レンズ光学素子及び表示装置
【課題】レンズ面全体が均一に明るく見える。
【解決手段】柱状部の頭頂部分に凸面14Sが形成されたオンチップレンズ14と、発光面12Sとを備え、発光面12Sが、オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置されているレンズ光学素子である。発光面から凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部の太さD(=2r)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係が、H < 3r/(n2-1)1/2を満足するように設定されている。
【解決手段】柱状部の頭頂部分に凸面14Sが形成されたオンチップレンズ14と、発光面12Sとを備え、発光面12Sが、オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置されているレンズ光学素子である。発光面から凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部の太さD(=2r)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係が、H < 3r/(n2-1)1/2を満足するように設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光面からの射出光の広がりを制御するレンズを備え、レンズ面全体が均一に明るく見えるように形成されたレンズ光学素子、及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を用いた照明装置が、低消費電力で長寿命な面型照明装置を容易に実現可能という特長を備えていることから広く様々な分野で用いられるようになった。このような照明装置で用いられるLEDは、半導体基板面から光が放射される面型発光デバイスであり、その光の放射パターン(以後、配光パターンということもある)は、cosθに比例する(ランバートの余弦則に従う)強度分布をもつ、いわゆるランバート面と近似できることが知られている。ここで、θは、発光面に対する垂線(光軸)に対して光線のなす角度である。
【0003】
面型発光デバイスからの放射光の配光パターンがこのような特性をもっていることから、発光面に垂直な光軸から60度傾いた方向へ放射される光強度は、光軸に対して放射される光強度の概略50%程度であり、LED光源からの放射光は、半球面内に極めて広く分布することが分かる。
【0004】
このような広角な配光特性は、天井に取り付けるタイプの照明器具であるシーリングライト(ceiling light)等の用途には好適であるが、プロジェクタ用光源、スポットライト、表示装置などの用途においては、不必要な領域まで光が放射され、その結果として本来必要とされる領域への放射強度が十分でないという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、従来のLED装置は、一般的に、リードマウントのカップ部分にLEDチップを実装し、このLEDチップとリードマウントの一部を透光性樹脂からなる封止部材によって被覆し、この封止部材の頭頂部を砲弾型に形成して凸レンズ機能を持たせる構造とされている。このような構造とすることで、LEDチップからの放射光の拡散を制御している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、砲弾型樹脂封止構造をもつLEDデバイスを2次元状に複数配列することで、表示装置を構成した例も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの表示装置の作製には、複数のLEDデバイスを順次基板上に実装するための手間がかかる。また、LEDデバイスの寸法が数mm程度と大きいため、狭いピッチで高精細な表示装置を構成することはできない。そのため、特許文献2に開示されたLED表示器及びこれに類するLED表示装置は、実用上屋外に設置される巨大な表示装置といった分野にその用途が限定されている。
【0007】
このような実用上の課題を解決するために、半導体プロセス技術を応用し、同一基板上に設けた光源アレイに対して、砲弾型LEDデバイスの封止部材に類似するマイクロレンズアレイ(オンチップレンズのアレイ)を製造する技術が開示されている(特許文献3参照)。この技術を使用することで、レンズアレイを一括して形成することが可能になるばかりでなく、従来数mm程度に制限されていたレンズの配置間隔を、数10μmレベルまで一挙に縮小することが可能となった。これによって、広く実用化が実現している液晶表示装置と同程度に高精細で、かつ、液晶表示装置より輝度が高い表示装置の可能性が開けてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2927279号公報
【特許文献2】特開2000−114605号公報
【特許文献3】特開2011−112737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、LEDチップ等の発光面にオンチップレンズが配置されたレンズ光学素子を画素として1次元あるいは2次元に配列して構成した表示装置において、個々の画素の見え方、すなわち表示装置の画質につき検討すると、以下の問題点が明らかとなる。
【0010】
LEDチップ等の発光面から射出した光線は、オンチップレンズの頭頂面(凸面)で屈折することで進行方向が変化し、各光源の配光角が制御される。このような構成の表示装置では、発光面が拡大されてオンチップレンズの頭頂面が全面にわたって明るく輝くように視認されるのが理想である。すなわち、表示装置の各画素が、画素の中心部に限定されて輝くのではなく、画素と等しい面積で明るく輝くようにオンチップレンズを形成することが好ましい。
【0011】
しかしながら、オンチップレンズを、その配光特性にのみ注目して設計すると、ひとつの画素に相当するレンズ全体(ひとつの画素全体)が明るく光って見える場合も、あるいは各オンチップレンズの中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える場合も起こり得る。すなわち、オンチップレンズ面における近視野像の強度分布も、表示装置が表示する画像の画質に大きく影響する。したがって、オンチップレンズを発光面ごとに配置した構成の表示装置を作製するに当っては、配光特性のみならず、各オンチップレンズのレンズ面における近視野像の強度分布も同時に最適化することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本願の発明者は、オンチップレンズによって得られる近視野像と、配光特性が反映される遠視野像を評価することによって、レンズ面全体が一定の強度分布で視認されるためのオンチップレンズの形状の検討を行った。
【0013】
その結果、配光特性を与える遠視野像及びオンチップレンズのレンズ面の明るさ分布を与える近視野像は、発光面からレンズ面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、オンチップレンズの柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率とを指定することで確定されることを見出した。そして、レンズ面全体が均一に明るく見えるようにするための、これらの値に対する設定条件を確定させることができた。
【0014】
従って、この発明の目的は、レンズ面全体が均一に明るく見えるように形成されたレンズ光学素子、及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置を提供することにある。
【0015】
上述の目的を達成するため、この発明の要旨によれば、以下の構成のレンズ光学素子及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置が提供される。
【0016】
この発明のレンズ光学素子は、柱状部の頭頂部分に凸面が形成されたオンチップレンズと、オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置されて構成される発光面とを備えるレンズ光学素子である。
【0017】
そして、発光面から凸面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、発光面が発光すると、オンチップレンズの凸面が均一の明るさで視認される状態となるように設定されている。
【0018】
好ましくは、オンチップレンズの柱状部が円柱であって、レンズ高Hと、柱状部の太さD(=2r、ただしrは柱状部の半径)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nが、
H < 3r/(n2-1)1/2 (1)
を満たすのがよい。
【0019】
また、オンチップレンズの柱状部が正多角柱である場合は、オンチップレンズの柱状部の太さDとして、正多角柱の底面の正多角形に内接する円の半径r1と外接する円の半径r2の平均値を対応させる。すなわち、式(1)におけるrに対して(r1+r2)/2を対応させる。したがって、オンチップレンズの柱状部が正多角柱である場合は、
H < 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
を満たす条件に設定する。
【0020】
この発明の表示装置は、上述したレンズ光学素子が、1次元状あるいは2次元状に配列されて構成され、オンチップレンズの凸面の頂点が等間隔に配列されている。
【発明の効果】
【0021】
この発明のレンズ光学素子によれば、レンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、オンチップレンズの凸面が均一の明るさで、発光面からの出力光が視認される状態となるように設定されているので、LEDが発光した場合、オンチップレンズの凸面が均一に明るく見える。
【0022】
後述するように、この発明の発明者は、LEDが発光した場合にオンチップレンズの凸面が均一に明るく見えるための条件は、レンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率によって確定されることを光線追跡シミュレーションによって確かめている。具体的には、上述の式(1)あるいは式(2)を満足させればこの条件が満たされることを確かめている。
【0023】
LEDが発光した場合にオンチップレンズの凸面が均一に明るく見えるための条件を満たすこの発明のレンズ光学素子を、画素として1次元状あるいは2次元状に等間隔で配列されて構成すれば、画素の一つ一つが鮮明に明るく輝く優れた表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の表示装置及びレンズ光学素子の概略的構成を示す図である。
【図2】レンズ光学素子のオンチップレンズの上方から凸面に着目した場合に視認される凸面の明るさのパターンの概略を示す図であり、(A)は上から見たオンチップレンズの外形寸法内全体が明るく光って見える様子を示す図であり、(B)は中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える様子を示す図である。
【図3】この発明の実施形態のレンズ光学素子を、この装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して示す概略的断面構成図である。
【図4】柱状部が円柱であるオンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す図である。
【図5】発光面から出射しオンチップレンズから出射する3つのグループに属する光線の説明に供する図である。
【図6】オンチップレンズの柱状部が円柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を示す図である。
【図7】オンチップレンズの柱状部が円柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた遠視野像を示す図である。
【図8】レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件についての説明に供する図である。
【図9】柱状部が四角柱であるオンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す図である。
【図10】レンズ光学素子の近視野像を示す図である。
【図11】レンズ光学素子の遠視野像を示す図である。
【図12】オンチップレンズの柱状部が正四角柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を示す図である。
【図13】オンチップレンズの柱状部が正四角柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた遠視野像を示す図である。
【図14】オンチップレンズの柱状部を構成する正四角柱を光軸に直交する面で切断した正方形レンズ断面と、この正方形レンズ断面の内接円の半径及び外接円の半径を示す図である。
【図15】オンチップレンズの柱状部を構成する正多角柱を光軸に直交する面で切断した正多角形レンズ断面と、この正多角形レンズ断面の内接円の半径及び外接円の半径を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図15を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、図3、図5、及び図8は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。図1及び図2、図3、図5及び図8において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下の説明において、特定の条件等を用いることがあるが、これらの条件等は好適例の一つに過ぎずこの発明はこれらに限定されない。
【0026】
<従来の表示装置>
この発明のレンズ光学素子及び表示装置の特徴の理解に資するために、上述の特許文献3に開示されている表示装置の概略を、図1及び図2を参照して説明する。なお、発光面はLEDチップの光出力面である。この発明のレンズ光学素子及び表示装置の構成要素である発光面は、LEDチップ、あるいは有機EL(organic electroluminescence)チップ等の光出力面であって、この光出力面がオンチップレンズの凸面を照射するのに十分な配光特性を持つ発光面であれば利用できる。すなわち、液晶チップ等の非発光チップの光出力面であっても、この光出力面がオンチップレンズの凸面を照射するのに十分な配光特性を持っていれば同様に利用できる。
【0027】
図1に示すように、特許文献3に開示されている表示装置は、共通基板10にレンズ光学素子20が等間隔に配置されて構成される。レンズ光学素子20は、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されたオンチップレンズ14と、LEDチップ12とを備える。LEDチップ12は、オンチップレンズ14の柱状部14Gの底部に被覆された状態に配置されて構成されている。
【0028】
LEDチップ12の発光面から出射した光線は、オンチップレンズ14の凸面14Sで屈折し進行方向が変化するので、凸面14Sの曲率半径を適宜設定することによって光線の配光角度が制御される。このような構造のレンズ光学素子20の凸面14Sに着目すると、上から見たオンチップレンズ14の外形内全体に、この外形寸法よりも小さいLEDチップ12の発光面が拡大されて、表示装置の画素として明るく輝いて視認されるのが理想である。
【0029】
図2(A)及び(B)を参照して、図1に示す表示装置を構成するレンズ光学素子20のオンチップレンズ14の上方から凸面14Sに着目した場合に、一般に凸面14Sがどのように輝いて視認されるかにつき説明する。図2(A)及び(B)は、柱状部14Gが円柱である場合、上から見たオンチップレンズ14の外形寸法内の明るさのパターンを示している。
【0030】
オンチップレンズ14を、その配光特性にのみ注目して設計すると、図2(A)に示すように、上から見たオンチップレンズ14のレンズ面の全体がほぼ均一に明るく光って見える場合がある。また、図2(B)に示すように、オンチップレンズ14の中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える場合もある。
【0031】
柱状部14Gが円柱でなく多角柱である場合も、図示は省略するが、同様にレンズ面がほぼ均一に光って見える場合も、明るさが偏って見える場合もある。明るさが偏って見える場合は、芯があるように見えるのではなく、光軸を囲むように明るい部分が略環状に分布して見える。
【0032】
したがって、上述したように、凸面14Sが均一に明るく見えるようにするためには、配光特性のみならず凸面14Sにおける近視野像も考慮してオンチップレンズ14の形状を決定する必要がある。
【0033】
<レンズ光学素子>
図3を参照して、この発明の実施形態のレンズ光学素子の構成について説明する。図3は、この発明のレンズ光学素子をこの装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して概略的に示してある。
【0034】
レンズ光学素子では、共通基板10にLEDチップ12が配置されており、このLEDチップ12がオンチップレンズ14の底部に配置されている。LEDチップ12は、発光面12Sを備えている。発光面12Sがオンチップレンズ14の柱状部14Gの底部に位置するように、オンチップレンズ14の底部に被覆される形状でLEDチップ12が収納されて配置されている。
【0035】
≪オンチップレンズの柱状部が円柱である場合≫
オンチップレンズ14の柱状部14Gが円柱であって、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されている。発光面12Sから凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部14Gの太さD(=2r、ただしrは柱状部14Gの半径)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとが、発光面12Sが発光すると、オンチップレンズ14の凸面14Sが均一の明るさで視認される状態となるように設定される。
【0036】
ここでは、オンチップレンズ14を透明で屈折率が1.58のモールド材で構成した。オンチップレンズ14の頭頂部分の凸面14S(以後、オンチップレンズのレンズ面、あるいは単にレンズ面ということもある)を一定の曲率半径を有する球面とした。
【0037】
ただし、オンチップレンズのレンズ面14Sをここでは球面としたが、非球面としても良い。非球面とすると、後述する近視野像あるいは遠視野像をより一層理想的にすることが可能となるが、設計が複雑となりまた製造においても高度な技術が必要とされる。
【0038】
また、発光面を提供する素子としてLEDチップを一例に取り上げて説明するが、上述したように、この発明の実施形態のレンズ光学素子は、発光チップとしてLEDチップに限定されるものではない。
【0039】
図3に示すように、発光面12Sから出射した光線は、オンチップレンズ14の頭頂部分の凸面14Sで屈折して出力される。
【0040】
ここで、この屈折による光線の進行方向の変化の大きさを表す便宜的なパラメータとして次のように定義される配光角Θを用いる。オンチップレンズ14の柱状部14Gとレンズ面(凸面14S)との交線(以後レンズ外周ということもある)における配光角を配光角Θという。
【0041】
図4に、配光角Θを10度に固定した場合の、オンチップレンズのレンズ面14Sの曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す。オンチップレンズの直径を100μmと仮定した。図4の横軸はレンズ面の曲率半径Rをμm単位で目盛って示してあり、縦軸はレンズ高Hをμm単位で目盛って示してある。この図によれば、任意の配光角Θを実現するオンチップレンズのレンズ面14Sの曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせが無限にあることが分かる。
【0042】
すなわち、配光角Θを固定するとは遠視野像を固定することに相当し、図4に示す曲線で表される関係を満たす曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせであれば、遠視野像は同一となる。したがって、同一の遠視野像であっても近視野像は異なるようにオンチップレンズ14の形状を決めることができる。
【0043】
柱状部14Gから出射される光線を含めオンチップレンズ14から出射される光線は、3つのグループに分けられる。図5を参照して、これら3つのグループに属する光線について説明する。図5は、図3と同様にこの発明のレンズ光学素子をこの装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して概略的に示した図であるが、3つのグループに属する光線をそれぞれ、E、F、Gとして示してある。
【0044】
グループEに属する光線は、発光面12Sから出射してオンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lに臨界角より小さい角度で当るように進み、全反射されずにそのまま外部に伝播する光線である。グループFに属する光線は、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lに到達せずにオンチップレンズのレンズ面14Sに到達し、このレンズ面14Sで屈折して外部に伝播する光線である。グループFに属する光線がオンチップレンズ14の配光特性を決める光線である。グループGに属する光線は、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射してオンチップレンズ14のレンズ面14Sに到達し、このレンズ面14Sで屈折して外部に伝播する光線である。グループGに属する光線には、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせによっては、オンチップレンズのレンズ面14Sで全反射し、外部に出射されない光線も含まれる。
【0045】
発光面12Sから出射しオンチップレンズ14から出射する光線を、上述のとおりグループE、F及びGの3つに分類したが、図5に示したこれらの光線群は、オンチップレンズ14のメリジオナル光線である。発光面12Sから出射される光線は、この他にもサジタル光線がある。サジタル光線も含めて示すと極めて複雑な図となるので、図5にはサジタル光線を示していない。
【0046】
発光面12Sから出射されるメリジオナル光線及びサジタル光線をそれぞれ複数本選び光線追跡シミュレーションを行い、近視野像及び遠視野像を求めた。
【0047】
光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を図6に示し、遠視野像を図7に示す。ここでは、オンチップレンズのレンズ面14Sにおける光の強度分布を近視野像とした。
【0048】
遠視野像は、配光角に対する光強度として表されるが、レンズ面から20 mm離れた位置で観測される光強度分布と相似の関係にある。そこで、配光パターン特性を与える遠視野像として、レンズ面から20 mm離れた位置で観測される光強度分布を遠視野像とした。レンズ面から20 mm離れた位置は、レンズ高Hが0.1 mm程度でレンズ面の曲率半径Rが0.05 mm程度のオンチップレンズ14に対して、十分遠方の位置と見なすことができる。したがって、この位置に光軸に垂直に置かれ、その曲率半径がオンチップレンズ14の曲率半径に20mmを足した値に等しい半球面で観測される光強度分布を遠視野像とみなすことは十分な合理性を有している。
【0049】
図6の横軸はレンズ面の中心を原点にとりレンズの半径方向に沿った距離をμm単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが以下の条件で与えられるように形成されたオンチップレンズにおける近視野像を示している。曲線aは(H, R)=(90μm,50.0μm)、曲線bは(H, R)=(100μm,52.5μm)、曲線cは(H, R)=(110μm,56.7μm)、曲線dは(H, R)=(115μm,59.0μm)、曲線eは(H, R)=(120μm,62.0μm)である。
【0050】
図7の横軸は配光角を度単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。すなわち、横軸は、レンズ面から20 mm離れた位置に、オンチップレンズ14の曲率半径に20mmを足した値に等しい曲率半径を持つ半球面上に、光軸とこの半球面との交点を原点に取り、それぞれの配光角に対応する光線がこの半球面と交わる点をその配光角として示してある。そして、縦軸はこの平面上の各点における光強度を、その各点に対応する配光角に対する光強度として示してある。
【0051】
遠視野像も、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求めた。すなわち、曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求められた遠視野像を示している。
【0052】
上述の曲線a〜曲線eに対応するレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせのそれぞれは、発光面12Sの位置が、配光角Θを10度となるように設定されている。このように配光角Θが十分小さくなるように設定するということは、発光面12Sの位置が、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rで決定されるオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように設定されることを意味する。
【0053】
このようにレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの関係を設定しておくことによって、発光面12Sの位置が光軸と直交する方向に多少ずれても、近視野像及び遠視野像に与える影響が小さくて済む。したがって、この発明のレンズ光学素子を形成するに当っては、発光面12Sの位置がオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように設定するのが好適である。
【0054】
光線追跡シミュレーションでは、発光面12Sを1辺が10μmの正方形であり、ランバート面としての光学特性を有しているものとした。近視野像及び遠視野像を求めるに当っては、50万本の光線を使った。そして、発光面12Sにおける発光点分布及び放射角分布がそれぞれ均等になるようにこれら50万本の光線を設定した。
【0055】
図6に示すように、オンチップレンズのレンズ面の明るさ分布である近視野像は、レンズ高Hを120μmとしたとき急激にレンズ面の中心位置の強度が大きくなっている。これ以外の寸法にレンズ高が設定されたときは、レンズ面全面にわたりほぼ等しい強度となっている。
【0056】
近視野像が、レンズ面の中心位置の強度が突出して大きな値を取るのは、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射する光線の割合が増えたためであると理解される。また、オンチップレンズ14の形状がこのレンズの光軸に対して対称形であるため、柱状部の側壁面14Lで全反射する光線がレンズ面の中央に集中し、光軸上の強度が局在的に強くなったものと考えられる。一方、遠視野像は、図7に示すように、レンズ高Hを100μmとしたとき最大強度となるが、遠視野像の形状はレンズ高Hにかかわらずほぼ同様の形状となっている。
【0057】
以上に示すように、遠視野像の形状はレンズ高Hの影響を受けにくいのに対して、近視野像の形状はレンズ高Hの影響を強く受ける。すなわち、レンズ面14Sを視認して受ける印象を決定しているのは近視野像であることが分かる。近視野像の強度がレンズ面の中心位置に集中して強くなっている状態は、レンズ面14Sが中心部分のみが明るい、いわゆる「芯」のある状態として視認される。
【0058】
近視野像の強度がレンズ面の中心位置に集中するのは、上述したようにオンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射する光線によるものであるから、レンズ高Hをある値より小さく設定することで、光軸上の強度が局在的に強くなることを防ぐことが可能となる。すなわち、レンズ高Hをある値より小さく設定すれば、レンズ面14Sが均一に明るく見える状態を実現できることが分かる。
【0059】
図8を参照して、レンズ面14Sが均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高H、柱状部14Gの半径rと、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係について説明する。図8には、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで光線が全反射する最小の高さhと、全反射条件を満たす光線の入射角の臨界角θcを示している。オンチップレンズの構成素材の屈折率nが1.58である場合θc=39度である。柱状部14Gの半径rが50μmである場合、対応する高さhは40μmである。
【0060】
図6に示した近視野像が、すなわちレンズ面14Sの中心位置の強度が突出して大きな値を取るレンズ高Hを120μmに設定すると、これは、高さh(=40μm)の3倍に相当する。すなわち、臨界角θcが39度である場合は、レンズ高Hを120μmより小さい値に設定すれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できることを意味している。
【0061】
この条件を式で表現すると、以下のとおりとなる。
θc=arcsin(1/n)
H < 3r tanθc = 3r/(n2-1)1/2 (1)
【0062】
≪オンチップレンズの柱状部が多角柱である場合≫
オンチップレンズ14の柱状部14Gが四角柱であって、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されている例について説明する。発光面12Sから凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部14Gの太さDと、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係が、発光面12Sが発光すると、オンチップレンズ14の凸面14Sが均一の明るさで視認される状態となるように設定される。
【0063】
光線追跡シミュレーションでは、発光面12Sを1辺が10μmの正方形であり、ランバート面としての光学特性を有しているものとした。また、柱状部14Gを構成する四角柱の一辺の長さを100μmとした。近視野像及び遠視野像を求めるに当っては、上述のオンチップレンズ14の柱状部14Gが円柱の場合と同様に、50万本の光線を使った。そして、発光面12Sにおける発光点分布及び放射角分布がそれぞれ均等になるようにこれら50万本の光線を設定した。
【0064】
図9に配光角Θを10度に固定した場合の、オンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す。図9の横軸はレンズ面の曲率半径Rをμm単位で目盛って示してあり、縦軸はレンズ高Hをμm単位で目盛って示してある。オンチップレンズ14の柱状部14Gが正四角柱であることを反映してレンズ外周の形状は略四角形となるが、配光角Θとして、レンズ面の中心から最も離れたレンズ外周における配光角をとるものとする。しかしながら、レンズ外周の形状は略四角形となるといってもほぼ円形に近いので、レンズ外周のどの点における配光角もほぼ等しい値となる。
【0065】
図4で示した曲線と同様に、図9に示す曲線で表される関係を満たす曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせであれば、配光角Θを10度に設定することが常に可能である。オンチップレンズ14の柱状部14Gが四角柱である場合であっても、同一の遠視野像に対して近視野像は異なるようにオンチップレンズの形状を決めることができる。
【0066】
図9に示すレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を満たす条件の内、レンズ高Hが170μm、曲率半径Rが87.5μmである場合の近視野像及び遠視野像のシミュレーション結果を、それぞれ図10及び図11に示す。図10及び図11において、光の強度分布に対応させて濃淡をつけて示してある。
【0067】
図10に示す近視野像に関して、レンズ外周の形状は、オンチップレンズ14の柱状部14Gが正四角柱であることを反映して、丸みを帯びた略四角形となっている。この近視野像から、明るい部分がレンズ面の中央部分に集中していることが見て取れる。
【0068】
同様に図示は省略するが、柱状部14Gが円柱である場合は、レンズ外周の形状は円形となり、明るい部分がレンズ面の中央部分に集中する。ただし、柱状部14Gが円柱である場合は、正四角柱である場合と比較して、近視野像の明るい部分がより強く中心部分に集中する。すなわち、柱状部14Gが正四角柱である場合、近視野像の明るい部分はより広がっている。これは、柱状部14Gが円柱である場合は、側壁面14Lが湾曲した形状であるために側壁面14Lで全反射した光線がレンズの光軸付近に集中する傾向があるためである。
【0069】
一方、図11に示す遠視野像は、近視野像と同様に中心部分に明るい部分があるほか、中心部分の明るい部分の周囲4箇所にも局所的に明るい部分が見て取れる。中心部分の周囲の局所的に明るく見える部分をサイドローブということもある。このようなサイドローブは、柱状部14Gが円柱である場合は現れにくい。この理由は、柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズのレンズ側壁面で全反射した光線は、レンズ面の光軸近くに集中した後、レンズ面から遠ざかるにつれて発散するのに対して、柱状部14Gが正四角柱であるオンチップレンズにあっては、レンズ側壁面で全反射した光線がレンズ面の光軸近くに集中しない代わりに、レンズ面から出射した後光線が互いに平行なまま進行するためと考えられる。
【0070】
次に、光線追跡シミュレーションに基づき図9の条件を満たす5種類の形状のオンチップレンズによって得られる近視野像を図12に示し、遠視野像を図13に示す。
【0071】
ここでも、オンチップレンズ14のレンズ面14Sにおける光の強度分布を近視野像とした。また、レンズ面から20 mm離れた位置に光軸に垂直に置かれた平面で観測される光強度分布を遠視野像とした。
【0072】
図12の横軸はレンズ面の中心を原点にとりレンズの半径方向に沿った距離をμm単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。また、図12に示す近視野像は、正四角形の対角線上における強度分布である。
【0073】
曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが以下の条件で与えられるように形成されたオンチップレンズにおける近視野像を示している。曲線aは(H, R)=(110μm,71.0μm)、曲線bは(H, R)=(120μm,71.0μm)、曲線cは(H, R)=(130μm,71.0μm)、曲線dは(H, R)=(140μm,74.0μm)、曲線eは(H, R)=(150μm,77.5μm)である。
【0074】
ここで、レンズ高Hが110μm、120μm、及び130μmに対してレンズ面の曲率半径Rを何れも71.0μmと同一に設定した理由を説明する。上述したように、柱状部14Gを構成する四角柱の一辺の長さが100μmに設定した関係で、この柱状部の垂直断面(柱状部の底面)の正方形の対角線の長さはほぼ141μmとなる。したがってレンズ面の曲率半径Rが141μm以下では柱状部のレンズ面14Sを一様に球面に形成することができなくなる。そこで、柱状部のレンズ面14Sを一様に球面に形成できる条件として、柱状部の垂直断面の正方形の対角線の長さの半分の長さに当る70.5μmより多少余裕を見てレンズ面の曲率半径Rの値を71.0μmと設定した。
【0075】
このように、曲線a〜曲線cについては、曲線d及び曲線eとは、配光角の特性が少し異なるが、この差異はきわめて小さく無視できる大きさである。
【0076】
図13の横軸は配光角を度単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。なお、図13に示す遠視野像は、正四角形の辺に沿った方向の配光分布である。
【0077】
遠視野像も、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求めた。すなわち、曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求められた遠視野像を示している。
【0078】
ここでも、上述の曲線a〜曲線eに対応するレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせのそれぞれは、発光面12Sの位置が、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rで決定されるオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように決められている。
【0079】
図12に示すように、レンズ高Hを増加させても、レンズ面中央における光強度の増加は、柱状部14Gが円柱である場合と比較して小さな値に収まっている。
【0080】
一方遠視野像は、図13に示したように、レンズ高Hをある値以上に増加させると、サイドローブが顕著に現れることが見て取れる。図示は省略してあるが、レンズ高Hを170μmまで増加させると、光軸上の光強度とサイドローブの光強度とが等しい大きさとなる。
【0081】
このようにサイドローブが生じると、このレンズ光学素子を画素として配置して構成される表示装置を裸眼で視認する場合、本来画素として輝く部分以外に輝点が見えるという不都合が発生する。また、サイドローブの成分が迷光として働き、表示装置に表示される画像の鮮明度を低下させる要因となる。
【0082】
図11及び図12にそれぞれ示す近視野像及び遠視野像から、柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズを備えるレンズ光学素子と同様に、柱状部14Gが正四角柱である場合も、レンズ高Hには望ましい上限値が存在することが分かる。すなわち、レンズ高Hをある値より小さく設定すれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる。
【0083】
図14を参照して、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高Hの上限値について検討する。図14は、オンチップレンズ14の柱状部14Gを構成する正四角柱を光軸に直交する面で切断した断面(正四角柱の底面)の形状を正方形レンズ断面として示してある。この正方形レンズ断面に内接する円の半径をr1、外接する円の半径をr2としてある。内接円の半径r1と外接円の半径r2の平均値(r1+r2)/2を、オンチップレンズの柱状部の太さDの1/2と定義した。すなわち、平均値(r1+r2)/2を、上述した柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズの半径rに対応するものとして平均値(r1+r2)/2を用いて、レンズ高Hの上限値を算出した。
【0084】
正四角柱の柱状部14Gの内接円の半径r1及び外接円の半径r2とオンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係について説明する。オンチップレンズ14の柱状部14Gの側壁面14Lで光線が全反射する最小の高さhと、全反射条件を満たす光線の入射角の臨界角をθcとする。
【0085】
レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高Hの上限値を与える条件式は、以下のとおりとなる。
θc=arcsin(1/n)
H < 3(r1+r2)/2 tanθc = 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
【0086】
一般に、柱状部14Gが正多角柱である場合、図15に示すように、この正多角形の内接円の半径r1及び外接円の半径r2とすれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件は、上式(2)で与えられる。
【0087】
正多角形の辺の数を増すと円形に近づくので、柱状部14Gを垂直断面が正多角形となる正多角柱で構成し、この正多角形の辺の数を多くなるように適宜選択することによって、遠視野像のサイドローブを発生しにくくすることが可能である。また、上述したように、柱状部14Gが正四角柱である場合、円柱である場合と比較して、近視野像の明るい部分が中心部分に集中しにくいので、この多角形の辺の数を少なくなるように適宜選択することによって、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現しやすい。
【0088】
したがって、正多角形の辺の数を増減することによって、近視野像の強度不均一性と遠視野像に現れるサイドローブの発生の度合いを調整することが可能である。すなわち、レンズ光学素子が利用される表示装置の用途に合わせて、オンチップレンズの柱状部の形状を円柱とするか正多角柱とするかの選択を含め、正多角柱とするのであれば正多角形の辺の数を増減することによって、好適なレンズ光学素子を設計することができる。
【0089】
また、柱状部14Gを正四角柱とすることで、レンズ光学素子を2次元平面に並べて構成される表示装置は、平面全体にわたり隙間なく画素としてのレンズ光学素子を配置することが可能となる。柱状部14Gを円柱とした場合は、隣接する画素間に隙間が生じるが、柱状部14Gの断面形状が2次元平面に隙間なく引きつめられる正多角形であればこの隙間がなくなり、表示装置としてより効率的に画像を明るく形成することが可能となる。
【0090】
<表示装置>
以上説明したこの発明のレンズ光学素子を用いれば、図1を参照して説明した特許文献3に開示されている表示装置と類似の表示装置を形成することができる。図1に示したオンチップレンズ14を、上述のレンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与える条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成すれば、輝いている画素のレンズ面全体が均一に明るく見える表示装置を実現することができる。
【0091】
すなわち、半導体プロセス技術を応用し、同一基板上に設けた光源アレイに対して、封止部材でもあるマイクロレンズアレイ(オンチップレンズのアレイ)を、個々のマイクロレンズ部分を条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成すれば、液晶表示装置と同程度に高精細で、かつ液晶表示装置より輝度が高い表示装置が実現される。
【0092】
また、この発明のレンズ光学素子を用いて、実用上屋外に設置される巨大な表示装置を実現することも可能である。この発明のレンズ光学素子を2次元状に複数配列することで、表示装置を構成できる。この場合は、狭いピッチで高精細な表示を行うことは要請されないので、画素を構成するレンズ光学素子は小さく形成する必要がない。ただし、この場合であってもオンチップレンズが条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成したこの発明のレンズ光学素子を画素として利用すれば、輝いている画素のレンズ面全体が均一に明るく見えるという好適な特性を有する表示装置とすることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10:共通基板
12:LEDチップ
14:オンチップレンズ
14G: 柱状部
14L: 柱状部の側壁面
14S: 柱状部の頭頂部分の凸面
20:レンズ光学素子
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光面からの射出光の広がりを制御するレンズを備え、レンズ面全体が均一に明るく見えるように形成されたレンズ光学素子、及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を用いた照明装置が、低消費電力で長寿命な面型照明装置を容易に実現可能という特長を備えていることから広く様々な分野で用いられるようになった。このような照明装置で用いられるLEDは、半導体基板面から光が放射される面型発光デバイスであり、その光の放射パターン(以後、配光パターンということもある)は、cosθに比例する(ランバートの余弦則に従う)強度分布をもつ、いわゆるランバート面と近似できることが知られている。ここで、θは、発光面に対する垂線(光軸)に対して光線のなす角度である。
【0003】
面型発光デバイスからの放射光の配光パターンがこのような特性をもっていることから、発光面に垂直な光軸から60度傾いた方向へ放射される光強度は、光軸に対して放射される光強度の概略50%程度であり、LED光源からの放射光は、半球面内に極めて広く分布することが分かる。
【0004】
このような広角な配光特性は、天井に取り付けるタイプの照明器具であるシーリングライト(ceiling light)等の用途には好適であるが、プロジェクタ用光源、スポットライト、表示装置などの用途においては、不必要な領域まで光が放射され、その結果として本来必要とされる領域への放射強度が十分でないという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、従来のLED装置は、一般的に、リードマウントのカップ部分にLEDチップを実装し、このLEDチップとリードマウントの一部を透光性樹脂からなる封止部材によって被覆し、この封止部材の頭頂部を砲弾型に形成して凸レンズ機能を持たせる構造とされている。このような構造とすることで、LEDチップからの放射光の拡散を制御している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、砲弾型樹脂封止構造をもつLEDデバイスを2次元状に複数配列することで、表示装置を構成した例も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの表示装置の作製には、複数のLEDデバイスを順次基板上に実装するための手間がかかる。また、LEDデバイスの寸法が数mm程度と大きいため、狭いピッチで高精細な表示装置を構成することはできない。そのため、特許文献2に開示されたLED表示器及びこれに類するLED表示装置は、実用上屋外に設置される巨大な表示装置といった分野にその用途が限定されている。
【0007】
このような実用上の課題を解決するために、半導体プロセス技術を応用し、同一基板上に設けた光源アレイに対して、砲弾型LEDデバイスの封止部材に類似するマイクロレンズアレイ(オンチップレンズのアレイ)を製造する技術が開示されている(特許文献3参照)。この技術を使用することで、レンズアレイを一括して形成することが可能になるばかりでなく、従来数mm程度に制限されていたレンズの配置間隔を、数10μmレベルまで一挙に縮小することが可能となった。これによって、広く実用化が実現している液晶表示装置と同程度に高精細で、かつ、液晶表示装置より輝度が高い表示装置の可能性が開けてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2927279号公報
【特許文献2】特開2000−114605号公報
【特許文献3】特開2011−112737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、LEDチップ等の発光面にオンチップレンズが配置されたレンズ光学素子を画素として1次元あるいは2次元に配列して構成した表示装置において、個々の画素の見え方、すなわち表示装置の画質につき検討すると、以下の問題点が明らかとなる。
【0010】
LEDチップ等の発光面から射出した光線は、オンチップレンズの頭頂面(凸面)で屈折することで進行方向が変化し、各光源の配光角が制御される。このような構成の表示装置では、発光面が拡大されてオンチップレンズの頭頂面が全面にわたって明るく輝くように視認されるのが理想である。すなわち、表示装置の各画素が、画素の中心部に限定されて輝くのではなく、画素と等しい面積で明るく輝くようにオンチップレンズを形成することが好ましい。
【0011】
しかしながら、オンチップレンズを、その配光特性にのみ注目して設計すると、ひとつの画素に相当するレンズ全体(ひとつの画素全体)が明るく光って見える場合も、あるいは各オンチップレンズの中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える場合も起こり得る。すなわち、オンチップレンズ面における近視野像の強度分布も、表示装置が表示する画像の画質に大きく影響する。したがって、オンチップレンズを発光面ごとに配置した構成の表示装置を作製するに当っては、配光特性のみならず、各オンチップレンズのレンズ面における近視野像の強度分布も同時に最適化することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本願の発明者は、オンチップレンズによって得られる近視野像と、配光特性が反映される遠視野像を評価することによって、レンズ面全体が一定の強度分布で視認されるためのオンチップレンズの形状の検討を行った。
【0013】
その結果、配光特性を与える遠視野像及びオンチップレンズのレンズ面の明るさ分布を与える近視野像は、発光面からレンズ面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、オンチップレンズの柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率とを指定することで確定されることを見出した。そして、レンズ面全体が均一に明るく見えるようにするための、これらの値に対する設定条件を確定させることができた。
【0014】
従って、この発明の目的は、レンズ面全体が均一に明るく見えるように形成されたレンズ光学素子、及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置を提供することにある。
【0015】
上述の目的を達成するため、この発明の要旨によれば、以下の構成のレンズ光学素子及びこのレンズ光学素子を画素とする表示装置が提供される。
【0016】
この発明のレンズ光学素子は、柱状部の頭頂部分に凸面が形成されたオンチップレンズと、オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置されて構成される発光面とを備えるレンズ光学素子である。
【0017】
そして、発光面から凸面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、発光面が発光すると、オンチップレンズの凸面が均一の明るさで視認される状態となるように設定されている。
【0018】
好ましくは、オンチップレンズの柱状部が円柱であって、レンズ高Hと、柱状部の太さD(=2r、ただしrは柱状部の半径)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nが、
H < 3r/(n2-1)1/2 (1)
を満たすのがよい。
【0019】
また、オンチップレンズの柱状部が正多角柱である場合は、オンチップレンズの柱状部の太さDとして、正多角柱の底面の正多角形に内接する円の半径r1と外接する円の半径r2の平均値を対応させる。すなわち、式(1)におけるrに対して(r1+r2)/2を対応させる。したがって、オンチップレンズの柱状部が正多角柱である場合は、
H < 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
を満たす条件に設定する。
【0020】
この発明の表示装置は、上述したレンズ光学素子が、1次元状あるいは2次元状に配列されて構成され、オンチップレンズの凸面の頂点が等間隔に配列されている。
【発明の効果】
【0021】
この発明のレンズ光学素子によれば、レンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、オンチップレンズの凸面が均一の明るさで、発光面からの出力光が視認される状態となるように設定されているので、LEDが発光した場合、オンチップレンズの凸面が均一に明るく見える。
【0022】
後述するように、この発明の発明者は、LEDが発光した場合にオンチップレンズの凸面が均一に明るく見えるための条件は、レンズ高と、柱状部の太さと、オンチップレンズの構成素材の屈折率によって確定されることを光線追跡シミュレーションによって確かめている。具体的には、上述の式(1)あるいは式(2)を満足させればこの条件が満たされることを確かめている。
【0023】
LEDが発光した場合にオンチップレンズの凸面が均一に明るく見えるための条件を満たすこの発明のレンズ光学素子を、画素として1次元状あるいは2次元状に等間隔で配列されて構成すれば、画素の一つ一つが鮮明に明るく輝く優れた表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の表示装置及びレンズ光学素子の概略的構成を示す図である。
【図2】レンズ光学素子のオンチップレンズの上方から凸面に着目した場合に視認される凸面の明るさのパターンの概略を示す図であり、(A)は上から見たオンチップレンズの外形寸法内全体が明るく光って見える様子を示す図であり、(B)は中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える様子を示す図である。
【図3】この発明の実施形態のレンズ光学素子を、この装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して示す概略的断面構成図である。
【図4】柱状部が円柱であるオンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す図である。
【図5】発光面から出射しオンチップレンズから出射する3つのグループに属する光線の説明に供する図である。
【図6】オンチップレンズの柱状部が円柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を示す図である。
【図7】オンチップレンズの柱状部が円柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた遠視野像を示す図である。
【図8】レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件についての説明に供する図である。
【図9】柱状部が四角柱であるオンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す図である。
【図10】レンズ光学素子の近視野像を示す図である。
【図11】レンズ光学素子の遠視野像を示す図である。
【図12】オンチップレンズの柱状部が正四角柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を示す図である。
【図13】オンチップレンズの柱状部が正四角柱である場合の光線追跡シミュレーションに基づき得られた遠視野像を示す図である。
【図14】オンチップレンズの柱状部を構成する正四角柱を光軸に直交する面で切断した正方形レンズ断面と、この正方形レンズ断面の内接円の半径及び外接円の半径を示す図である。
【図15】オンチップレンズの柱状部を構成する正多角柱を光軸に直交する面で切断した正多角形レンズ断面と、この正多角形レンズ断面の内接円の半径及び外接円の半径を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図15を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、図3、図5、及び図8は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。図1及び図2、図3、図5及び図8において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下の説明において、特定の条件等を用いることがあるが、これらの条件等は好適例の一つに過ぎずこの発明はこれらに限定されない。
【0026】
<従来の表示装置>
この発明のレンズ光学素子及び表示装置の特徴の理解に資するために、上述の特許文献3に開示されている表示装置の概略を、図1及び図2を参照して説明する。なお、発光面はLEDチップの光出力面である。この発明のレンズ光学素子及び表示装置の構成要素である発光面は、LEDチップ、あるいは有機EL(organic electroluminescence)チップ等の光出力面であって、この光出力面がオンチップレンズの凸面を照射するのに十分な配光特性を持つ発光面であれば利用できる。すなわち、液晶チップ等の非発光チップの光出力面であっても、この光出力面がオンチップレンズの凸面を照射するのに十分な配光特性を持っていれば同様に利用できる。
【0027】
図1に示すように、特許文献3に開示されている表示装置は、共通基板10にレンズ光学素子20が等間隔に配置されて構成される。レンズ光学素子20は、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されたオンチップレンズ14と、LEDチップ12とを備える。LEDチップ12は、オンチップレンズ14の柱状部14Gの底部に被覆された状態に配置されて構成されている。
【0028】
LEDチップ12の発光面から出射した光線は、オンチップレンズ14の凸面14Sで屈折し進行方向が変化するので、凸面14Sの曲率半径を適宜設定することによって光線の配光角度が制御される。このような構造のレンズ光学素子20の凸面14Sに着目すると、上から見たオンチップレンズ14の外形内全体に、この外形寸法よりも小さいLEDチップ12の発光面が拡大されて、表示装置の画素として明るく輝いて視認されるのが理想である。
【0029】
図2(A)及び(B)を参照して、図1に示す表示装置を構成するレンズ光学素子20のオンチップレンズ14の上方から凸面14Sに着目した場合に、一般に凸面14Sがどのように輝いて視認されるかにつき説明する。図2(A)及び(B)は、柱状部14Gが円柱である場合、上から見たオンチップレンズ14の外形寸法内の明るさのパターンを示している。
【0030】
オンチップレンズ14を、その配光特性にのみ注目して設計すると、図2(A)に示すように、上から見たオンチップレンズ14のレンズ面の全体がほぼ均一に明るく光って見える場合がある。また、図2(B)に示すように、オンチップレンズ14の中心のみが明るく光り画素に芯があるように見える場合もある。
【0031】
柱状部14Gが円柱でなく多角柱である場合も、図示は省略するが、同様にレンズ面がほぼ均一に光って見える場合も、明るさが偏って見える場合もある。明るさが偏って見える場合は、芯があるように見えるのではなく、光軸を囲むように明るい部分が略環状に分布して見える。
【0032】
したがって、上述したように、凸面14Sが均一に明るく見えるようにするためには、配光特性のみならず凸面14Sにおける近視野像も考慮してオンチップレンズ14の形状を決定する必要がある。
【0033】
<レンズ光学素子>
図3を参照して、この発明の実施形態のレンズ光学素子の構成について説明する。図3は、この発明のレンズ光学素子をこの装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して概略的に示してある。
【0034】
レンズ光学素子では、共通基板10にLEDチップ12が配置されており、このLEDチップ12がオンチップレンズ14の底部に配置されている。LEDチップ12は、発光面12Sを備えている。発光面12Sがオンチップレンズ14の柱状部14Gの底部に位置するように、オンチップレンズ14の底部に被覆される形状でLEDチップ12が収納されて配置されている。
【0035】
≪オンチップレンズの柱状部が円柱である場合≫
オンチップレンズ14の柱状部14Gが円柱であって、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されている。発光面12Sから凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部14Gの太さD(=2r、ただしrは柱状部14Gの半径)と、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとが、発光面12Sが発光すると、オンチップレンズ14の凸面14Sが均一の明るさで視認される状態となるように設定される。
【0036】
ここでは、オンチップレンズ14を透明で屈折率が1.58のモールド材で構成した。オンチップレンズ14の頭頂部分の凸面14S(以後、オンチップレンズのレンズ面、あるいは単にレンズ面ということもある)を一定の曲率半径を有する球面とした。
【0037】
ただし、オンチップレンズのレンズ面14Sをここでは球面としたが、非球面としても良い。非球面とすると、後述する近視野像あるいは遠視野像をより一層理想的にすることが可能となるが、設計が複雑となりまた製造においても高度な技術が必要とされる。
【0038】
また、発光面を提供する素子としてLEDチップを一例に取り上げて説明するが、上述したように、この発明の実施形態のレンズ光学素子は、発光チップとしてLEDチップに限定されるものではない。
【0039】
図3に示すように、発光面12Sから出射した光線は、オンチップレンズ14の頭頂部分の凸面14Sで屈折して出力される。
【0040】
ここで、この屈折による光線の進行方向の変化の大きさを表す便宜的なパラメータとして次のように定義される配光角Θを用いる。オンチップレンズ14の柱状部14Gとレンズ面(凸面14S)との交線(以後レンズ外周ということもある)における配光角を配光角Θという。
【0041】
図4に、配光角Θを10度に固定した場合の、オンチップレンズのレンズ面14Sの曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す。オンチップレンズの直径を100μmと仮定した。図4の横軸はレンズ面の曲率半径Rをμm単位で目盛って示してあり、縦軸はレンズ高Hをμm単位で目盛って示してある。この図によれば、任意の配光角Θを実現するオンチップレンズのレンズ面14Sの曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせが無限にあることが分かる。
【0042】
すなわち、配光角Θを固定するとは遠視野像を固定することに相当し、図4に示す曲線で表される関係を満たす曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせであれば、遠視野像は同一となる。したがって、同一の遠視野像であっても近視野像は異なるようにオンチップレンズ14の形状を決めることができる。
【0043】
柱状部14Gから出射される光線を含めオンチップレンズ14から出射される光線は、3つのグループに分けられる。図5を参照して、これら3つのグループに属する光線について説明する。図5は、図3と同様にこの発明のレンズ光学素子をこの装置が具えるオンチップレンズの光軸を含む面で切断して概略的に示した図であるが、3つのグループに属する光線をそれぞれ、E、F、Gとして示してある。
【0044】
グループEに属する光線は、発光面12Sから出射してオンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lに臨界角より小さい角度で当るように進み、全反射されずにそのまま外部に伝播する光線である。グループFに属する光線は、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lに到達せずにオンチップレンズのレンズ面14Sに到達し、このレンズ面14Sで屈折して外部に伝播する光線である。グループFに属する光線がオンチップレンズ14の配光特性を決める光線である。グループGに属する光線は、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射してオンチップレンズ14のレンズ面14Sに到達し、このレンズ面14Sで屈折して外部に伝播する光線である。グループGに属する光線には、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせによっては、オンチップレンズのレンズ面14Sで全反射し、外部に出射されない光線も含まれる。
【0045】
発光面12Sから出射しオンチップレンズ14から出射する光線を、上述のとおりグループE、F及びGの3つに分類したが、図5に示したこれらの光線群は、オンチップレンズ14のメリジオナル光線である。発光面12Sから出射される光線は、この他にもサジタル光線がある。サジタル光線も含めて示すと極めて複雑な図となるので、図5にはサジタル光線を示していない。
【0046】
発光面12Sから出射されるメリジオナル光線及びサジタル光線をそれぞれ複数本選び光線追跡シミュレーションを行い、近視野像及び遠視野像を求めた。
【0047】
光線追跡シミュレーションに基づき得られた近視野像を図6に示し、遠視野像を図7に示す。ここでは、オンチップレンズのレンズ面14Sにおける光の強度分布を近視野像とした。
【0048】
遠視野像は、配光角に対する光強度として表されるが、レンズ面から20 mm離れた位置で観測される光強度分布と相似の関係にある。そこで、配光パターン特性を与える遠視野像として、レンズ面から20 mm離れた位置で観測される光強度分布を遠視野像とした。レンズ面から20 mm離れた位置は、レンズ高Hが0.1 mm程度でレンズ面の曲率半径Rが0.05 mm程度のオンチップレンズ14に対して、十分遠方の位置と見なすことができる。したがって、この位置に光軸に垂直に置かれ、その曲率半径がオンチップレンズ14の曲率半径に20mmを足した値に等しい半球面で観測される光強度分布を遠視野像とみなすことは十分な合理性を有している。
【0049】
図6の横軸はレンズ面の中心を原点にとりレンズの半径方向に沿った距離をμm単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが以下の条件で与えられるように形成されたオンチップレンズにおける近視野像を示している。曲線aは(H, R)=(90μm,50.0μm)、曲線bは(H, R)=(100μm,52.5μm)、曲線cは(H, R)=(110μm,56.7μm)、曲線dは(H, R)=(115μm,59.0μm)、曲線eは(H, R)=(120μm,62.0μm)である。
【0050】
図7の横軸は配光角を度単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。すなわち、横軸は、レンズ面から20 mm離れた位置に、オンチップレンズ14の曲率半径に20mmを足した値に等しい曲率半径を持つ半球面上に、光軸とこの半球面との交点を原点に取り、それぞれの配光角に対応する光線がこの半球面と交わる点をその配光角として示してある。そして、縦軸はこの平面上の各点における光強度を、その各点に対応する配光角に対する光強度として示してある。
【0051】
遠視野像も、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求めた。すなわち、曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求められた遠視野像を示している。
【0052】
上述の曲線a〜曲線eに対応するレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせのそれぞれは、発光面12Sの位置が、配光角Θを10度となるように設定されている。このように配光角Θが十分小さくなるように設定するということは、発光面12Sの位置が、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rで決定されるオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように設定されることを意味する。
【0053】
このようにレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの関係を設定しておくことによって、発光面12Sの位置が光軸と直交する方向に多少ずれても、近視野像及び遠視野像に与える影響が小さくて済む。したがって、この発明のレンズ光学素子を形成するに当っては、発光面12Sの位置がオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように設定するのが好適である。
【0054】
光線追跡シミュレーションでは、発光面12Sを1辺が10μmの正方形であり、ランバート面としての光学特性を有しているものとした。近視野像及び遠視野像を求めるに当っては、50万本の光線を使った。そして、発光面12Sにおける発光点分布及び放射角分布がそれぞれ均等になるようにこれら50万本の光線を設定した。
【0055】
図6に示すように、オンチップレンズのレンズ面の明るさ分布である近視野像は、レンズ高Hを120μmとしたとき急激にレンズ面の中心位置の強度が大きくなっている。これ以外の寸法にレンズ高が設定されたときは、レンズ面全面にわたりほぼ等しい強度となっている。
【0056】
近視野像が、レンズ面の中心位置の強度が突出して大きな値を取るのは、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射する光線の割合が増えたためであると理解される。また、オンチップレンズ14の形状がこのレンズの光軸に対して対称形であるため、柱状部の側壁面14Lで全反射する光線がレンズ面の中央に集中し、光軸上の強度が局在的に強くなったものと考えられる。一方、遠視野像は、図7に示すように、レンズ高Hを100μmとしたとき最大強度となるが、遠視野像の形状はレンズ高Hにかかわらずほぼ同様の形状となっている。
【0057】
以上に示すように、遠視野像の形状はレンズ高Hの影響を受けにくいのに対して、近視野像の形状はレンズ高Hの影響を強く受ける。すなわち、レンズ面14Sを視認して受ける印象を決定しているのは近視野像であることが分かる。近視野像の強度がレンズ面の中心位置に集中して強くなっている状態は、レンズ面14Sが中心部分のみが明るい、いわゆる「芯」のある状態として視認される。
【0058】
近視野像の強度がレンズ面の中心位置に集中するのは、上述したようにオンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで全反射する光線によるものであるから、レンズ高Hをある値より小さく設定することで、光軸上の強度が局在的に強くなることを防ぐことが可能となる。すなわち、レンズ高Hをある値より小さく設定すれば、レンズ面14Sが均一に明るく見える状態を実現できることが分かる。
【0059】
図8を参照して、レンズ面14Sが均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高H、柱状部14Gの半径rと、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係について説明する。図8には、オンチップレンズ14の柱状部の側壁面14Lで光線が全反射する最小の高さhと、全反射条件を満たす光線の入射角の臨界角θcを示している。オンチップレンズの構成素材の屈折率nが1.58である場合θc=39度である。柱状部14Gの半径rが50μmである場合、対応する高さhは40μmである。
【0060】
図6に示した近視野像が、すなわちレンズ面14Sの中心位置の強度が突出して大きな値を取るレンズ高Hを120μmに設定すると、これは、高さh(=40μm)の3倍に相当する。すなわち、臨界角θcが39度である場合は、レンズ高Hを120μmより小さい値に設定すれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できることを意味している。
【0061】
この条件を式で表現すると、以下のとおりとなる。
θc=arcsin(1/n)
H < 3r tanθc = 3r/(n2-1)1/2 (1)
【0062】
≪オンチップレンズの柱状部が多角柱である場合≫
オンチップレンズ14の柱状部14Gが四角柱であって、柱状部14Gの頭頂部分に凸面14Sが形成されている例について説明する。発光面12Sから凸面の頂点Pまでの高さとして定義されるレンズ高Hと、柱状部14Gの太さDと、オンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係が、発光面12Sが発光すると、オンチップレンズ14の凸面14Sが均一の明るさで視認される状態となるように設定される。
【0063】
光線追跡シミュレーションでは、発光面12Sを1辺が10μmの正方形であり、ランバート面としての光学特性を有しているものとした。また、柱状部14Gを構成する四角柱の一辺の長さを100μmとした。近視野像及び遠視野像を求めるに当っては、上述のオンチップレンズ14の柱状部14Gが円柱の場合と同様に、50万本の光線を使った。そして、発光面12Sにおける発光点分布及び放射角分布がそれぞれ均等になるようにこれら50万本の光線を設定した。
【0064】
図9に配光角Θを10度に固定した場合の、オンチップレンズのレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を示す。図9の横軸はレンズ面の曲率半径Rをμm単位で目盛って示してあり、縦軸はレンズ高Hをμm単位で目盛って示してある。オンチップレンズ14の柱状部14Gが正四角柱であることを反映してレンズ外周の形状は略四角形となるが、配光角Θとして、レンズ面の中心から最も離れたレンズ外周における配光角をとるものとする。しかしながら、レンズ外周の形状は略四角形となるといってもほぼ円形に近いので、レンズ外周のどの点における配光角もほぼ等しい値となる。
【0065】
図4で示した曲線と同様に、図9に示す曲線で表される関係を満たす曲率半径Rとレンズ高Hの組み合わせであれば、配光角Θを10度に設定することが常に可能である。オンチップレンズ14の柱状部14Gが四角柱である場合であっても、同一の遠視野像に対して近視野像は異なるようにオンチップレンズの形状を決めることができる。
【0066】
図9に示すレンズ面の曲率半径Rに対するレンズ高Hの関係を満たす条件の内、レンズ高Hが170μm、曲率半径Rが87.5μmである場合の近視野像及び遠視野像のシミュレーション結果を、それぞれ図10及び図11に示す。図10及び図11において、光の強度分布に対応させて濃淡をつけて示してある。
【0067】
図10に示す近視野像に関して、レンズ外周の形状は、オンチップレンズ14の柱状部14Gが正四角柱であることを反映して、丸みを帯びた略四角形となっている。この近視野像から、明るい部分がレンズ面の中央部分に集中していることが見て取れる。
【0068】
同様に図示は省略するが、柱状部14Gが円柱である場合は、レンズ外周の形状は円形となり、明るい部分がレンズ面の中央部分に集中する。ただし、柱状部14Gが円柱である場合は、正四角柱である場合と比較して、近視野像の明るい部分がより強く中心部分に集中する。すなわち、柱状部14Gが正四角柱である場合、近視野像の明るい部分はより広がっている。これは、柱状部14Gが円柱である場合は、側壁面14Lが湾曲した形状であるために側壁面14Lで全反射した光線がレンズの光軸付近に集中する傾向があるためである。
【0069】
一方、図11に示す遠視野像は、近視野像と同様に中心部分に明るい部分があるほか、中心部分の明るい部分の周囲4箇所にも局所的に明るい部分が見て取れる。中心部分の周囲の局所的に明るく見える部分をサイドローブということもある。このようなサイドローブは、柱状部14Gが円柱である場合は現れにくい。この理由は、柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズのレンズ側壁面で全反射した光線は、レンズ面の光軸近くに集中した後、レンズ面から遠ざかるにつれて発散するのに対して、柱状部14Gが正四角柱であるオンチップレンズにあっては、レンズ側壁面で全反射した光線がレンズ面の光軸近くに集中しない代わりに、レンズ面から出射した後光線が互いに平行なまま進行するためと考えられる。
【0070】
次に、光線追跡シミュレーションに基づき図9の条件を満たす5種類の形状のオンチップレンズによって得られる近視野像を図12に示し、遠視野像を図13に示す。
【0071】
ここでも、オンチップレンズ14のレンズ面14Sにおける光の強度分布を近視野像とした。また、レンズ面から20 mm離れた位置に光軸に垂直に置かれた平面で観測される光強度分布を遠視野像とした。
【0072】
図12の横軸はレンズ面の中心を原点にとりレンズの半径方向に沿った距離をμm単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。また、図12に示す近視野像は、正四角形の対角線上における強度分布である。
【0073】
曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが以下の条件で与えられるように形成されたオンチップレンズにおける近視野像を示している。曲線aは(H, R)=(110μm,71.0μm)、曲線bは(H, R)=(120μm,71.0μm)、曲線cは(H, R)=(130μm,71.0μm)、曲線dは(H, R)=(140μm,74.0μm)、曲線eは(H, R)=(150μm,77.5μm)である。
【0074】
ここで、レンズ高Hが110μm、120μm、及び130μmに対してレンズ面の曲率半径Rを何れも71.0μmと同一に設定した理由を説明する。上述したように、柱状部14Gを構成する四角柱の一辺の長さが100μmに設定した関係で、この柱状部の垂直断面(柱状部の底面)の正方形の対角線の長さはほぼ141μmとなる。したがってレンズ面の曲率半径Rが141μm以下では柱状部のレンズ面14Sを一様に球面に形成することができなくなる。そこで、柱状部のレンズ面14Sを一様に球面に形成できる条件として、柱状部の垂直断面の正方形の対角線の長さの半分の長さに当る70.5μmより多少余裕を見てレンズ面の曲率半径Rの値を71.0μmと設定した。
【0075】
このように、曲線a〜曲線cについては、曲線d及び曲線eとは、配光角の特性が少し異なるが、この差異はきわめて小さく無視できる大きさである。
【0076】
図13の横軸は配光角を度単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。なお、図13に示す遠視野像は、正四角形の辺に沿った方向の配光分布である。
【0077】
遠視野像も、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求めた。すなわち、曲線a〜曲線eは、それぞれレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rが、近視野像と同一の5条件を満たす形状のオンチップレンズを想定して求められた遠視野像を示している。
【0078】
ここでも、上述の曲線a〜曲線eに対応するレンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rの組み合わせのそれぞれは、発光面12Sの位置が、レンズ高Hとレンズ面の曲率半径Rで決定されるオンチップレンズ14のほぼ焦点位置にくるように決められている。
【0079】
図12に示すように、レンズ高Hを増加させても、レンズ面中央における光強度の増加は、柱状部14Gが円柱である場合と比較して小さな値に収まっている。
【0080】
一方遠視野像は、図13に示したように、レンズ高Hをある値以上に増加させると、サイドローブが顕著に現れることが見て取れる。図示は省略してあるが、レンズ高Hを170μmまで増加させると、光軸上の光強度とサイドローブの光強度とが等しい大きさとなる。
【0081】
このようにサイドローブが生じると、このレンズ光学素子を画素として配置して構成される表示装置を裸眼で視認する場合、本来画素として輝く部分以外に輝点が見えるという不都合が発生する。また、サイドローブの成分が迷光として働き、表示装置に表示される画像の鮮明度を低下させる要因となる。
【0082】
図11及び図12にそれぞれ示す近視野像及び遠視野像から、柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズを備えるレンズ光学素子と同様に、柱状部14Gが正四角柱である場合も、レンズ高Hには望ましい上限値が存在することが分かる。すなわち、レンズ高Hをある値より小さく設定すれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる。
【0083】
図14を参照して、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高Hの上限値について検討する。図14は、オンチップレンズ14の柱状部14Gを構成する正四角柱を光軸に直交する面で切断した断面(正四角柱の底面)の形状を正方形レンズ断面として示してある。この正方形レンズ断面に内接する円の半径をr1、外接する円の半径をr2としてある。内接円の半径r1と外接円の半径r2の平均値(r1+r2)/2を、オンチップレンズの柱状部の太さDの1/2と定義した。すなわち、平均値(r1+r2)/2を、上述した柱状部14Gが円柱であるオンチップレンズの半径rに対応するものとして平均値(r1+r2)/2を用いて、レンズ高Hの上限値を算出した。
【0084】
正四角柱の柱状部14Gの内接円の半径r1及び外接円の半径r2とオンチップレンズの構成素材の屈折率nとの関係について説明する。オンチップレンズ14の柱状部14Gの側壁面14Lで光線が全反射する最小の高さhと、全反射条件を満たす光線の入射角の臨界角をθcとする。
【0085】
レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与えるレンズ高Hの上限値を与える条件式は、以下のとおりとなる。
θc=arcsin(1/n)
H < 3(r1+r2)/2 tanθc = 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
【0086】
一般に、柱状部14Gが正多角柱である場合、図15に示すように、この正多角形の内接円の半径r1及び外接円の半径r2とすれば、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件は、上式(2)で与えられる。
【0087】
正多角形の辺の数を増すと円形に近づくので、柱状部14Gを垂直断面が正多角形となる正多角柱で構成し、この正多角形の辺の数を多くなるように適宜選択することによって、遠視野像のサイドローブを発生しにくくすることが可能である。また、上述したように、柱状部14Gが正四角柱である場合、円柱である場合と比較して、近視野像の明るい部分が中心部分に集中しにくいので、この多角形の辺の数を少なくなるように適宜選択することによって、レンズ面が均一に明るく見える状態を実現しやすい。
【0088】
したがって、正多角形の辺の数を増減することによって、近視野像の強度不均一性と遠視野像に現れるサイドローブの発生の度合いを調整することが可能である。すなわち、レンズ光学素子が利用される表示装置の用途に合わせて、オンチップレンズの柱状部の形状を円柱とするか正多角柱とするかの選択を含め、正多角柱とするのであれば正多角形の辺の数を増減することによって、好適なレンズ光学素子を設計することができる。
【0089】
また、柱状部14Gを正四角柱とすることで、レンズ光学素子を2次元平面に並べて構成される表示装置は、平面全体にわたり隙間なく画素としてのレンズ光学素子を配置することが可能となる。柱状部14Gを円柱とした場合は、隣接する画素間に隙間が生じるが、柱状部14Gの断面形状が2次元平面に隙間なく引きつめられる正多角形であればこの隙間がなくなり、表示装置としてより効率的に画像を明るく形成することが可能となる。
【0090】
<表示装置>
以上説明したこの発明のレンズ光学素子を用いれば、図1を参照して説明した特許文献3に開示されている表示装置と類似の表示装置を形成することができる。図1に示したオンチップレンズ14を、上述のレンズ面が均一に明るく見える状態を実現できる臨界条件を与える条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成すれば、輝いている画素のレンズ面全体が均一に明るく見える表示装置を実現することができる。
【0091】
すなわち、半導体プロセス技術を応用し、同一基板上に設けた光源アレイに対して、封止部材でもあるマイクロレンズアレイ(オンチップレンズのアレイ)を、個々のマイクロレンズ部分を条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成すれば、液晶表示装置と同程度に高精細で、かつ液晶表示装置より輝度が高い表示装置が実現される。
【0092】
また、この発明のレンズ光学素子を用いて、実用上屋外に設置される巨大な表示装置を実現することも可能である。この発明のレンズ光学素子を2次元状に複数配列することで、表示装置を構成できる。この場合は、狭いピッチで高精細な表示を行うことは要請されないので、画素を構成するレンズ光学素子は小さく形成する必要がない。ただし、この場合であってもオンチップレンズが条件式(1)あるいは(2)を満足するように形成したこの発明のレンズ光学素子を画素として利用すれば、輝いている画素のレンズ面全体が均一に明るく見えるという好適な特性を有する表示装置とすることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10:共通基板
12:LEDチップ
14:オンチップレンズ
14G: 柱状部
14L: 柱状部の側壁面
14S: 柱状部の頭頂部分の凸面
20:レンズ光学素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部の頭頂部分に凸面が形成されたオンチップレンズと、前記オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置される発光面とを備え、
前記発光面から前記凸面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、前記柱状部の太さと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、
前記発光面が発光すると、前記オンチップレンズの凸面が均一の明るさで視認される状態となるように設定されている
ことを特徴とするレンズ光学素子。
【請求項2】
前記オンチップレンズの柱状部が円柱であって、
前記レンズ高Hと、前記柱状部の底面の半径rと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率nが、次式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ光学素子。
H < 3r/(n2-1)1/2 (1)
【請求項3】
前記オンチップレンズの柱状部が正多角柱であって、
前記正多角柱の底面の正多角形に内接する円の半径r1と、外接する円の半径r2と、前記レンズ高Hと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率nとが、次式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ光学素子。
H < 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
【請求項4】
前記オンチップレンズの頭頂部分に構成された凸面が球面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレンズ光学素子。
【請求項5】
前記オンチップレンズの頭頂部分に構成された凸面が非球面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレンズ光学素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のレンズ光学素子が、1次元状あるいは2次元状で配列されて構成される表示装置であって、
前記凸面の頂点が等間隔に配列されていることを特徴とする表示装置。
【請求項1】
柱状部の頭頂部分に凸面が形成されたオンチップレンズと、前記オンチップレンズの柱状部の底部に被覆された状態に配置される発光面とを備え、
前記発光面から前記凸面の頂点までの高さとして定義されるレンズ高と、前記柱状部の太さと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率との関係が、
前記発光面が発光すると、前記オンチップレンズの凸面が均一の明るさで視認される状態となるように設定されている
ことを特徴とするレンズ光学素子。
【請求項2】
前記オンチップレンズの柱状部が円柱であって、
前記レンズ高Hと、前記柱状部の底面の半径rと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率nが、次式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ光学素子。
H < 3r/(n2-1)1/2 (1)
【請求項3】
前記オンチップレンズの柱状部が正多角柱であって、
前記正多角柱の底面の正多角形に内接する円の半径r1と、外接する円の半径r2と、前記レンズ高Hと、前記オンチップレンズの構成素材の屈折率nとが、次式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ光学素子。
H < 3(r1+r2)/2(n2-1)1/2 (2)
【請求項4】
前記オンチップレンズの頭頂部分に構成された凸面が球面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレンズ光学素子。
【請求項5】
前記オンチップレンズの頭頂部分に構成された凸面が非球面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレンズ光学素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のレンズ光学素子が、1次元状あるいは2次元状で配列されて構成される表示装置であって、
前記凸面の頂点が等間隔に配列されていることを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−64941(P2013−64941A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204595(P2011−204595)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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