説明

レラキシンのアゴニストまたはアンタゴニストの投与によるアポトーシスを調節する方法

【課題】被験体にレラキシンのアゴニストまたはアンタゴニストを投与することによってアポトーシスを調節する方法を提供すること。
【解決手段】アポトーシスを調節する方法であって、この方法は、以下を包含する:それを必要とする被験体に、レラキシンレセプターを発現する細胞においてアポトーシスを減少するのに十分な時間、有効量のレラキシンアゴニストを投与する工程。レラキシン応答性細胞の蓄積は、身体組織の異常を導く。よって、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストを投与することによって組織におけるアポトーシスを調節する方法を、提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許仮出願第60/238,232号(2000年10月4日出願)、米国特許仮出願第60/241,991号(2000年10月20日出願)および米国特許仮出願第60/242,037号(2000年10月20日出願)(これらの開示は、参考として本明細書中に援用される)からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
正常組織の増殖および発達は、プログラムされた細胞の増殖、分化および細胞死によって達成される。細胞の増殖および分化は、新しい細胞および組織の形成に必要とされる。逆に、プログラムされた細胞死(アポトーシスとも呼ばれる)は、既存の細胞(未成熟な細胞または損傷された細胞を含む)を除去するために必要とされる。アポトーシスは、身体の実質的に全ての組織において自然に生じる。アポトーシスは、組織の恒常性において重要な役割を果たし、すなわち、産生された新しい細胞の数が、等しい死亡する細胞の数によって対応するよう相殺されるのを確実にする。例えば、腸内層における細胞は、迅速に分裂するので、身体は、腸内層の過剰成長を妨げるために、わずか3日後に細胞を排除しなければならない。
【0003】
細胞増殖および/またはアポトーシスの異常に増加または減少する速度のいずれかによる、遺伝プログラムの破壊は、異常な組織発達を生じ得る。例えば、正常レベルを下回る細胞増殖の減少は、未成熟な組織および他の組織異常を導き得る。正常レベルを上回る細胞増殖の増加は、新形成および癌、ならびに他の細胞増殖性障害の進行における主要な事象であると考えられている。アポトーシスの異常な増加もまた、前癌病変を導き得る。前癌病変としては、胸部の病変(乳癌へと発達し得る)、前立腺の病変(前立腺癌へと発達し得る)または皮膚の病変(悪性の黒色腫または基底細胞癌へと発達し得る)、結腸腺腫様ポリープ(結腸癌へと発達し得る)、および他のこのような新形成が挙げられる。このような病変は、悪性の腫瘍または癌へと発達する、強い傾向を示す。
【0004】
前癌病変は、身体の種々の組織における既存の細胞に対する傷害の蓄積から生じ得る。このような傷害としては、日光、放射線、変異原および食餌に通常見出される発癌物質、化学物質(例えば、殺虫剤、除草剤、防腐剤)などに対する曝露が挙げられ得る。これらの傷害は、細胞における変異の蓄積を生じ得、これらが、過形成状態(すなわち、細胞数の異常な増加)(例えば、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、腸、肺または前立腺の組織の過形成のような)を導き得る。アポトーシスの下方調節もまた、これらの過形成状態における細胞の蓄積を導き得る。
【0005】
アポトーシスの異常な増加は、組織の正常な発達および/または分化を干渉し得る。例えば、アポトーシスは、妊娠中および雄性生殖管組織の成熟に必要とされる。アポトーシスの異常な増加はまた、新しい細胞および組織の形成を干渉し得、それによって、正常な組織の成熟または発達を妨げる。
【0006】
したがって、アポトーシスのアゴニストまたはアンタゴニストを投与することによってアポトーシスを調節する方法の必要性が、存在する。詳細には、異常に高速または低速のアポトーシスに(直接的または間接的に)関連する状態を処置する方法の必要性が、存在する。本発明は、レラキシン関連組織におけるアポトーシスを調節することによってこのような組織の異常を処置するための、レラキシンのアゴニストまたはアンタゴニストの投与のための方法を提供することによって、この必要性を満足する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、レラキシンが身体組織の発達に関連するという発見に関する。レラキシンをコードする遺伝子のノックアウトは、種々の身体組織の発達おける種々の異常(このような組織のサイズの低下、このような組織におけるコラーゲン沈着の増加、およびこのような組織の未成熟)を生じる。逆に、レラキシン応答性細胞の蓄積は、身体組織の異常を導く。本発明は、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストを投与することによって組織におけるアポトーシスを調節する方法を、提供する。
【0008】
1つの局面において、本発明は、被験体におけるアポトーシスを調節する方法を提供し、この方法は、それを必要とする被験体に、レラキシンレセプターを発現する細胞におけるアポトーシスを減少するのに十分な時間、有効量のレラキシンアゴニストを投与することによる。本発明に従う方法において有用なレラキシンアゴニストの投与によって代表的に影響を受ける組織としては、例えば、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、脳、心臓、腸、皮膚、肺、雄性生殖管および雌性生殖管が挙げられる。雄性生殖管組織としては、例えば、前立腺、精巣上体、輸精組織、または精巣の組織などが挙げられる。雌性生殖管組織としては、例えば、子宮、子宮頸、恥骨間膜、または下肢帯内の結合組織などが挙げられる。
【0009】
特定の実施形態において、レラキシンアゴニストの投与は、代表的に、アポトーシス細胞の数を減少させる。他の実施形態において、レラキシンアゴニストは、組織の成熟を刺激する。例えば、レラキシンアゴニストは、雄性生殖管組織(例えば、前立腺組織、精巣上体組織、輪精組織、精巣組織または精液)の成熟を刺激し得る。1つの実施形態において、その成熟は、発達不全の精巣における細胞数の増加(例えば、成熟精巣細胞数の増加のような)を生じる。別の実施形態において、雄性生殖管組織の成熟は、レラキシンアゴニストを接触させていない組織と比較して、生きた精子細胞数の増加を生じる。なお別の実施形態において、線維症が、レラキシンアゴニストによって減少され得、そして/または、過剰なコラーゲン沈着が、減少され得る。
【0010】
レラキシンアゴニストの投与を必要とする被験体は、レラキシン欠損性の状態(例えば、未成熟組織、過剰なコラーゲン沈着および/または低い精子数のような)を有し得る。例えば、未成熟組織は、未成熟雄性生殖管(例えば、発達不全の精巣)であり得る。このような未成熟組織は、他の成熟動物または未成熟動物に存在し得る。
【0011】
レラキシンアゴニストは、レラキシン、レラキシンアナログ、低分子レラキシンエフェクターまたはレラキシン核酸であり得る。レラキシンは、代表的には、脊椎動物レラキシンであり、そしてより代表的には、ヒトレラキシンである。
【0012】
本発明に従う方法において有用なレラキシンアゴニストを含む組成物は、例えば、注入、注射、経口送達、鼻内送達、ならびに肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達による投与のために処方され得る。このような組成物はまた、被験体の組織および循環中へのレラキシンアゴニストの遅延放出のために処方され得る。特定の実施形態は、注入または注射、あるいは肺内送達、皮下送達または経皮送達のために処方される組成物を包含する。特定の実施形態において、レラキシンアゴニストをコードする核酸が、レラキシンアゴニストをコードするベクターでの被験体への投与のために処方され得る。例えば、このベクターは、細胞中でレラキシンアゴニストを発現する、発現ベクターであり得る。あるいは、レラキシンまたはレラキシンアナログの核酸が、被験体への送達のために処方され得る。被験体は、思春期前または思春期後であり得る。
【0013】
別の局面において、本発明は、必要とする被験体においてアポトーシスを調節するための方法を提供し、この方法は、レラキシンレセプターを発現する細胞集団においてアポトーシスを増加するのに十分な時間、有効量のレラキシンのアンタゴニストを投与することによる。1つの実施形態において、レラキシンアンタゴニストは、レラキシンレセプターに対するレラキシンの結合を阻害する。別の実施形態において、レラキシンアンタゴニストは、レラキシン関連組織再構築を減少させる。
【0014】
本発明に従う方法において有用なレラキシンアンタゴニストの投与によって代表的に影響を受ける組織としては、例えば、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、脳、心臓、腸、皮膚、肺、雄性生殖管、雌性生殖管などが挙げられる。雄性生殖管組織としては、例えば、前立腺、精巣上体、輸精組織、または精巣の組織などが挙げられる。特定の実施形態において、雄性生殖管組織は、前立腺組織であり得、そして成熟または非成熟であり得る。適切な標的雌性生殖管組織としては、例えば、子宮、子宮頸、恥骨間膜、または下肢帯内の結合組織などが挙げられる。あるいは、細胞集団は、レラキシンレセプターを発現する細胞(例えば、線維芽細胞、骨芽細胞、単球、上皮細胞または内皮細胞など)を含み得る。
【0015】
レラキシンアンタゴニストは、例えば、レラキシン結合因子、レラキシンレセプター結合因子、レラキシンアンチセンス核酸などであり得る。レラキシン結合因子は、例えば、抗レラキシン抗体、可溶性レラキシンレセプター、低分子レラキシンアンタゴニストなどであり得る。レラキシンレセプター結合因子は、例えば、抗レラキシンレセプター抗体、レラキシンアナログ、低分子レラキシンレセプターアンタゴニストなどであり得る。レラキシンまたはレラキシンに結合する抗体としては、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単重鎖、キメラ抗体などが挙げられ得る。
【0016】
本発明の方法において有用なレラキシンアンタゴニストを含む組成物は、例えば、注入、注射、経口送達、鼻内送達、ならびに肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達による投与のために処方され得る。組成物はまた、被験体の組織および循環中へのレラキシンアンタゴニストの遅延放出のために処方され得る。特定の実施形態は、注入または注射、あるいは肺内送達、皮下送達または経皮送達のために処方される組成物を包含する。
【0017】
特定の実施形態において、レラキシンアンタゴニストをコードする核酸が、レラキシンアンタゴニストをコードするベクターで被験体に投与され得る。1つの実施形態において、ベクターは、細胞集団中でレラキシンアンタゴニストを発現する、発現ベクターである。あるいは、レラキシンまたはレラキシンレセプターのアンチセンス核酸が、任意の上記の方法に従って、被験体に直接送達され得る。代表的な実施形態において、レラキシンアンタゴニストの投与は、アポトーシスを増加し、所望でない細胞蓄積を減少させる。例えば、これらの所望でない細胞は、過形成、肥大、癌または新形成であり得る。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1) アポトーシスを調節する方法であって、以下:
それを必要とする被験体に、レラキシンレセプターを発現する細胞においてアポトーシスを減少するのに十分な時間、有効量のレラキシンアゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
(項目2) 前記細胞が、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、脳、心臓、腸、皮膚、肺、雌性生殖管または雄性生殖管由来である、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記雄性生殖管組織が、前立腺、精巣上体、精嚢、または精巣である、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記雌性生殖管組織が、子宮、子宮頸、恥骨間膜、または下肢帯の結合組織である、項目2に記載の方法。
(項目5) アポトーシス細胞の数が減少される、項目2に記載の方法。
(項目6) 組織成熟が刺激される、項目1に記載の方法。
(項目7) 線維症が減少される、項目6に記載の方法。
(項目8) 前記組織が雄性生殖管組織である、項目6に記載の方法。
(項目9) 前記組織が、前立腺組織、精巣上体組織、輸精組織、精巣組織または精液である、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記組織が精巣組織である、項目9に記載の方法。
(項目11) 成熟が、発達不全の精巣における細胞数の増加である、項目10に記載の方法。
(項目12) 生きた精子細胞数が増加する、項目9に記載の方法。
(項目13) 前記被験体が、レラキシン欠損状態を有する、項目1に記載の方法。
(項目14) 前記レラキシン欠損状態が、未成熟組織、過剰なコラーゲン沈着または低い精子数である、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記未成熟組織が、未成熟雄性生殖管組織である、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記未成熟雄性生殖管組織が、発達不全の精巣である、項目15に記載の方法。
(項目17) 過剰なコラーゲン沈着が減少される、項目1に記載の方法。
(項目18) 前記レラキシンアゴニストが、レラキシン、レラキシンアナログ、低分子レラキシンエフェクター、またはレラキシン核酸である、項目1に記載の方法。
(項目19) 前記レラキシンが、脊椎動物レラキシンである、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記レラキシンが、ヒトレラキシンである、項目19に記載の方法。
(項目21) 前記投与する工程が、注入、注射、経口送達、鼻内送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達による、項目1に記載の方法。
(項目22) 前記投与する工程が、遅延放出送達による、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記皮下送達が、注入または注射による、項目21に記載の方法。
(項目24) 前記投与する工程が、肺内送達、皮下送達または経皮送達による、項目21に記載の方法。
(項目25) 前記投与する工程が、前記レラキシンアゴニストをコードするベクターの送達を包含する、項目1に記載の方法。
(項目26) 前記ベクターが、発現ベクターであって、それによって、前記レラキシンアゴニストが、前記細胞中で発現される、項目1に記載の方法。
(項目27) 前記投与する工程が、レラキシンまたはレラキシンアナログの核酸の送達を包含する、項目1に記載の方法。
(項目28) 前記被験体が、思春期後の被験体である、項目1に記載の方法。
(項目29) 前記被験体が、思春期前の被験体である、項目1に記載の方法。
(項目30) レラキシンレセプターを発現する細胞の集団においてアポトーシスを調節する方法であって、以下:
それを必要とする被験体に、該レラキシンレセプターを発現する細胞の集団においてアポトーシスを増加するのに十分な時間、有効量のレラキシンのアンタゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
(項目31) 前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシンレセプターに対するレラキシンの結合を阻害する、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシン関連組織再構築を減少させる、項目30に記載の方法。
(項目33) 前記細胞集団が、心臓、脳、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、皮膚、雌性生殖管組織または雄性生殖管組織由来である、項目30に記載の方法。
(項目34) 前記雄性生殖管組織が、前立腺、精巣上体、精嚢または精巣である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記組織が、前立腺組織である、項目34に記載の方法。
(項目36) 前記雄性生殖管組織が、成熟している、項目33に記載の方法。
(項目37) 前記雌性生殖管組織が、子宮、子宮頸、恥骨間膜、または下肢帯の結合組織である、項目33に記載の方法。
(項目38) 前記細胞集団が、線維芽細胞、骨芽細胞、単球、上皮細胞または内皮細胞を含む、項目30に記載の方法。
(項目39) 前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシン結合因子、レラキシンレセプター結合因子、またはレラキシンアンチセンス核酸である、項目30に記載の方法。
(項目40) 前記レラキシン結合因子が、抗レラキシン抗体、可溶性レラキシンレセプター、または低分子レラキシンアンタゴニストである、項目39に記載の方法。
(項目41) 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、項目40に記載の方法。
(項目42) 前記レラキシンレセプター結合因子が、抗レラキシンレセプター抗体、レラキシンアナログ、または低分子レラキシンレセプターアンタゴニストである、項目39に記載の方法。
(項目43) 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、項目42に記載の方法。
(項目44) 前記投与する工程が、注入、注射、経口送達、鼻内送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達による、項目30に記載の方法。
(項目45) 前記投与する工程が、遅延放出送達による、項目44に記載の方法。
(項目46) 前記皮下送達が、注入または注射による、項目44に記載の方法。
(項目47) 前記投与する工程が、肺内送達、皮下送達または経皮送達による、項目44に記載の方法。
(項目48) 前記投与する工程が、前記レラキシンアンタゴニストをコードするベクターの送達を包含する、項目30に記載の方法。
(項目49) 前記ベクターが、発現ベクターであって、それによって、前記レラキシンアンタゴニストが、前記細胞集団中で発現される、項目30に記載の方法。
(項目50) 前記投与する工程が、レラキシンまたはレラキシンレセプターのアンチセンス核酸の送達を包含する、項目30に記載の方法。
(項目51) 増加されたアポトーシスが、所望でない細胞蓄積を減少させる、項目30に記載の方法。
(項目52) 前記所望でない細胞蓄積が、過形成、肥大、癌または新形成である、項目51に記載の方法。
(項目53) レラキシン関連異常を減少または予防するための医薬の製造のための、治療有効量のレラキシンアンタゴニストの使用。
(項目54) 前記レラキシン関連異常が、被験体におけるレラキシン応答性の細胞の蓄積、過形成、肥大、癌または新形成である、項目53に記載の使用。
(項目55) 前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシン結合因子、レラキシンレセプター結合因子、またはレラキシンアンチセンス核酸である、項目53または54に記載の使用。
(項目56) 前記レラキシン結合因子が、抗レラキシン抗体、可溶性レラキシンレセプター、または低分子レラキシンアンタゴニストである、項目55に記載の使用。
(項目57) 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、項目56に記載の使用。
(項目58) 前記レラキシンレセプター結合因子が、抗レラキシンレセプター抗体、レラキシンアナログ、または低分子レラキシンレセプターアンタゴニストである、項目55に記載の使用。
(項目59) 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、項目58に記載の使用。
(項目60) 前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシンレセプターに対するレラキシンの結合を阻害する、項目53または54に記載の使用。
(項目61) 前記医薬が、注入、注射、経口送達、鼻内送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達のために処方される、項目53または54に記載の使用。
(項目62) 前記医薬が、遅延放出送達のために処方される、項目61に記載の使用。
(項目63) 前記医薬が、前記レラキシンアンタゴニストをコードするベクターを含む、項目53または54に記載の使用。
(項目64) 前記ベクターが、発現ベクターであって、それによって、前記レラキシンアンタゴニストが、前記細胞集団中で発現される、項目63に記載の使用。
(項目65) 前記ベクターが、レラキシンまたはレラキシンレセプターのアンチセンス核酸を含む、項目64に記載の使用。
(項目66) 前記組織が、前立腺組織、精巣上体組織、輸精組織または精巣組織である、項目53または54に記載の使用。
(項目67) 前記被験体が、思春期後の被験体である、項目53または54に記載の使用。
(項目68) 前記被験体が、思春期前の被験体である、項目53または54に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(定義)
本発明をより詳細に示す前に、本明細書中以下で使用される場合の特定の用語の定義を示すことが、本発明のさらなる理解に役立ち得る。
【0019】
用語「核酸」は、ホスホジエステル結合を介して連結された複数のヌクレオチド単位(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドあるいは関連する構造改変体)から構成されるポリマーをいう。核酸は、実質的に任意の長さであり得、代表的に、約6ヌクレオチド〜約10ヌクレオチド、またはそれ以上であり得る。そうでないことが示されない限り、核酸について本明細書で使用される従来の表記は以下の通りである:一本鎖核酸の左手端は5’末端であり;二本鎖核酸の左手方向は5’方向と呼ばれる。初期のRNA転写物の5’から3’への付加の方向は、転写方向として言及される。RNAと同一の配列を有し、そしてRNA転写物の5’末端の5’側であるDNA鎖の配列領域は、「上流配列」として言及され;RNAと同一の配列を有し、そしてコードRNA転写物の3’末端の3’側であるDNA鎖の配列領域は、「下流配列」として言及される。
【0020】
当業者により容易に理解されるように、核酸としては、RNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、および混合ポリマーが挙げられ(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方)、そして核酸はまた、化学的または生化学的に改変され得るか、または非天然もしくは誘導体化したヌクレオチド塩基を含み得る。このような改変としては、例えば、標識、メチル化、アナログによる1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間改変(例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、およびカルバメート)、荷電連結(例えば、ホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジンおよびソラレン)、キレート化剤、アルキレーター、ならびに改変された連結(例えば、αアノマー核酸))が挙げられる。水素結合および他の化学的相互作用を介して示された配列に結合する能力において核酸を模倣する合成分子もまた含まれる。このような分子は当該分野で公知であり、例えば、その分子の骨格においてリン酸結合の代わりにペプチド結合が置換されているペプチドが挙げられる。
【0021】
本明細書中で使用する場合、用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、以下にさらに記載されるようなLアミノ酸またはDアミノ酸をいう。一般的に使用されているアミノ酸の一文字略語および三文字略語が、本明細書中で使用される(例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell、Garland Publishing、Inc.、New York(第3版、1994)を参照のこと)。
【0022】
ポリペプチドについて記載される場合、用語「保存的置換」は、そのポリペプチドの活性を実質的に変化させないポリペプチドのアミノ酸組成変化をいう。従って、特定のアミノ酸配列の「保存的置換」は、ポリペプチド活性に重要ではないそれらのアミノ酸の置換または類似の特性(例えば、酸性、塩基性、正電荷または負電荷、極性または非極性など)を有し、その結果、重要なアミノ酸の置換によってさえも活性を実質的に変更しない他のアミノ酸によるアミノ酸の置換をいう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該分野で周知である。例えば、以下の6つの群は各々、互いに保存的に置換されるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、スレオニン(Y)、トリプトファン(W)(本明細書中で参考として援用される、Creighton、Proteins、W.H.Freeman and Company(1984)もまた参照のこと)。さらに、コードされる配列中の単一のアミノ酸または数パーセントのアミノ酸を変更、付加、または欠失する個々の置換、欠失、または付加もまた、「保存的置換」である。
【0023】
用語「レラキシンアナログ」は、この分子の機能的活性またはレラキシンレセプターとの相互作用を増加または減少させる改変されたレラキシンポリペプチドをいう。
【0024】
用語「可溶性」は、ポリペプチドの文脈において、水溶液(例えば、水、血液、または血漿)に溶解する(すなわち、分子的またはイオン的に分散する)ポリペプチドの能力をいう。
【0025】
用語「低分子エフェクター」は、レラキシンまたはレラキシンレセプターの文脈において、レラキシンまたはレラキシンレセプターに結合し、そしてレラキシンまたはレラキシンレセプターの活性を刺激する因子をいう。
【0026】
用語「低分子アンタゴニスト」は、レラキシンまたはレラキシンレセプターの文脈において、レラキシンまたはレラキシンレセプターに結合し、そしてレラキシンまたはレラキシンレセプターの活性を減少または阻害する因子をいう。
【0027】
用語「有効量」は、症状の緩和または処置されるべき異常状態(例えば、疾患、障害、または状態)の処置を提供するのに十分な投薬量をいう。この投薬量は、被験体、処置される異常状態、およびもたらされる処置に依存して変化する。
【0028】
用語「正常以下」「正常以下の」および「十分発達していない」は、身体組織および/または細胞の文脈において、被験体の同一の年齢および種の正常な被験体の組織および/または細胞の大きさ、細胞数、および/または発達状態と比較してより小さい大きさ、減少した細胞数、および/または未熟な発達状態をいう。
【0029】
用語「組織」は、一般的には、細胞または同一または類似の機能を発揮する同一種の細胞からなる細胞の集団をいう。組織は、器官または骨の一部であり得るか、または細胞(例えば、免疫系の細胞)の緩いつながりであり得る。
【0030】
用語「成熟(maturation)」は、身体組織の文脈において、組織の完全に発達した状態への発展的進行および/または分化をいう。
【0031】
用語「成熟(mature)」は、身体組織の文脈において、組織の完全な発達、分化、および/または成長の達成をいう。
【0032】
用語「未成熟」は、身体組織の文脈において、十分な発達および/または分化をしていない組織をいう。
【0033】
用語「思春期前の雄性」は、思春期の過程を完全に完了していない雄性をいう。
【0034】
用語「思春期後の雄性」は、思春期の過程を完了した雄性をいう。
【0035】
用語「思春期」は、子供が若年の成人になる現象の系列をいい、配偶子形成、性腺ホルモンの分泌、二次性徴の発展、および生殖機能の開始により特徴付けられる。
【0036】
用語「蓄積」は、身体組織の文脈において、その組織における正常(すなわち、非変異、非悪性)細胞の数の増加をいう。
【0037】
用語「生物学的に活性」および「機能的に活性」は、身体組織において、レラキシンまたはレラキシンレセプターに結合する分子(例えば、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニスト)の能力、およびアポトーシス、細胞蓄積、および/または組織成熟を刺激または阻害する能力をいう。
【0038】
用語「レラキシン不全状態」は、レラキシンレベルまたはレラキシンレセプターレベルが、関連組織、細胞、または被験体において正常より低い、被験体の疾患、障害、または状態をいう。
【0039】
用語「レラキシン応答性」は、レラキシンレセプターへのレラキシンの結合に応答した、細胞数または成熟度の状態(すなわち、組織の発達および/または分化)における増加をいう。
【0040】
用語「レラキシン関連」は、機能的に活性なレラキシンレベルまたは機能的に活性なレラキシンレセプターにおける増加または減少により、細胞または組織が直接的にかまたは関節的に影響を受ける、細胞または組織の特性、状態、または応答をいう。
【0041】
用語「過形成」または「過形成組織」は、組織における細胞数の増加をいう。
【0042】
用語「肥大」または「肥大性」は、組織の大きさの増大をいう。
【0043】
用語「癌」および「悪性疾患」は、一般的に、種々の型の悪性新生物をいい、そのほとんどが、周囲の組織に侵潤する。
【0044】
用語「癌性の」および「悪性の」は、癌または悪性疾患の特性を有する細胞または組織に関連する。
【0045】
用語「組織リモデリング」は、新しい細胞または組織の形成およびレラキシンまたはレラキシンレセプターにより媒介されるシグナルに応答した、アポトーシス経路を通じた既存の細胞の破壊をいう。
【0046】
用語「アポトーシス」は、選択形式の細胞の自殺を誘導し、そして容易に観察可能な形態学的かつ生化学的現象(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)の断片化、クロマチンの凝縮(エンドヌクレアーゼ活性に関連していようとしていまいと)、染色体の移動、細胞の核における辺縁趨向、アポトーシス小体の形成、ミトコンドリアの膨化、ミトコンドリアクリスタの拡大、ミトコンドリア透過孔(permeability transition pore)の開口、および/またはミトコンドリアのプロトン勾配の散逸)により特徴付けられる生化学的現象の調節されたネットワークをいう。
【0047】
(特定の実施形態の説明)
本発明は、アポトーシスの調節のために、レラキシンアゴニストまたはアンタゴニストを投与する方法を提供する。レラキシンアゴニストおよびアンタゴニストは、レラキシン関連異常を低減、管理、処置、または予防するために使用され得る。レラキシン関連異常として、正常な被験体におけるアポトーシスレベルと比較して、アポトーシスの増加または減少したレベルに関連する被験体の疾患、障害、または状態が挙げられる。レラキシン関連異常として、例えば、レラキシン不全状態およびレラキシン応答性状態が挙げられる。
【0048】
1つの局面において、レラキシンアゴニストは、正常な被験体由来の相当する細胞(すなわち、レラキシン関連異常を有さない細胞)と比較して、増加したアポトーシスを有するレラキシン関連異常を処置するために、被験体に投与される。このようなレラキシン関連異常として、例えば、未成熟身体組織、増加したコラーゲン沈着、線維症(すなわち、正常な組織と比較して、異常な量の繊維組織の存在)、低組織重量、組織中の細胞集団における細胞の増加したアポトーシスなどが挙げられ得る。レラキシン関連異常は、代表的に、正常な細胞または組織と比較して、レラキシンおよび/またはレラキシンレセプターの減少したレベルに関連する。
【0049】
特定の実施形態において、レラキシン関連異常は、レラキシン不全状態(例えば、未成熟組織、過剰なコラーゲンの存在、少ない精子数など)である。未成熟組織は、例えば、未成熟雄性生殖路組織(例えば、未成熟な前立腺、精巣上体、輸精、または精巣の組織もしくは精子)であり得る。未成熟組織は、例えば、正常組織の相当するサンプルと比較して、増加したコラーゲン沈着、低重量、および/または減少した細胞数により特徴付けられ得る。このような組織はまた、正常組織の相当するサンプルと比較して、組織化の欠如、不完全な発達、および/または分化の欠如もしくは不完全な分化により特徴付けられ得る。特定の他の実施形態において、線維症(例えば、これらまたは他の器官または組織の皮膚の線維症、肺の線維症、腎臓の線維症、または老化に関連する線維症)が減少され得る。
【0050】
レラキシンアゴニストは、レラキシン関連異常を低減、管理、処置、または予防するのに有効な量で投与される。例えば、レラキシンアゴニストの投与は、標的細胞のアポトーシスを減少し得、未成熟組織の成熟、発達、および/または分化を刺激し得、組織重量を増大し得、組織中の細胞数を増大し得、コラーゲン沈着を減少し得る。
【0051】
本発明に従う別の局面において、レラキシンアンタゴニストは、標的細胞におけるアポトーシスを増大することによりレラキシン関連異常を低減、管理、処置、または予防するために、被験体に投与される。このようなレラキシン関連異常は、例えば、レラキシン関連細胞の蓄積、正常な細胞または組織に対して減少したアポトーシス、過形成、肥大、癌、新生物などであり得る。特定の実施形態において、レラキシンアンタゴニストは、レラキシン関連組織のリモデリングを減少し得、望まない細胞の蓄積を減少し得、過形成、肥大、癌、新生物などを減少または予防し得る。
【0052】
レラキシン関連組織またはレラキシン応答性組織の異常を有する身体組織として、例えば、脳、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、腸、皮膚、肺、雄性生殖路(例えば、前立腺、精巣上体、精嚢、または精巣)、または雌性生殖路(例えば、子宮、頸部、恥骨間靱帯、または下肢帯の結合組織)の組織が挙げられる。
【0053】
(レラキシンアゴニスト)
本発明に従う1つの局面において、レラキシンアゴニストは、レラキシン関連異常を処置するために被験体に投与される。レラキシンアゴニストは、例えば、レラキシン、レラキシンアナログ、低分子レラキシンエフェクター、レラキシン核酸などであり得る。
【0054】
(レラキシンおよびレラキシンアナログ)
本発明の1つの局面において、レラキシンアゴニストは、レラキシンポリペプチドまたはレラキシンポリペプチドのフラグメントもしくはアナログである。用語「レラキシン」は、脊椎動物レラキシンポリペプチド(全長レラキシンポリペプチドまたは生物学的活性を保持するレラキシンポリペプチドの一部分を含む)をいう。
【0055】
レラキシンは、その天然のヒト形態、動物形態、およびその合成形態において十分に規定されている。特に、レラキシンは、米国特許第5,166,191号および同第4,835,251号(両方とも本明細書により参考として援用される)に広く記載されている。この出願において、「レラキシン」は、一般的に、米国特許第5、166、191号に記載されるような、用語「レラキシン」、「ヒトレラキシン」、「ネイティブレラキシン」、および「合成レラキシン」ならびに米国特許第4,835,251号に記載されるような用語「ヒトレラキシン」および「ヒトレラキシンアナログ」をいう。代表的な実施形態において、レラキシンは、例えば、米国特許第5,179,195号;同第5,023,321号;および同第4,758,516号(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されるようなヒトレラキシンである。この出願において、「レラキシン」はまた、ブタ、ラット、ウマ、または他の哺乳動物もしくは脊椎動物において単離されるレラキシン、およびラット、ブタ、または他の哺乳動物もしくは脊椎動物レラキシンのcDNAクローンを用いた組換え技術により生成されるレラキシンをいう。
【0056】
レラキシンおよびそのアナログを生成する方法は、当該分野で公知である。さらに、レラキシンを単離および精製する方法が、当該分野で公知である。これらの方法のいくつかの供給源は、米国特許第5、166、191号(以下の参考文献:米国特許第4,835,251号、Baranyら、The Peptides 2:1(1980)、Treagerら、Biology of Relaxin and its Role in
the Human、42〜55頁を含む);EP 0251 615;EP 0107 782;EP 0107 045;およびWO90/13659(これらすべての文献は本明細書中で参考として援用される)において同定される。
【0057】
レラキシンを生成するさらなる方法が、米国特許第5、464、756号およびPCT/US94/06997(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。レラキシンはまた、欧州特許0251615号(1998年1月7日公開、この開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、A鎖およびB鎖の合成ならびにそれらの精製および構築により調製され得る。レラキシンのインビトロ構築について、A鎖:B鎖が4:1のモル比が、一般的に使用される。次いで、得られる生成物は、当業者に公知の任意の手段(例えば、逆相HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、透析など、またはこのような手順の任意の組み合わせが挙げられる)により精製される。未処理形態または部分処理形態のレラキシン(例えば、プレプロレラキシンまたはプロレラキシン)もまた使用され得る。
【0058】
特定の実施形態において、レラキシンポリペプチドとして、H1およびH2形態のヒトレラキシンが挙げられる。優勢種のヒトレラキシンは、B鎖が29位のセリンで終わるようにB鎖の4つのC末端アミノ酸が欠失している、短縮されたB鎖を有するH2レラキシン形態(すなわち、レラキシンH2(B29 A24))であることが報告されている。この形態(33アミノ酸のB鎖を含む、「短いレラキシン」または「長いレラキシン」と称される)のいずれかが用いられ得る。
【0059】
レラキシンアゴニストはさらに、アナログ(例えば、レラキシンの天然に存在するアミノ酸配列の改変体)を含む。レラキシンアナログはまた、機能的に活性なレラキシンポリペプチドを提供する1つ以上のアミノ酸残基の置換、付加、または欠失により変更されたアナログを含む。このようなレラキシンアナログとして、レラキシンポリペプチドのアミノ酸配列(1つ以上の機能的に等価なアミノ酸残基がこの配列内の残基に代わって置換され、サイレントな機能的変化(例えば、保存的置換)を生じる変更された配列を含む)の全てまたは一部を一次アミノ酸配列として含むアナログが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
別の局面において、レラキシンアゴニストは、レラキシンポリペプチドの少なくとも10連続するアミノ酸を有するレラキシンポリペプチドからなるか、またはそれらのフラグメントを含むポリペプチドである。あるいは、このフラグメントは、レラキシンポリペプチドの少なくとも20〜25連続アミノ酸を含む。別の実施形態において、このフラグメントは、20または30アミノ酸未満である。
【0061】
レラキシンアナログは、レラキシンポリペプチドまたはそのフラグメントに実質的に類似する(例えば、種々の実施形態において、同一の大きさのアミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、75%、80%、90%または95%同一または類似する)か、または比較される場合、当該分野で公知のコンピューター配列比較/整列プログラムより整列がなされる整列された配列と実質的に類似するか、あるいはコード核酸が、高ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、または低ストリンジェンシーの条件下で、レラキシン核酸にハイブリダイズし得る領域を含むポリペプチドであり得る(例えば、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970);PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988);Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science、Dr.Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTEASTA;Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley and Sons、New York(1999)を参照のこと(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される))。レラキシンアゴニストはさらに、機能的に活性なレラキシンポリペプチド、レラキシンレセプターに結合するアナログまたはフラグメントを含む。
【0062】
レラキシンアゴニスト(例えば、レラキシンポリペプチド、アナログ、およびフラグメント)は、当該分野で公知の種々の方法により生成され得る。それらを生成する操作は、遺伝子レベルまたはポリペプチドレベルにて実施され得る。例えば、クローニングされたレラキシン核酸は、当該分野で公知の任意の多くのストラテジー(例えば、保存的置換、欠失、挿入などを生じさせること)により改変され得る(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley and Sons、New York(1999)を参照のこと(これらは本明細書中に参考として援用される))。この配列は、制限エンドヌクレアーゼにより適切な部位で切断され得、その後、所望の場合、インビトロでのさらなる酵素的修飾、単離、および連結に供される。アナログまたはフラグメントをコードするレラキシン核酸の生成において、改変された核酸は、代表的に、適切な翻訳リーディングフレームに保持され、その結果、このリーディングフレームは翻訳停止シグナルまたはレラキシンアナログもしくはフラグメントの合成を妨げる他のシグナルにより妨げられる。レラキシン核酸はまた、翻訳開始および/または終止配列を作製および/または破壊するようにインビトロまたはインビボで変異され得る。レラキシン核酸はまた、コード領域におけるバリエーションを作製するように、および/または新規の制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するかまたは既存の部位を破壊するように、ならびにさらなるインビトロでの改変を容易にするように変異され得る。当該分野で公知の変異誘発の任意の技術(化学的変異誘発、インビトロ部位特異的変異誘発(例えば、Hutchisonら、J.Biol.Chem.253:6551−60(1978)を参照のこと)、TAB(登録商標)リンカー(Pharmacia)の使用などが挙げられるがこれらに限定されない)が使用され得る(一般的には、Sambrookら、前出;Ausubelら、前出を参照のこと)。
【0063】
特定の実施形態において、レラキシンアナログは、レラキシンコード領域の少なくとも一部分内の特定の部位にアスパラギン酸コドンを導入するよう変更されたレラキシンコード核酸から調製される(例えば、米国特許第5,945,402号(この開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。得られるアナログは希酸で処理されて所望のアナログを放出し得、それによってこのタンパク質がより容易に単離および精製され得る。他のレラキシンアナログは、米国特許第4,656,249号;同第5,179,195号;同第5,945,402号;同第5,811,395号;および同第5,795,807号(これらの開示は本明細書中に参考として援用される)において開示される。
【0064】
レラキシンポリペプチド配列の操作はまた、ポリペプチドレベルでなされ得る。合成の間および合成後(例えば、インビボまたはインビトロ翻訳)に示差的に改変されるレラキシンポリペプチド、アナログ、またはフラグメントは、本発明の範囲に含まれる。このような改変として、保存的置換、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子、別のポリペプチドまたは他の細胞性リガンドへの連結などが挙げられる。任意の多くの化学的改変は、公知の技術(特異的化学切断(例えば、臭化シアンによる切断)、酵素切断(例えば、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼなどによる切断);例えば、NaBH、アセチル化、ホルミル化、酸化および還元、ツニカマイシンの存在下での代謝的合成などによる改変を含むがこれらに限定されない)により実施され得る。
【0065】
レラキシンポリペプチド、アナログ、およびフラグメントは、本明細書中に記載されるような標準的な方法(例えば、イムノアフィニティー精製)により天然供給源から精製され得る。レラキシンポリペプチド、アナログ、およびフラグメントはまた、標準的な方法(クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、サイジングカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解が挙げられる)により、またはポリペプチドの精製についての任意の他の標準的な技術により単離および精製され得る。レラキシンポリペプチドは、当該分野で公知の標準的な化学的方法により合成され得る(例えば、Hunkapillerら、Nature 310:105−11(1984);StewartおよびYoung、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、Pierce Chemical Co.、Rockford、IL(1984)(この開示は、本明細書中に参考として援用される))。
【0066】
さらに、レラキシンポリペプチドのアナログは、化学的に合成され得る。例えば、所望のドメインを含むかまたはインビボでの所望の活性を媒介するレラキシンポリペプチドのフラグメントに対応するペプチドは、例えば、自動ペプチド合成機を用いた化学合成方法の使用により合成され得る。さらに、所望の場合、非古典的なアミノ酸または化学的アミノ酸アナログが、レラキシンポリペプチド配列への置換または付加として導入され得る。非古典的なアミノ酸として、共通アミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、ε−アミノヘキサン酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サクロシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、セレノシステイン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸、および一般的なアミノ酸アナログが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0067】
別の実施形態において、レラキシンアゴニストはレラキシンポリペプチドまたはそのフラグメント(代表的には、レラキシンポリペプチドの少なくとも1つのドメインもしくはモチーフ、またはレラキシンポリペプチドの少なくとも10の連続したアミノ酸からなる)を含むキメラタンパク質であるか、あるいは融合タンパク質であり、これは、異なるタンパク質のアミノ酸配列にペプチド結合を介してそのアミノ末端またはカルボキシ末端で結合されている。1つの実施形態において、このようなキメラタンパク質は、キメラポリペプチドをコードする核酸の組換え発現によって生成される。キメラ生成物は、当該分野で共通の公知の方法により、適切な核酸配列(所望のアミノ酸配列をコードする)を、適切なリーディングフレーム中で互いに結合させ、そしてキメラ生成物を発現させることによって作製され得る。あるいは、このキメラ生成物は、タンパク質合成技術(例えば、自動化ペプチド合成機の使用によって)作製され得る。
【0068】
特定の実施形態において、この融合タンパク質は、レラキシン−ユビキチン融合タンパク質である。例えば、米国特許第5,108,919号(この開示は、参考として本明細書中に援用される)は、レラキシン鎖およびユビキチンの融合タンパク質を調製する方法を開示する。
【0069】
好ましい実施形態において、レラキシンアナログまたはフラグメントは、機能的に活性である(すなわち、全長の野生型レラキシンポリペプチドに関連する1つ以上の機能的活性を提示し得る)。1つの実施例として、目的の所望されるレラキシン特性(例えは、レラキシン結合パートナー(例えば、レラキシンレセプター)への結合および/またはアポトーシスの調節(例えば、阻害))を保持するアナログまたはフラグメントは、このような特性およびその生理学的関連物のインデューサーとして使用され得る。特徴的な実施形態は、レラキシンレセプターに結合するレラキシンアナログまたはフラグメントに関連し、そしてアポトーシスにおいてレラキシンに関連する減少を誘導する。レラキシンのアナログまたはフラグメントは、当該分野に公知の手順によって所望された活性について試験し得る(本明細書中に記載される機能アッセイを含むが、これらに制限されない)。
【0070】
(レラキシン核酸)
本発明は、インビボまたはインビトロでの、レラキシンポリペプチド、フラグメントおよびアナログの発現のためのレラキシン核酸配列を提供する。レラキシン核酸は、脊椎動物または哺乳動物のレラキシン(例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌまたはサルのレラキシンが挙げられる)であり得る。レラキシン核酸は、ゲノム核酸、cDNA、レラキシンコード領域またはそのフラグメントを含み得る。レラキシン核酸は、さらに、レラキシン遺伝子座に対応するmRNAを含む。レラキシン核酸はまた、天然に存在する対立遺伝子改変体のような、同一のアミノ酸、またはその保存的アミノ酸置換体について可能な他のコドン選択をコードする核酸のようなアナログ(例えば、ヌクレオチド配列改変体)を含む。ヌクレオチドコード配列の縮重に起因して、レラキシンcDNAまたはオープンリーディングフレームと実質的に同一のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列は、本発明の実施において使用され得る。これらの核酸配列としては、配列内で、同一または機能的に等価なアミノ酸残基(例えば、保存的置換)をコードする、異なるコドンの置換によって変更される(従って、サイレントな変化を生じる)レラキシン遺伝子の全部または一部分を含む核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明は、さらに、少なくとも6個の連続したヌクレオチドのレラキシン核酸フラグメント(例えば、ハイブリダイゼーション可能な部分)を提供する。他の実施形態において、核酸は、レラキシン配列の少なくとも8個の連続したヌクレオチド、少なくとも25個の連続したヌクレオチド、少なくとも50個の連続したヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、または少なくとも150個のヌクレオチドあるいはそれより多くを含む。別の実施形態において、核酸は150個のヌクレオチド長よりも小さい。レラキシン核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。容易に理解されるように、本明細書中で使用される場合、「レラキシンポリペプチドのフラグメントをコードする核酸」は、連続した配列として、レラキシンポリペプチドの他の連続した部分ではなく、レラキシンポリペプチドの列挙されたフラグメントまたは一部分のみをコードする核酸をいうように解釈される。1つ以上のレラキシンドメインをコードするレラキシン核酸のフラグメントがまた提供される。
【0072】
レラキシン核酸またはその機能的活性アナログもしくはフラグメントは、発現ベクター(すなわち、挿入されたポリペプチドコード配列の転写および翻訳に必須の因子を含むベクター)のような適切なベクター中に挿入され得る。必須の転写シグナルおよび翻訳シグナルはまた、ネイティブなレラキシン遺伝子および/またはその隣接領域によって提供され得る。種々の宿主−ベクター系は、レラキシン核酸配列を発現させるのに利用され得る。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、微生物(例えば、酵母ベクターを含む酵母またはバクテリオファージで形質転換された細菌)、DNA、プラスミドDNAあるいはコスミドDNA。ベクターの発現因子は、その強度および特異性において変化する。利用される宿主−ベクター系に依存して、多くの適切な転写因子および翻訳因子のいずれかが使用され得る。特定の実施形態において、ヒトレラキシン核酸またはヒトレラキシンの機能的に活性な部分をコードする核酸配列は、酵母または細菌において発現される。なお別の実施形態において、レラキシンポリペプチドのドメインを含むレラキシンのフラグメントが発現される。
【0073】
ベクター中への核酸の挿入のために、当該分野で公知の任意の方法が使用され、適切な転写/翻訳の制御シグナルおよびレラキシン核酸配列からなるキメラ遺伝子を含む発現ベクターを構築し得る。これらの方法は、インビトロでの組換えDNAおよび合成技術ならびにインビボでの組換え(遺伝子組換え)を包含する。レラキシンのポリペプチド、アナログまたはフラグメントをコードする核酸配列の発現は、第2の核酸配列によって調節され得、その結果、レラキシンのポリペプチド、アナログまたはフラグメントは、組換えDNA分子で形質転換された宿主において発現される。例えば、レラキシンポリペプチドの発現は、当該分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーの要素によって制御され得る。遺伝子発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:SV40初期プロモーター領域(BenoistおよびChambon、Nature 290:304−10(1981))、Rous肉腫ウイルスの3’長末端リピートを含むプロモーター(Yamamotoら、Cell 22:787−97(1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−45(1981))、メタロチオネイン(metallothionen)遺伝子の調節配列 (Brinsterら、Nature 296:39−42(1982))、原核生物発現ベクター(例えば、β−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Komaroffら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727−31(1978))またはtacプロモーター(deBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983))、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターを含む植物発現ベクター(Gardnerら、Nucl.Acids Res.9:2871−88(1981))、光合成酵素リブロース2リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera−Estrellaら、Nature 310:115−20(1984))、酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント(例えば、Gal7プロモーターおよびGal4プロモーター)、ADH(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなど。
【0074】
以下の組織特異性を示す動物転写制御領域は、トランスジェニック動物において利用されている:膵臓腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(例えば、Swiftら、Cell 38:639−46(1984);Ornitzら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409(1986);MacDonald,Hepatology 7(1 Suppl.):42S−51S(1987));膵臓β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(例えば、Hanahan,Nature 315:115−22(1985))、リンパ系様細胞において活性であるイムノグロブリン遺伝子制御領域(例えば、Grosschedlら、Cell 38:647−58(1984);Adamsら、Nature 318:533−38(1985);Alexanderら、Mol.Cell.Biol.7:1436−44(1987))、精巣細胞、乳房細胞、リンパ様細胞および肥胖細胞において活性であるマウス乳腺癌ウイルス制御領域(例えば、Lederら、Cell 45:485−95(1986))、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(例えば、Pinkertら、Genes Dev.1:268−76(1987))、肝臓において活性であるα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(例えば、Krumlaufら、Mol.Cell.Biol.5:1639−48(1985);Hammerら、Science 235:53−58(1987));肝臓において活性であるα1−抗トリプシン遺伝子制御領域(例えば、Kelseyら、Genes and Devel.1:161−71(1987));骨髄性細胞において活性であるβ−グロビン遺伝子制御領域(例えば、Magramら、Nature 315:338−40(1985);Kolliasら、Cell 46:89−94(1986));脳の稀突起膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(例えば、Readheadら、Cell 48:703−12(1987));骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(例えば、Shani、Nature 314:283−86(1985));および視床下部において活性であるゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(例えば、Masonら、Science 234:1372−78(1986))。好ましい実施形態において、この組織特異的プロモーターは、前立腺特異的抗原プロモーターである(例えば、米国特許第6,100,444号を参照のこと、この開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0075】
別の実施形態において、レラキシン核酸に作動可能に連結されたプロモーター、1つ以上の複製起点および必要に応じて、1つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質または薬物耐性マーカー)を含むベクターが使用される。例えば、発現構築物は、pRSECT発現ベクターの制限部位中にレラキシン核酸をサブクローニングすることによって作製され得る。このような構築物は、発現されたポリペプチドの親和性精製のためのヒスチジンアミノ末端フラッグ配列を有するT7プロモーターの制御下で、レラキシンポリペプチド、アナログまたはフラグメントの発現を可能にする。別の特定な実施形態において、レラキシン核酸に作動可能に連結された前立腺特異的抗原プロモーター、1つ以上の複製起点および必要に応じて、1つ以上の選択マーカー(例えば、薬物耐性マーカー)を含むベクターが使用される。
【0076】
レラキシン核酸を含む発現ベクターは、当業者に周知の一般的なアプローチによって同定され得、これは以下を包含する:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、(c)挿入配列の発現、(d)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など。第1のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入されるレラキシン核酸の存在は、挿入されるレラキシン核酸に相同な配列を含むプローブを用いる核酸ハイブリダイゼーションによって検出され得る。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系は、ベクター中にレラキシン核酸を挿入することによって引き起こされる、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、形質転換の表現型、バキュロウイルスにおける閉鎖体形成、比色分析の変化など)の存在または非存在に基づいて同定および選択され得る。例えば、レラキシン核酸がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、レラキシン核酸を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定され得る。
【0077】
第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、組換えによって発現されるレラキシンポリペプチド、アナログまたはフラグメントをアッセイすることによって同定され得る。このようなアッセイは、例えば、インビトロでのアッセイ系におけるレラキシンポリペプチド、アナログまたはフラグメント(例えば、抗レラキシン抗体との結合、レラキシンレセプターとの結合など)の物理学的特性または機能的特性に基づき得る。第4のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、ポリメラーゼ連鎖反応によって同定され得る。(例えば、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号および同第4,889,818号;Gyllenstenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7652−56(1988);Ochmanら、Genetics 120:621−23(1988);Lohら、Science 243:217−20(1989)を参照のこと)。一旦、特定の組換えベクターが同定および単離されると、当該分野で公知のいくつかの方法が、これを増幅されるために使用され得る。
【0078】
一旦、適切な宿主系および増殖状態が確立されると、組換えベクターは多量に増幅および調製され得る。先に説明したように、使用され得るベクターとしては、2〜3例を挙げると、以下のベクターまたはそれらのアナログが挙げられるが、これらに限定されない:ヒトまたは動物のウイルス(例えば、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス);昆虫のウイルス(例えば、バキュロウイルス);酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、λ);ならびにプラスミドおよびコスミドDNAベクター。
【0079】
さらに、所望される特定の様式において、宿主細胞株は、挿入された核酸の発現を調節するか、あるいはレラキシン、レラキシンアナログもしくはフラグメントを改変または処理するために選択され得る。特定のプロモーターからの発現は、特定のインデューサーの存在下で上昇され得る:従って、レラキシンポリペプチド、アナログまたはフラグメントの発現は制御され得る。さらに、翻訳および翻訳後のプロセシングおよび改変(例えば、グリコシル化および/またはリン酸化)について、特徴的および特異的なメカニズムを有する異なる宿主細胞が使用され得る。適切な細胞株または宿主系が、発現されるポリペプチド、アナログまたはフラグメントの所望の改変およびプロセシングを確実にするために選択され得る。例えば、細菌系における発現は、プロセシングされないコアタンパク質生成物を生成するために使用され得る。哺乳動物細胞における発現は、哺乳動物細胞のレラキシンポリペプチドあるいはレラキシンのアナログまたはフラグメントの「ネイティブ」なプロセシングを確実にするために使用され得る。さらに、異なるベクター/宿主発現系は、プロセシング反応に異なる程度で影響を与え得る。
【0080】
(レラキシンアンタゴニスト)
本発明の別の局面において、レラキシンアンタゴニストは、アポトーシスの調節のために提供される。例えば、レラキシンアンタゴニストとしては、レラキシン結合因子、レラキシンレセプター結合因子、アンチセンス核酸などが挙げられ得る。
【0081】
(レラキシン抗体)
レラキシンアンタゴニストは、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体ならびに細胞集団または組織において、アポトーシスを刺激し、そして/またはレラキシンに結合された細胞の蓄積を減少もしくは阻害する抗体を含み得る。抗レラキシン抗体および抗レラキシンレセプター抗体としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体(例えば、完全なヒト化抗体またはヒトキメラ抗体)、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)、Fvまたは超可変領域)、単重鎖、およびFab発現ライブラリー。特定の実施形態において、全長のポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体、脊椎動物または哺乳動物のレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドは、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドに選択的に結合する抗体について生成および選択され、それによって、このようなポリペプチドを機能的に不活性化する。別の実施形態において、脊椎動物のレラキシンポリペプチドまたはレラキシンレセプターポリペプチドのドメインに対する抗体が生成される。なお別の実施形態において、脊椎動物のレラキシンポリペプチドまたはレラキシンレセプターポリペプチドのフラグメント(これは、親水性として同定される)は、抗体生成のための免疫原として使用され、このようなポリペプチドに対する免疫特異的結合およびその生物学的活性の阻害について選択される。
【0082】
当該分野に公知の種々の手順が、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドあるいはそれらのフラグメントまたはアナログに対するポリクローナル抗体の生成のために使用され得る。このような抗体の生成のために、種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどが挙げられるが、これらに限定されない)は、ネイティブのレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドあるいはそれらのフラグメントまたはアナログを注入することによって免疫化され得る。あるいは、ヒトの免疫系を有するトランスジェニック動物は、ネイティブなレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドを注入することによって免疫化され得る。(例えば、米国特許第6,114,598号および同第6,111,166号を参照のこと、これらは本明細書中に援用される)。種々のアジュバントが、免疫応答(宿主の種に依存する)を増強するために使用され得、これらとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロイントのアジュバント(完全または不完全な)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えば、リゾレシチン)、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒトアジュバント(例えば、BCG(カルメット−ゲラン杆菌)およびCorynebacterium parvum。
【0083】
レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチド、それらのフラグメントもしくはアナログに対するモノクローナル抗体の調製のために、培養において継続する細胞株による抗体分子の生成のために提供されるいずれかの技術がまた、使用され得る。このような技術としては、例えば、以下が挙げられる:KohlerおよびMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(Nature 256:495−97(1975))ならびにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozborら、Immunology Today 4:72(1983)を参照のこと)ならびにヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ技術(例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77−96頁(1985)を参照のこと)。哺乳動物抗体が使用され得、そしてハイブリドーマ(例えば、Coteら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−30(1983)を参照のこと)またはインビトロでのEBVウイルスを用いたヒトB細胞形質転換(例えば、Coleら、(1985)、前出を参照のこと)を用いることによって獲得され得る。適切な生物学的機能を有する抗体を生成するハイブリドーマの選択は、当該分野で周知であるか、または以下の本明細書中に記載される。ヒトモノクローナル抗体はまた、ネイティブなレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドを注射することによって免疫されたヒト免疫系を有する動物からハイブリドーマを調製することによって調製され得る(例えば、米国特許第6,114,598号および同第6,111,166号を参照のこと、これらは本明細書中に参考として援用される)。
【0084】
さらに、本発明は、「キメラ」抗体または「ヒト化」抗体が調製され得る(例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−55(1984);Neubergerら、Nature 312:604−08(1984);Takedaら、Nature 314:452−54(1985))。このようなキメラ抗体は、代表的に適切な活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共に、レラキシンまたはレセプターポリペプチドに対して特異的な抗体分子について、非ヒト遺伝子をスプライシングすることによって調製される。非ヒト抗体の抗原結合領域(例えば、F(ab’)、F(ab’)、Fvまたは超可変領域)を、組換えDNA技術によって、ヒト抗体のフレームワーク中に移行させ、ヒト分子を本質的に生成することも所望され得る。好ましい実施形態において、抗体は完全にヒト化される。
【0085】
このような「キメラ」分子を生成する方法は、一般的に周知であり、例えば以下に記載される:米国特許第4,816,567号;同第4,816,397号;同第5,693,762号;同第5,712,120号;同第5,821,337号;同第6,054,297号;国際特許公開公報WO 87/02671およびWO 90/00616;ならびに欧州特許公報EP 0 239 400(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。あるいは、ヒトモノクローナル抗体またはそれらの一部分は、Huseらによって記載される一般な方法(Science 246:1275−81(1989))に従って、レラキシンまたはレラキシンレセプターのポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードするDNA分子のためのヒトB細胞cDNAライブラリーを、最初にスクリーニングすることによって同定され得る。次いで、DNA分子は、クローニングおよび増幅され、所望の特異性の抗体(または結合ドメイン)をコードする配列を獲得し得る。ファージディスプレイ技術は、レラキシンまたはレラキシンレセプターのポリペプチド、それらのフラグメントもしくはアナログに結合する抗体を選択するための別の技術を提供する。(例えば、国際特許公開公報WO 91/17271およびWO 92/01047;およびHuseら、前出を参照のこと)。
【0086】
本発明の別の局面に従って、単鎖抗体の生成のための技術(例えば、米国特許第4,946,778号および同第5,969,108号を参照のこと)は、レラキシンまたはレラキシンレセプターの特異的単鎖抗体を生成するために適応され得る。(RiechmannおよびMuyldermans、J.Immunol.Methods 231:25−38(1999);MuyldermansおよびLauwereys、J.Mol.Recognit.12:131−40(1999)もまた参照のこと)。
【0087】
本発明のさらなる局面は、Fab発現ライブラリーの構築について記載される技術(例えば、Huseら(1989)、前出を参照のこと)を利用し、所望のレラキシンポリペプチド、それらのフラグメントまたはアナログに対する特異性および生物学的活性を有するモノクローナルFabフラグメントの同定を、迅速かつ容易にすることが可能である。
【0088】
分子のイディオタイプを含む抗体フラグメントは、公知の技術によって生成され得る。例えば、このようなフラグメントとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗体分子のペプシン消化により生成され得るF(ab’)フラグメント、F(ab’)フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより生成され得るFab’フラグメント、パパインおよび還元剤を用いて抗体分子を処理することにより生成され得るFabフラグメント、ならびにFvフラグメント。組換えFvフラグメントはまた、真核生物細胞において、例えば、米国特許第5,965,405号に記載される方法を用いて生成され得る。
【0089】
抗体の生成において、所望の抗体のスクリーニングは、当該分野で公知の技術(例えば、ELISA(固相酵素免疫検定法)によって達成され得る。1つの局面において、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドの特異的ドメインを認識する抗体は、レラキシンまたはレラキシンレセプターのフラグメント(このドメインを含む)に結合する生成物(例えば、抗体)についてハイブリドーマをアッセイするために使用され得る。第1のレラキシンまたはレラキシンレセプターのポリペプチドには特異的に結合するが、第2の異なるレラキシンポリペプチドには特異的に結合しない抗体を選択するために、抗体は、第1のポリペプチドへの抗体ポジティブ結合および第2の異なるポリペプチドへの抗体結合の欠損に基づいて選択され得る。
【0090】
(可溶性レラキシンレセプター)
本発明の別の局面において、レラキシンアンタゴニストは、レラキシンに結合する可溶性レラキシンレセプター、またはそれらのフラグメントもしくはアナログを含むレラキシン結合因子である。用語「可溶性レラキシンレセプター」とは、細胞膜に結合しないレラキシンレセプターポリペプチドをいう。このレラキシンレセプターは、約200キロダルトンである(Palejwalaら、Endocrinology 139(3):1208−12(1998)を参照のこと、この開示は、本明細書中に参考として援用される)。レラキシンレセプターの可溶性形態は、脊椎動物のレラキシンに結合する能力を保持するが、代表的に、膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインを欠いている。可溶性レラキシンレセプターは、さらなるアミノ酸残基(例えば、親和性タグ)を含み得、これは、ポリペプチドの精製手段を提供するか、あるいはポリペプチドを、別のポリペプチドまたは免疫グロブリン配列に付着させるための部位を提供する。
【0091】
可溶性レラキシンレセプターは、細胞膜に結合できない膜貫通ドメインを必要に応じて含み得る。「膜貫通タンパク質」とは、十分な数の疎水性アミノ酸を含むレラキシンレセプターポリペプチドのドメインを意味し、これは、ポリペプチドが細胞膜に挿入され、そして固着されることを可能にする。「細胞膜に結合できない膜貫通ドメイン」は、変異または欠失によって変更され、その結果、細胞膜への挿入または他の結合が可能なほど疎水性が十分でない膜貫通ドメインを意味する。このような膜貫通ドメインは、例えば、レラキシンレセプターポリペプチドまたはそのフラグメント(細胞からのポリペプチド分泌に有用な分泌シグナル配列を有する)の融合を妨げる。不活性な膜貫通ドメインを達成するのに有用なアミノ酸配列の置換または変更には、膜貫通ドメイン内のアミノ酸の欠失または置換が挙げられるが、これらに限定されない。可溶性レセプターを作製する方法は、当該分野に公知である(例えば、米国特許第6,033,903号;同第6,037,450号;および同第5,925,549号を参照のこと;これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0092】
可溶性レラキシンレセプターには、可溶性のレラキシンレセプターの天然に存在するアミノ酸配列改変体が含まれる。可溶性レラキシンレセプターはさらに、機能的活性化レラキシンレセプターポリペプチドを提供する1つ以上のアミノ酸残基の、置換、付加または欠失によって変更されるレセプターを含む。このようなレラキシンレセプターには、レラキシンレセプターポリペプチドのアミノ酸配列(1つ以上の機能的に等価なアミノ酸残基がこの配列内の残基と置換され、サイレントな機能変化(例えば、保存的置換)を生じる配列を含む)の全てまたは一部分を一次アミノ酸配列として含むレセプターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
別の局面において、可溶性レラキシンレセプターは、レラキシンレセプターポリペプチドの少なくとも10の連続したアミノ酸を有するレラキシンレセプターポリペプチドのフラグメントからなるか、またはこのフラグメントを含む、ポリペプチドである。より代表的には、このフラグメントは、レラキシンレセプターポリペプチドの、少なくとも20または少なくとも50の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態において、このフラグメントは、100アミノ酸より大きいかまたは200アミノ酸よりさえ大きい。
【0094】
レラキシンレセプターポリペプチドは、レラキシンレセプターポリペプチドまたはそのフラグメントに実質的に類似の領域(例えば、種々の実施形態において、同一の大きさのアミノ酸配列にわたって、少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、または95%さえの同一性または類似性)を含む、ポリペプチドであり得るか、または配列が当該分野において公知のコンピュータ配列比較/整列プログラムによって、もしくは目視検査によって整列がなされて、整列された配列と比較される場合のポリペプチドであり得る。(例えば、SmithおよびWaterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970);PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988);Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTEASTA,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI);Ausubelら(前出)を参照のこと;これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。配列の同一性または類似性はまた、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、または低ストリンジェンシーの条件下で、レラキシンレセプター核酸にハイブリダイズし得る核酸を同定することによって、決定され得る。(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001);Ausubelら,(1996),前出を参照のこと;これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0095】
可溶性レラキシンレセプターおよびそのフラグメントは、当該分野において公知の種々の方法によって、生成され得る。これらの生成をもたらす操作は、遺伝子レベルまたはタンパク質レベルで起こり得る。例えば、クローニングされたレラキシンレセプター核酸は、当該分野において公知の多数のストラテジー(例えば、保存的置換、欠失、挿入などを行うこと)のいずれかによって、改変され得る(例えば、Sambrookら,前出;Ausubelら,前出を参照のこと)。この配列は、制限エンドヌクレオアーゼを用いて適切な部位で切断され得、次いで、所望であれば、さらに酵素的に改変され、単離され、そしてインビトロで連結され得る。レラキシンレセプター核酸の生成において、改変された核酸は、代表的に、その適切な翻訳リーディングフレームを維持し、その結果、このリーディングフレームは、翻訳停止シグナル、または可溶性レラキシンレセプターもしくはそのフラグメントの合成を妨害する他のシグナルによって、妨害されない。レラキシンレセプター核酸はまた、インビトロまたはインビボで変異されて、翻訳開始配列および/または翻訳停止配列を、作製および/または破壊し得る。レラキシンレセプター核酸はまた、変異されて、コード領域におけるバリエーション(例えば、アミノ酸置換)を作製し得、そして/または新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を形成もしくは既存の部位を破壊し得、そしてインビトロ改変をさらに容易にし得る。当該分野において公知の任意の変異誘発のための技術が使用され得、この技術としては、化学的変異誘発、インビトロ部位特異的変異誘発(例えば、Hutchisonら,J.Biol.Chem.253:6551−60(1978)を参照のこと)、TAB(登録商標)リンカー(Pharmacia)の使用などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
レラキシンレセプターポリペプチド配列の操作はまた、ポリペプチドレベルでなされ得る。本発明の範囲内には、合成中または合成後に差次的に改変された(例えば、インビボまたはインビトロの翻訳による)レラキシンレセプターポリペプチドが含まれる。このような改変としては、保存的置換、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子、タンパク質または他の細胞リガンドへの結合などが挙げられる。多数の化学的改変のいずれかが、公知の技術によって実施され得、この技術としては、特異的化学的切断(例えば、臭化シアンによる)、酵素的切断(例えば、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼなどによる);例えば、NaBH、アセチル化、ホルミル化、酸化および還元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成による改変などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
レラキシンレセプターポリペプチドおよびそのフラグメントは、本明細書中に記載されるもののような標準的な方法(例えば、免疫アフィニティー精製)によって、天然の供給源から精製され得る。レラキシンレセプターポリペプチドおよびフラグメントはまた、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイジングカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度を含む標準的な方法によって、またはポリペプチドの精製のための他の任意の標準的な技術によって、単離および精製され得る。レラキシンレセプターポリペプチドおよびそのフラグメントは、当該分野において公知の標準的な化学的方法によって、合成され得る(例えば、Hunkapillerら,Nature 310:105−11(1984);StewartおよびYoung,Solid Phase Peptide Synthesis,第2版,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL,(1984)を参照のこと)。さらに、所望であれば、非古典的なアミノ酸または化学的アミノ酸アナログが、置換または付加として、レラキシンレセプターポリペプチド配列に導入され得る。非古典的なアミノ酸としては、通常のアミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、ε−アミノヘキサン酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、セレノシステイン、フルオロ−アミノ酸、デザイナー(designer)アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸)、および一般的なアミノ酸アナログが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0098】
別の実施形態において、可溶性レラキシンレセプターは、そのアミノ末端またはカルボキシ末端において、ペプチド結合を介して異なるタンパク質のアミノ酸配列に結合する、レラキシンレセプターポリペプチド、またはそのフラグメント(代表的に、レラキシンレセプターポリペプチドの少なくともドメインまたはモチーフ、あるいはレラキシンレセプターポリペプチドの少なくとも10の連続するアミノ酸からなる)を含む、キメラタンパク質または融合タンパク質である。1つの実施形態において、このようなキメラタンパク質は、キメラポリペプチドをコードする核酸の組換え発現によって、産生される。キメラ産物は、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を、適切なリーディングフレームで互いに連結し、そしてキメラ産物を、当該分野において通常公知の方法によって発現させることによって、作製され得る。あるいは、キメラ産物は、タンパク質合成技術によって(例えば、自動化ペプチド合成機の使用によって)作製され得る。特定の実施形態において、融合タンパク質は、レラキシンレセプター−ユビキチン融合タンパク質である。
【0099】
(レラキシンアナログ)
レラキシンアンタゴニストはさらに、レラキシンアナログ(例えば、レラキシンレセプターに結合するがそのレセプターによる応答を誘導しないレラキシンポリペプチド)であり得る。例えば、レラキシンアナログは、レラキシン結合の競合的なインヒビター、またはレラキシンレセプターの通常のアンタゴニストであり得る。用語「レラキシン」とは、脊椎動物のレラキシンポリペプチドをいい、全長レラキシンポリペプチド、または生物学的活性を維持するレラキシンポリペプチドの一部を含む。レラキシンは、その天然のヒト形態、動物形態、およびその合成形態において、十分に規定されている。特に、レラキシンは、米国特許第5,179,195号;同第5,166,191号;同第5,023,321号;同第4,835,251号;および同第4,758,516号に広範に記載されている(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。レラキシンおよびそのアナログを作製する方法は、当該分野において公知である(前出)。レラキシンアナログは、レラキシンアナログがレラキシンレセプター結合活性を維持するが、レラキシンレセプターによる応答を誘導しないように、レラキシンポリペプチドを改変することによって、調製され得る。例えば、レラキシンアナログは、レラキシンレセプター結合活性を維持するがレラキシンレセプターによる応答を誘導しない、レラキシンのアミノ酸配列改変体であり得る。レラキシンアナログは、さらに、1つ以上のアミノ酸残基の付加または欠失によって変更された、レラキシンレセプター結合機能を維持するがレラキシンレセプターによる応答を誘導しない、レラキシンポリペプチドを含む。
【0100】
本発明による種々の局面において、レラキシンアナログは、レラキシンポリペプチドの少なくとも10の連続するアミノ酸からなるかまたはそのアミノ酸を含む、レラキシンポリペプチドのフラグメントである。あるいは、このフラグメントは、レラキシンポリペプチドの少なくとも20または40の連続するアミノ酸を含む。他の実施形態において、これらのフラグメントは、35アミノ酸より長くない。
【0101】
レラキシンアナログは、レラキシンポリペプチドに実質的に類似の領域(例えば、種々の実施形態において、同一の大きさのアミノ酸配列にわたって、少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、または95%さえの同一性または類似性)を含む、ポリペプチドであり得るか、または当該分野において公知のコンピュータ配列比較/整列プログラムによって整列がなされて整列された配列と比較される場合のポリペプチドであり得るか、またはそのコード核酸が、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、または低ストリンジェンシーの条件下で、レラキシン核酸にハイブリダイズし得るポリペプチドであり得る(前出を参照のこと)。
【0102】
レラキシンアナログは、当該分野において公知の種々の方法によって、生成され得る。これらの生成をもたらす操作は、遺伝子レベルまたはタンパク質レベルで起こり得る。例えば、クローニングされたレラキシン核酸は、当該分野において公知の多数のストラテジーのいずれかによって(例えば、保存的または非保存的な置換、欠失、挿入などを行うことによって)、改変され得る(例えば、Sambrookら,前出;Ausubelら,前出を参照のこと)。この配列は、制限エンドヌクレアーゼを用いて適切な部位で切断され得、次いで、所望であれば、さらに酵素的に改変され、単離され、そしてインビトロで連結され得る。レラキシンアナログ核酸の生成において、改変された核酸は、代表的に、その適切な翻訳リーディングフレームを維持し、その結果、このリーディングフレームは、翻訳停止シグナル、またはレラキシンアナログの合成を妨害する他のシグナルによって、妨害されない。レラキシン核酸は、インビトロまたはインビボで変異されて、翻訳開始配列および/または翻訳停止配列を、作製および/または破壊し得る。レラキシン核酸はまた、変異されて、コード領域におけるバリエーションを作製し得、そして/または新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を形成もしくは既存の部位を破壊し得、そしてインビトロ改変をさらに容易にし得る。当該分野において公知の任意の変異誘発のための技術が使用され得、この技術としては、化学的変異誘発、インビトロ部位特異的変異誘発(例えば、Hutchisonら,J.Biol.Chem.253:6551−60(1978)を参照のこと)、TAB(登録商標)リンカー(Pharmacia)の使用などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
特定の実施形態において、レラキシンアナログは、レラキシンコード領域の少なくとも一部における特定の位置において、アスパラギン酸コドンを導入するよう変更された、レラキシンコード核酸から調製される(例えば、米国特許第5,945,402号を参照のこと。この開示は、本明細書中に参考として援用される)。得られるアナログは、所望のアナログを放出するように、希酸で処理され得、これによって、このタンパク質を、より容易に単離および精製されるようにする。
【0104】
レラキシンポリペプチド配列の操作はまた、ポリペプチドレベルでなされ得る。本発明の範囲内には、合成中または合成後に差次的に改変された(例えば、インビボまたはインビトロの翻訳による)レラキシンアナログが含まれる。このような改変としては、アミノ酸置換(保存的または非保存的のいずれか)、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子、タンパク質または他の細胞リガンドへの結合などが挙げられる。多数の化学的改変のいずれかが、公知の技術によって実施され得、この技術としては、特異的化学的切断(例えば、臭化シアンによる)、酵素的切断(例えば、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼなどによる);例えば、NaBH、アセチル化、ホルミル化、酸化および還元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成による改変などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
レラキシンアナログは、本明細書中に記載されるもののような標準的な方法(例えば、免疫アフィニティー精製)によって、天然の供給源から精製され得る。レラキシンアナログはまた、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイジングカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度を含む標準的な方法によって、またはポリペプチドの精製のための他の任意の標準的な技術によって、単離および精製され得る。レラキシンアナログは、当該分野において公知の標準的な化学的方法によって、合成され得る(例えば、Hunkapillerら,Nature 310:105−11(1984);StewartおよびYoung,Solid Phase Peptide Synthesis,第2版,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL,(1984)を参照のこと)。さらに、所望であれば、非古典的なアミノ酸または化学的アミノ酸アナログが、置換または付加として、レラキシンポリペプチド配列に導入され得る。非古典的なアミノ酸としては、通常のアミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、ε−アミノヘキサン酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、セレノシステイン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸)、および一般的なアミノ酸アナログが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0106】
別の実施形態において、レラキシンアナログは、そのアミノ末端またはカルボキシ末端において、ペプチド結合を介して異なるタンパク質のアミノ酸配列に結合する、レラキシンポリペプチド(代表的に、レラキシンポリペプチドの少なくともドメインまたはモチーフ、あるいはレラキシンポリペプチドの少なくとも10の連続するアミノ酸からなる)を含む、キメラタンパク質または融合タンパク質である。1つの実施形態において、このようなキメラタンパク質は、キメラポリペプチドをコードする核酸の組換え発現によって、産生される。キメラ産物は、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を、適切なリーディングフレームで互いに連結し、そしてキメラ産物を、当該分野において通常公知の方法によって発現させることによって、作製され得る。あるいは、キメラ産物は、タンパク質合成技術によって(例えば、自動化ペプチド合成機の使用によって)作製され得る。
【0107】
特定の実施形態において、融合タンパク質は、レラキシンアナログ−ユビキチン融合タンパク質である。例えば、米国特許第5,108,919号(この開示は、本明細書中に参考として援用される)は、レラキシン鎖およびユビキチンの融合タンパク質を調製するための方法を開示する。
【0108】
(核酸)
本発明は、さらに、本発明に従って、アンタゴニストとして使用するため、またはアンタゴニストを発現するための核酸を提供する。このような核酸としては、それぞれ可溶性レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログの合成のための、可溶性レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログをコードする核酸が挙げられる。レラキシンまたはレラキシンレセプターの発現の阻害のための、アンチセンス核酸が、提供される。レラキシンポリペプチドまたはレラキシンレセプターポリペプチドをコードする核酸もまた、抗体の調製のために提供される(前出を参照のこと)。
【0109】
1つの局面において、本発明は、インビボでの発現のための、レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログをコードする核酸配列を提供する。レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログ、あるいはアンチセンス核酸は、遺伝子療法のために、インビボで発現され得る。レラキシンレセプター、レラキシンアナログまたはアンチセンス核酸はまた、被験体への外因性投与のための、組換え可溶性レラキシンレセプター、組換えレラキシンアナログまたは組換えアンチセンス核酸の調製のために、インビボまたはインビトロで発現され得る。
【0110】
核酸は、脊椎動物核酸であり得、例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ、またはサルの、脊椎動物レラキシンから誘導されたレラキシンレセプター、レラキシン、またはレラキシンアナログが挙げられる。これらの核酸は、ゲノムDNA、ゲノムcDNA、またはレラキシンレセプター、レラキシンもしくはレラキシンアナログのコード領域を含み得る。これらの核酸は、さらに、レラキシンレセプター遺伝子座またはレラキシン遺伝子座に対応するmRNAを含み得る。これらの核酸はまた、同じアミノ酸に対して可能な他のコドン選択をコードする改変体、またはその保存的アミノ酸置換体をコードする改変体(例えば、天然に存在する対立遺伝子改変体)のような、ヌクレオチド配列改変体を含む。ヌクレオチドコード配列の縮重に起因して、レラキシンレセプターと実質的に同じアミノ酸配列をコードする他の核酸配列、またはレラキシンコード配列が、本発明の実施において使用され得る。これらの核酸配列としては、配列内で同じかまたは機能的に等価なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換(例えば、保存的置換)によって改変され、従ってサイレントな変化を生じる、レラキシン遺伝子の全てまたは部分を含むヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明は、さらに、少なくとも6の連続したヌクレオチド(例えば、ハイブリダイズ可能な部分)の核酸フラグメントを提供する;他の実施形態において、この核酸は、レラキシン配列の少なくとも8の連続したヌクレオチド、少なくとも25の連続したヌクレオチド、少なくとも50の連続したヌクレオチド、少なくとも100のヌクレオチド、150のヌクレオチドまたはそれより多くを含む。別の実施形態において、これらの核酸は、100ヌクレオチド長または150ヌクレオチド長より短い。これらの核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。容易に明らかであるように、本明細書中において使用される場合、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドのフラグメントをコードする核酸は、レラキシンポリペプチドの言及されたフラグメントまたは部分のみをコードし、そしてレラキシンレセプターまたはレラキシンポリペプチドの連続する他の部分を連続する配列としてコードしない核酸をいうと解釈される。レラキシンまたはレラキシンレセプターの1つ以上のドメインをコードする核酸のフラグメントもまた、提供される。
【0112】
レラキシンレセプター、レラキシンアナログまたはアンチセンス核酸は、適切なベクター(例えば、挿入されたポリペプチドコード配列の転写または転写および翻訳のために必要なエレメントを含む発現ベクター)に、望まれるように、センス方向またはアンチセンス方向のいずれかで、挿入され得る。必要な転写シグナルおよび翻訳シグナルもまた、ネイティブのレラキシンまたはレラキシンレセプター遺伝子および/あるいはその隣接領域によって、供給され得る。種々の宿主ベクター系が、ポリペプチドコード配列を発現するために、利用され得る。これらとしては、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、酵母ベクターを含む酵母のような微生物、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換された細菌が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターの発現エレメントは、その強度および特異性が異なる。利用される宿主ベクター系に依存して、多数の適切な転写エレメントおよび翻訳エレメントのいずれかが、使用され得る。特定の実施形態において、核酸は、発現され得るか、またはレラキシンレセプターもしくはレラキシンアナログの機能的に活性な部分をコードする核酸配列は、哺乳動物細胞、酵母または細菌において、発現される。なお別の実施形態において、それぞれのポリペプチドのドメインを含むレラキシンレセプターまたはレラキシンアナログのフラグメントが、発現される。
【0113】
核酸をベクターに挿入するための、当該分野において公知の方法のいずれかを使用して、適切な転写制御シグナル、翻訳制御シグナル、および/またはポリペプチドコード配列を有する、キメラ遺伝子を含む発現ベクターを構築し得る。これらの方法としては、インビトロ組換えDNAおよび合成技術、ならびにインビボ組換え(遺伝子組換え)が挙げられる。レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログをコードする核酸の発現は、核酸またはポリペプチドが、組換えDNA分子によって形質転換された宿主において発現されるように、第2の核酸配列によって調節され得る。例えば、レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログの核酸の発現は、当該分野において公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによって、制御され得る。発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:SV40初期プロモーター領域(例えば、BenoistおよびChambon,Nature 290:304−10(1981)を参照のこと)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(例えば、Yamamotoら,Cell 22:787−97(1980)を参照のこと)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(例えば、Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−45(1981)を参照のこと)、メタロチオネイン(metallothionen)遺伝子の調節配列(例えば、Brinsterら,Nature 296:39−42(1982)を参照のこと)、β−ラクタマーゼプロモーターのような、原核生物発現ベクター(例えば、Villa−Komaroffら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727−31(1978)を参照のこと)またはtacプロモーター(例えば、deBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983)を参照のこと)、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターを含む、植物発現ベクター(例えば、Gardnerら,Nucl.Acids Res.9:2871−88(1981)を参照のこと)、ならびに光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(例えば、Herrera−Estrellaら,Nature 310:115−20(1984)を参照のこと)、Gal7およびGal4プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターのような、酵母または他の真菌由来のプローモーターエレメントなど。
【0114】
以下の動物転写制御領域(これらは、組織特異性を示す)は、トランスジェニック動物において利用されている:膵臓腺房細胞において活性な、エラスターゼI遺伝子制御領域(例えば、Swiftら,Cell 38:639−46(1984);Ornitzら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409(1986);MacDonald,Hepatology 7(補遺1):42S−51S(1987)を参照のこと);膵臓β細胞において活性な、インスリン遺伝子制御領域(例えば、Hanahan,Nature 315:115−22(1985)を参照のこと)、リンパ系細胞において活性な、免疫グロブリン遺伝子制御領域(例えば、Grosschedlら,Cell 38:647−58(1984);Adamsら,Nature 318:533−38(1985);Alexanderら,Mol.Cell.Biol.7:1436−44(1987)を参照のこと)、精巣、胸部、リンパ性細胞、およびマスト細胞において活性な、マウス乳腺癌ウイルス制御領域(例えば、Lederら,Cell 45:485−95(1986)を参照のこと)、肝臓において活性な、アルブミン遺伝子制御領域(例えば、Pinkertら,Genes
Dev.1:268−76(1987)を参照のこと)、肝臓において活性な、α−フェトプロテイン遺伝子制御領域(例えば、Krumlaufら,Mol.Cell.Biol 5:1639−48(1985);Hammerら,Science 235:53−58(1987)を参照のこと);肝臓において活性な、α1−抗トリプシン遺伝子制御領域(例えば、Kelseyら,Genes and Devel.1:161−71(1987)を参照のこと);骨髄性細胞において活性な、β−グロビン遺伝子制御領域(例えば、Magramら,Nature 315:338−40(1985);Kolliasら,Cell 46:89−94(1986)を参照のこと);脳における稀突起神経膠細胞において活性な、ミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(例えば、Readheadら,Cell 48:703−12(1987)を参照のこと);骨格筋において活性な、ミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(例えば、Shani,Nature
314:283−86(1985)を参照のこと);ならびに視床下部において活性な、性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(例えば、Masonら,Science 234:1372−78(1986)を参照のこと)。好ましい実施形態において、組織特異的プロモーターは、前立腺特異的抗原プロモーターである(例えば、米国特許第6,100,444号を参照のこと(この開示は、本明細書中に参考として援用される))。
【0115】
別の実施形態において、核酸に作動可能に連結したプロモーター、1つ以上の複製起源、および必要に応じて、1つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質または薬物耐性マーカー)を含む、ベクターが使用される。例えば、発現構築物が、レラキシンレセプターまたはレラキシンアナログ核酸を、pRSECT発現ベクターの制限部位にサブクローニングすることによって、作製され得る。このような構築物は、発現されるポリペプチドのアフィニティー精製のためのヒスチジンアミノ末端フラッグ配列を有する、T7プロモーターの制御下での、レラキシンアナログまたはレラキシンレセプターポリペプチドの発現を可能にする。別の特定の実施形態において、レラキシンアナログ核酸に作動可能に連結した前立腺特異的抗原プロモーター、1つ以上の複製起点、および必要に応じて、1つ以上の選択マーカー(例えば、薬物耐性マーカー)を含むベクターが使用される。
【0116】
このような核酸を含む発現ベクターは、当業者に周知の一般的なアプローチによって同定され得、このアプローチは、以下を包含する:(a)核酸ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、(c)挿入された配列の発現、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)。第1のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入された核酸の存在は、挿入された核酸に相同な配列を含むプローブを使用する、核酸ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応によって、検出され得る。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系が、レラキシンレセプター、レラキシンまたはレラキシンアナログの核酸を含むベクターの挿入によって引き起こされる、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける閉塞体の形成など)の存在または非存在に基づいて、同定および選択され得る。例えば、核酸がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、その核酸を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定され得る。
【0117】
第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、組換え体により発現されるポリペプチドをアッセイすることによって同定され得る。このようなアッセイは、例えば、インビトロアッセイ系におけるこのポリペプチドの物理的特性または機能的特性(例えば、抗レラキシン抗体との結合、レラキシンまたはレラキシンアナログとの結合、レラキシンレセプターとの結合など)に基づき得る。一旦、特定の組換えベクターが同定および単離されると、当該分野で公知のいくつかの方法が、このベクターを増殖するために使用され得る。一旦、適切な宿主系および増殖条件が確立されると、組換え発現ベクターが増殖され得、そして多量に調製され得る。以前に説明したように、使用され得る発現ベクターとしては、以下のいくつか名前を挙げるベクターまたはそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトウイルスまたは動物ウイルス(例えば、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス);昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス);酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、λ);ならびにプラスミドDNAベクターおよびコスミドDNAベクター。第4のアプローチにおいて、PCRは、ベクターにおける核酸を検出するために使用される(上記を参照のこと)。
【0118】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または所望される特定の様式で遺伝子産物を改変もしくはプロセシングする、宿主細胞株が選択され得る。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘発物質の存在下で増大し得、従って、ポリペプチドの発現が制御され得る。さらに、ポリペプチドの翻訳プロセシング、翻訳後プロセシングおよび修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化)について特徴的かつ特異的なメカニズムを有する異なる宿主細胞が、使用され得る。適切な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の所望の改変およびプロセシングを保証するように選択され得る。例えば、細菌系における発現は、プロセシングされていないコアタンパク質産物を産生するために使用され得る。哺乳動物細胞における発現は、哺乳動物レセプターポリペプチドの「ネイティブ」のプロセシングを保証するために使用され得る。さらに、異なるベクター/宿主の発現系は、プロセシング反応に異なる程度まで影響し得る。
【0119】
(レラキシンならびにレラキシンレセプターアゴニストおよびアンタゴニストについての機能的アッセイ)
レラキシンアゴニストおよびレラキシンアンタゴニストの活性、ならびにレラキシンレセプターアゴニストおよびアンタゴニストの活性は、レラキシンおよび/またはレラキシンレセプターの活性についての標準的なアッセイによって決定され得る。本発明の1つの局面において、レラキシンアゴニストの活性がアッセイされる。例えば、アポトーシスを減少するか、または組織の成熟を刺激するレラキシンアゴニストの能力が、アッセイされる。
【0120】
本発明の別の局面において、レラキシンに結合することによってレラキシンの機能的活性を阻害する、レラキシンアンタゴニストの能力が、アッセイされる。同様に、レラキシンの機能またはレラキシンレセプターの機能を阻害するレラキシンアンタゴニストの能力は、例えば、レラキシンレセプターアッセイにレラキシンアンタゴニストを添加し、そしてレラキシンアンタゴニストを含まないコントロールと比較した阻害を決定することによって、アッセイされ得る。レラキシンアンタゴニストの活性の適切な測定としては、阻害%であるIC50の測定などが挙げられる。
【0121】
レラキシン、またはレラキシンレセプターアゴニストもしくはアンタゴニストの活性を測定するために適切なアッセイとしては、例えば、以下の参考文献(これらは本明細書中で参考として援用される)に記載されるアッセイが挙げられる:MacLennanら、Ripening of the Human Cervix and Induction of Labor with Intracervical Purified Porcine Relaxin,Obstetrics & Gynecology 68:598−601(1986);Poisnerら、Relaxin Stimulates the Synthesis and Release of Prorenin From Human Decidual Cells:Evidence For Autocrine/Paracrine Regulation,J.Clinical Endocrinology and Metabolism 70:1765−67(1990);O’Day−Bowmanら、Hormonal Control
of the Cervix in Pregnant Gilts.III.Relaxin’s Influence on Cervical Biochemical
Properties in Ovariectomized Hormone−Treated Pregnant Gilts,Endocrinology 129:1967−76(1991);Saugstad,Persistent Pelvic Pain and Pelvis Joint Instability,Eur.J.Obstetrics & Gynecology and Reproductive
Biology 41:197−201(1991)。
【0122】
他のアッセイとしては、以下により開示されるアッセイが挙げられる:Bullesbachら、The Receptor−Binding Sites of Human
Relaxin II,J.Biol.Chem.267:22957−60(1992);Hallら、Influence of Ovarian Steroids on Relaxin−Induced Uterine Growth in Ovariectomized Gilts,Endocrinology 130:3159−66(1992);Kibblewhiteら、The Effect of Relaxin on Tissue Expansion,Arch.Otolaryngol.Head Neck Surg.118:153−56(1992);Leeら、Monoclonal Antibodies Specific for Rat Relaxin.VI.Passive Immunization with Monoclonal Antibodies Throughout the Second Half of Pregnancy Disrupts Histological Changes Associated with Cervical Softening
at Parturition in Rats,Endocrinology 130:2386−91(1992);Bellら、A Randomized,Double−Blind Placebo−Controlled Trial of the Safety of Vaginal Recombinant Human Relaxin for Cervical Ripening,Obstetrics & Gynecology 82:328−33(1993);Bryant−Greenwoodら、Sequential Appearance of Relaxin,Prolactin and IGFBP−1 During Growth and Differentiation of the Human Endometrium,Molecular and Cellular Endocrinology 95:23−29(1993);Chenら、The Pharmacokinetics of Recombinant Human Relaxin in Nonpregnant
Women After Intravenous,Intravaginal,and Intracervical Administration,Pharmaceutical Research 10:834−38(1993);Huangら、Stimulation of Collagen Secretion by Relaxin and Effect of Oestrogen on Relaxin Binding in Uterine Cervical Cells of Pigs,Journal of Reproduction and Fertility 98:153−58(1993)。
【0123】
さらなるアッセイは、以下に開示される:Saxenaら、Is the Relaxin System a Target for Drug Development Cardiac Effects of Relaxin,TiPS 14:231(June 1993,letter);Winnら、Hormonal Control of the Cervix in Pregnant Gilts.IV.Relaxin Promotes Changes in the Histological Characteristics of the Cervix that are Associated with Cervical Softening During
Late Pregnancy in Gilts,Endocrinology 133:121−28(1993);Colonら、Relaxin Secretion
into Human Semen Independent of Gonadotropin Stimulation,Biology of Reproduction 50:187−92(1994);Golubら、Effect of Short−Term Infusion of Recombinant Human Relaxin on Blood Pressure in the Late−Pregnant Rhesus Macaque(Macaca Mulatta),Obstetrics & Gynecology 83:85−88(1994);Jauniauxら、The Role of Relaxin in the Development of the Uteroplacental Circulation in Early Pregnancy,Obstetrics & Gynecology 84:338−342(1994);Johnsonら、The Regulation of Plasma Relaxin Levels During Human Pregnancy,J.Endocrinology 142:261−65(1994);Laneら、Decidualization of Human Endometrial Stromal Cells in Vitro:Effects of Progestin and Relaxin on the Ultrastructure and Production of Decidual Secretory Proteins,Human Reproduction 9:259−66(1994);Lanzafameら、Pharmacological Stimulation of Sperm Motility,Human Reproduction 9:192−99(1994);Petersenら、Normal Serum Relaxin in Women with Disabling Pelvic Pain During Pregnancy,Gynecol. Obstet.Invest.38:21−23(1994);Tashimaら、Human Relaxins in Normal,Benign and Neoplastic Breast Tissue,J.Mol.Endocrinology 12:351−64(1994);Winnら、Individual and Combined Effects of Relaxin,Estrogen,and Progesterone in Ovariectomized Gilts.I.Effects on the Growth,Softening,and Histological Properties of the Cervix,Endocrinology 135:1241−49(1994);Winnら、Individual and Combined Effects of Relaxin,Estrogen,and Progesterone on Ovariectomized Gilts.II.Effects on Mammary Development,Endocrinology 135:1250−55(1994);Bryant−Greenwoodら、Human Relaxins:Chemistry and Biology,Endocrine Reviews 15:5−26(1994);Johnsonら、Relationship Between Ovarian Steroids,Gonadotrophins and Relaxin During the Menstrual Cycle,Acta Endocrinilogica 129:121−25(1993)。
【0124】
本発明のさらに別の局面において、アゴニストまたはアンタゴニストの活性は、このアゴニストまたはアンタゴニストが、抗レラキシン抗体への結合について野生型レラキシンポリペプチドまたはレラキシンレセプターポリペプチドと競合する能力を測定することによって、決定される。当該分野で公知の種々のイムノアッセイが使用され得る。このようなアッセイとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュイムノアッセイ(金コロイド、酵素または放射性同位体標識などを使用する)、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイまたは血球凝集アッセイ)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどのような技術を使用する競合アッセイシステムおよび非競合アッセイシステム。抗体の結合は、基質を結合するかまたは基質への結合を妨害された一次抗体上の標識の量を測定することによって、検出され得る。あるいは、一次抗体の結合は、この一次抗体への二次抗体または試薬の結合を測定することによって、検出される。この二次抗体はまた、直接標識され得る。イムノアッセイにおいて結合を検出するための多くの手段が、当該分野で公知であり、そして本発明の範囲内であると考えられる。
【0125】
アゴニストまたはアンタゴニストの機能的活性はまた、インビボ系で決定され得る。例えば、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストの、レラキシンレセプターに結合する能力、またはレラキシンレセプターへの結合について競合する能力、あるいは細胞集団および/または組織におけるアポトーシスを調節する能力が、測定され得る。上記のアッセイは、脊椎動物細胞におけるレラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストの発現から生じる活性を決定するために使用され得る。あるいは、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストは、異種系において発現され得、そしてこのレラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストの活性は、この系における生理学的変化のモジュレーターとしてアッセイされ得る。例えば、アポトーシスを調節するレラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニストの能力は、脊椎動物細胞(例えば、トランスフェクトされた哺乳動物細胞)において試験され得る。
【0126】
(レラキシンアゴニストおよびレラキシンアンタゴニストの投与)
本発明は、有効量のレラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニスト(まとめて「活性因子」とも称する)を、被験体に投与するための方法を提供する。代表的には、この活性因子は、処方の前に実質的に精製される。この被験体は、ヒトまたは非ヒト動物の脊椎動物であり得、そして代表的には、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどを含むがこれらに限定されない動物である。より代表的には、この被験体は、哺乳動物であり、特定の実施形態において、ヒトである。
【0127】
種々の送達系(例えば、注入によって、注射によって(例えば、皮内、筋肉内または腹腔内)、経口送達、鼻腔送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、間質送達または皮下送達)が公知であり、そして活性因子を投与するために使用され得る。特定の実施形態において、処置を必要とする領域にこの活性因子を局所的に投与することが望まれ得る;この投与は、例えば、限定されないが、局所注入によって、局所適用によって、注射(例えば、精巣内または前立腺内)によって、カテーテルによって、または移植片によって達成され得、この移植片は、例えば、多孔性材料、非多孔性材料、ゼラチン状材料またはポリマー材料であり、シラスチック膜のような膜または繊維を含む。一実施形態において、投与は、標的部位における直接注射により行われ得る。
【0128】
この活性因子を含む薬学的組成物は、所望の送達系に従って処方され得る。このような薬学的組成物は、代表的に、治療的有効量の活性因子および薬学的に受容可能なキャリアを含む。用語「薬学的に受容可能」とは、連邦政府または州政府の管理機関により認可されているか、または米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方において、脊椎動物(代表的には、動物、より代表的にはヒト)における使用についてリストに記載されていることを意味する。用語「キャリア」とは、活性因子が投与のために共に処方される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、安定剤、保存剤、粘度調節剤(viscogen)またはビヒクルをいう。薬学的キャリアは、滅菌液体(例えば、水、および石油、動物性油、植物性油または合成油を含む油(例えば、ピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など))であり得る。適切な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、フラワー、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、エタノールなどが挙げられる。所望ならば、この組成物はまた、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝化剤を含み得る。
【0129】
適切な保存剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4級アンモニウム塩、アジ化ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチレンジアミン、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、有機水銀塩、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。適切な粘度調節剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。適切な薬学的キャリアの他の例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro編),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania(1990)に記載される。
【0130】
活性因子はまた、中性形態または塩形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、遊離アミノ基と形成される塩(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される塩)、および遊離カルボキシル基と形成される塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される塩)が挙げられる。
【0131】
一実施形態において、この活性因子は、慣用的な手順に従って、ヒトへの静脈内投与に適合した薬学的組成物として処方される。静脈内送達について、水が代表的なキャリアである。生理食塩水、水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に、注射用溶液のための液体キャリアとして用いられ得る。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、この組成物はまた、可溶化剤または局所麻酔薬を含み、注射の部位における痛みを和らげ得る。一般に、成分は、別々にかまたは単回投薬形態(例えば、活性因子の量を示すアンプルまたは袋のような密封された容器中の、乾燥した凍結乾燥散剤としてかまたは水を含まない濃縮物として)において一緒に混合されるかのいずれかで供給される。この組成物が注入により投与されるべきである場合、この組成物は、滅菌薬学等級の水または生理食塩水を含む注入ビンに分散され得る。この組成物が、注射により投与される場合、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルが、これらの成分が投与の前に混合され得るように提供され得る。
【0132】
経口送達可能な組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続性放出処方物などの形態をとり得る。経口処方物は、標準的なキャリア(例えば、薬学等級の、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。
【0133】
直腸投与について、この組成物は、標準的な薬学的手順に従って処方される。代表的には、この組成物は、溶解性組成物(例えば、座剤)として形成される。坐剤は、この組成物に所望のコンシステンシーを提供するアジュバントを含み得る。坐剤はまた、水溶性キャリア(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース)を含み得る。坐剤はまた、湿潤剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸グリセリド、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビタール脂肪酸エステル、ポリエチレン脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンの高級アルコールエステル、および低級アルキルスルホン酸のエステル)を含み得る。坐剤はまた、適切な乳化剤および分散成分、ならびに粘度を調整するための成分、および着色物質を含み得る。
【0134】
鼻腔投与は、代表的に、鼻腔スプレーとして溶液を使用して実施され、そして当業者に公知の種々の方法によって調合され得る。スプレーとして液体を鼻腔内投与するためのシステムは、周知である(例えば、米国特許第4,511,069号(これは本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。好ましい鼻腔スプレー溶液は、液体キャリア中の活性因子を含み、この液体キャリアは、必要に応じて、薬物および1つ以上の緩衝液または他の添加物の吸収を増大して、鼻腔の刺激を最小限にするための、非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、この鼻腔スプレー溶液は、噴霧剤をさらに含む。この鼻腔スプレー溶液のpHは、代表的には、約pH6.8とpH7.2との間である。
【0135】
鼻腔内投与について、鼻腔投与された活性因子の吸収を改善し、鼻腔の刺激を軽減する成分は、特に、慢性的に投与される処置プロトコルにおいて使用される場合に、望ましい。この場合、この活性因子の吸収を増大するために、界面活性剤の使用が好ましい(例えば、Hiraiら、Int.J.Pharmaceutics 1:173−84(1981);英国特許明細書 1 527 605(これらの各々は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。しかし、界面活性剤により増大される薬物の鼻腔投与は、鼻腔の刺激(刺痛、うっ血および鼻漏を含む)を引き起こし得る。従って、刺激を減少しつつ、鼻粘膜を介する吸収を増大する組成物(例えば、ノノキシノール−9、ラウレト−9、ポロキサマー−124、オクトキシノール−9およびラウラミド(lauramide)DEAの様な非イオン性界面活性剤)が望ましい。ノノキシノール−9(N−9)は、エトキシ化アルキルフェノールであり、ノニルフェノールと9モルのエチレンオキシドのポリエチレンオキシ縮合物である。この界面活性剤は、界面活性製品において使用されており、そしてSURFONIC(登録商標)N−95(Jefferson)、NEUTRONYX(登録商標)600(Onyx)およびIGEPAL(登録商標)(CO−630(GAF))のような商品名で販売されている。N−9は、硬質界面活性剤とみなされ、そして殺精子剤(spermatocide)として使用されている(The Merck Index、第10版、Entry 6518を参照のこと)。界面活性剤の使用に起因する刺激を最小限にするために、1つ以上の抗刺激添加剤が、エマルジョンに含まれる。一例では、ポリソルベート−80は、鼻腔内投与された薬剤(この送達は、非イオン性界面活性剤を使用することにより促進される)により引き起こされる刺激を軽減することが示されている(例えば、米国特許第5,902,789号(これは本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0136】
活性因子を含む肺内投薬形態は、気道に鼻腔内投与され得るか、またはこの活性因子を含むスプレーもしくはエアロゾルを吸いこむことによって気道に投与され得る。この活性因子は、代表的に、肺内に、小粒子エアロゾルの状態で直接送達され、これは特に、最小の空気経路および肺胞に標的化される。
【0137】
肺内投薬形態は、代表的に、粒子状の分散形態として形成される。これは、組成物を含む固体粒子の水性エアロゾルを調製することによって、達成され得る。代表的には、水性エアロゾルは、この組成物の水溶液または懸濁液を、従来の薬学的に受容可能なキャリアおよび安定剤と共に処方することによって、作製される。これらのキャリアおよび安定剤は、代表的に、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween、Pluronicまたはポリエチレングリコール)、無害性タンパク質(例えば、血清アルブミン)、ソルビタンエステル、オレイン酸、アミノ酸(例えば、グリシン)、緩衝液、塩、糖または糖アルコールを含む。この処方物はまた、粘液溶解剤(例えば、米国特許第4,132,803号(これは本明細書中で参考として援用される)に記載されるもの)、および気管支拡張剤を含み得る。この処方物は、好ましくは無菌である。エアロゾルは、一般的に、等張性溶液から調製される。粒子は、必要に応じて、通常の肺界面活性タンパク質を含む。
【0138】
粒子のエアロゾルは、水性懸濁液または非水性懸濁液(例えば、フルオロカーボン噴霧剤)の状態で形成され得る。このエアロゾルは、好ましくは、肺刺激物(すなわち、急性気管支収縮、咳、肺水腫または組織破壊を引き起こす界面活性剤)を含まない。非刺激性の吸収促進剤もまた、本明細書中における使用に適切である。
【0139】
エアロゾルを調製するために、音波噴霧器が使用され得る。音波噴霧器は、剪断(これは分解を生じ得る)への組成物の暴露を最小化する。適切なデバイスは、Bird Micronebulizerである。他の適切な自動化システムまたは噴霧システム、あるいは気管内送達システムとしては、これらが投与される組成物と適合性であり、かつ所望のサイズの粒子を送達し得る限り、例えば、以下が挙げられる:米国特許第3,915,165号;欧州特許0 116 476に開示されるシステム;Newmanら(Thorax 40:671−76(1985))により記載されるジェット噴霧器;測定用量吸入器(例えば、Berenberg、J.Asthma−USA 22:87−92(1985)を参照のこと);Braunner(米国特許第5,803,078号)の気管内カテーテルアセンブリまたは他のデバイス(例えば、Searsら、N.Z.Med.J.96:743II(1983);O’Reillyら、Br.Med.J.286:6377(1983);またはStanderら、Respiration 44:237−40(1982)を参照のこと)。(これらの参考文献の開示は本明細書中で参考として援用される)。
【0140】
粒子性エアロゾル懸濁液は、代表的に、活性因子を含む微細な乾燥散剤である。粒子性エアロゾル懸濁液は、多数の従来の手順によって調製される。このような懸濁液の最も簡単な調製方法は、(例えば、結晶または凍結乾燥ケークとしての)活性因子を微粉化し、そしてこの粒子を乾燥フルオロカーボン噴霧剤に分散することである。これらの処方物において、活性因子は、好ましくは、フルオロカーボンに懸濁される。代替の実施形態において、活性因子は、噴霧剤とは別のコンパートメントに保存される。噴霧剤の発射により、貯蔵コンパートメントから所定の用量が出される。このように活性因子を送達するために使用されるデバイスは、測定用量吸入器(MDI)として知られている(例えば、Byron,Drug Development and Industrial Pharmacy 12:993(1986)(これは本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0141】
エアロゾルまたは粒子のサイズは、一般に、約0.5μm〜約5μm、代表的には、約2μm〜5μm、好ましくは、約2μm〜約4μm、または約4μm〜約5μmの範囲である。いくつかの局面において、粒子が小さくなるほど受容可能では無くなる。なぜなら、より小さい粒子は、堆積せず、その代わり発散する傾向があるからである。同様に、他の局面に置いて、粒子が大きくなるほど好ましくなくなる。なぜならより大きな粒子は、肺胞に堆積する可能性が小さく、鼻咽頭腔または口腔内の嵌入により除去されるからである(例えば、Byron,J.Pharm.Sci.75:433(1986)を参照のこと)。エアロゾルまたは粒子性組成物は、サイズ分布において不均一であり得るが、不均一性は公知の方法(例えば、EP 0 135 390に記載されるスクリーニングユニット)によって減少され得る。不均一性は、代表的に、約4μmを越える平均直径を有する粒子の割合が、肺吸入による治療用量の送達を妨害するほど大きくない限り、不利ではない。0.5〜5μmの範囲内の粒子を約15%より多く含む懸濁液が使用され得るが、一般的に、5μmより大きな平均直径を有する粒子部分は、代用的に、粒子の総数の約25%未満、好ましくは、10%以下である。示された直径は、気道に導入された場合の粒子の直径をいう。
【0142】
特定の被験体の処置に置いて有効な活性因子の量は、処置される特定の異常に基づき、そして標準的な臨床的技術により決定され得る。さらに、最適な投薬量範囲を同定するのを助けるために、インビトロアッセイが必要に応じて用いられ得る。処方物に用いられる活性因子の正確な用量はまた、投与経路、および状態の重篤度に依存し、そして医師の判断および各被験体の状況に従って決定されなければならない。投与のために適切な投薬量範囲は、一般に、体重1kgあたり、約0.001mg/kg〜約100mg/kgの活性因子である。有効用量はまた、インビトロ系または動物モデル試験系から導かれた用量応答曲線から外挿され得る。坐剤は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を含み、経口処方物は、代表的に、10%〜95%の活性成分を含む。
【0143】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1以上の成分で満たされる1以上の容器を含有する、製薬パックまたは製薬キットを提供する。医薬品または生物学的産物の製造、使用または販売を規制する行政機関によって定められた形態の通知は、そのような容器と必要に応じて関連付けられ、その通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の代理店による認可に影響を与える。
【0144】
なお別の実施形態において、その活性剤は、徐放システムにおいて送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが使用され得る(例えば、Langer,前出;Sefton,Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201−40(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507−16(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574−79(1989)参照)。別の実施形態において、重合体物質が使用され得る(Medical Applications of
Controlled Release,Langer and Wise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(編),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)参照;Levyら,Science 228:190−92(1985)もまた参照;Duringら,Ann.Neurol.25:351−56(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105−12(1989))(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0145】
従って、なお別の実施形態において、徐放システムが、全身的な用量の画分のみを必要とする、治療標的の近くに配置され得る(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻,115−38頁(1984)参照)。他の徐放システムは、例えば、Langer(Science 249:1527−33(1990)(これは、本明細書中で参考として援用される)による総説において議論される。
【0146】
(核酸の投与)
本発明は、核酸(例えば、レラキシンアゴニストまたはレラキシンアンタゴニスト(レラキシン、レラキシンアナログ、可溶性レラキシンレセプター、レラキシン結合剤、レラキシンレセプター結合剤)をコードする核酸、レラキシンアンチセンス核酸および/またはレラキシンレセプターアンチセンス核酸など)を投与して、アポトーシスを調節するさらなる方法を提供する。核酸(センスとアンチセンスの両方)は、遺伝子治療のプロセスにおいて使用され得る。遺伝子治療とは、外因性起源の核酸の発現を提供するプロセスをいい、この核酸としては、被検体内においてアポトーシスを調節(例えば、組織異常を処置するため)するための、被検体のアンチセンス核酸またはレラキシンアゴニストもしくはレラキシンアンタゴニストをコードするアンチセンス核酸が挙げられる。特定の実施形態において、レラキシンまたはレラキシンアナログをコードする核酸は、アポトーシスを減少させるためにレラキシンレセプターを有する細胞内へ投与される。他の特定の実施形態において、レラキシン結合剤(例えば、レラキシン、可溶性レラキシンレセプター)をコードする核酸またはレラキシンレセプター結合剤(例えば、レラキシンアナログ)は、アポトーシスを増加させるためにレラキシンレセプターを発現する細胞集合体へ投与される。当該分野において役立つ、遺伝子治療のいずれの方法も、本発明に従って使用され得る。例示的な方法が、以下に記載される。
【0147】
遺伝子治療の方法の一般的な総説として、Steinberg and Raso(J.Pharm.Pharm.Sci.1:48−59(1998));Pantuckら(World J.Urol.18:143−47(2000));Prince(Pathology 30:335−47(1998));Ledley(Curr.Opin.Biotechnol.5:626−36(1994));Goldspielら(Clin.Pharm.12:488−505(1993));Wu and Wu(Biotherapy 3:87−95(1991));Tolstoshev(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−96(1993));Mulligan(Science 260:926−32(1993));Morgan and Anderson(Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993));およびMay(TIBTECH 11:155−215(1993))を参照する。
【0148】
組換えDNA技術の当該分野において通常公知である、使用され得る方法としては、Ausubelら(1996,前出)およびKriegler(Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990))に記載される方法が挙げられる。1つの実施形態において、核酸は、適切な宿主において核酸を発現するベクターの一部であるセンス核酸(例えば、レラキシンアナログ、可溶性レラキシンレセプターなどをコードする核酸)を含む。特に、そのような核酸は、センス配向において、コード領域(例えば、レラキシンまたはレラキシンレセプター)に作動可能に結合されるプロモーターを有し、そのプロモーターは誘導的または構成的、そして、必要に応じて、組織特異的である。別の実施形態において、核酸は、適切な宿主において核酸を発現するベクターの一部であるアンチセンス核酸(例えば、レラキシンアンチセンス核酸またはレラキシンレセプターアンチセンス核酸)を含む。特に、そのような核酸は、アンチセンス配向において、コード領域(例えば、レラキシンまたはレラキシンレセプター)に作動可能に結合されるプロモーターを有し、そのプロモーターは誘導的または構成的、そして、必要に応じて、組織特異的である。
【0149】
別の特定の実施形態において、核酸(例えば、レラキシンアナログ、可溶性レラキシンレセプターなどをコードするセンス核酸、またはレラキシンアンチセンス核酸、レラキシンレセプターアンチセンス核酸などをコードするアンチセンス核酸)は、この核酸および任意の他の所望の配列が、ゲノムにおける所望の部位において相同な組換えを促進する領域によって隣接される場合に使用され、これにより、核酸の染色体内発現を提供する(例えば、Koller and Smithies,Proc.Natl.Acod.Sci.USA 86:8932−35(1989);Zijlstraら,Nature 342:435−38(1989);米国特許第5,631,153号;同第5,627,059号;同第5,487,992号;および同第5,464,764号;(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、参照)。
【0150】
これらの実施形態のいずれかに対して、核酸の被検体内への送達は、直接的(被検体が、核酸または核酸輸送ベクターに直接的に曝される場合)、または間接的(細胞が、インビトロにおいて核酸を用いて最初に形質転換され、次いで被検体内に移植される場合)のいずれかでなされ得る。これらの2つのアプローチは、それぞれ、インビボの遺伝子治療、またはエキソビボの遺伝子治療として公知である。特定の実施形態において、その核酸は、インビボに直接的に投与され、核酸を発現して、コードされる産物を産生する。これは、当該分野において公知の以下の多数の方法のいずれかによって達成され得る:例えば、適切な核酸発現ベクターの一部として作製し、投与することによって細胞内の核酸とする方法;例えば、欠陥レトロウイルスもしくは弱毒レトロウイルスまたは他のウイルス性ベクター(infra)を使用する感染による方法、裸のDNAの直接的な注入(例えば、Asaharaら,Semin.Interv.Cardiol.1:225−32(1996);Prazeresら,Trends Biotechnol.17:169−74(1999)(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、参照)による方法、エレクトロポレーション(例えば、Muramatsuら,Int.J.Mol.Med.1:55−62(1998),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、参照)による方法、あるいは遺伝子銃(BIOLISTICTM,Dupont)のような微粒子照射の使用(例えば、Biewengaら,J.Neurosci.Methods 71:67−75(1997),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、参照)による方法。核酸はまた、脂質または細胞表面レセプターまたは形質転換剤を用いる裸の核酸のコーティング、リポソーム、誘導体化されるリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルへの封入によって細胞内へ挿入され得る(例えば、De Smedtら,Pharm.Res.17:113−26(2000);Maurerら,Mol.Membr.Biol.16:129−40(1999);Tarahovsky and Ivanitsky,Biochemistry 63:607−18(1998);Lasci,Trends Biotechnol.16:307−21(1998);Gao and Huang,Gene Ther.2:710−22(1995);(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される、参照)。細胞に入ることが公知のペプチドに結合した核酸をまた、投与するか、またはレセプター媒介エンドサイトーシスの影響を受けるリガンドに結合した核酸を投与し得、これを使用して、レセプターを特異的に発現する細胞型を標的し得る。(例えば、Liangら,Pharmazie 54:559−66(1999);Cristiano,Front.Biosci.15:D1161−70(1998);Guyら,Mol.Biotechnol.3:237−48(1995);Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429−32(1987)(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)参照)。別の実施形態において、核酸リガンド複合体は、リガンドが、エンドソームを分裂させるために紡錘細胞のウイルス性ペプチドを含有し、核酸のリソソームによる分解を避けさせる形態であり得る(例えば、Phillips,Biologicals 23:13−16(1995),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、参照)。
【0151】
なお別の実施形態において、アンチセンス核酸は、特定のレセプターを標的することによって、細胞の特定の取り込みおよび発現について、インビボにおいて標的され得る(例えば、Phillips,Biologicals 23:13−16(1995);国際特許公開WO92/06180;WO92/22635;WO92/20316;WO93/14188、およびWO93/20221;(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)参照)。
【0152】
特定の実施形態において、ウイルス性ベクターは、核酸(例えば、レラキシンアナログ、可溶性レラキシンレセプター、などをコードするセンス核酸、またはレラキシンアンチセンス核酸をコードするアンチセンス核酸、レラキシンレセプターアンチセンス核酸など)を含有するベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターが使用され得る(例えば、Paluら,Rev.Med.Virol.10:185−202(2000);Buchschacher and Wong−Staal,Blood 15:2499−504(2000);Millerら,Meth.Enzymol.217:581−99(1993),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNA内への組み込みに必ずしも必要でない、レトロウイルス配列を除去するために典型的に改変される。遺伝子治療において使用されるアンチセンス核酸は、ベクターの中でクローン化され、アンチセンス核酸の被検体内への送達を促進する。レンチウイルスベクターがまた、使用され得る。(例えば、Buchschacher and Wong−Staal,前出;Naldiniら,Science 272:263−67(1996),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照)。遺伝子治療におけるウイルス性ベクターの使用を図示する他の参考文献は、Lundstrom(J.Recept.Signal.Transduct.Res.19:673−86(1999));Clowesら(J.Clin.Invest.93:644−51(1994));Kiemら,(Blood 83:1467−73(1994));Salmons and Gunzberg(Hum Gene Ther.4:129−41(1993));およびGrossman and Wilson(Curr.Opin.Genet Dev.3:110−14(1993))(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)による。
【0153】
アデノウイルスがまた、遺伝子治療において使用され得る。アデノウイルスは特に、前立腺、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉に遺伝子を送達するための誘引性媒体である。アデノウイルスは、非分裂性細胞を感染させる能力を持つという利点を有する。KozarskyおよびWilson(Curr.Opin.Genet Dev.3:499−503(1993),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される))は、アデノウイルスベースの遺伝子治療の総説を提示する。Hermanら(Human
Gene Therapy 10:1239−49(1999),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される))は、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子を人の前立腺内に含む複製欠乏性アデノウイルスの前立腺内注入、それに続くフェーズI臨床実験におけるプロドラッグガンシクロビルの静脈内投与を記載する。遺伝子治療におけるアデノウイルスの利用の他の実例は、Rosenfeldら(Science 252:431−34(1991));Rosenfeldら(Cell 68:143−55(1992));Mastrangeliら(J.Clin.Invest.91:225−34(1993));およびThompson(Onclol.Res.11:1−8(1999))に見出され得る。アデノ関連ウイルス(AAV)がまた、遺伝子治療において使用され得る(例えば、Rabinowitz and Samulski,Curr.Opin.Biotechnol.9:475−85(1988);Carter and Samulski,Int.J.Mol.Med.6:17−27(2000);Tal,J.Biomed.Sci.7:279−91(2000);Aliら,Gene Therapy 1:367−84(1994);米国特許第4,797,368号および同第5,139,941号;Walshら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300(1993);Grimmら,Human Gene Therapy 10:2445−50(1999))(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0154】
遺伝子治療に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクト、またはウイルス感染のような方法によって、核酸を組織培養中の細胞に移動させることを含有する。典型的に、移動の方法は、選択可能なマーカーの細胞への移動を含有する。次いで、その細胞は、採取され、核酸を発現するそれらの細胞を単離するために、選択下におかれる。次いで、その選択された細胞が被検体に送達される。
【0155】
1つの実施形態において、核酸は、得られる組換え細胞のインビボでの投与の前に、細胞に導入される。そのような導入は、当該分野で公知の任意の方法によって行われ得、以下が挙げられるが、これらに限定されない:トランスフェクト、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸を含有するウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移動、微小核体媒介遺伝子移動など。外来の遺伝子を細胞内に導入するための多数の技術が当該分野において公知であり(例えば、Muramatsuら,Int.J.Mol.Med.1:55−62(1998);Liangら,Pharmazie 54:559−66(1999);Loeffer and Behr,Meth.Enzymol.217:599−618(1993);Cottenら,Meth.Enzymol.217:618−44(1993);Cline,Pharmacol.Ther.29:69−92(1985);これらの開示は、本明細書中で参考として援用される、参照)、そして本発明に従って、使用され得る。その技術は、細胞に対する核酸の安定的な移動のために典型的に与えられ、その結果、核酸は、細胞によって発現可能であり、そしてその細胞子孫によって遺伝的であり、発現可能である。
【0156】
得られる組換え細胞は、当該分野において公知の様々な方法によって被検体に送達され得る。典型的に、細胞は、皮下に注入される。別の実施形態において、組換え皮膚細胞は、被検体に皮膚移植片として適用され得る。使用のために必要とされる細胞の量は、所望の効果、被検体の状態などに依存し、そして当業者によって決定され得る。
【0157】
核酸が遺伝子治療の目的で導入され得る細胞は、任意の所望の役立つ細胞型を包み、そして以下が挙げられるが、それらに限定されない:雄性生殖路(例えば、前立腺細胞、精巣の細胞、精上細胞、または精巣上体細胞)、雌性生殖路(例えば、子宮、子宮頸、恥骨間の靱帯、下肢帯内の結合組織、など)、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、脳、心臓、腸管、皮膚、肺、などの細胞または細胞の集合。適切な細胞は、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、および幹細胞または前駆細胞をさらに含有する。遺伝子治療のために使用されるその細胞は、被検体に対して一般に自己由来であるが、被検体との適合性に関して分類され得る異系細胞が、使用され得る。
【0158】
別の局面において、核酸(例えば、レラキシンアナログ、可溶性レラキシンレセプターなどをコードするセンス核酸、またはレラキシンアンチセンス核酸、レラキシンレセプターアンチセンス核酸などをコードするアンチセンス核酸)は、細胞に直接的に投与される。その核酸は、少なくとも6つのヌクレオチドおよび典型的にはオリゴヌクレオチド(6〜約50またはそれ以上の範囲のヌクレオチド)である。特定の局面において、そのオリゴヌクレオチドは、少なくとも10のヌクレオチド、少なくとも15のヌクレオチド、少なくとも100のヌクレオチドであるか、または少なくとも200のヌクレオチドであり得る。そのオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAあるいはそれらのキメラ混合物または誘導体またはそれらのアナログであり得、一本鎖または、二本鎖であり得る。そのオリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、またはリン酸塩骨格において改変され得る。そのオリゴヌクレオチドは、ペプチド、または細胞膜を横切る移動を促進する薬剤(例えば、Nielsen,Pharmacol.Toxicol.86:3−7(2000);Soometsら,Front.Biosci.1:D782−86(1999);Galderisiら,J.Cell Physiol.181:251−57(1999);Letsingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−56(1989);Lemaitreら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648−52(1987);国際特許公開WO88/09810、参照)、ハイブリダイゼーション誘発切断剤(例えば、Krolら,BioTechniques 6:958−76(1988))または挿入剤(例えば、Zon,Pharm.Res.5:539−49(1988)参照)のような、他の付加する基を含み得る。(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0159】
1つの実施例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNAとして提供される。そのオリゴヌクレオチドは、その構造における任意の位置で、当該分野において一般的に公知の置換基を用いて改変され得る。そのオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの以下のような改変される塩基部分を含み得る:例えば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(queosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、偽ウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、2,6−ジアミノプリン、など。別の実施形態において、そのオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの改変される糖部分(例えば、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソース)を含む。
なお別の実施形態において、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの以下の改変されるホスフェート骨格を含む:例えば、ホスホルチオネート、ホスホルジチオネート、ホスホルアミドチオネート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはそれらのアナログ。
【0160】
なお別の実施形態において、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、(通常のβ−単位に反して、その鎖が、互いに平行である)相補的RNAと特定の二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら,Nucl.Acids Res.15:6625−41(1987)参照)。そのオリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発切断剤など)と結合体化され得る。
【0161】
特定の実施形態において、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、触媒RNA、またはリボザイムを含む(例えば、Welchら,Curr.Opin.Biotechnol.9:486−96(1998);Norrisら,Adv.Exp Med.Biol.465:293−301(2000);国際特許公開WO90/11364;Sarverら,Science 247:1222−25(1990)参照)。別の実施形態において、そのオリゴヌクレオチドは、2’−0−メチルリボヌクレオチド(Inoueら,Nucl.Acids Res.15:6131−48(1987))、またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら,FEBS Lett.215:327−30(1987))である。
【0162】
別の特定の実施形態において、二本鎖RNAは、RNAの干渉によってmRNAの配列特異的分解を方向付ける(Hunter,Curr.Biol.10:R137−40(2000);Bosher and Labouesse,Nat.Cell.Biol.2:e31−36(2000);(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)、を一般的に参照)。手短に言えば、二本鎖核酸は、mRNAの分解を引き起こすことによって遺伝子発現を選択的に阻害するために細胞内に導入される。(例えば、Zamoreら,Cell 101:25−33(2000),(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)参照)
本発明に従う核酸は、当該分野において公知である標準的な方法によって合成され得る。核酸の合成に関する酵素学的な方法は、Sambrookら(前出)に記載されるように、Klenow、T7、T4、TaqまたはEscherichia coli DNAポリメラーゼを頻繁に使用する。RNA核酸の酵素学的な方法は、Sambrookら(前出)に記載されるように、SP6、T3、またはT7 RNAポリメラーゼを頻繁に使用する。逆転写酵素がまた、RNA由来のDNA合成のために用いられ得る(Sambrookら,前出)。核酸は、テンプレート核酸を酵素学的に使用して典型的に調製される。その核酸は、化学的に合成されるか、またはmRNA、ゲノムDNA、クローン化されるゲノムDNA、クローン化されるcDNA、または他の核酸として得られるかのどちらかである。DNA核酸合成のいくつかの酵素学的な方法が、化学的に合成され得るさらなるプライマーを必要とし得る。最終的に、直鎖状の核酸が、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)技術(例えば、Saikiら(Science 239:487(1988)によって記載される)によって調製され得る.
化学方法がまた、核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を合成するために使用され得る(例えば、市販の自動DNA合成機の使用などによる)。例えば、ホスホルチオエート核酸は、Steinら(Nucl.Acids Res.16:3209−21(1988))の方法によって合成され得、メチルホスホルネート核酸は、制御された細孔性ガラスポリマー支持体(例えば、Sarinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7448−51(1988)参照)(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)などの使用によって調製され得る。他の方法としては、以下によって開示される方法が挙げられる:Usmanら(J.Am.Chem.Soc.109:7845−54(1987)),Scaringeら(Nucleic Acid
Res.18:5433−41(1990));Caruthers(Oligonucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression,7−24頁,Cohen,(編),CRC Press,Inc.Boca Raton,Fla,1989));Oligonucleotide Synthesis,A Practical Approach(Gait(編),IRL
Press,1984);Oligonucleotides and Analogues,A Practical Approach(Eckstein,IRL Press,1991);ならびに米国特許第4,415,732号;同第4,458,066号;同第4,500,707号;同第4,668,777号;同第4,973,679号;同第5,026,838号;同第5,132,418号;およびRe.34,069。前述の参考文献の全てが本明細書中で参考として援用される。
【0163】
(低分子エフェクターまたは低分子アンタゴニスト)
レラキシン核酸、ポリペプチド、アナログおよびフラグメント、ならびにレラキシンレセプター核酸、ポリペプチド、アナログおよびフラグメントおよびアナログ、はまた、レラキシンポリペプチドまたはレラキシンレセプターに特異的に結合する候補化合物を検出するためのスクリーニングアッセイにおいて使用され、アポトーシスを変調する。そのような候補化合物は、典型的に低分子エフェクター(アゴニスト)またはアンタゴニストであり、そしてインビトロおよび/またはインビボアッセイによって同定され得る。そのようなアッセイは、レラキシンアゴニストまたはアンタゴニストとして、あるいは薬剤開発のためのリード化合物として治療的に有効である、低分子エフェクターまたはアンタゴニストを同定するために使用され得る。従って、本発明は、化合物を検出するためのアッセイを提供する。その化合物は、レラキシン核酸、レラキシンポリペプチド、レラキシンレセプター核酸、レラキシンレセプターなどの活性または発現に特異的に影響を与える。
【0164】
典型的なインビボアッセイにおいて、レラキシンまたはレラキシンレセプター核酸を発現する組換え細胞は、レラキシンまたはレラキシンレセプター核酸発現に影響を及ぼす化合物に関して、候補化合物をスクリーニングするために使用され得る。レラキシンまたはレラキシンレセプター発現におけるアゴニストの効果またはアンタゴニストの効果としては、mRNAの転写の、刺激または阻害(例えば、上方制御または下方制御)、mRNA安定性の増加または減少、mRNAの翻訳、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドの合成、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチド機能(例えば、レラキシンレセプタへの結合)、および/またはレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドの安定性または位置決定における効果が挙げられ得る。発現におけるそのような効果は、生理学的な変化(例えば、レラキシン応答性組織成長速度、分裂、生存度、コラーゲン析出、アポトーシスなどにおける変化)として同定され得る。1つの実施形態において、候補化合物は、生理学的な変化(例えば、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチド機能の刺激または阻害)を生じるこれらの化合物を同定するために、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドを発現する組換え細胞に投与される。
【0165】
候補化合物はまた、インビトロのスクリーニング法によって同定され得る。例えば、レラキシンまたはレラキシンレセプター核酸を発現する組換え細胞は、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドに結合する候補化合物を同定するために、インビトロアッセイに対してレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドを組換え的に産生するために使用され得る。候補化合物(低分子など)は、結合につながる条件下においてポリペプチド(またはそのフラグメントまたはそのアナログ)に接触され、次いでポリペプチドに特異的に結合する候補化合物が同定される。前の記載を実行するために使用され得る方法は、当該分野において通常公知であり、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドに特異的に結合する候補化合物をスクリーニングし得る、無作為または組合せのペプチドまたは非ペプチドライブラリーような多様なライブラリーを含有する。使用され得る多くのライブラリーは、当該分野において公知であり、例えば、化学的に合成されるライブラリー、組換えファージディスプレイライブラリー、およびインビトロの翻訳ベースライブラリー。
【0166】
化学的に合成されるライブラリーの例は、以下に記載される:Fodorら(Science 251:767−73(1991)),Houghtenら(Nature 354:84−86(1991)),Lamら(Nature 354:82−84(1991)),Medynski(BioTechnology 12:709−10(1994)),Gallopら(J.Med.Chem.37(9):1233−51(1994)),Ohlmeyerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−26(1993)),Erbら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422−26(1994)),Houghtenら(BioTechniques 13:412−21(1992)),Jayawickremeら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1614−18(1994)),Salmonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11708−12(1993)),国際特許公開WO93/20242,およびBrenner and Larner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381−83(1992))。(これらの参考文献の開示は、本明細書中で援用される。)
ファージディスプレイライブラリーの例は、ScottおよびSmith(Science 249:386−90(1990))、Devlinら(Science 249:404−06(1990))、Christianら(J.Mol.Biol.227:711−18(1992))、Lenstra(J.Immunol.Meth.152:149−57(1992))、Kayら(Gene 128:59−65(1993))および国際特許公開WO94/18318(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0167】
インビトロ翻訳に基づくライブラリーとしては、国際特許公開WO91/05058、およびMattheakisら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022−26(1994))に記載されるライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Buninら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4708−12(1994)を参照のこと)が、使用するために適合され得る。ペプチドライブラリー(例えば、Simonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367−71(1992)を参照のこと)もまた、使用され得る。使用され得るライブラリーの別の例(ここで、ペプチド中のアミド官能基がパルミチル化され、化学的に形質転換されたコンビナトリアルライブラリーを生成されている)が、Ostreshら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11138−42(1994))によって記載される。
【0168】
ライブラリーのスクリーニングは、種々の一般に公知の方法のいずれかによって達成され得る。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する、以下の参考文献を参照のこと:ParmleyおよびSmith(Adv.Exp.Med.Biol.251:215−18(1989));ScottおよびSmith(1990、前出);Fowlkesら(BioTechniques 13:422−28(1992));Oldenburgら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5393−97(1992));Yuら(Cell 76:933−45(1994));Staudtら(Science 241:577−80(1988));Bockら(Nature 355:564−66(1992));Tuerkら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6988−92(1992));Ellingtonら(Nature 355:850−52(1992));米国特許第5,096,815号、同第5,223,409号および同第5,198,346号;RebarおよびPabo(Science 263:671−73(1994));ならびに国際特許公開WO94/18318(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0169】
特定の実施形態において、スクリーニングは、ライブラリーのメンバーに、固相に固定したレラキシン、レラキシンアナログまたはレラキシンレセプターを接触させ、そしてそのレラキシン、レラキシンアナログまたはレラキシンレセプターに結合するライブラリーのメンバーを回収することによって、行われ得る。「パニング」技術と呼ばれる、このようなスクリーニング方法の例は、例えば、ParmleyおよびSmith(Gene 73:305−18(1988));Fowlkesら(1992、前出);国際特許公開WO94/18318;およびそれらに引用される参考文献によって記載される。
【0170】
(レラキシン関連異常を有する被験体の同定)
レラキシン核酸(センスおよびアンチセンスの両方)、ならびにそれらのフラグメントおよびアナログ、ならびに抗レラキシン抗体はまた、レラキシン関連異常を有する被験体を同定するための有用性を有する。このような分子を、アッセイ(ハイブリダイゼーションまたは免疫アッセイ)において使用して、種々の異常を検出、予後判定、診断またはモニターし得るか、レラキシン発現、あるいはレラキシンまたはレラキシンアナログに対する応答が影響されるか否かを決定し得る。同様に、このような分子は、細胞異常または組織異常の処置をモニターするための有用性を有する。詳細には、免疫アッセイのような方法は、被験体由来のサンプルに、抗レラキシン抗体を、免疫特異的結合を導く条件下で接触させること、およびこの抗体によるタンパク質の任意の免疫特異的結合の量を検出または測定することを含む工程によって行われ得る。組織切片中または精液由来のレラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドに対する抗体の結合を使用して、レラキシンおよび/またはレラキシンレセプターポリペプチドの異常なレベル(例えば、レベルの低下、非存在または上昇)を検出し得る。特定の実施形態において、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドに対する抗体を使用して、レラキシンまたはレラキシンレセプターポリペプチドの存在について、被験体の組織または精液をアッセイし得、ここで、レラキシンの異常なレベルは、レラキシン関連異常の指標である。「異常なレベル」によって、異常を有さない身体の一部分由来または被験体由来の類似のサンプル中に存在するレベル、またはそれらの類似のサンプル中の存在を示す標準レベルと比較して、上昇または低下したレベルを意味する。
【0171】
使用され得る免疫アッセイとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:競合的および非競合的アッセイ系(ウェスタンブロットのような技術を使用する)、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素連結イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降(precipitin)アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなど。
【0172】
レラキシンおよびレラキシンレセプターの核酸(センスおよびアンチセンスの両方)(これらのフラグメントおよびアナログを含む)はまた、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用され得る。少なくとも連続する8個のヌクレオチドを含むかまたはこれらからなる、このような核酸は、ハイブリダイゼーションプローブとして、またはポリメラーゼ連鎖反応検出のために使用され得る。ハイブリダイゼーションアッセイを使用して、異常なレラキシンまたはレラキシンレセプターの発現および/または活性に関連する疾患または状態(上記のような)を検出、予後判定、診断またはモニターし得る。詳細には、ハイブリダイゼーションアッセイは、ポリヌクレオチドを含むサンプルに、レラキシンまたはレラキシンレセプターのDNAまたはRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブを、ハイブリダイゼーションが生じ得る条件下で接触させる工程、および任意の生じたハイブリダイゼーションを検出または測定する工程を包含する方法によって行われ得る。
【0173】
特定の実施形態において、レラキシンポリペプチド、レラキシンRNAまたはレラキシン機能活性のレベルの低下または上昇を検出することによって、レラキシンの過剰発現または過少発現に関連する異常が診断され得るか、またはそれらの疑わしい存在がスクリーニングされ得るか、またはそのような異常を発症する素因が同定され得る。さらに、レラキシンの過剰発現またはレラキシン機能活性の上昇は、レラキシンポリペプチドの発現または活性の上昇を引き起こす、レラキシンRNAまたはDNAあるいはレラキシンポリペプチドにおける変異(それぞれ、例えば、レラキシン核酸における転座、レラキシン遺伝子またはレラキシンポリペプチドの短縮化、野生型レラキシンに対するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の変化)を検出することによって診断され得る。
【0174】
例えば、生検中または精液由来のレラキシンポリペプチドのレベルは、組織の免疫アッセイによって検出され得;レラキシンRNAのレベルが、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロットまたはドットブロット)によって検出され得る。レラキシンまたはレラキシンレセプターの核酸における転座または点変異は、サザンブロット、RFLP分析、点変異、欠失または挿入を検出するプライマーを使用するPCR、サンプルから得られたレラキシンゲノムDNAまたはcDNAの配列決定などによって、検出され得る。
【0175】
別の実施形態において、被験体から単離された組織のサンプル中のレラキシンまたはレラキシンレセプターのmRNAまたはポリペプチドのレベルを検出または測定し、ここで、上昇したレベルは、その被験体が、レラキシン関連組織異常を有するかまたはそれに対する素因を有することを示す。
【0176】
なお別の実施形態において、組織中の異常なレラキシンレセプター活性が、上記の機能アッセイのいずれかを使用して検出または測定される。異常なレラキシンレセプター活性としては、例えば、レラキシン応答性細胞上のレラキシンレセプターの数の増加または減少、レラキシンに対して通常応答性でない細胞上のレラキシンレセプターの存在、レラキシンレセプター応答時間の増加または減少、レラキシンまたはレラキシンレセプターに対する結合親和性の増加または減少、あるいはレラキシンレセプターからのレラキシンの解離定数の変化などが挙げられ得る。
【0177】
診断用途および/または予後判定用途のためのキットもまた提供され、これらは、1以上の容器中に、レラキシンのアゴニストまたはアンタゴニスト、および必要に応じて、抗体に対する標識された結合パートナーを含む。あるいは、抗体は、検出マーカー(例えば、化学発光部分、酵素的部分、蛍光部分、放射性部分など)で標識され得る。1以上の容器中に、レラキシンまたはレラキシンレセプターのmRNAまたはDNAにハイブリダイズし得る核酸プローブを含みキットもまた、提供される。
【0178】
別の実施形態において、キットは、1以上の容器中に、プライマー対(例えば、各々、6〜30ヌクレオチドまたはそれ以上のサイズ範囲)を含み得、このプライマー対は、レラキシン核酸の少なくとも一部が増幅されるような適切な反応条件下で、増幅をプライムし得る(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisら、PCR Protocols、Academic Press,Inc.,San Diego,CA(1989)を参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(例えば、EP0 320 308を参照のこと)、Qβレプリカーゼの使用、サイクリック5’プローブ反応、または当該分野で公知の他の方法によって)。キットは、必要に応じて、例えば、標準またはコントロールとして使用するための、所定量の精製レラキシン核酸またはレラキシンレセプター核酸を、容器中にさらに含み得る。
【0179】
以下の実施例は、本発明の種々の局面の例示として単に提供され、そしていかようにも本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【実施例】
【0180】
(実施例1)
マウスRLX遺伝子の1つの対立遺伝子または両方の対立遺伝子の不活性化の効果を試験した。以下の方法および材料に従った。
【0181】
(動物)
野生型、ヘテロ接合性およびホモ接合性のレラキシンノックアウトマウスを、Howard Florey Institute of Experimental Physiology and Medicine(Parkville、Victoria、3052、Australia)から得、そしてこれらを使用して、育種プログラムを確立した。RLX+/+(野生型)、RLX+/−(ヘテロ接合型)およびrlx−/−(ヌル変異体)マウスのその後の世代を、RLX+/−親から作製した。全ての動物を、制御された環境に収容し、そしてLabdietげっ歯類実験試料(Deans Animal Feed、San Bruno、CA)および水へのアクセスを与えながら、14時間の明所、10時間の暗所スケジュールで維持した。これらの実験は、実験動物の世話および使用についてのNIH Code of Practiceを順守する、Institute’s Animal Experimental Ethics Committeeによって承認された。
【0182】
(PCRによる遺伝子型決定)
マウスDNAを、400μlのPCR溶解緩衝液(50mM Tris−HCl、pH8.0、0.5% SDS、0.1M EDTAおよび1mg/mlのプロテイナーゼK(Gibco BRL、Gaithersburg、MD)を含む)中で、50〜55℃にて一晩、尾組織(5〜7mm)を溶解することによって単離した。次いで、消化したサンプルを、血清容器(vaccutainer)チューブ中で3M 酢酸ナトリウム(40μl)、緩衝液飽和フェノール(200μl)およびクロロホルム(200μl)と混合し、その後、サンプルを、3000rpmで10分間、遠心分離した。DNA(上側の水相に含まれる)を、イソプロピルアルコール(240μl)を含む別の微量遠心チューブにデカントして、DNAを沈殿させ、その後、サンプルをボルテックスし、遠心し、そして上清を除去した。残ったDNAペレットを、40〜50μlの滅菌水中に溶解した。PCRのために、各DNAテンプレート(1μl)を、以下を含む30μl反応混合物中で使用した:PCR緩衝液(10mM Tris−HCl、pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl)、2.5mM dNTP、2.5U Taqポリメラーゼ(PGC Scientific,Gaithersburg,MD)、ならびに各150ngのRLX+/+プライマーおよびrlx−/−プライマー(Zhaoおよび共同研究者(Zhao Endocrinology 140:445−53(1999)によって設計)。増幅プロトコルは、94℃(3分間)での開始変性工程、それに続く、94℃(60秒)、55℃(60秒)および72℃(90秒)の35連続サイクルからなり、そして72℃でのさらに10分間の伸長で終了した。次いで、15μlの各サンプルを、2%(w/v)アガロースゲルでの電気泳動によって分析し、そしてエチジウムブロミドで染色した。235bpの産物が、野生型対立遺伝子から設計したプライマーによって生成され、170bpの産物が、変異体対立遺伝子プライマー(Zhao(1999)、前出)から生成された。
【0183】
(組織収集および組織学)
レラキシンの野生型、ヘテロ接合体およびホモ接合体の雄性および雌性(6個の群の各々において、nは20以上)を、1週齢、1月齢、2月齢および3月齢で得て、計量した。次いで、RLX+/+およびrlx−/−の雄性マウスを、組織収集のために、二酸化炭素での麻酔下で屠殺した。雄性生殖管(精巣、精巣上体、前立腺、精嚢および付随する脂肪を含む)を、各動物から、1週齢(n=10 RLX+/+雄性、n=11 −/−雄性);1月齢(n=10 RLX+/+雄性、n=10 −/−雄性);および3月齢(n=10 RLX+/+雄性、n=10 rlx −/−雄性)で収集した。各組織を計量した後、これらを、組織学的分析のために、10%ホルマリン中に配置した。
【0184】
収集した組織を、70%アルコールからパラフィンへ処理し(連続的に脱水し)、その後、包埋し、AO Spencer 820ミクロトームを使用して切断し(4μm切片)、そしてポリ−L−リジンコーティングしたスライドガラスに配置した。各組織由来の連続切片を、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)で染色し、そしてコラーゲンについては、製造業者によって記載されるとおりに、Massonトリクロム(染色キット、Richard−Allan Scientific、Kalamazoo、MI)で染色した。染色したスライドを、Zeiss Axioplan−2顕微鏡で観察し、デジタルカメラ(Hamamatsu)によって画像を補え、そして検索および分析のために保存した。この画像を、Adobe Photoshop(Adobe Systems
Inc、Mountain View、CA)を使用して、最大のコントラストおよび輝度についてデジタル的に画質を上げた。
【0185】
(パラフィン包埋組織切片の抗体染色)
1月齢および3月齢の雄性マウスの生殖管由来の組織を、予めコーティングしたスライド上に載せ、そして58℃で(約30分間)加熱してパラフィンを除き、次いで、キシレンで3回洗浄し、無水エタノールで2回洗浄し、そして95%エタノールで2回洗浄し、その後短時間水に浸漬した。次いで、これらのサンプルを、加湿環境において、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−ストレプトアビジン複合体(Santa Cruz Biotechnology Inc、Santa Cruz、CA)を利用するImmunocruz染色システムを使用して染色した。組織切片を、(内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチするため)最初にペルオキシダーゼブロッカーで処理し(5分間)、その後ヤギ血清中で予めブロッキングした(20分間)。次いで、各RLX+/+組織サンプルおよびrlx−/−組織サンプル由来の連続切片を、BaxモノクローナルIgG一次抗体(4μg/ml)(Santa Cruz Biotechnology Inc)、カスパーゼ−9ポリクローナルIgG抗体(4.5μg/ml)(Santa Cruz Biotech.)または増殖細胞核抗原(PCNA)(Santa Cruz Biotech.)モノクローナルIgG抗体(4μg/ml)のいずれかと共にインキュベートした(2時間)。使用される抗体の型に依存して、組織のマウスIgGコントロールまたはウサギIgGコントロール(Santa Cruz Biotech.)のいずれかの染色(2時間)をまた、実施された全ての実験において使用した。サンプルを、PBSで洗浄し(2分間)、適切な二次抗体(ヤギ抗マウスIgGまたはヤギ抗ウサギIgG)に供し(30分間)、上記のように洗浄し(2分間)、HRP−ストレプトアビジン複合体で処理し(30〜45分間)、そして製造業者の指示に従って調製したジアミノベンジジン色素原基質と共にインキュベートした(2〜10分間)。次いで、このスライドを、蒸留水で洗浄し(2分間)、その後95%アルコールからキシレンまで脱水し、そしてマウントし、次いで上記のように写真撮影した。
【0186】
(統計的分析)
結果を、one−ANOVA試験を使用して分析した。この文書における全てのデータは、平均±SEMとして示され、p<0.05が、統計的に有意であるとみなされる。
【0187】
(実施例2)
(マウスの成長に対する、レラキシン遺伝子ノックアウトの影響)
雄性および雌性のレラキシン野生型(+/+)マウス、ヘテロ接合体(+/−)マウスおよびヌル変異体(−/−)マウスの体重を、1週齢、1月齢、2月齢および3月齢で測定した(各群について、n=20〜21)。1週齢では、雄性マウスにおいても(RLX+/+:3.87±0.09g;rlx−/−:3.6±0.13g)、雌性マウスにおいても(RLX+/+:3.52±0.09g;rlx−/−:3.37±0.08g)、平均体重の有意な差異は、注目されなかった。しかし、1月齢時点のマウスでは、rlx−/−の雄性(17.05±0.65g)および雌性(14.77±0.42g)の両方の平均体重は、それぞれのRLX野生型対応マウスよりも、有意に少なかった(p<0.05)(RLX+/+M:18.92±0.61g;RLX+/+F:16.34±0.51g)。雄性および雌性のヌル変異体マウスは、2月齢において、RLX野生型動物よりも有意に小さい(p<0.05)ままであった(RLX+/+M:25.42±0.41g;rlx−/−M:24.23±0.42g;RLX+/+F:20.96±0.32g;rlx−/−F:19.94±0.22g);しかし、2つの群間のサイズの差異は、1月齢で観察された差異よりも小さかった。成体(3月齢)までに、rlx−/−マウスの平均体重(rlx−/−M:26.57±0.47g;rlx−/−F:22.54±0.31g)は、成体のRLX+/+マウスの平均体重(RLX+/+M:27.30±0.32g;RLX+/+F:23.03±0.71g)よりもなお僅かに少なかったが、この差異は、もはや有意ではなかった。RLX+/−マウスの平均体重は、RLX+/+の平均体重とrlx−/−マウスの平均体重との間であった。RLX+/+動物の平均体重とRLX+/−動物の平均体重との間にも、RLX+/−マウスとrlx−/−マウスとの間にも、有意な差異は観察されなかった。
【0188】
(雄性生殖管のサイズに対するレラキシン遺伝子ノックアウトの影響)
1週齢では、雄性の生殖管の重量においてもサイズにおいても、有意な差異は観察されなかった。これは、主に精巣によって示される(表1)。1月齢までには、収集された雄性生殖管は、精巣、精巣上体、前立腺、精嚢、精管および付随する脂肪から構成された。1月齢では、生殖管全体の重量において差異は観察されなかったが、1月齢のヌル変異マウスに由来する精巣および前立腺のサイズにおける差異は、RLX野生型動物の対応する組織よりも、それぞれ、約20%および約30%小さかった。一方、rlx−/−マウスに由来する精巣上体のサイズは、RLX+/+動物から得られた精巣上体よりも、有意に小さかった(p<0.05)。しかし、RLX+/+マウスから収集された組織サンプルとrlx−/−マウスから収集された組織サンプルとの間の、精嚢のサイズにおいては、差異は注目されなかった。
【0189】
マウスが成体に達した時点(3月齢)までに、雄性の生殖管の全体の重量および個々の器官のサイズにおいて、有意な差異(p<0.05)が観察された(表1)。正常マウスにおける生殖管の重量は、1月齢から成体まで248.6%増加し、そして、全体重の3.37%に相当した。この時間の間、雄性RLXヌル変異体マウス由来の生殖管の重量は、187.9%増加しただけであり、そして全体重の2.33%に相当した。この後者の知見は、雄性rlx−/−マウスの生殖管が、%体重における、31%の減少に相当することを意味する。rlx−/−マウス由来の精巣、精巣上体、前立腺および精嚢のサイズは、RLX+/+マウスに由来するそれぞれの対応物よりも全て小さかった(p<0.05)。
【0190】
(表1.1週齢〜成体(6.5ヶ月)までの、雄性生殖管の重量およびサイズ)
【0191】
【表1】


精巣および前立腺の各々のサイズを、組織の長さを幅で乗じて、その面積によって測定した。精巣上体および精嚢のサイズ(面積)は、正確には測定できなかったので、各組織の緊密な近似を、以下のように計算した:精巣上体(組織の長さに、精巣上体頭部の幅を乗じて測定した);精嚢(各器官の長さに、組織の平均幅を乗じて測定した)。は、p<0.05を示す。
【0192】
(雄性生殖管の組織学に対する、レラキシン遺伝子ノックアウトの影響)
H&E&Massonトリクロム染色:RLX+/+マウスおよびrlx−/−マウス由来の雄性生殖管組織切片を、精子成熟、管サイズ/コンパクトさ(精巣、精巣上体)およびコラーゲンにおける差異について最初に観察した。
【0193】
精巣:1週齢で、レラキシン野生型動物の精細管(生殖細胞/精母細胞、セルトリ細胞を含む区画であり、精子成熟が生じる)は、より小さく、より円筒形の形状であり(表2)、そして各器官の白膜(卵型の本体を被覆する膜)を取り巻くコラーゲンの薄層によって主に支持される。対照的に、rlx−/−マウスの精巣に由来する細管は、より大きくかつ拡大していたが、精巣内のコラーゲンによって完全に取り囲まれ、支持されていた。このことは、誕生直後にさえ、レラキシンの非存在下で、精巣の内部組織における差異を直ぐに示唆した。しかし、1週齢では、組織切片のいずれの群においても、未成熟な精子は、検出されなかった。1月齢までに、RLX+/+マウスに由来する精巣細管は、(1週齢の細管サイズと比較して)サイズがより大きくなり、わずかにコンパクトでなく、そして主に未成熟精子を含んだ。対照的に、1月齢のRLXホモ接合体マウスに由来する細管は、1週齢のノックアウトマウスから測定された細管サイズと異ならず、そしてRLX+/+マウス由来のサンプルと比較して、あまり未成熟でない精子を含んだ。このことは、レラキシンヌル変異体マウスが、3月齢の組織切片と比較した場合にさらに確認される、遅延した精子成熟のプロセスを受け;RLX+/+マウス組織由来の切片が、主に成熟した精子を有する(1月齢の細管サイズと比較して)より大きい細管を含むことをさらに示唆した。逆に、rlx−/−マウス由来の切片は、(3月齢のRLX+/+組織切片と比較して)あまり成熟していない精子およびなおいくらかの未成熟の精子を有する、僅かにより小さい細管(これは、1週齢/1月齢のrlx−/−マウス由来の細管サイズと異ならなかった)を含んだ。RLX+/+マウス由来の精巣における精子成熟レベルは、rlx−/−マウスの精巣において観察された精子成熟レベルよりも有意に(p<0.05)高いことが示された(使用された等級付けの尺度については、表2を参照のこと)。成体RLXノックアウトマウスの精巣における精子成熟レベルが、未成熟の(1月齢)RLX野生型マウス組織において観察されるレベルに類似したこともまた注目された。1〜3月齢で、正常マウスの精巣は、白膜を覆うコラーゲンの薄膜によって取り囲まれたままであったが;いくつかの組織において、コラーゲンの散在する薄い裏打ちがまた、精細管を支持することが観察された。しかし、コラーゲンの内部層は、年齢と共に減少することが見出された。rlx−/−マウスにおいて、細管構造の中間で検出されるコラーゲンは、精巣内のより大きい細管サイズの構造に起因して消失したが、野生型動物由来の組織サンプルにおいて観察されたものと比較して、なおより密であり、かつ堅実であった。非常に若い齢でのRLXヌル変異体マウスの生殖管において観察された増加したコラーゲンが、組織をより硬く堅固にし得ることが予想され、これは、上で考察された細管の組成および精子成熟における変化に関連し得る。興味深いことに、正常な成体マウスにおけるレラキシンの存在はまた、正常な未成熟(1月齢)マウスから観察された構造と比較して、精細管の細管構造の弛緩(増大した間質間隔)を誘導した。対照的に、1月齢および3月齢のrlx−/−マウスに由来する精巣由来の細管の組織化(サイズ/コンパクトさ)における差異は、存在しなかった。さらに、1月齢、および3月齢まで、rlx−/−マウス由来の精巣細管は、RLX野生型動物に由来する細管細胞と比較して、増加した数の死細胞を含むようであった。未成熟組織において見られた増加した数の死細胞は、動物間で異なったが、マウスが年齢と共に成熟するにつれ一貫して検出された。
【0194】
精巣上体:1ヶ月齢および3ヶ月齢のRLX+/+およびrlx−/−の生殖管の精巣上体において、細管のサイズに有意な差異は注目されなかった。しかし、成体において、細管のコンパクトさは、RLX野生型動物由来の組織と比較して、RLXホモ接合体マウス由来の組織においてより明らかであった。rlx−/−マウスの精巣上体細管もまた、結合組織によってより大きな程度まで支持された。3ヶ月齢のRLX+/+マウス組織由来の細管構造は、形が緩み、コラーゲンによって部分的に維持されるのみであった。逆に、RLXノックアウト動物から得た組織切片は、コラーゲンの薄い層によって非常にきれいに囲まれたよりコンパクトな細管を有することが示された。精巣の場合、rlx−/−マウスから得た組織は、RLX+/+マウスに由来する組織サンプルと比較して、観察した全ての年齢において増加した濃度のコラーゲンによって支持された。表2に示されるように、成熟した精子(精巣上体細管中)の密度は、RLX野生型マウスから得た組織切片と比較して、1ヶ月齢および3ヶ月齢の各それぞれの年齢群において、RLXヌル(null)変異マウスから得た組織切片においてより低かったことも見出された。しかし、この差異は、統計学的に有意ではなかった。レラキシンを欠くマウスの精巣上体における成熟精子のこの減少は、おそらくこれらの動物の精巣で生じる遅延した精子成熟プロセスに原因がある(表2)。
【0195】
【表2】


表2:組織切片を、H&Eで染色し、以下のように等級に分けた:
細管サイズ−1=全ての細管が小さく、環状の形態である;2=ほとんどの細管が1と比較してわずかに伸張しているが、いくつかのより小さい環状細管が観察される;3=細管は1と比較して著しく伸張しているが、いくつかのより小さい環状細管および中サイズの細管が観察される;4=全ての細管が1および2と比較して著しく伸張している。
細管のコンパクトさ−1=全ての細管の形が緩んでいる;2=形が緩んでいる細管の割合のほうが、コンパクトな細管の割合よりも多い;3=コンパクトな細管の割合のほうが、形が緩んでいる細管の割合よりも多い;4=全ての細管がコンパクト。
精子の成熟度−0=精子は検出されず;1=未成熟な精子のみが検出された;2=未成熟な精子の割合のほうが成熟な精子の割合よりも多い;3=成熟な精子の割合のほうが未成熟な精子の割合よりも多い;4=成熟な精子のみが検出された。
示した数値は、測定した各パラメーターについて使用した等級分けスケールの平均±SE(n)である。はp<0.05を示す。
【0196】
【表3】


表3:組織切片を、Massonトリクロム染色によって染色し、以下のように等級に分けた:
コラーゲン−1=構造の外部層を取り囲むコラーゲンの薄い内層のみ;2=組織の内部構成成分を取り囲むコラーゲンのさらなる内層;3=組織の外部層および内部構成成分を取り囲むより厚いコラーゲンの内層;4=3+コラーゲンで充填された細管/構成成分との間の空間。
【0197】
示した数値は、等級分けスケールの平均±SE(n)である。はp<0.05を示す。
【0198】
前立腺:1ヶ月齢において、RLX+/+由来組織とrlx−/−由来組織との間に前立腺構造に有意な差異は注目されなかった。しかし、正常動物由来の前立腺の管の間の空間は、微量のコラーゲンのみと会合していた。対照的に、rlx−/−マウス由来の前立腺の管は、形の緩んだ結合組織の層が介在していた。成体(3ヶ月)では、rlx−/−マウスは、より小さい腺および管を有するより小さい前立腺を含んだ。RLXノックアウトマウス由来の組織の管は、よりコンパクトであり、そして結合組織によって完全に支持されたが、RLX野生型マウスから得た管は、より広がり(形が緩んでいる)、そしてなおコラーゲンによってほとんど支持されなかった。さらに、rlx−/−マウスから得た成体前立腺の管は、より小さい上皮を有するようであり(含まれる細胞が少ない)、一方、RLX+/+前立腺サンプルの管は、より大きい上皮層/腺組織を含んだ。これらの結果が精巣および精巣上体に関する本発明者らの最初の知見に加えられて、これらのことは、雄性生殖組織の遅延した成熟プロセスが、機能的に活性なレラキシン遺伝子を欠くマウスで生じ、そしてこれらの組織内のコラーゲンの蓄積に関連するということを示す。
【0199】
(抗体染色による細胞アポトーシスの検出)
H&E染色からなされた観察(これによるとrlx−/−マウス由来の組織が低下した精子成熟および増大した細胞死(精巣)を引き起こし、そして減少した上皮(細胞)層(前立腺)を含む)に基づいて、観察された増大した細胞死がアポトーシス経路の結果であるか否かを調査することを決定した。
【0200】
Bax抗体染色:Baxの過剰発現は、サイトカイン遮断によって誘導されるアポトーシス死を加速させ、そしてまた、Bcl−2の死リプレッサー活性を相殺する(Krajewskiら、Am.J.Pathol.145:1323−36(1994))。Baxモノクローナル抗体を用いて、Baxタンパク質のインビボ分布を、雄性生殖管中で評価した。精巣:未成熟(1ヶ月)野生型動物由来の精細管は、Baxに対して弱い免疫染色を示し(濃い褐色の細胞染色)、これは、基底膜付近の胚芽細胞において主に観察された。これらの知見は、以前の報告と一致する(Ben−Hurら、Calcif.Tiss.Int.53:91−96(1996))。比較において、増大した数の細胞が、rlx−/−マウス由来の精巣において、Baxについてポジティブに染色された。Baxポジティブ細胞の数を、血球計を用いて計数し、そしてRLX+/+マウス由来の組織から観察されたアポトーシス細胞数(13.1±3.5細胞/精巣(n=6))と比較して、rlx−/−マウスの精巣において有意により多い(32.7±4.8細胞/精巣(n=6))が示された。増大したBax染色はrlx−/−組織において一貫して観察されたが、Baxに関してポジティブに染色された細管の数は、組織サンプル間で変化し、そしていくつかの細管がまたBaxを含まないことも観察された。成熟した雄性の生殖管の場合、成体RLX野生型マウスの精巣は、Baxについて減少した染色を示し(3.4±1.4細胞/精巣(n=6))、これは、これらの動物が経験した精子成熟および組織成熟のレベルの増大と相関する。逆に、rlx−/−マウス生殖管中で観察されたよりゆっくりとした組織成熟の速度は、3ヶ月齢のRLXノックアウトマウスにおけるBax染色のさらなる増加(44.4±8.1細胞/精巣(n=6))と相関する。観察した細胞の多くは、アポトーシスの最終段階のようであり、ことによるとアポトーシス体を示した。しかし、Bax染色は、成熟精子細胞と関連しなかった。精巣上体:より強力なBax染色が、1ヶ月のRLX+/+マウス組織から得た精巣上体細管の上皮細胞の細胞内膜に存在した。1ヶ月のrlx−/−マウス組織から得た精巣上体細管の細管は、相対的により強いレベルのBax染色を含み、これはさらに、3ヶ月の組織切片で増大しない場合であっても、維持された。対照的に、成体野生型マウスの精巣上体は、この組織が年齢と共に成熟するにつれ、1ヶ月の正常マウス由来の組織と比較して、より弱いBax発現の染色を含んだ。前立腺:正常な1ヶ月および3ヶ月の動物の前立腺の上皮細胞は、Baxについて弱いポジティブ染色を示した。研究した他の組織に関して、特にrlx−/−動物の(前立腺管の)上皮層内の細胞は、未成熟(1ヶ月)組織および成体(3ヶ月)組織の両方において、Baxについて増大した染色を示した。これらの知見は、レラキシンが雄性生殖管内の細胞アポトーシスの調節に新たな役割を果たし得ることを示唆するが、細胞アポトーシスを検出する別の抗体を用いたさらなる研究を、レラキシンの作用を確認するために実施した。
【0201】
カスパーゼ−9(中心的な死のプロテアーゼ)は、他の記載されたプロテアーゼファミリーと配列、構造および基質特異性が異なる、システインプロテアーゼの特有なファミリーに属する。このカスパーゼファミリーのメンバー(これらは、通常、タンパク質分解性切断事象のカスケードに関与する)は、細胞活性に重要である特定の標的タンパク質を破壊するように作用することによって、アポトーシス機構の重要な構成成分として機能する。精巣:中程度のカスパーゼ−9染色が、1ヶ月RLX+/+精巣において観察され(28.1±5.6細胞/精巣(n=7))、これは、精原細胞(spermatagonia)または精母細胞よりもむしろ、精細管内の胚細胞と主に関連するようである。Baxに関して、カスパーゼ−9染色の有意に(p<0.05)増大したレベルは、1ヶ月のrlx−/−マウスの精巣(76.6±10.2細胞/精巣(n=6))で検出されたが、重度のカスパーゼ−9染色は、ほとんど細管と関連せず、一方で多くの細管は、ほとんどまたは全くカスパーゼ−9タンパク質を含まないことが観察された。年齢に関して、正常な未成熟組織中で検出されたカスパーゼ−9のレベルは、3ヶ月齢のより高齢の組織において一貫して見出された(26.9±4細胞/精巣(n=6))。しかし、精巣の大きさが増大するにつれ、検出されるアポトーシス細胞の数は、少ない画分の高齢組織を示した。rlx−/−マウス由来の精巣細管は、1ヶ月の組織におけるカスパーゼ9染色細胞の密度と比較して、3ヶ月においてわずかに少ないアポトーシス細胞(61.6±9.8細胞/精巣(n=5))を含んだ。RLXノックアウトマウスの組織由来のポジティブに染色されたアポトーシス細胞の数にもかかわらず、残りは、研究した全年齢の野生型対応物よりも有意に(p<0.05)大きかった。精巣上体:カスパーゼ−9の染色は、1ヶ月のRLX+/+精巣上体細管から検出されず、一方、微量のポジティブ細胞がrlx−/−組織切片において観察された。しかし、ポジティブに染色された細胞は、まばらに散在し、そしてその細管の上皮層において検出された。年齢に関して、カスパーゼ−9の明確な染色は、3ヶ月齢のRLX+/+マウス組織およびrlx−/−マウス組織において検出されなかった。前立腺:カスパーゼ−9の染色は、調査した全ての年齢(1〜3ヶ月齢)において、RLX+/+組織およびrlx−/−組織の前立腺中で同定されなかった。それにもかかわらず、得られた結果は、最初に、このレラキシンが細胞アポトーシスの調節に関連していることを示唆する。しかし、レラキシンが細胞増殖経路に関与するか否かを確立するためのさらなる研究が必要とされた。
【0202】
(抗体染色による細胞増殖の検出)
PCNA染色:増殖細胞核抗原(PCNA)抗体を使用して、DNA合成が生じる核領域と関連する能力に基づいて、雄性生殖管における細胞増殖を検出した。精巣:PCNAを未成熟な精細管および成熟な精細管において検出したが、PCNA染色における有意な差異は、1ヶ月齢および3ヶ月齢のRLX+/+マウスおよびrlx−/−マウス由来の精巣管において検出されなかった。未成熟組織において、PCNA染色は、通常、有糸分裂活性な精原細胞で高度に発現され、時に、いくつかのセルトーリ細胞で高度に発現され、これらの染色は、増殖活性に対応する。この研究において、これらの細胞は、マウス成体においても良好に、より均一かつ絶え間なくPCNAについて標識され、これはおそらく、これらの増殖細胞の不断の活性化を介して、再生を開始し得る両方の群の能力を反映する。精巣上体:PCNAについての染色は、1ヶ月齢および3ヶ月齢のRLX+/+マウスまたはrlx−/−マウスのいずれか由来の精巣上体においても検出されなかった。これらの知見は、成熟精子のレザバーとして作用する精巣上体の役割と一致する。前立腺:PCNAについての弱い染色が1ヶ月のRLX+/+マウスおよびrlx−/−マウス由来の前立腺管の上皮細胞と関連していた。しかし、3ヶ月齢の群からはいずれも、PCNAについての染色は検出されなかった。白血球増殖研究は、ある程度の生殖組織に限定され、この蓄積された知見によって、おそらく、レラキシンはおそらく、細胞増殖に対してよりも細胞アポトーシスの調節において、影響のある役割を果たすということが、確認された。
【0203】
(他の身体細胞の組織学に対するレラキシン遺伝子ノックアウトの影響)
RLX野生型(RLX+/+)の雄および雌ならびにRLX遺伝子ノックアウト(rlx−/−)の雄および雌を、上記に記載されるように、RLXヘテロ接合体(RLX+/−)の親から発生させた。マウスを、組織を回収するために、1週間、1ヶ月および/または3ヶ月で重量し、屠殺した。以下の組織(脳、心臓、肝臓、腎臓、胸腺、脾臓および雄性生殖管を含む)を回収し、重量を量り、詳細な組織学的分析のために10%ホルマリン中においた。これらの組織重量のまとめを表4〜8に示す。
【0204】
1週齢において、雄性rlx−/−マウスは、RLX+/+動物と比較して、有意に(p<0.05)小さい肝臓、腎臓および脾臓を含んだ。しかし、これらの重量の差異は、1ヶ月齢においてもはや明らかではなかった。その代わり、1ヶ月齢の雄性rlx−/−マウスの胸腺は、そのRLX+/+対応物よりも小さかった(p<0.05)。この重量の差異は、3ヶ月齢においてもはや明らかではなかった。雄性生殖管の場合、RLX+/+群とrlx−/−群との間で1週齢または1ヶ月齢において有意な差異は注目されなかった。しかし、3ヶ月齢までに、rlx−/−マウスの生殖管は、RLX+/+動物から得たものよりも有意に(p<0.05)小さかった。
【0205】
雌性の1週齢のRLS+/+マウスとrlx−/−マウスとの間で注目に値する差異は観察されなかった。しかし、1ヶ月齢までに、rlx−/−雌性マウスは、そのRLX+/+対応物よりも、有意に小さい肝臓を有した。3ヶ月齢までに、この重量の差異は、もはや観察されず、そして他の器官の他の有意な差異ももはや注目に値しなかった。
【0206】
RLX−/−マウス(RLX+/−の親由来)における器官および組織の差異が、rlx−/−子孫をRLX−/−の親から得た場合にもさらに強調されるか否かを決定するために、RLX+/+マウスおよびrlx−/−マウスを、対応するの親のセットから得て、そして1週齢、1ヶ月齢および3ヶ月齢において屠殺した。脳、心臓、肝臓、腎臓、胸腺、脾臓、雄性生殖管、腸、および肺を回収し、そして重量を量った。これらの器官の重量を図4〜8に示す。
【0207】
器官重量または組織重量がマウスが齢を重ねるにつれ標準化されるようであるが、通常の重量単独では、通常の器官とも通常の組織とも等しくないことに、さらに注目する。このデータは、成長サイクルの任意の時期における器官(組織)重量 対 体重の比率が、潜在する器官発達もしくは組織発達または細胞構成における変化を示すことを示す。1つの例において、線維症によって浸潤された(変更された)小さい肝臓が、より大きい正常な肝臓または脂肪で充填された肝臓と同じ重量またはより重い重量である。従って、雌性および雄性のRLX−/−マウスの、脳、心臓、肝臓、腎臓、胸腺、脾臓、腸および肺(レラキシンの非存在下で発達する)は、増大したアポトーシスおよび細胞外マトリクス(コラーゲン)蓄積の証拠を示す。
【0208】
(表4:平均±SE(n)で示した、それぞれ、RLX+/+の親およびrlx−/−の親由来の、1週齢マウスの組織比較)
【0209】
【表4】


(表5:平均±SE(n)で示した、RLX+/−の親由来の、1ヶ月齢マウスの組織比較)
【0210】
【表5】


(表6:平均±SE(n)で示した、それぞれ、RLX+/+の親およびrlx−/−の親由来の、3ヶ月齢雄性マウスの組織比較)
【0211】
【表6】


(表7:平均±SE(n)で示した、それぞれ、RLX+/+の親およびRLX−/−の親由来の、1ヶ月齢マウスの組織比較)
【0212】
【表7】


(表8:平均±SE(n)で示した、それぞれ、RLX+/+の親およびrlx−/−の親由来の、3ヶ月齢マウスの組織比較)
【0213】
【表8】


(皮膚の組織学に対するレラキシン遺伝子ノックアウトの影響)
組織リモデリングの調節におけるレラキシンの役割を、rlx−ヌルマウス(rlx−/−)における皮膚組織学を研究することによって調べた。これらのマウスは、rlx−/−のオス親およびメス親の子孫であった。少なくとも5匹のオスマウスおよび5匹のメスマウスの、耳および背中からの連続した皮膚サンプルを、H&E染色およびMassonトリクロム染色によって染色し、各時点で調べた。同じ時点の類似のサンプルを、同じ系統のRlx+/+マウスから得た。rlxヌルマウスの組織学的試験の際に、真皮が、時間の進行につれ厚くなること、および真皮一帯の増大した線維症を有することを見出した。rlxヌルマウスの皮膚サンプルは、1週齢において正常であった;しかし、1ヶ月までに初期の皮膚線維症が明らかとなった。3ヶ月齢までに、皮膚線維症の顕著な増大が存在し、これは、6ヶ月齢までに密度が増大した。これらの皮膚に関する知見は、雄性および雌性のrlxヌルマウスにおいて類似していた。
【0214】
これらのマウスにおいて、表皮は正常であり、1ヶ月齢までにRlx+/+マウスからは識別不可能になるrlxヌルマウスにおける初期のより明るい外被色以外は、毛も変化しなかった。rlxマウスからの、血清化学、血液学的パラメーターおよび尿の試験は、注目に値しなかった。
【0215】
これらの知見は、レラキシンが、重要なマトリクス分子、マトリクス分解酵素および増殖因子を変更することによって、インビトロおよびインビボにおいてマトリクスターンオーバーに影響を与えるという、以前の観察を支持する。間質性コラーゲンを産生する多くの間質細胞は、雄性供給源由来または雌性供給源由来にかかわらず、レラキシンレセプターを有する。抗体に基づくアッセイによって、雌性の月経周期の黄体期の間に、低いピコグラムレベルでの血清中レラキシンが検出され得、そしてこれらのレベルは、妊娠中(このとき、組織リモデリングが最も明らかである)に上昇する。対照的に、雄性における血清レラキシンは検出不可能であることが報告されている。
【0216】
Rlxヌルマウスは、正常な皮膚におけるコラーゲンターンオーバーの普遍的な変更に対してレラキシンを関連付ける最初の直接的な証拠を提供する。これらの結果は、レラキシンが、雄性および雌性における検出流動レベルより低い生物学的に関連する濃度で、産生され得るかまたは循環し得ることを示す。レラキシンは、他のマトリクス調節分子と協力して、マトリクスターンオーバーの規則正しい維持に関与する。レラキシンは、組織リモデリング、血管形成の促進および血管拡張の刺激に影響を与え得る。これらの結果によってまた、レラキシン合成経路、およびレラキシンレセプターが、線維症状態(例えば、強皮症)と関連することが示される。
【0217】
これまでの例は、例示するために提供され、特許請求される本発明の範囲を限定するために提供されない。本発明の他の改変は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲によって含まれる。全ての刊行物、特許、特許出願、およびその中に引用される他の参考文献は、本明細書によって参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レラキシンレセプターを発現する細胞の集団においてアポトーシスを調節するための組成物であって、以下:
該レラキシンレセプターを発現する細胞の集団においてアポトーシスを増加するのに十分な有効量のレラキシンのアンタゴニストを含み、該レラキシンアンタゴニストが、レラキシンアンチセンス核酸、抗レラキシン抗体、可溶性レラキシンレセプター、可溶性レラキシンレセプターをコードする核酸、および抗レラキシンレセプター抗体である、組成物。
【請求項2】
前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシンレセプターに対するレラキシンの結合を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞の集団は、脳、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、皮膚、雌性生殖管組織または雄性生殖管組織由来である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記雄性生殖管組織が、前立腺、精巣上体、精嚢または精巣である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組織が、前立腺組織である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記雄性生殖管組織が、成熟している、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、注入、注射、経口送達、鼻内送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達による投与に適したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記投与が、遅延放出送達によるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記皮下送達が、注入または注射によるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記投与が、肺内送達、皮下送達または経皮送達によるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
増加されたアポトーシスが、所望でない細胞蓄積を減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記所望でない細胞蓄積が、過形成、肥大、癌または新形成である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
被験体の組織におけるアポトーシスを増加させるための医薬の製造のための、治療有効量のレラキシンアンタゴニストの使用であって、該レラキシンアンタゴニストが、レラキシンアンチセンス核酸、抗レラキシン抗体、可溶性レラキシンレセプター、可溶性レラキシンレセプターをコードする核酸、および抗レラキシンレセプター抗体である、使用。
【請求項15】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab’)、Fv、単重鎖、またはキメラ抗体である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記レラキシンアンタゴニストが、レラキシンレセプターに対するレラキシンの結合を阻害する、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記医薬が、注入、注射、経口送達、鼻内送達、肺内送達、直腸送達、経皮送達、組織内送達または皮下送達のために処方される、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記医薬が、遅延放出送達のために処方される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記組織が、前立腺組織、精巣上体組織、輸精組織または精巣組織である、請求項14に記載の使用。
【請求項20】
前記被験体が、思春期後の雄性である、請求項14に記載の使用。
【請求項21】
前記被験体が、思春期前の雄性である、請求項14に記載の使用。
【請求項22】
レラキシンレセプターを発現する前記細胞が、骨芽細胞、単球、上皮細胞または内皮細胞である、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−184273(P2012−184273A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152837(P2012−152837)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−192676(P2008−192676)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(503124838)モレキュラー メディシン リサーチ インスティチュート (2)
【Fターム(参考)】