説明

レンズ制御装置、撮影レンズ、撮像装置およびレンズ制御プログラム

【課題】他の機能が割り当てられた操作部材にフォーカスレンズ駆動の機能を追加的に割り当てると、他の機能との兼ね合いからその操作仕様はおのずと制限的になる。そこで、汎用的な操作部材によるユーザからの指示入力であっても、フォーカスレンズ駆動に適した制御機構が求められていた。
【解決手段】上記課題を解決するために、レンズ制御装置は、操作部材が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数を取得する取得部と、単位時間当たりのパルス数が、予め定められた閾値よりも小さい場合は、レンズを光軸方向へ移動させるアクチュエータの1パルス当たりの駆動量を第1駆動量とし、閾値以上の場合は、第1駆動量よりも大きい第2駆動量とするアクチュエータ制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ制御装置、撮影レンズ、撮像装置およびレンズ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスレンズをモータ駆動により移動させて被写体像を合焦させる場合に、ユーザによる操作部材の操作時間に応じて連続駆動する連続駆動モードと、一回の操作で決められた駆動量だけ駆動する微小駆動モードを有するレンズ制御装置が知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開平3−163422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フォーカスレンズを駆動させる操作部材を専用に設けられるのであれば、フォーカスレンズ駆動に対する様々な要求を満たす操作部材を設けることができるが、近時のカメラは小型軽量化が一段と進み、できる限り操作部材を少なくしたいという要請がある。そこで、一つの操作部材が複数の機能に対する操作を受け付けることも少なくない。しかし、他の機能が割り当てられた操作部材にフォーカスレンズ駆動の機能を追加的に割り当てると、他の機能との兼ね合いからその操作仕様はおのずと制限的になる。そこで、汎用的な操作部材によるユーザからの指示入力であっても、フォーカスレンズ駆動に適した制御機構が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様におけるレンズ制御装置は、操作部材が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数を取得する取得部と、単位時間当たりのパルス数が、予め定められた閾値よりも小さい場合は、レンズを光軸方向へ移動させるアクチュエータの1パルス当たりの駆動量を第1駆動量とし、閾値以上の場合は、第1駆動量よりも大きい第2駆動量とするアクチュエータ制御部とを備える。
【0005】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様における撮影レンズは、上記のレンズ制御装置を含む。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様における撮像装置は、上記のレンズ制御装置を含む。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の第4の態様におけるレンズ制御プログラムは、操作部材が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数を取得する取得ステップと、パルス数が、予め定められた閾値よりも小さい場合は、レンズを光軸方向へ移動させるアクチュエータの1パルス当たりの駆動量を第1駆動量とし、閾値以上の場合は、第1駆動量よりも大きい第2駆動量とするアクチュエータ制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る一眼レフカメラの背面斜視図である。
【図2】一眼レフカメラのシステム構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】回転ダイヤルの操作によって発生するパルスの説明図である。
【図4】低速モードと高速モードの切り替えに係るフロー図である。
【図5】パワーフォーカスにおけるフォーカスレンズ駆動のフロー図である。
【図6】焦点深度を説明する説明図である。
【図7】異なる交換レンズに対する高速モードの適用を説明する説明図である。
【図8】AF動作後にパワーフォーカスを実行する場合のフロー図である。
【図9】焦点評価値を用いた場合の低速モードと高速モードの切り替えに係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の背面斜視図である。一眼レフカメラ10は、カメラ本体30に交換レンズ20が装着されて構成される。カメラ本体30には、焦点距離、開放F値等の異なる複数の交換レンズ20が交換可能に装着される。
【0012】
交換レンズ20は、そのレンズ鏡筒内に、透過する被写体光束の焦点を調整するフォーカスレンズ群が設けられている。フォーカスレンズ群は、光軸方向に沿って移動することにより撮像素子受光面における焦点を調整する。フォーカスレンズ群は、同じくレンズ鏡筒内に設けられたフォーカスレンズモータの駆動により移動される。
【0013】
カメラ本体30の背面には、回転ダイヤル31が設けられている。回転ダイヤル31は、交換レンズ20の光軸と平行な回転軸周りに、時計回りおよび反時計回りに回転することができ、ユーザによる操作部材としての役割を担う。回転ダイヤル31は、一定角度回転されるごとにクリック感が得られるように構成されており、ユーザは、この1クリックに対して1つの入力パルスをカメラ本体30へ与えることができる。本実施形態においては、45°間隔でクリック感が得られるように構成されており、したがって、ユーザは、回転ダイヤル31を1回転させると8つの入力パルスをカメラ本体30へ与えることができる。
【0014】
回転ダイヤル31の中心部には決定ボタン32が設けられており、ユーザは決定ボタン32を押下げることにより、選択したメニュー項目等をカメラ本体30に設定、実行させる。また、カメラ本体30の背面部には液晶表示部33が設けられている。液晶表示部33には、撮影された画像データの画像表示の他、一眼レフカメラ10の各種設定に関する様々な設定情報、メニュー項目等も表示される。したがって、ユーザは、回転ダイヤル31、決定ボタン32および他の操作部材を操作することにより、液晶表示部33に画像データ、メニュー項目等を順次表示させて視認しながら、特定の項目を選択、実行する指示をカメラ本体30に与えることができる。
【0015】
ユーザがカメラ本体30を右手で把持したときに人差し指が掛かる位置には、レリーズボタン34が配置されている。レリーズボタン34は、押下げ方向に2段階に検知できる押しボタンで構成されており、1段階目の押下げであるSW1の検知により撮影準備動作であるAF、AE等を実行し、2段階目の押下げであるSW2の検知により撮像素子による本撮影画像としての被写体画像の取得動作を実行する。
【0016】
ここで、フォーカスレンズ群の移動による焦点調整の概略について説明する。焦点調整のモードとしては、オートフォーカスモード、パワーフォーカスモードおよびこれらを併用する併用モードが用意されている。ユーザは、撮影に先立ち、メニュー選択によりいずれかの焦点調整モードを選択して設定しておく。
【0017】
オートフォーカスモードは、カメラ本体30がレリーズボタン34のSW1を検知したときに、例えば公知のコントラスト検出方式により、フォーカスレンズモータを駆動して合焦状態となる位置までフォーカスレンズ群を自動的に移動する。より具体的には、フォーカスレンズ群を連続的に移動させつつ被写体画像を逐次取得して、それぞれの画像から高周波成分の割合に対応する焦点評価値を算出し、焦点評価値が極大値となる位置へフォーカスレンズ群を移動させることによりオートフォーカスを実現する。ユーザは、液晶表示部33に連続的に表示される被写体画像により、合焦過程を視認することができる。
【0018】
パワーフォーカスモードは、カメラ本体30がユーザによる回転ダイヤル31の回転操作を検出し、その回転量に応じてフォーカスレンズモータを駆動することにより、フォーカスレンズ群を移動させる。例えば、ユーザが回転ダイヤル31を時計回りに回転させると、フォーカスレンズ群は至近端側から無限端側へ移動し、逆に、反時計回りに回転させると、無限端側から至近端側へ移動する。この間カメラ本体30は連続的に被写体画像を取得しており、取得された被写体画像は、逐次液晶表示部33に表示される。したがって、ユーザは、回転ダイヤル31を操作しつつ合焦状態を液晶表示部33の表示により確認することができる。もちろん、拡大表示機能を利用して特定の被写体領域を拡大させることにより、厳密な合焦作業を行うこともできる。また、連続的に取得される被写体画像を利用して焦点評価値を算出し、これを液晶表示部33で視覚化することにより、ユーザによる合焦作業をアシストすることもできる。パワーフォーカスモードの具体的な制御については後述する。
【0019】
併用モードは、オートフォーカスによる合焦動作後にパワーフォーカスによる微調整を許容するモードである。ユーザは、例えば、被写体である人物の鼻にオートフォーカスされたときに、回転ダイヤル31を操作することにより目に合焦させるような微調整を行うことができる。
【0020】
図2は、一眼レフカメラ10のシステム構成を概略的に示すブロック図である。一眼レフカメラ10のシステムは、交換レンズ20とカメラ本体30のそれぞれに対応して、レンズシステム制御部120を中心とするレンズ制御系と、カメラシステム制御部130を中心とするカメラ制御系により構成される。そして、レンズ制御系とカメラ制御系は、レンズマウント121とカメラマウント131によって接続される接続部を介して、相互に各種データ、制御信号の授受を行う。
【0021】
カメラ制御系に含まれる画像処理部136は、カメラシステム制御部130からの指令に従って、撮像素子135で光電変換された撮像信号を画像データに処理する。本撮影画像において処理された画像データは、表示制御部134へ送られて、例えば撮影後の一定時間の間、液晶表示部33に表示される。これに並行して、処理された画像データは、所定の画像フォーマットに加工され、外部接続IF137を介して外部メモリに記録される。
【0022】
カメラメモリ132は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、一眼レフカメラ10を制御するプログラム、各種パラメータなどを記憶する役割を担う。ワークメモリ133は、例えばRAMなどの高速アクセスできるメモリであり、処理中の画像データを一時的に保管する役割などを担う。
【0023】
操作入力部138は、回転ダイヤル31、決定ボタン、レリーズボタン34等の操作部材が操作されたことを検出して、カメラシステム制御部130へ出力する。タイマー139は、カメラシステム制御部130によるプログラムの実行に関わる様々な計時を担い、カメラシステム制御部130からのリセット信号により計時を開始し、呼び出しに応じて経過時刻を引き渡す。タイマー139は、複数の計時を並行して実行できる。焦点評価部140は、取得される被写体画像の高周波成分の割合から焦点評価値FEを算出する。焦点評価値FEが高いほど被写体画像のコントラストが高いことを意味する。すなわち、よりピントが合っている状態を表す。逆に焦点評価値FEが低い場合は、ぼけ画像であると判断される。
【0024】
レンズシステム制御部120は、カメラシステム制御部130からの制御信号を受けて各種動作を実行する。レンズメモリ122は、レンズ固有の情報およびレンズシステム制御部120が実行するプログラム等を記憶している。モータ駆動回路123は、カメラシステム制御部130からの制御信号をレンズシステム制御部120が受け取って加工した駆動信号が入力されて、フォーカスレンズ群を移動させるアクチュエータとしてのフォーカスレンズモータを駆動する。
【0025】
図3は、回転ダイヤル31の操作によって発生するパルスの説明図である。回転ダイヤル31は、回転部材と共に回転する金属ブラシと、固定された接点パターンとの接触、非接触によりオンオフが検出される。このような金属ブラシと接点パターンがA相、B相として2組用意されている。
【0026】
図示するように、A相とB相は1/4波長分ずれて設定されている。すなわち回転に伴うオンオフのタイミングが相互にずれるように設定されている。これにより、回転ダイヤル31が時計回りであるCW方向に回転されたときには、A相パルス301に連続してB相パルス302が検出され、若干遅れて再びA相パルス301が検出されることになる。逆に回転ダイヤル31が反時計回りであるCCW方向に回転されたときには、B相パルス302に連続してA相パルス301が検出され、若干遅れて再びB相パルス302が検出されることになる。したがって、カメラシステム制御部130は、操作入力部138から受け取るこのような検出パルスのタイミングパターンと回数から、回転方向と入力パルス数を判断する。
【0027】
なお、入力パルス数は、A相パルス301とB相パルス302がそれぞれ1回検出されたときに1パルスとカウントする。また、上述のように、回転ダイヤル31は1回転させると8つの入力パルスを発生させるので、A相、B相の接点パターンも45°間隔で形成されている。
【0028】
次にパワーフォーカスモードの詳細について説明する。本実施形態に係るパワーフォーカスモードは、回転ダイヤル31が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数が、予め定められた閾値pよりも大きいか小さいかにより、1パルス当りのフォーカスレンズモータの駆動量を変更する。より具体的には、1クリック当りのフォーカスレンズの移動量を、回転ダイヤル31が速く回されたときには大きく、ゆっくり回されたときには小さくする。つまり、カメラシステム制御部130は、回転ダイヤル31が回される速さを検出して、フォーカスレンズモータの駆動を低速モードと高速モードとに切り替える。
【0029】
図4は、低速モードと高速モードの切り替えに係るフロー図である。フローは、カメラシステム制御部130が、回転ダイヤル31の非操作状態から1パルスを検出した時点で開始される。
【0030】
カメラシステム制御部130は、回転ダイヤル31から1パルスが送られてきたことを検出すると、ステップS401で、速度モードフラグfgに1を代入する。速度モードフラグfgが1であることは、フォーカスレンズモータの駆動モードとして低速モードが選択されていることを示す。
【0031】
続いてカメラシステム制御部130は、ステップS402で入力パルスカウンタpに1を代入し、ステップS403でタイマー139に対してリセット信号を送信してタイマーtを開始させる。そして、ステップS404で、カメラシステム制御部130は、続けてパルス入力が有るか否かを判断する。パルス入力が有ればステップS405へ進み、カメラシステム制御部130は、入力パルスカウンタpをインクリメントする。これをタイマーtが単位時間tに到達するまで繰り返す(ステップS406)。単位時間tは、例えば50msec程度に設定される。
【0032】
ステップS406で単位時間tに到達すると、ステップS407へ進み、カメラシステム制御部130は、入力パルスカウンタpが閾値pを超えているか否かを判断する。閾値pは、例えば3パルス程度に設定される。閾値pを超えている場合は、ステップS408へ進み、速度モードフラグfgに2を代入する。速度モードフラグfgが2であることは、フォーカスレンズモータの駆動モードとして高速モードが選択されていることを示す。入力パルスカウンタpが閾値p以下である場合は、ステップS409へ進み、速度モードフラグfgに1を代入する。もともと速度モードフラグfgが1であればそのまま1の値を維持する。
【0033】
そして、カメラシステム制御部130は、ステップS410へ進み、さらにパルス入力が有るか否かにより、継続して回転ダイヤル31が操作されているか否かを判断する。操作されていると判断した場合には、再びステップS402へ戻り、一連の動作を繰り返す。操作が終了していると判断した場合には、一連のフローを終わらせる。
【0034】
続いて、このようにして切り替えられたフォーカスレンズモータの駆動モードにより、どのようにフォーカスレンズ群が移動されるかについて説明する。図5は、パワーフォーカスにおけるフォーカスレンズ駆動のフロー図である。
【0035】
パワーフォーカスモードでは、回転ダイヤル31の操作に伴ってフォーカスレンズ群がフォーカスレンズモータによって駆動されるので、フローは、カメラシステム制御部130が、回転ダイヤル31の非操作状態から1パルスを検出した時点で開始される。つまり、図4のフローと同時に並行して開始される。
【0036】
カメラシステム制御部130は、ステップS501で現在の速度モードフラグfgが1であるか否かを確認する。図4のフローではステップS401で速度モードフラグfgのデフォルト値として1が代入されたが、ステップS501の確認は、タイミング的にはステップS401より若干遅延して行われる。速度モードフラグfgが1であれば、フォーカスレンズモータの駆動モードとして低速モードが選択されていると判断され、ステップS502で、カメラシステム制御部130は、フォーカスレンズ群を低速モードで移動させる。
【0037】
低速モードでは、カメラシステム制御部130は、1パルスの入力に対して予め定められる駆動量であるmvに対応する制御信号をレンズシステム制御部120へ送る。レンズシステム制御部120は、カメラシステム制御部130から制御信号を受け取ると、レンズメモリ122に記憶されているフォーカスレンズモータの特性等を読み出して、mvに相当する駆動信号を生成する。そして、モータ駆動回路123は、レンズシステム制御部120により生成された駆動信号を受けて、mvだけフォーカスレンズモータを駆動する。フォーカスレンズ群は、フォーカスレンズモータの駆動量mvに応じて、光軸方向に移動する。なお、移動の方向は、回転ダイヤル31の回転方向により、無限端側から至近端側または至近端側から無限端側に決定される。
【0038】
交換レンズ20には、そのレンズ特性等に応じてさまざまなタイプのフォーカスレンズモータが採用されている。例えばDCモータが採用されている場合には、フォーカスレンズ群の駆動量としてmvに相当する回転量、回転角がレンズシステム制御部120により算出される。このとき、フォーカスレンズモータのタイプ、出力減速比などは、レンズメモリ122にフォーカスレンズモータの特性として記憶されている。
【0039】
ステップS501で、速度モードフラグfgが1でなければ2と判断し、フォーカスレンズモータの駆動モードとして高速モードが選択されていると判断する。そして、ステップS503で、カメラ制御システム130は、フォーカスレンズ群を高速モードで移動させる。
【0040】
高速モードでは、カメラシステム制御部130は、1パルスの入力に対して予め定められる駆動量であるmvに対応する制御信号をレンズシステム制御部120へ送る。mvはmvより大きい値に設定されており、例えば定数倍として3倍程度が設定される。レンズシステム制御部120は、カメラシステム制御部130から制御信号を受け取ると、レンズメモリ122に記憶されているフォーカスレンズモータの特性等を読み出して、mvに相当する駆動信号を生成する。そして、モータ駆動回路123は、レンズシステム制御部120により生成された駆動信号を受けて、mvだけフォーカスレンズモータを駆動する。
【0041】
1パルスの入力に応じてフォーカスレンズモータを、低速モードでmvまたは高速モードでmv駆動したら、カメラシステム制御部130は、ステップS504で、さらにパルス入力が有るか否かにより、継続して回転ダイヤル31が操作されているか否かを判断する。操作されていると判断した場合には、再びステップS501へ戻り、一連の動作を繰り返す。このとき、図4のフローで示した低速モードと高速モードの切り替えは並行して実行されているので、その結果に応じてステップS501の判断が逐次変更される。ステップS504で、操作が終了していると判断した場合には、一連の処理を終える。
【0042】
駆動量mvは、予め定められた固定値でも良いし、交換レンズの特性、撮影状況等に応じて動的に変更しても良い。ただし、パワーフォーカスにより被写体像を合焦させるには、駆動量mvによるフォーカスレンズ群の移動量が焦点深度の幅以下でなければならない。駆動量mvによるフォーカスレンズ群の移動量が焦点深度の幅を超えてしまうと、合焦と評価される位置にフォーカスレンズ群を静止させることができない場合が生じるからである。図6は、焦点深度を説明する説明図である。
【0043】
フォーカスレンズ群21を光軸11に沿って透過する被写体光束12は、絞り22で制限されて、受光面近傍で結像する。このとき、光軸に垂直な平面で被写体光束を切断したときの円が許容錯乱円δよりも小さければ、その平面における被写体像は合焦状態であると評価できる。すなわち、許容錯乱円δにより光軸方向に沿って規定される焦点深度DOFの間に撮像素子135の受光面が存在すれば、被写体像は合焦状態と評価できる。
【0044】
図示するように、焦点深度DOFは交換レンズの焦点距離、絞り値、被写体までの距離によって変動する。具体的には、焦点深度DOFは、絞り値が大きいほど大きくなり、焦点距離が長いほど小さくなり、被写体が近くにあるほど小さくなる。合焦動作を絞り開放で行うのであれば、交換レンズの開放F値によっても左右される。
【0045】
そこで、駆動量mvは、その交換レンズ20において最も小さくなる場合の焦点深度DOFを基準として、フォーカスレンズ群の駆動ピッチがこのDOF以下となるように設定すると良い。もしくは、上述のように変動する焦点深度DOFの大きさに合わせて駆動量mvを動的に変更しても良い。
【0046】
低速モードは被写体の焦点調整を厳密に行うことを目的としたモードであるので、上述のように焦点深度DOFに基づいて駆動量mvが決定されることが望ましかった。一方で、高速モードは、勢いよく回転ダイヤル31を回転させるユーザの意図を鑑みて、少しの操作量でフォーカスレンズ群を大きく移動させることを目的としたモードである。そこで、高速モードに好ましい駆動量mvの定め方について説明する。
【0047】
図7は、異なる交換レンズ20に対する高速モードの適用を説明する説明図である。上述のように、ユーザは、撮影意図に応じてカメラ本体30に異なる交換レンズ20を装着することができる。交換レンズ20は、それぞれが焦点距離、開放F値、最短撮影距離などの特性において異なり、さらには、最短撮影距離の被写体に合焦させる至近端から無限遠の被写体に合焦させる無限端までのフォーカスレンズ群の移動量もそれぞれで異なる。
【0048】
例えば、図示するように無限端から至近端へフォーカスレンズ群を移動させようとした場合、交換レンズAのフォーカスレンズモータであれば1320回転で到達し、交換レンズBであれば2040回転で到達し、交換レンズCであれば2400回転で到達する。しかしながら、駆動量mvが交換レンズに依らず一定であれば、無限端から至近端へ至る操作量が交換レンズごとにまちまちとなる。このような操作感はユーザにとっては好ましくない。
【0049】
そこで、いずれの交換レンズ20が装着された場合であっても、無限端から至近端までフォーカスレンズ群を移動させる回転ダイヤル31の操作量が一定となるように駆動量mvを調整する。例えば、ユーザは回転ダイヤル31を3回転させれば、いずれの交換レンズが装着されている場合でも、無限端から至近端までフォーカスレンズ群を移動させることができる。
【0050】
具体的には、レンズシステム制御部120は、レンズメモリ122から無限端から至近端へ至るフォーカスレンズモータの回転量を取得して、3回転に相当するパルス数である24パルスで除することにより駆動量mvを定める。すなわち、回転ダイヤル31からの1パルス当りの回転量である駆動量mvを、交換レンズAであれば55回転、交換レンズBであれば85回転、交換レンズCであれば100回転と定める。このように駆動量mvを定めれば、ユーザにとって操作性の良いパワーフォーカスとなる。
【0051】
次に併用モードについて説明する。図8は、AF動作後にパワーフォーカスを実行する場合のフロー図である。フローはオートフォーカスによる焦点調整が終了した時点で開始される。
【0052】
オートフォーカスによる焦点調整が終了すると、カメラシステム制御部130は、ステップS801でタイマー139に対してリセット信号を送信してタイマーtを開始させる。そしてステップS802で、パルス入力が有るか否かを判断する。パルス入力がなければステップS803へ進み、予め定められたタイマーオフ時間tが経過したか否かを、タイマー139の計時時間を呼び出して判断する。まだ経過していなければ再びステップS802へ戻る。つまり、タイマーオフ時間tまでの間パルス入力を待機する。タイマーオフ時間tが経過したらそのまま一連の処理を終了する。
【0053】
カメラシステム制御部130は、ステップS802で、パルス入力を確認したら、ステップS804へ進み、速度モードフラグfgに1を代入する。そして、ステップS805へ進み、ユーザによる回転ダイヤル31の操作が終わるのを待って、一連の処理を終了する。すなわち、図4のフローによれば、単位時間当たりのパルス数をカウントして速度モードフラグfgに1を代入するか2を代入するかを決定したが、併用モードにおけるパワーフォーカスでは、単位時間当たりのパルス数によらず、速度モードフラグfgを1とする。つまり、低速モードでフォーカスレンズモータを駆動する。併用モードにおいては、焦点調整は、すでにオートフォーカスによりほぼ完了しており、ユーザは微調整を行う程度である。したがって、フォーカスレンズ群を大きく移動させることを禁止して、被写体の焦点調整を厳密に行うことができる低速モードによりフォーカスレンズ群を移動させる方が、ユーザにとって操作感が良い。
【0054】
次に、パワーフォーカスモードにおいて、焦点評価値FEの算出結果を応用する応用例について説明する。図9は、焦点評価値FEを用いた場合の低速モードと高速モードの切り替えに係るフロー図である。フローは、カメラシステム制御部130が、回転ダイヤル31の非操作状態から1パルスを検出した時点で開始される。
【0055】
カメラシステム制御部130は、回転ダイヤル31から1パルスが送られてきたことを検出すると、ステップS901で焦点評価値FEを焦点評価部140から取得する。なお、この焦点評価値FEの測定対象となる被写体は、ユーザが手動操作で予め決定しているか、あるいはカメラが自動的に測定対象となる被写体を決定しているものとする。ユーザが手動操作で予め決定する手法としては、例えば、複数の焦点検出エリアの中からユーザの指定した焦点検出エリアに存在している被写体を測定被写体として決定する方法、あるいはタッチパネル画面を備えているカメラであれば、タッチパネル画面上に表示されている被写体に対して画面上でタッチ操作して決定する手法等が挙げられる。一方、カメラが自動決定する手法としては、例えば、周知の顔認識(顔検出)をして検出された被写体(顔)を測定対象被写体として決定する手法、あるいはカメラに対して最至近に存在する被写体を測定対象として決定する手法などが挙げられる。
【0056】
そして、ステップS902で、予め定められた基準評価値FEよりも大きいか否かを判断する。基準評価値FEは、およそ合焦状態にあって、焦点調整を実行する場合でも微調整程度であると判断され得る閾値である。したがって、取得した焦点評価値FEが基準評価値FEよりも大きい場合は、ステップS903へ進み、速度モードフラグfgに1を代入する。
【0057】
ステップS902で、取得した焦点評価値FEが基準評価値FE以下であると判断した場合は、カメラシステム制御部130は、ステップS904へ進み、取得した焦点評価値FEが基準評価値FEよりも小さいか否かを判断する。基準評価値FEは、基準評価値FEより小さな値に設定されており、被写体像が大ぼけの状態であって、焦点調整を実行する場合には大きくフォーカスレンズ群を移動させる必要があると判断され得る閾値である。したがって、取得した焦点評価値FEが基準評価値FEよりも小さい場合は、ステップS905へ進み、速度モードフラグfgに2を代入する。
【0058】
ステップS904で、取得した焦点評価値FEが基準評価値FEより大きいと判断した場合は、ステップS906へ進み、図4を用いて説明した通常の処理を実行する。そして、カメラシステム制御部130は、ステップS907で、1パルスの入力に応じてフォーカスレンズモータを、低速モードでmvまたは高速モードでmv駆動したら、ステップS908へ進み、ユーザによる回転ダイヤル31の操作が継続されているかを判断する。操作が継続されていれば、ステップS901へ戻って、再び一連の処理を実行する。すなわち、カメラシステム制御部130は、mvまたはmvの駆動量によりフォーカスレンズ群を移動させるごとに焦点評価値FEを取得して、速度モードを再設定する。このように細かく評価値を取得することにより、厳密な焦点調整と、フォーカスレンズ群を高速に移動させることを、スムーズに実行し得る。
【0059】
カメラシステム制御部130は、ステップS908で、ユーザによる回転ダイヤル31の操作が終了していると判断すれば、一連の処理を終える。以上のように処理することにより、被写体画像がぼけ状態であれば、単位時間当たりのパルス数が閾値p以下の場合であっても高速モードが設定され、また、被写体画像がほぼ合焦状態であれば、単位時間当たりのパルス数が閾値pより大きい場合であっても低速モードが設定されるので、いち早く合焦状態に到達することができる。
【0060】
以上の実施形態においては、カメラシステム制御部130が、回転ダイヤル31が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数pを取得し、このパルス数pが閾値pよりも大きいか否かを判断して、フォーカスレンズ群を光軸方向へ移動させるフォーカスレンズモータの1パルス当りの駆動量をmvとするかmvとするかを決定した。つまり、レンズ制御装置としての役割を、カメラ本体30が備えるカメラシステム制御部130が担うものとして説明した。しかし、撮影レンズとしての交換レンズ20が備えるレンズシステム制御部120がこの役割を担っても良い。この場合、カメラ本体30が備える回転ダイヤル31からのパルスは、カメラマウント131およびレンズマウント121を介してレンズシステム制御部120に引き渡される。なお、回転ダイヤル31を交換レンズ20側に備えるように構成しても構わない。
【0061】
また、一眼レフカメラ10を有線または無線によりPC等のコンピュータと接続して遠隔操作する場合は、遠隔操作するコンピュータがレンズ制御装置としての役割を担うこともできる。また、上記の実施形態においては、一眼レフカメラ10を例に説明したが、ミラーレス一眼カメラであっても、コンパクトカメラであっても、さらには、ビデオカメラであっても良い。近時の撮像装置は、動画撮影機能を備えることが多いが、パワーフォーカスは、動画撮影においても相性が良い。また、上記の実施形態においては、フォーカスレンズ群の移動を例に説明したが、同様に他の操作部材を利用してズームレンズ群を移動させる場合に適用しても良い。また、操作部材は回転ダイヤルに限らず、操作量を規定できる操作部材であれば、例えばスライドスイッチなどであっても良い。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0063】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0064】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、12 被写体光束、20 交換レンズ、21 フォーカスレンズ群、22 絞り、30 カメラ本体、31 回転ダイヤル、32 決定ボタン、33 液晶表示部、34 レリーズボタン、120 レンズシステム制御部、121 レンズマウント、130 カメラシステム制御部、131 カメラマウント、132 カメラメモリ、133 ワークメモリ、134 表示制御部、135 撮像素子、136 画像処理部、137 外部接続IF、138 操作入力部、301 A相パルス、302 B相パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数を取得する取得部と、
前記単位時間当たりのパルス数が、予め定められた閾値よりも小さい場合は、レンズを光軸方向へ移動させるアクチュエータの1パルス当たりの駆動量を第1駆動量とし、前記閾値以上の場合は、前記第1駆動量よりも大きい第2駆動量とするアクチュエータ制御部と
を備えるレンズ制御装置。
【請求項2】
前記レンズはフォーカスレンズである請求項1に記載のレンズ制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御部は、前記第1駆動量を焦点深度に基づいて定める請求項2に記載のレンズ制御装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御部は、前記第2駆動量を前記第1駆動量の定数倍として定める請求項2または3に記載のレンズ制御装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ制御部は、前記第2駆動量として、異なる複数の撮影レンズのそれぞれにおける前記フォーカスレンズの至近端から無限端までの駆動量を、予め定められたパルス数で除した値として定める請求項2から4のいずれか1項に記載のレンズ制御装置。
【請求項6】
前記アクチュエータ制御部は、自動焦点調整により前記フォーカスレンズを移動した後に連続して前記操作部材の操作により前記フォーカスレンズを移動するときは、前記単位時間当たりのパルス数によらず前記第1駆動量とする請求項2から5のいずれか1項に記載のレンズ制御装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ制御部は、予め定められた被写体領域の焦点評価値を取得して、前記焦点評価値が予め定められた条件を満たす場合には、前記単位時間当たりのパルス数に関わらず前記第1駆動量と前記第2駆動量を切り替える請求項2から6のいずれか1項に記載のレンズ制御装置。
【請求項8】
前記アクチュエータ制御部は、前記フォーカスレンズを前記第1駆動量または前記第2駆動量により移動させるごとに前記焦点評価値を取得する請求項7に記載のレンズ制御装置。
【請求項9】
前記アクチュエータ制御部は、前記焦点評価値が予め定められた評価値よりも小さいときは、前記単位時間当たりのパルス数が前記閾値よりも小さい場合であっても前記駆動量を前記第2駆動量とする請求項7または8に記載のレンズ制御装置。
【請求項10】
前記アクチュエータ制御部は、前記焦点評価値が予め定められた評価値よりも大きいときは、前記単位時間当たりのパルス数が前記閾値以上の場合であっても前記駆動量を前記第1駆動量とする請求項7から9のいずれか1項に記載のレンズ制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のレンズ制御装置を含む撮影レンズ。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載のレンズ制御装置を含む撮像装置。
【請求項13】
操作部材が操作されることにより出力される単位時間当たりのパルス数を取得する取得ステップと、
前記パルス数が、予め定められた閾値よりも小さい場合は、レンズを光軸方向へ移動させるアクチュエータの1パルス当たりの駆動量を第1駆動量とし、前記閾値以上の場合は、前記第1駆動量よりも大きい第2駆動量とするアクチュエータ制御ステップと
をコンピュータに実行させるレンズ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24962(P2013−24962A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157610(P2011−157610)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】