルスあるいは他の病原体中の高マンノース型糖タンパク質類に特異的親和性を有する固定されたレクチンと近接している装置を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
明細書及び特許請求の範囲において使用される「ウイルス量」という言葉は、血液あるいは血漿などの体液中のウイルス粒子あるいはその毒性のあるフラグメントの量を意味する。従って、ウイルス量は、体内のウイルス粒子の数を表す。それゆえウイルス量は、血液あるいは血漿の単位当たりの複製ウイルスの数、または血液あるいは血漿の単位当たりのウイルス蛋白あるいはそのフラグメントのユニット等の、ウイルスの存在の様々な指標のいずれかの目安となりうる。
【0021】
明細書及び特許請求の範囲で使用される「高マンノース型糖タンパク質」という言葉は、α-1->3あるいはα-1->6マンノース-マンノース結合型のマンノース-マンノース結合をもつ糖タンパク質類を意味する。このようなレクチンの例として、GNA、NPA、シアノビリン及びコンカナバリンA(ConA)がある。
【0022】
本発明は、体外設備において、感染血液あるいは血漿から有毒な有機体及びそのフラグメントを除去するためにレクチンを使用する方法に関する。したがって、本発明は、個体から血液あるいは血漿を採取するステップ、高マンノース型糖タンパク質と結合するレクチン分子が多孔質性の外側部分に固定された多孔性中空糸膜に血液あるいは血漿を通過させるステップ、通過した血液あるいは血漿を収集するステップ、及び通過血液あるいは血漿を個体に再注入するステップを含む、個体のウイルス量を低減させる方法を提供する。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、図1に示す装置を使用するアフィニティーカートリッジを使用することによって実施される。この一般型の装置は米国特許第4,714,556号、4,787,974号及び6,528,057号に開示されており、これらの開示は参照によってここに包含される。この装置において、血液は中空糸限外ろ過膜の管腔を通過する。この限外ろ過膜は、血液と接触しない側面で密接しており、固定されたレクチンを有するものであって、ウイルス及びその有毒な及び/又は感染性のフラグメントを受容し固定するための手段を形成している。したがって、この装置は、他の成分が管腔を通過するのを許す一方、レクチンと結合した無傷のビリオン及びウイルス糖タンパク質類を捕捉する。
【0024】
HIVはプロトタイプのウイルスであり、本発明はそれについて説明するが、本発明は血液由来のいずれのウイルスの除去にも適用できる。図1〜3に詳細に示した装置は、ろ過室を形成する、中空糸限外ろ過膜のマルチプル・チャネルを有する。注入口及び流出口は前記ろ過室と連通している。限外ろ過膜は、好ましくは血流と面するタイトなあるいは保持性の面を有する異方性膜である。好都合なことに、この膜は、この技術分野で既知のポリマー、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド類、ポリイミド類、酢酸セルロース、及びポリアクリルアミド等で形成できる。この膜としては、直径200〜500nmの孔を有し、無傷のウイルス及びウイルス粒子及びウイルスフラグメント(例えば直径110nmのHIVビリオン)は通過させるが、大抵の血液細胞(赤血球の直径2,000nm、リンパ球の直径7,000〜12,000nm、マクロファージの直径10,000〜18,000nm)は通過させないものが好ましい。装置の図を図1に示す。装置は、ガラスの内壁14でできた血液処理チャンバー12を有するカートリッジ10を含む。チャンバー12の周囲には、任意の外部チャンバー16がある。温度をコントロールされた流動体が、ポート18を通ってチャンバー16内を循環し、ポート20から外へでる。装置は、血液が入る注入口32及び流出物が出ていく流出口34を有する。装置は、カートリッジ内の予備チャネルスペースにアクセスするために、一以上のポート48及び50を備えていても良い。図1及び2に示すように、チャンバー12は複数の限外ろ過膜22を含む。これらの膜は、好ましくは0.3mmの内径及び0.5mmの外径を有する。図3は、チャネル22の断面表示であり、膜の異方性質を示す。図3に示すように、中空糸膜構造40は、比較的タイトな限外ろ過膜42及び固定されたレクチン46が存在しうる比較的多孔質の外側部分44からなる管状部を形成する、単一の高分子材料からなる。装置の動作中に、レクチンを含有する溶液がポート48を通じて装置内に加えられる。レクチンは、図2の膜の外側22に固定され得る。非結合レクチンは、生理食塩水あるいは他の溶液で洗浄することによって、ポート50から収集することができる。
【0025】
本発明の方法を実施するためには、患者から採取した、ウイルス粒子及び/又はそのフラグメントを有する血液を、限外ろ過膜と接触させる。好ましい実施形態では、血液は血漿と細胞成分に分離される。その後血漿をレクチンと接触させれば、ウイルスの高マンノース型糖タンパク質類とレクチンが結合することによって、ウイルス粒子あるいはそのフラグメントが除去される。その後血漿を再度細胞成分と合わせて、患者に戻す。あるいは、細胞成分を単独で患者に戻してもよい。この処理は、望まれる結果が得られるまで定期的に繰り返すことができる。一例として、この処理を週に1度4時間実施することができる。
【0026】
透析に用いられるようなカートリッジ内に、酵素、キレート剤、抗体を固定する技術はすでに開発されおり(Ambrus等. Science 201(4358): 837-839,1978 ; Ambrus等. Ann Intern Med 106(4) : 531-537,1987 ; Kalghatgi等. Res Commun Chem Pathol Pharmacol 27(3): 551-561,1980) 、参照によりここに包含される。これらのカートリッジは、直接静脈アクセスを通じて患者の血液を直接灌流し、さらなる処置なしに患者に戻すことができる。あるいは、標準的な技術を用いて血液を血漿と細胞成分とに分離しても良い。細胞成分は、再注入の前に血漿と合わされてもよく、あるいは細胞成分単独で再注入されても良い。ウイルス量は、カートリッジからの流出物を用いて、ELISA及び核酸増幅のような標準的な技術および検出技術によって評価することができる。プロトタイプのカートリッジは、患者の血液の過剰なフェニルアラニンを代謝するため(Kalghatgi等, 1980, supra; Ambrus, 1978, supra)、あるいは過剰なアルミニウムを除去するため(Anthone等, J Amer Soc Nephrol 6: 1271-1277,1995)に用いられている。本発明の方法のために中空糸に固定化する蛋白質の調製の説明図は、米国特許第4,714,556、4,787,974及び5,528,057中にある。
【0027】
限外ろ過膜にレクチンを結合するためには、当該技術分野で既知のプロセスを用いて、限外ろ過膜のポリマーをまず賦活化、すなわち、蛋白質と化学的に結合しやすい状態にする。多数の異なるポリマーを用いてもよい。例えば、反応性のポリアクリル酸ポリマーを得るために、カルボジイミドを使用することができる(Valuev等, 1998, Biomaterials, 19: 41-3)。ポリマーを賦活化させた後、レクチンを直接あるいはリンカーを用いて付着させ、アフィニティーマトリクスを形成する。好ましいリンカーとして、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、プロテインA、及びプロテインGが挙げられるが、これらに限定されない。レクチンは、二価性試薬のようなカップリング剤を用いて、限外ろ過膜のポリマーに直接結合されてもよく、あるいは間接的に結合されてもよい。好ましい実施形態では、アフィニティーマトリクスを形成するため、アガロースに共有結合的に連結されたGNAを使用することができる。
【0028】
以下の実施例は、本発明を説明するために記載されるものであって、限定を意図しない。
【実施例1】
【0029】
本実施例は、臭化シアンを用いてアガロースに共有結合的に連結されたGNAを使用するアフィニティーマトリクスの調製を説明するものである。臭化シアン(CNBr)で賦活化されたアガロースは、基本的にクアトレカサース等(Cuatracasas等. Proc Natl Acad Sci USA 61(2): 636-643,1968)の方法に従って、 直接結合のために使用できる。手短に説明すると、1mlのCNBr賦活化アガロースに、GNA溶液1ml(濃度:10mg/ml 溶媒:0.1M NaHCO3[pH 9.5])を添加し(Sigma社、ミズーリ州、セントルイス)、低温度で一晩反応させる。反応完了後、未反応物質を吸引し、レクチンが連結したアガロースを無菌の低温PBSで何度も洗浄する。レクチンアガロースアフィニティーマトリクスは、使用する準備が整うまで低温で保管する。また、GNAアガロースはVector Labs社(カナダ、バーリンゲーム)から市販されている。
【実施例2】
【0030】
本実施例は、シッフ塩基及びシアノボロヒドリドを用いた還元を経てガラスビーズに共有結合的に連結させたGNAを使用したレクチンアフィニティーマトリクスの調製を説明する。シリカレクチンアフィニティーマトリクスはハーマンソンの方法(Hermanson. Bioconjugate Techniques: 785,1996)の変形によって調製した。GNAレクチンは、0.1M ホウ酸ナトリウムpH 9.5中に最終タンパク濃度10mg/mlになるように溶解され、アルデヒド誘導シリカガラスビーズ(BioConnexant, Austin TX)に添加された。反応はアルカリ性pHで最も効率的に起こり(通常pH7〜9で行う)、通常はカップリング・サイトの2〜4倍過剰のGNAが用いられる。この混合物に対し、カップリング反応物1ml当たり1N NaOH中5M NaCNBH310μl(Aldrich, St Louis, MO)を添加し、混合物を室温で2時間反応させた。反応終了後、残ったガラス表面上の未反応アルデヒドを反応物1ml当たり20μlの3Mエタノールアミン(pH9.5)でマスクした。室温で15分間放置後、反応溶液の上清を移し、PBS中で何度も洗浄することによって、非結合タンパク及び試薬を除去した。マトリクスは使用の準備が整うまで冷蔵庫で保存した。
【実施例3】
【0031】
本実施例は、グルタルアルデヒドを使用してアミノセライトに共有結合的に連結したGNAの調製について説明する。アミノセライトは、セライト(珪藻土を含むケイ酸塩)をアミノプロピルトリエトキシシランの5%水溶液中で一晩反応させることによって調製した。アミノセライトを水及びエタノールで洗浄し、過剰な遊離試薬を洗い流し、一晩乾燥して、オフ・ホワイトの粉末を得た。粉末1gを5mlの5%グルタルアルデヒド(Sigma社)中で30分間懸濁した。その後、過剰なグルタルアルデヒドをろ過によって除去し、洗浄液中に残留アルデヒドが検出されなくなる(シッフ試薬を使用)まで水で洗浄した。その後、ろ過ケーキを2〜3mg/mlGNAを含有するSigma・ホウ化水素カップリングバッファー5ml中に懸濁し、室温で一晩放置して反応を進行させた。反応終了後、未反応GNAを洗い流し、未反応のアルデヒドを前述のようにエタノールアミンでアミノ化した。最後に、無菌PBS中で洗浄を行った後、得られた物質を使用準備が整うまで、低温で保管した。
【実施例4】
【0032】
本実施例は、代表的なレクチン血漿分離交換装置の準備を説明するものである。小容量フィルターカートリッジ(Glen Research社、バージニア州、シルバートン)は、0.2mlのレクチン樹脂を含むように調製され、密閉され、5〜10カラムボリュームの無菌PBSで平衡化された。カートリッジはすぐに使用した。
【実施例5】
【0033】
本実施例は、GNAレクチンアフィニティー血液透析装置の準備を説明するものである。ウイルス血液浄化剤は、シリンジを用いて、中空糸透析カラムの外側区画内に、スラリー(アガロースビーズあるいはセライト上にGNAが固定化された微粒子を、無菌PBSバッファー中に懸濁させたもの)を投入することによって作製した。15ml以下の血液サンプルに対し、スペクトラムラボ(カリフォルニア州、ランチョ ドミンゲス)から入手した、ルアーフィッティング(200μID×240μOD、孔の直径200〜500nm、0. 5ml以下の内容積) を備えたマイクロクロスポリエーテルスルホン中空糸透析カートリッジを使用した。アフィニティーレジンを含有するカートリッジは、5〜10カラムボリュームの無菌PBSで平衡化した。
【実施例6】
【0034】
本実施例は、アフィニティー血漿分離交換装置を用いた生理食塩水からのHIV gp120の除去を説明するものである。実施例4に記載した血漿分離交換装置は5〜10カラムボリュームの無菌PBSで平衡化した。室温・流速0.5〜0.6ml/minで、gpl20を含有する1.5ml以下のサンプル(通常 500ng/ml)をカラムに循環させた。必要に応じて、gp120及びgp120免疫複合体の存在を確認するため、循環溶液を様々な時間間隔でテストした。
【0035】
HIV-1 gp120の定量的ELISAアッセイは、ワイラー法を変形した方法を用いて行った(Weiler等. J Virol Methods 32(2-3): 287-301,1991)。GNA/NPAプレートは、各ウェルに100ulのプロテイン(PBS中GNA及びNPA各1〜100ug/ml)を添加し、37℃で2時間インキュベートすることによってグライナーCボトムプレート(Greiner C bottom plates)上で調製した。その後、プレートをPBST(0.01% Tween 20含有PBS)で洗浄し、37℃で1時間カゼインブロッキングバッファー中でブロックした。すぐ使用しないプレートは、4℃で最大2週間保存した。
【0036】
遊離gp120を検出するため、試験溶液のサンプル100μlを37℃で1〜2時間インキュベートした。捕捉後、プレートをPBS中で洗浄し、100μlの適当なホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗-gp120抗体(ブロッキングバッファー中1:2500)を添加した。37℃で1時間インキュべーションした後、抗血清を吸引し、プレートを4×300ulのPBSTAで洗浄し、結合HRPを安定化テトラメチルベンジジン(TMB)基質(BioFx)で検出した。免疫複合体及び免疫複合体構造の判定ため、捕捉後、プレートをPBS中で洗浄し、100μlのアフィニティー精製HRP標識羊抗ヒトIgG抗体(ブロッキングバッファー中1:2500)を添加した。37℃で1時間インキュべーションした後、抗血清を吸引し、プレートを4×300ulのPBSTAで洗浄した。結合HRPをテトラメチルベンジジン(TMB)(BioFx)で検出した。
【0037】
図4は、GNAアガロースが、15分以内に99%の効率で緩衝液からgp120を除去したことを示す。gp120は、多様な表面に非特異的に結合できる高度にグリコシル化されたタンパク質であるため、投入されたgp120の85%がコントロールカラムと結合することも驚くべきことではない。
【実施例7】
【0038】
本実施例は、レクチンアフィニティー血漿分離交換装置を用いた、感染血漿からのHIVgp120の除去を説明するものである。実施例4で説明した血漿分離交換装置を、5〜10カラム体積の無菌PBSを用いて平衡化した。室温・流速0.5〜0.6ml/minで、gpl20(通常500 ng/ml)含有血漿サンプル約1.5mlをカラムに循環させた。実施例6と同様、gp120及びgp120免疫複合体の存在を確認するために、必要に応じて、循環溶液を様々な時間間隔でテストした。
【0039】
抗-gp120抗体は通常HIV+血漿中に大量に存在するので、感染血漿からのgp120の除去は、単なる緩衝液からの除去より困難であることが予期される。その理由の一つとして、HIV+血漿及び血液中のgp120検出は、これらの抗体が原因で通常最低量のgp120を示すことが挙げられる。それゆえ、除去率を測定するためには、感染患者の血漿にgp120を添加して、測定用のサンプルを用意する必要がある。サンプルのELISA測定により、このサンプルに添加されたgp120は、全て抗-gp120抗体と複合体を形成していることが確認された(データは示さず)。
【0040】
図5は、GNAアガロースアフィニティー樹脂が、効率的に、HIV感染血漿サンプルから免疫複合体中のgp120を除去することを示す。除去は、見かけ上半減期が20分と急速であった。一部のgp120シグナルは、7時間経過後でさえ除去されず( 初期gpl20免疫複合体の10%以下)、分析におけるIgGのバックグラウンド結合を示すと考えられた。
【実施例8】
【0041】
本実施例は、GNA血漿分離交換法を用いた感染血漿からのHIVビリオンの除去を説明するものである。100,000cpm(1mlあたりのコピー数)のウイルスを含有するHIV感染血漿サンプル(マサチューセッツ州 ボストン、ボストン バイオメディカER8-03030-0002 ネイティブHIV)を実施例4で説明した0.2mlのGNAアガロースカラムに循環させた。周期的に、血漿を250μlアリコート取り、使用説明書(MRCコーポレーション)に従って、TRI-LS試薬を用いてウイルスRNAを抽出した。その後HIVウイルスRNAをリアルタイムRTPCR及び400nM SK432及びSK461 gagジーン・プライマー、サイバーグリーン(1:10,000)、lx SCAブロッキングバッファー、3mM MgCl2、400uMのdNTPs及び10ulの未知のRNAあるいはアーマードRNAスタンダード(Ambion Austin TX)由来のHIV-1RNAを含有するプロメガ社(ウィスコンシン州、マディソン)のアクセス1ステップ試薬セット(反応体積25μl)を用いて定量した。増幅及び反応時間は以下の通りとした:RT(48℃で45分)及びPCR 40サイクル(94℃/15秒;62℃/30秒;72℃/60秒;83℃/リード) 、スマートサイクラー・ リアルタイム・サーモサイクラー(Cepheid社、カリフォルニア州、サニーベール)を用いて、基本的に使用説明書に従って行った。増幅を確認する必要があるときは、10μlアリコートの増幅混合物を、室温・120VDCで、45分間、0.25ug/ml臭化エチジウムを含有するpH8.3の0.5xTBE緩衝液中でアガロースゲル電気泳動2%(w/v)(Sigma社、分子生物学用)にかけた。ゲルのイメージをUVトランスイルミネータで撮影し、その後デジタル化してイメージJを用いて分析した。
【0042】
図6A及び6Bは、GNAアガロースが、効率的に、感染血漿からHIVビリオンを除去することを示す。図6Aは、指数関数的減衰(R2=0.9)に適合するデータ曲線の線形プロットである。曲線から、HIVは、基本的に約10時間で定量的に除去されると予測できる。図6Bは、HIV除去率の対数プロットであり、この図から、HIV除去の半減期は0.9時間と推定される。ウイルス除去は、過剰なウイルス中のGNAで予期できるように、第一級と思われる。CPMは、1ml当たりのHIVのコピー数を示す。
【実施例9】
【0043】
この実施例は、GNAレクチンアフィニティー血液透析装置を用いた、HIV感染血液からのgp120の除去を説明するものである。たいていのHIV+血漿サンプルは、低量あるいは検出不能量のgp120を有するので、模擬HIV感染血液サンプルとして、5mlのO型+新鮮濃縮赤血球を5mlのHIV感染血漿(通常105cpm)と混合し、十分量のgp120IIIBを添加して、サンプル100ng/mlを調製した。
【0044】
実施例5で説明したアフィニティー血液透析装置を、5〜10カラム体積の無菌PBSで平衡化した。セファロース4Bのみを含有するコントロールカラムをコントロールとして準備した。gp120を含有する10ml以下の感染血液サンプルを、マスターフレックスローラーポンプ(1rpm)及びファーメド6485-16シリコーンチューブを用いて、37℃・流速0.9ml/minでカラムに再循環させた。免疫複合体を分裂させるために酸変性及び中和した後、遊離gp120の存在を確認するため、循環溶液を様々な時間間隔で試験した。
【0045】
図7は、血液サンプルがカートリッジを再循環した際、4〜6時間内(見かけ上t1/2=22分) で、100ng/mlの初期gp120がバックグラウンドレベルまで減少することを示す。コントロールカートリッジはgp120を非常にゆっくり除去した。
【実施例10】
【0046】
この実施例は、GNAレクチンアフィニティー血液透析を用いた、感染血液からのHCVの除去を説明するものである。ウイルスの除去に対して、GNAレクチンが広い特異性を持つことを証明するために、HCV感染血液のレクチンアフィニティー血液透析を行った。実施例4で説明したレクチンアフィニティー血液透析装置を、5〜10カラム体積の無菌PBSで平衡化した。HCV感染血液サンプルは、1mlのO型+新鮮濃縮赤血球と1mlのHIV感染血漿(通常105cpm)を混合して調製した。感染血液サンプルは、マスターフレックスローラーポンプ(1rpm)及びファーメド6485-16チューブを用いて、室温・流速0.5ml/minでカラムに再循環させた。HCVウイルスRNAの存在を確認するため、循環溶液を様々な時間間隔で試験した。
【0047】
ウイルスRNAは使用説明書に従って、100μlの血漿からTRI-LS(MRCコーポレーション)を用いて分離した。その後、HCVウイルスRNAを、25ul反応体積中に400nM EY80及びEY78 HCV特異的プライマー、サイバーグリーン(1:10,000)、1x SCAブロッキングバッファー、3mM MgCl2、400uMのdNTPs、各0.2単位/ulのTflポリメラーゼ及びAMV逆転写酵素を含有する、プロメガ社(ウィスコンシン州、マディソン)のImpromII試薬セットを用いて、定量的RT PCRによって測定した。模式的に、50ulの混合物を、100μlの血漿から分離したRNAを溶解するために使用し、混合物を2つの同一の複製サンプルに分けた。増幅及び反応時間は以下の通りとした:RT(48℃で45分)及びPCR 40サイクル(94℃/15秒;62℃/30秒;72℃/60秒;83℃/リードアウト) 、スマートサイクラー・ リアルタイム・サーモサイクラー(Cepheid社、カリフォルニア州)を用いて、基本的に使用説明書に従って行った。ウイルスRNAの量は、増幅反応の初期相(Ct=20)におけるウイルスRNAスタンダードのシグナル強度と比較することによって推定した。
【0048】
図8は、血液がカートリッジを再循環するにつれ、初期HCVが3時間内に約50%に減少することを示す(見かけ上t1/2=3時間)。曲線は指数関数的減衰に合理的に適合する。
【0049】
上述してきたことから、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記方法、及び構成に様々な変更を加えることができることが、当業者に明らかである。従って、本発明は、その精神あるいは本質的な性質から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されうる。本実施例及び実施形態は、それゆえ全て例示的なものとして考慮され、限定を示さない。したがって、特許請求の範囲と等価な目的及び範囲内の全ての変更は、特許請求の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、アフィニティーカートリッジの縦断面の略図である。
【図2】図2は、図1中の面2における水平断面図の略図である。
【図3】図3は、図2のチャネルの説明図である。中空糸膜構造40は、比較的タイトな限外ろ過膜42、及び、中にアフィニティー分子46(例えばレクチンなど)を固定できる比較的多孔質な外側部分44とを有する管状部からなる。
【図4】図4は、HIV添加生理食塩水からのgp120の除去を示すグラフである。初期gp120はPBS中500ng/mlであった(1.6ml/run)。gp120を、0.2mlGNAアガロースを含むカラムで、0.5〜0.58ml/min・室温の条件の下に再循環した(コントロール:セファロース4B)。
【図5】図5は、HIV感染ヒト血漿からのgp120免疫複合体の除去を示すグラフである。初期のgpl20は、ヒトHIV+血漿中500ng/mlであった(1. 6ml/run)。10μg/ウェルのGNA/NPAプレートを用いて分析し、羊の抗-ヒトIgGを用いて検出したgp120免疫複合体を捕捉した。血漿は、0.2mlGNAアガロースを含有するGlen Research社のカラムで、0.5〜0.58ml/min・室温の条件の下に再循環した(コントロール:セファロース4B)。○の線は実験の理論的な指数関数上の最適値R2=0.91を示す線であり、□の線はコントロールを示す直線である。
【図6】図6Aは及び6Bは、GNAアガロース上の未変性HIVの除去を説明するものである。図6Aは、血漿分離交換法の指数曲線を示すグラフである(R2=0.90:22時間の1点を除く)。図6Bは、初期除去率の対数プロットを示すグラフである(半減期0.9時間以下)。条件は、#14シリコンチューブを有するマスターフレックスポンプである(1.1ml/min)。血漿サンプルは初期体積が3mlである(100,000CPM(1mlあたりコピー数)BBI ER8-03030-0002 未変性HIV)。RNA分離のためのアリコート体積は血漿250ul。サイバーグリーントラッキングダイを用いたリアルタイムRTPCR法。サーモサイクリング95, 60, 72, 83℃(15, 30, 60秒、リード6秒)。CtはT=20で一次曲線から計算した。
【図7】図7は、HIV+血液からのgp120の除去を示すグラフである。初期のgpl20はヒトHIV+血漿中100ng/mlである。分析前に酸/洗浄剤で分裂させた免疫複合体を用いて、0.1ug/ウェルGNA-NPAプレートを用いて分析した。血液は、0.6mlGNAアガロースを含有するマイクロクロスカラムに再循環させた(コントロール:セファロース4B)。37℃、流速0.9ml/minでマスターフレックスポンプ (1rpm)及びファーメド6485-16チューブを使用した。線は、実験のための理論上の指数関数最適値R2=0.91(□)(tl/2=22分)及びコントロールを表す線(○)である。
【図8】図8は、C型肝炎ウイルス感染血液の除去のグラフを示す図である。0.6 mlGNAアガロースを含有するマイクロクロスカラムに血液を再循環させた(コントロール:セファロース4B)。流速0.5 ml/min・室温で、マスターフレックスポンプ(1rpm)及びファーメド6485-16チューブを使用した。線は理論上の指数関数最適値R2=0.85を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 個体から血液を採取し、
b) 前記血液を、高マンノース型糖タンパク質類に結合できるレクチン分子が、膜の多孔質性の外側部分に固定されている、多孔性中空糸膜に通過させ、
c) 通過した血液を収集し、且つ
d) 前記通過血液を個体に再注入する
ステップを含む、ウイルスに感染した個体の血液中のウイルス粒子及びそのレクチン結合性フラグメントを減じる方法。
【請求項2】
前記レクチンが、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパ水仙凝集素(NPA)、シアノビリン及びコンカナバリンAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レクチンがGNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レクチン分子が、ウイルスのコートプロテインあるいはそのフラグメントに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスがHIV-1である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスがHCVである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
a) 個体から血漿を採取し、
b) 前記血漿を、高マンノース型糖タンパク質類に結合できるレクチン分子が、膜の多孔質性の外側部分に固定されている、多孔性中空糸膜に通過させ、
c) 通過した血漿を収集し、且つ
d) 前記通過血漿を個体に再注入する
ステップを含む、ウイルスに感染した個体の血漿中のウイルス量を減じる方法。
【請求項8】
個体に再注入する前に、非結合血漿を細胞成分と混合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レクチン分子が、GNA、NPA、コンカナバリンA及びシアノビリンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記レクチン分子がGNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レクチン分子が、ウイルスのコートプロテインあるいはそのフラグメントに結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスがHIV-1である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスがHCVである、請求項7に記載の方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−525232(P2007−525232A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501076(P2006−501076)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/001559
【国際公開番号】WO2004/064608
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505271046)イースロン メディカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】