説明

レシプロ式塗装機

【課題】段取り作業を省略でき、かつ初心者でも運転できるレシプロ式塗装機の提供
【解決手段】この発明のレシプロ式塗装機は、所定品質の塗装面を確保するために、各サ−ボモ−タ2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’の動作状態を予め実験的に導出し、該導出デ−タをコンピュ−タKに記憶させ、液晶タッチパネルEに記号を付したタッチキ−Pで表示させ、該当するタッチキ−Pを押すことにより、各サ−ボモ−タ2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’に、前記動作状態を実現させる動作指令信号を送り、所定の動作を実行させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレシプロ式塗装機に係り、詳しくは塗装ガンユニット部の機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来知られている塗装機(例えば、特開平2000−218203号公報参照。)においては、塗装ガンの上下方向角度調整、水平方向角度調整、上下方向の移動等は、作業者が調整ネジ等を操作し、手作業で行っていたので、塗装作業を開始する前の段取り作業に時間がかかるという問題点があった。また、前記段取り作業には熟練を要し、かつ面倒であるという問題点もあった。
【0003】
【特許文献1】特開平2000−218203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、背景技術で記述した問題点を解消するためになされたもので、段取り作業を省略でき、かつ初心者でも運転できるレシプロ式塗装機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のレシプロ式塗装機は、一対の塗装ガンユニットを、一方の塗装ガンユニットに設置した塗装ガンの噴出口と他方の塗装ガンユニットに設置した塗装ガンの噴出口とが対向するように、間隔をおいて、設置し、前記塗装ガンユニットは、フレ−ムの両端部に設置され、サ−ボモ−タによって駆動される回転ホイルに装着した無端ベルトに固定されており、該無端ベルトの前後動に連動して、前後動が可能であり、前記フレ−ムは、長尺部材と短尺部材からなり、前記長尺部材の一端は、前記短尺部材に、回動可能に水平に取付けられ、水平方向の移動が拘束された一対のネジ棒に螺合され、前記ネジ棒の基部には、傘歯車が固定され、該傘歯車には、サ−ボモ−タによって駆動される別の傘歯車が噛み合っており、該別の傘歯車を回転させると、連動して、前記ネジ棒が互いに逆方向に回転し、前記塗装ガンユニットの間隔を伸縮できるようになっており、前記塗装ガンは、先端部に傘歯車を設置し、サ−ボモ−タで駆動され回転する縦軸の前記傘歯車に噛み合う傘歯車を後端部に設置した横軸の先端部に、前記塗装ガンの握り部が固定されており、前記縦軸を回転させると、連動して、前記横軸が回転し、さらに連動して、前記塗装ガンが上下に回動可能であり、前記縦軸と横軸は、サ−ボモ−タで駆動され、回転可能な中空のケ−シング内に装着されており、前記一対の塗装ガンユニットには、前記一対のケ−シングが間隔をおいて併設されており、該ケ−シング間に、中央部にネジ孔を設けた横部材を上下動のみを拘束した状態で装着し、前記ネジ孔に、サ−ボモ−タで駆動され、回転するケ−シング上下動調整ネジ棒を、該ケ−シング上下動調整ネジ棒の上下移動を拘束した状態で、螺合しており、該ケ−シング上下動調整ネジ棒を回転させると、連動して、前記一対のケ−シングが上下移動できるようになっていることを特徴とするものである。
【0006】
さらに、寸法、形状などが異なる被塗装部材について、所定品質の塗装面膜厚や塗装ムラ等を確保するために必要な前記各サ−ボモ−タの動作状態を予め実験的に導出し、該導出デ−タをコンピュ−タに記憶させ、液晶タッチパネルに記号を付したタッチキ−で表示させ、該タッチキ−を押すことにより、前記各サ−ボモ−タに前記動作状態を実現させる動作指令信号を送り、所定の動作を実行させることができるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、上述のように構成されているので、次のような効果を呈する。
(1)塗装ガンユニットの往復移動及び巾寄せがサ−ボモ−タの駆動で容易に行える。
(2)塗装ガンの上下角度の調整、水平角度の調整及び上下移動がサ−ボモ−タの駆動で容易に行える。
(3)液晶タッチパネルのタッチキ−を押すことにより、各サ−ボモ−タに所定の動作を実行させることができ、段取り作業を省略できる。
(4)初心者でも運転できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
段取り作業を省略でき、かつ初心者でも運転できるレシプロ式塗装機の提供という目的を、複数個のサ−ボモ−タの使用と、該複数個のサ−ボモ−タに所定の動作を実行させるための動作指令信号を送る液晶タッチパネルを使用することより実現できた。
【実施例】
【0009】
この発明の実施の形態の一例を図面を参照しながら説明する。図1に示すように、一対の塗装ガンユニットA,A’を、一方の塗装ガンユニットAに設置した塗装ガン1,1の噴出口と他方の塗装ガンユニットA’に設置した塗装ガン1’,1’の噴出口とが対向するように、間隔Dをおいて、設置している。
【0010】
塗装ガンユニットA,A’は、フレ−ムBの両端部(詳しくは、後述の長尺部材b,bの両端部)に設置され、サ−ボモ−タ2,2’によって駆動される回転ホイル3,3,3’,3’に装着した無端ベルト4,4’に固定されており、無端ベルト4,4’の前後動に連動して、塗装ガンユニットA,A’の前後動、即ち往復移動が可能である。
【0011】
フレ−ムBは、図2に示すように、長尺部材b,bと短尺部材a,aからなり、長尺部材b,bの一端は、一方の短尺部材aに、回動可能に水平に取付けられ、水平方向の移動が拘束された一対のネジ棒C,Cに螺合されている。
【0012】
ネジ棒C,Cの基部には、図2に示すように、傘歯車5,5が固定され、傘歯車5,5には、サ−ボモ−タ6によって駆動される傘歯車7が噛み合っている。したがって、サ−ボモ−タ6を駆動して、傘歯車7を回転させると、それに連動して、ネジ棒C,Cが互いに逆方向に回転し、長尺部材b,bを接近又は離隔させる。したがって、長尺部材b,bに無端ベルト4,4’を介して支持されている塗装ガンユニットA,A’の間隔Dを狭めたり、広げたりすることができるようになっている。
【0013】
各塗装ガン1,1,1’,1’は、図1、図3に示すように、サ−ボモ−タ8,8,8’,8’で駆動され、先端部に傘歯車9,9,9’,9’を設置した縦軸10,10,10’,10’の傘歯車9,9,9’,9’に噛み合う傘歯車11,11,11’,11’を設置した横軸12,12,12’,12’の先端部に、塗装ガン1,1,1’,1’の握り部が固定されている。したがって、縦軸10,10,10’,10’が回転すると、それに連動して、横軸12,12,12’,12’が回転し、さらに連動して、塗装ガン1,1,1’,1’が上下に回動できるようになっている。なお、図3(b)は、図3(a)において、塗装ガン1,1,1’,1’の取付部を側面から見た図である。
【0014】
縦軸10,10,10’,10’と横軸12,12,12’,12’は、図3に示すように、中空のケ−シング13,13,13’,13’内に装着されており、各ケ−シング13,13,13’,13’は、サ−ボモ−タ14,14,14’,14’で駆動され、回転ができるようになっている。通常、各ケ−シング13,13,13’,13’には、プ−リが装着され、サ−ボモ−タ14,14,14’,14’の回転軸に装着したプ−リにベルトで連結されている。なお、各ケ−シング13,13,13’,13’に装着されたプ−リは、軸方向の回動のみが拘束されている。したがって、該プ−リが回転している状態においても、各ケ−シング13,13,13’,13’の上下動はできるようになっている。
【0015】
ケ−シング13,13,13’,13’間に、図3に示すように、中央部にネジ孔を設けた横部材15,15’を、上下動のみを拘束した状態で装着し、前記ネジ孔に、サ−ボモ−タ16,16’で駆動され、回転するケ−シング上下動調整ネジ棒17,17’を、ケ−シング上下動調整ネジ棒17,17’の上下移動を拘束した状態で、螺合している。したがって、ケ−シング上下動調整ネジ棒17,17’を回転させると、それに連動して、ケ−シング13,13,13’,13’が上下移動できるようになっている。通常、ケ−シング上下動調整ネジ棒17,17’の上端を、サ−ボモ−タ16,16’の回転軸に直結させている。
【0016】
また、寸法、形状などが異なる被塗装部材について、所定品質の塗装面膜厚や塗装ムラ等を確保するための各サ−ボモ−タ2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’の動作状態を予め実験的に導出し、図4に示すように、該導出デ−タをコンピュ−タKに記憶させ、液晶タッチパネルEに記号を付したタッチキ−Pで表示させ、タッチキ−Pを押すことにより、各サ−ボモ−タ2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’に、前記動作状態を実現させる動作指令信号を送り、所定の動作を実行させるように構成している。なお、図4においては、サ−ボモ−タをSで表示している。
【0017】
例えば、被塗装部材M1について、所定品質の塗装面膜厚や塗装ムラ等を確保するために、予備実験を行い、塗装ガンユニットA,A’の最適間隔(サ−ボモ−タ6)、最適の往復回数、ストロ−ク長さ、速度(サ−ボモ−タ2,2’)等のデ−タを導出し、該デ−タをコンピュ−タKに記憶させ、該デ−タを実現させる動作指令信号をサ−ボモ−タ2,2’,6に発するように液晶タッチパネルEにM1を付したタッチキ−Pで表示させる。
【0018】
塗装ガン1,1,1’,1’については、最適の上下角度(サ−ボモ−タ8,8,8’,8’)、最適の水平角度(サ−ボモ−タ14,14,14’,14’)、ワ−クテ−ブル18との最適の離隔距離(サ−ボモ−タ16,16’)等のデ−タを導出し、該デ−タをコンピュ−タKに記憶させ、該デ−タを実現させる動作指令信号を各サ−ボモ−タ8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’に発するように、液晶タッチパネルEにM1を付したタッチキ−Pで表示させる。
【0019】
したがって、実施に際しては、被塗装部材が、M1である場合には、運転者は液晶タッチパネルEのM1を付したタッチキ−Pを押せば、各サ−ボモ−タが適正に動作し、所定品質の塗装面膜厚や塗装ムラ等を得ることができるのである。被塗装部材がM2,M3・・・・等複数ある場合には、M2,M3・・・について、上記と同様な予備実験を行い、液晶タッチパネルEに、M2,M3・・・を付したタッチキ−Pで表示させる。
なお、図1において、矢印19は被塗装部材の流れ方向を示している。
【産業上の利用可能性】
【0020】
段取り作業の省略や運転者の熟練度を要求しないレシプロ式塗装機として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】発明の一実施例を示す概略説明図
【図2】フレ−ム部の概略平面図
【図3】ケ−シング部の概略説明図
【図4】サ−ボモ−タ、コンピュ−タ、液晶タッチパネルの関係を示すブロック図
【符号の説明】
【0022】
1,1’ 塗装ガン
2,2’サ−ボモ−タ
3,3’回転ホイル
4,4’ 無端ベルト
5 傘歯車
6 サ−ボモ−タ
7 傘歯車
8,8’ サ−ボモ−タ
9,9’ 傘歯車
10,10’ 縦軸
11,11’ 傘歯車
12,12’ 横軸
13,13’ ケ−シング
14,14’ サ−ボモ−タ
15,15’ 横部材
16,16’ サ−ボモ−タ
17,17’ ケ−シング上下動調整ネジ棒
18 ワ−クテ−ブル
19 矢印
A,A’ 塗装ガンユニット
B フレ−ム
C ネジ棒
D 塗装ガンユニットの間隔
E 液晶タッチパネル
K コンピュ−タ
P タッチキ−
S サ−ボモ−タ
a フレ−ムの短尺部材
b フレ−ムの長尺部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)一対の塗装ガンユニット(A,A’)を、一方の塗装ガンユニット(A)に設置した塗装ガン(1,1)の噴出口と他方の塗装ガンユニット(A’)に設置した塗装ガン(1’,1’)の噴出口とが対向するように、間隔(D)をおいて、設置している、
(ロ)前記塗装ガンユニット(A,A’)は、フレ−ム(B)の両端部に設置され、サ−ボモ−タ(2,2’)によって駆動される回転ホイル(3,3,3’,3’)に装着した無端ベルト(4,4’)に固定されている、
(ハ)前記フレ−ム(B)は、長尺部材(b,b)と短尺部材(a,a)からなり、前記長尺部材(b,b)の一端は、前記一方の短尺部材(a)に、回動可能に平行に取付けられ、平行方向の移動が拘束された一対のネジ棒(C,C)に螺合されている、
(ニ)前記ネジ棒(C,C)の基部には、傘歯車(5,5)が固定され、該傘歯車(5,5)には、サ−ボモ−タ(6)によって駆動される傘歯車(7)が噛み合っている、
(ホ)前記塗装ガン(1,1,1’,1’)は、サ−ボモ−タ(8,8,8’,8’)で駆動され、先端部に傘歯車(9,9,9’,9’)を設置した縦軸(10,10,10’,10’)の前記傘歯車(9,9,9’,9’)に噛み合う傘歯車(11,11,11’,11’)を設置した横軸(12,12,12’,12’)の先端部に、前記塗装ガン(1,1,1’,1’)の握り部が固定され、前記縦軸(10,10,10’,10’)が回転すると、それに連動して、前記横軸(12,12,12’,12’)が回転し、さらに連動して、前記塗装ガン(1,1,1’,1’)が上下に回動できるようになっている、
(ヘ)前記縦軸(10,10,10’,10’)と横軸(12,12,12’,12’)は、中空のケ−シング(13,13,13’,13’)内に装着されており、前記ケ−シング(13,13,13’,13’)は、サ−ボモ−タ(14,14,14’,14’)で駆動され、回転が可能になっている、
(ト)前記ケ−シング(13,13,13’,13’)間に、中央部にネジ孔を設けた横部材(15,15’)を上下動のみを拘束した状態で装着し、前記ネジ孔に、サ−ボモ−タ(16,16’)で駆動され、回転するケ−シング上下動調整ネジ棒(17,17’)を、該ケ−シング上下動調整ネジ棒(17,17’)の上下移動を拘束した状態で、螺合している、
以上のことを特徴とするレシプロ式塗装機
【請求項2】
寸法、形状などが異なる被塗装部材について、所定品質の塗装面膜厚や塗装ムラ等を確保するために必要な各サ−ボモ−タ(2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’)の動作状態を、予め実験的に導出し、該導出デ−タをコンピュ−タ(K)に記憶させ、液晶タッチパネル(E)に記号を付したタッチキ−(P)で表示し、該タッチキ−(P)を押すことにより、前記各サ−ボモ−タ(2,2’,6,8,8,8’,8’,14,14,14’,14’,16,16’)に、前記動作状態を実現させる動作指令信号を送り、所定の動作を実行させるように構成したことを特徴とする請求項1記載のレシプロ式塗装機

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−136754(P2006−136754A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325800(P2004−325800)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【特許番号】特許第3638598号(P3638598)
【特許公報発行日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(501008462)株式会社エイ・ケイ・システム (7)
【Fターム(参考)】