説明

レトルト殺菌装置

【課題】被処理物の処理効率を向上することができるレトルト装置を提供する。
【解決手段】熱媒体噴射ノズル14は、収容部1204に収容された被処理物に、貯留部1202に貯留された熱媒体34を噴射させる。熱媒体循環回路16は、貯留部1202に貯留されている熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14に供給し、熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14から収容部1204に収容された被処理物に噴射させる。熱媒体加熱手段20は、熱媒体循環回路16で循環される熱媒体34を高温蒸気によって加熱する。高温側熱媒体タンク22は、ヒートポンプ26によって予備加熱される熱媒体34を貯える。低温側熱媒体タンク24は、ヒートポンプ26によって冷却される熱媒体34を貯える。熱媒体供給回路28は、ヒートポンプ26で加熱された熱媒体34と、ヒートポンプ26で冷却された熱媒体34とを選択的に熱媒体循環回路16に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品や医薬品などの被処理物を加圧下で加熱殺菌する際に使用されて好適なレトルト殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品などの被処理物を加熱殺菌する装置として、処理槽に収容された被処理物に熱媒体を噴射させる熱媒体噴射ノズルと、噴射された熱媒体を処理槽の底部から熱媒体噴射ノズルに循環させるようにした熱媒体循環回路とを含むレトルト装置が提供されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1のレトルト装置では、熱媒体循環回路で循環される熱媒体に高温蒸気を注入して熱媒体を直接加熱し、熱媒体循環回路で循環される熱媒体を、冷却装置によって冷却された熱媒体と交換することで熱媒体を冷却する。
特許文献2のレトルト装置では、熱媒体循環回路の途中に熱交換器を設け、熱媒体を熱交換器の2次側を通しつつ、高温蒸気を熱交換器の1次側に供給することで、熱媒体を間接的に加熱し、また、熱媒体を熱交換器の2次側を通しつつ、冷却水を熱交換器の1次側に供給することで熱媒体を間接的に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295411号
【特許文献2】特許第3546082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した何れのレトルト装置であっても、熱媒体を加熱する場合は熱媒体の温度を常温から予め定められた加熱殺菌に適した高温まで加熱するための時間を要し、熱媒体を冷却する場合は熱媒体の温度を高温から常温まで冷却するための時間を要する。
このような熱媒体の加熱、冷却に要する時間を如何にして短縮するかが、被処理物の処理効率の向上を図り、レトルト装置の性能を高める上で重要である。
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、被処理物の処理効率を向上することができるレトルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、処理槽に収容された被処理物に熱媒体を噴射させる熱媒体噴射ノズルと、前記噴射された熱媒体を前記処理槽の底部から前記熱媒体噴射ノズルに循環させ供給する熱媒体循環回路と、前記熱媒体循環回路で循環される前記熱媒体を加熱する熱媒体加熱手段と、前記熱媒体循環回路による前記熱媒体噴射ノズルへの前記熱媒体の供給と、前記熱媒体加熱手段による前記熱媒体の加熱とを制御する制御手段とを備えるレトルト装置であって、前記熱媒体を貯える高温側熱媒体タンクと、前記熱媒体を貯える低温側熱媒体タンクと、前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を予備加熱すると共に前記低温側熱媒体タンクの前記熱媒体を冷却するヒートポンプと、前記ヒートポンプで加熱された熱媒体と、前記ヒートポンプで冷却された熱媒体とを選択的に前記熱媒体循環回路に供給する熱媒体供給回路とが設けられ、前記制御手段は、前記ヒートポンプの動作と、前記熱媒体供給手段による前記予備加熱された熱媒体と前記冷却された熱媒体との選択的な供給とを制御することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、ヒートポンプによって予備加熱された熱媒体を熱媒体加熱手段で加熱して被処理物に噴射することで被処理物を加熱し、ヒートポンプによって冷却された熱媒体を被処理物に噴射することで被処理物を冷却するようにした。
したがって、被処理物を短時間で加熱し、かつ、加熱された被処理物を短時間で冷却することができるので、被処理物の処理効率を向上することができる。
また、1バッチの加熱殺菌処理中に、ヒートポンプによって熱媒体を予備加熱および冷却することにより、次のバッチの加熱殺菌処理で使用する予備加熱された熱媒体および冷却された熱媒体をそれぞれ用意できるため、被処理物の処理効率を向上することができる。
したがって、レトルト装置の性能を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレトルト装置において、前記熱媒体加熱手段による前記熱媒体の加熱は、前記熱媒体循環回路を通る前記熱媒体に高温蒸気を混合することによってなされることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、熱媒体に高温蒸気を混合して熱媒体を加熱するため、レトルト装置の構成を簡素化することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、処理槽に収容された被処理物に熱媒体を噴射させる熱媒体噴射ノズルと、前記噴射された熱媒体を前記処理槽の底部から熱交換器の2次側を通して前記熱媒体噴射ノズルに循環させ供給する第1の熱媒体循環回路と、前記熱交換器の1次側に高温蒸気を供給する蒸気供給回路と、前記第1の熱媒体循環回路による前記熱媒体噴射ノズルへの前記熱媒体の供給と、前記蒸気供給回路による前記熱交換器の1次側への高温蒸気の供給を制御する制御手段とを備えるレトルト装置であって、前記熱媒体を貯える高温側熱媒体タンクと、前記熱媒体を貯える低温側熱媒体タンクと、前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を予備加熱すると共に前記低温側熱媒体タンクの前記熱媒体を冷却するヒートポンプと、前記ヒートポンプで予備加熱された熱媒体を前記第1の熱媒体循環回路に供給する第1の熱媒体供給回路と、前記ヒートポンプで冷却された熱媒体を前記低温側熱媒体タンクと前記熱交換器の1次側との間で循環させる第2の熱媒体循環回路とが設けられ、前記制御手段は、前記ヒートポンプの動作と、前記第1の熱媒体供給回路による前記熱媒体の供給と、前記第2の熱媒体循環回路による前記ヒートポンプで冷却された熱媒体の循環とを制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、ヒートポンプによって予備加熱された熱媒体を熱交換器で加熱して被処理物に噴射することで被処理物を加熱し、ヒートポンプによって冷却された熱媒体により熱交換器で処理槽内の熱媒体を冷却して被処理物に噴射することで被処理物を冷却するようにした。
したがって、被処理物を短時間で加熱でき、かつ、被処理物を短時間で冷却できるので、被処理物の処理効率を向上することができる。
また、1バッチの加熱殺菌処理中に、ヒートポンプによって熱媒体を予備加熱および冷却することにより、次のバッチの加熱殺菌処理で使用する予備加熱された熱媒体および冷却された熱媒体をそれぞれ用意できるため、被処理物の処理効率を向上することができる。
したがって、レトルト装置の性能を高めることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のレトルト装置において、前記第1の熱媒体循環回路により前記熱媒体が前記熱交換器の2次側を介して循環されている状態で、常温の前記熱媒体を前記熱交換器の1次側を介して前記高温側熱媒体タンクに供給することにより前記熱交換器の2次側を通る前記熱媒体の熱を前記熱交換器の1次側を通る前記熱媒体に回収させる第2の熱媒体供給回路をさらに備え、前記制御手段は、前記第2の熱媒体供給回路による前記熱媒体の前記高温側熱媒体タンクへの供給を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、熱交換器の2次側を通る熱媒体の熱を、第2の熱媒体供給回路によって熱交換器の1次側を通り高温側熱媒体タンクに供給される熱媒体に回収させるようにした。
したがって、高温側熱媒体タンクに貯留される熱媒体の温度をより短時間で加熱できるため、被処理物の処理効率をより一層向上することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のレトルト装置において、前記第2の熱媒体供給回路は、前記熱交換器の1次側から前記高温側熱媒体タンクに供給される前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段を有し、前記制御手段による前記第2の熱媒体供給回路の制御は、前記温度検出手段によって検出される前記熱媒体の温度に基づいてなされることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、制御手段が温度検出手段で検出した温度に基づいて熱交換器の1次側を通る熱媒体の高温側熱媒体タンクへの供給を制御するので、熱交換器の2次側を通る熱媒体の熱の回収を確実に行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のレトルト装置において、前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を外部機器に供給する外部機器用熱媒体供給手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、熱を回収した高温側熱媒体タンクの熱媒体の過剰な熱を有効に使用しつつヒートポンプの能力を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒートポンプによって予備加熱された熱媒体およびヒートポンプによって冷却された熱媒体を利用して被処理物の加熱および冷却を行うようにしたので、被処理物の加熱および冷却に要する時間の短縮化を図れ、被処理物の処理効率を向上でき、レトルト装置の性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態におけるレトルト装置10の全体の構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態におけるレトルト装置10の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態における熱媒体34の加熱工程、殺菌工程を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態におけるレトルト装置10の全体の構成を示す構成図である。
【図5】第2の実施の形態におけるレトルト装置10の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態における熱媒体34の加熱工程、殺菌工程を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態における熱回収工程を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態における冷却工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるレトルト装置の実施の形態について図1を参照して説明する。
本実施の形態では、被処理物がレトルト食品(レトルトパウチ食品)である場合について説明する。レトルト食品は、プラスチックフィルム若しくは金属箔又はこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形に成形した容器(レトルトパウチ)に調製した食品を詰め、熱溶融により密封し、加圧加熱殺菌したものである。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態のレトルト装置10は、処理槽12と、熱媒体噴射ノズル14と、熱媒体循環回路16と、熱媒体排出回路18と、熱媒体加熱手段20と、高温側熱媒体タンク22と、低温側熱媒体タンク24と、ヒートポンプ26と、熱媒体供給回路28と、圧力調整手段30と、制御手段32とを含んで構成されている。
【0021】
処理槽12は、貯留部1202と、収容部1204とを含んで構成されている。
本実施の形態では、処理槽12は、水平方向に延在する円筒壁と、円筒壁の延在方向の一端に設けられた開口と、円筒壁の他端を閉塞する閉塞壁と、開口を開閉する密閉扉とを備えている。
貯留部1202は、処理槽12の底部に設けられ、熱媒体供給回路28から供給された熱媒体34を貯留するものである。本実施の形態では、熱媒体34は水である。
収容部1204は、被処理物が収容される部分であり、前記開口を介して被処理物を出し入れする。
【0022】
また、処理槽12には、水位計1206と、槽内用温度センサ1208が設けられている。
水位計1206は、貯留部1202に貯留された熱媒体34の液面の位置(水位)を検出するものである。
より詳細には、水位計1206は、処理槽12に配管を介して連通する金属製の容器と、水位検出用の3本の電極棒とを含んで構成されている。
3本の電極棒は、容器に挿入されて配設され、下端部の高さ位置が高位、中位、低位の3段階に異なる高水位用電極棒、中水位用電極棒、低水位用電極棒で構成されている。
各電極棒には電源の一方が接続され、容器には電源の他方が接続されており、水位計1206は、各電極棒と容器との導通状態の変化に応じて検出信号を制御手段32に供給する。
すなわち、水位計1206は、容器内の水位が高水位用電極棒、中水位用電極棒、低水位用電極棒にそれぞれ達することにより、容器の水位、すなわち、処理槽12の水位に応じた検出信号を制御手段32に供給する。より詳細には、高水位用電極棒で検出される水位は高水位、中水位用電極棒で検出される水位は中水位、低水位用電極棒で検出される水位は低水位となる。
なお、本実施の形態では、水位計1206が複数の電極棒を用いるものである場合につて説明したが、水位計1206の構成はこれに限定されるものではなく、水位計1206として従来公知のさまざまなものが使用可能である。
槽内用温度センサ1208は、収容部1204内の温度である槽内温度T1を検出するものである。
【0023】
熱媒体噴射ノズル14は、収容部1204に収容された被処理物に、貯留部1202に貯留された熱媒体34を噴射させるものである。
本実施の形態では、熱媒体噴射ノズル14は、貯留部1202に貯留された熱媒体34の液面よりも上方の箇所に配置され、収容部1204の左右幅方向の両側方に配置されている。また、熱媒体噴射ノズル14は、処理槽12の前後方向および上下方向に間隔をおいて複数設けられている。
熱媒体噴射ノズル14による熱媒体34の噴射は、被処理物の側方から被処理物に向けて熱媒体34を噴射することでなされる。
【0024】
熱媒体循環回路16は、貯留部1202に貯留されている熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14に供給することにより、熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14から収容部1204に収容された被処理物に噴射させ、熱媒体34により被処理物を加熱あるいは冷却するものである。貯留部1202に貯留されている熱媒体34は、噴射された熱媒体34および後述する熱媒体加熱手段20により熱媒体34に混合された高温蒸気が凝縮したドレンを含む。
熱媒体循環回路16は、熱媒体循環用配管1602と、熱媒体循環ポンプ1604とを含んで構成されている。
熱媒体循環用配管1602は、貯留部1202と熱媒体噴射ノズル14とを接続するものである。
熱媒体循環ポンプ1604は、熱媒体循環用配管1602に介設され、貯留部1202の熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14に向けて供給し、熱媒体噴射ノズル14から噴射されて貯留部1202に流れ落ちた熱媒体34を再び噴射ノズル14に供給するものである。
したがって、熱媒体循環回路16は、熱媒体34を、貯留部1202、熱媒体循環用配管1602、熱媒体循環ポンプ1604、熱媒体循環用配管1602、熱媒体噴射ノズル14、貯留部1202という経路で循環させることになる。
【0025】
熱媒体排出回路18は、貯留部1202に貯留されている使用済みの熱媒体34を排出するものである。
熱媒体排出回路18は、配管1802と、排水弁1804とを含んで構成されている。
配管1802は、貯留部1202と外部(下水溝)とを接続するものである。
排水弁1804は、配管1802に介設されている。
【0026】
熱媒体加熱手段20は、熱媒体循環回路16で循環される熱媒体34を高温蒸気によって加熱するものである。
本実施の形態では、熱媒体加熱手段20は、混合器2002と、蒸気供給用配管2004と、給蒸弁2006とを含んで構成されている。
混合器2002は、熱媒体循環用配管1602の中間箇所に設けられている。
蒸気供給配管2204は、不図示の蒸気供給源(ボイラ)と混合器2002とを接続する。
給蒸弁2006は、蒸気供給用配管2004に介設されている。
したがって、給蒸弁2006が開動作されると、蒸気供給源からの高温蒸気が蒸気供給配管2204を介して混合器2002に供給され、混合器2002において熱媒体34に高温蒸気が混合されることによって熱媒体34が加熱される。この場合、熱媒体34に混合された高温蒸気は凝縮したドレンとなって熱媒体34に混合される。
熱媒体加熱手段20は、熱媒体34に高温蒸気を混合して熱媒体34を加熱するため、レトルト装置10の構成を簡素化することができる。
【0027】
高温側熱媒体タンク22は、ヒートポンプ26によって予備加熱される熱媒体34を貯えるものである。
高温側熱媒体タンク22には、ボールタップ2202と、高温側熱媒体循環回路2204とが設けられている。
ボールタップ2202は、給水源から高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34の量(水量)を一定のレベルに制御するものである。
高温側熱媒体循環回路2204は、第1の循環用配管2204Aと、第1の循環ポンプ2204Bとを含んで構成されている。
第1の循環用配管2204は、高温側熱媒体タンク22と、ヒートポンプ26の第1の熱交換器38の2次側3804の一端3804Aおよび他端3804Bとを接続する。
第1の循環ポンプ2204Bは、第1の循環用配管2204Aに介設され熱媒体34を高温側熱媒体タンク22と第1の熱交換器38の2次側3804との間で循環させるものである。
【0028】
低温側熱媒体タンク24は、ヒートポンプ26によって冷却される熱媒体34を貯えるものである。
低温側熱媒体タンク24には、ボールタップ2402と、低温側熱媒体循環回路2404とが設けられている。
ボールタップ2402は、給水源から低温側熱媒体タンク24に貯留される熱媒体34の量(水量)を一定のレベルに制御するものである。
低温側熱媒体循環回路2404は、第2の循環用配管2404Aと、第2の循環ポンプ2404Bとを含んで構成されている。
第2の循環用配管2404は、低温側熱媒体タンク24と、ヒートポンプ26の第2の熱交換器42の2次側4204の一端4204Aおよび他端4204Bとを接続する。
第2の循環ポンプ2404Bは、第2の循環用配管2404Aに介設され熱媒体34を低温側熱媒体タンク24と第2の熱交換器42の2次側4204との間で循環させるものである。
【0029】
ヒートポンプ26は、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34を予備加熱すると共に低温側熱媒体タンク24の熱媒体34を冷却するものである。
ヒートポンプ26は、圧縮機36と、第1の熱交換器38と、膨張弁40と、第2の熱交換器42と、配管44とを含んで構成され、圧縮機36と、第1の熱交換器38と、膨張弁40と、第2の熱交換器42とは、配管44を介して直列に接続され閉ループを形成している。
圧縮機36は、気体である冷媒を圧縮することにより高温となった冷媒を第1の熱交換器38の1次側3802の一端3802Aに吐出する。
第1の熱交換器38は、1次側3802の一端3802Aから他端3802Bに流通する高温となった冷媒により2次側3804の一端3804Aから他端3804Bに流通する熱媒体34を間接的に加熱する。
第1の熱交換器38によって熱が奪われた冷媒は気体から液体となって第1の熱交換器38の1次側3802の他端3802Bから膨張弁40に移送される。
膨張弁40は、第1の熱交換器38の1次側3802から移送される冷媒を膨張させることにより冷媒を液体から気体とし、低温となった冷媒を第2の熱交換器42の1次側4202の一端4202Aに供給する。
第2の熱交換器42は、1次側4202の一端4202Aから他端4202Bに流通する低温となった冷媒により2次側4204の一端4204Aから他端4204Bに流通する熱媒体34を間接的に冷却する。
第2の熱交換器42の1次側4202の他端4202Bから吐出される冷媒は圧縮機36に戻る。このようにして上述した一連の動作(冷凍サイクル)が繰り返して実行される。
なお、冷媒として、例えば、COなどの従来公知のさまざまな冷媒が使用可能である。
【0030】
熱媒体供給回路28は、ヒートポンプ26で加熱された熱媒体34と、ヒートポンプ26で冷却された熱媒体34とを選択的に熱媒体循環回路16に供給するものである。
熱媒体供給回路28は、高温側配管2802と、高温側供給ポンプ2804と、低温側配管2806と、低温側供給ポンプ2808と、熱媒体切替弁2810と、熱媒体供給用配管2812と、熱媒体供給弁2814とを含んで構成されている。
高温側配管2802は、高温側熱媒体タンク22と熱媒体切替弁2810とを接続するものである。
高温側供給ポンプ2804は、高温側配管2802に介設され、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34を熱媒体切替弁2810に向けて移送するものである。
低温側配管2806は、低温側熱媒体タンク24と熱媒体切替弁2810とを接続するものである。
低温側供給ポンプ2808は、低温側配管2806に介設され、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34を熱媒体切替弁2810に向けて移送するものである。
熱媒体切替弁2810は、三方弁であり、高温側配管2802から供給される熱媒体34と、低温側配管2806から供給される熱媒体34との一方を選択して媒体供給用配管2812に導くものである。
熱媒体供給用配管2812は、熱媒体切替弁2810と処理槽12の貯留部1202とを接続するものである。
熱媒体供給弁2814は、熱媒体供給用配管2812に介設され、熱媒体切替弁2810から供給される熱媒体34の処理槽12の貯留部1202への供給を制御するものである。
【0031】
圧力調整手段30は、処理槽12内の圧力を調整するものである。
本実施の形態では、圧力調整手段30は、圧縮空気供給弁3002と、排気弁3004と、逆止弁3006と、減圧手段3008と、真空弁3010、エア供給弁3012と、開放弁3014と、逆止弁3016と、フィルタ3018とを含んで構成されている。
【0032】
圧縮空気供給弁3002は、不図示の圧縮空気供給源と処理槽12との間に接続されており、圧縮空気供給弁3002が開動作されることにより圧縮空気が処理槽12内に供給される。
【0033】
排気弁3004は、その上流側が処理槽12に接続され、下流側が逆止弁3006を介して処理槽12の外部に接続されており、排気弁3004が開動作すると、処理槽12内の加圧空気が排気弁3004、逆止弁3006を介して処理槽12外へ放出される。
【0034】
減圧手段3008は、処理槽12内を減圧するものであり、真空弁3010を介して処理槽12に接続され、エア供給弁3012および圧縮空気供給弁3002を介して前記の圧縮空気供給源に接続されている。
真空弁3010が開動作した状態で、エア供給弁3012および圧縮空気供給弁3002が開動作することで減圧手段3008に圧縮空気が供給され、これにより減圧手段3008が動作して処理槽12内が減圧される。
減圧手段3008としては、エアエゼクタが好適であるが、水封式真空ポンプなどのポンプを使用するなど従来公知のさまざまな装置が使用可能である。
【0035】
開放弁3014は、下流側が逆止弁3016を介して処理槽12に接続され、上流側がフィルタ3018を介して処理槽12外部に接続されている。
処理槽12内が負圧となった状態で開放弁3014が開動作すると、処理槽12外部の空気(大気)がフィルタ3018、開放弁3014、逆止弁3016を介して処理槽12内に供給され、これにより、処理槽12内が大気圧に戻る。この際、フィルタ3018は、処理槽12内に吸入される空気中の塵埃等を除去する。
【0036】
制御手段32は、水位計1206、槽内用温度センサ1208からの検出信号を受け付けると共に、熱媒体循環ポンプ1604、排水弁1804、給蒸弁2006、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404B、圧縮機36、高温側供給ポンプ2804、低温側供給ポンプ2808、熱媒体切替弁2810、熱媒体供給弁2814、排気弁3004、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014を被処理物の加熱殺菌処理手順に従って制御するものである。
制御手段32は、予め以下に示す各時間を計時するタイマ3202を備えており、タイマ2802の計時動作により以下の各時間が、それぞれ予め定められた設定時間に到達したか否か(設定時間を経過したか否か)を判定するように構成されている。
タイマ2802で計時する時間:
1)予備加熱および冷却時間(後述する熱媒体34の予備加熱および冷却工程で使用)
2)加熱殺菌処理時間(後述する殺菌工程で使用)
3)冷却処理時間(後述する被処理物の冷却工程で使用)
【0037】
このような制御手段32は、マイクロコンピュータによって構成することができる。
すなわち、マイクロコンピュータは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含んで構成されている。ROMはCPUが実行する加熱殺菌処理用の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供する。
そして、CPUが前記の制御プログラムを実行することにより制御手段32が実現される。
【0038】
次に、本実施の形態におけるレトルト装置10の処理手順について図2を参照して説明する。
図2に示すように、レトルト装置によるレトルト食品などの被処理物の加熱殺菌処理は、以下に示す各工程を順次実行することでなされる。
1)熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S10、S26)。
2)処理槽12への給水工程(S12)。
3)熱媒体34を加熱する加熱工程(S14)。
4)被処理物の殺菌工程(S16)。
5)被処理物の冷却工程(S18)。
6)処理槽12内の熱媒体34を排出する排水工程(S20)。
7)処理槽12内の加圧空気を排出して大気圧にする排気工程(S22)。
8)処理槽12内を一旦負圧にした後、大気圧に戻す終了工程(S24)。
以下、上記各工程について説明する。
【0039】
1)熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S10)。
加熱殺菌処理の開始と同時に、制御手段32は、ヒートポンプ26の圧縮機36と、第1の循環ポンプ2204Bと、第2の循環ポンプ2404Bとを起動すると共に、タイマ3202を起動させ計時動作を開始する。すなわち、タイマ3202により初回の熱媒体34の予備加熱および冷却工程の時間を計時させる。
制御手段32は、これ以降、加熱殺菌処理が実施される期間、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作を継続させる。
これにより、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34は、第1の熱交換器38によって予備加熱されつつ循環され、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34は、第2の熱交換器42によって冷却されつつ循環される。
第1の熱交換器38および予備加熱される熱媒体34の温度はそれぞれ以下のように例示される。
1次側3802の一端3802Aの温度:40℃
1次側3802の他端3802Bの温度:75℃
2次側3804の一端3804Aに流入する熱媒体34の温度:30℃
2次側3804の他端3804Bから高温側熱媒体タンク22に戻る熱媒体34の温度:65℃
第2の熱交換器42および冷却される熱媒体34の温度はそれぞれ以下のように例示される。
1次側4202の一端4202Aの温度:15℃
1次側4202の他端4202Bの温度:20℃
2次側4204の一端4204Aに流入する熱媒体34の温度:30℃
2次側4204の他端4204Bから低温側熱媒体タンク24に戻る熱媒体34の温度:25℃
このようなヒートポンプ26による予備加熱および冷却、第1の循環ポンプ2204Bおよび第2の循環ポンプ2404Bによる熱媒体34の循環により、やがて、高温側熱媒体タンク22には65℃に予備加熱された熱媒体34が貯えられ、低温側熱媒体タンク24には25℃に冷却された熱媒体34が貯えられる。
制御手段32は、タイマ3202の計時動作に基づいて、初回の熱媒体34の予備加熱および冷却工程の時間が予め定められた設定時間に到達したならば、給水工程(S12)に移行する。この設定時間は、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の温度が65℃に到達し、かつ、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34の温度が25℃に到達するために必要な時間以上に設定される。
【0040】
2)給水工程(S12)
処理槽12内に被処理物を収容し、前記の密閉扉を閉止する。
熱媒体切替弁2810、熱媒体供給弁2814、排水弁1804、給蒸弁2006、圧縮空気供給弁3002、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014は閉状態とし、排気弁3004は開状態として給水工程を実行する。
制御手段32は、熱媒体切替弁2810を高温側配管2802側に切り替えると共に、熱媒体供給弁2814を開動作させ、高温側供給ポンプ2804を起動して、高温側熱媒体タンク22から処理槽12の貯留部1202に予備加熱された熱媒体34を供給する。
制御手段32は、水位計1206の検出結果に基づいて貯留部1202の給水レベルが予め定められた所定の水位に到達したと判定したならば、高温側供給ポンプ2804を停止し、熱媒体供給弁2814を閉動作させ、排気弁3004を閉動作させる。本実施の形態では、制御手段32は、高水位用電極棒によって高位の水位が検出されると、貯留部1202への給水を停止する。
一方、高温側熱媒体タンク22から貯留部1202への給水に伴い、給水源から高温側熱媒体タンク22への給水が行われ、高温側熱媒体タンク22内の水量が減少した分だけ、給水源から補水される。
給水源から常温の水が補水されるため、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の温度は低下するが、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作が継続されることにより、熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S26)が実施されているため、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の温度はやがて元の温度65℃に復帰する。
【0041】
3)加熱工程(S14)
図3に示すように、制御手段32は、熱媒体循環ポンプ1604を動作させることにより熱媒体34を被処理物に循環して噴射させつつ、給蒸弁2006を開動作させ、高温蒸気を混合器2002から熱媒体34に混合させることにより熱媒体34を加熱する(S100、S102)。
熱媒体噴射ノズル14から被処理物に噴射された熱媒体34によって被処理物が加熱される。被処理物に噴射された熱媒体34は、被処理物に接触したのち、下方に流れ落ち貯留部1202へ落下して貯留され、貯留された熱媒体34は混合器2002により高温蒸気と混合されることで加熱され、熱媒体循環回路16により熱媒体噴射ノズル14から噴射される。このようにして熱媒体34は加熱されつつ循環して被処理物に噴射される。
また、熱媒体34に噴射された高温蒸気は噴射された熱媒体34に接触してドレンとなり、このドレンと熱媒体34とが混合して貯留部1202に貯留されるので、貯留部1202における熱媒体34の水位は徐々に上昇する。したがって、制御手段32は、貯留部1202に貯留される熱媒体34の水位が予め定められた水位となるように排水弁1804の開閉動作を制御する。本実施の形態では、制御手段32は、水位計1206で高水位用電極棒および中水位用電極棒の間に水位が検出されるように制御を行う。
制御手段32は、槽内用温度センサ1208で検出される槽内温度T1が予め定められた目標温度TAに到達したか否かを判定する(S104)。目標温度TAは、被処理物を加熱殺菌するために必要な高温(殺菌温度)であって、本実施の形態では、110℃〜120℃程度である。
【0042】
4)殺菌工程(S16)
制御手段32は、槽内温度T1が加熱目標温度TAに到達したならば、タイマ3202を起動させ計時動作を開始する(S106)。すなわち、タイマ3202によって、熱媒体噴射ノズル14から被処理物に熱媒体34を噴射させている時間である加熱殺菌処理時間を計時させる。
次いで、制御手段32は、槽内用温度センサ1208によって検出される槽内温度T1が加熱目標温度TAを維持するように、給蒸弁2006の開度を調整することで熱媒体34に混合する高温蒸気の供給量を制御する(S108)。
この結果、槽内温度T1が加熱目標温度TAに維持され、したがって、熱媒体34も加熱目標温度TAに維持された状態で熱媒体34が被処理物に噴射されることによって熱媒体34の加熱がなされる。
【0043】
制御手段32は、タイマ3202の計時動作に基づき、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が予め定められた第1の設定時間t1に到達したか否かを判定する(S110)。
制御手段32は、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が第1の設定時間t1に到達していなければ、S108に戻り、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が第1の設定時間t1に到達すれば、熱媒体循環ポンプ1604の運転を継続させたまま、給蒸弁3004を閉動作させて高温蒸気の供給を停止させる(S112)。これにより、被処理物の加熱殺菌処理が終了する。
【0044】
なお、殺菌工程における処理槽12内の圧力は大気圧より高く設定されている。
例えば、制御手段32は、処理槽12内に設けられた圧力センサ(不図示)の検出結果に基づいて圧縮空気供給弁3002および排気弁3004を開閉動作させることにより処理槽12内の圧力を大気圧より高い予め定められた目標圧力P1に制御する。
【0045】
4)冷却工程(S18)
冷却工程は以下の(a)〜(e)の手順で行われる。
(a)制御手段32は、熱媒体切替弁2810を低温側配管2806側に切り替えると共に、低温側供給ポンプ2808を起動して、水位計1206で中水位が検出されるまで低温側熱媒体タンク24から処理槽12の貯留部1202への冷却された熱媒体34の供給を行う。
(b)制御手段32は、中水位が検出されたならば、熱媒体34の処理槽12への供給を維持しつつ、水位計1206の検出結果に基づき、中水位を維持するように排水弁1804の開閉動作を制御し、熱媒体循環ポンプ1604を動作させて、熱媒体噴射ノズル14から熱媒体34を被処理物に向けて噴射させる。
噴射された熱媒体34は、被処理物を伝わって下方に流れ落ち貯留部1202に至り貯留される。貯留部1202に貯留された熱媒体34は、配管1602および熱媒体循環ポンプ1604を介して熱媒体噴射ノズル14から噴射される。このようにして熱媒体34は循環しながら被処理物に噴射され、被処理物の温度が徐々に低下する。
(c)制御手段32は、槽内用温度センサ1208によって検出される槽内温度T1が90℃〜100℃に低下したら、熱媒体循環ポンプ1604を停止し、給水弁2814を閉動作させ、低温側供給ポンプ2808を停止し、(d)に移行する。
(d)設定回数(0回〜5回)だけ、以下の(1)、(2)を繰り返す。
(1)制御手段32は、排水弁1804を開動作させ、水位計1206で低水位が検出されなくなったならば、排水弁1804を閉動作させ、給水弁2814を開動作させ、低温側供給ポンプ2808を動作させて、水位計1206で高水位が検出されるまで冷却された熱媒体34を処理槽12に供給する。
(2)制御手段32は、水位計1206で高水位が検出されたならば、給水弁2814を閉動作させ、低温側供給ポンプ2808を停止させ、タイマ3202を起動し、熱媒体循環ポンプ1604を動作させて、熱媒体噴射ノズル14から熱媒体34を被処理物に向けて噴射させる。これにより被処理物の冷却がなされる。タイマ3202の計時時間が予め定められた第1の冷却処理時間に到達したならば、熱媒体循環ポンプ1604を停止させる。
(e)(d)の設定回数が最後の運転では、制御手段32は、上記(1)、(2)の代わりに、タイマ3202を起動し、熱媒体循環ポンプ1604を動作させて熱媒体噴射ノズル14から熱媒体34を被処理物に向けて噴射させる。これにより被処理物の冷却がなされる。制御手段32は、熱媒体循環ポンプ1604の動作を維持した状態で、給水弁2814を開動作させ、低温側供給ポンプ2808を動作させて、水位計1206で中水位が検出される状態を維持するように、排水弁1804を開閉動作させる。タイマ3202の計時時間が予め定められた第2の冷却処理時間に到達したならば、熱媒体循環ポンプ1604、低温側供給ポンプ2808を停止させ、給水弁2814、排水弁1804を閉動作させる。
【0046】
なお、冷却工程(S18)においては、低温側熱媒体タンク24から貯留部1202への給水に伴い、給水源から低温側熱媒体タンク24への給水が行われ、低温側熱媒体タンク24内の水量が減少した分だけ、給水源から補水される。
給水源から常温の水が補水されるため、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34の温度は上昇するが、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作が継続されることにより、熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S26)が実施されているため、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34の温度はやがて元の温度25℃に復帰する。
【0047】
6)排水工程(S20)
制御手段32は、低温側供給ポンプ2808の停止を維持し、熱媒体循環ポンプ1604を停止させ、熱媒体供給弁2814の閉動作を維持し、排水弁1804を開動作させ処理槽12内の熱媒体34を全て排出させる。
制御手段32は、水位計1206の検出結果に基づいて処理槽12内の熱媒体34が全て排出されたと判定したならば、低温側供給ポンプ2808、熱媒体循環ポンプ1604の停止を維持し、給水弁1608の閉動作を維持し、排水弁1804の開動作を維持した状態で排水工程を終了する。
【0048】
7)排気工程(S22)
制御手段32は、排水弁1804の開動作を維持しつつ、排気弁3004を開動作させることにより、処理槽12内の加圧空気を排出する。
制御手段32は、前記の圧力センサにより処理槽12内の圧力が大気圧となったことが検出されたならば、排水弁1804および排気弁3004を閉動作させ、排気工程を終了する。
【0049】
8)終了工程(S24)
制御手段32は、真空弁3010、エア供給弁3012、圧縮空気供給弁3002を開動作させて減圧手段3008を動作させ処理槽12内を大気圧に対して僅かに負圧となるようにする。前記の圧力計により処理槽12内が負圧であることが検出されたならば、真空弁3010、エア供給弁3012、圧縮空気供給弁3002を閉動作させることによって減圧手段2408を停止させ、開放弁3014を開動作させる。
その後、前記の圧力計により処理槽12内が大気圧となったことが検出されたならば、終了工程を終了し、これにより1バッチ分の処理(運転)が完了する。
次いで、2回目以降の加熱殺菌処理を実施する場合には、給水工程(S12)に移行して上述の工程(S12)〜(S24)を繰り返して実行する。
【0050】
本実施の形態では、ヒートポンプ26によって予備加熱された熱媒体34を熱媒体加熱手段20で加熱して被処理物に噴射することで被処理物を加熱し、ヒートポンプ26によって冷却された熱媒体34を被処理物に噴射することで被処理物を冷却するようにした。
したがって、熱媒体34を短時間で加熱殺菌に適した温度まで加熱できるため、熱媒体34を常温から加熱する場合に比較して、被処理物を短時間で加熱でき、かつ、常温の熱媒体34を用いて冷却する場合に比較して、被処理物を短時間で冷却できるので、被処理物の処理効率を向上することができる。
また、1バッチの加熱殺菌処理中に、ヒートポンプ26によって熱媒体34を予備加熱および冷却することにより、次のバッチの加熱殺菌処理で使用する予備加熱された熱媒体34および冷却された熱媒体34をそれぞれ用意できるため、被処理物の処理効率を向上することができる。
したがって、レトルト装置10の性能を高めることができる。
【0051】
(変形例)
なお、第1の実施の形態では、単一の制御手段32によってレトルト装置10の全ての制御を実施した場合について説明した。
しかしながら、以下に示すような変形例のように、第1,第2の制御手段を設け、これら2つの制御手段によって制御するようにしてもよい。
(1)第1の制御手段:
熱媒体循環回路16、熱媒体排出回路18、熱媒体加熱手段20、熱媒体供給回路28、圧力調整手段30の制御を行う。
より詳細には、第1の制御手段は、水位計1206、槽内用温度センサ1208からの検出信号を受け付けると共に、熱媒体循環ポンプ1604、排水弁1804、給蒸弁2006、高温側供給ポンプ2804、低温側供給ポンプ2808、熱媒体切替弁2810、熱媒体供給弁2814、排気弁3004、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014の制御を行う。
ただし、第1の制御手段は、熱媒体循環回路16、熱媒体排出回路18、熱媒体加熱手段20、圧力調整手段30の制御を行うために必要なタイマを備える。
(2)第2の制御手段:
ヒートポンプ26の制御を行う。
より詳細には、第2の制御手段は、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404B、圧縮機36の制御を行う。
ただし、第2の制御手段は、ヒートポンプ26、熱媒体供給回路28の制御を行うために必要なタイマを備える。
このように第1,第2の制御手段を設けた場合には、第1の制御手段が休止している場合、すなわち、被処理物の殺菌、冷却にまつわる工程(S12〜S24)が休止されている場合であっても、第2の制御手段による制御を実施することで熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S10,S26)を独立して行い、冷温水を準備しておくことができる。
また、このように第1,第2の制御手段を分離することにより、高温側熱媒体タンク22と、低温側熱媒体タンク24と、ヒートポンプ26とを、レトルト装置10から独立した別の装置として取り扱うことも可能となる。
【0052】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、高温蒸気を熱媒体34に混合することにより熱媒体34を直接加熱し、処理槽12の熱媒体34を入れ替えることで熱媒体34を冷却する場合について説明したが、第2の実施の形態では、熱媒体34を熱交換器を用いて間接的に加熱および冷却する場合について説明する。
なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同様または同一の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略しあるいは簡単に行う。
【0053】
図4に示すように、第2の実施の形態のレトルト装置50は、処理槽12と、熱媒体噴射ノズル14と、熱媒体排出回路18と、高温側熱媒体タンク22と、低温側熱媒体タンク24と、ヒートポンプ26と、圧力調整手段30と、制御手段32と、熱交換器52と、第1の熱媒体循環回路54と、第2の熱媒体循環回路56と、蒸気供給回路58と、ドレン回収回路60と、第1の熱媒体供給回路62と、第2の熱媒体供給回路64と、を含んで構成されている。
処理槽12、熱媒体噴射ノズル14、熱媒体排出回路18、低温側熱媒体タンク24、ヒートポンプ26、圧力調整手段30については第1の実施の形態と同様に構成されているため説明を省略する。
【0054】
高温側熱媒体タンク22には、ボールタップ2202と、高温側熱媒体遮断弁2210とが設けられている。
高温側熱媒体遮断弁2210が開状態のときボールタップ2202が機能し、ボールタップ2202は、給水源から高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34の量(水量)を一定のレベルに制御する。
高温側熱媒体遮断弁2210が閉状態のときボールタップ2202は機能しない。
【0055】
熱交換器52は、熱媒体噴射ノズル14から噴射される熱媒体34の加熱、冷却を行うものである。
熱交換器52は、蒸気供給回路58から供給される高温蒸気と、第2の熱媒体循環回路56によって循環される熱媒体34とが流通する1次側5202と、第1の熱媒体循環回路54により循環される冷却された熱媒体34が流通する2次側5204とを備えている。
高温蒸気が1次側5202に供給された状態で熱媒体34が2次側5204を流通することで熱媒体噴射ノズル14から噴射される熱媒体34が加熱される。
冷却された熱媒体34が1次側5202を流通した状態で熱媒体34が2次側5204を流通することで熱媒体噴射ノズル14から噴射される熱媒体34が冷却される。
【0056】
第1の熱媒体循環回路54は、貯留部1202に貯留されている熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14に供給することにより、熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14から収容部1204に収容された被処理物に噴射させることにより、熱媒体34により被処理物を加熱あるいは冷却するものである。
第1の熱媒体循環回路54は、熱媒体循環用配管5402と、熱媒体循環ポンプ5404とを含んで構成されている。
熱媒体循環用配管5402は、貯留部1202と熱媒体噴射ノズル14とを接続するものであり、より詳細には貯留部1202と熱交換器52の2次側5204の一端5204Aとを接続する配管部分と、熱交換器52の2次側5204の他端5204Bと熱媒体噴射ノズル14とを接続する配管部分とを備える。
熱媒体循環ポンプ5404は、熱媒体循環用配管5402に介設され、貯留部1202の熱媒体34を熱媒体噴射ノズル14に向けて供給し、熱媒体噴射ノズル14から噴射されて貯留部1202に流れ落ちた熱媒体34を再び噴射ノズル14に供給するものである。
したがって、熱媒体循環回路16は、熱媒体34を、貯留部1202、熱媒体循環用配管5402、熱媒体循環ポンプ5404、熱交換器52の2次側5204、熱媒体循環用配管5402、熱媒体噴射ノズル14、貯留部1202という経路で循環させることになる。
【0057】
第2の熱媒体循環回路56は、ヒートポンプ26で冷却された熱媒体34を低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202との間で循環させるものである。
第2の熱媒体循環回路56は、第1、第2の冷却熱媒体循環用配管5602、5604と、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608と、冷却熱媒体供給ポンプ5610とを含んで構成されている。
第1の冷却熱媒体循環用配管5602は、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続している。
第2の冷却熱媒体循環用配管5604は、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続している。
第1の熱交換循環弁5606は第1の冷却熱媒体循環用配管5602に介設されている。
第2の熱交換循環弁5608は第2の冷却熱媒体循環用配管5604に介設されている。
冷却熱媒体供給ポンプ5610は、低温側熱媒体タンク24と第1の熱交換循環弁5606との間の第1の冷却熱媒体循環用配管5602の箇所に介設されている。
また、第1の冷却熱媒体循環用配管5602には、後述する第1の熱回収用切り換え弁6402が介設され、第2の冷却熱媒体循環用配管5604には、後述する第2の熱回収用切り換え弁6404が介設されている。
【0058】
蒸気供給回路58は、熱交換器52の1次側5202に高温蒸気を供給するものである。
蒸気供給回路58は、蒸気供給用配管5802と、給蒸弁5804とを含んで構成されている。
蒸気供給用配管5802は、不図示の蒸気供給源(ボイラ)と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続する。
給蒸弁5804は、蒸気供給用配管5802に介設されている。
【0059】
ドレン回収回路60は、蒸気供給回路58から熱交換器の1次側に供給された蒸気が凝縮されたドレンを回収して前記蒸気供給源に戻すものである。
ドレン回収回路60は、ドレン回収用配管6002と、排蒸弁6004と、ドレン回収用蒸気トラップ6006と、逆止弁6008とを含んで構成されている。
ドレン回収用配管6002は、熱交換器52の1次側5202の他端5202Bと前記蒸気供給源とを接続している。
排蒸弁6004は、ドレン回収用配管6002に介設されている。
ドレン回収用蒸気トラップ6006は、排蒸弁6004の下流側のドレン回収用配管6002の箇所に介設され、熱交換器52の1次側5202から流出したドレンのみを排出させる。
逆止弁6008は、ドレン回収用蒸気トラップ6006の下流側のドレン回収用配管6002の箇所に介設されている。
【0060】
第1の熱媒体供給回路62は、ヒートポンプ26で予備加熱された熱媒体34を第1の熱媒体循環回路54に供給するものである。
第1の熱媒体供給回路62は、高温側熱媒体供給用配管6202と、高温側熱媒体供給ポンプ6204と、高温側熱媒体供給弁6206とを含んで構成されている。
高温側熱媒体供給用配管6202は、高温側熱媒体タンク22と処理槽12の貯留部1202とを接続するものである。
高温側熱媒体供給ポンプ6204は、高温側熱媒体供給用配管6202に介設されている。
高温側熱媒体供給弁6206は、高温側熱媒体供給ポンプ6204の下流側の高温側熱媒体供給用配管6202の箇所に介設されている。
【0061】
第2の熱媒体供給回路64は、第1の熱媒体循環回路54により熱媒体34が熱交換器52の2次側5204を介して循環されている状態で、常温の熱媒体34を熱交換器52の1次側5202を介して高温側熱媒体タンク22に供給することにより熱交換器52の2次側5204を通る熱媒体34の熱を熱交換器52の1次側5202を通る熱媒体34に回収させるものである。
第2の熱媒体供給回路64は、前述した第1、第2の冷却熱媒体循環用配管5602、5604の一部と、第1、第2の熱回収用切り換え弁6402、6404と、熱回収用配管6406と、熱媒体用温度センサ6408とを含んで構成されている。
第1の熱回収用切り換え弁6402は、三方弁で構成され、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続する状態と、給水源と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続する状態とに切り替えられるように構成されている。
第2の熱回収用切り替え弁6404は、三方弁で構成され、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続する状態と、高温側熱媒体タンク22と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続する状態とに切り替えられるように構成されている。
熱媒体用温度センサ6408は、熱交換器52の1次側5202から高温側熱媒体タンク34に供給される熱媒体34の温度を検出する温度検出手段を構成している。
本実施の形態では、熱媒体用温度センサ6408は、第2の冷却熱媒体循環用配管5604に設けられ、第2の冷却熱媒体循環用配管5604を通る熱媒体34の温度を検出する。
【0062】
制御手段32は、水位計1206、槽内用温度センサ1208、熱媒体用温度センサ6408からの検出信号を受け付けると共に、排水弁1804、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404B、高温側熱媒体遮断弁2210、圧縮機36、熱媒体循環ポンプ5404、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608、冷却熱媒体供給ポンプ5610、給蒸弁5804、排蒸弁6004、高温側熱媒体供給ポンプ6204、高温側熱媒体供給弁6206、第1、第2の熱回収用切り換え弁6402、6404、排気弁3004、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014を被処理物の加熱殺菌処理手順に従って制御するものである。
制御手段32は、第1の実施の形態と同様に、予め以下に示す各時間を計時するタイマ3202を備えており、タイマ2802の計時動作により以下の各時間が、それぞれ予め定められた設定時間に到達したか否か(設定時間を経過したか否か)を判定するように構成されている。
タイマ2802で計時する時間:
1)予備加熱および冷却時間(後述する熱媒体34の予備加熱および冷却工程で使用)
2)加熱殺菌処理時間(後述する殺菌工程で使用)
3)冷却処理時間(後述する被処理物の冷却工程で使用)
【0063】
次に、第2の実施の形態におけるレトルト装置10の処理手順を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
1)熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S30)。
第1の実施の形態と同様に、加熱殺菌処理の開始と同時に、制御手段32は、ヒートポンプ26の圧縮機36と、第1の循環ポンプ2204Bと、第2の循環ポンプ2404Bとを起動すると共に、タイマ3202による初回の熱媒体34の予備加熱および冷却工程の時間の計時動作を開始させる。
制御手段32は、これ以降、加熱殺菌処理が実施される期間、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作を継続させる。
ヒートポンプ26、第1、第2の循環ポンプ2204B、2404Bの動作によりやがて高温側熱媒体タンク22には65℃に予備加熱された熱媒体34が貯えられ、低温側熱媒体タンク24には25℃に冷却された熱媒体34が貯えられる。
制御手段32は、タイマ3202の計時動作に基づいて、初回の熱媒体34の予備加熱および冷却工程の時間が予め定められた設定時間に到達したならば、給水工程(S32)に移行する。
【0065】
2)給水工程(S32)
処理槽12内に被処理物を収容し、前記の密閉扉を閉止する。
そして、給水工程の実行前の初期状態において、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608、給蒸弁5804、排蒸弁6004、高温側熱媒体供給弁6206、高温側熱媒体遮断弁2210、排水弁1804、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014は閉状態とし、排気弁3004は開状態とする。また、第1の熱回収用切り換え弁6402は、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続する状態とする。また、第2の熱回収用切り替え弁6404は、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続した状態とする。
制御手段32は、高温側熱媒体供給弁6206を開動作させると共に、高温側熱媒体供給ポンプ6204を起動して、高温側熱媒体タンク22から処理槽12の貯留部1202に予備加熱された熱媒体34を供給する。
制御手段32は、水位計1206の検出結果に基づいて貯留部1202の給水レベルが予め定められた所定の水位に到達したと判定したならば、高温側熱媒体供給ポンプ6204を停止し、高温側熱媒体供給弁6206を閉動作させ、排気弁3004を閉動作させる。
なお、高温側熱媒体タンク22から貯留部1202への給水に伴い、高温側熱媒体タンク22内の水量が減少するが、後述する熱回収工程(S38)によって高温側熱媒体タンク22は補水される。
【0066】
3)加熱工程(S34)
図6に示すように、制御手段32は、熱媒体循環ポンプ5404を動作させることにより、熱媒体噴射ノズル14により被処理物に向けて熱媒体34を循環して噴射させつつ、給蒸弁5804、排蒸弁6004を開動作させることにより、熱交換器52の1次側5202に高温蒸気を供給することにより、熱媒体34を間接的に加熱する(S300、S302)。
熱媒体噴射ノズル14から被処理物に噴射された熱媒体34によって被処理物が加熱される。被処理物に噴射された熱媒体34は、被処理物を伝わり下方に流れ落ちて処理槽12の貯留部1202に貯留され、貯留された熱媒体34は熱交換器52の2次側5204を流通することで高温蒸気により間接的に加熱され、熱媒体循環回路16により熱媒体噴射ノズル14から噴射される。このようにして熱媒体34は加熱されつつ循環して被処理物に噴射される。
制御手段32は、槽内用温度センサ1208で検出される槽内温度T1が予め定められた加熱目標温度TAに到達したか否かを判定する(S304)。加熱目標温度TAは、第1の実施の形態と同様に110℃〜120℃程度である。
【0067】
4)殺菌工程(S36)
制御手段32は、槽内温度T1が加熱目標温度TAに到達したならば、タイマ3202を起動させ計時動作を開始する(S306)。すなわち、タイマ3202によって、熱媒体噴射ノズル14から被処理物に熱媒体34を噴射させている時間である加熱殺菌処理時間を計時させる。
熱交換器52の1次側5202への高温蒸気の供給が維持されることで、2次側5204を槽内温度T1が加熱目標温度TAに維持され、したがって、熱媒体34も加熱目標温度TAに維持された状態で熱媒体34が被処理物に噴射されることによって熱媒体34の加熱がなされる。
【0068】
制御手段32は、タイマ3202の計時動作に基づき、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が予め定められた第1の設定時間t1に到達したか否かを判定する(S308)。
制御手段32は、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が第1の設定時間t1に到達していなければ、S308に戻り、加熱目標温度TAでの加熱殺菌処理時間が第1の設定時間t1に到達すれば、熱媒体循環ポンプ1604の運転を継続させたまま、給蒸弁5804、排蒸弁6004を閉動作させて高温蒸気の熱交換器52の1次側5202への供給を停止させる(S310)。これにより、被処理物の加熱殺菌処理が終了する。
なお、第1の実施の形態と同様に、殺菌工程における処理槽12内の圧力は、大気圧より高く設定されている。
【0069】
5)熱回収工程(S38)
熱回収工程については図7のフローチャートを参照して説明する。
制御手段32は、熱媒体循環ポンプ1604の動作を維持しつつ(S400)、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608を開動作させる(S402)。
そして、第1の熱回収用切り換え弁6402により給水源と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続し、かつ、第2の熱回収用切り替え弁6404により高温側熱媒体タンク22と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続させる(S404)。
これにより、給水源から供給された常温の水(熱媒体34)が熱交換器52の1次側5202を流通したのち、高温側熱媒体タンク22に供給される。この際、第1の熱媒体循環回路54により熱媒体34が熱交換器52の2次側5204を介して循環されることで、熱交換器52の2次側5204を通る熱媒体34の熱が熱交換器52の1次側5202を通る熱媒体34に回収されることになる。したがって、熱を回収した(加熱された)熱媒体34が高温側熱媒体タンク22に供給され、熱回収動作がなされる(S406)。
制御手段32は、熱媒体用温度センサ6408の検出結果に基づいて高温側熱媒体タンク22に供給される熱媒体34の温度Thが予め定められた設定温度T以下であるか否かを判定する(S408)。
この判定結果が否定であれば、S404を繰り返す。判定結果が肯定であれば、冷却工程(S40)に移行する。
このような熱回収工程(S38)により高温側熱媒体タンク22の補水がなされるが、高温側熱媒体タンク22の水位が予め定められたレベルに到達しない場合は給水源からの給水が必要となる。
そこで、制御手段32は、予め定められた時間、高温側熱媒体遮断弁2210を開動作させることによりボールタップ2202を機能させ、給水源から高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34の量(水量)を一定のレベルに制御する。
給水源から常温の水が高温側熱媒体タンク22に補水されるため、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の温度は低下するが、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作が継続されることにより、熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S48)が実施されているため、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の温度はやがて元の温度65℃に復帰する。
【0070】
6)冷却工程(S40)
冷却工程については図8のフローチャートを参照して説明する。
制御手段32は、冷却工程の開始と同時にタイマ3202を起動させ、熱媒体循環ポンプ5404の動作、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608の開状態を維持する(S500)。
そして、第1の熱回収用切り換え弁6402により低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の一端5202Aとを接続し、かつ、第2の熱回収用切り替え弁6404により低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202の他端5202Bとを接続させる。これにより高温側熱媒体タンク22への熱媒体34の供給が停止される。
この状態で、冷却熱媒体供給ポンプ5610を動作させることにより、低温側熱媒体タンク24の冷却された熱媒体34が、低温側熱媒体タンク24と熱交換器52の1次側5202との間で循環する。
この際、第1の熱媒体循環回路54により熱媒体34が熱交換器52の2次側5204を介して循環されることで、熱交換器52の1次側5202を通る熱媒体34によって熱交換器52の2次側5204を通る熱媒体34が徐々に冷却される。
これにより、熱媒体噴射ノズル14からの噴射される熱媒体34の温度が次第に低下していき、被処理物が徐々に冷却される(S502)。
制御手段32では、タイマ3202の計時動作に基づき、被処理物の冷却時間が予め定められた設定時間に到達したかを判定し(S504)、冷却時間が設定時間に到達しなければ、(S502)を維持し、到達した場合は、熱媒体循環ポンプ5404、冷却熱媒体供給ポンプ5610を停止し、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608を閉動作させ、熱媒体34の循環を停止させる。
これにより、処理槽12内の被処理物の冷却処理が終了し、次の排水工程(S42)に移行する。
【0071】
なお、冷却工程(S40)において、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34の温度は上昇するが、ヒートポンプ26、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404Bの動作が継続されることにより、熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S48)が実施されているため、低温側熱媒体タンク24の熱媒体34の温度はやがて元の温度25℃に復帰する。
【0072】
7)排水工程(S42)
制御手段32は、排水弁1804を開動作させ処理槽12内の熱媒体34を全て排出させる。
制御手段32は、水位計1206の検出結果に基づいて処理槽12内の熱媒体34が全て排出されたと判定したならば、熱媒体循環ポンプ5404、冷却熱媒体供給ポンプ5610の停止、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608の閉状態を維持した状態で排水工程を終了する。
【0073】
8)排気工程(S44)
制御手段32は、排水弁1804の開動作を維持しつつ、排気弁3004を開動作させることにより、処理槽12内の加圧空気を排出する。
制御手段32は、前記の圧力センサにより処理槽12内の圧力が大気圧となったことが検出されたならば、排水弁1804および排気弁3004を閉動作させ、排気工程を終了する。
【0074】
9)終了工程(S46)
制御手段32は、真空弁3010、エア供給弁3012、圧縮空気供給弁3002を開動作させて減圧手段3008を動作させ処理槽12内を大気圧に対して僅かに負圧となるようにする。前記の圧力計により処理槽12内が負圧であることが検出されたならば、真空弁3010、エア供給弁3012、圧縮空気供給弁3002を閉動作させることによって減圧手段2408を停止させ、開放弁3014を開動作させる。
その後、前記の圧力計により処理槽12内が大気圧となったことが検出されたならば、終了工程を終了し、これにより1バッチ分の処理(運転)が完了する。
次いで、2回目以降の加熱殺菌処理を実施する場合には、給水工程(S32)に移行して上述の工程(S32)〜(S46)を繰り返して実行する。
【0075】
第2の実施の形態では、ヒートポンプ26によって予備加熱された熱媒体34を熱交換器52で加熱して被処理物に噴射することで被処理物を加熱し、ヒートポンプ26によって冷却された熱媒体34により熱交換器52で処理槽12内の熱媒体34を冷却して被処理物に噴射することで被処理物を冷却するようにした。
したがって、熱媒体34を短時間で加熱殺菌に適した温度まで加熱できるため、熱媒体34を常温から加熱する場合に比較して、被処理物を短時間で加熱でき、かつ、常温の熱媒体34を用いて冷却する場合に比較して、被処理物を短時間で冷却できるので、被処理物の処理効率を向上することができる。
さらに、1バッチの加熱殺菌処理中に、ヒートポンプ26によって熱媒体34を予備加熱および冷却することにより、次のバッチの加熱殺菌処理で使用する予備加熱された熱媒体34および冷却された熱媒体34をそれぞれ用意できるため、被処理物の処理効率を向上することができる。
したがって、レトルト装置50の性能を高めることができる。
【0076】
また、第2の実施の形態では、熱回収工程(S38)において、第2の熱媒体供給回路64によって、第1の熱媒体循環回路54により熱媒体34が熱交換器52の2次側5204を介して循環されている状態で、常温の熱媒体34を熱交換器52の1次側5202を介して高温側熱媒体タンク22に供給することにより熱交換器52の2次側5202を通る熱媒体34の熱を熱交換器52の1次側5202を通る熱媒体34に回収させるようにした。
したがって、熱交換器52の2次側5204を通る熱媒体34の熱を高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34に回収させることにより、高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34の温度をより短時間に昇温できる。そのため、被処理物の処理効率をより一層向上することができる。
【0077】
また、第2の実施の形態では、制御手段32が熱媒体用温度センサ6408で検出した温度に基づいて熱交換器52の1次側5202を通る熱媒体34の高温側熱媒体タンク22への供給を制御するので、熱交換器52の2次側5204を通る熱媒体34の熱の回収を確実に行うことができる。
【0078】
なお、第2の実施の形態では、第2の熱媒体供給回路64によって熱回収した熱媒体34が高温側熱媒体タンク22に貯留されるため、ヒートポンプ26における予備加熱と冷却との熱収支から考えると、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の熱が過剰となる。
そのため、ヒートポンプ26により冷却能力が頭打ちとなり、ヒートポンプ26の能力を十分に使用することが難しくなる。
そのため、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34を外部機器に供給する外部機器用熱媒体供給手段を設けると、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34の過剰な熱を有効に使用しつつヒートポンプ26の能力を十分に発揮させることができる。
この場合、高温側熱媒体タンク22に貯留されている熱媒体34が外部機器に供給された分だけ不足することになる。したがって、制御手段32は、高温側熱媒体遮断弁2210を開動作させてボールタップ2202を機能させ、給水源から高温側熱媒体タンク22に貯留される熱媒体34の量(水量)が一定のレベルとなるように制御すればよい。
なお、高温側熱媒体タンク22の熱媒体34を使用する外部機器としては、レトルト装置50で蒸気源として使用するボイラや被処理物の洗浄機などが例示される。
【0079】
(変形例)
なお、第2の実施の形態では、単一の制御手段32によってレトルト装置10の全ての制御を実施した場合について説明した。
しかしながら、以下に示すような変形例のように、第1,第2の制御手段を設け、これら2つの制御手段によって制御するようにしてもよい。
(1)第1の制御手段:
熱媒体排出回路18、圧力調整手段30、第1の熱媒体循環回路54、第2の熱媒体循環回路56、蒸気供給回路58、ドレン回収回路60、第1の熱媒体供給回路62、第2の熱媒体供給回路64の制御を行う。
より詳細には、第1の制御手段は、水位計1206、槽内用温度センサ1208、熱媒体用温度センサ6408からの検出信号を受け付けると共に、排水弁1804、熱媒体循環ポンプ5404、第1、第2の熱交換循環弁5606、5608、冷却熱媒体供給ポンプ5610、給蒸弁5804、排蒸弁6004、高温側熱媒体供給ポンプ6204、高温側熱媒体供給弁6206、第1、第2の熱回収用切り換え弁6402、6404、排気弁3004、真空弁3010、エア供給弁3012、開放弁3014の制御を行う。
ただし、第1の制御手段は、圧力調整手段30、第1の熱媒体循環回路54、第2の熱媒体循環回路56、蒸気供給回路58、ドレン回収回路60、第1の熱媒体供給回路62、第2の熱媒体供給回路64の制御を行うために必要なタイマを備える。
(2)第2の制御手段:
ヒートポンプ26の制御を行う。
より詳細には、第2の制御手段は、第1の循環ポンプ2204B、第2の循環ポンプ2404B、圧縮機36の制御を行う。
ただし、第2の制御手段は、ヒートポンプ26の制御を行うために必要なタイマを備える。
このように第1,第2の制御手段を設けた場合には、第1の制御手段が休止している場合、すなわち、被処理物の殺菌、冷却にまつわる工程および熱回収工程(S32〜S46)が休止されている場合であっても、第2の制御手段による制御を実施することで熱媒体34の予備加熱および冷却工程(S30,S48)を独立して行い、冷温水を準備しておくことができる。
また、このように第1,第2の制御手段を分離することにより、高温側熱媒体タンク22と、低温側熱媒体タンク24と、ヒートポンプ26とを、レトルト装置10から独立した別の装置として取り扱うことも可能となる。
【0080】
なお、各実施の形態では、被処理物がレトルト食品である場合について説明したが、被処理物は缶詰や医薬品など任意である。
また、実施の形態では、加熱処理工程によって被処理物の殺菌を行う場合について説明したが、加熱処理工程によって被処理物の調理、あるいは、調理および殺菌の双方を行うなど任意である。
【符号の説明】
【0081】
10……レトルト装置
12……処理槽
1202……貯留部
1204……収容部
1208……槽内用温度センサ
14……熱媒体噴射ノズル
16……熱媒体循環回路
18……熱媒体排出回路
20……熱媒体加熱手段
22……高温側熱媒体タンク
24……低温側熱媒体タンク
26……ヒートポンプ
28……熱媒体供給回路
30……圧力調整手段
32……制御手段
50……レトルト装置
52……熱交換器
54……第1の熱媒体循環回路
56……第2の熱媒体循環回路
58……蒸気供給回路
60……ドレン回収回路
62……第1の熱媒体供給回路
64……第2の熱媒体供給回路
6408……熱媒体用温度センサ(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に収容された被処理物に熱媒体を噴射させる熱媒体噴射ノズルと、
前記噴射された熱媒体を前記処理槽の底部から前記熱媒体噴射ノズルに循環させ供給する熱媒体循環回路と、
前記熱媒体循環回路で循環される前記熱媒体を加熱する熱媒体加熱手段と、
前記熱媒体循環回路による前記熱媒体噴射ノズルへの前記熱媒体の供給と、前記熱媒体加熱手段による前記熱媒体の加熱とを制御する制御手段とを備えるレトルト装置であって、
前記熱媒体を貯える高温側熱媒体タンクと、
前記熱媒体を貯える低温側熱媒体タンクと、
前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を予備加熱すると共に前記低温側熱媒体タンクの前記熱媒体を冷却するヒートポンプと、
前記ヒートポンプで加熱された熱媒体と、前記ヒートポンプで冷却された熱媒体とを選択的に前記熱媒体循環回路に供給する熱媒体供給回路とが設けられ、
前記制御手段は、前記ヒートポンプの動作と、前記熱媒体供給手段による前記予備加熱された熱媒体と前記冷却された熱媒体との選択的な供給とを制御する、
ことを特徴とするレトルト装置。
【請求項2】
前記熱媒体加熱手段による前記熱媒体の加熱は、前記熱媒体循環回路を通る前記熱媒体に高温蒸気を混合することによってなされることを特徴とする、
請求項1に記載のレトルト装置。
【請求項3】
処理槽に収容された被処理物に熱媒体を噴射させる熱媒体噴射ノズルと、
前記噴射された熱媒体を前記処理槽の底部から熱交換器の2次側を通して前記熱媒体噴射ノズルに循環させ供給する第1の熱媒体循環回路と、
前記熱交換器の1次側に高温蒸気を供給する蒸気供給回路と、
前記第1の熱媒体循環回路による前記熱媒体噴射ノズルへの前記熱媒体の供給と、前記蒸気供給回路による前記熱交換器の1次側への高温蒸気の供給を制御する制御手段とを備えるレトルト装置であって、
前記熱媒体を貯える高温側熱媒体タンクと、
前記熱媒体を貯える低温側熱媒体タンクと、
前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を予備加熱すると共に前記低温側熱媒体タンクの前記熱媒体を冷却するヒートポンプと、
前記ヒートポンプで予備加熱された熱媒体を前記第1の熱媒体循環回路に供給する第1の熱媒体供給回路と、
前記ヒートポンプで冷却された熱媒体を前記低温側熱媒体タンクと前記熱交換器の1次側との間で循環させる第2の熱媒体循環回路とが設けられ、
前記制御手段は、前記ヒートポンプの動作と、前記第1の熱媒体供給回路による前記熱媒体の供給と、前記第2の熱媒体循環回路による前記ヒートポンプで冷却された熱媒体の循環とを制御する、
ことを特徴とするレトルト装置。
【請求項4】
前記第1の熱媒体循環回路により前記熱媒体が前記熱交換器の2次側を介して循環されている状態で、常温の前記熱媒体を前記熱交換器の1次側を介して前記高温側熱媒体タンクに供給することにより前記熱交換器の2次側を通る前記熱媒体の熱を前記熱交換器の1次側を通る前記熱媒体に回収させる第2の熱媒体供給回路をさらに備え、
前記制御手段は、前記第2の熱媒体供給回路による前記熱媒体の前記高温側熱媒体タンクへの供給を制御することを特徴とする、
請求項3に記載のレトルト装置。
【請求項5】
前記第2の熱媒体供給回路は、前記熱交換器の1次側から前記高温側熱媒体タンクに供給される前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記制御手段による前記第2の熱媒体供給回路の制御は、前記温度検出手段によって検出される前記熱媒体の温度に基づいてなされることを特徴とする、
請求項4に記載のレトルト装置。
【請求項6】
前記高温側熱媒体タンクの前記熱媒体を外部機器に供給する外部機器用熱媒体供給手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項4または5に記載のレトルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200188(P2012−200188A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66898(P2011−66898)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】