説明

レンズとファイバーの接合方法

【課題】ファイバー径に比較して径のはるかに大きいガラスレンズとファイバーの溶着を可能にしたレンズ・ファイバー一体型接合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】ガラスレンズの表面のみをアーク溶接により、加熱溶融し、ファイバー先端を接触させることにより接合する方法において、接合すべきレンズの面の径をドラムレンズの径よりも小さくすることによりファイバー径に比較して径のはるかに大きいレンズとファイバーの溶着を可能にしたレンズ・ファイバー一体型接合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイバーコリメーターやレンズモジュールに使用されるレンズとファイバーの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、既に、光通信用石英シングルモードファイバーと多成分系ガラスを用いたガラスモールドレンズを、その軟化点の違いを利用して、アーク放電により、直接接合する技術が開発されている。この方法は接着剤が介在しない接合方法であるため、長期安定性と高いパワー耐性が得られる。また、この方法によれば、部品数や工数削減による低コスト化が期待されている。
(第92回微小光学研究会pp13(2004))
【0003】
ところが、この方法によれば、ファイバー径に比較して接合すべきレンズの径がそれほど大きくない場合は問題はないが、レンズ中心厚み>レンズ直径の樽型形状のレンズ(以降、ドラムレンズ)のようにファイバーの径に比較してはるかに大きな径を有する場合には種々の問題点を生ずる。
例えば、溶融時ドラムレンズの先端部分が表面張力により、球状化してしまうため、定位置で接合しようとすると、レンズ内部へのファイバーの送り込み量が多くなり、その結果接合位置の誤差が生じ易くなる。
さらに、ドラムレンズの径が大きいため、表面を溶かすには、その分その大きさに比例した熱量が必要となるが、そのような条件下では径の小さいファイバーの方が完全に溶けてしまうため、溶接自体が不可能になることもある。
また、たとえ溶接が可能となったとしても、冷却時溶融部分の収縮量が大きくなり、接合部に割れが発生して破損することもしばしばであった。
【発明の概要】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は第一にガラスレンズの表面のみをアーク溶接により加熱溶融し、ファイバー先端を接触させることにより接合する方法において、ファイバー径に比較して径のはるかに大きいガラスドラムレンズとファイバーの溶着を可能にしたドラムレンズ・ファイバー一体型接合体を製造する方法を提供することにある。
【0006】
そして、本発明が解決しようとする課題は第二に本発明の方法を実施するに当たり、接合すべきドラムレンズの面の大きさの最適な条件を提供することにある。
【0007】
そして、本発明が解決しようとする課題は第三に本発明の方法において最も適した接合すべきドラムレンズの面の上限を限定しこれを提供することにある。
【0008】
そして、本発明が解決しようとする課題は第四に本発明の方法を実施するに当たり、接合すべきドラムレンズの面の大きさを得るための最適な形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決する手段としては第一にドラムレンズ先端表面を加熱、溶融しファイバー先端を接触して接合する方法において、接合すべきドラムレンズの面の径をドラムレンズの径よりも小さくしたことを特徴とするドラムレンズとファイバーの接合方法を採用することにより、可能となる。
【0010】
この課題を解決する手段としては第二に接合すべきドラムレンズの面をほぼファイバー径に近い大きさにしたことを特徴とするドラムレンズとファイバーの接合方法により解決できる。
【0011】
この課題を解決する手段としては第三に接合すべきドラムレンズの面をファイバー径の2倍以下にすることにより、解決できる。
【0012】
この課題を解決する手段としては第四に接合すべきドラムレンズの面の径をドラムレンズの径よりも小さくする手段としてドラムレンズ先端を接合すべき面に向かってテーパー状に加工することを特徴とするドラムレンズとファイバーの接合方法を採用することにより解決できる。
接合すべきドラムレンズの面の径をドラムレンズの径よりも小さくする手段としては他にも段階状にドラムレンズの径を小さくする方法もあるが、テーパー状に加工するのが最も容易で加工歩留も高いことが期待できるのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、接着剤が介在しない接合方法であるため、長期安定性と高いパワー耐性が得られ、アーク放電を用いて溶融接合するため、部品数や工数削減による低コスト化が期待される。
【0014】
又、レンズのガラス成分を変えて屈折率を調節する必要がないので、容易に接合損失の少ないレンズ・ファイバー一体型接合体を製造することが可能となる。
【0015】
そしてドラムレンズのようにファイバーの径に比較してはるかに大きな径のレンズでも先端をテーパー状に加工してファイバー径に近付けることにより、石英ファイバーを損傷させることなく、また、接合部に割れを生じさせることもなく、必要な定位置に石英ファイバーとドラムレンズ溶着、接合することができる。
【実施例】
【0016】
径125μmの石英ファイバー1を径2000μmのドラムレンズ2に接合するに当たり、図2に示すようにドラムレンズ2の石英ファイバー1を接合すべき部分をテーパー状に成形加工した。テーパー状に加工したドラムレンズ2の先端部の径は750μmであった。こうして加工したドラムレンズ2と石英ファイバー1とを調芯後、アーク放電用電極3の間に配置し、アーク放電電極3より放電させ、ドラムレンズ表面を約800℃程度に5秒間加熱した後、石英ファイバー1の先端を加熱されたドラムレンズ2の接合部4に接触させて融着した後冷却した。
【0017】
こうして得られたレンズ・ファイバー接合体の斜視図を図1に示す。この様に石英ファイバー径に比較して15倍と大きな径を有するドラムレンズでも、先端をテーパー状に加工してファイバー径に近付けることにより、石英ファイバーを損傷させることなく、また、接合部に割れを生じさせることもなく、必要な定位置に石英ファイバーとドラムレンズ溶着、接合することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例で使用したドラムレンズの形状の斜視図である。
【図2】本発明の実施例で使用したアーク放電加熱溶融によるレンズとファイバーの接合方法を示す説明図(縦断面図)である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・石英ファイバー
2・・・ドラムレンズ
3・・・アーク放電用電極
4・・・接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスレンズ先端表面を加熱、溶融しファイバー先端を接触して接合する方法において、接合すべきレンズの面の径をレンズの径よりも小さくしたことを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項2】
請求項1において接合すべきレンズの面をほぼファイバー径に近い大きさにしたことを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項3】
請求項2において接合すべきレンズの面をファイバー径の2倍から20倍にしたことを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項4】
請求項1において接合すべきレンズの面の径をレンズの径よりも小さくする手段としてレンズ先端を接合すべき面に向かってテーパー状に加工することを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。

【図1】
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【図2】
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