説明

レジスタ

【課題】連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができるレジスタを提供する。
【解決手段】レジスタ12のリテーナ14内には、上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が上下方向に沿って並設されている。上側ブレード25と中間ブレード27とは第1連結部材28によって連結されている。中間ブレード27と下側ブレード26とは第2連結部材29によって連結されている。そして、上側ブレード25の支軸23bと連結軸25bとの軸間距離T2を、中間ブレード27の支軸23bと第1連結軸27bとの軸間距離T1よりも長くする。また、下側ブレード26の支軸23bと連結軸26bとの軸間距離T4を、中間ブレード27の支軸23bと第2連結軸27cとの軸間距離T3よりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風路から吹き出される空調風の方向を変更可能なレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記レジスタとしては、例えば、回動自在に支持されたブレードの傾きを変更することにより、空調風の吹き出し方向を所望の方向にして吹き出させるものがある。
例えば、特許文献1には、各ブレードの両端に突設された回転軸が回動自在に支持されるとともに、各ブレードの一端に突設された連結軸が、連結部材に形成されたガイド孔に回動自在に嵌挿されており、連結部材が上下動されることにより複数のブレードが連動して揺動するレジスタが記載されている。
【0003】
また、特許文献1に記載のレジスタでは、ガイド孔と連結軸との位置関係が変更可能になっており、同位置関係を変更することにより、各ブレードが互いに平行な状態で揺動して平行風が吹き出されるモードと、各ブレードが互いに平行ではない状態で揺動するモード、より詳細には上方及び下方のブレードほど揺動角が大きくなることで拡散風が吹き出されるモードとを切り替えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図7に示すように、レジスタは、車両のインストルメントパネルに組み付けられることが多い。この場合、少なくとも乗員の頭部から腹部までの広い範囲(図7の2点鎖線を境界線とする範囲)に亘って空調風を吹き付け可能に構成することが望ましい。このように空調風の吹き出し方向の範囲を広げるには、ブレードの可動角はできる限り広くする必要があり、そのためには上記連動部材の上下方向に関する移動範囲を大きくする必要がある。しかし、連結部材の移動範囲を大きくすると同連結部材の端部がレジスタの内壁(例えば通風路等の内面)に干渉しやすくなるため、移動範囲の拡大には自ずと限界がある。特に、近年では、インストルメントパネルの意匠性等を高めるために高さ方向に薄型化が図られたレジスタも提案されており、このように薄型化されたレジスタでは、連結部材の移動範囲の拡大が更に困難なものとなっている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができるレジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、通風路に複数のブレードが設けられており、前記ブレードには回動中心となる回動支点部と連結部材が接続される連結部とが設けられており、複数の前記ブレードの通風路に対する角度が前記連結部材によって連動して変更されることにより前記通風路から吹き出される空調風の方向を変更可能なレジスタにおいて、前記連結部材は、一対の前記ブレード毎に設けられており、前記回動支点部と前記連結部との距離である軸間距離が前記一対のブレードにおいて互いに異なることを要旨とする。
【0008】
この構成では、連結部材で連結された一対のブレードについて、回動支点部と連結部との距離である軸間距離が互いに異なるようになっており、これにより各ブレードの可動角がそれぞれ異なるようになる。ここで、可動角の異なる各ブレードを1本の連結部材で連結させる場合には、可動角の最も大きいブレードに合わせて連結部材を構成する必要がある。そのため、空調風の吹き出し方向の範囲を広げるにあたって連結部材の移動範囲の拡大は避けられない。
【0009】
他方、上記構成では、一対のブレード毎に連結部材が設けられており、隣り合うブレード同士がそれぞれ別々の連結部材によって連結されている。そのため、ブレードの可動角に合わせて各連結部材を最適化することができ、同連結部材の移動範囲についても最適化することができる。従って、連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、当該レジスタの内壁に近い前記ブレードの前記軸間距離は、前記内壁から離間した前記ブレードの前記軸間距離に比して長くされていることを要旨とする。
【0011】
この構成では、レジスタの内壁に近いブレードの可動角は、レジスタの内壁から離間したブレードの可動角よりも小さくなる。そのため、レジスタの内壁に近いブレードに接続された連結部材の移動範囲も小さくすることができる。
【0012】
逆に、レジスタの内壁から離間したブレードの可動角は、レジスタの内壁に近いブレードの可動角よりも大きくなる。そのため、レジスタの内壁から離間したブレードについては空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0013】
従って、同構成によれば、レジスタの内壁から離間したブレードについて空調風の吹き出し方向の範囲を広げつつ、レジスタの内壁に近いブレードに接続された連結部材の移動範囲を小さくすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、複数の前記ブレードの配列方向にあって一端側の前記ブレードの可動角は、他端側の前記ブレードの可動角よりも小さくされていることを要旨とする。
【0015】
レジスタは、車両のインストルメントパネルの上部に設けられることが多い。そのため、連結部材の移動範囲として確保可能な空間は、インストルメントパネルの上部側に比して下部側の方が広い。そこで、レジスタを上記のように構成する。すなわち複数のブレードの配列方向にあって一端側のブレードの可動角を、他端側のブレードの可動角よりも小さくする。そして、インストルメントパネルの上部側に上記一端側のブレードを配設し、インストルメントパネルの下部側に上記他端側のブレードを配設するようにすれば、連結部材の干渉を抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記ブレードには複数の前記連結部が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、複数の連結部についてその配設位置を変更することにより上記軸間距離を容易に変更することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレジスタにおいて、当該レジスタは車両のインストルメントパネルに設けられるレジスタであることを要旨とする。
【0018】
車両のインストルメントパネルは内部空間にあまり余裕がなく、連結部材の移動範囲の拡大が比較的困難である。この点、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレジスタによれば、連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができるため、インストルメントパネルに設けられるレジスタとして好適な効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかるレジスタが設けられたインストルメントパネルの正面図。
【図2】レジスタの正面図。
【図3】(a)は図1のA―A線に沿った断面図、(b)は図3(a)のB−B線に沿った断面図。
【図4】(a)は下流側ブレードがニュートラル状態になっているレジスタの断面図、(b)は図4(a)の部分拡大図。
【図5】(a)は下流側ブレードが上側偏向状態に移行したときのレジスタの断面図、(b)は下流側ブレードが図5(a)の状態であるときの空調風の吹き出し態様を示す模式図。
【図6】(a)は下流側ブレードが下側偏向状態に移行したときのレジスタの断面図、(b)は下流側ブレードが図6(a)の状態であるときの空調風の吹き出し態様を示す模式図。
【図7】レジスタに求められる空調風の吹き出し方向の範囲を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。なお、以下では、図2に示すようにレジスタの吹き出し口がある側を正面とし、これを基準に上(車両上方)、下(車両下方)、左、右を規定する。また、図3(a)等に示すように、レジスタの吹き出し口がある側を前方とし、これを基準に前、後を規定する。
【0022】
図1に示すように、車両の運転席及び助手席に着座した乗員と向かい合うように設けられたインストルメントパネル11には、その車幅方向(図1の左右方向)中央部で、かつその上部に、一対のレジスタ12が車幅方向に並べられた状態で組み込まれている。そして、レジスタ12には、その真下にディスプレイ装置の表示部13が取り付けられている。レジスタ12は、左右方向の長さに比べて上下方向の長さが小さい薄型レジスタとして構成されている。
【0023】
図2に示すように、レジスタ12の外郭は、略四角筒状のリテーナ14と、リテーナ14の開口縁部14aに接合された外枠15とによって構成されている。
図3(a)に示すように、リテーナ14は、略四角筒状の上流側リテーナ18及び略四角筒状の下流側リテーナ19が直列に連結されることで構成されている。リテーナ14の内部空間は、空調装置の通風ダクト(図示略)から吹き出された空調風を車室に導くための通風路20の一部であり、この通風路20は外枠15に形成された吹き出し口21に連通されている。
【0024】
リテーナ14内には空調風の流通方向の上流側に複数のフィン22(図3(a)では一つのみ図示)が設けられるとともに、空調風の流通方向の下流側に複数のブレード23が設けられている。そして、先の図2及び図3(a)に示すように、複数のフィン22は、左右方向に等間隔に離間した状態で平行に並設されており、複数のブレード23は上下方向に沿って並設されている。すなわち、フィン22及びブレード23は互いに直交している。
【0025】
図3(a)に示すように、各フィン22には、その上下方向の両端部22aに、それぞれ支軸22bが突設されている。そして、各支軸22bは、上流側リテーナ18の下流側端面18a(図3(b)参照)に形成された軸受凹部24に回動可能に係合されている。そのため、フィン22は、略上下方向に沿った状態に支持されている。また、フィン22の上側の端部22aには連結軸22cが突設されている。そして、各フィン22の各連結軸22cは、共通の連結部材Lを介して回動自在に連結されている。したがって、全てのフィン22は、支軸22bを中心として一体的に揺動して、空調風を左右方向に偏向する。
【0026】
一方、図3(b)に示すように、各ブレード23には、その左右方向における両端部23aに、それぞれ支軸23bが形成されている。各ブレード23の支軸23bは、下流側リテーナ19の左右側壁部19aに形成された軸受孔19bに回動可能に嵌入されている。したがって、図4(a)に示すように、ブレード23は、その支軸23bを中心に揺動して、空調風を上下方向に偏向する。なお、支軸23bは、上記回動支点部を構成している。
【0027】
複数のブレード23は、ブレード23の並設方向の両端に位置する上側ブレード25及び下側ブレード26と、上側ブレード25及び下側ブレード26の間に挟まれた中間ブレード27とで構成されている。
【0028】
下側ブレード26及び上側ブレード25には、左右方向における一方の端部25a,26a(本実施形態では右側端部25a,26a)に、連結軸25b,26bが突設されている。
【0029】
また、中間ブレード27には、その左右方向における一方の端部27aに、第1連結軸27b及び第2連結軸27cといった複数の連結軸が突設されている。
なお、連結軸25b,26b、第1連結軸27b及び第2連結軸27cは、上記連結部を構成している。
【0030】
中間ブレード27の第1連結軸27bと上側ブレード25の連結軸25bとは、細長の平板状に形成された第1連結部材28を介して連結されている。具体的には、中間ブレード27の第1連結軸27bは第1連結部材28の第2端部28bに形成された嵌入孔28dに対して回動可能に嵌入される一方、上側ブレード25の連結軸25bは第1連結部材28の第1端部28aに形成された嵌入孔28cに対して回動可能に嵌入されている。
【0031】
また、中間ブレード27の第2連結軸27cと下側ブレード26の連結軸26bとは、細長の平板状に形成された第2連結部材29を介して連結されている。具体的には、中間ブレード27の第2連結軸27cは、第2連結部材29の第1端部29aに形成された嵌入孔29cに対して回動可能に嵌入される一方、下側ブレード26の連結軸26bは、第2連結部材29の第2端部29bに形成された嵌入孔29dに対して回動可能に嵌入されている。
【0032】
そして、図4(a)や図4(b)に示すように、各ブレード25,26,27がニュートラル状態であるとき、中間ブレード27及び下側ブレード26は略水平な姿勢で保持される一方、上側ブレード25は回動支点P1(図4(b)参照)に対して斜め下方に若干傾いた姿勢で保持されている。そして、中間ブレード27がニュートラル状態からその回動支点P2(図4(b)参照)を中心として揺動されると、第1連結部材28及び第2連結部材29を介して上側ブレード25及び下側ブレード26も同時に揺動される。
【0033】
上側ブレード25の上流側端部25dは上側後方に向けて斜めに屈曲されており、この上流側端部25dはニュートラル状態において、通風路20の上側内面20aに対して距離H1だけ離間している。また、下側ブレード26の上流側端部26dは下側後方に向けて斜めに屈曲されており、この上流側端部26dはニュートラル状態において通風路20の下側内面20bに対して距離H2だけ離間している。そして、上記距離H1は、上記距離H2よりも短くなっており、上側ブレード25は下側ブレード26に比べて通風路20の内面に近接している。
【0034】
このように距離H1が距離H2よりも短くなっているのは次の理由による。先の図1に示したように、レジスタ12はインストルメントパネル11の上部に設けられているため、インストルメントパネル11の上面とレジスタ12の上面との間に十分な空間を確保することは難しい。一方、レジスタ12の下方には比較的広い空間があり、レジスタ12の下面を下方に広げることができるためである。このようにしてレジスタ12の内面とブレードとの距離を広げることによりブレードの可動角を大きくすることができる。
【0035】
ちなみに、中間ブレード27には、フィン22を揺動させるための図示しない操作部が設けられており、操作部に加えられた操作力は図示しない伝達機構を介してフィン22(図3(b)参照)に伝達される。そのため、全てのフィン22は、操作部が操作されることで連動して揺動される。
【0036】
次に、各ブレード25、26、27における支軸及び連結軸の設定態様について説明する。
図4(b)に示すように、中間ブレード27の第1連結軸27bは、中間ブレード27の支軸23bよりも後方であって同支軸23bよりも上方に設けられている。そして、中間ブレード27の支軸23bと第1連結軸27bとの距離である軸間距離T1は、より厳密には中間ブレード27の支軸23bの中心点である回動支点P2と第1連結軸27bの中心点である連結点Q2との距離である軸間距離T1は所定の値に設定されている。
【0037】
また、中間ブレード27の第2連結軸27cは、中間ブレード27の支軸23bよりも後方であって同支軸23bよりも下方に設けられている。そして、中間ブレード27の支軸23bと第2連結軸27cとの距離である軸間距離T3は、より厳密には中間ブレード27の回動支点P2と第2連結軸27cの中心点である連結点Q3との距離である軸間距離T3は所定の値、例えば上記軸間距離T1よりもやや長い値に設定されている。
【0038】
上側ブレード25の支軸23bは、中間ブレード27の支軸23bよりも後方に設けられている。また、上側ブレード25の連結軸25bは、同上側ブレード25の支軸23bよりも後方に設けられている。
【0039】
各ブレード25,26,27がニュートラル状態であるときに、第1連結部材28は、第2端部28bが第1端部28aよりも前方に位置するようにして傾いている。そして、上側ブレード25の支軸23bと連結軸25bとの距離である軸間距離T2は、より厳密には上側ブレード25の回動支点P1と連結軸25bの中心点である連結点Q1との距離である軸間距離T2は、上記軸間距離T1よりもやや長くされている(軸間距離T2>軸間距離T1)。すなわち、第1連結部材28によって連結された中間ブレード27及び上側ブレード25といった一対のブレードについて、それらの軸間距離T1、T2が互いに異なっており、レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25の軸間距離T2は、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の軸間距離T1に比して長くされている。このように上側ブレード25の軸間距離T2は中間ブレード27の軸間距離T1よりも長くされているために、上側ブレード25の可動角は、中間ブレード27の可動角よりも小さくなる。
【0040】
下側ブレード26の支軸23bは、中間ブレード27の支軸23bよりも前方に設けられている。また、下側ブレード26の連結軸26bは、同下側ブレード26の支軸23bよりも後方に設けられている。
【0041】
各ブレード25,26,27がニュートラル状態であるときに、第2連結部材29は、第2端部29bが第1端部29aよりも前方に位置するようにして傾いている。なお、このニュートラル状態において、中間ブレード27に対する第2連結部材29の傾斜角は、第1連結部材28の傾斜角よりも小さくなっている。逆にいえば、ニュートラル状態において、中間ブレード27に対する第1連結部材28の傾斜角は、第2連結部材29の傾斜角よりも大きくなっている。
【0042】
そして、下側ブレード26の支軸23bと連結軸26bとの距離である軸間距離T4は、より厳密には下側ブレード26の回動支点P3と連結軸26bの中心点である連結点Q4との距離である軸間距離T4は、上記軸間距離T3よりも長くされている(軸間距離T4>軸間距離T3)。すなわち、第2連結部材29によって連結された中間ブレード27及び下側ブレード26といった一対のブレードについて、それらの軸間距離T3、T4が互いに異なっており、レジスタ12の内壁に近い下側ブレード26の軸間距離T4は、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の軸間距離T3に比して長くされている。このように下側ブレード26の軸間距離T4は中間ブレード27の軸間距離T3よりも長くされているために、下側ブレード26の可動角は、中間ブレード27の可動角よりも小さくなる。
【0043】
なお、回動支点P1と回動支点P2との距離は、連結点Q1と連結点Q2との距離よりも長くされている。また、回動支点P2と回動支点P3との距離は、連結点Q3と連結点Q4との距離よりも長くされている。
【0044】
次に、第1連結部材28及び第2連結部材29を介して連結された各ブレード25、26、27の揺動態様について、先の図4〜図6を参照して説明する。
図4(a)に示すように、各ブレード25,26,27は、ニュートラル状態であるとき、空調風は吹き出し口21からその前方に向って略平行に吹き出される。そして、この状態から、中間ブレード27の下流側端部27eが最大限に上方に変位するように中間ブレード27が操作され、図5(a)に示すように、中間ブレード27がニュートラル状態から角度α1だけ傾くと、中間ブレード27の揺動に連動して、上側ブレード25はニュートラル状態から角度α2だけ傾き、下側ブレード26は角度α3だけ傾く。このとき、上側ブレード25の軸間距離T2は中間ブレード27の軸間距離T1よりも長くされており、下側ブレード26の軸間距離T4は中間ブレード27の軸間距離T3よりも長くされているため、上側ブレード25の角度α2及び下側ブレード26の角度α3は、中間ブレード27の角度α1よりも小さい。したがって、下側ブレード26の上流側端部26dが下方に変位しても通風路20の下側内面20bに干渉することはない。また、このように上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が揺動することで上側偏向状態になったときには、上側ブレード25の上流側端部25dが上側後方に向って屈曲されているため、この上流側端部25dには空調風の一部が吹き当たり、この吹き当たった空調風は上側ブレード25及び中間ブレード27の間に導かれて吹き出し口21から吹き出される。このようにして、図5(b)に矢印Uで示すように、レジスタ12から吹き出される空調風は、上方向に偏向されて着座した乗員の顔や頭部に向う。
【0045】
一方、中間ブレード27の下流側端部27eが最大限に下方に変位するように中間ブレード27が操作され、図6(a)に示すように、中間ブレード27がニュートラル状態から所定の角度β1だけ傾くと、第1連結部材28及び第2連結部材29が変位する。そして、第1連結部材28の第2端部28bが回動支点P2を中心として回動しつつ第1連結部材28が変位することで上側ブレード25を連動させる。
【0046】
このように第1連結部材28が変位する際には、ニュートラル状態において中間ブレード27に対する第1連結部材28の傾斜角が第2連結部材29の傾斜角よりも大きくなっているため、同第1連結部材28は第2連結部材29に比してさらに大きく傾いた状態になり、いわば倒れ込むような状態になる。
【0047】
そして、中間ブレード27の揺動に連動して、上側ブレード25はニュートラル状態から所定の角度β2だけ揺動し、下側ブレード26は角度β3だけ揺動する。このとき、上側ブレード25の軸間距離T2は中間ブレード27の軸間距離T1よりも長くされており、下側ブレード26の軸間距離T4は中間ブレード27の軸間距離T3よりも長くされているため、上側ブレード25の角度β2及び下側ブレード26の角度β3は、中間ブレード27の角度β1よりも小さい。特に、第1連結部材28は大きく傾いた状態になるため、上側ブレード25が下方に向かう動きは小さくなり、これにより角度β2は角度β1に比してかなり小さくなる。そのため、上側ブレード25が通風路20の上側内面20aに近接していても、中間ブレード27の上流側端部27dが上方に変位するように中間ブレード27が揺動したときに、上側ブレード25の揺動はわずかであり、その揺動に伴って、上側ブレード25の上流側端部25dがリテーナ14及び外枠15に干渉することはない。また、下側ブレード26は上側ブレード25に比して大きく揺動する。また、上側ブレード25、中間ブレード27、下側ブレード26のそれぞれの上流側端部25d,26d,27dが上側に変位するように揺動することで下側偏向状態になったときには、下側ブレード26の上流側端部26dが下側後方に向けて屈曲されているため、この上流側端部26dには空調風の一部が吹き当たり、この吹き当たった空調風は下側ブレード26及び中間ブレード27の間に導かれて吹き出し口21から吹き出される。このようにして、図6(b)に矢印Dで示すように、レジスタ12から吹き出された空調風は、下方向に偏向されて着座した乗員Pの胸部及び腹部に向う。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
(1)複数のブレードを連動させる連結部材を一対のブレード毎に設けるようにしている。より具体的には、中間ブレード27及び上側ブレード25といった一対のブレードを第1連結部材28にて連結するとともに、中間ブレード27及び下側ブレード26といった一対のブレードを第2連結部材29にて連結するようにしている。そして、ブレードの支軸と連結軸との距離である軸間距離を一対のブレードにおいて互いに異ならせるようにしている。より具体的には、中間ブレード27の軸間距離T1と上側ブレード25の軸間距離T2を異ならせるとともに、中間ブレード27の軸間距離T3と下側ブレード26の軸間距離T4を異ならせるようにしている。
【0049】
このように連結部材で連結された一対のブレードについて、支軸と連結軸との距離である軸間距離が互いに異なっているために、各ブレードの可動角がそれぞれ異なるようになる。ここで、可動角の異なる各ブレードを1本の連結部材で連結させる場合には、可動角の最も大きいブレードに合わせて連結部材を構成する必要がある。そのため、空調風の吹き出し方向の範囲を広げるにあたって連結部材の移動範囲の拡大は避けられない。
【0050】
他方、本実施形態では、一対のブレード毎に連結部材が設けられており、隣り合うブレード同士、例えば中間ブレード27及び上側ブレード25や、中間ブレード27及び上側ブレード25がそれぞれ別々の連結部材である第1連結部材28、第2連結部材29によって連結されている。そのため、ブレードの可動角に合わせて各連結部材28、29を最適化することができ、同連結部材28、29の移動範囲についても最適化することができる。従って、第1連結部材28や第2連結部材29の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0051】
(2)レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25の軸間距離T2を、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の軸間距離T1に比して長くするようにしている。またレジスタ12の内壁に近い下側ブレード26の軸間距離T4を、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の軸間距離T3に比して長くするようにしている。従って、レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25や下側ブレード26の可動角は、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の可動角よりも小さくなる。そのため、レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25に接続された第1連結部材28や、レジスタ12の内壁に近い下側ブレード26に接続された第2連結部材29の移動範囲を小さくすることができる。
【0052】
逆に、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27の可動角は、レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25や下側ブレード26の可動角よりも大きくなる。そのため、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27については空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0053】
従って、レジスタ12の内壁から離間した中間ブレード27について空調風の吹き出し方向の範囲を広げつつ、レジスタ12の内壁に近い上側ブレード25や下側ブレード26に接続された第1連結部材28及び第2連結部材29の移動範囲を小さくすることができる。
【0054】
(3)レジスタ12はインストルメントパネル11の上部に設けられているため、インストルメントパネル11の上面とレジスタ12の上面との間に十分な空間を確保することは難しい。一方、レジスタ12の下方には比較的広い空間がある。そのため、各ブレードを連動させる連結部材の移動範囲として確保可能な空間は、インストルメントパネル11の上方側に比して下方側の方が広い。
【0055】
そこで、本実施形態では、レジスタ12を次のように構成するようにしている。すなわち、複数のブレードの配列方向にあって一端側のブレードの可動角を、他端側のブレードの可動角よりも小さくするようにしている。より具体的には、レジスタ12の上下方向に配列された各ブレード25、26、27において、一端側の上側ブレード25の可動角を、他端側の下側ブレード26の可動角よりも小さくするようにしている。
【0056】
そして、インストルメントパネル11の上部側に上側ブレード25を配設し、インストルメントパネル11の下部側に下側ブレード26を配設するようにしている。このように連結部材の移動範囲として確保可能な空間が狭い側に、可動角の小さい上側ブレード25を配設することにより、連結部材(第1連結部材28)の干渉を抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる。
【0057】
(4)中間ブレード27に、第1連結軸27b及び第2連結軸27cといった複数の連結軸を設けるようにしている。従って、これら複数の連結軸についてその配設位置を変更することにより中間ブレード27の軸間距離T1や軸間距離T3を容易に変更することができる。このように軸間距離T1や軸間距離T3を容易に変更することができるため、例えば第1連結部材28で連結された上側ブレード25と中間ブレード27との軸間距離の相違量や、第2連結部材29で連結された下側ブレード26と中間ブレード27との軸間距離の相違量を容易に変更することができる。従って、各ブレード25、26、27の可動角の設計を容易に行うことも可能になる。
【0058】
(5)車両のインストルメントパネル11は内部空間にあまり余裕がなく、連結部材の移動範囲の拡大が比較的困難である。この点、本実施形態では、連結部材の移動範囲の拡大を極力抑えつつ、空調風の吹き出し方向の範囲を広げることができる上記レジスタ12をインストルメントパネル11に設けるようにしているため、インストルメントパネル11に設けられるレジスタとして好適な効果を奏することができる。
【0059】
(6)上側ブレード25の上流側端部25dは、上側後方に向かって屈曲されている。そのため、上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が上側偏向状態になったとき、上側ブレード25の上流側端部25dに吹き当たった空調風は上側ブレード25及び中間ブレード27の間を介して斜め上方に向うように吹き出し口21から吹き出るようになる。このような上流側端部25dを備えるようにしているために、空調風をより好適に上側ブレード25及び中間ブレード27の間に導入することができる。したがって、上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が上側偏向状態になったときに、より多くの空調風を上方向に偏向させることができる。
【0060】
(7)下側ブレード26の上流側端部26dは、下側後方に向けて屈曲されている。そのため、上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が下側偏向状態になったとき、下側ブレード26の上流側端部26dに吹き当たった空調風は下側ブレード26及び中間ブレード27の間を介して斜め下方に向うように吹き出し口21から吹き出るようになる。このような上流側端部26dを備えるようにしているために、空調風をより好適に下側ブレード26及び中間ブレード27の間に導入することができる。したがって、上側ブレード25、中間ブレード27、及び下側ブレード26が下側偏向状態になったときに、より多くの空調風を下方向に偏向させることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態は、以下のようにこれを適宜変更した形態にて実施することもできる。
・レジスタ12の上下方向に並設された各ブレード25、26、27において、一端側の上側ブレード25の可動角を、他端側の下側ブレード26の可動角よりも小さくするようにした。この他、上側ブレード25の可動角と下側ブレード26の可動角とを略同一にしてもよい。この場合でも、上記(1)、(2)、及び(4)の効果を得ることができる。
【0062】
・インストルメントパネル11の上面とレジスタ12の上面との間に十分な空間を確保することができる一方で、レジスタ12の下方には比較的広い空間が確保できない場合には、下側ブレード26の可動角を上側ブレード25の可動角よりも小さくするようにしてもよい。
【0063】
・上側ブレード25の可動角を下側ブレード26の可動角よりも小さくするために、各ブレード25,26,27がニュートラル状態であるときの第1連結部材28の傾斜角を第2連結部材29の傾斜角よりも大きくしておき、各ブレードを下方に傾けたときには第1連結部材28がさらに大きく傾いた状態となるようにした。しかし、この他の方法を採用するようにしてもよい。例えば、中間ブレード27の軸間距離T1と上側ブレード25の軸間距離T2との相違量D1(ただしT2>T1)を、中間ブレード27の軸間距離T3と下側ブレード26の軸間距離T4との相違量D2(ただしT4>T3)よりも大きくするようにしてもよい。このように軸間距離の調整を行うことにより、上側ブレード25の可動角を下側ブレード26の可動角よりも小さくすることができる。
【0064】
・各ブレード25、26、27の可動角をそれぞれ異ならせるようにしたが、中間ブレード27と下側ブレード26の可動角を略同一とし、上側ブレード25の可動角のみを異ならせるようにしてもよい。また、中間ブレード27と上側ブレード25の可動角を略同一とし、下側ブレード26の可動角のみを異ならせるようにしてもよい。また、上側ブレード25と下側ブレード26の可動角を略同一とし、中間ブレード27の可動角のみを異ならせるようにしてもよい。
【0065】
・上側ブレード25の上流側端部25d及び下側ブレード26の上流側端部26dを必ずしも屈曲させなくてもよい。例えば、上側ブレード25及び下側ブレード26をそれぞれ平板状にしてもよい。
【0066】
・上側ブレード25と下側ブレード26とで挟まれるように配設される中間ブレード27を複数備えるようにしてもよい。
・第1連結部材28や第2連結部材29の形状については、ブレード同士を連結できる形状であれば、その他についてはとくに限定しない。例えば、円板状でもよいし、棒状でもよい。
【0067】
・各ブレード25、26、27は、レジスタ12の上下方向に並設されていた。この他、各ブレード25、26、27をレジスタ12の左右方向に並設して、フィン22をレジスタ12の上下方向に並設するようにしてもよい。
【0068】
・リテーナ14の形状を変更してもよい。例えば、リテーナ14を四角筒状や六角筒状に形成してもよいし、円形の筒状に形成してもよい。
・外枠15の吹き出し口21の形状についてはとくに限定しない。例えば、吹き出し口21は、対向して見た場合において、六角形に形成してもよいし、円形に形成してもよい。
【0069】
・車幅方向に並べられた一対のレジスタ12を、一体に構成してもよい。
・レジスタ12は、インストルメントパネル11の上部に組み込まれていたが、その配置場所を変更してもよい。例えば、ナビゲーション装置等の下方にレジスタ12を配置してもよい。
【0070】
・本発明にかかるレジスタは、車両のインストルメントパネル用のものに限定されない。例えば、建造物の壁等に配設されるレジスタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
L…連結部材、11…インストルメントパネル、12…レジスタ、14…リテーナ、14a…開口縁部、15…外枠、18…上流側リテーナ、18a…下流側端面、19…下流側リテーナ、19a…左右壁部、19b…軸受孔、20…通風路、20a…上側内面、20b…下側内面、21…吹き出し口、22…フィン、22a…端部、22b…支軸、23…ブレード、23a…端部、23b…支軸、24…軸受凹部、25…上側ブレード、25a…端部、25b…連結軸、25d…上流側端部、26…下側ブレード、26a…端部、26b…連結軸、26d…上流側端部、27…中間ブレード、27a…端部、27b…第1連結軸、27c…第2連結軸、27d…上流側端部、27e…下流側端部、28…第1連結部材、28a…第1端部、28b…第2端部、28c…嵌入孔、28d…嵌入孔、29…第2連結部材、29a…第1端部、29b…第2端部、29c…嵌入孔、29d…嵌入孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路に複数のブレードが設けられており、前記ブレードには回動中心となる回動支点部と連結部材が接続される連結部とが設けられており、複数の前記ブレードの通風路に対する角度が前記連結部材によって連動して変更されることにより前記通風路から吹き出される空調風の方向を変更可能なレジスタにおいて、
前記連結部材は、一対の前記ブレード毎に設けられており、
前記回動支点部と前記連結部との距離である軸間距離が前記一対のブレードにおいて互いに異なる
ことを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
当該レジスタの内壁に近い前記ブレードの前記軸間距離は、前記内壁から離間した前記ブレードの前記軸間距離に比して長くされている
請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
複数の前記ブレードの配列方向にあって一端側の前記ブレードの可動角は、他端側の前記ブレードの可動角よりも小さくされている
請求項1または2に記載のレジスタ。
【請求項4】
前記ブレードには複数の前記連結部が設けられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載のレジスタ。
【請求項5】
当該レジスタは車両のインストルメントパネルに設けられるレジスタである
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51385(P2011−51385A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199761(P2009−199761)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】