レジンコンクリート製構造体及びその製造方法
【課題】 プレス成型加工により容易に形成し得る高品質なレジンコンクリート製構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条を少なくとも2以上形成する。
【解決手段】 レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条を少なくとも2以上形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路、工業用水槽等の蓋体等として用いて好適なレジンコンクリート製構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用水路等に用いられる蓋体は、特許文献1に示すように、上下に樹脂含浸繊維性不織布等の強化層が形成された板状のレジンコンクリート板からなり、断面U字形状の側溝の上面に蓋体として設置されるもの、特許文献2に示すように、内部に強化用の鉄筋を幅方向に埋め込んだコンクリート製の板から構成され、当該板を断面U字形状の側溝の上面に設置するものが用いられている。
【0003】
これらの蓋体は、何れも裏面側において左右方向(幅方向)に縦断面角形の突条が一定間隔を以って複数本設けられており、これらの突条により蓋体の構造的な強度を確保する構造であった。
【0004】
【特許文献1】実開昭54−106657号
【特許文献2】特開平8−270061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の蓋体は、金型にコンクリート材料を流し込み、或いは上下プレス成型等により形成されるが、裏面側に上記突条を形成するには上記突条部分に対応する金型に雌型凹部を形成し、プレス成型時においては当該雌型凹部の内部に確実にコンクリート材料を充填する必要がある。
【0006】
しかしながら、角形の雌型凹部は底部が狭く、底部に対してその四方壁面が垂直に近い角度で立ち上がっているので、金型の平面部分(蓋体の裏面部分)に対して雌型凹部の底面の周縁等にコンクリート材料を万遍なく行き渡らせることが容易でなく、品質の高い構造体を一体成型しようとすると、プレス加工におけるコンクリート材料の選定、プレス圧力、温度等の条件設定が複雑となるという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、プレス成型加工により容易に形成し得る高品質なレジンコンクリート製構造体及びプレス加工時にレジンコンクリート材料を満遍なく行き渡らせることができ、容易に高品質の構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているものであることを特徴とするレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0009】
上記レジンコンクリート製構造体は例えば蓋体(1)として形成することができる。上記突条の縦断面形状の一周期は例えば図3(a)のTの場合とT’の場合の両方を含む概念である。また一面とは例えば上記蓋体(1)の下面(1b)をいう。
【0010】
第2に、上記構造体の上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続して形成されているものであることを特徴とする上記第1の発明記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0011】
第3に、上記突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部は、その縦断面形状において上記突条の1/4周期であることを特徴とする上記第1又は2の発明記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0012】
このように構成すると、複数の構造体をそれらの各縁部を接合した状態で連設すると、該接合部間における突条の縦断面形状を1/2周期の弧状凹部とすることができ、例えば水路の嵩上部材として上記弧状凹凸部とは逆位相の一定周期の弧状凹凸部を設けるだけで、水路の上を密閉することができる。
【0013】
第4に、上記弧状凸部内に上記突条に沿って鉄筋又は中空パイプを埋設したものであることを特徴とする上記第1〜3の発明の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0014】
第5に、断面略U字形状の水路の対向壁の両方の上面に、上記レジンコンクリート製構造体の下面の突条とは逆位相の突条を形成し、上記レジンコンクリート製構造体の上記一面側を以って上記水路上面を閉鎖した状態で、上記レジンコンクリート製構造体の上記突条と上記対向壁上の上記突条とが嵌合するように構成したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体を使用した構造物により構成される。
【0015】
このように、上記水路の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、レジンコンクリート製構造体で水路を完全に閉鎖すると共に、上記構造体のずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を使用した構造物を実現し得る。
【0016】
第6に、方形板状の構造体の一面に該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体であって、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているレジンコンクリート製構造体の製造方法であって、上記構造体の上記一面の上記複数の突条に対応する突条成型用雌型が形成された第1の押型と、当該第1の押型に対向配置され上記構造体の他面に対応する第2の押型とを設け、上記両押型間にレジンコンクリート材料を介挿した状態で上記両押型を嵌合させることにより、上記両押型間に上記方形板状の構造体をプレス成型することを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0017】
このように構成すると、突条成型用雌型は緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料を上記雌型に均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体を製造することができる。
【0018】
第7に、上記第6の発明記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、上記レジンコンクリート製構造体は、上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続突条として形成されており、上記第1の押型は上記連続突条に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0019】
第8に、上記第6の発明記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、上記レジンコンクリート製構造体は、その突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部が、その縦断面形状において上記突条の1/4周期となるように形成されており、上記第1の押型は上記縁部に連なる上記弧状凹部に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0020】
第9に、上記両押型の両方又は何れか一方に加熱手段を設け、上記両押型によるプレス成型時に上記加熱手段により上記両押型間の材料を加熱することを特徴とする上記第6〜8記載の発明の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0021】
このように構成すると、加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように、構造体の一面に形成された突条がなめらかに連続する波形状であるため、プレス成型時に押型全体に均等に材料を容易に馴染ませることができ、突条を含めて均質で高精度のレジンコンクリート製構造体を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係るコンクリート構造体を複数接続すると、下面の突条が接合部においても同一周期で連続するので、例えば水路等の対向壁上面を同一周期の突条とすることで、水路等を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じない蓋体として使用することができる。
【0024】
また、水路等の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、側溝を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を具備した構造物を実現し得る。
【0025】
また、プレス成型に用いられる突条成型用雌型は緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料を上記雌型に均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0026】
また、プレス加工時に加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係るレジンコンクリート製構造体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係るレジンコンクリート製構造体の斜視図、図2(a)はその平面図、図2(b)はその側面図であり、これらの図において、1は、レジンコンクリート製構造体としての方形板状の蓋体であり、平面視形状は長方形状又は正方形状をなし、平面状の上面1aと左右方向(矢印A方向)には直線的に長く伸び、縦方向(矢印B方向)には縦断面波形状をなす複数の略円筒状の突条2が形成された下面1bとから構成されている。
【0029】
上記突条2の左右端は、当該蓋体1の左右端面1d,1dまで達しており、当該蓋体1の左右端面1d,1dの下部は上記突条2による波形状2’を形成している。また、上記蓋体1の前後端面は上記上面1aを形成する一定厚tの縁部1c,1cが前後方向に突出形成されており、複数の蓋体1を縦方向に順次水平に並列してゆくとき、隣接する蓋体1の縁部1c,1c同士が隙間なく接触し得るように構成されている。
【0030】
上記上面1aには滑り止め用の棒状小突部3が縦横に交互に90度ずつ角度を変えながら左右方向(矢印A方向)に順次膨出形成されており、横方向に形成された棒状小突部3の列3aが並列状態で順次形成されている。上記棒状小突部3は図面上は一部しか描いていないが、上記列3aが縦方向に全体に設けられており、これにより上記棒状小突部3は上記上面1aの全体に、均等密度で分布するように形成されている。
【0031】
上記突条2の1周期をTとすると、その1条は略筒形状であるが、その1条の突条2の縦断面形状(図3(a)における1周期Tの形状)は、水平線pを基準として、所定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部2Aが形成され、さらにその弧状凸部2Aの両端において、上記弧状凸部2Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部2B,2Bが形成され、上記弧状凸部2Aと上記弧状凹部2B,2Bは、両円弧2A,2Bの接線が重なり合う点a,aにおいて接続された形状をなしている。尚、上記水平線pは、弧状凸部2Aの振幅(凸部の最大長さ)h(半円の場合は半径)と弧状凹部2Bの振幅(凹部の最大長さ)h(半円の場合は半径)が同一となる位置の水平線をいう。
【0032】
また、上記突条2の1周期を上記Tとは位相のずれたT’(=T)とすると、その1条の突条2の縦断面形状(図3における1周期T’の形状)は、水平線pを基準として、所定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部2Aが形成され、その弧状凸部2Aの一端において、上記弧状凸部2Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部2Bが形成され、上記弧状凸部2Aと上記弧状凹部2Bは、両円弧2A,2Bの接線が重なり合う円弧上の点aにおいて接続された形状をなしている。何れの場合も、一周期をTとみるかT’とみるかの違いであり、弧状凸部2Aと弧状凹部2Bの構成は変わらない。
【0033】
また、上記突条2によって構成される1周期T(又はT’)の縦断面形状は、いわゆる正弦波形となるように構成しても良い。
【0034】
このような縦方向断面の稜線は、全体としてみると、一定の周期T又はT’を有する波形が連続する波形状の面を成しており、下面1b全体をみると、平面部分が全く存在せず、上記弧状凸部2Aを形成する下向き円弧柱と、上記弧状凹部2Bを形成する上向き円弧柱が交互に繰り返す形状、或いは、突条2が一定周期Tで連続して連続突条として形成された形状となっている。従って、上記下面1bは前後方向にはなめらかな湾曲面の連続であり、平面的な部分、或いは角部の存在しない形状となっている(図8(a)参照)。
【0035】
また、上記蓋体1の前後の縁部1c,1cは、上記弧状凹部2Bの円弧の半分の位置(T/4の位置)に縁部1cが位置するように構成する。このように構成することにより、同一の蓋体1の縁部1c同士を水平に接続した状態においては、図4に示すように、隣接する縁部1c,1cの弧状凹部2B,2Bの円弧部分が連続して、隣接する蓋体1の縁部1c,1cを接続することにより、1つの弧状凹部2B(T/2)が形成されるため、縦方向に蓋体1を連続して接続することによって、弧状凸部2Aと弧状凹部2Bを途切れなく連続させることができるように構成されている。
【0036】
尚、本実施形態の蓋体1は、図1に示すように縦方向(矢印B方向)には上記突条2が6条形成されたものが一単位であり、左右方向(矢印A方向)は例えば側溝の幅に応じて各種の長さとすることができる。勿論、縦方向においても各種の長さのもの、或いは突条2の数も各種のものを構成することができる(図12参照)。また、上記突条2の振幅は上記hに限定されず、例えば図3(a)の二点鎖線qに示すようにより振幅の小さい形状でもよいし、より大きな振幅の突条2でも良い。
【0037】
4は、上記突条2の内部に該突条2に沿って埋設された補強用の鉄筋であり、上記本実施形態のものでは、6条の突条2の内、両端の突条2,2と中央の隣接する2つの突条2,2の計4条の突条2の内部に上記鉄筋4が埋設されている。
【0038】
上記レジンコンクリート製の蓋体1は、一例として、縦方向(矢印B方向)の長さが500mm、横方向(矢印A方向)の長さが750mm、板厚tが12mm、突条2の高さ(振幅)2h(h×2)が22mmとするが、勿論これに限定されない。また、レジンコンクリートの材料は、結合材として不飽和ポリエステル樹脂、砕石等の骨材、充填材としてのガラス繊維等により構成され、後述のプレス成型により一体的に成型されるものである。
【0039】
図5は、上記蓋体1を農業用、ダム用等の水路に使用する場合を示す断面略U字形状の水路(レジンコンクリート製構造体を使用した構造物)5の斜視図である。同図において、断面略U字状の水路5の対向壁5a,5aの両上縁部には、これら両上縁部と同一幅の嵩上部材6,6が各々固定されており、これら嵩上部材6,6の各上面の長手方向には、上記蓋体1の上記下面1bの上記突条2(弧状凸部2A、弧状凹部2B)とは凹凸の順序(位相)を逆転した縦断面同一形状の突条6’,6’(弧状凹部6A,弧状凸部6B)が連続的に切れ目なく形成されている。
【0040】
これら突条6’,6’の長手方向の稜線の形状は、上記蓋体1の弧状凸部2A及び弧状凹部2Bと同一の曲率半径を有する弧状凸部6Bと弧状凹部6Aから構成されており、その凹凸の順序が上記蓋体1の下面1bとは逆になるように構成されている。
【0041】
尚、上記蓋体1の左右幅は上記水路5の上記嵩上部材6,6の左右方向の幅に一致するように構成する。また、上記嵩上部材6,6を使用せず上記対向壁5a,5a上面に上記突条6’,6’を一体的に形成しても良い。
【0042】
このように構成することにより、上記水路5の上面に上記蓋体1をその下面1bを下側にして被せると、上記蓋体1の下面1bの突条2の弧状凸部2Aと弧状凹部2Bが、上記水路5の上記突条6’,6’の弧状凹部6Aと弧状凸部6Bに各々嵌合し、上記蓋体1の突条2と上記水路5の突条6’,6’が隙間なく接合することによって、上記蓋体1を上記水路5上に嵌合状態で載置固定することができる。
【0043】
そして、蓋体1を上記水路5の上面に載置した後、隣接して他の蓋体1を上記水路5の上面に載置して、既設の蓋体1の縁部1cに隣接して載置した蓋体1の縁部1cを隙間なく接触させる。このように構成すると、当該隣接する蓋体1,1の縁部1c,1cが接触することで、当該縁部1c,1c(接合部S)に位置する2つの弧状凹部2B(1/4周期)が一体となって1/2周期の弧状凹部2Bを形成するため(図4参照)、隣接する蓋体1の接続部S(図4参照)においてもその突条2を上記水路5の弧状凹凸部6A,6Bに隙間なく嵌合させることができ、結果として水路5の上記嵩上部材6,6に上記蓋体1を隙間なく載置固定することができる。これにより、水路5内への塵、落葉、昆虫等の進入を阻止することができる。
【0044】
また、上記蓋体1の下面1bの弧状凹凸部2B,2Aと上記水路5の弧状凹凸部6A,6Bとが連続的に隙間なく嵌合するため、蓋体1を上記水路5に安定して載置固定することができる。さらに、上記蓋体1の突条2と上記嵩上部材6,6の弧状凹凸部6A,6Bとの嵌合により、各蓋体1は水路5の長手方向に移動不能に固定することができるため、蓋体1の水路5に対するずれを防止して、安定して蓋体1を水路5上に載置することができる。
【0045】
また、上記嵩上部材6,6の上記弧状凹凸部6A,6Bは同じ周期Tの波形状を一定周期で繰り返すことにより形成すればよい。このように上記嵩上部材6,6は、蓋体1の接続部を意識せずに、いくつかの突条6’を有する一定単位長さの嵩上部材6を複数形成しておけばよいので、それ自体の加工が容易であるし、水路の施工も容易となる。
【0046】
図6は本発明に係るレジンコンクリート製構造体としての蓋体1の他の実施形態を示す斜視図である。同図において、図1の実施形態と異なる箇所は、厚さtの縁部1cを同一の厚さのまま左右方向(矢印A方向)に左右に長さw延長し、左右端面に厚さt、左右方向長さwの左右縁部1d’を形成した点である。尚、上記長さwは上記水路5の対向壁5a,5aの両上縁部の幅と略同一とし、上記突条2の左右幅は上記水路5の左右の幅より若干狭い幅に形成することが好ましい。
【0047】
このように構成すると図7に示すように水路5の対向壁5a,5aの両上縁部に上記嵩上部材6,6を設ける必要はなく、上記蓋体1を上記水路5の対向壁5a,5aの上面にそのまま載置することができる。この場合、上記左右縁部1d’,1d’を上記対向壁5a,5aの両上縁部に接触すると、上記突条2が上記水路5の上部開口に嵌合した状態で上記水路5上に安定して載置固定することができる。また、この場合は嵩上部材6,6を必要としないため、既存の農業用水路をそのまま使用することができる。
【0048】
図8(b)に示すものは、図1の蓋体1における鉄筋4に代えて補強材として中空のアルミニウム製のパイプ(中空パイプ)4’を埋設したものである。このパイプ4’の埋設位置は図1の実施形態と同様に、両端の突条2と中央部の突条2の4箇所である。このようにパイプ4’を使用することにより、強度を確保しながら鉄筋4を使用した蓋体よりも軽量化を実現することができる。
【0049】
次に、図9に基づいて、上記レジンコンクリート製構造体に係る蓋体1のプレス成型工程を説明する。
【0050】
同図において10,11は各々上記蓋体1をプレス成型するための下型(第1の押型)及び上型(第2の押型)であり、下型10は上記蓋体1を形成するための該蓋体1と略同一の大きさの四角形凹部12が形成されると共に、当該四角形凹部12の下面には上記複数の突状2を形成するための該突条2に対応する複数の突条成型用雌型10aが凹設されている。
【0051】
上記上型11は、上記下型10に対応する平板状凸部11aが形成されており、上記上型11と下型10とを嵌合させることで上型11と下型12との間に上記蓋体1を形成するための間隙13が形成されるように構成されている。また、上記平板状凸部11aには上記棒状小突起3を形成するための突起成型用雌型(図示せず)が凹設されている。
【0052】
14は上記下型10における上記四角形凹部12の下方に該下型10を貫通するように設けられた蒸気配管(加熱手段)、15は上記上型11における上記平板状凸部11aの上方に該上型11を貫通するように設けられた蒸気配管(加熱手段)であり、何れも上型11と下型10を嵌合させたプレス成型時に当該各配管14,15に高温蒸気を通し、被成型物を加熱硬化させるためのものである。尚、上記蒸気配管14,15は上型11、下型10の何れか一方に設けても良い。
【0053】
上記下型10の突条成型用雌型10aは、上記蓋体1の下面1bの複数の突条2を形成するためのものであり(図3(b)参照)、上記複数の突条2と凹凸関係が反対(逆位相)の形状となっている。よって、上記突条成型用雌型10aは、上記突条2と同様に、図3の突条2の位相を逆にした形状を成している。即ち、その1条をみると略円筒形状であるが、その1条の突条成型用雌型10aの1つの突条2に対応する突条成型用雌型10aの縦断面形状は、一定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部10Aが形成され、さらにその弧状凹部10Aの両端において、上記弧状凹部10Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部10Bが形成され、上記弧状凹部10Aと上記弧状凸部10Bは、両円弧10A,10Bの接線が重なり合う点a’,a’において接続された形状をなしている。
【0054】
また、上記突条成型用雌型10aの1周期を上記周期Tとは位相のずれたT’(=T)とすると、その1条の突条成型用凹部10aの縦断面形状(図3(b)における1周期T’の形状)は、一定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部10Aが形成され、その弧状凹部10Aの一端において、上記弧状凹部10Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部10Bが形成され、上記弧状凹部10Aと上記弧状凸部10Bは、両弧状凹凸部10A,10Bの接線が重なり合う点a’において接続された形状をなしている。何れの場合も、一周期をTとみるかT’とみるかの違いであり、弧状凹部10Aと弧状凸部10Bの構成は変わらない。
【0055】
また、上記突条2によって構成される1周期T(又はT’)の縦断面形状は、いわゆる正弦波形となるように構成しても良い。
【0056】
このような縦方向断面の稜線は、全体としてみると、一定の周期T(又はT’)を有する波形が連続する波形状を有しており、突条成型用雌型10aには平面部分が全く存在せず、上記弧状凹部10Aを形成する下向き円弧柱と、上記弧状凸部10Bを形成する上向き円弧柱が交互に繰り返す波形状、或いは、突条成型用雌型10aが一定周期T(又はT’)で連続して形成された波形状となっている。従って、上記雌型10aはなめらかな湾曲面の連続であり、平面的な部分、角部、或いは隅部の存在しない形状となっている(図8(a)参照)。
【0057】
ここで、上記蓋体1を形成する材料として例えばレジンコンクリートを使用する場合は、結合材として不飽和ポリエステル樹脂を使用する。この不飽和ポリエステル樹脂には予め硬化剤が添加されており、当該樹脂及び硬化剤には、40℃以下で硬化する常温硬化系、50℃〜90℃程度で硬化する中温硬化系、100℃以上で硬化する高温硬化系がある。ここではプレス成型用に高温硬化系樹脂を使用する。高温硬化系の不飽和ポリエステル樹脂を使用してこれをプレス成型した場合、硬化の立ち上がりが早く、架橋密度が高く(二重結合が多く)なり、短時間で高強度の製品が製造できるという効果がある。この場合、上記蒸気配管14,15による被成型物の加熱温度は100℃〜150℃とする。
【0058】
また、例えばレジンコンクリート管を回転型枠成型する場合(プレス成型なしの常温硬化)は、薄肉の小径管であっても材料の投入から温風養生を経て脱型までは約90分程を要し、さらには出荷までには製品ヤードで1〜2週間の後養生が必要となる。これに対して本発明に係る蓋体1のプレス成型の場合は、上記上下型11,10による加圧と上記蒸気配管14,15による加熱を同時に行うことができるため、10〜30mm程度の板厚のレジンコンクリートパネルで、「加熱時間」が5〜10分程度、「加圧時間」が同じく5〜10分程度、「硬化時間」も同じく5〜10分程度であり、全体として材料投入から脱型までが10分〜15分程度で終了する。さらにかかるプレス成型の場合は、上記加圧と加熱により硬化が達成されるため後養生が必要なく、上記上下型11,10によるプレス成型後、出来上がった蓋体1を翌日には出荷が可能となる。
【0059】
レジンコンクリート材料により蓋体1を成型するには、ミキサーで練り混ぜた塊状(粘土状)のレジンコンクリート材料16を、上下型11,10の開口状態において、上記下型10の上記突条成型用雌型10a上に載置する(図9(a))。このとき、上記蒸気配管14,15には高温蒸気を通しておく。その後上型11を下降して上記レジンコンクリート材料16を上下型11,10間でプレスし(図9(b))、かかる状態で所定時間(5分〜10分)加圧及び加熱して上記材料16を蓋体形状に硬化させる。これにより上記間隙13に上記レジンコンクリート製の蓋体1を成型することができる。
【0060】
このとき、上記突条成型用雌型10aの形状は、所定の曲率半径を有する弧状凸部10Bと弧状凹部10Aが繰り返す緩やかな円弧筒状の波形であるため、粘土状の材料は縦断面形状が上記弧状凸部10Bと弧状凹部10Aの円弧筒形状に馴染み易く、均等な密度で高精度のプレス成型を行うことができる。即ち、上記下型10の突条成型用雌型10aはいわゆる波形(円弧筒状の波形)であり、上型11をプレスしたときに、部分的に材料が馴染み難い部分(例えば角部や隅部等)が存在せず、レジンコンクリート材料が下型10の緩やかな湾曲面の突条成型用雌型10a全体に均等に馴染み易く、その結果、均等な密度で高精度の成型品を製造することができる。
【0061】
また、突条成型用雌型10aがなめらかに連続する円弧筒状の波形であるため、プレス成型時に構造体全体に均等に圧力をかけることができ、突条を含めて均質で高精度の蓋体を成型することができる。
【0062】
その後、上記上型11を上昇させて脱型し(図9(c))、成型された蓋体1を取り卸すことができる(図9(c))。
【0063】
ここで、上記レジンコンクリート材料16は、樹脂10質量%〜20質量%、骨材(主に粒径が10mm以上の砕石等)50質量%〜75質量%、充填材15質量%〜30質量%である。但し、上記骨材は粒径が10mm以下の細骨材を使用しても良く、この場合はいわゆるレジンモルタル材料といわれるが、本発明のレジンコンクリート材料はこのような細骨材を使用したレジンモルタル材料を排除するものではなく、レジンモルタル材料をも包含する概念である。
【0064】
また、図11に示すように、蓋体1の下面1b側にガラス繊維やガラスグリッド等による補強層17を設けることもできる。この場合は、上記プレス成型時に上記レジンコンクリート材料16の上記下型10側にガラス繊維やガラスグリッド17を介在させ(図9(a))、当該ガラス繊維17等を同時にプレスすることにより、蓋体1の下面1b側に上記ガラス繊維等による補強層17を一体成型することができる(図11参照)。
【0065】
図10(a)乃至図10(c)は、鉄筋4を埋設する場合の成型工程を示すものであり、基本的な工程は上記図9の工程と同様であるが、下型10の突条成型用雌型10aの金型埋設位置に予め鉄筋4を支持しておく。鉄筋4の支持は、各鉄筋4の両端部を下型10の両端部において支持するように構成して、当該鉄筋4が上記突条成型用雌型10a上の埋設位置に位置するように設置する。そして、かかる鉄筋4の設置状態で、上記図9(a)〜(c)と同様にプレス成型を行うことにより、図10(c)に示すように、鉄筋4が埋設された蓋体1を成型することができる。尚、上記中空のアルミニウム製のパイプ4’の場合も上記鉄筋4と同様の工程にて蓋体1に埋設することができる。
【0066】
図12に本発明に係るレジンコンクリート製構造体としての蓋体の他の実施形態を示す。この実施形態では、突条2を中央部に2条連続して設け、前後方向の端部に近接する突条2,2を各1条設けたものである。両端部の突条2と中央部の突条2との間には平面部18が存在する。このように構成しても、平面部18と弧状凹部2Bとが滑らかに連続しているので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態の蓋体1を製造するには、上記蓋体1の下面1bを形成するための上記下面1bとは逆位相の突条成型用雌型10aを使用して図9、図10に示すプレス成型の方法により形成することができる。
【0067】
本発明は、上述のように、蓋体1の一面に形成された突条2がなめらかに連続する波形状であるため、プレス成型時に蓋体1全体に均等に圧力をかけることができ、突条2を含めて均質で高精度のレジンコンクリート製構造体(蓋体1)を実現することができる。
【0068】
また、本発明に係る蓋体1を縦方向に接続すると下面1bの突条2が接合部Sにおいても同一周期で連続するので、例えば水路5の対応部分(嵩上部材6,6)を同一周期の突条6’,6’とすることで、水路5等を塵や草等が入り込まないように完全に閉鎖すると共に、ずれ等を生じない蓋体1として使用することができる。
【0069】
また、プレス成型に用いられる突条成型用雌型10aは緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料16を上記雌型10aに均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体(蓋体1)を製造可能なレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0070】
また、プレス加工時に加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0071】
また、レジンコンクリート製構造体(蓋体1)上面1aに複数の棒状小突部3を一体成型することができる。
【0072】
また、側溝の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、側溝を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を具備した構造物を実現し得る。
【0073】
また、本発明のレジンコンクリート製構造体は、上記各種の効果を奏し得ると共に、レジンコンクリートを材料として使用しているので、従来のコンクリート製品に比べて軽量であり、蓋体の開閉作業も楽に行うことができ、結合材に樹脂を使用しているので高い耐食性を有し、またレジンコンクリートは結合が蜜であるため汚れが付着し難く景観性、耐候性にも優れているものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るレジンコンクリート製構造体は、例えば農業用水路、工業用貯水槽等の蓋体として用いることができ、その他各種の壁面パネルとしても広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るレジンコンクリート製構造体の斜視図である。
【図2】(a)は同上構造体の平面図、(b)は同上構造体の側面図である。
【図3】(a)は同上構造体の一部拡大側面図、(b)は同上構造体の製造用の雌型の一部拡大側面断面図である。
【図4】同上構造体を接合した状態の接合部近傍の側面図である。
【図5】同上構造体を水路に蓋体として使用する状態を示す斜視図である。
【図6】他の実施形態の構造体の斜視図である。
【図7】他の実施形態の構造体を水路に蓋体として使用する状態を示す正面図である。
【図8】(a),(b)ともに同上構造体の側面図である。
【図9】(a)〜(c)は同上構造体の製造方法の工程を示す説明図であり、各々プレス成型装置の側面断面図である。
【図10】(a)〜(c)は同上構造体の製造方法の工程を示す説明図であり、各々プレス成型装置の側面断面図である。
【図11】補強材を一体成型した同上構造体の一部拡大断面図である。
【図12】他の実施形態を示す構造体の側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 蓋体(レジンコンクリート製構造体)
1a 上面(他面)
1b 下面(一面)
1c 縁部
2 突条
2A 弧状凸部
2B 弧状凹部
4 鉄筋
4’ 中空パイプ
5 水路
5a,5a 対向壁
6 嵩上部材
6’ 突条
10a 突条成型用雌型
10A 弧状凹部
10B 弧状凸部
10 下型(第1の押型)
11 上型(第2の押型)
14,15 蒸気配管(加熱手段)
16 レジンコンクリート材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路、工業用水槽等の蓋体等として用いて好適なレジンコンクリート製構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用水路等に用いられる蓋体は、特許文献1に示すように、上下に樹脂含浸繊維性不織布等の強化層が形成された板状のレジンコンクリート板からなり、断面U字形状の側溝の上面に蓋体として設置されるもの、特許文献2に示すように、内部に強化用の鉄筋を幅方向に埋め込んだコンクリート製の板から構成され、当該板を断面U字形状の側溝の上面に設置するものが用いられている。
【0003】
これらの蓋体は、何れも裏面側において左右方向(幅方向)に縦断面角形の突条が一定間隔を以って複数本設けられており、これらの突条により蓋体の構造的な強度を確保する構造であった。
【0004】
【特許文献1】実開昭54−106657号
【特許文献2】特開平8−270061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の蓋体は、金型にコンクリート材料を流し込み、或いは上下プレス成型等により形成されるが、裏面側に上記突条を形成するには上記突条部分に対応する金型に雌型凹部を形成し、プレス成型時においては当該雌型凹部の内部に確実にコンクリート材料を充填する必要がある。
【0006】
しかしながら、角形の雌型凹部は底部が狭く、底部に対してその四方壁面が垂直に近い角度で立ち上がっているので、金型の平面部分(蓋体の裏面部分)に対して雌型凹部の底面の周縁等にコンクリート材料を万遍なく行き渡らせることが容易でなく、品質の高い構造体を一体成型しようとすると、プレス加工におけるコンクリート材料の選定、プレス圧力、温度等の条件設定が複雑となるという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、プレス成型加工により容易に形成し得る高品質なレジンコンクリート製構造体及びプレス加工時にレジンコンクリート材料を満遍なく行き渡らせることができ、容易に高品質の構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているものであることを特徴とするレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0009】
上記レジンコンクリート製構造体は例えば蓋体(1)として形成することができる。上記突条の縦断面形状の一周期は例えば図3(a)のTの場合とT’の場合の両方を含む概念である。また一面とは例えば上記蓋体(1)の下面(1b)をいう。
【0010】
第2に、上記構造体の上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続して形成されているものであることを特徴とする上記第1の発明記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0011】
第3に、上記突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部は、その縦断面形状において上記突条の1/4周期であることを特徴とする上記第1又は2の発明記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0012】
このように構成すると、複数の構造体をそれらの各縁部を接合した状態で連設すると、該接合部間における突条の縦断面形状を1/2周期の弧状凹部とすることができ、例えば水路の嵩上部材として上記弧状凹凸部とは逆位相の一定周期の弧状凹凸部を設けるだけで、水路の上を密閉することができる。
【0013】
第4に、上記弧状凸部内に上記突条に沿って鉄筋又は中空パイプを埋設したものであることを特徴とする上記第1〜3の発明の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体により構成される。
【0014】
第5に、断面略U字形状の水路の対向壁の両方の上面に、上記レジンコンクリート製構造体の下面の突条とは逆位相の突条を形成し、上記レジンコンクリート製構造体の上記一面側を以って上記水路上面を閉鎖した状態で、上記レジンコンクリート製構造体の上記突条と上記対向壁上の上記突条とが嵌合するように構成したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体を使用した構造物により構成される。
【0015】
このように、上記水路の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、レジンコンクリート製構造体で水路を完全に閉鎖すると共に、上記構造体のずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を使用した構造物を実現し得る。
【0016】
第6に、方形板状の構造体の一面に該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体であって、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているレジンコンクリート製構造体の製造方法であって、上記構造体の上記一面の上記複数の突条に対応する突条成型用雌型が形成された第1の押型と、当該第1の押型に対向配置され上記構造体の他面に対応する第2の押型とを設け、上記両押型間にレジンコンクリート材料を介挿した状態で上記両押型を嵌合させることにより、上記両押型間に上記方形板状の構造体をプレス成型することを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0017】
このように構成すると、突条成型用雌型は緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料を上記雌型に均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体を製造することができる。
【0018】
第7に、上記第6の発明記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、上記レジンコンクリート製構造体は、上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続突条として形成されており、上記第1の押型は上記連続突条に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0019】
第8に、上記第6の発明記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、上記レジンコンクリート製構造体は、その突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部が、その縦断面形状において上記突条の1/4周期となるように形成されており、上記第1の押型は上記縁部に連なる上記弧状凹部に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0020】
第9に、上記両押型の両方又は何れか一方に加熱手段を設け、上記両押型によるプレス成型時に上記加熱手段により上記両押型間の材料を加熱することを特徴とする上記第6〜8記載の発明の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法により構成される。
【0021】
このように構成すると、加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように、構造体の一面に形成された突条がなめらかに連続する波形状であるため、プレス成型時に押型全体に均等に材料を容易に馴染ませることができ、突条を含めて均質で高精度のレジンコンクリート製構造体を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係るコンクリート構造体を複数接続すると、下面の突条が接合部においても同一周期で連続するので、例えば水路等の対向壁上面を同一周期の突条とすることで、水路等を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じない蓋体として使用することができる。
【0024】
また、水路等の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、側溝を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を具備した構造物を実現し得る。
【0025】
また、プレス成型に用いられる突条成型用雌型は緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料を上記雌型に均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0026】
また、プレス加工時に加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係るレジンコンクリート製構造体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係るレジンコンクリート製構造体の斜視図、図2(a)はその平面図、図2(b)はその側面図であり、これらの図において、1は、レジンコンクリート製構造体としての方形板状の蓋体であり、平面視形状は長方形状又は正方形状をなし、平面状の上面1aと左右方向(矢印A方向)には直線的に長く伸び、縦方向(矢印B方向)には縦断面波形状をなす複数の略円筒状の突条2が形成された下面1bとから構成されている。
【0029】
上記突条2の左右端は、当該蓋体1の左右端面1d,1dまで達しており、当該蓋体1の左右端面1d,1dの下部は上記突条2による波形状2’を形成している。また、上記蓋体1の前後端面は上記上面1aを形成する一定厚tの縁部1c,1cが前後方向に突出形成されており、複数の蓋体1を縦方向に順次水平に並列してゆくとき、隣接する蓋体1の縁部1c,1c同士が隙間なく接触し得るように構成されている。
【0030】
上記上面1aには滑り止め用の棒状小突部3が縦横に交互に90度ずつ角度を変えながら左右方向(矢印A方向)に順次膨出形成されており、横方向に形成された棒状小突部3の列3aが並列状態で順次形成されている。上記棒状小突部3は図面上は一部しか描いていないが、上記列3aが縦方向に全体に設けられており、これにより上記棒状小突部3は上記上面1aの全体に、均等密度で分布するように形成されている。
【0031】
上記突条2の1周期をTとすると、その1条は略筒形状であるが、その1条の突条2の縦断面形状(図3(a)における1周期Tの形状)は、水平線pを基準として、所定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部2Aが形成され、さらにその弧状凸部2Aの両端において、上記弧状凸部2Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部2B,2Bが形成され、上記弧状凸部2Aと上記弧状凹部2B,2Bは、両円弧2A,2Bの接線が重なり合う点a,aにおいて接続された形状をなしている。尚、上記水平線pは、弧状凸部2Aの振幅(凸部の最大長さ)h(半円の場合は半径)と弧状凹部2Bの振幅(凹部の最大長さ)h(半円の場合は半径)が同一となる位置の水平線をいう。
【0032】
また、上記突条2の1周期を上記Tとは位相のずれたT’(=T)とすると、その1条の突条2の縦断面形状(図3における1周期T’の形状)は、水平線pを基準として、所定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部2Aが形成され、その弧状凸部2Aの一端において、上記弧状凸部2Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部2Bが形成され、上記弧状凸部2Aと上記弧状凹部2Bは、両円弧2A,2Bの接線が重なり合う円弧上の点aにおいて接続された形状をなしている。何れの場合も、一周期をTとみるかT’とみるかの違いであり、弧状凸部2Aと弧状凹部2Bの構成は変わらない。
【0033】
また、上記突条2によって構成される1周期T(又はT’)の縦断面形状は、いわゆる正弦波形となるように構成しても良い。
【0034】
このような縦方向断面の稜線は、全体としてみると、一定の周期T又はT’を有する波形が連続する波形状の面を成しており、下面1b全体をみると、平面部分が全く存在せず、上記弧状凸部2Aを形成する下向き円弧柱と、上記弧状凹部2Bを形成する上向き円弧柱が交互に繰り返す形状、或いは、突条2が一定周期Tで連続して連続突条として形成された形状となっている。従って、上記下面1bは前後方向にはなめらかな湾曲面の連続であり、平面的な部分、或いは角部の存在しない形状となっている(図8(a)参照)。
【0035】
また、上記蓋体1の前後の縁部1c,1cは、上記弧状凹部2Bの円弧の半分の位置(T/4の位置)に縁部1cが位置するように構成する。このように構成することにより、同一の蓋体1の縁部1c同士を水平に接続した状態においては、図4に示すように、隣接する縁部1c,1cの弧状凹部2B,2Bの円弧部分が連続して、隣接する蓋体1の縁部1c,1cを接続することにより、1つの弧状凹部2B(T/2)が形成されるため、縦方向に蓋体1を連続して接続することによって、弧状凸部2Aと弧状凹部2Bを途切れなく連続させることができるように構成されている。
【0036】
尚、本実施形態の蓋体1は、図1に示すように縦方向(矢印B方向)には上記突条2が6条形成されたものが一単位であり、左右方向(矢印A方向)は例えば側溝の幅に応じて各種の長さとすることができる。勿論、縦方向においても各種の長さのもの、或いは突条2の数も各種のものを構成することができる(図12参照)。また、上記突条2の振幅は上記hに限定されず、例えば図3(a)の二点鎖線qに示すようにより振幅の小さい形状でもよいし、より大きな振幅の突条2でも良い。
【0037】
4は、上記突条2の内部に該突条2に沿って埋設された補強用の鉄筋であり、上記本実施形態のものでは、6条の突条2の内、両端の突条2,2と中央の隣接する2つの突条2,2の計4条の突条2の内部に上記鉄筋4が埋設されている。
【0038】
上記レジンコンクリート製の蓋体1は、一例として、縦方向(矢印B方向)の長さが500mm、横方向(矢印A方向)の長さが750mm、板厚tが12mm、突条2の高さ(振幅)2h(h×2)が22mmとするが、勿論これに限定されない。また、レジンコンクリートの材料は、結合材として不飽和ポリエステル樹脂、砕石等の骨材、充填材としてのガラス繊維等により構成され、後述のプレス成型により一体的に成型されるものである。
【0039】
図5は、上記蓋体1を農業用、ダム用等の水路に使用する場合を示す断面略U字形状の水路(レジンコンクリート製構造体を使用した構造物)5の斜視図である。同図において、断面略U字状の水路5の対向壁5a,5aの両上縁部には、これら両上縁部と同一幅の嵩上部材6,6が各々固定されており、これら嵩上部材6,6の各上面の長手方向には、上記蓋体1の上記下面1bの上記突条2(弧状凸部2A、弧状凹部2B)とは凹凸の順序(位相)を逆転した縦断面同一形状の突条6’,6’(弧状凹部6A,弧状凸部6B)が連続的に切れ目なく形成されている。
【0040】
これら突条6’,6’の長手方向の稜線の形状は、上記蓋体1の弧状凸部2A及び弧状凹部2Bと同一の曲率半径を有する弧状凸部6Bと弧状凹部6Aから構成されており、その凹凸の順序が上記蓋体1の下面1bとは逆になるように構成されている。
【0041】
尚、上記蓋体1の左右幅は上記水路5の上記嵩上部材6,6の左右方向の幅に一致するように構成する。また、上記嵩上部材6,6を使用せず上記対向壁5a,5a上面に上記突条6’,6’を一体的に形成しても良い。
【0042】
このように構成することにより、上記水路5の上面に上記蓋体1をその下面1bを下側にして被せると、上記蓋体1の下面1bの突条2の弧状凸部2Aと弧状凹部2Bが、上記水路5の上記突条6’,6’の弧状凹部6Aと弧状凸部6Bに各々嵌合し、上記蓋体1の突条2と上記水路5の突条6’,6’が隙間なく接合することによって、上記蓋体1を上記水路5上に嵌合状態で載置固定することができる。
【0043】
そして、蓋体1を上記水路5の上面に載置した後、隣接して他の蓋体1を上記水路5の上面に載置して、既設の蓋体1の縁部1cに隣接して載置した蓋体1の縁部1cを隙間なく接触させる。このように構成すると、当該隣接する蓋体1,1の縁部1c,1cが接触することで、当該縁部1c,1c(接合部S)に位置する2つの弧状凹部2B(1/4周期)が一体となって1/2周期の弧状凹部2Bを形成するため(図4参照)、隣接する蓋体1の接続部S(図4参照)においてもその突条2を上記水路5の弧状凹凸部6A,6Bに隙間なく嵌合させることができ、結果として水路5の上記嵩上部材6,6に上記蓋体1を隙間なく載置固定することができる。これにより、水路5内への塵、落葉、昆虫等の進入を阻止することができる。
【0044】
また、上記蓋体1の下面1bの弧状凹凸部2B,2Aと上記水路5の弧状凹凸部6A,6Bとが連続的に隙間なく嵌合するため、蓋体1を上記水路5に安定して載置固定することができる。さらに、上記蓋体1の突条2と上記嵩上部材6,6の弧状凹凸部6A,6Bとの嵌合により、各蓋体1は水路5の長手方向に移動不能に固定することができるため、蓋体1の水路5に対するずれを防止して、安定して蓋体1を水路5上に載置することができる。
【0045】
また、上記嵩上部材6,6の上記弧状凹凸部6A,6Bは同じ周期Tの波形状を一定周期で繰り返すことにより形成すればよい。このように上記嵩上部材6,6は、蓋体1の接続部を意識せずに、いくつかの突条6’を有する一定単位長さの嵩上部材6を複数形成しておけばよいので、それ自体の加工が容易であるし、水路の施工も容易となる。
【0046】
図6は本発明に係るレジンコンクリート製構造体としての蓋体1の他の実施形態を示す斜視図である。同図において、図1の実施形態と異なる箇所は、厚さtの縁部1cを同一の厚さのまま左右方向(矢印A方向)に左右に長さw延長し、左右端面に厚さt、左右方向長さwの左右縁部1d’を形成した点である。尚、上記長さwは上記水路5の対向壁5a,5aの両上縁部の幅と略同一とし、上記突条2の左右幅は上記水路5の左右の幅より若干狭い幅に形成することが好ましい。
【0047】
このように構成すると図7に示すように水路5の対向壁5a,5aの両上縁部に上記嵩上部材6,6を設ける必要はなく、上記蓋体1を上記水路5の対向壁5a,5aの上面にそのまま載置することができる。この場合、上記左右縁部1d’,1d’を上記対向壁5a,5aの両上縁部に接触すると、上記突条2が上記水路5の上部開口に嵌合した状態で上記水路5上に安定して載置固定することができる。また、この場合は嵩上部材6,6を必要としないため、既存の農業用水路をそのまま使用することができる。
【0048】
図8(b)に示すものは、図1の蓋体1における鉄筋4に代えて補強材として中空のアルミニウム製のパイプ(中空パイプ)4’を埋設したものである。このパイプ4’の埋設位置は図1の実施形態と同様に、両端の突条2と中央部の突条2の4箇所である。このようにパイプ4’を使用することにより、強度を確保しながら鉄筋4を使用した蓋体よりも軽量化を実現することができる。
【0049】
次に、図9に基づいて、上記レジンコンクリート製構造体に係る蓋体1のプレス成型工程を説明する。
【0050】
同図において10,11は各々上記蓋体1をプレス成型するための下型(第1の押型)及び上型(第2の押型)であり、下型10は上記蓋体1を形成するための該蓋体1と略同一の大きさの四角形凹部12が形成されると共に、当該四角形凹部12の下面には上記複数の突状2を形成するための該突条2に対応する複数の突条成型用雌型10aが凹設されている。
【0051】
上記上型11は、上記下型10に対応する平板状凸部11aが形成されており、上記上型11と下型10とを嵌合させることで上型11と下型12との間に上記蓋体1を形成するための間隙13が形成されるように構成されている。また、上記平板状凸部11aには上記棒状小突起3を形成するための突起成型用雌型(図示せず)が凹設されている。
【0052】
14は上記下型10における上記四角形凹部12の下方に該下型10を貫通するように設けられた蒸気配管(加熱手段)、15は上記上型11における上記平板状凸部11aの上方に該上型11を貫通するように設けられた蒸気配管(加熱手段)であり、何れも上型11と下型10を嵌合させたプレス成型時に当該各配管14,15に高温蒸気を通し、被成型物を加熱硬化させるためのものである。尚、上記蒸気配管14,15は上型11、下型10の何れか一方に設けても良い。
【0053】
上記下型10の突条成型用雌型10aは、上記蓋体1の下面1bの複数の突条2を形成するためのものであり(図3(b)参照)、上記複数の突条2と凹凸関係が反対(逆位相)の形状となっている。よって、上記突条成型用雌型10aは、上記突条2と同様に、図3の突条2の位相を逆にした形状を成している。即ち、その1条をみると略円筒形状であるが、その1条の突条成型用雌型10aの1つの突条2に対応する突条成型用雌型10aの縦断面形状は、一定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部10Aが形成され、さらにその弧状凹部10Aの両端において、上記弧状凹部10Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部10Bが形成され、上記弧状凹部10Aと上記弧状凸部10Bは、両円弧10A,10Bの接線が重なり合う点a’,a’において接続された形状をなしている。
【0054】
また、上記突条成型用雌型10aの1周期を上記周期Tとは位相のずれたT’(=T)とすると、その1条の突条成型用凹部10aの縦断面形状(図3(b)における1周期T’の形状)は、一定の曲率半径を有する下向きの略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凹部10Aが形成され、その弧状凹部10Aの一端において、上記弧状凹部10Aと同じ曲率半径を有する反対向き(上向き)の略半円形状或いは円弧形状をなす弧状凸部10Bが形成され、上記弧状凹部10Aと上記弧状凸部10Bは、両弧状凹凸部10A,10Bの接線が重なり合う点a’において接続された形状をなしている。何れの場合も、一周期をTとみるかT’とみるかの違いであり、弧状凹部10Aと弧状凸部10Bの構成は変わらない。
【0055】
また、上記突条2によって構成される1周期T(又はT’)の縦断面形状は、いわゆる正弦波形となるように構成しても良い。
【0056】
このような縦方向断面の稜線は、全体としてみると、一定の周期T(又はT’)を有する波形が連続する波形状を有しており、突条成型用雌型10aには平面部分が全く存在せず、上記弧状凹部10Aを形成する下向き円弧柱と、上記弧状凸部10Bを形成する上向き円弧柱が交互に繰り返す波形状、或いは、突条成型用雌型10aが一定周期T(又はT’)で連続して形成された波形状となっている。従って、上記雌型10aはなめらかな湾曲面の連続であり、平面的な部分、角部、或いは隅部の存在しない形状となっている(図8(a)参照)。
【0057】
ここで、上記蓋体1を形成する材料として例えばレジンコンクリートを使用する場合は、結合材として不飽和ポリエステル樹脂を使用する。この不飽和ポリエステル樹脂には予め硬化剤が添加されており、当該樹脂及び硬化剤には、40℃以下で硬化する常温硬化系、50℃〜90℃程度で硬化する中温硬化系、100℃以上で硬化する高温硬化系がある。ここではプレス成型用に高温硬化系樹脂を使用する。高温硬化系の不飽和ポリエステル樹脂を使用してこれをプレス成型した場合、硬化の立ち上がりが早く、架橋密度が高く(二重結合が多く)なり、短時間で高強度の製品が製造できるという効果がある。この場合、上記蒸気配管14,15による被成型物の加熱温度は100℃〜150℃とする。
【0058】
また、例えばレジンコンクリート管を回転型枠成型する場合(プレス成型なしの常温硬化)は、薄肉の小径管であっても材料の投入から温風養生を経て脱型までは約90分程を要し、さらには出荷までには製品ヤードで1〜2週間の後養生が必要となる。これに対して本発明に係る蓋体1のプレス成型の場合は、上記上下型11,10による加圧と上記蒸気配管14,15による加熱を同時に行うことができるため、10〜30mm程度の板厚のレジンコンクリートパネルで、「加熱時間」が5〜10分程度、「加圧時間」が同じく5〜10分程度、「硬化時間」も同じく5〜10分程度であり、全体として材料投入から脱型までが10分〜15分程度で終了する。さらにかかるプレス成型の場合は、上記加圧と加熱により硬化が達成されるため後養生が必要なく、上記上下型11,10によるプレス成型後、出来上がった蓋体1を翌日には出荷が可能となる。
【0059】
レジンコンクリート材料により蓋体1を成型するには、ミキサーで練り混ぜた塊状(粘土状)のレジンコンクリート材料16を、上下型11,10の開口状態において、上記下型10の上記突条成型用雌型10a上に載置する(図9(a))。このとき、上記蒸気配管14,15には高温蒸気を通しておく。その後上型11を下降して上記レジンコンクリート材料16を上下型11,10間でプレスし(図9(b))、かかる状態で所定時間(5分〜10分)加圧及び加熱して上記材料16を蓋体形状に硬化させる。これにより上記間隙13に上記レジンコンクリート製の蓋体1を成型することができる。
【0060】
このとき、上記突条成型用雌型10aの形状は、所定の曲率半径を有する弧状凸部10Bと弧状凹部10Aが繰り返す緩やかな円弧筒状の波形であるため、粘土状の材料は縦断面形状が上記弧状凸部10Bと弧状凹部10Aの円弧筒形状に馴染み易く、均等な密度で高精度のプレス成型を行うことができる。即ち、上記下型10の突条成型用雌型10aはいわゆる波形(円弧筒状の波形)であり、上型11をプレスしたときに、部分的に材料が馴染み難い部分(例えば角部や隅部等)が存在せず、レジンコンクリート材料が下型10の緩やかな湾曲面の突条成型用雌型10a全体に均等に馴染み易く、その結果、均等な密度で高精度の成型品を製造することができる。
【0061】
また、突条成型用雌型10aがなめらかに連続する円弧筒状の波形であるため、プレス成型時に構造体全体に均等に圧力をかけることができ、突条を含めて均質で高精度の蓋体を成型することができる。
【0062】
その後、上記上型11を上昇させて脱型し(図9(c))、成型された蓋体1を取り卸すことができる(図9(c))。
【0063】
ここで、上記レジンコンクリート材料16は、樹脂10質量%〜20質量%、骨材(主に粒径が10mm以上の砕石等)50質量%〜75質量%、充填材15質量%〜30質量%である。但し、上記骨材は粒径が10mm以下の細骨材を使用しても良く、この場合はいわゆるレジンモルタル材料といわれるが、本発明のレジンコンクリート材料はこのような細骨材を使用したレジンモルタル材料を排除するものではなく、レジンモルタル材料をも包含する概念である。
【0064】
また、図11に示すように、蓋体1の下面1b側にガラス繊維やガラスグリッド等による補強層17を設けることもできる。この場合は、上記プレス成型時に上記レジンコンクリート材料16の上記下型10側にガラス繊維やガラスグリッド17を介在させ(図9(a))、当該ガラス繊維17等を同時にプレスすることにより、蓋体1の下面1b側に上記ガラス繊維等による補強層17を一体成型することができる(図11参照)。
【0065】
図10(a)乃至図10(c)は、鉄筋4を埋設する場合の成型工程を示すものであり、基本的な工程は上記図9の工程と同様であるが、下型10の突条成型用雌型10aの金型埋設位置に予め鉄筋4を支持しておく。鉄筋4の支持は、各鉄筋4の両端部を下型10の両端部において支持するように構成して、当該鉄筋4が上記突条成型用雌型10a上の埋設位置に位置するように設置する。そして、かかる鉄筋4の設置状態で、上記図9(a)〜(c)と同様にプレス成型を行うことにより、図10(c)に示すように、鉄筋4が埋設された蓋体1を成型することができる。尚、上記中空のアルミニウム製のパイプ4’の場合も上記鉄筋4と同様の工程にて蓋体1に埋設することができる。
【0066】
図12に本発明に係るレジンコンクリート製構造体としての蓋体の他の実施形態を示す。この実施形態では、突条2を中央部に2条連続して設け、前後方向の端部に近接する突条2,2を各1条設けたものである。両端部の突条2と中央部の突条2との間には平面部18が存在する。このように構成しても、平面部18と弧状凹部2Bとが滑らかに連続しているので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態の蓋体1を製造するには、上記蓋体1の下面1bを形成するための上記下面1bとは逆位相の突条成型用雌型10aを使用して図9、図10に示すプレス成型の方法により形成することができる。
【0067】
本発明は、上述のように、蓋体1の一面に形成された突条2がなめらかに連続する波形状であるため、プレス成型時に蓋体1全体に均等に圧力をかけることができ、突条2を含めて均質で高精度のレジンコンクリート製構造体(蓋体1)を実現することができる。
【0068】
また、本発明に係る蓋体1を縦方向に接続すると下面1bの突条2が接合部Sにおいても同一周期で連続するので、例えば水路5の対応部分(嵩上部材6,6)を同一周期の突条6’,6’とすることで、水路5等を塵や草等が入り込まないように完全に閉鎖すると共に、ずれ等を生じない蓋体1として使用することができる。
【0069】
また、プレス成型に用いられる突条成型用雌型10aは緩やかな波形状により形成されており、角部等が存在しないため、プレス成型時にレジンコンクリート材料16を上記雌型10aに均一に馴染ませることができ、偏り等が発生し難いため、均一な密度で精度の高いレジンコンクリート製構造体(蓋体1)を製造可能なレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0070】
また、プレス加工時に加熱による熱硬化と加圧を同時に実行することができ、短時間でレジンコンクリート製構造体を製造することができるレジンコンクリート製構造体の製造方法を実現することができる。
【0071】
また、レジンコンクリート製構造体(蓋体1)上面1aに複数の棒状小突部3を一体成型することができる。
【0072】
また、側溝の対向壁の上面を同一周期(逆位相)の突条とすることで、側溝を完全に閉鎖し得ると共に、ずれ等を生じないレジンコンクリート製構造体を具備した構造物を実現し得る。
【0073】
また、本発明のレジンコンクリート製構造体は、上記各種の効果を奏し得ると共に、レジンコンクリートを材料として使用しているので、従来のコンクリート製品に比べて軽量であり、蓋体の開閉作業も楽に行うことができ、結合材に樹脂を使用しているので高い耐食性を有し、またレジンコンクリートは結合が蜜であるため汚れが付着し難く景観性、耐候性にも優れているものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るレジンコンクリート製構造体は、例えば農業用水路、工業用貯水槽等の蓋体として用いることができ、その他各種の壁面パネルとしても広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るレジンコンクリート製構造体の斜視図である。
【図2】(a)は同上構造体の平面図、(b)は同上構造体の側面図である。
【図3】(a)は同上構造体の一部拡大側面図、(b)は同上構造体の製造用の雌型の一部拡大側面断面図である。
【図4】同上構造体を接合した状態の接合部近傍の側面図である。
【図5】同上構造体を水路に蓋体として使用する状態を示す斜視図である。
【図6】他の実施形態の構造体の斜視図である。
【図7】他の実施形態の構造体を水路に蓋体として使用する状態を示す正面図である。
【図8】(a),(b)ともに同上構造体の側面図である。
【図9】(a)〜(c)は同上構造体の製造方法の工程を示す説明図であり、各々プレス成型装置の側面断面図である。
【図10】(a)〜(c)は同上構造体の製造方法の工程を示す説明図であり、各々プレス成型装置の側面断面図である。
【図11】補強材を一体成型した同上構造体の一部拡大断面図である。
【図12】他の実施形態を示す構造体の側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 蓋体(レジンコンクリート製構造体)
1a 上面(他面)
1b 下面(一面)
1c 縁部
2 突条
2A 弧状凸部
2B 弧状凹部
4 鉄筋
4’ 中空パイプ
5 水路
5a,5a 対向壁
6 嵩上部材
6’ 突条
10a 突条成型用雌型
10A 弧状凹部
10B 弧状凸部
10 下型(第1の押型)
11 上型(第2の押型)
14,15 蒸気配管(加熱手段)
16 レジンコンクリート材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、
上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、
上記突条が少なくとも2以上形成されているものであることを特徴とするレジンコンクリート製構造体。
【請求項2】
上記構造体の上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続して形成されているものであることを特徴とする請求項1記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項3】
上記突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部は、その縦断面形状において上記突条の1/4周期であることを特徴とする請求項1又は2記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項4】
上記弧状凸部内に上記突条に沿って鉄筋又は中空パイプを埋設したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項5】
断面略U字形状の水路の対向壁の両方の上面に、上記レジンコンクリート製構造体の下面の突条とは逆位相の突条を形成し、
上記レジンコンクリート製構造体の上記一面側を以って上記水路上面を閉鎖した状態で、上記レジンコンクリート製構造体の上記突条と上記対向壁上の上記突条とが嵌合するように構成したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体を使用した構造物。
【請求項6】
方形板状の構造体の一面に該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体であって、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているレジンコンクリート製構造体の製造方法であって、
上記構造体の上記一面の上記複数の突条に対応する突条成型用雌型が形成された第1の押型と、当該第1の押型に対向配置され上記構造体の他面に対応する第2の押型とを設け、
上記両押型間にレジンコンクリート材料を介挿した状態で上記両押型を嵌合させることにより、上記両押型間に上記方形板状の構造体をプレス成型することを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、
上記レジンコンクリート製構造体は、上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続突条として形成されており、
上記第1の押型は上記連続突条に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、
上記レジンコンクリート製構造体は、その突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部が、その縦断面形状において上記突条の1/4周期となるように形成されており、
上記第1の押型は上記縁部に連なる上記弧状凹部に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項9】
上記両押型の両方又は何れか一方に加熱手段を設け、上記両押型によるプレス成型時に上記加熱手段により上記両押型間の材料を加熱することを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項1】
レジンコンクリートにより形成された方形板状の構造体であって、該構造体の一面に、該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体において、
上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、
上記突条が少なくとも2以上形成されているものであることを特徴とするレジンコンクリート製構造体。
【請求項2】
上記構造体の上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続して形成されているものであることを特徴とする請求項1記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項3】
上記突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部は、その縦断面形状において上記突条の1/4周期であることを特徴とする請求項1又は2記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項4】
上記弧状凸部内に上記突条に沿って鉄筋又は中空パイプを埋設したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体。
【請求項5】
断面略U字形状の水路の対向壁の両方の上面に、上記レジンコンクリート製構造体の下面の突条とは逆位相の突条を形成し、
上記レジンコンクリート製構造体の上記一面側を以って上記水路上面を閉鎖した状態で、上記レジンコンクリート製構造体の上記突条と上記対向壁上の上記突条とが嵌合するように構成したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体を使用した構造物。
【請求項6】
方形板状の構造体の一面に該構造体の左右方向に複数の突条が所定間隔で平行に形成されたレジンコンクリート製構造体であって、上記突条はその縦断面形状が、下向き弧状凸部と該凸部に滑らかに連続する上向き弧状凹部により一周期を構成する波形状であり、上記突条が少なくとも2以上形成されているレジンコンクリート製構造体の製造方法であって、
上記構造体の上記一面の上記複数の突条に対応する突条成型用雌型が形成された第1の押型と、当該第1の押型に対向配置され上記構造体の他面に対応する第2の押型とを設け、
上記両押型間にレジンコンクリート材料を介挿した状態で上記両押型を嵌合させることにより、上記両押型間に上記方形板状の構造体をプレス成型することを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、
上記レジンコンクリート製構造体は、上記一面に上記複数の突条が平面部を介さずに一定周期で連続突条として形成されており、
上記第1の押型は上記連続突条に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法において、
上記レジンコンクリート製構造体は、その突条に平行方向の上記構造体の縁部に連なる弧状凹部が、その縦断面形状において上記突条の1/4周期となるように形成されており、
上記第1の押型は上記縁部に連なる上記弧状凹部に対応する突条成型用雌型が形成されていることを特徴とするレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【請求項9】
上記両押型の両方又は何れか一方に加熱手段を設け、上記両押型によるプレス成型時に上記加熱手段により上記両押型間の材料を加熱することを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載のレジンコンクリート製構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−95878(P2010−95878A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266172(P2008−266172)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(500038662)麻生商事株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(500038662)麻生商事株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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