説明

レトルト装置

【課題】冷却工程における含気容器の変形を確実に防止することができるレトルト装置を提供する。
【解決手段】熱媒体循環回路34は、循環ポンプ3406を用いて熱媒体2を熱交換器26と処理槽12との間で循環させるものである。熱媒体循環回路34は、処理槽12に供給された熱媒体2を熱交換器26を介して蒸気、あるいは、冷却水4との間で熱交換させ、この熱交換された熱媒体2を処理槽12の内部で複数の熱媒体噴射ノズル14を用いて含気容器に向けて噴射させつつ熱交換器26と処理槽12との間で熱媒体を循環させる。バイパス回路36は、熱媒体2が循環ポンプ3406の出口側から熱交換器26の出口側にバイパスする回路である。流量調整手段は、バイパス回路36と熱交換器26とに分配される熱媒体2の流量を調整するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品と気体とを密封した含気容器を加圧下で加熱殺菌したのち冷却するレトルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品などの被処理物を処理槽内で加熱殺菌処理するレトルト装置が提供されている。
レトルト装置では、加熱殺菌処理後、処理槽内の熱媒体(水)を循環して被処理物に噴射することにより被処理物を冷却する冷却工程が実施される。
ところで、被処理物として食品と気体とを密封した含気容器、例えば、プリンや米飯などの食品と気体とを密封した含気容器を用いる場合、冷却工程における処理槽内の圧力に対して含気容器内の圧力が高すぎると含気容器が膨張して破損し、これとは反対に処理槽内の圧力に対して含気容器内の圧力が低すぎると含気容器が収縮して変形することが懸念される。
そこで、処理槽内の現在の槽内温度は、所定の遅れ時間経過後の含気容器内温度であるとして予想品温を算出する予想品温算出プログラムを設け、このプログラムにより算出した予想品温に基づいて殺菌槽内の圧力調節を行うようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
この技術では、被処理物の種類に応じて槽内温度と被殺菌物の温度(品温)とを実測する試験運転を行い、被処理物の種類毎に遅れ時間をプログラムに設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−45249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、冷却工程において処理槽温度の制御はなされず槽内圧力の制御のみがなされている。
したがって、投入負荷量(処理槽に投入された被処理物の量)、あるいは、冷却水の温度が、前記の試験運転時に比較して大きく変化すると、槽内温度も前記の試験運転時に比較して大きく変化することになる。
そのため、プログラムで設定された遅れ時間後の含気容器内の実際の温度は、プログラムによって予測される温度よりも低下あるいは上昇し、したがって、含気容器内の圧力も予想される圧力よりも低下あるいは上昇する。
一方、処理槽の圧力制御は、槽内温度の変化により生じる含気容器内の圧力の変化を反映することなく、プログラムで予測された含気容器内の温度に基づいてなされるため、含気容器内の圧力と槽内圧力とに差が生じ、含気容器の変形あるいはシール部の剥離といった不具合の発生が懸念される。
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、冷却工程における含気容器の変形を確実に防止することができるレトルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1記載に発明は、食品と気体とを密封した含気容器を収容する処理槽と、前記処理槽内の温度を検出する温度検出手段と、熱媒体の温度を調整する熱媒体温度調整手段と、入口側が前記処理槽の熱媒体貯留部に接続され、かつ、出口側が前記熱媒体温度調整手段の入口に接続された循環ポンプを用いて前記熱媒体を前記熱媒体温度調整手段と前記処理槽との間で循環させる熱媒体循環回路とを備え、前記処理槽に収容された前記含気容器を加熱する加熱工程を実施したのち、前記含気容器に前記熱媒体循環回路で循環される熱媒体を噴射させることにより前記含気容器を冷却する冷却工程を実施するレトルト装置であって、前記熱媒体が前記循環ポンプの出口側から前記熱媒体温度調整手段の出口側にバイパスするバイパス回路と、前記バイパス回路と前記熱媒体温度調整手段とに分配される前記熱媒体の流量を調整する流量調整手段と、前記検出された前記処理槽内の温度に基づいて前記流量調整手段を制御することにより前記熱媒体の温度を調整する制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、処理槽内の温度を検出し、検出された温度に基づいて、バイパス回路と熱媒体温度調整手段とに分配される熱媒体の流量を調整することにより、熱媒体の温度を調整するようにしたので、冷却工程において、含気容器に対して変形を発生させるような処理槽内の温度の変化を抑制できるため、含気容器の変形を確実に防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却工程における経過時間と前記槽内温度の制御目標温度とを対応付けた制御目標カーブを記憶する記憶手段を設け、前記制御手段は、前記検出された前記処理槽内の温度と前記制御目標カーブとの差分に基づいて前記流量調整手段を制御することにより前記処理槽内の温度を前記制御目標カーブに沿って変化させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、流量調整手段の制御を、制御目標カーブを用いて簡単に行うことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記流量調整手段は、前記循環ポンプの出口側と前記熱媒体温度調整手段の入口側と出口側とに接続された三方弁で構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、流量調整手段によるバイパス回路と熱媒体温度調整手段とに分配される熱媒体の流量の調整を、三方弁という簡単な構成で実現することができ、構成および制御の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出された処理槽内の温度に基づいて熱媒体の温度を的確に調整することで、含気容器に対して変形を発生させるような処理槽内の温度の変化を抑制したので、含気容器の変形を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態におけるレトルト装置10の全体の構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態における処理槽内温度の制御目標カーブX、含気容器内の圧力カーブYの説明図である。
【図3】実施の形態における処理槽内温度の制御目標カーブXのうち冷却工程部位と、この冷却工程部位に対応する含気容器内の圧力カーブYの説明図である。
【図4】実施の形態におけるレトルト装置10の加熱殺菌処理の一連の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるレトルト装置の実施の形態について、図1を参照して説明する。
本実施の形態では、被処理物は、食品(食材)と気体とを密封した含気容器である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態のレトルト装置10は、処理槽12と、給水手段13と、複数の熱媒体噴射ノズル14と、温度センサ16と、圧力センサ18と、熱交換器26と、熱媒体循環回路34と、槽内圧力調整手段22と、制御手段24とを含んで構成されている。
【0015】
処理槽12は、被処理物としての含気容器を収容する収容部1204と、被処理物の加熱・冷却のために循環・噴霧される熱媒体(熱媒水)2の一部が貯留される貯留部(熱媒体貯留部)1202とで構成されている。
処理槽12には、処理槽12内の温度を検出する温度センサ16(温度検出手段)と、処理槽12内の圧力を検出する圧力センサ18(圧力検出手段)とが設けられている。
【0016】
さらに、処理槽12には、含気容器の加熱・冷却のために熱媒水2を被処理物に向けて噴霧するための熱媒体噴射ノズル14が設けられている。
本実施の形態において、熱媒体噴射ノズル14は、処理槽12内に収容された各トレイの前後方向の中間に位置して、収容部1204の左右方向の両側方に配置され、それぞれ多段に積み重ねられた上下のトレイの間で作られる空間の高さ方向略中央に、各段のトレイに載置された含気容器全体に熱媒体2が接触するように噴射される。
なお、本例では、熱媒体噴射ノズル14は処理槽12の奥行き方向略中央に1対としたが、トレイが処理槽12の奥行き方向に複数収容されるような場合は、それぞれのトレイの奥行き方向略中央から噴霧されるよう、処理槽12の収容能力に合わせて、処理槽12奥行き方向に複数の噴射ノズルを設けることは言うまでもない。
【0017】
給水手段13は、熱媒体タンク1302と、給水配管1304と、給水ポンプ1306と、給水弁1308とを含んで構成され、熱媒体2が処理槽2から排出された後の新たな処理を実施する際の熱媒体2の供給や、冷却工程時の注水において、処理槽12内へ熱媒体2を供給するものである。
【0018】
熱交換器26は、熱媒体2を加熱・冷却させるものであり、熱媒体2の温度を調整する熱媒体温度調整手段を構成する。
熱交換器26の一次側2602には、本例では、蒸気供給回路28と冷却水供給回路32が接続され、二次側2604には、熱媒体循環回路34が接続されている。
蒸気供給回路28は、蒸気用配管2802と給蒸弁2804とで構成され、冷却水供給回路32はクーリングタワー40、冷却水循環ポンプ3206、第1、第2の冷却水遮断弁3202A、3202Bで構成されている。
【0019】
給蒸弁2804は、熱媒体2の加熱において、処理槽12内の温度に基づき、所要温度になるように制御手段24によりその開閉が制御される。
第1の冷却水遮断弁3202Aは、冷却水循環ポンプ3206の吐出側と熱交換器26との間に設けられ、処理槽12内が加熱されている間あるいは所定温度で保持されている間の工程では閉じられている。
また、第2の冷却水遮断弁3202Bは、熱交換器26とクーリングタワー40との間に設けられ、処理槽12内が加熱されている間あるいは所定温度で保持されている間の工程では閉じられている。
なお、本例では、循環する冷却水の冷却装置をクーリングタワー40としたが、被処理物の冷却温度に合わせて、チラーや蓄氷型冷却水供給装置などの冷水供給装置でも良く、また常温の水道水、あるいは地下水を直接熱交換器26に供給し、熱交換して温度が上昇した水を排出するようにしても良い。
【0020】
冷却水供給回路32には、また、ドレン回収回路30が接続されている。ドレン回収回路30は、熱交換器26において熱交換により蒸気が凝縮した水を回収、あるいは排出するものである。
ドレン回収回路30は、ドレン回収用配管3002と、排蒸弁3004と、ドレン回収用蒸気トラップ3006と、逆止弁3008とを含んで構成されている。
【0021】
熱媒体循環回路34は、循環ポンプ3406を用いて熱媒体2を熱交換器26と処理槽12との間を循環させるものである。
循環ポンプ3406は、処理槽12にある貯留部1202に貯留される熱媒体12を吸引するように接続され、処理槽12と熱交換器26の二次側2604の入口側の間に設けられている。
本実施の形態では、熱媒体循環回路34は、熱媒体2を熱交換器26によって加熱あるいは冷却し、処理槽12内で熱媒体噴射ノズル14を用いて含気容器に向けて噴射させ、トレイ間を落下して貯留部1202に貯留した熱媒体2を再び循環させる。
【0022】
熱媒体循環回路34には、また、熱交換器26をバイパスするバイパス回路36が設けられている。熱媒体循環回路34からのバイパス回路36へ切り換えるため、熱交換器26の二次側2604の入口側と循環ポンプ36の吐出側との間には開度を変えることで任意の流量配分に流量調整が可能な三方弁42が設けられている。
三方弁42によって、熱媒体2の一部あるいは全量を熱交換器26側とバイパス回路36側とに流量を分配することができ、処理槽12へ循環する熱媒体2の温度を調整することができる。すなわち、三方弁42は、バイパス回路36と熱交換器26とに分配される熱媒体2の流量を調整する流量調整手段を構成している。
なお、本例では、バイパス回路36と熱媒体循環回路34の2つの回路の流量を調整する手段として三方弁42を用いたが、熱交換器26の二次側2604の入口側と熱媒体循環回路34のバイパス回路分岐部との間にモータ弁を設けるとともに、バイパス回路36にモータ弁を設けるなど、流量を調整する手段は特に問わない。
【0023】
槽内圧力調整手段22は、槽内圧力を調整するもので、本実施の形態では、加圧弁2202と排気弁2204とで構成される。
加圧弁2202は、不図示の圧縮空気供給源と処理槽12とを接続する配管に介設され、処理槽12内の圧力を上昇させるときに用いる。一方、排気弁2204は、処理槽12内の気体を処理槽12外へ排出し、処理槽12内の圧力を低下させるときに用いる。
【0024】
制御手段24は、温度センサ16、圧力センサ18からの検出信号を受け付けると共に、排水弁1210、給水弁1308、給蒸弁2804、排蒸弁3004、第1、第2の冷却水遮断弁3202A、3202B、三方弁42、加圧弁2202、排気弁2204、給水ポンプ1306、冷却水循環ポンプ3206、熱媒体循環ポンプ3406を含気容器の加熱殺菌処理手順に従って制御するものである。
制御手段24は、マイクロコンピュータによって構成することができる。
すなわち、マイクロコンピュータは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含んで構成されている。ROMはCPUが実行する加熱殺菌処理用の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供する。
そして、CPUが前記の制御プログラムを実行することにより、制御手段24が実現される。
【0025】
制御手段24は、CPUが前記の制御プログラムを実行することにより実現されるものであり、制御手段24は、機能的には、タイマー24Aと、槽内温度制御手段24Bと、槽内圧力制御手段24Cとを備える。
本実施の形態では、制御手段24は、記憶手段24Dを備える。
記憶手段24Dは、例えば、前記のROMによって構成することができる。なお、記憶手段24Dは、制御手段24の外部に設けられた外部記憶手段によって構成してもよい。
本実施の形態では、制御手段24は、記憶手段24Dを備え、記憶手段24Dには、槽内温度の目標制御温度を示す温度カーブと、槽内圧力の目標制御圧力を示す圧力カーブとが格納されている。
【0026】
タイマー24Aは、含気容器を加熱殺菌する加熱殺菌工程、加熱された含気容器を冷却する冷却工程を含む工程のそれぞれの経過時間を計時するものである。
【0027】
ここで、処理槽内温度の制御目標カーブX、含気容器内の圧力カーブYについて、図2を用いて説明する。
処理槽内温度の制御目標カーブXは、オペレータが入力する情報(含気容器に封入された食材の保持温度Th、保持温度までの昇温時間t1、および保持時間t2−t1)に基づいて、プログラムされる処理槽12内の温度制御の目標カーブである。
含気容器内の圧力カーブYは、得られた処理槽内温度の制御目標カーブXと、さらにオペレータが入力した食材に関する情報から、後述する計算式に基づいて、加熱開始から冷却終了までの一定時間ごとの含気容器内の圧力変化を演算して求められる。
図2のA、B、Cは、含気容器に封入された主に熱的に特性の異なる食材を示している。食材A、食材B、食材Cを同一の処理槽内温度の制御目標カーブXで制御するときに、後述する計算式によって得られる含気容器内の圧力カーブYが食材ごとに変わることを示している。
【0028】
槽内温度制御手段24Bは、オペレータが入力する情報(保持温度Th、保持温度までの昇温時間t1、および保持時間t2−t1)に基づき、処理槽12内の温度を処理槽内温度の制御目標カーブXをプログラムし、処理槽12内の温度を処理槽内温度の制御目標カーブXに沿うように制御する。
【0029】
槽内圧力制御手段24Cは、含気容器内の圧力カーブYに沿って、処理槽12内の圧力を制御する。具体的には、槽内圧力制御手段24Cは、含気容器内の圧力カーブYと同一、あるいは含気容器内圧力カーブYに対して、処理槽12内の圧力が+200hPa〜−100hPaの範囲となるように制御する。
なお、槽内温度制御手段24Bによる槽内温度の制御と、槽内圧力制御手段24Cによる槽内圧力の制御とは独立して実施され、槽内温度および槽内圧力の一方の検出値に基づいて他方を調整するといった制御は行わない。
【0030】
前記計算式は以下のようにして決定される。
予め、含気容器に封入された代表的な食材(例えば、プリン、米飯、煮豆など)について、保持温度(Th)と保持温度までの昇温時間(t1)と保持時間(t2−t1)とをある条件で設定して、レトルト装置10を運転した場合の含気容器内の圧力の時間変化を実測しておく。
次に、含気容器内の温度は処理槽12内の温度と等しいと仮定して求められる含気容器内の温度に相応する飽和蒸気圧力と、前記実測した含気容器内の圧力とを比較する。
そして、処理槽12内の温度の変化に対して、処理槽12内の温度から算出される圧力が、前記実測した含気容器内の圧力と等しくなるように定数(時定数)を設定し、処理槽12内の温度から含気容器内の圧力を計算する式(一次遅れの式)を得る。
なお、時定数は食材の特性によって異なるため、食材毎に実測カーブ(含気容器内の圧力の時間変化)を求めておき、上記と同様の手順により食材毎に時定数を求めて、それぞれの食材の一次遅れの式を記憶手段24Dに格納しておく。処理対象の含気容器に封入された食材が、実測された食材と違っている場合は、熱的な特徴が類似した食材で得られた計算式を選択して運転を行えばよい。
従って、オペレータは、加熱殺菌処理を実施するに先立って、含気容器に封入された食材の種類、保持温度Th、保持温度までの加熱時間t1、保持温度での保持時間t2−t1の各パラメータをレトルト装置10の入力部(図示省略)から制御手段24に入力する。
制御手段24は、入力されたパラメータに基づいて、処理槽内温度の制御目標カーブXをプログラムし、さらに、この処理槽内温度の制御目標カーブXと食材の種類のデータから、含気容器内の圧力カーブYを、前記計算式を用いて演算して求め、これを記憶手段24Dに格納する。言い換えると、図2に示す食材A、B、Cの何れかに対応する圧力カーブYを選択して記憶手段24Dに格納する。
【0031】
次に、本実施の形態におけるレトルト装置10の処理手順について、図4を参照して説明する。
図4に示すように、レトルト装置による含気容器の加熱殺菌処理は、以下に示す各工程を順次実行することでなされる。
1)処理槽14への給水工程(S10)。
2)含気容器を加圧下で加熱殺菌する加熱殺菌工程(S12)。
3)含気容器を加圧下で冷却する冷却工程(S14)。
4)処理槽14内の熱媒体28を排出する排水工程(S16)。
5)処理槽14内の加圧空気を排出して大気圧にする排気工程(S18)。
以下、上記各工程について説明する。
【0032】
1)給水工程(S10)
処理槽12内に含気容器を収容し、処理槽12の密閉扉(図示省略)を閉じる。
また、給水工程の実行前の初期状態において、排水弁1210、給水弁1308、給蒸弁2804、排蒸弁3004、第1、第2の冷却水遮断弁3202A、3202B、加圧弁2202、排気弁2204は閉状態にあり、排気弁2204は開状態にある。
また、三方弁42は、熱交換器26の2次側2604を通過する熱媒体2の量が100%となり、熱交換器26の2次側2604を通過しない量(バイパス回路36を流れる熱媒体2の量)が0%となるように開度が調整されている。
制御手段24は、給水弁1308を開動作させ、給水ポンプ1306を起動して、熱媒体タンク1302から処理槽12の貯留部1202に熱媒体2を給水させる。制御手段24は、貯留部1202に予め定められた量の熱媒体2が貯留されたならば、給水ポンプ1306の動作を停止させると共に、給水弁1308を閉動作させる。
なお、制御手段24による給水手段13の制御は、貯留部1202に設けた水位計を用いるなど従来公知の構成を用いればよく、本発明の要旨と直接関わらないため、詳細な説明は省略する。
【0033】
2)加熱殺菌工程(S12)
制御手段24は、熱媒体循環ポンプ3406を起動し、熱媒体循環回路34により熱媒体2を循環させて処理槽12の含気容器に熱媒体噴射ノズル14から熱媒体2を噴射させつつ、給蒸弁2804および排蒸弁3004を開動作させる。
これにより、蒸気供給回路28によって熱交換器26の1次側2602に蒸気が供給され、熱交換器2602により蒸気と熱媒体2との間で熱交換がなされ、熱媒体2が加熱される。
そして、加熱された熱媒体2が熱媒体循環回路34により循環されることにより処理槽12の含気容器に熱媒体噴射ノズル14から熱媒体2が噴射され、処理槽12内の含気容器が加熱される。
制御手段24は、加熱殺菌工程の開始と同時にタイマー24Aをリセットして計時動作を開始させる。
制御手段24(槽内温度制御手段24B)は、タイマー24Aで計時される計時時間(経過時間t)に基づいて図2に示す制御目標カーブXから読み出した槽内温度の制御目標温度と温度センサ16で検出された槽内温度との差分に基づいて給蒸弁2804の開度を制御して熱媒体2の温度を調整することにより槽内温度を制御目標カーブXのうち温度上昇部位(経過時間tが0からt1までの期間に対応)に沿って変化させる(温度上昇工程)。
槽内温度が保持温度Th(例えば121℃)に到達したならば、予め定められた保持時間(t2−t1)保持するように制御目標カーブXの温度保持部位に沿って槽内温度を保持する(温度保持工程)。
また、制御手段24(槽内圧力制御手段24C)は、タイマー24Aで計時される計時時間(経過時間t)に基づいて図2に示す圧力カーブYから読み出した含気容器内の圧力(槽内圧力の制御目標圧力)と圧力センサ18で検出された槽内圧力との差分に基づいて、槽内圧力調整手段22を制御して槽内圧力を調整することにより槽内圧力を圧力カーブYに沿って変化させる。
制御手段24は、タイマー24Aの計時動作に基づき、制御目標カーブX、圧力カーブYに基づいた加熱殺菌処理を継続させる。
制御手段24は、制御目標カーブXに基づいて保持時間(t2−t1)が終了したと判定したならば、熱媒体循環ポンプ3406の運転を継続させたまま、給蒸弁2804、排蒸弁3004を閉動作させる。
これにより、加熱殺菌工程が終了する。
【0034】
4)冷却工程(S14)
制御手段24は、第1、第2の冷却水遮断弁3202A、3202Bを開動作させ、熱媒体循環ポンプ3406の運転を継続させると共に、冷却水循環ポンプ3206を起動して冷却水4を冷却水循環回路32に循環させる。
これにより、冷却水循環回路32によって熱交換器26の1次側2602に冷却水4が循環され、熱交換器2602により冷却水4と熱媒体2との間で熱交換がなされ、熱媒体2が冷却される。
【0035】
冷却工程の開始直後、三方弁42の開度は、加熱殺菌工程の場合と同様に、熱交換器26の2次側2604を通過する熱媒体2の量が100%となり、熱交換器26の2次側2604を通過しない量が0%となるように開度が調整されている。
冷却された熱媒体2が熱媒体循環回路34により循環されることにより処理槽12の含気容器に熱媒体噴射ノズル14から熱媒体2が噴射されることにより、処理槽12内の含気容器が冷却される。
制御手段24(槽内温度制御手段24B)は、タイマー24Aで計時される計時時間(経過時間t)に基づいて槽内温度を図3に示す制御目標カーブXのうち冷却工程部位(経過時間tがt2以降の期間に対応)に沿って変化させる。
すなわち、制御目標カーブXから読み出した槽内温度の制御目標温度と温度センサ16で検出された槽内温度との差分に基づいて三方弁42を制御して熱媒体2の温度を調整することにより槽内温度を制御目標カーブXに沿って変化させる。
具体的には、熱交換器26の2次側2604を通過する熱媒体2の量と熱交換器26の2次側2604を通過しない量の比率を調整することにより含気容器に噴射される熱媒体2の温度を調整し、これにより槽内温度を制御目標カーブXに沿って変化させる。
したがって、熱媒体2の温度は、制御目標カーブXの冷却工程部位に沿って時間経過と共に低下していく。
【0036】
本実施の形態では、槽内温度の制御目標温度は、時間経過と共に次第に低下し、最終目標温度(例えば40℃)に到達したらならば、熱交換器26の2次側2604に分配される熱媒体2の量が100%となるように三方弁42の開度を調整し、予め定められた設定時間に到達するまでこの状態を継続する。これにより、含気容器内は槽内温度の最終目標温度(例えば40℃)以下まで成り行きで冷却される。
制御手段24(槽内圧力制御手段24C)は、タイマー24Aで計時される計時時間(経過時間t)に基づいて図3に示す圧力カーブYから読み出した槽内圧力の制御目標温度と圧力センサ18で検出された槽内圧力との差分に基づいて、槽内圧力調整手段22を制御して槽内圧力を調整することにより槽内圧力を圧力カーブYに沿って変化させる。
【0037】
制御手段24は、タイマー24Aの計時動作に基づき、冷却時間が予め定められた設定時間に到達するまで制御目標カーブX、圧力カーブYに基づいた冷却処理を継続させる。
制御手段24は、タイマー24Aの計時動作に基づき含気容器の冷却時間が予め定められた設定時間に到達したと判定したならば、熱媒体循環ポンプ3406の運転を停止し、第1、第2の冷却水遮断弁3202A、3202Bを閉動作させ、冷却水循環ポンプ3206を停止し、冷却水4の循環を停止する。
これにより、冷却工程が終了する。
【0038】
4)排水工程(S16)
制御手段24は、排水弁32を開動作させ、含気容器の加熱殺菌および冷却処理に供された、貯留部1202に貯留されている熱媒体2を排水弁1210を介して排出させる。
制御手段24は、貯留部1202の熱媒体2が完全に排出されたと判定すると、排水工程を終了する。
【0039】
5)排気工程(S18)
制御手段24は、処理槽12の排水弁1210を開状態に保持したまま、処理槽12の排気弁2204を開動作させ、処理槽12内の加圧空気を処理槽12外へ排出して処理槽12内を大気圧にする。
制御手段24は、圧力センサ18の検出信号に基づいて処理槽12内が大気圧になったと判定したならば、排気工程が終了する。
以上で含気容器に対する一連の加熱殺菌処理が実施される。
【0040】
以上説明したように本実施の形態によれば、熱媒体2が循環ポンプ3406の出口側から熱交換器26の出口側にバイパスするバイパス回路36と、バイパス回路36と熱交換器26とに分配される熱媒体2の流量を調整する流量調整手段とを設け、処理槽12内の温度を検出し、検出された槽内温度に基づいて流量調整手段を制御することにより熱媒体2の温度を調整するようにした。
したがって、冷却工程において、含気容器に対して変形を発生させるような処理槽12内の温度の変化を抑制できるため、含気容器の変形を確実に防止することができる。
なお、含気容器に対して変形を発生させるような処理槽12内の温度の変化が生じるケースとして、冬季においてクーリングタワー40で冷却される冷却水4が非常に低温となった場合、熱交換器26によって急速に熱媒体2が冷却されることにより、処理槽12内の温度が急激に低下するといったケースが例示される。
【0041】
また、本実施の形態では、冷却工程における経過時間と槽内温度の制御目標温度とを対応付けた制御目標カーブXを記憶する記憶手段24Dを設け、検出された処理槽内の温度と制御目標カーブXとの差分に基づいて流量調整手段としての三方弁42を制御することにより処理槽12内の温度を制御目標カーブXに沿って変化させるようにした。
したがって、流量調整手段の制御を、制御目標カーブXを用いて簡単に行うことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、流量調整手段は、循環ポンプ3406の出口側と熱交換器26の入口側と出口側とに接続された三方弁42で構成されている。
したがって、流量調整手段によるバイパス回路36と熱交換器26とに分配される熱媒体2の流量の調整を、三方弁38という簡単な構成で実現することができ、構成および制御の簡素化を図ることができる。
【0043】
なお、実施の形態では、加熱殺菌工程によって含気容器内の食品の殺菌を行う場合について説明したが、含気容器を加熱することによって含気容器内の食品の調理、あるいは、調理および殺菌の双方を行うなど任意である。
また、実施の形態では、加熱殺菌工程において、熱媒体2を熱交換器26を介して蒸気によって間接的に加熱する場合について説明した。しかしながら、熱媒体2に蒸気を注入することで熱媒体2を直接加熱してもよいし、処理槽12内に蒸気を供給して含気容器を加熱してもよく、加熱殺菌工程をどのような構成で行うかは任意である。
【符号の説明】
【0044】
2……熱媒体
4……冷却水
10……レトルト装置
12……処理槽
1202……収容部
1204……貯留部
14……熱媒体噴射ノズル
16……温度センサ(温度検出手段)
18……圧力センサ(圧力検出手段)
22……槽内圧力調整手段
24……制御手段
24A……タイマー
24B……槽内温度制御手段
24C……槽内圧力制御手段
24D……記憶手段
26……熱交換器(熱媒体温度調整手段)
32……冷却水循環回路
34……熱媒体循環回路
36……バイパス回路
40……クーリングタワー
42……三方弁(流量調整手段)
X……処理槽内温度の制御目標カーブ
Y……含気容器内の圧力カーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品と気体とを密封した含気容器を収容する処理槽と、
前記処理槽内の温度を検出する温度検出手段と、
熱媒体の温度を調整する熱媒体温度調整手段と、
入口側が前記処理槽の熱媒体貯留部に接続され、かつ、出口側が前記熱媒体温度調整手段の入口に接続された循環ポンプを用いて前記熱媒体を前記熱媒体温度調整手段と前記処理槽との間で循環させる熱媒体循環回路とを備え、
前記処理槽に収容された前記含気容器を加熱する加熱工程を実施したのち、前記含気容器に前記熱媒体循環回路で循環される熱媒体を噴射させることにより前記含気容器を冷却する冷却工程を実施するレトルト装置であって、
前記熱媒体が前記循環ポンプの出口側から前記熱媒体温度調整手段の出口側にバイパスするバイパス回路と、
前記バイパス回路と前記熱媒体温度調整手段とに分配される前記熱媒体の流量を調整する流量調整手段と、
前記検出された前記処理槽内の温度に基づいて前記流量調整手段を制御することにより前記熱媒体の温度を調整する制御手段とを設けた、
ことを特徴とするレトルト装置。
【請求項2】
前記冷却工程における経過時間と前記槽内温度の制御目標温度とを対応付けた制御目標カーブを記憶する記憶手段を設け、
前記制御手段は、前記検出された前記処理槽内の温度と前記制御目標カーブとの差分に基づいて前記流量調整手段を制御することにより前記処理槽内の温度を前記制御目標カーブに沿って変化させることを特徴とする、
請求項1に記載のレトルト装置。
【請求項3】
前記流量調整手段は、前記循環ポンプの出口側と前記熱媒体温度調整手段の入口側と出口側とに接続された三方弁で構成されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のレトルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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