説明

レンズ、レンズの取付方法および光ピックアップ装置

【課題】接着剤の塗布状態の良否を確実に判定することが可能なレンズ、レンズの取付方法および当該レンズを備えた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】レンズ5は、光を集光させるレンズ部5Aと、該レンズ部5Aの周囲に設けられ照射される平行光を照射方向と反対の方向に反射させる反射平面部5Bと、レンズホルダー6に接着剤にて接着される鍔部5Cとを備える。前記鍔部5Cに形成されている接着剤の塗布部5E、5Fが前記反射平面部5Bに対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置等に使用されるレンズ、当該レンズの被装着部に対する取付方法、および、前記レンズを備えた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に照射することによって光ディスクに記録されている信号の再生動作や光ディスクへの信号の記録動作を行う光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)と呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及している。また、最近では、記録密度を向上させた光ディスク、即ち、ブルーレイ規格の光ディスクを使用する光ディスク装置が開発されている。
【0004】
光ピックアップ装置は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を、対物レンズの集光作用によって、光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる。また、光ピックアップ装置は、信号記録層から反射されるレーザーを、光検出器に照射させる。光検出器には、4分割センサー等のセンサーが組み込まれている。4分割センサーに照射されるレーザー光の光量変化や位置の変化に伴って得られる信号から、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が生成される。これらの信号を利用して対物レンズの変位位置を制御することによって、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作等が行われる。
【0005】
光ピックアップ装置に組み込まれる対物レンズは、光ディスクの信号面に対して垂直方向への変位動作(フォーカス制御動作)及び光ディスクの径方向への変位動作(トラッキング制御動作)を行うことが出来るように、4本の支持ワイヤー等の支持部材によって支持されているレンズホルダーに、接着剤によって固定されている。
【0006】
フォーカス制御動作及びトラッキング制御動作を正確に行うためには、対物レンズの光軸の光ディスクの信号面に対する角度が最適となるように、光ピックアップ装置を組み立てる必要がある。斯かる対物レンズの角度調整動作は、例えば、特許文献1に記載されているようなオートコリメータ装置を使用して行われ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−293860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の角度調整動作は、対物レンズとレンズホルダーとの間に、紫外線硬化型の接着剤が塗布された後に行われる。つまり、角度調整動作は、接着剤が硬化されていない状態、即ち、紫外線が未だ照射されていない状態において行われる。角度調整動作によって対物レンズの取付角度が最適な状態になるように調整されたとき、紫外線が照射され、接着剤が硬化される。
【0009】
ここで、接着剤の塗布作業が人手によって行われる場合、接着剤の塗布量や塗布位置に
ばらつきが生じるという問題が起こり得る。接着剤の塗布量や塗布位置にばらつきが生じると、光ピックアップ装置の振動特性や信頼性に問題が発生する。このため、接着剤の塗布作業は正確に行われる必要がある。
【0010】
しかしながら、接着剤の塗布が正確に行われているか否かの判定確認は、作業者の目による外観検査によって行われているので、作業者の熟練度や確認能力によって、光ピックアップ装置の品質が左右されるという問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来るレンズ、レンズの取付方法、および、このレンズを備えた光ピックアップ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様はレンズに関する。本態様に係るレンズは、光を集光させるレンズ部と、該レンズ部の周囲に設けられ、照射される平行光を反射させる反射平面部と、レンズホルダーに接着剤にて接着される鍔部とを備える。そして、前記鍔部に形成されている接着剤の塗布部が、前記反射平面部に対して傾斜している。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、レンズの取付方法に関する。本態様では、上記第1の態様に係るレンズが用いられる。本態様に係るレンズの取付方法は、オートコリメータ装置から放射される平行光を傾斜した前記塗布部に照射する工程と、該塗布部から反射される平行光の有無によって接着剤の塗布状態の良否を判定する工程と、を含む。
【0014】
また、本態様に係るレンズの取付方法は、前記塗布部から反射される平行光の有無をオートコリメータ装置にて検出する工程をさらに含み得る。
【0015】
本発明の第3の態様は、光ピックアップ装置に関する。本態様に係る光ピックアップ装置は、レーザー光を出射するレーザー光源と、ディスクによって反射された前記レーザー光を受光する光検出器と、第1の態様に係るレンズを含み、前記レーザー光源から出射された前記レーザー光を前記ディスクに導くとともに、前記ディスクによって反射された前記レーザー光を前記光検出器に導く光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るレンズは、レンズをレンズホルダー等の部材に接着固定するために、レンズの鍔部に、傾斜した塗布部が形成されているため、該塗布部から反射される光を利用して接着剤の塗布状態の良否を判定することが可能となる。このため、接着剤の塗布部への塗布状態の良否を、確実に判定することが出来る。従って、本発明のレンズによれば作業者の熟練度や確認能力に関係なく、品質の良い光ピックアップ装置等の光学装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るレンズの構成を説明するための平面図である。
【図2】本発明に係るレンズの構成を説明するための断面図である。
【図3】本発明に係るレンズの構成を説明するための平面図である。
【図4】本発明に係るレンズの平行光の反射動作を説明するための平面図である。
【図5】オートコリメータ装置による調整動作を説明するための概略図である。
【図6】オートコリメータ装置を構成するディスプレイ部の表示を説明するための図である。
【図7】オートコリメータ装置を構成するディスプレイ部の表示を説明するための図である。
【図8】比較例に係るレンズの構成を説明するための平面図である。
【図9】比較例に係るレンズの構成を説明するための断面図である。
【図10】具体的構成例に係る光ピックアップ装置の光学系の構成を示す図である。
【図11】具体的構成例に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図12】具体的構成例に係る光ピックアップ装置とオートコリメータ装置の構成および対物レンズの取付工程を示すフローチャートである。
【図13】具体的構成例に係るホルダーの構成と、対物レンズとホルダーの関係を示す図である。
【図14】具体的構成例に係る対物レンズの取付工程における光の状態、ディスプレイ部に表示される画面の状態およびホルダーに対する対物レンズの取付状態を例示する図である。
【図15】具体的構成例に係る対物レンズの取付工程における光の状態、ディスプレイ部に表示される画面の状態およびホルダーに対する対物レンズの取付状態を例示する図である。
【図16】具体的構成例に係る対物レンズの取付工程における光の状態、ディスプレイ部に表示される画面の状態およびホルダーに対する対物レンズの取付状態を例示する図である。
【図17】具体的構成例に係る対物レンズの取付工程における光の状態、ディスプレイ部に表示される画面の状態およびホルダーに対する対物レンズの取付状態を例示する図である。
【図18】変更例に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図19】変更例に係る光ピックアップ装置とオートコリメータ装置の構成および対物レンズの取付工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態では、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に集光させる光ピックアップ装置の対物レンズとその取り付け方法に、本発明が適用されている。
【比較例】
【0019】
まず、比較例に係るレンズの構成と当該レンズの検査方法について、図5ないし図9を参照にして説明する。
【0020】
図5において、1はオートコリメータ装置である。オートコリメータ装置1は、基準台2に載置されている光ピックアップ装置3に組み込まれている対物レンズに平行光Lを照射するとともに、前記対物レンズから反射されるレーザー光を受光するように構成されている。4は演算装置である。演算装置4は、前記オートコリメータ装置1から得られる信号が入力されるとともに、該オートコリメータ装置1に対する制御を行う。演算装置4は、ディスプレイ部4Aに表示される図形から、作業者が、対物レンズの角度を検出および調整できるように構成されている。
【0021】
図8は、比較例に係る対物レンズとレンズホルダーとの関係を説明するための平面図、図9は、図8に示すA−A断面図である。
【0022】
図8および図9において、5は対物レンズである。対物レンズ5は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる。対物レンズ5は、レーザー光を集光するレンズ部5A及び該レンズ部5Aの周囲に設けられた鍔部5Cを備える。鍔部5Cは、オートコリメータ装置1から照射される平行光Lをオートコリメータ装置1方向へ反射させる反射平面部5Bとして作用する。
【0023】
6はレンズホルダーである。レンズホルダー6は、4本の支持ワイヤー(図示せず)によ
ってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位出来るように支持されている。レンズホルダー6には、前記対物レンズ5の鍔部5Cの下面5Dが載置される対物レンズ固定部6Aが、図9に示すように形成されている。
【0024】
前記鍔部5Cの下面5Dは、前記レンズホルダー6に形成されている対物レンズ固定部6Aと当接し、対物レンズ5のレンズホルダー6に対する固定位置を規定するように構成されている。図9の一部拡大図に示すように、対物レンズ固定部6Aとこれに続く側壁との間の角部分は丸められており、この部分に、鍔部5Cの下面5Dとこれに続く側壁との間の角部分が当接している。このため、前記対物レンズ5は、鍔部5Cの下面5Dが対物レンズ固定部6Aの角部分に載置された状態で、任意の方向に僅かに傾けられ得る。前記レンズホルダー6に対して、対物レンズ5は、接着剤7によって接着固定される。斯かる接着剤7として、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の接着剤が、一般に使用される。
【0025】
そして、レンズホルダー6に対して対物レンズ5を最適な位置、即ち、対物レンズ5の光軸が光ディスクの信号面に対して最適となる位置に固定するために、図5に示すオートコリメータ装置1が使用される。即ち、オートコリメータ装置1から放射される平行光Lが、対物レンズ5の鍔部5Cに設けられている反射平面部5Bに照射され、該反射平面部5Bから反射される平行光Lがオートコリメータ装置1に設けられている受光部にて受光される。このときの受光状態を、ディスプレイ部4Aで確認することによって、対物レンズ5の傾きが検出および調整される。
【0026】
前記オートコリメータ装置1は、対物レンズ5の鍔部5Cに設けられている反射平面部5Bにて反射されて受光部に入射される平行光Lに基づいて検出信号を生成し、演算装置4に対して、この検出信号を出力する。演算装置4は、入力される信号に基づいて演算処理を実行し、その演算結果に基づく測定データをディスプレイ部4Aに表示させる。
【0027】
このようにして得られる測定データは、ディスプレイ部4Aに、例えば図6に示すように点像Aとして表示される。斯かる点像Aは対物レンズ5の反射平面部5Bから反射される平行光Lに基づいて得られるものである。作業者は、点像Aの位置によって対物レンズ5のレンズホルダー6に対する取付角度のずれ量や方向を認識することが出来る。従って、例えばディスプレイ部4Aに表示されている点像Aの位置が、図示された直交する2本の直線の交点に位置するように、対物レンズ5の角度を調整および変更することによって、対物レンズ5の角度を、レンズホルダー6に対して最適な状態になるように、調整することが出来る。
【0028】
斯かる位置調整動作は、接着剤7が硬化されていない状態、即ち紫外線を照射させない状態にて行われる。前述した調整動作によって対物レンズ5の取付角度が最適な状態になるように調整されたとき、紫外線が照射され、接着剤7が硬化される。斯かる接着作業によって、前記対物レンズ5がレンズホルダー6に固定される。
【実施例】
【0029】
次に、実施例に係るレンズの構成と当該レンズの検査方法について、図1ないし図4を参照にして説明する。
【0030】
図1は、実施例に係るレンズの構成を説明するための平面図、図2は、図1に示すA−A断面図である。本実施例の対物レンズ5は、鍔部5Cに設けられている接着剤7A、7Bの塗布部5E、5Fが、図2に示す断面図に示すように、反射平面部5Bに対して傾斜していることにより特徴付けられる。
【0031】
斯かる構成の対物レンズ5をレンズホルダー6に接着固定する作業は、前述したようにオートコリメータ装置1を使用して対物レンズ5の角度調整が行われたときに行われる。
【0032】
オートコリメータ装置1から照射される平行光Lは、対物レンズ5の鍔部5Cに設けられている反射平面部5B及び接着剤7A、7Bの塗布部5E、5Fに照射される。接着剤7A及び7Bが図1に示すように塗布部5E及び5Fに対して正確に塗布されている場合には、平行光Lは、前記塗布部5E及び5Fに塗布されている接着剤7A及び7Bに照射されるが、該塗布部5E及び5Fから平行光Lが反射されることはない。よって、斯かる塗布部5E及び5Fから反射される平行光の有無を検出することにより、接着剤7A及び7Bの塗布部5E及び5Fに対する塗布状態、即ち塗布量及び塗布位置の良否を判定することが出来る。
【0033】
前記塗布部5E及び5Fから反射される平行光Lがオートコリメータ装置1に設けられている受光部に入射するように構成すれば、該塗布部5E及び5Fから反射される平行光Lの有無を、ディスプレイ部4Aに表示させることが出来る。これにより、作業者は、ディスプレイ部4A上の表示を見ることによって、接着剤7A及び7Bの塗布部5E及び5Fに対する塗布状態の良否を判定することが出来る。
【0034】
図1は、接着剤7A及び7Bの塗布部5E及び5Fに対する塗布状態、即ち塗布量及び塗布位置の状態が良好な場合を示す図である。斯かる状態では、塗布部5E及び5Fが露出していないので、オートコリメータ装置1から照射される測定用の平行光Lが該塗布部5E及び5Fから反射されることはない。従って、この場合には、平行光Lの反射は、反射平面部5Bのみで生じることになり、斯かる反射光がオートコリメータ装置1に設けられている受光部に照射される。
【0035】
この場合、受光部にて得られる信号に基づいて、演算装置4による演算処理が行われ、ディスプレイ部4Aに、図6に示す点像Aのように、対物レンズ5のレンズホルダー6に対する取付角度のずれ量や方向を示す表示が成される。従って、作業者は、斯かる点像Aの位置を直交する2本の直線の交点上に位置するように移動させるべく、対物レンズ5の角度を調整および変更する。斯かる調整の後、作業者は、接着剤7A及び7Bに紫外線を照射して、接着剤7A及び7Bを硬化させる。これによって、対物レンズ5のレンズホルダー6への接着固定動作を行うことが出来る。
【0036】
斯かる場合には、ディスプレイ部4Aには、対物レンズ5のレンズホルダー6に対する角度を示す点像Aのみが表示され、塗布部5E及び5Fから反射される光に基づいて表示される点像が存在しない。したがって、作業者は、この表示を見ることにより、接着剤7A及び7Bの塗布部5E及び5Fに対する塗布状態が良好であることを認識することが出来る。
【0037】
接着剤7A及び7Bの塗布部5E及び5Fに対する塗布状態が良好な場合の確認作業は、以上に説明したようにして行われる。次に、接着剤7A、7Bの塗布状態が不良である場合について、図3、図4及び図7を参照して説明する。
【0038】
図3は、塗布部5Fに対する接着剤7Bの塗布状態が不良の状態を示すものである。同図より明らかなように、この塗布状態は、接着剤7Bの量が不足し、塗布部5Fの一部が露出した状態にある。
【0039】
斯かる場合、オートコリメータ装置1から照射される平行光Lは、図4に示すように、対物レンズ5の鍔部5Cに設けられている反射平面部5B及び露出している塗布部5Fに照射され、夫々、反射光L1及びL2として反射され、オートコリメータ装置1に設けら
れている受光部へ照射される。
【0040】
反射平面部5Bから反射された反射光L1及び塗布部5Fから反射された反射光L2が前記オートコリメータ装置1に設けられている受光部へ照射されると、演算装置4による演算処理が行われ、ディスプレイ部4Aに、図7に示すように点像A及びBが表示されることになる。
【0041】
ディスプレイ部4Aに表示される点像Aは、反射平面部5Bから反射された反射光L1に基づいて生成されて表示される。即ち、点像Aは、対物レンズ5のレンズホルダー6に対する角度のずれ等を表示するものである。この点像Aの位置を直交する2本の直線の交点上に位置するように移動させることによって、対物レンズ5の角度を調整することが出来る。
【0042】
一方、ディスプレイ部4Aに表示される点像Bは、塗布部5Fから反射された反射光L2に基づいて生成されて表示される。つまり、点像Bは、塗布部5Fに塗布されている接着剤7Bの塗布状態が不良であることを表示する。即ち、塗布部5Fに対する接着剤7Bの塗布量や塗布位置が適正でない場合には、該塗布部5Fから反射される反射光L2に基づいて、点像Bがディスプレイ部4Aに表示される。作業者は、この表示を見ることにより、接着剤7Bの塗布状態が不良であることを容易に認知することが出来る。
【0043】
ここでは、図3を参照して、塗布部5Fに対する接着剤7Bの塗布状態が不良である場合について説明したが、塗布部5Eに対する接着剤7Aの塗布状態が不良である場合には、例えば、図7において点像Aが表示されている象限に、塗布部5Eによる点像が表示されることになる。
【0044】
以上に説明したように、本実施例では、対物レンズ5のレンズホルダー6に対する取付角度を表示するために、ディスプレイ部4Aに表示される点像Aを利用することによって、対物レンズ5の取付位置の調整が行われる。また、このときの表示に、その他の点像が存在するか否かを確認することによって、接着剤の塗布状態の良否を、簡単に判定することが出来る。
【0045】
本実施例において、鍔部に設けられている接着剤の塗布部の傾斜角度や傾斜方向等は、種々変更することは可能である。また、本実施例では、鍔部に対物レンズの傾きを調整するための反射平面部が設けられたが、他の部分に反射平面部が設けられても良い。
【0046】
また、本実施例では、光ピックアップ装置に使用される対物レンズについて説明がなされたが、本発明は、光ピックアップ装置に使用されるコリメータレンズやセンサーレンズ等のレンズは勿論のこと、カメラ等の光学装置に使用されるレンズに適用することも出来る。
<具体的構成例>
【0047】
以下、本発明を、光ピックアップ装置の対物レンズおよびその取付方法に適用した場合のさらに詳細な構成例について説明する。本構成例に係る光ピックアップ装置は、CD、DVD、BD(ブルーレイディスク)に対応可能な互換型の光ピックアップ装置である。
【0048】
なお、本構成例に係る対物レンズは、請求項1ないし6に記載のレンズに対応し、本構成例に係る対物レンズの取付方法は、請求項8ないし10に記載のレンズの取付方法に対応し、本構成例に係る光ピックアップ装置は、請求項11に記載の光ピックアップ装置に対応する。ただし、本発明は、本構成例に限定されるものではない。
【0049】
図10(a)、(b)に、本構成例に係る光ピックアップ装置3の光学系を示す。図10(a)は、光学系を光ピックアップ装置3の表側から(y軸負方向に)見た場合の平面図、図10(b)は対物レンズアクチュエータ122周辺部分を側面側から見た内部透視図である。
【0050】
図10(a)を参照して、光ピックアップ装置3は、レーザーダイオード101と、回折格子102と、PBS(Polarizing Beam Splitter)板103と、1/4波長板104と、コリメータレンズ105と、レンズアクチュエータ106と、立ち上げミラー107と、対物レンズ108と、回折光学素子(DOE)109と、非点収差板110と、光検出器111を備える。
【0051】
レーザーダイオード101は、波長400nm程度のレーザー光(以下、「BD光」という)と、波長650nm程度のレーザー光(以下、「DVD光」という)と、波長780nm程度のレーザー光(以下、「CD光」という)を同一方向(x軸正方向)に出射する。
【0052】
回折格子102は、レーザーダイオード101から出射されたBD光、DVD光、CD光のうちBD光をメインビームと2つのサブビームに分割する。回折格子102には、BD光の3つのビームがディスクのトラックに沿うよう回折溝が形成されている。なお、DVD光とCD光も回折格子102による回折作用を受けるが、これら光のサブビームの強度は、極めて小さくなっている。
【0053】
PBS板103は、回折格子102側から入射されたレーザー光を反射する。PBS板103は、入射面と出射面が正方形の輪郭を有する薄板状の平行平板となっており、その入射面に、偏光膜が形成されている。レーザーダイオード101は、BD光、DVD光、CD光の偏光方向がPBS板103に対してS偏光となるように配置されている。
【0054】
1/4波長板104は、PBS板103によって反射されたレーザー光を円偏光に変換するとともに、ディスクからの反射光を、ディスクへ向かうときの偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザー光はPBS板103を透過して光検出器111へと導かれる。
【0055】
コリメータレンズ105は、PBS板103によって反射されたレーザー光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ106は、1/4波長板104とコリメータレンズ105を、コリメータレンズ105の光軸方向に駆動する。コリメータレンズ105が移動されることにより、レーザー光に生じる収差が補正される。立ち上げミラー107は、コリメータレンズ105側から入射されたレーザー光を対物レンズ108に向かう方向(y軸正方向)に反射する。
【0056】
対物レンズ108は、BD光、DVD光およびCD光を、それぞれ、対応するディスクの記録層上に収束可能に構成されている。対物レンズ108は、ホルダー121に保持され、ホルダー121は、対物レンズアクチュエータ122によって、フォーカス方向(y軸方向)およびトラッキング方向(ディスクのラジアル方向)に駆動される。
【0057】
本構成例において、対物レンズ108は請求項1に記載のレンズに相当し、ホルダー121は請求項1に記載のレンズホルダーに相当する。対物レンズ108およびホルダー121の構成は、追って、図11(a)〜(d)および図13(a)〜(d)を参照して説明する。
【0058】
ディスクからの反射光は、1/4波長板104によりPBS板103に対してP偏光と
なる直線偏光に変換される。これにより、ディスクからの反射光は、PBS板103を透過する。
【0059】
DOE109は、回折作用により、主としてBD光の進行方向を変化させる、波長選択性の回折格子である。DOE109によって回折されたBD光の+1次回折光は、DVD光の光軸に近づく方向に向かう。これにより、BD光のメインビームの光軸が、光検出器111の受光面上においてDVD光の光軸と一致する。
【0060】
非点収差板110は、平行平板であり、BD光、DVD光、CD光に非点収差を導入する。非点収差板110は、自身が導入する非点収差とPBS板103によって導入される非点収差とによって、各光に適正な非点収差が導入されるよう、厚み、屈折率、傾き方向が調整されている。光検出器111の受光面上には、BD光、DVD光、CD光が照射される位置に、4分割センサーが配置されている。BD光のメインビームは、DVD光を受光する4分割センサーによって受光される。
【0061】
図11(a)〜(d)は、対物レンズ108の構成を示す図である。図11(a)は、対物レンズ108を上側から見た斜視図、図11(b)は、対物レンズ108を上側図11(a)の状態から上下方向に反転させた場合の斜視図、図11(c)、(d)は、それぞれ、対物レンズ108をx軸負方向およびz軸負方向に見たときの側面図である。
【0062】
図11(a)を参照して、対物レンズ108は、レンズ面108A1と、レンズ面108A2と、反射平面部108Bと、鍔部108Cと、下面108Dと、塗布部108Eと、塗布部108Fと、を備えている。
【0063】
レンズ面108A1、108A2は、上記実施例に示されたレンズ部5Aに対応し、反射平面部108Bは、上記実施例に示された反射平面部5Bに対応し、鍔部108Cは、上記実施例に示された鍔部5Cに対応し、下面108Dは、上記実施例に示された下面5Dに対応し、塗布部108E、108Fは、それぞれ、上記実施例に示された塗布部5E、5Fに対応する。
【0064】
レンズ面108A1、108A2は、BD光、DVD光、CD光を、それぞれ、対応するディスクの記録層上に収束させるよう形成されている。レンズ面108A1、108A2は、それぞれ、非球面形状の凸面であり、レンズ面108A2には、各光に生じる収差や焦点位置等を調整するための回折構造が形成されている。レンズ面108A2の径は、レンズ面108A1の径よりも大きい。レンズ面108A1、108A2の光軸は、対物レンズ108の光軸COに一致している。なお、図11(a)では、光軸COは、y軸に平行となっている。
【0065】
レンズ面108A1、108A2の周囲には、光軸COについて同軸に、所定の厚みの鍔部108Cが、リング状に形成されている。鍔部108Cの外周面までの径は、一定である。また、鍔部108Cの厚みも一定である。
【0066】
鍔部108Cの上面は、x−z平面に平行な面(光軸COに垂直な面)となっており、この上面が反射平面部108Bとなっている。この反射平面部108Bは、後述の如く、対物レンズ108の傾き調整のために用いられるため、たとえば、金型の対応する部位を鏡面加工する等して、面精度を高められておくのが望ましい。また、鍔部108Cの下面108d(図11(b)参照)も、反射平面部108Bと同様、x−z平面に平行な面(光軸COに垂直な面)となっている。レンズ面108A1の径はレンズ面108A2の径よりも小さいため、反射平面部108Bの径方向の幅は、下面108dの径方向の幅よりも大きい。
【0067】
鍔部108Cの上面には、光軸周りに互いに180度回転した位置に、塗布部108E、108Fが形成されている。塗布部108E、108Fは、それぞれ、反射平面部108BからY軸負方向に所定角度だけ傾いた平面となっている。すなわち、塗布部108E、108Fは、それぞれ、反射平面部108Bからy軸負方向(y−z平面に平行な方向)に角度α、βだけ傾いた平面によって、反射平面部108Bが切り欠かれた形状を有している。本構成例では、反射平面部108Bに対する塗布部108E、108Fの傾き角α、β(図11(c)参照)は、同じである。また、y軸負方向に見たとき、塗布部108E、108Fは、同じ形状かつ同じ広さになっており、光軸COについて対象となっている。
【0068】
なお、塗布部108E、108Fは、後述の如く、対物レンズ108に対する接着剤の塗布状態の確認のために用いられるため、たとえば、金型の対応する部位を鏡面加工する等して、面精度を高められておくのが望ましい。また、ここでは、塗布部108E、108Fの傾き角α、βが互いに同じに設定されたが、塗布部108E、108Fによって反射された光が、後述のオートコリメータ装置1の撮像カメラによって受光可能であれば、傾き角α、βは必ずしも同じでなくても良い。すなわち、塗布部108E、108Fの傾き角α、βは、塗布部108E、108Fによって反射された反射光の進行方向を決める。したがって、塗布部108E、108Fの傾き角α、βは、これら反射光がオートコリメータ装置1の撮像カメラ204(図12(a)参照)によって取り込まれる範囲において、任意に設定することができる。
【0069】
図12(a)は、光ピックアップ装置3の全体構成とオートコリメータ装置1の構成を示す図である。
【0070】
光ピックアップ装置3は、図10(a)、(b)に示す光学系を保持するためのハウジングHを備えている。ハウジングHには、ガイド孔H1と、ガイド溝H2と、凹部H3と、支持部H4と、開口H5とを備えている。ガイド孔H1とガイド溝H2には、ハウジングHを支持するための支持シャフトSA、SBが挿入される。凹部H3は、ハウジングHの下面に、壁で区切ることにより形成され、この凹部H3に、図10(a)に示す光学系OSが装着される。支持部H4は、ハウジングHの上面から突出するように形成される。この支持部H4に対して、弾性変位可能な4本の支持ワイヤーSWを介して、ホルダー121が装着される。ホルダー121には、対物レンズ108が装着される。開口H5は、BD光、DVD光、CD光を、光学系OSから対物レンズ108へと導き、ディスクによって反射されたBD光、DVD光、CD光を、対物レンズ108から光学系OSへと導く。
【0071】
なお、ホルダー121には、フォーカスコイルとトラッキングコイルが装着され、これらコイルに向き合うように、ハウジングHの上面に磁石が配置される。フォーカスコイルに電流が供給されていない状態において、ホルダー121は、自重と支持ワイヤーSWによる弾性復帰力とが釣り合う位置に位置付けられる。ホルダー121は、略同じ姿勢を保ったまま、上下方向(y軸方向)に移動する。ホルダー121が上下方向(y軸方向)に移動するとき、支持ワイヤーSWは、ホルダー121が略同じ姿勢を保つように撓む。
【0072】
図13(a)〜(d)は、ホルダー121の、対物レンズ108が装着される部分(被装着部)の構成を示す図である。図13(a)は、対物レンズ108が組み込まれる前の状態を示す平面図、図13(b)は、対物レンズ108が組み込まれた後の状態を示す平面図、図13(c)、(d)は、それぞれ、図13(a)、(b)のB−B断面図である。
【0073】
図13(a)、(c)を参照して、ホルダー121は、対物レンズ固定部121Aと、上面121Bと、穴121Cと、壁面121Dと、曲面部121Eとを備える。対物レンズ固定部121Aは、x−z平面に平行な平面であり、ホルダー121の上面121Bから所定の深さの位置にある。上側(y軸正方向側)から見たとき、対物レンズ固定部121Aは、一定径の円形リング形状となっている。対物レンズ固定部121Aの中央に、BD光、DVD光、CD光を通すための円形の穴121Cが形成されている。穴121Cの径は、レンズ面108A2の径よりも大きい。また、対物レンズ固定部121Aの外周に沿って、上面121Bへと続く壁面121Dが形成されている。さらに、壁面121Dと対物レンズ固定部121Aとの境界に、壁面121Dと対物レンズ固定部121Aとの間の角を丸めた曲面部121Eが形成され、この曲面部121Eを介して、壁面121Dの下端と対物レンズ固定部121Aの周縁とが繋がっている。
【0074】
対物レンズ固定部121Aの外周の径は、対物レンズ108の鍔部108Cの外周面の径よりも小さく、壁面121Dの径は、対物レンズ108の鍔部108Cの外周面の径よりも大きい。したがって、図13(b)、(d)のように、対物レンズ108を壁面121D内の嵌め込むと、鍔部108Cの下面108Dが曲面部121E上に載り、鍔部108Cの外周面と壁面121Dとの間と、下面108Dと対物レンズ固定部121Aとの間に隙間が生じる。これにより、対物レンズ108が揺動可能となり、対物レンズ108の傾き調整が可能となる。なお、対物レンズ108の傾き調整は、±0.2度程度の範囲で行われる。
【0075】
図12(a)に戻り、オートコリメータ装置1は、レーザー光源201と、ハーフミラー202と、コリメータレンズ203と、撮像カメラ204とを備える。レーザー光源201は、所定波長のレーザー光をz軸負方向に出射する。レーザー光源201から出射されたレーザー光は、その半分が、ハーフミラー202によってy軸負方向に反射される。反射されたレーザー光は、コリメータレンズ203によって平行光Lに変換される。平行光Lは、照射目標である光ピックアップ装置3に照射される。
【0076】
対物レンズ108の角度調整において、光ピックアップ装置3は、基準台2(図5参照)に設置される。基準台2には、図12(a)に示す支持シャフトSA、SBが設けられ、これら支持シャフトSA、SBを、それぞれ、ハウジングHのガイド孔H1とガイド溝H2に挿入することによって、ハウジングHが水平に(x−z平面に平行に)支持される。さらに、ハウジングHが支持シャフトSA、SBに沿って移動することを規制する部材をハウジングHに係合させることにより、ハウジングHが所定の位置に固定される。この状態において、オートコリメータ装置1から出射される平行光Lの光軸が、対物レンズ108の中心近傍を貫く。
【0077】
対物レンズ108から反射された反射光は、コリメータレンズ203を介してハーフミラー202に入射し、そのうち半分が、ハーフミラー202を透過して、撮像カメラ204の撮像面P(図14(a)参照)に集光される。撮像カメラ204は、撮像面Pとコリメータレンズ203との間の距離がコリメータレンズ203の焦点距離となるように、配置されている。撮像面Pは、y軸方向に垂直に配置される。また、撮像カメラ204の光軸はコリメータレンズ203の光軸に一致している。
【0078】
図12(b)は、ホルダー121に対する対物レンズ108の取付工程を示すフローチャートである。以下、図12(b)と、図14〜図17を参照して、ホルダー121に対する対物レンズ108の取付方法を説明する。
【0079】
なお、図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a)は、それぞれ、対応する工程において、オートコリメータ装置1から出射される平行光Lと、対物レンズ10
8からの反射光L1、L2の光路を模式的に示した図である。便宜上、これらの図では、レーザー光源201とハーフミラー202が省略されており、撮像カメラ204に代えて、撮像カメラ204内に含まれるイメージセンサー204aが示されている。図14(b)、図15(b)、図16(b)、図17(b)は、それぞれ、対応する工程において、ディスプレイ部4Aに表示される画像を模式的に示した図である。図14(c)、図15(c)、図16(c)、図17(c)は、それぞれ、対応する工程において、ホルダー121に対する対物レンズ108の取付状態を模式的に示した図である。
【0080】
図12(b)を参照して、対物レンズ108の取付工程では、まず、上記のように、光ピックアップ装置3が基準台2に設置される(S101)。この状態において、対物レンズ108は、図14(c)(図13(b)、(d)と同様)に示すように、ホルダー121の壁面121D内に嵌め込まれている。次に、レーザー光源201が点灯され、平行光Lが対物レンズ108に照射される(S102)。このとき、平行光は、対物レンズ108の鍔部108Cの外周よりもやや広い範囲に照射される。
【0081】
図14(a)は、このときの平行光Lと反射光L1、L2の状態を示す図である。平行光Lは、対物レンズ108上面の反射平面部108Bと塗布部108E、108Fによって反射される。反射平面部108Bによって反射された反射光L1と、塗布部108E、108Fによって反射された反射光L2は、それぞれ、イメージセンサー204aの撮像面P上に集光される。このとき、塗布部108E、108Fは反射平面部108Bに対してy軸負方向に傾いているため、2つの反射光L2は、反射光L1から次第に離れる。このため、2つの反射光L2の集光位置は、撮像面P上において、反所光L1の集光位置から離れる。
【0082】
したがって、ディスプレイ部4Aには、たとえば、図14(b)のような画像が表示される。図14(b)において、点像Aは、反射平面部108Bからの反射光L1の撮像面P上における集光領域を示し、点像BE、BFは、それぞれ、塗布部108E、108Fからの反射光L2の撮像面P上における集光領域を示す。塗布部108E、108Fに接着剤7A、7Bが塗布されていない状態では、画面上に、点像Aの他に、点像BE、BFが表示される。
【0083】
反射平面部108Bの面精度が鏡面のように高い場合、反射光L1は、図14(a)に示すように、一点に集光する。しかし、実際には、反射平面部108Bに多少の起伏が含まれるため、反射光L1は、やや広がった領域に集光する。このため、点像Aは、スポット状となっている。同様に、点像BE、BFもスポット状になっている。反射平面部108Bの面積に比べ塗布部108E、108Fの面積が小さいため、塗布部108E、108Fからの反射光L2は、反射平面部108Bからの反射光L1に比べると、集光し易い。このため、点像BE、BFは、点像Aに比べて小さくなっている。
【0084】
図14(b)において、ディスプレイ部4Aに表示される画面全体が、イメージセンサー204aの撮像領域に対応している。また、画面には、互いに直交する2つの直線TL1、TL2が角度調整のためのターゲットとして表示される。これら直線TL1、TL2の交点が、イメージセンサー204aの撮像領域の中心に対応する。また、直線TL2は、z軸方向に対応する。
【0085】
図12(b)に戻り、こうして平行光Lが対物レンズ108に照射された後、塗布部108E、108Fに、それぞれ、紫外線硬化型の接着剤7A、7Bが塗布される(S103)。この塗布は、たとえば、ニードルの先から接着剤を所定量、吐出させることにより行われる。
【0086】
図15(a)は、塗布部108Eに正しく接着剤7Aが塗布されたときの各光の状態を示す図である。この場合、塗布部108Eからの反射光L2が生じないため、ディスプレイ部4A上の画像から、点像BEが消失する。なお、接着剤7Aによって平行光Lが乱反射するため、接着剤7Aからの反射光は、イメージセンサー204aには集光しない。
【0087】
図16(a)は、さらに塗布部108Fにも正しく接着剤7Bが塗布されたときの各光の状態を示す図である。この場合、塗布部108Fからの反射光L2が生じないため、ディスプレイ部4A上の画像から、点像BFがさらに消失し、画面上に表示される点像は、点像Aのみになる。
【0088】
図12(b)に戻り、こうして接着剤7A、7Bが塗布された後、点像Aが直線TL1、TL2の交点に位置付けられるよう、対物レンズ108の角度調整が行われる(S104)。ずなわち、図16(b)の点像Aが破線の位置に来るように、対物レンズ108が揺動される。こうして角度調整が行われた後、接着剤7A、7Bに紫外線が照射され、接着剤7A、7Bが固化される(S105)。これにより、対物レンズ108がホルダー121に固着される。
【0089】
しかる後、作業者は、ディスプレイ部4A上の画面から点像BE、BFが消失しているかを確認する(S106)。そして、画面上に点像Aのみしか無い場合(S106:YES)、作業者は、接着作業が適正に行われたと判定して、当該光ピックアップ装置3に対する対物レンズ108の取り付け作業を終了する。他方、画面上に、点像A以外に点像BEまたは点像BFが存在する場合(S106:NO)、作業者は、接着作業が適正に行われなかったとして、当該光ピックアップ装置3に対する対物レンズ108の取り付け作業をエラーとし(S107)、当該光ピックアップ装置3に対する作業終了する。エラーとなった場合、当該光ピックアップ装置3に対する後処理が、たとえば、手作業で行われる。
【0090】
図17(c)は、塗布部108Fに対して接着剤7Bが適正量塗布されなかった状態を例示するものである。この場合、塗布部108Fのうち、破線で囲った部分が露出するため、図17(a)のように、この部分からの反射光L2が、イメージセンサー204aに入射する。これにより、ディスプレイ部4A上に点像BFが現れる。作業者は、画面上に点像BFが含まれていることにより、接着作業が適正に為されなかったことを知ることができる。なお、図17(b)の状態から、対物レンズ108に対する角度調整が行われ、点像Aが直線TL1、TL2の交点に移動されると、これに伴い点像BFも移動する。
【0091】
こうして、接着作業に対する確認が終了した後、レーザー光源201が消灯され、当該光ピックアップ装置3に対する対物レンズ108の取付工程が終了する。
【0092】
以上のように、本構成例によれば、対物レンズ108のホルダー121に対する取付角度の調整を、ディスプレイ部4Aに表示される点像Aを参照することにより行うことができる。また、このときの表示に、点像BE、BFが存在するか否かを確認することによって、対物レンズ108に対する接着剤の塗布状態の良否を、簡単に判定することができる。
【0093】
本構成例によれば、対物レンズ108の角度調整に用いるオートコリメータ装置1を利用することによって、対物レンズ108に対する接着作業の良否をも確認することができる。また、この判定作業を、角度調整作業とともに、一連の流れにおいて行うことができる。よって、作業性よく、簡便かつ確実に、対物レンズ108に対する接着作業の良否を判定することができる。
【0094】
本構成例において、塗布部108E、108Fの角度α、βは、図14(b)の状態から点像Aが2つの直線TL1、TL2の交点に移動したときに、点像BE、BFの両方が、画面上に表示される角度であれば良い。すなわち、図14(b)の状態において、点像BEが画面からはみ出していても良く、少なくとも、点像Aが2つの直線TL1、TL2の交点の位置に有り、且つ、塗布部108E、108Fに接着剤7A、7Bが塗布されていない状態において、2つの点像BE、BFが、ディスプレイ部4Aの画面上に表示されるように、角度α、βが設定されば良い。既に述べたように、角度α、βは、互いに同じでなくても良い。
【0095】
また、塗布部108E、108Fの形状および広さは、必ずしも、互いに同じでなくても良い。たとえば、図18(a)のように、塗布部108Eが塗布部108Fよりも狭くても良く、逆に、塗布部108Fが塗布部108Eよりも狭くても良い。ただし、図18(a)の変更例では、塗布部108Fよりも塗布部108Eの方が、少ない接着剤によって覆われるため、塗布部108Eと塗布部108Fにそれぞれ塗布された接着剤7A、7Bの量に差があっても、ディスプレイ部4Aの画面上から点像BE、BFが消失することが起こり得る。このため、図18(a)の変更例では、塗布部108E、108Fに対する接着剤7A、7Bの塗布量がアンバランスである場合にも、接着作業が適正に行われたと判定されることが起こり得る。
【0096】
したがって、塗布部108E、108Fに塗布された接着剤7A、7Bの量にアンバランスがあることをも確認するためには、塗布部108E、108Fの広さが同じまたは略同じであるのが望ましい。また、量は同じであっても接着剤7A、7Bの塗布状態(たとえば、塗布領域)が異なることを判定可能とするためには、y軸負方向に見たときの塗布部108E、108Fの形状が同じか略同じであることが望ましい。したがって、塗布部108E、108Fに対する接着剤7A、7Bの塗布量のバランスおよび塗布状態を正確に確認可能とするためには、上記構成例のように、塗布部108E、108Fの形状と広さが同じであることが望ましい。
【0097】
さらに、重量バランスを考慮すると、接着剤7A、7Bの塗布位置は、対物レンズ108の光軸COに対して対称となっているのが望ましい。よって、接着剤7A、7Bの塗布位置が光軸COに対して対称であることをも確認するためには、塗布部108E、108Fが光軸COに対して対称または略対象な形状を有することが望ましい。
【0098】
また、上記構成例では、鍔部108Cの上面に、2つの塗布部108E、108Fを設けたが、塗布部の数はこれに限られない。たとえば、図18(b)のように、3つの塗布部108E、108F、108Gを鍔部108Cの上面に設けても良く、あるいは、1つまたは4つ以上の塗布部を設けても良い。なお、図18(b)の場合、塗布部108E、108F、108Gに対応する3つの点像が、ディスプレイ部4Aの画面上に現れることになる。
【0099】
また、上記構成例では、鍔部108Cの上面に、塗布部108E、108Fを設けたが、塗布部の配置位置はこれに限られない。たとえば、図18(c)のように、鍔部108Cから対物レンズ108の径方向に突出した領域を設け、この領域に、上面が反射平面部108Bから傾斜した塗布部108E、108Fを設けても良い。この場合、ホルダー121の上面121Bに、塗布部108E、108Fを収容するための凹部が設けられる。
【0100】
なお、塗布部108E、108Fは、反射平面部108Bと同様、鍔部108Cの上面に配するのが好ましい。すなわち、上記構成例では、対物レンズ108の傾き調整の際に、鍔部108C上面に形成された反射平面部108Bに平行光を照射するために、鍔部108Cの外周よりもやや広い範囲に平行光Lが照射される。したがって、鍔部108Cの
上面に塗布部108E、108Fを設ければ、対物レンズ108の傾き調整の際に照射される平行光Lが塗布部108E、108Fにも照射されることになり、傾き調整後の接着剤7A、7Bの塗布状態の確認を、平行光Lの照射範囲を変更することなく、スムーズに進めることができる。上記構成例では、鍔部108Cの上面に、円の一部が除かれた輪郭形状を有するように、反射平面部108Bが設けられ、この円と反射平面部108Bの輪郭形状との間の領域に、塗布部108E、108Fが設けられている。これにより、平行光Lが、反射平面部108Bと塗布部108E、108Fに同時に照射されるようになり、上記効果が奏され得る。
【0101】
また、上記構成例では、塗布部108E、108Fは、それぞれ、反射平面部108Bからy軸負方向に角度α、βだけ傾いた平面によって、反射平面部108Bが切り欠かれた形状を有していたが、塗布部108E、108Fの形状は、これに限られない。たとえば、図18(d)のように、反射平面部108Bにx軸方向に並ぶ2つの窪みを塗布部108E、108Fとして設け、この窪みの底面を、反射平面部108Bに対して傾けても良い。図18(d)の右下には、塗布部108Fをx軸負方向に見たときの一部側面図が示されている。
【0102】
この変更例では、塗布部108E、108F(窪み)は、円弧状に形成され、平面視において、互いに同じ形である。塗布部108E、108Fの最も対物レンズ108の中心側の位置において、塗布部108E、108Fの底面が反射平面部108bへと繋がっている。このように窪みを設けることにより、接着剤7A、7Bの塗布状態を確認するための、接着剤7が塗布されるべきエリアを、上記構成例(図11(a)〜(d)参照)に比べて、制限することができ、また、塗布部108E、108F内に接着剤7A、7Bが収まり易くなる。なお、図18(d)に示す変更例は、請求項7に記載のレンズの一例である。
【0103】
また、上記構成例では、塗布部108E、108Fを反射平面部108Bに対してy軸負方向(y−z平面に平行な方向)に傾けたが、塗布部108E、108Fを傾ける方向は、これに制限されない。たとえば、図18(e)のように、塗布部108E、108Fを反射平面部108Bに対してy軸正方向(y−z平面に平行な方向)に傾けても良く、これ以外の方向に傾けても良い。図18(e)には、塗布部108Fの変更例が示されているが、塗布部108Eも塗布部108Fと同様、外周側が高くなるように、反射平面部108Bに対して傾けられている。この場合、図14(b)の表示画面において、点像BFは点像Aよりも左側に位置付けられ、点像BEは点像Aよりも右側に位置付けられる。
【0104】
さらに、図12(b)に示す調整工程では、点像BE、BFが画面から消失したか否かの判定(S106)が、接着剤7A、7Bの固化工程(S105)の後に行われたが、これら工程の順序は、これに制限されない。たとえば、図19(a)のように、S106をS103とS104の間に移動させ、点像BE、BFが画面から消失していなければ(S106:NO)、不良と判定して(S107)、角度調整(S104)をスキップするようにしても良い。この場合、図19(b)のように、紫外線の照射(S105)をもスキップするようにしても良い。
【0105】
また、上記構成例では、BD、DVDおよびCDに対応可能な3波長互換タイプの光ピックアップ装置を例示したが、本発明が適用される光ピックアップ装置および対物レンズはこれに制限されない。たとえば、DVDおよびCDに対応可能な2波長互換タイプの光ピックアップ装置や、CDのみに対応可能な光ピックアップ装置にも本発明を適用可能であり、また、これら光ピックアップ装置に適用される対物レンズにも本発明を適用可能である。また、図10には、BD光、DVD光およびCD光が一つの対物レンズ108に入射するよう構成されたが、BD光が入射する対物レンズと、DVD光およびCD光が入射
する対物レンズが、それぞれ、ホルダー121に装着されても良い。この場合、これら2つの対物レンズについて、上記構成例の構成と、対物レンズの取付工程が適用されれば良い。
【0106】
また、本構成例は、本発明を光ピックアップ装置3の対物レンズ108に適用したものであったが、本発明の適用対象はこれに制限されない。たとえば、本発明を、図10(a)に示すコリメータレンズ105に適用することも可能であり、光ピックアップ装置に組み込まれるその他のレンズや、光ピックアップ装置以外の光学装置に組み込まれるレンズに適用することも可能である。さらに、対物レンズ108やその他のレンズが装着される被装着部の構成も上記実施例や具体的構成例に制限されるものではない。
【0107】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
5 対物レンズ
5A レンズ部
5B 反射平面部
5C 鍔部
5E 塗布部
5F 塗布部
6 レンズホルダー
7A 接着剤
7B 接着剤
101 レーザーダイオード(レーザー光源)
111 光検出器
108 対物レンズ
108A1 レンズ面(レンズ部)
108A2 レンズ面(レンズ部)
108B 反射平面部
108C 鍔部
108E 塗布部
108F 塗布部
108G 塗布部
121 ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を集光させるレンズ部と、
該レンズ部の周囲に設けられ、照射される平行光を反射させる反射平面部と、
レンズホルダーに接着剤にて接着される鍔部と、を備え、
前記鍔部に形成されている接着剤の塗布部が前記反射平面部に対して傾斜している、ことを特徴とするレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズにおいて、
前記鍔部の上面に、円の一部が除かれた輪郭形状を有するように、前記反射平面部が設けられ、前記円と前記輪郭形状との間の領域に、前記塗布部が設けられている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズにおいて、
前記塗布部が複数設けられている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズにおいて、
前記各塗布部の広さが、互いに略同じとなっている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズにおいて、
前記各塗布部の形状が、互いに略同じとなっている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れか一項に記載のレンズにおいて、
前記各塗布部が、前記レンズ部の光軸に対して互いに略対称な形状となっている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のレンズにおいて、
前記鍔部の上面に窪みが設けられ、この窪みに前記塗布部が設けられている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のレンズの取付方法であって、
オートコリメータ装置から放射される平行光を傾斜した前記塗布部に照射する工程と、
該塗布部から反射される前記平行光の有無によって接着剤の塗布状態の良否を判定する工程と、を含む、
ことを特徴とするレンズの取付方法。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズの取付方法において、
前記塗布部から反射される前記平行光の有無をオートコリメータ装置にて検出する工程をさらに含む、
ことを特徴とするレンズの取付方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載のレンズの取付方法において、
前記反射平面部に前記平行光を照射して前記レンズの傾きを調整する工程を、さらに含む、
ことを特徴とするレンズの取付方法。
【請求項11】
レーザー光を出射するレーザー光源と、
ディスクによって反射された前記レーザー光を受光する光検出器と、
請求項1ないし7の何れか一項に記載のレンズを含み、前記レーザー光源から出射された前記レーザー光を前記ディスクに導くとともに、前記ディスクによって反射された前記レーザー光を前記光検出器に導く光学系と、を備えた、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−20690(P2013−20690A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106521(P2012−106521)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】