説明

レドックスフロー電池

【課題】高い起電力が得られ、効率よく運転可能なレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】RF電池1は、メインセル2aと、モニタセル2bと、電圧計測手段13と、充放電判定手段と、参照データ記憶手段と、SOC演算手段とを具える。電圧計測手段13は、モニタセル2bの開放電圧を計測する。充放電判定手段は、メインセル2aが充電時か放電時かを判定する。参照データ記憶手段は、予めメインセル2aの充電時と放電時とでそれぞれ求めた充電参照データと放電参照データとを記憶する。SOC演算手段は、電圧計測手段13で計測した開放電圧を用いてSOCを演算する。その際、SOC演算手段は、充放電判定手段の判定結果に基づき、充電時には計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算し、放電時には計測した開放電圧と放電参照データからSOCを演算する。正極電解液は、正極活物質としてマンガンイオンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関するものである。特に、高い起電力が得られ、効率よく運転可能なレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった新エネルギーの導入が世界的に推進されている。これらの発電出力は、天候に影響されるため、大量に導入が進むと、周波数や電圧の維持が困難になるといった電力系統の運用に際しての問題が予測されている。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の貯蓄、負荷平準化などを図ることが期待される。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間に隔膜を介在させた電池要素に正極電解液及び負極電解液をそれぞれ供給して充放電を行う。上記電解液は、代表的には、酸化還元により価数が変化する金属イオンを含有する水溶液が利用される。正極に鉄イオン、負極にCrイオンを用いる鉄−クロム系レドックスフロー電池の他、正極及び負極の両極にVイオンを用いるバナジウム系レドックスフロー電池が代表的である(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のバナジウム系レドックスフロー電池は、充放電するメインセルに加えて、運転時中の電解液の充電状態を求めるためにモニタセルを具える。電解液の充電状態を把握することで、過充電を防止するなど、効率よく運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−16217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バナジウム系レドックスフロー電池は、実用化されており、今後も使用が期待される。しかし、従来の鉄−クロム系レドックスフロー電池やバナジウム系レドックスフロー電池では、起電力が十分に高いとは言えない。今後の世界的な需要に対応するためには、更に高い起電力を有し、かつ、活物質に用いる金属イオンを安定して供給可能な、好ましくは安定して安価に供給可能な新たなレドックスフロー電池の開発が望まれる。
【0007】
また、バナジウム系レドックスフロー電池のように、運転時中の電解液の充電状態を把握できれば、効率よく運転できて好ましい。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、高い起電力が得られ、効率よく運転可能なレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
起電力を向上するためには、標準酸化還元電位が高い金属イオンを活物質に用いることが考えられる。従来のレドックスフロー電池に利用されている正極活物質の金属イオンの標準酸化還元電位は、Fe2+/Fe3+が0.77V、V4+/V5+が1.0Vである。本発明者らは、正極活物質となる金属イオン(活物質イオン)として、水溶性の金属イオンであり、従来の金属イオンよりも標準酸化還元電位が高く、バナジウム(V)よりも比較的安価で、資源供給面においても優れると考えられるマンガン(Mn)を用いたレドックスフロー電池を検討した。Mn2+/Mn3+の標準酸化還元電位は、1.51Vであり、Mnイオンは、起電力がより大きなレドックス対を構成するための好ましい特性を有する。また、本発明者らは、負極活物質となる金属イオンとしてチタン(Ti)に着目し、そのTiを用いたレドックスフロー電池を検討した。Ti4+/Ti3+の標準酸化還元電位は、0Vであり、このチタンも起電力がより高いレドックス対を構成するための好ましい特性を有する。特に、正極活物質としてMnイオンを、負極活物質としてTiイオンを用いたレドックスフロー電池は、高い起電力を得ることができるレドックスフロー電池として期待される。
【0010】
本発明者らが更に検討した結果、正極電解液に正極活物質としてMnイオンを含有するレドックスフロー電池では、その開放電圧と充電状態(SOC:State of Charge、充電深度ともいう)との関係(以下、単に「相関関係」ということがある)が、充電時と放電時とで異なる、との知見を得た。
【0011】
従来のバナジウム系レドックスフロー電池では、上記相関関係が充電時と放電時とでほとんど差がない。そのため、モニタセルを利用して開放電圧を計測すると、その開放電圧から充電時か放電時かの一つの相関関係データを参照することで、容易にSOCを把握することができる。
【0012】
一方、正極電解液に正極活物質としてMnイオンを含有するレドックスフロー電池では、上記相関関係が充電時と放電時とで乖離していることがわかった。そのため、従来と同様にモニタセルを利用して開放電圧を計測しても、充電時と放電時のいずれかの上記相関関係を参照しただけでは、正確なSOCを把握できない。
【0013】
上記知見により、本発明は、充電時か放電時か判定する手段を具え、充電時か放電時かによってそれぞれ異なる相関関係によりSOCを求めることを提案する。
【0014】
本発明レドックスフロー電池は、正極電解液及び負極電解液をメインセルに供給して充放電を行うもので、モニタセルと、電圧計測手段と、充放電判定手段と、参照データ記憶手段と、SOC演算手段とを具える。モニタセルは、メインセルに供給される電解液と共通の電解液が供給される。電圧計測手段は、モニタセルの開放電圧を計測するためのものである。充放電判定手段は、メインセルが充電時か放電時か判定する。参照データ記憶手段は、予めメインセルの充電時に求めた充電時開放電圧と正極電解液のSOCとの関係を示す充電参照データと、予めメインセルの放電時に求めた放電時開放電圧とSOCとの関係を示す放電参照データとを記憶する。SOC演算手段は、電圧計測手段で計測した開放電圧を用いてSOCを演算する。それに際し、SOC演算手段は、充放電判定手段の判定結果に基づき、充電時には計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算し、放電時には計測した開放電圧と放電参照データからSOCを演算する。そして、正極電解液は、正極活物質としてマンガンイオンを含有する。
【0015】
本発明レドックスフロー電池によれば、マンガン(Mn)イオンを含有する正極電解液を用いた場合でも、計測した開放電圧から正確なSOCを求めることができる。というのも、正極電解液にMnイオンを含有する場合、詳しくは後述するが、図2に示すグラフ(縦軸:開放電圧(V)、横軸:MnのSOC(%))のように、予め求めた充電参照データ(太線)と放電参照データ(細線)とが大きく乖離している。しかし、充放電判定手段を具えることで、両参照データが大きく乖離していても、充電時には充電参照データから、放電時には放電参照データからそれぞれSOCを演算できるので、正確なSOCを得ることができる。従って、常に正確なSOCを得られるので、レドックスフロー電池を効率よく運転可能である。
【0016】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、正極電解液は、さらにチタンイオンを含有し、SOCが0%から150%までの範囲でメインセルを充放電することが挙げられる。この場合、充電参照データは、極大変位点を有する。そのため、さらに電圧判定手段と、データ数判定手段と、データ特定手段とを具える。電圧判定手段は、計測した開放電圧が、極大変位点の電圧値よりも高いか否かを判定する。データ数判定手段は、充電参照データ中に、計測した開放電圧に対応する電圧値が単数あるか複数あるかを判定する。データ特定手段は、計測した開放電圧に対応する充電参照データ中の電圧値が、極大変位点よりも高SOC側の電圧値か低SOC側の電圧値かを判定する。そして、SOC演算手段は、計測した開放電圧が電圧判定手段により極大変位点の電圧値以下と判定され、データ数判定手段により電圧値の数が単数と判定された場合には、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算する。また、SOC演算手段は、計測した開放電圧が電圧判定手段により極大変位点の電圧値以下と判定され、データ数判定手段により電圧値の数が複数と判定され、計測した開放電圧がデータ特定手段により低SOC側の電圧値と特定された場合には、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算する。SOC演算手段は、放電時には、計測した開放電圧と放電参照データからSOCを演算する。
【0017】
上記の構成によれば、さらにチタン(Ti)イオンを含有する正極電解液を用いて、SOCが0%から150%(Mnイオンの反応を全て1電子反応(Mn2+→Mn3++e)で計算)まで充放電する場合でも、計測した開放電圧から正確なSOCを求めることができる。正極電解液が上記のイオン種を含む場合、SOCが100%を超える範囲でも充放電できる。例えば、SOCが0%から150%まで充放電する場合、図5に示すグラフ(縦軸:開放電圧(V)、横軸:MnのSOC(%))のように、充電参照データ(太線)と放電参照データ(細線)が、大きく乖離しているだけでなく、SOCが100%近傍で充電参照データの傾きが大きく変化している。加えて、100%近傍に極大変位点を有する。そのため、計測した開放電位に対応する電圧値が充電参照データ中に複数存在する場合があり、この複数の電圧値のどの電圧値が真に計測した開放電圧に対応する電圧値かを特定しなければ、充電参照データを参照しても正確なSOCが得られない。しかし、充放電判定手段に加えて、さらに電圧判定手段、データ数判定手段、及びデータ特定手段を具えることで、充電参照データ上の開放電圧に対応する電圧値を特定することができ、正確にSOCを得ることができる。
【0018】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、正極電解液がさらにチタンイオンを含有し、SOCが0%から150%までメインセルを充放電する場合で、かつ次に示す場合には、SOC演算手段は、充電電気量からSOCを演算することが挙げられる。その場合とは、計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値超と判定された場合、または計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値以下と判定され、前記データ数判定手段により電圧値の数が複数と判定され、計測した開放電圧がデータ特定手段により高SOC側の電圧値と特定された場合をいう。
【0019】
上記の構成によれば、計測した開放電圧が、例えば図5に示すように、極大変位点の高SOC側のような複雑な曲線の領域内に対応する場合でも、充電電気量から正確なSOCを得ることができる。
【0020】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、正極電解液がさらにチタンイオンを含有し、SOCが0%から150%までメインセルを充放電する場合、負極電解液は、負極活物質としてチタンイオンを含有することが挙げられる。このとき、負極電解液の活物質量が、正極電解液の活物質量の1.0倍超1.5倍以下であることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、負極電解液に負極活物質としてチタンイオンを含有する場合に、負極電解液の活物質量を上記の範囲とすることで、正極電解液のSOCを所望の範囲まで充放電できる。
【0022】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、正極電解液がさらにチタンイオンを含有し、SOCが0%から100%までの範囲でメインセルを充放電することが挙げられる。この場合、さらに電圧差演算手段と、参照データ作成手段と、範囲判定手段とを具える。電圧差演算手段は、充電参照データと放電参照データにおいて、同じSOCにおける充電時開放電圧と放電時開放電圧との差を演算する。参照データ作成手段は、上記電圧差が所定値以下となる範囲では、充電時開放電圧と放電時開放電圧に近似する充放電用参照データを演算する。範囲判定手段は、計測した開放電圧が、前記電圧差の所定値以下となる範囲か否かを判定する。そして、SOC演算手段では、計測した開放電圧が充放電用参照データを作成した電圧範囲内の場合、当該充放電用参照データからSOCを演算する。また、SOC演算手段は、計測した開放電圧が充放電用参照データを作成した電圧範囲外の場合、範囲判定手段の判定結果に基づき、充電時には充電参照データからSOCを演算し、放電時には放電参照データからSOCを演算する。
【0023】
上記の構成によれば、さらに正極電解液にチタンイオンを含有し、SOCが0%から100%までメインセルを充放電する場合でも、計測した開放電圧から正確なSOCを求めることができる。この電解液でかつSOCが上記の範囲の場合、図8に示すグラフ(縦軸:開放電圧(V)、横軸:MnのSOC(%))のように、充電参照データ(太線)と放電参照データ(細線)とが略近似している。そのため、電圧差演算手段と参照データ作成手段を具えることで、予め参照データとして充電参照データと放電参照データの両方に近似する充放電用参照データを求めておくことができ、充放電用参照データから正確なSOCを得ることができる。
【0024】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、正極電解液がさらにチタンイオンを含有し、SOCが0%から100%までメインセルを充放電する場合、SOCが20%以上100%以下において、SOC演算手段は、計測した開放電圧と充放電用参照データからSOCを演算することが挙げられる。
【0025】
上記の構成によれば、特にSOCが20%から100%までは、図8に示すように、充電参照データと放電参照データが一層近似しているため、両参照データを近似した充放電用参照データからでも正確なSOCを得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のレドックスフロー電池は、Mnイオンを含有する正極電解液を使用するため高い起電力が得られ、計測した開放電圧から正確なSOCを得ることができるので効率よく運転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】各実施形態に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図2】実施形態1に係るレドックスフロー電池の正極電解液における充電参照データと放電参照データとの関係を示すグラフである。
【図3】実施形態1に係るレドックスフロー電池の機能ブロック図である。
【図4】実施形態1に係るレドックスフロー電池の正極電解液の充電状態を求める手順を示すフローチャートである。
【図5】実施形態2に係るレドックスフロー電池の正極電解液おける充電参照データと放電参照データとの関係を示すグラフである。
【図6】実施形態2に係るレドックスフロー電池の機能ブロック図である。
【図7】実施形態2に係るレドックスフロー電池の正極電解液の充電状態を求める手順を示すフローチャートである。
【図8】実施形態3に係るレドックスフロー電池の正極電解液おける充電参照データと放電参照データとの関係を示すグラフである。
【図9】実施形態3に係るレドックスフロー電池の機能ブロック図である。
【図10】実施形態3に係るレドックスフロー電池の正極電解液の充電状態を求める手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明レドックスフロー電池の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態のレドックスフロー電池に具わる構成の大部分は共通するため、その共通する構成を図1に基づいて説明する。その後、各実施形態に固有の構成についてそれぞれ図面を参照しつつ説明する。
【0029】
《レドックスフロー電池の共通構成》
[全体構成]
レドックスフロー電池1(以下、RF電池)は、セルスタック2と、セルスタック2に供給/排出される正極電解液を貯留する正極電解液タンク3aと、セルスタック2に供給/排出される負極電解液を貯留する負極電解液タンク3bと、セルスタック2と各タンク3a、3bとを連結する電解液の輸送路となる配管4a、4b、5a、5bとを具える。また、セルスタック2に電解液を容易に供給できるように供給用の配管4a、4bには、それぞれポンプ6a、6bを具える。
【0030】
セルスタック2は、RF電池用のセルを複数積層させた積層体構造であり、通常の充放電運転に使用するメインセル2aと、開放電圧を計測するためのモニタセル2bとを具える。メインセル2aは、交流/直流変換器11に接続され、交流/直流変換器11を介して、発電部(例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他、一般の発電所など)と電力系統や需要家とに接続され、発電部を電力供給源として充電を行い、電力系統や需要家を電力提供対象として放電を行う。モニタセル2bは、メインセル2aと共通して各極の電解液が輸送されるセルであり、系統に接続されず、通常は充放電に用いられないセルである。このようなセルスタック2と正極電解液タンク3a及び配管4a、5aにて正極電解液循環路を構成し、セルスタック2と負極電解液タンク3b及び配管4b、5bにて負極電解液循環路を構成する。
【0031】
メインセル2aとモニタセル2bを構成するセルの基本的構成は、従来のセルと同様であり、隔膜により正極セルと負極セルとに分離され、正極セルに正極電極、負極セルに負極電極を内蔵し、各電極にそれぞれ正極電解液、負極電解液が供給される。代表的には、電極は、カーボンフェルトからなるものが挙げられ、隔膜は、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜といったイオン交換膜が挙げられる。各セルの間は、セルフレームに一体化された双極板が介在されている。そのため、双極板の一面に正極電極、他面に負極電極が配置される。セルフレームは、電解液を供給する給液孔及び電解液を排出する排液孔を有し、かつ上記双極板の外周に形成される枠体(図示せず)を具える。
【0032】
[電解液]
本実施形態のRF電池1に用いられる正極電解液には、正極活物質としてMnイオンを含有するものを使用する。正極電解液にMnイオンを含有する場合、負極電解液との組み合わせとして、以下の(1)〜(3)のいずれかとすることが挙げられる。
【0033】
(1)正極用電解液は、マンガンイオンを含有し、負極用電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(2)正極用電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有し、負極用電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(3)正極用電解液及び負極用電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有する。
【0034】
そうすることで、好ましいRF電池1を構成することができる。特に、上記(1)、(2)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質に上記列挙したチタンイオンやバナジウムイオンなどを用いることで、高い起電力が得られる。上記(3)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質にチタンイオンを用いることで、高い起電力が得られる。更に、上記(2)、(3)の電解液において正極活物質をマンガンイオンとし、別途チタンイオンを含有することで、高い起電力が得られる上に、電池抵抗の増加につながる析出物の発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
電解液の溶媒としては、HSO、KSO、NaSO、HPO、H、KPO、NaPO、KPO、HNO、KNO、及びNaNOから選択される少なくとも一種の水溶液を利用することができる。
【0036】
上記交流/直流変換器11は、メインセル2aの端子電圧A(V)が計測できる計測手段(図示せず)、及び充放電電流C(A)が計測できる電流計測手段13を具えているものを用い、各計測手段からの計測結果がコンピュータなどの運転制御手段20に伝送されるように配線を介して運転制御手段20に接続される。モニタセル2bには、開放電圧を計測するべく電圧計測手段12を接続させ、この電圧計測手段12は、計測結果が運転制御手段20に伝送されるように配線を介して運転制御手段20に接続される。なお、本例では、運転制御手段20にて交流/直流変換器11を制御して、外部からの充電、外部への放電を制御する。また、ポンプ6a、6bも運転制御手段20に配線を介して接続させており、運転制御手段20にてポンプ6a、6bの駆動も制御する。本例において運転制御手段20は、記憶、演算、判定などの種々の処理が行えるコンピュータを用いた。運転制御手段20は、詳しくは後述する。
【0037】
上述の構成を具えるRF電池1は、電解液に含有するイオン種や、充放電の別、或いは開放電圧の範囲によって、運転制御手段20を用いてSOCを求める手順が異なる。そのため、以下に3つの実施形態に分けて説明する。
【0038】
《実施形態1》
実施形態1のRF電池1では、正極活物質としてMnイオンのみ含有する正極電解液を用いる場合を説明する。ここでは、負極電解液には、負極活物質としてTiイオンを含有するものを使用する。
【0039】
本発明者らが上記電解液を使用する場合に、メインセルの充電時と放電時とでそれぞれ開放電圧とSOCとの関係を調べた。
【0040】
本例では、正極電解液として硫酸濃度が2.5Mの硫酸水溶液(HSOaq)に硫酸マンガン(2価)を溶解して、Mnイオン(2価)の濃度が1.0Mの電解液を用意した。一方、負極電解液として、硫酸濃度が2.5Mの硫酸水溶液(HSOaq)に硫酸チタン(4価)を溶解して、チタンイオン(4価)の濃度が1.0Mの電解液を用意した。各極の電極には、カーボンフェルト、隔膜には、デュポン社製Nafion117(登録商標)を用いた。そして、上記各極の電解液をそれぞれ25ml(25cc)ずつ用意して、これらの電解液を用いて充放電を行った。充電と放電とを切り替えるときの切替電圧は1.85V程度とした。充電及び放電はいずれも、電流密度:50mA/cmの定電流で行った。そして、モニタセル2b(図1)を用いて開放電圧を求め、SOCは、通電した電気量(積算値:A×h(時間))が全て充電(1電子反応:Mn2+→Mn3++e)に使用されたと想定し、以下の計算式から演算で求めた。それにより、両者の相関関係を求めた。
【0041】
充電電気量(A・秒)=充電時間(t)×充電電流(I)
活物質電気量=モル数×ファラデー定数=体積×濃度×96,485(A・秒/モル)
理論充電時間=活物質電気量/充電電流(I)
SOC=充電電気量/理論充電電気量
=(充電時間×電流)/(理論充電時間×電流)
=充電時間/理論充電時間
【0042】
その結果、図2に示すグラフのように、充電時における開放電圧とSOCとの関係を示すデータ(太線)と、放電時における開放電圧とSOCとの関係を示すデータ(細線)が異なるとの知見を得た。この知見から、充電時と放電時とでそれぞれのデータからSOCを求めると正確なSOCが得られることがわかった。このような知見に基づいて、本例では以下の運転制御手段20を用いて、各データを充電参照データと放電参照データとして使用する。
【0043】
[運転制御手段]
運転制御手段20は、図3に示すように、充放電判定手段31と、参照データ記憶手段32と、SOC演算手段33とを具える。
【0044】
充放電判定手段31は、電流計測手段13で計測した結果に基づいて充電時か放電時かを判定する。具体的には、メインセル2aに流れる電流の向きは、充電時と放電時とで逆方向となるため、その方向を電流路の途中にコイルを設けるなどして計測することで充電時か放電時か判定することが挙げられる。
【0045】
参照データ記憶手段32は、予め充電時に求めた充電時開放電圧と正極電解液のSOCとの関係を示す充電参照データ(図2太線)と、予め放電時に求めた放電時開放電圧と正極電解液のSOCとの関係を示す放電参照データ(図2細線)とを記憶する。各参照データは、上述したように、充電時と放電時とでモニタセル2b(図1)を利用して開放電圧を求め、SOCは演算により求める。それにより、両者の相関関係を求めておくことが挙げられる。
【0046】
SOC演算手段33は、電圧計測手段12で計測したモニタセル2bの開放電圧を用いてSOCを演算する。その際、充放電判定手段31の判定結果に基づいて、参照データ記憶手段32から充電時と放電時とで各々対応する参照データを呼びだして演算を行う。具体的には、充電時には、計測した開放電圧と、参照データ記憶手段32により記憶した充電参照データからSOCを演算する。放電時には、計測した開放電圧と、参照データ記憶手段32により記憶した放電参照データからSOCを演算する。
【0047】
SOC演算手段33によりなされた演算結果を、作業者が簡単に確認できるような確認手段を具えていてもよい。具体的には、目視にて確認できるモニタ20mなどの表示装置が挙げられる。表示装置は、SOC演算手段33からの演算結果が取得できるように構成しておく。ここでは、コンピュータのモニタ20mを確認手段としている。
【0048】
この運転制御手段20を用いて、正極電解液のSOCを求める手順を図4に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0049】
まず、電流計測手段13により、電流信号(情報)を取得する(ステップS01)。ここでは、電流信号として、電流の向きを取得した。この電流信号(電流の向き)はコンピュータに送られ、コンピュータのメモリ(図示略)に保存される。また、モニタセル2に具える電圧計測手段12により、正極電解液が供給されるモニタセルの開放電圧を計測し、計測結果(電気信号)がコンピュータのメモリに保存される(ステップS02)。
【0050】
次に、充放電判定手段31は、メモリに保存された電流の向きを読み出し、この電流の向きにより充電時か否かを判定する(ステップS03)。
【0051】
RF電池1が充電時の場合、SOC演算手段33は、予め参照データ記憶手段32に記憶させていた充電参照データを呼び出し、充電参照データとステップS02でコンピュータが取得した開放電圧に基づいてSOCを演算する(ステップS04)。演算終了後、制御を終える。
【0052】
一方、RF電池1が放電時の場合、SOC演算手段33は、予め参照データ記憶手段32によりコンピュータの記憶手段に記憶させていた放電参照データを呼び出し、放電参照データとステップS02でコンピュータが取得した開放電圧に基づいてSOCを演算する(ステップS05)。同様に、演算終了後、制御を終える。
【0053】
演算終了後に制御を終えず、メインセル2aの充放電運転の進展に応じて繰り返しSOCを演算する場合は、上述したステップS01〜S05を繰り返すとよい。そのとき、タイマー手段を設けておき、所定のサンプリング間隔毎にステップS01〜S05を行うようにしてもよい。
【0054】
以上説明した実施形態1の構成によれば、充電時には計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算して求めることができ、放電時には放電参照データからSOCを演算して求めることができる。つまり、運転状態に応じて適した参照データからSOCを演算できるので、充電参照データと放電参照データが乖離している場合でも、正確なSOCが得られる。従って、Mnイオンを含有する正極電解液を具えるRF電池において、正極電解液の正確なSOCを把握できるので、RF電池を効率よく運転可能である。
【0055】
《実施形態2》
実施形態2のRF電池1は、正極電解液と負極電解液の両方とも、MnイオンとTiイオンの双方を含有する電解液を用いる点と、SOCが0%から150%まで充放電する点が実施形態1と相違する。
【0056】
実施形態2でも実施形態1と同様に、上述の電解液を使用する場合で、かつSOCが0%から150%までの範囲で充放電する場合に、充電時と放電時とでそれぞれ開放電圧とSOCとの関係を調べた。
【0057】
本例では、正極電解液と負極電解液ともに、硫酸濃度が2.5Mの硫酸水溶液(HSOaq)に硫酸マンガン(2価)及び硫酸チタン(4価)を溶解して、Mnイオン(2価)の濃度かつTiイオン(4価)の濃度がいずれも1.0Mの電解液を用意した。その濃度の正極電解液を20ml(20cc)、負極電解液を30ml(30cc)ずつ用意して、充放電を行った。各電極と隔膜は実施形態1と同様のものを用いた。本例では、切替電圧は1.85V程度とし、実施形態1と同様の電流密度の定電流で行った。そして、実施形態1と同様にして開放電圧とSOCを求め、両者の相関関係を求めた。本例のように上記電解液でかつSOCが100%を超えて充放電する場合、負極電解液の活物質量を正極電解液のSOCの範囲に合わせることが好ましい。具体的には、本例ではSOCが0%から150%までの範囲で充放電するので、負極電解液の活物質量を正極電解液の1.0倍超1.5倍以下程度としておくとよい。つまり、本例のように正極電解液と負極電解液における活物質の濃度が同じ場合は、負極電解液の液量を正極電解液の液量の1.0倍超1.5倍以下程度としておくとよい。そうすれば、正極電解液を所定の0%から150%までの範囲で充放電することができる。
【0058】
そして、調べた結果、図5に示すグラフのように、(1)充電時における開放電圧とSOCとの関係を示すデータ(太線)と、放電時における開放電圧とSOCとの関係とを示すデータ(細線)が異なる、(2)充電時のデータに変位点が存在する、との知見を得た。この変位点は、このデータの変位の傾きが逆転する点を指す。本例の場合、SOCが100%前後に極大変位点を有し、SOCが105%前後に極小変位点を有する。ここでも実施形態1と同様に、各データを充電参照データと放電参照データとして使用する。
【0059】
[運転制御手段]
運転制御手段20は、図6に示すように、実施形態1と同様、充放電判定手段31と、参照データ記憶手段32と、SOC演算手段33とを具える。さらに、本例のRF電池1の運転制御手段20は、電圧判定手段34と、データ数判定手段35と、データ特定手段36とを具える。ここでは、実施形態1と異なる構成について詳細に説明する。
【0060】
電圧判定手段34は、電圧計測手段12により計測された開放電圧が、充電参照データのうち、極大変位点の電圧値よりも高いか否かを判定する。
【0061】
データ数判定手段35は、充電参照データ中に、計測した開放電圧に対応する電圧値が単数あるか複数あるかを判定する。この電圧値が複数あれば、計測した開放電圧値が、極大変位点や極小変位点の近傍に対応する電圧値であると言える。
【0062】
データ特定手段36は、計測した開放電圧に対応する充電参照データ中の電圧値が、極大変位点よりも高SOC側の電圧値か低SOC側の電圧値かを判定する。具体的には、充電参照データのうち計測した開放電圧値に対応する値における接線の傾きで判定する。例えば、この傾きを随時採り、その傾きがゼロになったか否かで、極大変位点前か否かを判定するようにすればよい。
【0063】
この運転制御手段20を用いて、正極電解液のSOCを求める手順を図7に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0064】
まず、上述した実施形態1のステップS01〜ステップS03と同様のステップS11〜ステップS13を踏む。ステップS13の判定結果が放電時の場合、SOC演算手段33が、放電参照データを参照データ記憶手段32から呼び出し、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算する(ステップS18)。一方、ステップS13の判定結果が充電時の場合、下記のステップS14以下の手順に進む。
【0065】
充電参照データは、上述したように当該充電参照データは極大変位点を有する。ここで、電圧判定手段34は、ステップS12で計測した開放電圧が上記極大変位点の電圧値よりも高いか否かを判定する(ステップS14)。
【0066】
極大変位点の電圧値よりも高い場合、後述するステップS17を行う。
【0067】
極大変位点の電圧値よりも低い場合、続けて、データ数判定手段35が、充電参照データ中に、計測した開放電圧に対応する電圧値が単数あるか複数あるかを判定する(ステップS15)。
【0068】
対応する電圧値の数が単数である場合、後述するステップ18を行う。一方、この判定結果が複数の場合、さらに続けてデータ特定手段36が、計測した開放電圧に対応する充電参照データ中の電圧値が、極大変位点よりも高SOC側の電圧値か低SOC側の電圧値かを判定する(ステップS16)。
【0069】
極大変位点よりも高SOC側の電圧値である場合、SOC演算手段33が、充電電気量からSOCを演算する(ステップS17)。具体的には、上述した計算式からSOCが演算できる。
【0070】
一方、極大変位点よりも低SOC側の電圧値である場合、SOC演算手段33が、充電参照データを参照データ記憶手段32から呼び出し、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算する(ステップS18)。
【0071】
各ステップS17、18の終了後、制御を終える。また、本例でも実施形態1と同様にステップS11〜18を繰り返してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態2の構成によれば、充電時には、計測した開放電圧に対応する充電参照データ中の電圧値が、極大変位点よりも低SOC側の範囲では、計測した開放電圧と充電参照データから正確なSOCを演算して求めることができ、放電時には放電参照データから正確なSOCを演算して求めることができる。また、充電時において極大変位点よりも高SOC側の範囲では、充電電気量からSOCを演算して求めることができる。つまり、運転状態に応じて適した参照データからSOCを演算できると共に、参照データからSOCを演算し難い極大変位点よりも高SOC側の範囲でも正確なSOCが得られる。従って、正極電解液がMnイオンとTiイオンの双方を含有し、SOCが0%から150%まで充放電するRF電池において、正極電解液の正確なSOCを把握することができる。
【0073】
《実施形態3》
実施形態3のRF電池は、実施形態2と同様に正極電解液と負極電解液の両方とも、MnイオンとTiイオンの双方を含有する電解液を用いるが、SOCの範囲が0%から100%まで充放電する点が実施形態2と相違する。
【0074】
また、実施形態3でも実施形態1と同様に、上述の電解液を使用する場合で、かつSOCの範囲が0%から100%まで充放電する場合に、充電時と放電時とでそれぞれ開放電圧とSOCとの関係を調べた。
【0075】
本例では、実施形態2と同様の濃度の正極電解液と負極電解液を、25ml(25cc)ずつ用意して充放電を行った。各電極と隔膜は実施形態2と同様のものを用いた。本例では切替電圧は1.5V程度とし、実施形態2と同様の電流密度の定電流で行った。そして、実施形態1と同様にして開放電圧とSOCを求め、両者の相関関係を求めた。
【0076】
その結果、図8に示すグラフのように、充電時の開放電圧とSOCとの関係を示すデータと、放電時の開放電圧とSOCとの関係を示すデータとが、一部で乖離しているものの、殆ど変わらない範囲もある、との知見を得た。ここでも一部の開放電圧値の範囲では、実施形態1、2と同様に、各データを充電参照データと放電参照データとして個別に使用し、他の電圧値の範囲では、充放電の両運転時に共用する充放電用参照データを作成して使用する。
【0077】
[運転制御手段]
運転制御手段20は、図9に示すように、実施形態1と同様に、充放電判定手段31と、参照データ記憶手段32と、SOC演算手段33とを具える。さらに、本例のRF電池1の運転制御手段20は、電圧差演算手段37と、参照データ作成手段38と、範囲判定手段39とを具える。ここでは、実施形態1と異なる構成について詳細に説明する。
【0078】
電圧差演算手段37は、充電参照データと放電参照データにおいて、同じSOCにおける充電時開放電圧と放電時開放電圧との差を演算する。
【0079】
参照データ作成手段38は、電圧差演算手段37で演算された電圧差が所定値以下となる範囲では、充電時開放電圧と放電時開放電圧の両方に近似する充放電用参照データを演算により作成する。例えば、同じSOCにおける充電時開放電圧と放電時開放電圧の平均を充放電用参照データとすることが挙げられる。この所定値は、各電圧のとき、充電参照データと放電参照データとでそれぞれ得られるSOCの差が実質的に無視できる範囲となるように設定すればよい。具体例としては、充電参照データと放電参照データとが特に近似する範囲、即ちSOCが20%以上100%以下となる開放電圧値の範囲(例えば、1.28V〜1.45V:この範囲を共用電圧範囲という)で充放電用参照データを作成するとよい。これら電圧差演算手段37と参照データ作成手段38により、充電参照データと放電参照データから、予め充放用電参照データを求めておき、適宜参照データ記憶手段32に記憶しておくとよい。そして、参照データ記憶手段32から必要に応じて充放電用参照データを呼び出せばよい。
【0080】
範囲判定手段39は、計測した開放電圧が、上記電圧差の所定値以下となる範囲か否かを判定する。具体的には、参照データ記憶手段32から充放電用参照データを呼び出して、計測した開放電圧が充放電用参照データの共用電圧範囲内かどうかを判定する。
【0081】
この運転制御手段20を用いて、電解液のSOCを求める手順を図10に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0082】
まず、上述した実施形態1のステップS01とステップS02と同様のステップS21、ステップS22を踏む。
【0083】
次に、ステップS22で計測した開放電圧が充放電用参照データの共用電圧範囲内か否かを判定する(ステップS23)。
【0084】
計測した開放電圧が上記範囲内の場合、SOC演算手段33は、予め参照データ記憶手段32に記憶させていた充放電用参照データを呼び出し、充放電用参照データとステップS22でコンピュータが取得した開放電圧に基づいてSOCを演算する(ステップS24)。
【0085】
計測した開放電圧が上記範囲外の場合、続けて、充放電判定手段31が、メモリに保存された電流の向きを読み出し、電流の向きにより充電時か否かを判定する(ステップS25)。
【0086】
充電時の場合、SOC演算手段33は、予め参照データ記憶手段32に記憶させていた充電参照データを呼び出し、この充電参照データとステップS22でコンピュータが取得した開放電圧に基づいてSOCを演算する(ステップS26)。
【0087】
放電時の場合、SOC演算手段33は、予め参照データ記憶手段32に記憶させていた放電参照データを呼び出し、放電参照データとステップS22でコンピュータが取得した開放電圧に基づいてSOCを演算する(ステップS27)。
【0088】
各ステップS24、26、27の終了後、制御を終える。
【0089】
本例でも、実施形態1と同様に、ステップS21〜S27を繰り返して、SOCを繰り返し演算してもよい。
【0090】
以上説明した実施形態3の構成によれば、充電参照データと放電参照データの乖離が大きい範囲では、充電時には計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算して求めることができ、放電時には放電参照データからSOCを演算して求めることができる。また、充電参照データと放電参照データとが近似している範囲では、両参照データに近似する充放電用参照データからSOCを演算して求めることができる。そのため、充電状態を求める範囲が実用的な範囲(SOCが20%以上)の場合、参照用データが充放電用参照データのみでも正確なSOCが得られる。従って、正極電解液がMnイオンとTiイオンの双方を含有し、SOCが0%から100%まで充放電するRF電池において、正極電解液の正確なSOCを把握することができる。
【0091】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のRF電池は、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーの発電に対して、発電出力の変動の安定化、発電電力の余剰時の蓄電、負荷平準化などを目的とした用途に好適に利用することができる。そして、本発明RF電池は、一般的な発電所などに併設されて、瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした大容量の蓄電池としても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 レドックスフロー電池
2 セルスタック 2a メインセル 2b モニタセル
3a 正極電解液タンク 3b 負極電解液タンク
4a,4b,5a,5b 配管 6a,6b ポンプ
11 交流/直流変換器
12 電圧計測手段 13 電流計測手段
20 運転制御手段(コンピュータ) 20m モニタ
31 充放電判定手段 32 参照データ記憶手段
33 SOC演算手段 34 電圧判定手段
35 データ数判定手段 36 データ特定手段
37 電圧差演算手段 38 参照データ作成手段 39 範囲判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電解液及び負極電解液をメインセルに供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記メインセルに供給される電解液と共通の電解液が供給されるモニタセルと、
前記モニタセルの開放電圧を計測する電圧計測手段と、
前記メインセルが充電時か放電時かを判定する充放電判定手段と、
予めメインセルの充電時に求めた充電時開放電圧と前記正極電解液の充電状態(SOC)との関係を示す充電参照データと、予めメインセルの放電時に求めた放電時開放電圧と前記SOCとの関係を示す放電参照データとを記憶する参照データ記憶手段と、
前記電圧計測手段で計測した開放電圧を用いて前記SOCを演算するSOC演算手段とを具え、
前記SOC演算手段は、前記充放電判定手段の判定結果に基づき、
充電時には前記開放電圧と充電参照データからSOCを演算し、
放電時には前記開放電圧と放電参照データからSOCを演算し、
前記正極電解液は、正極活物質としてマンガンイオンを含有することを特徴とするレドックスフロー電池。
【請求項2】
前記正極電解液は、さらにチタンイオンを含有し、
前記SOCが0%から150%までの範囲で前記メインセルを充放電する場合、
前記充電参照データは、極大変位点を有し、
さらに、計測した開放電圧が、前記極大変位点の電圧値よりも高いか否かを判定する電圧判定手段と、
前記充電参照データ中に、計測した開放電圧に対応する電圧値が単数あるか複数あるかを判定するデータ数判定手段と、
計測した開放電圧に対応する充電参照データ中の電圧値が、前記極大変位点よりも高SOC側の電圧値か低SOC側の電圧値かを特定するデータ特定手段とを具え、
前記SOC演算手段は、
計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値以下と判定され、前記データ数判定手段により電圧値の数が単数と判定された場合には、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算し、
計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値以下と判定され、前記データ数判定手段により電圧値の数が複数と判定され、計測した開放電圧がデータ特定手段により低SOC側の電圧値と判定された場合には、計測した開放電圧と充電参照データからSOCを演算し、
放電時には、計測した開放電圧と放電参照データからSOCを演算することを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記SOC演算手段は、
計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値超と判定された場合、または計測した開放電圧が前記電圧判定手段により前記極大変位点の電圧値以下と判定され、前記データ数判定手段により電圧値の数が複数と判定され、計測した開放電圧がデータ特定手段により高SOC側の電圧値と特定された場合には、充電電気量からSOCを演算することを特徴とする請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記負極電解液は、負極活物質としてチタンイオンを含有し、
前記負極電解液の活物質量が、前記正極電解液の活物質量の1.0倍超1.5倍以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記正極電解液は、さらにチタンイオンを含有し、
前記SOCが0%から100%までの範囲で前記メインセルを充放電する場合、
さらに、前記充電参照データと放電参照データにおいて、同じSOCにおける充電時開放電圧と放電時開放電圧との差を演算する電圧差演算手段と、
前記電圧差が所定値以下となる範囲では、充電時開放電圧と放電時開放電圧に近似する充放電用参照データを演算する参照データ作成手段と、
計測した開放電圧が、前記電圧差の所定値以下となる範囲か否かを判定する範囲判定手段とを具え、
前記SOC演算手段は、
計測した開放電圧が充放電用参照データを作成した電圧範囲内の場合、当該充放電用参照データから前記SOCを演算し、
計測した開放電圧が充放電用参照データを作成した電圧範囲外の場合、前記範囲判定手段の判定結果に基づき、充電時には充電参照データからSOCを演算し、放電時には放電参照データからSOCを演算することを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記SOCが20%以上100%以下において、前記SOC演算手段は、前記開放電圧と前記充放電用参照データから前記SOCを演算することを特徴とする請求項5に記載のレドックスフロー電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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