説明

レンズ付きフイルムユニットおよびレンズ付きフイルムユニットの製造方法

【課題】レンズのピント位置、絞り開口、シャッタ速度などの撮影条件を1つの部品に持たせて、その部品1つだけを取替えることで、いくつもの品種のレンズ付きフイルムユニットを製造できるようにする。
【解決手段】レンズベース50にストッパー50a、絞り開口50b、レンズ受け部50cおよびレンズカバー係止爪50eを一体に形成する。ストッパー50aはシャッタ羽根40が開き方向に回動したときにシャッタ羽根に当接してその最大回動量を制限する。絞り開口50bは撮影レンズ60を通り写真フイルムに達する被写体光の光量を制限する。レンズ受け部50cは前記撮影レンズ60を光軸方向で位置決めする。レンズカバー係止爪50eは前記撮影レンズ60を収容するレンズ筒50dと、このレンズ筒50dの前端に装着され前記撮影レンズ60を前記レンズ受け部50cとの間に挟持するレンズカバー70を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未露光の写真フイルムが予め装填され、レンズベースで保持された撮影レンズと、この撮影レンズの背後で蹴飛ばし式に回動するシャッタ羽根とを備えたレンズ付きフイルムユニットおよびレンズ付きフイルムユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いつでもどこでも手軽に写真撮影を楽しむことができるレンズ付きフイルムユニットが提供されている。レンズ付きフイルムユニットの構造は単純で、基本的に撮影レンズ、シャッタ機構、及び未露光の写真フイルムから形成され、オートフォーカスやオート露出機構などは装備されていない。
【0003】
未露光の写真フイルムは、カートリッジから引き出され、本体ベースの一方側に設けたフイルム室に収納されている。カートリッジは他方側に設けたカートリッジ室に装填され、撮影する毎に撮影済みの写真フイルムを収納していく。カートリッジ室は、被写体側の前方がカートリッジの外周に相似する周面となった断面U字状の形状をしている。
【0004】
撮影レンズとしては、大量生産が可能なプラスチック製のレンズを1枚又は2枚で構成したものが知られており、例えば35mm幅のカートリッジ付き写真フイルム(135タイプ)や24mm幅のカートリッジ付き写真フイルム(IX240タイプ)を内蔵する場合、焦点距離が例えば35mm以下の準広角レンズが用いられる。この準広角レンズを用いることで、レンズ部の厚みを薄くすることができ、しかもコンパクトカメラと同じ焦点距離の撮影レンズと比べ、絞り開口を小さくし、Fナンバーを例えば10程度となるようにして、被写体深度を深くし、それによって、ピント調節機構を備えていなくても遠距離から近距離までの広い範囲において良好な画質を得ている。
【0005】
また、内蔵する写真フイルムは、ISO400のものが一般的であるが、ISO800やISO1600など感度の高いフイルムを採用しているものもある。
【0006】
また、フラッシュ装置を搭載することによって、暗い室内等でも撮影を行うことができるようにしたストロボ内蔵型もある。
【0007】
シャッタ機構は、ローコスト化を図るために、揺動自在な1枚のシャッタ羽根を持ち、この一端を蹴飛ばして露光開口を開閉する蹴飛ばしタイプのシャッタ機構が用いられている。
【0008】
このシャッタ機構は、シャッタ駆動レバー、シャッタ羽根、及び戻しバネなどで構成されている。シャッタ駆動レバーは、フイルム巻き上げ操作に応答して初期位置からチャージ位置にチャージバネの付勢に抗して往動し、またシャッタレリーズ操作に応答してチャージ位置から初期位置にチャージバネの開放力で復動する。
【0009】
シャッタ羽根は、一端に爪部が、また他端に開閉部がそれぞれ設けられており、シャッタ駆動レバーが復動するときにその一端によって爪部が蹴飛ばされ、爪部と開閉部との間に設けた軸着部を中心に回動して開閉部が露光開口を開く。露光開口を開放した後は、戻しバネの付勢により戻されて開閉部が露光開口を塞ぐ(下記特許文献1参照)。
【0010】
近年、レンズ付きフイルムユニットには、フイルムの高感度化に伴い、蹴飛ばしタイプのシャッタ機構を用いてストロボ撮影時にシャッタ速度をメカ的に切替えるタイプ(下記特許文献2参照)や、絞りを切替えるタイプ(下記特許文献3および4参照)が提案されている。
【0011】
また各種販売されているレンズ付きフイルムユニットの一つに、高感度の写真フイルムを装填するとともに、シャッタ速度や絞りを可変にし、室内や夜間の撮影での背景描写性を向上させたものがある。このレンズ付きフイルムユニットは、室内や夜間での撮影時に主要被写体にフラッシュをあてて十分な明るさを確保した上で、背景を写し込める仕様となっている。
【0012】
高感度の写真フイルムが装填されたモード切替え型のレンズ付きフイルムユニットとして、本出願人により製造販売されているレンズ付きフイルムユニット「Night&Day(商品名)」が知られている。このレンズ付きフイルムユニットは、日中屋外等の明るい場所での撮影に対応する日中撮影モード(ストロボ発光せず)と日中シンクロ撮影モード(ストロボ発光あり)と、夜景や暗い室内を背景にし、その背景を適当な濃度で再現しながら人物等の主要被写体をストロボ光で撮影する場合に対応する夜景シンクロ撮影モードの3つの撮影モードを備えている。(下記特許文献5および6参照)
【0013】
この他にも花などを接近して撮影することができるタイプのレンズ付きフイルムユニットも発売されている。
【0014】
このように多種多様のレンズ付きフイルムユニットが商品化されており、ユーザーは用途に応じたものを選択して写真撮影を楽しむことができる。
【0015】
一方、資源節約を図るとともに、産業廃棄物を削減するために、レンズ付きフイルムユニットのリサイクルが積極的に進められている。ユーザーが撮影済の写真フイルムを収納したレンズ付きフイルムユニットを現像取扱店に持っていくと、このレンズ付きフイルムユニットは更に現像所に集められ、ここで写真フイルムが取り出されてフイルム現像、プリント処理が施される。写真フイルムが取り出されたレンズ付きフイルムユニットはメーカーによって回収され、部品ごとに分解された後、再使用可能なものはそのまま製造工程に供給され、使用できないものは原材料としての利用が図られている。また、シャッタ機構等のようにユニット化されたものについては機能検査を行い、ユニット単位で再使用の可否が判定される。
【0016】
この時、前述のようにレンズ付きフイルムユニットの品種が多種多様になっているので、回収されたレンズ付きフイルムユニットの部品は、他の品種のレンズ付きフイルムユニットに再利用出来ず、リサイクルの効率が極めて悪い状態となっている。
【特許文献1】特開平06−258686号公報
【特許文献2】特開平11−326987号公報
【特許文献3】特開平11−180674号公報
【特許文献4】特開2001−162803号公報
【特許文献5】特開2002−139193号公報
【特許文献6】特開2002−242572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、ユーザーの要求は多様となり、レンズ付きフイルムユニットの品種も増える一方であるが、そのために使用する専用の部品も多く、1つの部品が少量多種となって製造コストを押し上げ、リサイクルにおいては、その再利用の効率を悪くしている。
【0018】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、レンズおよびレンズのジャストピント位置、被写体光の光量を制限する絞り開口、シャッタ速度など撮影条件の違いにベストに対応する条件を全て1つの部品に持たせて、その部品1つだけを取替えることで、いくつもの品種のレンズ付きフイルムユニットを製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ付きフイルムユニットは、撮影レンズを光軸方向で位置決めするレンズ受け部と、撮影レンズを通り前記写真フイルムに達する被写体光の光量を制限する絞り開口と、前記シャッタ羽根が開き方向に回動したときにシャッタ羽根に当接して、その最大回動量を制限するストッパーとを一体に形成し、レンズベース1つを取替えるだけで、いくつもの品種のレンズ付きフイルムユニットを製造できるようにしたことを特徴とする。
【0020】
また前記撮影レンズは、レンズベースに一体に形成されたレンズ筒に収容され、このレンズ筒の前端にレンズカバーを装着することによって、前記レンズ受け部との間に挟持されるようにすると良い。
【0021】
また高速シャッタを備えるレンズ付きフイルムユニットに組み込むレンズベースは、シャッタ羽根が当接する前記ストッパーの受け面が、撮影レンズの光軸と閉じ位置にあるシャッタ羽根の交点位置がシャッタ羽根の回動で移動するときの軌跡の延長線上に設けられ、かつシャッタ羽根がストッパーに当接した時の前記交点位置と前記シャッタ羽根の回動中心とを結ぶ線と平行な平面とすると良い。
【0022】
また本発明によるレンズ付きフイルムユニットの製造方法では、異なる撮影条件にそれぞれベストに対応させるため、複数のレンズベースを準備すると良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレンズ付きフイルムユニットおよびレンズ付きフイルムユニットの製造方法によれば、レンズ付きフイルムユニットを構成する多くの部品のうち、レンズベース1つを商品仕様の数だけ複数準備するだけで、多種多様のユーザーの要求仕様を満足させる多くのレンズ付きフイルムユニットを製造することが出来、多品種少量製造につきもののコストアップを押さえ、リサイクルにおいては、その再利用の効率アップを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明では数種類のレンズ付きフイルムユニットを製造するのに、レンズベースのみをそれぞれ専用に準備し、他の部品は全て共通で良い。レンズベース各部の設定条件を図21に表として示す。
【0025】
本発明によるレンズ付きフイルムユニットおよびレンズ付きフイルムユニットの製造方法について、以下説明を行う。図1に示すレンズ付きフイルムユニット2は、標準撮影用のレンズ付きフイルムユニットである。写真フイルムが装填され各種撮影機構が組み込まれたユニット本体3と、このユニット本体3の外周に巻き付けられるようにして貼付されるラベル4とからなる。ラベル4には、ユニット本体3の各部を露呈させるための開口が形成されている。
【0026】
ユニット本体3の前面には、撮影レンズ60,対物側ファインダ窓6,ストロボ発光部7,ストロボ操作部材8等が設けられている。ユニット本体3の上面には、シャッタボタン11,カウンター表示窓12,充電完了表示部材13等が設けられている。ユニット本体3の背面からは、撮影後のフイルム巻き上げに用いられる巻上げノブ14の一部が露呈されている。
【0027】
図2に分解して示すように、ユニット本体3は、メカユニット25,本体ベース16,ストロボユニット17,前カバー18,後カバー19,フイルムカートリッジ20から構成されている。フイルムカートリッジ20はIX240タイプのものであり、カートリッジ本体21とこのカートリッジ本体21内に収納される写真フイルム22とからなる。
【0028】
本体ベース16の前面中央部には、アパーチャー15が設けられている。写真フイルム22は、このアパーチャー15に対面する位置で停止された後に露光される。前記本体ベース16に設けられたカートリッジ室の上部には、巻上げノブ14が回転自在に取り付けられる。この巻上げノブ14の下面には駆動軸が一体に設けられており、この駆動軸はカートリッジ室に装填されたカートリッジ本体21のスプールの端部に係合する。1コマの撮影後に前記巻上げノブ14を回転操作すると、写真フイルム22の露光済みの部分がカートリッジ本体21内に巻き上げられる。
【0029】
メカユニット25の一部分解図を図3に示す。メカユニット25は前記本体ベース16に係止爪により係止されている。メカユニット25は基部となる暗箱を形成するメカベース26とその他の機構部品によって構成されている。メカベース26の上側面には、ファインダーユニット27、フイルム巻き止め機構28、カウンター機構29、シャッタチャージ機構30が組みつけられている。
【0030】
また、メカベース26の前面には、シャッタベース35が一体に形成されている。シャッタ羽根40は、メカベース26に設けられた軸37に、軸着穴45が回転可能に嵌合し、閉じ位置にある時は、開閉部43が、シャッタベース35に設けられた露光開口36を覆っている。
【0031】
前記巻上げノブ14によって前記露光済みのフイルム22が前記カートリッジ本体21に収納されるとき、この巻き上げ力によって前記シャッタチャージ機構30が作動し、シャッタ駆動レバー33がチャージ位置にセットされる。
【0032】
ここで前記シャッタボタン11を押し下げると、前記シャッタ駆動レバー33の係止が解除され、初期位置まで高速で戻る。この時、その移動上に前記シャッタ羽根40の爪部42が張り出しているため、爪部42は強い力で蹴飛ばされる。蹴飛ばされた前記シャッタ羽根40は、前記メカベース26に設けられた軸37を中心に時計方向に回動し、前記シャッタ羽根40の開閉部43は、絞り開口50bを開いた後、レンズベース50に設けられたストッパー50aに当接する。前記シャッタ羽根40は、ストッパー50aに当接した後、反転し、戻しバネ39により、前記絞り開口50bを閉じる初期位置に復帰する。
【0033】
図5はシャッタ羽根40の爪部42がシャッタレバー33によって蹴飛ばされ、開閉部43が回動し、開閉部43の縁がレンズベース50に設けられたストッパー50aに当接した瞬間の状態を示す。ここでは開閉部43が時計方向に回動し露光開口36を露呈している。
【0034】
この時、前記シャッタ羽根40が前記絞り開口50bを開いた後、前記ストッパー50aに当接するまでの距離によって、当接した時の前記シャッタ羽根40の受ける反発力の大きさが異なってくる。いま前記ストッパー50aは所定の位置に配置されており、シャッタ速度は1/140秒に設定されている。(図6および図12参照)
【0035】
図6はレンズベース50をシャッタ側から見たときを示し、A−A矢視断面を図11として、前記絞り開口50bとレンズ受け部50c、レンズ筒50d、レンズカバー係止爪50eを示す。また、ストッパー50a(B部円内)の拡大図を図12に示す。
【0036】
前記絞り開口50bはF10と標準的な明るさとなるように設定してあり、前記レンズ受け部50cは撮影レンズ60のジャストピント位置が3.5mになるように設定してある(図11参照)。
【0037】
撮影レンズ60は、レンズベース50に一体に形成されたレンズ筒50dに収容され、このレンズ筒50dの前端にレンズカバー70を装着することによって、前記レンズ受け部50cとの間に挟持される。レンズカバー70は、一体に形成された被係止部70aがレンズベース50に一体に形成されたレンズカバー係止爪50eと係合し、撮影レンズ60を固定、位置決めする。
【0038】
機種が異なるとレンズ受け部の位置やレンズ筒の長さが違ってくるが、レンズ筒の前端からレンズカバー係止爪までの寸法は、レンズベースが変わっても同じとされており、レンズカバー70は共通に使用可能となっている。
【0039】
次に、スポーツ撮影用のレンズ付きフイルムユニットについて説明する。ここで用いるレンズベース51を図7および図13、図14に示す。スポーツシーンなど動きのある被写体を撮影するのに適したものとするために、シャッタ速度は標準撮影用より速く、例えば1/200秒とし、同じレンズを使い被写体深度を深くするため、絞り値はF14として使用し、装填するフイルムはISO感度1600の高感度品を用いる。
【0040】
この時、前記シャッタ羽根40が絞り開口51bを開いた後、ストッパー51aに当接するまでの距離によって、当接した時の前記シャッタ羽根40の受ける反発力の大きさが異なってくるので、前記ストッパー51aは、前記シャッタ羽根40が絞り開口51bを開いた後、直ちに当接する位置に配置する。そのため、その反発力は大きく、前記シャッタ羽根40が初期位置に戻るまでの時間が短くなる。
【0041】
前記シャッタ羽根40が当接する前記ストッパー51aの受け面は、撮影レンズ61の光軸と閉じ位置にある前記シャッタ羽根40の交点位置が前記シャッタ羽根40の回動で移動するときの軌跡の延長線上に設けられ、かつ前記シャッタ羽根40がストッパー51aに当接した時の前記交点位置と前記シャッタ羽根40の回動中心とを結ぶ線と平行な平面となっており反発力が大きい。
【0042】
絞り開口51bはF14と標準撮影用より少し小さくしてあるので、シャッタ速度を速くする時には有利であり、前記レンズベース51に設けられたレンズ受け部51cの位置は、スポーツシーンの撮影を考えて標準撮影用よりやや深くし、前記撮影レンズ61のジャストピント位置を5.6mにしてある。
【0043】
前記撮影レンズ61は、前記レンズベース51に一体に形成されたレンズ筒51dに収容され、このレンズ筒51dの前端に前記レンズカバー70を装着することによって、前記レンズ受け部51cとの間に挟持される。前記レンズカバー70は、一体に形成された被係止部70aが前記レンズベース51に一体に形成されたレンズカバー係止爪51eに係合し前記撮影レンズ61を固定、位置決めする。
【0044】
前記レンズ受け部51cの位置や前記レンズ筒51dの長さが異なっても、前記レンズ筒51dの前端から前記レンズカバー係止爪51eまでの寸法は、前記標準撮影用のレンズベース50と同じとなっており、機種が変わっても前記レンズカバー70は共通に使用することができる。
【0045】
以上のように、このスポーツシーンの撮影に適したレンズ付きフイルムユニットが、標準撮影用と異なるところは、シャッタ速度とレンズのFナンバーとピントセット位置の3ヶ所だけであり、そのいずれも、レンズベース51に設けられたストッパー51a、絞り開口51bおよびレンズ受け部51cの寸法を変更しただけで、新たな部品の追加は何ひとつ使用していない。また標準撮影用に比べ、シャッタ速度が速くレンズが暗いため露光量が少なくなってしまうので、これを改善するためISO1600の高感度フイルムを装填することが良い。
【0046】
このように、レンズベースを取替えるだけで、標準撮影用とスポーツ撮影用を作り分けることが出来る。
【0047】
次に、比較的暗い室内の撮影に適した室内撮影用のレンズ付きフイルムユニットについて説明する。シャッタ羽根側から見たレンズベース52を図8に示し、A−A矢視断面を図15として、絞り開口52bとレンズ受け部52c、レンズ筒52d、レンズカバー係止爪52eを示し、ストッパー52a(B部円内)の拡大図を図16にて示した。
【0048】
室内の撮影を主目的としたものであるから、その撮影範囲は比較的近距離なので、レンズのピントセット位置は2m程度にする。そのためレンズ受け部52cは標準撮影用より少し前方に配置されている。
【0049】
ストッパー52aは標準撮影用の前記レンズベース50のストッパー50aより更に短く、シャッタ羽根40の当接する面は光軸より大きく離れている。これによってシャッタ羽根40の反転タイミングは遅くなり、露光時間が長くなる。また、絞り開口52bは、前記レンズベース50の絞り開口50bと比べ十分に大きくF4となっており、室内でのストロボ撮影で暗くなる背景をより明るく写すことができる。
【0050】
このようにレンズベースを専用のものにすることによって、室内撮影に最も適したものとすることが出来る。
【0051】
次に前述の室内撮影用とは反対に日中の屋外晴天時に使用するストロボのついていないものに用いるレンズベース53について説明する。シャッタ羽根側から見たレンズベース52を図9に示し、A−A矢視断面を図17として、絞り開口53bとレンズ受け部53c、レンズ筒53d、レンズカバー係止爪53eを示し、ストッパー53a(B部円内)の拡大図を図18にて示した。
【0052】
前記レンズベース53の前記絞り開口53bは前記スポーツ撮影用のレンズベース51の絞り開口51bと同じF14にして良好なピント範囲を広くし、前記レンズ受け部53cは前記スポーツ撮影用のレンズベース51のレンズ受け部51cと同じにして、屋外での撮影を考慮している。しかしシャッタ速度は特に速くする必要がないので、前記ストッパー53aは前記標準撮影用のレンズベース50のストッパー50aと同じになっている。
【0053】
次に花などを接近して写すことができる近接撮影用のレンズ付きフイルムユニットに使用するレンズベース54を図10に示す。A−A矢視断面を図19として、絞り開口54bとレンズ受け部54c、レンズ筒54d、レンズカバー係止爪54eを示し、ストッパー54a(B部円内)の拡大図を図20にて示す。
【0054】
前記レンズベース54の絞り開口54bは標準撮影用のレンズベース50の絞り開口50bと同じF10とし、レンズ受け部54cは被写体に接近して撮影するため、他のものと比べ大きく前に配置されている。これはレンズのジャストピント位置を1mより近い例えば70cmにセットするためである。ストッパー54aは前記室内撮影用のレンズベース52のストッパー52aと同じ位置になっている。
【0055】
このように本発明のレンズ付きフイルムユニットおよびレンズ付きフイルムユニットの製造方法によれば、レンズ付きフイルムユニットを構成する多くの部品のうち、レンズベース1つを商品仕様の数だけ複数準備するだけで、多種多様のユーザーの要求を満足させる多くのレンズ付きフイルムユニットを製造することが出来、多品種少量製造につきもののコストアップを押さえ、リサイクルにおいては、その再利用の効率アップを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のレンズ付きフイルムユニットの概観を示す斜視図である。
【図2】本体ユニットの分解を示す斜視図である。
【図3】露光ユニットの一部分解を示す斜視図である。
【図4】シャッタ羽根の閉じた状態を前面から見た図である。
【図5】シャッタ羽根の開いた状態を前面から見た図である。
【図6】標準撮影用のレンズベースをシャッタ羽根側から見た図でストッパーと絞り開口を示す図である。
【図7】スポーツ撮影用のレンズベースをシャッタ羽根側から見た図でストッパーと絞り開口を示す図である。
【図8】室内撮影用のレンズベースをシャッタ羽根側から見た図でストッパーと絞り開口を示す図である。
【図9】屋外晴天撮影用のレンズベースをシャッタ羽根側から見た図でストッパーと絞り開口を示す図である。
【図10】近接撮影用のレンズベースをシャッタ羽根側から見た図でストッパーと絞り開口を示す図である。
【図11】図6に示す標準撮影用のレンズベースのA−A矢視断面図である。
【図12】図6に示す標準撮影用のレンズベースのストッパー部分(B部円内)の拡大図である。
【図13】図7に示すスポーツ撮影用のレンズベースのA−A矢視断面図である。
【図14】図7に示すスポーツ撮影用のレンズベースのストッパー部分(B部円内)の拡大図である。
【図15】図8に示す室内撮影用のレンズベースのA−A矢視断面図である。
【図16】図8に示す室内撮影用のレンズベースのストッパー部分(B部円内)の拡大図である。
【図17】図9に示す屋外晴天撮影用のレンズベースのA−A矢視断面図である。
【図18】図9に示す屋外晴天撮影用のレンズベースのストッパー部分(B部円内)の拡大図である。
【図19】図10に示す近接撮影用のレンズベースのA−A矢視断面図である。
【図20】図10に示す近接撮影用のレンズベースのストッパー部分(B部円内)の拡大図である。
【図21】レンズベース各部の設定条件を品種別に示した表である。
【符号の説明】
【0057】
26 メカベース
40 シャッタ羽根
50,51,52,53,54 レンズベース
50a,51a,52a,53a,54a ストッパー
50b,51b,52b,53b,54b 絞り開口
50c,51c,52c,53c,54c レンズ受け部
50d,51d,52d,53d,54d レンズ筒
50e,51e,52e,53e,54e レンズカバー係止爪
60,61,62,63,64 撮影レンズ
70 レンズカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未露光の写真フイルムが予め装填され、レンズベースで保持された撮影レンズと、この撮影レンズの背後で蹴飛ばし式に回動するシャッタ羽根とを備えたレンズ付きフイルムユニットにおいて、
前記レンズベースに、撮影レンズを光軸方向で位置決めするレンズ受け部と、撮影レンズを通り前記写真フイルムに達する被写体光の光量を制限する絞り開口と、前記シャッタ羽根が開き方向に回動したときにシャッタ羽根に当接して、その最大回動量を制限するストッパーとを一体に形成したことを特徴とするレンズ付きフイルムユニット。
【請求項2】
前記撮影レンズは、レンズベースに一体に形成されたレンズ筒に収容され、このレンズ筒の前端にレンズカバーを装着することによって、前記レンズ受け部との間に挟持されることを特徴とする請求項1記載のレンズ付きフイルムユニット。
【請求項3】
シャッタ羽根が当接する前記ストッパーの受け面は、撮影レンズの光軸と閉じ位置にあるシャッタ羽根の交点位置がシャッタ羽根の回動で移動するときの軌跡の延長線上に設けられ、かつシャッタ羽根がストッパーに当接した時の前記交点位置と前記シャッタ羽根の回動中心とを結ぶ線と平行な平面であることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ付きフイルムユニット。
【請求項4】
未露光の写真フイルムが予め装填され、レンズベースで保持された撮影レンズと、この撮影レンズの背後で蹴飛ばし式に回動するシャッタ羽根とを備えたレンズ付きフイルムユニットの製造方法において、
前記レンズベースには、撮影レンズを光軸方向で位置決めするレンズ受け部と、撮影レンズを通り前記写真フイルムに達する被写体光の光量を制限する絞り開口と、前記シャッタ羽根が開き方向に回動したときにシャッタ羽根に当接して、その最大回動量を制限するストッパーとが一体に形成され、
これらレンズ受け部と、絞り開口と、ストッパーのそれぞれの位置寸法が異なる組み合わせの前記レンズベースを複数準備し、前記レンズベースのみを替えることによって、撮影条件の異なる複数の品種の作り分けを可能としたレンズ付きフイルムユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−256516(P2007−256516A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79496(P2006−79496)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】