説明

レンズ保持装置

【課題】この発明は、均一な金属被膜の成膜を実現したうえで、簡便にして容易なレンズ着脱操作を実現し得るようにすることにある。
【解決手段】保持部本体10の第1の保持盤11の挿通穴111に挿入した支柱部材22を離脱させた状態で、第1及び第2のレンズ支持部材14,15間へのレンズ16の着脱を実行し、装着したレンズ16に成膜を施す際には、上記支柱部材22を保持部本体10の第1の保持盤11の挿通穴111に挿入して、支柱13及び支柱部材22をレンズ16の周囲に等間隔に配した状態で、レンズ16の成膜処理を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレンズの周壁に金属被膜を成膜する金属被膜成膜装置に係り、特にそのレンズの周壁に金属被膜を成膜可能に保持するレンズ保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸着物、例えばレンズに金属被膜を成膜する薄膜蒸着装置としては、真空蒸着槽内に蒸着源を配し、この蒸着源に対応して球状ドームを、モータ歯車機構を介して回転自在に収容配置するように構成したものがある(例えば,特許文献1参照。)。この球状ドームには、ワーク保持機構が上記蒸着源に対応して回転自在に設けられる。そして、このワーク保持機構には、被蒸着物であるレンズが、その被蒸着面を上記蒸着源に向けて装着される。
【0003】
上記構成により、真空蒸着槽内の球状ドームが、モータ歯車機構を介して回転駆動されると、それに連動してワーク保持機構が回転されて、該ワーク保持機構に装着された被蒸着物の被蒸着面が、蒸着源に対向された状態で回転され、その被蒸着物の被蒸着面に対して金属被膜である蒸着薄膜が成膜される。
【特許文献1】特開平7−138756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ワーク保持機構を備えた薄膜蒸着装置では、レンズを、真空蒸着槽内の球状ドームのワーク保持機構に装着して成膜処理を実行し、成膜処理後、真空蒸着槽内の球状ドームのワーク保持機構より離脱させて取出さなければならないために、その着脱作業が非常に面倒であるという問題を有する。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、均一な金属被膜の成膜を実現し得、且つ、簡便にして容易なレンズ着脱操作を実現し得るようにしたレンズ保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、一対の支柱を介して一体的に連結されて対向配置される一対の保持盤と、前記一対の保持盤の一方に支持される第1のレンズ支持部材と、前記一対の保持盤の他方に前記第1のレンズ支持部材に対向して軸方向に移動調整自在に支持され、前記第1のレンズ支持部材と協働して金属被膜の成膜されるレンズを挟持して該第1のレンズ支持部材と一体的に回転駆動される第2のレンズ支持部材と、前記一対の保持盤の一方に着脱自在に設けられ、着状態で、前記レンズを挟んで前記支柱に対して等間隔に並設される少なくとも2本の支柱部材とを備えてレンズ保持装置を構成した。
【0007】
上記構成によれば、第1及び第2のレンズ支持部材間にレンズを装着する場合には、支柱部材を一方の保持盤から離脱させた状態で、第2のレンズ支持部材を移動調整して行い、成膜時には、支柱部材を一方の保持盤に装着して一対の支柱に等間隔に配して成膜処理が行われる。
【0008】
これにより、容易なレンズ着脱操作を実現したうえで、成膜時においてレンズへの均一な成膜処理が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、均一な金属被膜の成膜を実現し得、且つ、簡便にして容易なレンズ着脱操作を実現し得るようにしたレンズ保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、この発明の一実施の形態に係るレンズ保持装置を示すもので、保持部本体10は、対を構成する例えば円盤状の第1及び第2の保持盤11,12が、例えば一対の支柱を13,13介して所定の間隔に対向配置される。この一対の支柱13,13は、第1及び第2の保持盤11,12の周囲部に、略180度の角度間隔を有して並設される(図2参照)。
【0012】
第1の保持盤11には、その略中心部に第1のレンズ支持部材14が第2の保持盤12に向かって延出される。そして、第2の保持盤12には、第2のレンズ支持部材15が上記第1のレンズ支持部材14に対向して接離方向に移動自在に配される。
【0013】
この第2のレンズ支持部材15は、上記第1の保持盤11の第1のレンズ支持部材14と協働して積重された複数枚のレンズ16の両端の非成膜面を、非成膜面保護用のカバー部材17で挟んだ状態で成膜可能に挟持する。
【0014】
この第2のレンズ支持部材15には、その中間部に螺子部151が設けられる。そして、この螺子部151には、ナット部材18が螺合調整自在に螺着される。このナット部材18には、ばね係着部181が設けられ、このばね係着部181には、ばね部材19の一端部が係着される。
【0015】
このばね部材19は、その他端部が上記第2の保持盤12に、ナット部材18に対して第1のレンズ支持部材14方向の付勢力を付与するように係着される。これにより、ばね部材19は、ナット部材18の螺子部151に対する螺合位置に応じて第2のレンズ支持部材15に対して第1のレンズ支持部材14方向の付勢力を付勢し、これら第1及び第2のレンズ支持部材14,15間に装着された複数枚のレンズ16に対して所望の付勢力を付与する。
【0016】
上記第2のレンズ支持部材15は、その他端部が上記第2の保持盤12より下方方向に延出されて,その中間部に被駆動部を構成する円盤状の回転力伝達部20が設けられる。そして、この回転力伝達部20には、被駆動部を構成する複数の係合ピン21が放射状に突設される(図3参照)。
【0017】
この回転力伝達部20の係合ピン21は、図示しない金属被膜成膜装置内に配される回転駆動装置に選択的に係合されて該回転駆動装置(図示せず)を介して回転力が伝達されて第2のレンズ支持部材15を回転させる。すると、この第2のレンズ支持部材15は、第1のレンズ支持部材14との間にレンズ16を挟持した状態で、第1及び第2の保持盤11,12と共に、積重された複数枚のレンズ16の,例えば側壁の成膜面に金属被膜を均一的に成膜可能に回転駆動させる。
【0018】
さらに、上記第1の保持盤11には、一対の支柱13,13間に、例えば60度の角度間隔を有して挿入穴111が計4個形成され(図2参照)、この挿入穴111には、成膜用支柱部材22が着脱自在に挿入される。この支柱部材22は、外径形状が上記支柱13と略同形状に形成され、上記レンズ16への金属被膜の成膜時には、上記第1の保持盤11の挿入穴111に挿入されて、その中間部が上記第1及び第2のレンズ支持部材14,15で挟持したレンズ16の周壁の成膜面に対向された状態で、上記支柱13間に等間隔に配される。
【0019】
この支柱部材22は、上記第1及び第2のレンズ支持部材14,15間へのレンズ16の着脱操作時には、第1の保持盤11の挿入穴111から抜脱され、保持部本体10から離脱される。これにより、保持部本体10の第1及び第2のレンズ支持部材14,15間へのレンズ着脱操作の簡便化が図れる。
【0020】
上記構成において、保持部本体10には、その支柱部材22を第1の保持盤11の挿入穴11から離脱させた状態で、第2のレンズ支持部材15の螺子部151に螺合されるナット部材18を緩めてばね部材19の付勢力に抗して該第2のレンズ部材15を押し下げて第1のレンズ部材14から離間させる。
【0021】
この状態で、保持部本体10には、その第1及び第2のレンズ支持部材14,15間に、カバー部材17で挟装したレンズ16を挟んでナット部材18を締付けて,該レンズ16を相互間に挟持させる。その後、保持部本体10には、その第1の保持盤11の挿入穴111に支柱部材22が挿入されて支柱13に対して等間隔に組付けられる。そして、この保持部本体10は、例えば上記金属被膜成膜装置(図示せず)のストッカー室に保管される。このストッカー室には、例えば扉を介して仕込み・取出し室が連通され、この仕込み・取出し室には、扉を介して成膜室が連設される。
【0022】
上記保持本体10に装着されたレンズ16に金属被膜を成膜する場合には、上記ストッカー室と仕込み・取出し室との間の扉を閉じた状態で、それぞれを大気開放し、大気開放状態で、扉を開いて、上記移送機構(図示せず)を用いて保持部本体10を、ストッカー室から仕込み・取出し室に移送させ、移送後、該仕込み・取出し室の扉を閉める。続いて、仕込み・取出し室を真空引きし、真空引き完了状態で、成膜室の扉を開けて保持部本体10を該成膜室に移送させ、保持部本体10に装着されたレンズ16の周壁の成膜面に金属被膜の成膜を実行する。
【0023】
ここで、保持部本体10は、第2のレンズ支持部材15の回転力伝達部20の係合ピン21に対して上述したように回転駆動装置(図示せず)からの回転力が付与されて回転駆動されると、レンズ16の周囲に等間隔で並設される支柱13及び支柱部材22の作用により、レンズ16の周壁の成膜面に均一な金属被膜が成膜される。
【0024】
このように、上記レンズ保持装置は、保持部本体10の第1の保持盤11の挿通穴111に挿入した支柱部材22を離脱させた状態で、第1及び第2のレンズ支持部材14,15間へのレンズ16の着脱を実行し、装着したレンズ16に成膜を施す際には、上記支柱部材22を保持部本体10の第1の保持盤11の挿通穴111に挿入して、支柱13及び支柱部材22をレンズ16の周囲に等間隔に配した状態で、レンズ16の成膜処理を行うように構成した。
【0025】
これによれば、保持部本体10への容易なレンズ着脱操作を実現したうえで、金属被膜の成膜時において、支柱13及び支柱部材22の作用によりレンズ16への均一な成膜処理を確実に行うことが可能となる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、積重配置した複数枚のレンズ16を、カバー部材17で挟装した状態で、第1及び第2のレンズ支持部材14,15で挟持して保持するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、カバー部材17を用いることなく、1枚のレンズ16を挟持して成膜するように構成したり、あるいはレンズ16を挟持して成膜するように構成したりすることも可能である。
【0027】
また、上記実施の形態では、保持部本体10の第1の保持盤11に対して4本の支柱部材22を支柱13の間に等間隔に配するように構成した場合で説明したが、この本数に限ることなく、2本以上を配することで、同様の効果が期待される。
【0028】
さらに、上記実施の形態では、保持部本体10を円盤状の第1及び第2の保持盤11,12を用いて構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、例えば多角形形状等の各種形状の保持盤を用いて構成することも可能である。
【0029】
また、上記実施の形態では、第1のレンズ支持部材14を第1の保持盤11に固定配置し、第2のレンズ支持部材15を第2の保持盤12に移動調整自在に配するように構成した場合で説明した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、第1のレンズ支持部材14を第1の保持盤11に対して移動調整自在に配し、第2のレンズ支持部材15を第2の保持盤12に対して固定配置するように構成することも可能で,略同様の効果が期待される。
【0030】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0031】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0032】
また、この発明は、上記実施の形態によれば、その他、次のような構成を得ることもできる。
【0033】
(付記1)
支柱を介して対向配置される一対の保持盤と、
前記一対の保持盤の一方に一体的に支持された第1のレンズ支持部材と、
前記一対の保持盤の他方に移動自在に設けられ、前記第1のレンズ支持部材と協働して金属被膜の成膜されるレンズを挟持する第2のレンズ支持部材と、
前記一対の保持盤の一方に着脱自在に設けられる前記支柱と略同一外径の支持部材と、
を具備すること特徴とするレンズ保持装置。
【0034】
(付記2)
前記第2のレンズ支持部材は、前記第1のレンズ支持部材方向に付勢されることを特徴とする付記1記載のレンズ保持装置。
【0035】
(付記3)
前記第1及び第2のレンズ支持部材に挟持されるレンズは、複数枚であることを特徴とする付記1又は2記載のレンズ保持装置。
【0036】
(付記4)
前記レンズは、非成膜面がカバー部材で覆われた状態で、前記第1及び第2のレンズ支持部材との間に挟持されることを特徴とする付記1乃至3のいずれか記載のレンズ保持装置。
【0037】
(付記5)
前記第2のレンズ支持部材は、回転力が付与され、前記第1のレンズ部材との間に前記レンズを挟持した状態で、該第1のレンズ部材と一体的に回転されることを特徴とする付記1乃至4のいずれか記載のレンズ保持装置。
【0038】
(付記6)
前記一対の保持盤は,略円盤状に形成されることを特徴とする付記1乃至5のいずれか記載のレンズ保持装置。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施の形態に係るレンズ保持装置を側面から見た状態を示した平面図である。
【図2】図1の第1の保持盤の上面側の配置構成を示した平面図である。
【図3】図1の第2の保持盤の下面側の配置構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…保持部本体、11…第1の保持盤、111…挿通穴、12…第2の保持盤、13…支柱、14…第1のレンズ支持部材、15…第2のレンズ支持部材、151…螺子部、16…レンズ、17…カバー部材、18…ナット部材、181…ばね係着部、19…ばね部材、20…回転力伝達部、21…係合ピン、22…支柱部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支柱を介して一体的に連結されて対向配置される一対の保持盤と、
前記一対の保持盤の一方に支持される第1のレンズ支持部材と、
前記一対の保持盤の他方に前記第1のレンズ支持部材に対向して軸方向に移動調整自在に支持され、前記第1のレンズ支持部材と協働して金属被膜の成膜されるレンズを挟持して該第1のレンズ支持部材と一体的に回転駆動される第2のレンズ支持部材と、
前記一対の保持盤の一方に着脱自在に設けられ、着状態で、前記レンズを挟んで前記支柱に対して等間隔に並設される少なくとも2本の支柱部材と、
を具備することを特徴とするレンズ保持装置。
【請求項2】
前記第2のレンズ支持部には、回転力が伝達される被駆動部が設けられることを特徴とする請求項1記載のレンズ保持装置。
【請求項3】
前記第2のレンズ支持部材を、前記第1のレンズ支持部材方向に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ保持装置。
【請求項4】
前記レンズは、複数枚が積重されて前記第1及び第2のレンズ支持部材に挟持されて保持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のレンズ保持装置。
【請求項5】
前記レンズは、非成膜面を覆うカバー部材を介して前記第1及び第2のレンズ支持部材に挟持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のレンズ保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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