説明

レジスト塗布装置およびそれに具備される吐出ノズル

【課題】吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを、該吐出ノズルからのレジストミストの流れに影響を与えることなく、充分に吸収することができるレジスト塗布装置を提供する。
【解決手段】被処理基板30の上面に、吐出ノズル20をその中心軸が該被処理基板30の面に対してほぼ垂直となるように配置させ、該吐出ノズル20を通して供給されるレジストミストを、該被処理基板30の表面に対してほぼ垂直方向から噴出させるように構成し、かつ、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズル21を、前記吐出ノズル20の周辺の少なくとも一部に設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジスト塗布装置およびそれに具備される吐出ノズルに係り、特に、霧状のレジストを噴出させることによって被処理基板上にレジストの塗布を行うレジスト塗布装置およびそれに具備される吐出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレジスト塗布装置は、たとえば下記特許文献1に記載されているように、被処理基板(たとえば水晶ウェハ)の上面に、吐出ノズルをその中心軸が該被処理基板の面に対してほぼ垂直となるように配置させ、該吐出ノズルを通して供給される霧状の粒子からなるレジスト(以下、レジストミストと称する)を該被処理基板の表面に対してほぼ垂直方向から噴出させることによって、該被処理基板上にレジストを塗布するように構成されている。ここで、吐出ノズルは、被処理基板に対して相対移動できるようになっており、被処理基板の表面をレジストが塗布されるラインが近接されるようにスキャンされ、これにより、被処理基板上に膜厚が均一なレジスト膜を形成することができるようになっている。
【0003】
なお、本発明に関連する技術として、たとえば下記特許文献2に記載された薄膜形成装置が知られている。該特許文献2には、被処理基板上にノズルヘッドを備え、このノズルヘッドは、このノズルヘッドの中心軸を含む平面内に、被処理基板の表面の垂線に対して鋭角をなすように延設された噴出ノズルと吸引ノズルとが具備され、レジストミストを前記噴出ノズルを通して被処理基板面のレジスト塗布領域に噴出させ、該レジスト塗布領域から飛散した余剰レジストミストを前記吸引ノズルを通して回収する旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-058628号公報
【特許文献2】特開2002-346453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたレジスト塗布装置の場合、吐出ノズルから噴出されるレジストミストは、吐出ノズルの先端付近において水平方向にも漂い、吐出ノズルの周辺に浮遊するようになる。
【0006】
この場合、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストは、その粒子径が小さいこともあり、極めて乾燥し易く、乾燥された状態で被処理基板面に付着されることになる。
【0007】
このように、乾燥したレジストミストが被処理基板面に付着されると、その後、該被処理基板に形成されたレジスト(レジスト膜)に露光、現像等を行う際に、それら露光、現象を精度よく行うことが困難となり、被処理基板の表面における微細加工を充分に行うことができないという不都合を有する。
【0008】
この場合、特許文献2に示す技術において、ノズルヘッドの周辺に浮遊するレジストミストを吸引ノズルによっても除去できるように思われる。
【0009】
しかし、特許文献2に示す吸引ノズルは、被処理基板の表面の垂線に対して傾いて配設される噴出ノズルから噴出されるレジストミストのうち被処理基板に塗布後の飛散されたレジストミストを回収する目的のために設けられたものであり、たとえば、噴出ノズルの先端、被処理基板のレジスト塗布領域、および吸引ノズルの先端を結ぶ経路から外れた部分(たとえば噴出ノズルの吸引ノズルと反対側の部分)に浮遊するレジストミストを充分に吸収できないという不都合を有したものとなっている。
【0010】
また、特許文献2に示す吸引ノズルは、上述したように、被処理基板の表面の垂線に対して傾いて配設される噴出ノズルから噴出されるレジストミストのうち被処理基板に塗布した後に、被処理基板から跳ね返って飛散される余りのレジストミストを、吸引して回収する目的のために設けられたものである。このため、吸引ノズルの吸引力を比較的大きくせざるを得ず、これによって、噴出ノズルからのレジストミストの流れに影響を与えてしまうという不都合を有したものとなっている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを、該吐出ノズルからのレジストミストの流れに影響を与えることなく、充分に吸収することができるレジスト塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、被処理基板の上面に、吐出ノズルをその中心軸が該被処理基板の面に対してほぼ垂直となるように配置させ、該吐出ノズルを通して供給されるレジストミストを、該被処理基板の表面に対してほぼ垂直方向から噴出させるように構成し、かつ、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズルを、前記吐出ノズルの周辺の少なくとも一部に設けるようにしたものである。
【0013】
このように構成することによって、吸引ノズルは、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを吸引する目的で構成されるものであり、その配置は、吐出ノズルに最も近接した箇所においてなされていることから、該吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを充分に吸収できるようになる。この場合、吐出ノズルは、レジストミストを被処理基板の表面に対してほぼ垂直方向から噴出させるようにしていることから、レジストミストは該吐出ノズルを中心として周囲に浮遊し、吸引ノズルは、該レジストミストの浮遊範囲のほぼ中心に配置されることから、該レジストミストを効率よく吸収できるようになる。
【0014】
また、吸引ノズルは、上述したように、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを吸引する目的で構成されるものであることから、吸引ノズルの吸引力を大きくすることなく、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストを吸引させることができる。このため、吐出ノズルから噴出されるレジストミストを、たとえば特許文献2に示すように多量に吸引する必要がなく、したがって、吐出ノズルからのレジストミストの流れに影響を与えてしまうようなことを回避させることができるようになる。
【0015】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のレジスト塗布装置は、被処理基板の上面にレジストミストを噴出させる吐出ノズルを備えるレジスト塗布装置であって、前記吐出ノズルは、その中心軸が前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直となるように配置され、前記吐出ノズルを通して供給される前記レジストミストを、前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直方向から噴出させるように構成され、かつ、前記吐出ノズルの周囲に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズルが、前記吐出ノズルの周辺の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする。
(2)本発明のレジスト塗布装置は、(1)の構成において、前記吸引ノズルは、前記吐出ノズルの周辺を囲んで設けられていることを特徴とする。
(3)本発明のレジスト塗布装置は、(2)の構成において、前記吐出ノズルおよび吸引ノズルは、径の小さな第1筒体と径の大きな第2筒体を同心状に配置させて構成し、前記第1筒体を吐出ノズルとして機能させ、前記第1筒体と前記第2筒体を 吸引ノズルとして機能させることを特徴とする。
(4)本発明のレジスト塗布装置は、(3)の構成において、前記被処理基板に対向する前記第1筒体の先端と前記被処理基板との距離は、前記被処理基板に対向する第2筒体の先端と前記被処理基板との距離よりも大きく形成されていることを特徴とする。
(5)本発明のレジスト塗布装置は、(3)の構成において、前記被処理基板に対向する第1筒体の先端と前記被処理基板との距離は、前記被処理基板に対向する第2筒体の先端と前記被処理基板との距離よりも小さく形成されていることを特徴とする。
(6)本発明のレジスト塗布装置は、(3)あるいは(5)の構成において、前記第2筒体の先端は、前記第1筒体との間に隙間を確保して、前記第2筒体の中心軸の側に鋭角で屈曲する屈曲部が形成されていることを特徴とする。
(7)本発明のレジスト塗布装置は、(1)の構成において、吐出ノズルから噴出されるレジストミストを帯電させる電極針が少なくとも前記吐出ノズルの先端に設けられていることを特徴とする。
(8)本発明の吐出ノズルは、レジスト塗布装置に具備され、被処理基板の上面にレジストミストを噴出させる吐出ノズルであって、中心軸が前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直となるように配置され、前記吐出ノズルを通して供給される前記レジストミストを、前記被処理基板の上面に対して垂直方向から噴出させるように構成され、かつ、前記吐出ノズルの周囲に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズルが、前記吐出ノズルの周辺の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする。
(9)本発明の吐出ノズルは、(8)の構成において、前記吸引ノズルは、前記吐出ノズルの周辺を囲んで設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成したレジスト塗布装置によれば、吐出ノズルの周辺に浮遊するレジストミストを、該吐出ノズルからのレジストミストの流れに影響を与えることなく、充分に吸収することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のレジスト塗布装置の実施態様1における吐出ノズルの構成を示す図である。
【図2】本発明のレジスト塗布装置の概略を示す構成図である。
【図3】本発明のレジスト塗布装置の実施態様2における吐出ノズルの構成を示す図である。
【図4】本発明のレジスト塗布装置の実施態様3における吐出ノズルの構成を示す図である。
【図5】本発明のレジスト塗布装置の実施態様4における吐出ノズルの構成を示す図である。
【図6】本発明のレジスト塗布装置の実施態様5における吐出ノズルの構成を示す図である。
【図7】本発明のレジスト塗布装置の実施態様6における吐出ノズルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
<レジスト塗布装置の概略構成>
図2は、本発明のレジスト塗布装置の全体を示す概略構成図である。図2に示すレジスト塗布装置は、たとえば水晶振動子の製造に用いられるレジスト塗布装置を例として挙げている。
【0019】
図2において、まず、レジスト容器10がある。レジスト容器10は、たとえば円柱状の容器本体10Aと、この容器本体10Aの上方の開口を密閉する蓋体10Bとから構成されている。容器本体10Aにはレジスト液11が収納され、蓋体10Bにはアトマイジングスプレーノズル12が設けられている。
【0020】
アトマイジングスプレーノズル12は、注入管13からのたとえば窒素(N)の加圧ガスによって、吸入管14から吸い上げたレジスト液11をレジスト容器10内に霧状(粒子状)に噴霧するようになっている。このような動作は、アトマイジングスプレーノズル12に設けられたたとえば空気シリンダ(図示せず)等を用いたスイッチ機構によってなされるようになっている。なお、レジスト容器10内では、粒径の大きいレジスト粒子(図中符号Pで示す)はレジスト液11中に落下し、粒径の小さいレジスト粒子(図中符号Qで示す)からなるレジストミストのみが蓋体10Bに設けられた流出口15から排出されるようになっている。
【0021】
レジスト容器10の蓋体10Bに設けられた流出口15は可撓性のホース16を介して吐出ノズル20に連結されている。吐出ノズル20は、たとえば水晶ウェハからなる被処理基板30を載置するx−yステージ40の上方において定位置に配置され、その中心軸が該被処理基板30の上面に対してほぼ垂直となるとともに、先端が該被処理基板30に対向するように配置されている。これにより、吐出ノズル20に供給されるレジストミストは、吐出ノズル20の先端から被処理基板30の上面に対してほぼ垂直方向へ噴出されるようになっている。
【0022】
吐出ノズル20からレジストミストが噴出される際は、x−yステージ40はx方向およびy方向に水平移動し、吐出ノズル20は被処理基板30の表面をレジストが塗布されるラインが近接されるようにスキャンされ、これにより、被処理基板30上に膜厚が均一なレジスト膜が形成されるようになっている。
なお、x−yステージ40と吐出ノズル20は、必ずしも上述した構成に限定されることはなく、ステージ40を固定させ、吐出ノズル20がx方向およびy方向に水平移動させることによって、被処理基板30上にレジスト膜を形成するようにしてもよい。
【0023】
なお、吐出ノズル20は、後の説明において明らかとなるように、吸引ノズル(図1において符号21で示す)が具備され、この吸引ノズル21は可撓性のホース17を介して吸気手段50に接続されている。
<吐出ノズル>
図1(a)、(b)は、前記吐出ノズル20を拡大して示した図である。図1(a)は吐出ノズル20の側面図、図1(b)は吐出ノズル20を先端側から観た平面図である。図1(a)では、吐出ノズル20の構造を明瞭に理解できるように、その部分を断面で描いている。なお、図1(a)においては、図2に示したx−yステージ40、被処理基板30をも併せ描いている。
【0024】
図1(a)、(b)に示すように、吐出ノズル20は、第1筒体20Aによって構成され、該第1筒体20Aの中心軸が被処理基板30の上面に対してほぼ垂直となるように配置され、この吐出ノズル20を通して前記レジスト容器10から供給されるレジストミストを、被処理基板30の上面に対してほぼ垂直方向(図中矢印α方向)から噴出させるように構成されている。
【0025】
そして、第1筒体20Aによって構成される吐出ノズル20の外周には吸引ノズル21が形成されている。すなわち、第1筒体20Aの外周に該第1筒体20Aよりも径が大きい第2筒体21Aが該第1筒体20Aとほぼ同心状に配置され、吸引ノズル21は第1筒体20Aと第2筒体21Aとで構成されるようになっている。
【0026】
この実施態様1の場合、第1筒体20Aと第2筒体21Aのそれぞれの先端(被処理基板30と対向する端部)は、被処理基板30と平行な面内で面一となっており、第1筒体20Aと第2筒体21Aとの間に形成される円環状の貫通孔を通して前記吸気手段50によって吸気を行うことによって、第1筒体20Aと第2筒体21Aは吸引ノズルとして機能できるようになっている。
【0027】
この吸気ノズル21は、吐出ノズル20から噴出されて被処理基板30に付着するレジストミストの他に、吐出ノズル20の先端付近において水平方向にも漂って吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを図中矢印βで示すように吸引するようになっている。このようにすることによって、浮遊によって乾燥され易いレジストミストが被処理基板面に付着されてしまうことを回避することができるようになる。この場合、吸引ノズル21は、吐出ノズル20に最も近接した箇所においてなされていることから、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを充分に吸収できるようになる。また、吐出ノズル20は、レジストミストを被処理基板30の表面に対してほぼ垂直方向から噴出させるようにしていることから、レジストミストは吐出ノズル20を中心として周囲に浮遊し、吸引ノズル21は、レジストミストの浮遊範囲のほぼ中心に配置されることから、該レジストミストを効率よく吸収できるようになる。さらに、吸引ノズル21は、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを吸引する目的で構成されるものであることから、吸引ノズル21の吸引力を大きくすることなく、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストを吸引させることができる。このため、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストの吸引(図中矢印γで示す)を大幅に少なくでき、吐出ノズル20からのレジストミストの流れに影響を与えてしまうような不都合を回避できるようになる。
【0028】
また、この実施態様1の場合、吐出ノズル20の先端には電極針60が形成されている。この電極針60は、たとえば、被処理基板30が+電位に保持されるのに対し−電位に保持され、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストを帯電(イオン化)させ、+電位に保持された被処理基板30側に吸引され易く構成されている。なお、電極針60は、複数個(図ではたとえば3個:それぞれ符号60A、60B、60Cで示す)有し、吐出ノズル20の先端の周囲に等間隔に設けられるようにすることにより、各電極針60A、60B、60Cによる効果を均一に及ぶようにしている。このように吐出ノズル20の先端に電極針60を設けることにより、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストを被処理基板30側へ短距離で導き易くでき、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを少なくできるようになる。このため、吸引ノズル21における吸引力を小さくすることができ、吐出ノズル20から噴出するレジストミストの流れに影響を与えることを回避できる効果を奏する。
(実施態様2)
図3は、本発明によるレジスト塗布装置の実施態様2を示す構成図で、図1(a)に対応づけて描いた図である。なお、図3においては、吐出ノズル20、吸引ノズル21の構成を明瞭に示すため、実施態様1に示した電極針60を省略して示している。
【0029】
図3において、図1と比較した場合の異なる構成は、被処理基板30に対向する第1筒体20Aの先端と被処理基板30との距離が、被処理基板30に対向する第2筒体21Aの先端と被処理基板30との距離よりも小さく形成されていることにある。
【0030】
このように構成した場合でも、実施態様1で示したとほぼ同様の効果を得ることができるようになる。しかし、実施態様1の場合と比較した場合、吸引ノズル21の吸引口の面積を広く構成でき、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを多く吸引できる効果を奏する。一方、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストの吸引(図中矢印γ’で示す)は若干抑制されるようになることから、吐出ノズル20から噴出するレジストミストの流れに影響を与えることをより回避できるようになる。
(実施態様3)
図4は、本発明によるレジスト塗布装置の実施態様3を示す構成図で、図1(a)に対応づけて描いた図である。なお、図4においても、吐出ノズル20、吸引ノズル21の構成を明瞭に示すため、実施態様1に示した電極針60を省略して示している。
【0031】
図4において、図1と比較した場合の異なる構成は、被処理基板30に対向する第1筒体20Aの先端と被処理基板30との距離が、被処理基板30に対向する第2筒体21Aの先端と被処理基板30との距離よりも大きく形成されていることにある。
【0032】
このように構成した場合でも、実施態様1で示したと同様の効果を得ることができるようになる。しかし、実施態様1の場合と比較した場合、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストは、図中矢印γで示すように、第2筒体21Aによって吐出ノズル20の先端の周囲に浮遊するのを妨げられるとともに、即、吸引ノズル21によって吸引される効果を奏するようになる。また、レジストミストが吐出ノズル20の先端の周囲に浮遊するようなことがあっても、これらのレジストミストは、図中矢印β’で示すように、吸引ノズル21によって吸引できるようになる。
(実施態様4)
図5は、本発明によるレジスト塗布装置の実施態様4を示す構成図で、図3に対応づけて描いた図である。なお、図5においても、吐出ノズル20、吸引ノズル21の構成を明瞭に示すため、実施態様1に示した電極針60を省略して示している。
【0033】
図5において、図3の場合と比較して異なる構成は、第2筒体21Aの先端が、第1筒体20Aとの間に隙間Gを確保して、第2筒体21Aの中心軸の側に鋭角θ(0°<θ<90°)で屈曲する屈曲部が形成されていることにある。
【0034】
このように構成した場合、第1筒体20Aと第2筒体21Aとの間の隙間Gが小さくなるが、吸引ノズル21による吸引の速度が大きくなることから、吐出ノズル20の先端の周囲に浮遊されたレジストミストを吸引し易くなる効果を奏するようになる。
(実施態様5)
図6は、本発明によるレジスト塗布装置の実施態様5を示す構成図で、図4に対応づけて描いた図である。なお、図6においても、吐出ノズル20、吸引ノズル21の構成を明瞭に示すため、実施態様1に示した電極針60を省略して示している。
【0035】
図6において、図4の場合と比較して異なる構成は、第2筒体21Aの先端が、第1筒体20Aとの間に隙間Gを確保して、第2筒体21Aの中心軸の側に鋭角θ(0°<θ<90°)で屈曲する屈曲部が形成されていることにある。
【0036】
この場合、第2筒体21Aの先端と被処理基板30との距離が、第1筒体20Aの先端と被処理基板30との距離よりも大きく形成されていることから、第2筒体21Aの屈曲部がガイド機能を有するようになり、吐出ノズル20から噴出されるレジストミストのうち吐出ノズル20の先端の周囲に浮遊しようとするレジストミストを吸引ノズル21側に導き易くなるという効果を奏するようになる。
(実施態様6)
図7は、本発明によるレジスト塗布装置の実施態様6を示す構成図で、図1(b)に対応づけて描いた図である。なお、図7においても、吐出ノズル20、吸引ノズル21の構成を明瞭に示すため、実施態様1に示した電極針60を省略して示している。
【0037】
図7において、図1(a)の場合と比較して異なる構成は、第1筒体20Aと第2筒体21Aとで構成される吸引ノズル21は、第1筒体20Aと第2筒体21Aの間に形成されたたとえば4個の隔壁23によって分割された4個の吸引ノズル21(図中21a、21b、21c、21dで示す)を有するように構成してもよい。このようにすることによって、吐出ノズル20の周囲には、複数の吸引ノズル21a、21b、21c、21dが周方向に沿って並設されるように構成される。
【0038】
そして、各吸引ノズル21は、必ずしも吐出ノズル20の周方向に沿って隣接して配置されることはなく、たとえば図7において、吸引ノズル21aと吸引ノズル21cのみを形成するようにしたり、あるいは吸引ノズル21bと吸引ノズル21dのみを形成するようにしてもよい。また、さらには、吸引ノズル21aのみあるいは吸引ノズル21bというように1個だけ設けるようにしてもよい。
(実施態様7)
上述した各実施態様1ないし5では、吐出ノズル20の先端に、該吐出ノズル20から噴出されるレジストミストをイオン化させる電極針60を設けたものとして説明したものである。しかし、本発明は、吐出ノズル20の先端に電極針60が設けられていないものにも適用できることはいうまでもない。
(実施態様8)
上述した各実施態様1ないし7では、本発明のレジスト塗布装置は、水晶振動子の製造の際に用いられるものを例として挙げたものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば半導体素子等の他の素子の製造の際に用いられるレジスト塗布装置にも適用できることはいうまでもない。
【0039】
以上説明したことから明らかとなるように、本発明によるレジスト塗布装置によれば、吐出ノズル20の周辺に浮遊するレジストミストを、該吐出ノズル20からのレジストミストの流れに影響を与えることなく、充分に吸収することができるようになる。
【0040】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
10……レジスト容器、10A……容器本体、10B……蓋体、11……レジスト液、12……アトマイジングスプレーノズル、13……注入管、14……吸入管、15……流出口、16、17……ホース、20……吐出ノズル、20A……第1筒体、21……吸引ノズル、23……隔壁、30……被処理基板、40……x−yステージ、50……吸気手段、60……電極針。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の上面にレジストミストを噴出させる吐出ノズルを備えるレジスト塗布装置であって、
前記吐出ノズルは、その中心軸が前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直となるように配置され、前記吐出ノズルを通して供給される前記レジストミストを、前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直方向から噴出させるように構成され、かつ、前記吐出ノズルの周囲に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズルが、前記吐出ノズルの周辺の少なくとも一部に設けられていることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記吸引ノズルは、前記吐出ノズルの周辺を囲んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
前記吐出ノズルおよび吸引ノズルは、径の小さな第1筒体と径の大きな第2筒体を同心状に配置させて構成し、前記第1筒体を吐出ノズルとして機能させ、前記第1筒体と前記第2筒体を吸引ノズルとして機能させることを特徴とする請求項2に記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記被処理基板に対向する前記第1筒体の先端と前記被処理基板との距離は、前記被処理基板に対向する第2筒体の先端と前記被処理基板との距離よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項3に記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記被処理基板に対向する第1筒体の先端と前記被処理基板との距離は、前記被処理基板に対向する第2筒体の先端と前記被処理基板との距離よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項3に記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
前記第2筒体の先端は、前記第1筒体との間に隙間を確保して、前記第2筒体の中心軸の側に鋭角で屈曲する屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項3あるいは5に記載のレジスト塗布装置。
【請求項7】
吐出ノズルから噴出されるレジストミストを帯電させる電極針が少なくとも前記吐出ノズルの先端の周囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項8】
レジスト塗布装置に具備され、被処理基板の上面にレジストミストを噴出させる吐出ノズルであって、
中心軸が前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直となるように配置され、前記吐出ノズルを通して供給される前記レジストミストを、前記被処理基板の上面に対してほぼ垂直方向から噴出させるように構成され、かつ、前記吐出ノズルの周囲に浮遊するレジストミストを吸引するための吸引ノズルが、前記吐出ノズルの周辺の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする吐出ノズル。
【請求項9】
前記吸引ノズルは、前記吐出ノズルの周辺を囲んで設けられていることを特徴とする請求項8に記載の吐出ノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115232(P2013−115232A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260050(P2011−260050)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】