説明

レンズ加工用パッド、その製造方法、プラスチックレンズの製造方法および粘着部材

【課題】撥水加工が施された表面摩擦係数の低いレンズであっても軸ずれが発生せず良好な形状加工を行うことができるレンズ加工用パッドを提供する。
【解決手段】レンズ加工用パッド10は、基材11と、この基材11の両面にそれぞれ貼着されたレンズ側粘着層12および治具側粘着層13とからなり、使用前においてはレンズ側粘着層12と治具側粘着層13の表面に剥離シート14、15がそれぞれ貼着されている。基材11は、クッション層16とコア層17とを備え、コア層17がレンズ側粘着層12とクッション層16との間に介在されている。剥離シート14は、粘着層12に密着する面の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下であり、この表面粗さが粘着層12の表面に転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ加工用パッド、レンズ加工用パッドの製造方法、プラスチックレンズの製造方法および粘着部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質の表面に撥水加工を施す技術が知られている。撥水処理を施すと、その表面エネルギーが低いため、他の物質の付着を阻害する。このため、撥水効果の他に優れた防汚性を実現する。また、撥水処理が施された表面は付着物を強固に吸着保持することができないため、一度付いた汚れも容易に除去することができる。また、摩擦係数が低いため、指が直接的または間接的に接触したときに滑らかな感触を与えることができる。
【0003】
しかしながら、撥水加工が施された面は付着を阻害するため、粘着テープの粘着をも阻害する。つまり、粘着テープを撥水加工面に貼着しても、容易に剥離してしまう。また、粘着テープの粘着面に剪断方向の力が作用すると、撥水加工表面との密着状態が容易に解消され粘着テープの貼着箇所にずれが生じ易くなる。
【0004】
撥水加工が施されるものの一例として、眼鏡レンズが挙げられる。眼鏡レンズには、指の接触による皮脂汚れや、粉塵汚れ等を回避するために撥水加工処理が施されているものがある。このようなレンズを眼鏡フレームに枠入れする製造過程には、撥水加工された表面に粘着テープを貼着する工程が含まれている。さらに、その工程では、粘着界面に過酷な負荷が加えられる。具体的な工程内容を以下に記載する。
【0005】
眼鏡レンズの製造に際しては、円形レンズ(以下、被加工レンズまたは単にレンズともいう)の周面を眼鏡フレームの玉型形状データに基づいて、砥石やカッター等の回転系の加工工具によって研削または切削加工することで、眼鏡フレームの枠形状に適合する玉型形状とし、眼鏡レンズを製作している。眼鏡レンズの玉型形状加工は、単にフレームの枠形状に適合するだけでなく、使用者の焦点位置や乱視軸等の処方に適合する位置に光学特性を有する必要がある。つまり、被加工レンズの決められた領域を、決められた形状になるように加工しなければならない。
【0006】
レンズの形状加工(縁摺り加工)に際しては、被加工レンズの凸面と凹面の加工中心部をレンズ回転軸に取付けた加工治具を用いて挟持し、砥石またはカッターによって被加工レンズの形状加工を行なう(例えば、特許文献1参照)。加工治具は、レンズの凸面が固定されるレンズホルダと、レンズの凹面を押圧するレンズ押さえとからなる。レンズホルダとレンズとの間には、両面に粘着層を備えたレンズ加工用パッドが介在され、このパッドの粘着力によってレンズをレンズホルダに固定している。この固定状態が安定していると、決められた玉型形状に加工することができる。
【0007】
しかしながら、撥水加工を施したレンズは、前記加工パッドが安定して貼着されにくい。さらに、回転系の加工工具を使用して玉型形状を加工する場合、加工パッドの粘着面とレンズ表面に剪断力が負荷される状態に置かれる。このような過酷な条件におかれると、加工パッドの貼着位置にずれが生じ易く、加工工具の回転による負荷に加工パッドの粘着力が追随できず加工パッドの貼着位置が回転方向にずれてしまう現象(軸ずれ現象)が生じるおそれがある。
【0008】
撥水加工が施されているレンズに対しても安定的に貼着し、かつ、加工時の負荷に耐え得る粘着パッドが検討されている。
【0009】
例えば、特許文献2に記載されている技術は、研削用軸ずれ防止パッドを、第1粘着剤層、クッション層、接着剤層、樹脂フィルムおよび第2粘着剤層の五層構造からなる積層体で構成し、クッション層が、0.2〜3mmの厚さ、150〜500%の伸びおよび5〜200Kg/cm2 の引張強度を有し、接着剤層が、2〜100Kg/25mmの接着強度を有し、樹脂フィルムが、50〜700%の伸びおよび25〜300MPaの引張強度を有している。このような特許文献2に記載の技術は、クッション層の厚みを調整することにより、レンズ固定治具の押圧によるレンズの破損を抑制し、クッション層の引張り強度を抑制することにより回転工具から加えられる負荷により粘着面が浮き上がる(剥がれる)現象を抑制する技術である。
【0010】
特許文献3に記載されている技術は、レンズ固定用部材を、可撓性の両面粘着クッションシートと、可撓性の片面粘着シートとからなる複合型の粘着シートで構成し、両面粘着クッションシートの片側粘着面に、片面粘着シートの被粘着面を重ねて押圧接着し、片面粘着シートの接着面を両面粘着クッションシートの接着面より、大き目の接着占有面としている。特許文献3に記載の技術では、両面粘着クッションシートにレンズ固定治具による押圧等の衝撃を緩和、吸収させ、可撓性の片面粘着シートの貼着面積を広く確保することで撥水加工が施されたレンズ面に貼着させている。つまり特許文献3に記載の技術は、それぞれ異なる役割のシートを重ね合わせ、それにより撥水加工済みレンズの切削を可能にさせた技術である。
【0011】
特許文献4に記載されている技術は、レンズに接するための粘着面を備えた粘着テープであって、その粘着面の粘着力の測定値が、JIS Z 0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に規定する180度引きはがし法による粘着力試験方法において、試験板としてフッ素変性シリコーン離型剤で表面処理したポリエチレンテレフタレート板を用いた場合に、4gf(0.0392N)以上になるようにしている。また、特許文献4に記載の技術は、180度に引きはがされる場合の粘着強度に関して規定している。しかしながら、レンズの形状加工時にはシート自体がレンズ固定治具により押圧されているため、引きはがしに係る粘着力で規定しても効果が得られ難い。
【0012】
特許文献5に記載されている技術は、粘着テープの粘着面に微小な開口を備えていることを特徴としている。また、特許文献5には、レンズ表面に粘着面を貼り合わせたときにその開口部により粘着されることが記載されている。
しかしながら、引用文献5に記載のテープを使用しても、加工時に開口部に水や空気が入り込んで粘着面を浮き上がらせると、結果的にずれが生じるおそれがある。
【0013】
【特許文献1】特開2007−268706号公報
【特許文献2】特開2005−111612号公報
【特許文献3】特開2004−330327号公報
【特許文献4】特開2004−249454号公報
【特許文献5】特開2006−95657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した特許文献2〜4に記載されているレンズ加工用のパッドは、いずれも柔らかい粘着層とクッション層(クッション層)の積層体で構成されている。このため、粘着面に対して研削荷重と回転モーメントの集中が著しく、図6に実線で示すようにレンズホルダ1にパッド2を介して固定されたレンズ3をレンズ回転軸(図示せず)に取付け、レンズホルダ1とレンズ押さえ4とで挟持したときの挟持圧(チャック圧)や加工時の負荷荷重によりパッド2のクッション層5の中央部の圧縮変形が大きく、外周縁部の圧縮変形が少ない。このため、レンズ側粘着層6の外周縁部がレンズ3の凸面3aから離間して浮き上がると、接着面積が減少したり、その隙間から研磨液が浸入するため、粘着面本来の粘着能力が低下し、レンズ3の軸ずれ現象を完全には防止することが難しいという問題があった。なお、二点鎖線7はパッド2の変形前の状態である。
【0015】
また、特許文献5に記載されている技術は、微小な開口により粘着層がレンズ面に粘着している領域の面積が減少することになる。開口の周縁部は、粘着している領域と粘着していない領域の境界になる。粘着している領域の面積に対して前記境界が長くなる。粘着領域との境界は、レンズ面からテープが浮き上がる発生点になる。粘着状態が良好に維持される表面エネルギーの高い面にパッドを装着する場合には、境界の長さはそれほど問題にならない。しかし、表面エネルギーが低い撥水加工が施されているレンズ面に適用すると、前記境界が長くなるほど浮き上がり頻度が高くなる。このため、粘着領域において良好な粘着状態を維持することができない。撥水処理が施されているレンズ面に装着する場合、微小な開口を有する仕様のテープを用いると、テープとレンズ面の密着状態を維持することができず、結果的に軸ずれ現象が生じるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、レンズ側粘着層6の表面粗さによる影響に着目した。粘着層6の表面が滑らかであれば、粗さに由来する非粘着領域が形成され難い。その結果として、粘着領域と非粘着領域の境界が少なくなり、浮き上がりの発生が抑制されると考えた。そして、粘着テープの粘着力を確認するために、異なる表面粗さのレンズ加工用パッドを製作して実験した。その結果、粘着面の表面粗さを或る値以下に規定することにより粘着層6がレンズ3から浮き上がらず、軸ずれを防止することができることを見出した。
【0017】
本発明は上記した従来の問題および知見に基づいてなされたもので、その目的とするところは、撥水加工が施された表面摩擦係数の低いレンズであっても軸ずれが発生せず良好な形状加工を行うことができるレンズ加工用パッドとその製造方法、およびプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明は、撥水加工が施された表面摩擦係数の低い面に用いて好適な粘着部材であって、粘着面と被粘着面の界面に剪断力が負荷されても良好な貼着状態を維持することができる粘着部材を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るレンズ加工用パッドは、レンズの縁摺り加工に用いられるレンズ加工用パッドにおいて、前記レンズに粘着される粘着層と、この粘着層を保持する基材とからなり、前記粘着層の表面には、前記レンズに粘着される直前まで前記粘着層を保護する剥離シートが備えられており、前記剥離シートの粘着層側の面の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は上記発明において、前記剥離シートの少なくとも粘着層に密着する面が合成樹脂からなることが好ましい。
【0021】
また、本発明は上記発明において、前記粘着層の粘着力が0.03〜0.2N/25mmであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は上記発明において、前記基材がクッション層からなることが好ましい。
【0023】
また、本発明は上記発明において、前記クッション層の厚さが0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0024】
また、本発明は上記発明において、前記基材がクッション層よりも硬質の材料からなるコア層を備えていることが好ましい。
【0025】
また、本発明は上記発明において、前記コア層がクッション層と粘着層の間に設けられていることが好ましい。
【0026】
また、本発明に係るレンズ加工用パッドの製造方法は、剥離シートを用意する工程と、基材に粘着層を塗布する工程と、前記剥離シートに前記粘着層を密着させる工程を備え、前記剥離シートを用意する工程において、前記粘着層が密着される面の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下である剥離シートを用意することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係るプラスチックレンズの製造方法は、周縁形状が未加工のプラスチックレンズを用意する工程と、前記プラスチックレンズの凸面中央部をレンズホルダのレンズ保持面に請求項1〜7のうちのいずれか一項記載のレンズ加工用パッドを用いて固定する工程と、前記プラスチックレンズが固定された前記レンズホルダを縁摺り加工装置のレンズ回転軸に装着する工程と、前記プラスチックレンズの周縁形状を所望の形状に縁摺り加工する工程とを備えていることを特徴とする。
【0028】
さらに、本発明に係る粘着部材は、粘着層と基材とを備え、前記粘着層の表面には、粘着面を保護する剥離部材が備えられており、前記剥離部材の粘着層に密着する面の表面粗さの算術平均粗さが0.1μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るレンズ加工用パッドにおいて、剥離シートの表面形状が粘着面の表面に転写される。したがって、剥離シートの表面粗さが粘着面の実質的な表面粗さに相当する。このため、剥離シートと同様に粘着層の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下であると、表面エネルギーが低い撥水加工が施されているレンズの加工においても、パッドとレンズ面の粘着状態が良好に確保され、レンズ周縁の研削加工時の軸ずれ現象を好適に抑制することができる。基材としては、クッション層とコア層とからなる二層構造のものが好ましいが、これら両層のうちのいずれか一方のみで構成されるものであってもよい。
【0030】
剥離シートの少なくとも粘着面に密着する面が合成樹脂からなるレンズ加工用パッドにおいては、合成樹脂が他の素材(例えば、紙素材)と比較して滑らかな面を形成し易い。また、剥離シートは、粘着層を保護する。剥離シートとしては、可撓性を有するものであって、折り曲げによる折り線が生じ難いものであることが望ましい。
【0031】
レンズ側粘着面の粘着力が0.03〜0.2N/25mmであるレンズ加工用パッドによれば、研削加工が特に困難な撥水加工が施されているレンズに適用しても、軸ずれ現象を好適に抑制することができる。
【0032】
基材にクッション層を備えたレンズ加工用パッドにおいて、レンズの形状加工の初期は、レンズ径が大きいため強い負荷荷重が加わる。レンズ加工用パッドとレンズ表面との界面には強い力(剪断力)が加わり、この剪断力をクッション層の捩れ変形によって吸収する。これによりレンズ上のパッドの粘着領域に直接かかる剪断力が軽減されるため、粘着面がレンズ面から離間する現象をより確実に抑制することができる。クッション層の厚みとしては、0.5〜1.5mmであるとより好ましい。
【0033】
コア層を備えたレンズ加工用パッドにおいて、コア層が硬質の材料によって形成されているので、チャック圧または加工時の負荷荷重をクッション層の全面に略均一に伝達することができる。したがって、パッドの外周縁がレンズから剥離して浮き上がって粘着力が低下することがなく、レンズの軸ずれ現象を効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明に係るレンズ加工用パッドの製造方法によれば、剥離シートの表面粗さが粘着面の表面粗さとして転写される。上記製造方法で製作されたパッドによれば、剥離シートの表面粗さの算術平均粗さが0.1μm以下であるため、レンズ側粘着面が滑らかなレンズ加工用パッドを得ることができる。
【0035】
本発明に係るプラスチックレンズの製造方法によれば、撥水加工が施されたレンズであっても、形状加工時に軸ずれ現象が起こることがなくレンズを形状加工することができる。
【0036】
本発明に係る粘着部材によれば、撥水加工面にも強固に粘着できる粘着部材を提供することができる。
【0037】
本発明において、粘着部材とは、基材の片面または両面に粘着層を有する粘着部材であり、その用途は限定されない。例えば、撥水加工面に貼付する表示用ラベルや加工用テープ等に適用することができる。表示用ラベルに本粘着部材を適用した場合、ラベルの剥がれやズレが抑制されるため、撥水加工が施された物品の表示機能も安定して維持することができる。
【0038】
また、本発明の粘着部材は、撥水加工が施された物品の保護部材に適用することができる。撥水加工が施された物品の保護方法は、表面に所謂ビニール製の袋で覆う方法が一般的である。しかしながら、撥水加工が施された面であっても、物理的な衝撃や先鋭なものの引っ掻きにより傷が付くおそれがある。粘着部材は、撥水加工が施された面にも好適に密着させることができる。したがって、粘着部材の基材に比較的硬質なプラスチック基材を採用することで撥水加工面自体の保護を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るレンズ加工用パッドの一実施の形態を示す外観斜視図、図2は図1のII−II線拡大断面図である。これらの図において、レンズ加工用パッド10は、基材11と、この基材11の両面にそれぞれ貼着されたレンズ側粘着層12および治具側粘着層13とからなり、使用前においてはレンズ側粘着層12と治具側粘着層13の表面に剥離シート14、15がそれぞれ貼着されている。基材11は、クッション層16とコア層17とを備え、コア層17がレンズ側粘着層12とクッション層16との間に介在されている。
【0040】
また、レンズ加工用パッド10は、円環状に形成されることにより中心孔18を有し、さらに外周縁の一部には突出部10Aが一体に突設されている。この突出部10Aは、レンズ3またはレンズホルダ20からレンズ加工用パッド10を剥離するとき、指で把持される部分であり、これによりパッド10の剥離を容易にしている。
【0041】
前記レンズ側粘着層12の材料は、レンズ表面の加工状態により適宜選択される。詳しくは、レンズ表面の静摩擦係数が挙げられる。粘着層12を構成する粘着剤は、レンズ3の研削中にレンズ3から剥離せず、研削後容易に除去できる粘着剤であることが好ましい。具体的には、アクリル系またはゴム系の粘着剤からなる粘着層を形成することが好ましい。
【0042】
粘着層12の厚みは、15〜50μmであると好ましい。レンズ表面の静摩擦係数が、0.003〜0.1であり、撥水加工等の表面処理がなされている場合、撥水面に対する粘着力は、組み合わされるクッション層16の厚みにもよるが、0.05〜0.16N/25mmであることが好ましい。また、撥水面での剪断力は、60〜80N(貼着面積25mm×25mm)であることが好ましい。粘着層(面)12の引張強度は、組み合わされるクッション層16の構成にもよるが、10%の引張強度において3〜10kg/cm2 が好ましく、4〜8kg/cm2 が特に好ましい。粘着層12が前記範囲内で調整されていると、撥水加工が施されたレンズであっても、軸ずれ現象を抑制することができる。
【0043】
レンズ3の凸面3aに、含フッ素シラン化合物の撥水加工が施されている場合、レンズ3と粘着層12との間に空気が侵入すると、粘着力が低下するため好ましくない。したがって、レンズ3側の粘着層12の粘着面は、平滑な面であることが好ましい。具体的には、レンズ3側の粘着層12の表面(粘着面)の算術平均粗さが0.1μm以下であると好ましい。より好ましくは、算術平均粗さが0.06μm以下である。
【0044】
粘着層12の表面には、剥離シート14の表面形状が転写される。したがって、上記好ましい範囲の表面粗さを実現するには、剥離シート14の粘着層12に密着する面の表面粗さを調整すればよい。具体的には、剥離シート14の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下であると好ましい。より好ましくは、算術平均粗さが0.06μm以下である。
【0045】
剥離シート14は、可撓性を有し折り曲げによる折れ線が生じ難く、粘着層12に密着する面の表面粗さの状態が前記範囲内にあればよく、材質は特に限定されない。好ましい材質は、粘着層12と密着する面に平滑化処理が施されている紙、プラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。特に、プラスチック製のシートは、取り扱いが容易であるので好ましい。また、表面を平滑にする加工が容易で、屈曲し難いものであれば粘着層12を保護する効果に優れている。プラスチックシートの材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET) 等のポリオレフィン樹脂系が好ましい。この他、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂等も用いることができる。
【0046】
剥離シート14に平滑なプラスチックシート等が使用されたものであれば、撥水加工されたレンズ3にも強固に粘着するので、軸ずれすることなくレンズ3の形状加工を実施することができる。なお、レンズ側粘着層12の粘着面は、使用時まで剥離シート14で覆われていることが好ましい。
【0047】
治具側粘着層13の材料は、レンズ押さえ41(図4)の先端形状とレンズ押さえ41の材料に応じて適宜選択すればよい。また、レンズ押さえ41の端面材料にもよるが、通常、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系、またはゴム系の粘着剤を採用することができる。
【0048】
治具側粘着層13の厚さは、15〜50μmであると好ましい。特に、20〜35μmの厚さが好ましい。治具側粘着層13の粘着面の粘着強度は、対SUS粘着力において5〜30N/25mmであることが好ましい。粘着強度は、レンズ側粘着層12と同様の方法で測定した値を意味する。
【0049】
治具側粘着層13の表面にも、使用時まで剥離シート15で覆われていることが好ましい。剥離シート15の材質は、特に限定されず、公知の剥離紙、剥離フィルムのいずれも使用することができる。また、治具側粘着層13は、レンズ3に貼着されないため、表面粗さは特に制約されることはなく、十分な粘着力を有するものであばよい。
【0050】
クッション層16としては、100〜500%の伸びおよび5〜200kg/cm2 の弾性特性を有する材料を選択することが好ましい。引張強度が5Kg/cm2 より小さい場合、加工で変形したクッション層16の戻りが悪くなり、軸ずれの発生を招くので好ましくない。引張強度が200Kg/cm2 より大きい場合、クッション層16が伸び難くなり、レンズ面で浮き上がり現象が発生するので好ましくない。より好ましい引張強度は、5〜180kg/cm2 である。クッション層16の具体的な物質は限定されないが、例えば、ポリウレタン、シリコーン樹脂系、各種ゴム、各種エラストマーや、これらの発泡材料が挙げられる。
【0051】
ここで、クッション層16の伸びおよび引張強度は、JIS K6767(A法)に準じて測定した値を意味する。伸びが100%より小さい場合、研削(切削)初期の強い衝撃を吸収しきれないため、レンズ面で浮き上がりまたは剥がれが生じるので好ましくない。伸びが500%より大きい場合、加工後期の比較的小さな加工負荷にも捩れるおそれがあり、軸ずれの原因となるので好ましくない。より好ましい伸びは、110〜400%である。
【0052】
クッション層16の厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。クッション層16の厚みが0.5mmよりも薄すぎると、治具によるチャック圧を吸収しきれなくなり、レンズ表面に対する負荷に偏りが生じる。負荷の偏りは、基材11やレンズ3の表面処理層に局所的な衝撃を与えるので好ましくない。1.5mm以上の厚みを有すると、切削後期の研削(切削)圧によっても捩れが生じてしまい、軸ずれの発生原因となるので好ましくない。
【0053】
コア層17は、レンズ押さえ41の押圧荷重をクッション層16に均質に伝達し、切削加工時に伝達する回転力によって変形しにくい材料であれば特に限定されない。このため、コア層17としてはクッション層16より硬質の材料によって形成されていることが好ましい。また、コア層17の厚さは、特に限定されないが、通常、20〜100μmであり、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂系、またはポリウレタン系樹脂等によって形成される。
【0054】
また、このようなコア層17を備えていると、パッド10自体の剛性も高くなり、パッド10の破損等を防止し得る。クッション層16とコア層17は接着剤や融着による一体化等により強固に接合されていることが好ましい。なお、コア層17の両面には、粘着層12およびクッション層16との接合性を高めるために、コロナ処理やアンカー剤処理といった表面処理が施されていることが好ましい。
【0055】
クッション層16とコア層17を接合する接着剤は、2〜100Kg/25mmの接着強度を有することが好ましい。接着強度は、JIS Z1522に準拠して測定した値を意味する。接着強度が、2Kg/25mmより小さい場合、接着剤で凝集破壊が生じるので好ましくない。100Kg/25mmより大きい場合、接着剤に割れが発生するので好ましくない。より好ましい接着強度は、2〜80Kg/25mmである。なお、接着剤の厚さは、特に限定されないが、通常、1〜200μm である。また、コア層17とクッション層16を融着等により一体化している場合には、接着剤は不要である。
【0056】
前記レンズ3は、例えば注型重合法によって形成された円形(例えば、直径80φmm)のプラスチック製マイナス形状レンズからなり、凸側レンズ面(凸面)3aおよび凹側レンズ面(凹面)3bと、外周面(周面)3c(図3)とを備え、凸面3aと凹面3bに保護膜層と撥水膜層が積層形成されている。
【0057】
保護膜層は、レンズ3の光学特性、耐久性、耐擦傷性等を向上させるために形成されるもので、通常ハードコート膜層と反射防止膜層とで構成されている。撥水膜層は、上述したように光学面3a、3bの平滑度を高めて防汚性を向上させるとともに、水やけを防止するために形成されるもので、最近では滑り性のよい超撥水レンズが普及しつつある。撥水材としては、例えばフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料等が用いられている。なお、周面3cは、後述する縁摺り加工装置によってレンズ枠形状と一致する玉型形状に縁摺り加工される。
【0058】
図3(a)はレンズホルダにレンズをレンズ加工用パッドを介して固定した状態を示す断面図、(b)はレンズホルダのレンズ保持面を示す図、(c)はレンズ保持面の要部の拡大断面図である。同図において、レンズホルダ20は、ステンレス等の金属によって筒状体に形成されることにより、嵌合軸部20Aと、この嵌合軸部20Aの先端に一体に設けられたレンズ保持部20Bとを備えている。嵌合軸部20Aは、例えば長さが35mm、外径が14mmφ程度で、中心孔21の穴径が10mmφ程度である。
【0059】
レンズ保持部20Bの表面22はレンズ3の凸面3aを保持するレンズ保持面を形成している。このレンズ保持面22は、レンズ3の凸面3aに略対応した凹球面状に形成されており、レンズ3の凸面3aの中央部が前記レンズ加工用パッド10を介して固定される。レンズ3の加工中心は、眼鏡枠のフレームセンターまたはレンズ3の光学中心であるが、例えば累進屈折力レンズにおけるプリズム測定基準点または単焦点レンズにおける光学中心と略同一位置となる幾何学中心等も好適である。
【0060】
レンズ保持面22の曲率半径は、外周縁部のみが凸面3aと接触し安定した保持が得られるようにするために凸面3aの曲率半径より小さく設定されている。また、レンズ保持部20Bの外径は、レンズ加工用パッド10の外径と略等しく、中心孔の21の穴径は、パッド10の中心孔18の穴径と略等しい。
【0061】
さらに、レンズ保持面22には、レンズ加工用パッド10との密着結合力を高めるために、多数の微小な突状体23が全周にわたって放射状に形成されている。突状体23は、断面形状が二等辺三角形に形成されることにより、その頂点23aを境に、レンズホルダ20の回転方向側の壁面23bと反対側の壁面23cとが同一の傾斜角度(例えば45°)の斜面に形成されている。このように同一角度にすると、両方の斜面にレンズ加工用パッド10が均等に密着することになり、接触面積の増大により、パッド10の適当な可撓性や変形性が生かされ、レンズ保持力を増大させることができる。また、同じ傾斜角度の両斜面23b、23cに均等にパッド10が圧接するので、アンバランスな回転力が相殺され、パッド10が回転ずれしてレンズ3の保持精度が低下することもない。
【0062】
図4は縁摺り加工装置によるレンズの縁摺り加工を説明するための図である。
同図において、レンズ3が装着されるレンズ回転軸30は、軸線を一致させて水平に配置された第1、第2のレンズ回転軸30A、30Bによって構成されている。第1のレンズ回転軸30Aは、回転自在に配設され、先端に前記レンズホルダ20を介してレンズ3が装着される。レンズホルダ20は、第1のレンズ回転軸30Aの先端面に形成した嵌合孔に嵌合軸部20Aが嵌合されることにより、第1のレンズ回転軸30Aに対して着脱可能に取付けられている。第2のレンズ回転軸30Bは、回転自在にかつ軸線方向(X方向)に移動自在に配設され、第1の回転軸30Aと対向する先端面にレンズ押さえ41が同じく着脱可能に取付けられている。レンズ押さえ41の先端には、レンズ3の凹面中央部を押圧するゴム等の弾性体42が固着されている。
【0063】
このような第1、第2のレンズ回転軸30A、30Bからなるレンズ回転軸30は、縁摺り加工時に、レンズ3の形状加工データに基づいて3方向、すなわち軸線回りの回転と、軸線と平行な左右方向(X方向)および軸線と直交する前後方向(Y方向)の3方向に駆動制御されることにより、レンズ3の周面3cが加工工具44によって研削加工される。
【0064】
前記加工工具44としては、例えば円筒状に形成されたダイヤモンドホイール等の砥石が用いられる。また、加工工具44は、一次加工用(荒加工用)の研削砥石44Aと、二次加工用(仕上げ加工用)の研削砥石44Bとで構成され、二次加工用研削砥石44Bの外周面には、左右対称なV字状の環状溝からなるヤゲン用溝46が形成されている。
【0065】
レンズ3の形状加工に際しては、レンズ回転軸30と加工工具回転軸45を回転させ、加工工具44によりレンズ3の周面3cを加工形状データに基づいて一次加工する。一次加工工程は、一次加工用研削砥石44Aによって周面3cを荒研削し、レンズ3を一次形状に形成する工程である。
【0066】
一次加工が終了すると、引き続き加工用研削砥石44Bによって周面3cを研削し(二次加工)、眼鏡フレームの枠形状に適合する玉型形状にすることにより、形状加工を終了する。
【0067】
このように、本発明に係るレンズ加工用パッド10を介してレンズ3をレンズホルダ20のレンズ保持面22に固定するようにしたので、レンズ3の形状加工時のレンズ3の軸ずれを防止することができ、所定の玉型形状に加工することができる。すなわち、レンズ押さえ41によってレンズ3の凹面中心部を押圧し、凸面3aをレンズ加工用パッド10を介してレンズホルダ20のレンズ保持面22に押し付けると、レンズ加工用パッド10のコア層17が変形する。コア層17は、硬質層を形成しているため、レンズ押さえ41の押圧力を全面にわたって均等に受け、クッション層16に均等に伝達する。したがって、レンズ3のチャック時や研削加工時の加工圧によってレンズ加工用パッド10のレンズ側粘着層12の外周縁部がレンズ3の凸面3aから浮き上がって離間するおそれがなく、大きな粘着力を維持することができ、研削加工時のレンズ3の軸ずれを防止することができる。
【0068】
また、レンズ加工用パッド10のクッション層16は、加工時の研削荷重によってレンズ回転軸30の回転方向とは反対方向に捩れ変形してレンズ3とレンズ側粘着層12との界面に加わる剪断力を吸収するため、パッド10の剪断を防止することができる。また、クッション層16の厚みを0.5mm〜1.5mmにすると、研削初期における大きな衝撃を緩和することができるため、撥水性の高いレンズであっても軸ずれが発生せず、良好に形状加工することができる。さらに、レンズ加工用パッド10はコア層17を有することでレンズ押さえ41からレンズ3の凹面3bを保護する。
【0069】
[実施例1]
本実施例では、表面粗さが異なる剥離シートA、B、C、D、E、FおよびGのそれぞれが備えられた加工用パッドを使用して、レンズ側粘着面の表面粗さによる軸ずれ性能の相違について比較、検討した。
まず、各剥離シートの特徴とレンズ側粘着層と密着する面の表面粗さについて説明する。
剥離シートAは、ポリエチレンテレフタレート製の透明シートであり、算術平均粗さは0.06μm、粗さ曲線の最大断面高さは0.66μmである。
剥離シートBは、ポリエチレンテレフタレート製の透明シートであり、算術平均粗さは0.02μm、粗さ曲線の最大断面高さは0.184μmである。
剥離シートCは、紙製シートであり、レンズ側粘着層と密着する面が平滑化処理が施されている。剥離シートCの前記面は、算術平均粗さが0.033μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが0.332μmである。
剥離シートDは、ポリエチレンテレフタレート製の白色シートであり、レンズ側粘着層と密着する面の算術平均粗さが0.084μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが0.899μmである。
剥離シートEは、同じくポリエチレンテレフタレート製の白色シートであり、レンズ側粘着層と密着する面の算術平均粗さが0.103μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが1.18μmである。
【0070】
剥離シートFおよび剥離シートGを備えた加工用パッドは、比較例である。
剥離シートFはポリエチレンテレフタレート製の白色シートであり、レンズ側粘着層と密着する面の算術平均粗さが0.12μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが2.34μmである。
剥離シートGは紙製シートであり、レンズ側粘着層と密着する面が平滑化処理が施されている。剥離シートGの前記面は、算術平均粗さが0.15μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが1.6μmである。
【0071】
また、本実験は、1.2mmのクッション層16で、レンズ側粘着層12の粘着力が0.04N/25mm、剪断力が78N/mm(←N(貼着面積25mm×25mm)、引張強度(10% 4N/mm2 )の粘着パッドを用いて、レンズ側剥離シート14の表面粗さの影響を調べた。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

◎:軸ずれ0.3度未満
○:軸ずれ0.3度〜0.5度未満
×:軸ずれ0.5度以上
【0073】
縁摺り加工装置の加工条件は、レンズ3に対する荷重3.5Kg、レンズ回転軸30の回転数5rpm、加工工具回転軸45の回転数3600rpmである。
【0074】
レンズ加工用パッド10は、外径が22mm、中心孔18の穴径が6mmのドーナツ型で、外周に突出部10Aを一体に有している。
【0075】
被加工レンズ3は、屈折率1.60のHOYA(株)製レンズ(商品名アイアス)で、撥水コート処理(動摩擦係数0.07〜0.1)が施されている。加工前のレンズ径は75mm、加工後のレンズ形状はカニ目B型(横寸法54mm、縦寸法26mm、偏心5mm)である。
【0076】
表1に示す結果から、剥離シート14としては、剥離シートA〜Eが望ましく、レンズ側粘着層12と密着する面の算術平均粗さが凡そ0.1μm以下であり、粗さ曲線の最大断面高さが凡そ1.0μm以下である場合に、軸ずれが2度未満に抑制されることが判った。さらに、軸ずれ現象が好適に抑制されるのは、前記面の算術平均粗さが0.06μmであり、粗さ曲線の最大断面高さが0.7以下であることが判った。
【0077】
図5(a)に、剥離シートEを備えたレンズ側粘着層12の粘着面の写真を示し、図5(b)に剥離シートAを備えたレンズ側粘着層12の粘着面の写真を示す。
【0078】
図5の写真から、樹脂製の比較的表面が粗い剥離シートEを備えたレンズ側粘着層12の粘着面は、滑らかな表面の剥離シートAを備えたレンズ側粘着層12の粘着面よりも白化している。これは、粘着面の表面の凹凸による光の乱反射による白化であると思われる。本実験結果から、粘着面が粗いとパッド10がレンズ表面と密着しにくくなり、加工時の軸ずれ現象が起きやすくなることが判った。
【0079】
[実施例2]
次に、実施例1の剥離シートAが備えられたレンズ側粘着層12であり、クッション層16の厚み、密度、粘着層12、13の粘着力および引張り強度が異なるレンズ加工用パッド10のサンプルを幾つか作成し、形状加工したときの軸ずれの合否を確認した。その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

◎:軸ずれ0.3度未満
○:軸ずれ0.3度以上〜0.5度未満
【0081】
縁摺り加工装置の加工条件は、レンズ3に対する荷重3.5Kg、レンズ回転軸30の回転数5rpm、加工工具回転軸45の回転数3600rpmである。
【0082】
レンズ加工用パッド10は、外径が22mm、中心孔18の穴径が6mmのドーナツ型で、外周に突出部10Aを一体に有している。
【0083】
被加工レンズ3は、屈折率1.60のHOYA(株)製レンズ(商品名アイアス)で、撥水コート処理(動摩擦係数0.07〜0.1)が施されている。加工前のレンズ径は75mm、加工後のレンズ形状はカニ目B型(横寸法54mm、縦寸法26mm、偏心5mm)である。
【0084】
上記測定結果より、上記表面粗さの剥離シートAの場合、クッション層16の厚みが0.8mm以上であると、また、密度は小さいものほど軸ずれが小さいことが判った。また、クッション層16の厚みが0.8mm以下であり、密度が低いパッドは、クッション層16の一部が割れてレンズホルダ20のレンズ保持面22に残る現象が生じた。本実験により、クッション層16の厚みは0.8mm以上が好ましいことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係るレンズ加工用パッドの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】(a)はレンズホルダにレンズをレンズ加工用パッドを介して固定した状態を示す断面図、(b)はレンズホルダのレンズ取付面を示す図、(c)はレンズ取付面の要部の拡大断面図である。
【図4】形状加工装置によるレンズの形状加工を説明するための図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ剥離シートを備えたレンズ側粘着層の粘着面の写真である。
【図6】レンズをレンズホルダに従来のパッドを介して固定したときの負荷荷重によるパッドの圧縮変形を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10…レンズ加工用パッド、11…基材、12…レンズ側粘着層、13…治具側粘着層、14、15…保護シート、16…クッション層、17…コア層、20…レンズホルダ、22…レンズ保持面、30…レンズ回転軸、41…レンズ押さえ、44…加工工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの縁摺り加工に用いられるレンズ加工用パッドにおいて、
前記レンズに粘着される粘着層と、この粘着層を保持する基材とからなり、前記粘着層の表面には、前記レンズに粘着される直前まで前記粘着層を保護する剥離シートが備えられており、
前記剥離シートの粘着層側の面の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下であるレンズ加工用パッド。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記剥離シートの少なくとも粘着層に密着する面が合成樹脂からなるレンズ加工用パッド。
【請求項3】
請求項1または2記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記粘着層の粘着力が0.03〜0.2N/25mmであるレンズ加工用パッド。
【請求項4】
請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記基材がクッション層からなるレンズ加工用パッド。
【請求項5】
請求項4記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記クッション層の厚さが0.5〜1.5mmであるレンズ加工用パッド。
【請求項6】
請求項4または5記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記基材がクッション層よりも硬質の材料からなるコア層を備えているレンズ加工用パッド。
【請求項7】
請求項6記載のレンズ加工用パッドにおいて、
前記コア層がクッション層と粘着層の間に設けられているレンズ加工用パッド。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項記載のレンズ加工用パッドの製造方法であって、
剥離シートを用意する工程と、
基材に粘着層を塗布する工程と、
前記剥離シートに前記粘着層を密着させる工程を備え、
前記剥離シートを用意する工程において、前記粘着層が密着される面の表面粗さが算術平均粗さで0.1μm以下である剥離シートを用意するレンズ加工用パッドの製造方法。
【請求項9】
プラスチックレンズの製造方法であって、
周縁形状が未加工のプラスチックレンズを用意する工程と、
前記プラスチックレンズの凸面中央部をレンズホルダのレンズ保持面に請求項1〜7のうちのいずれか一項記載のレンズ加工用パッドを用いて固定する工程と、
前記プラスチックレンズが固定された前記レンズホルダを縁摺り加工装置のレンズ回転軸に装着する工程と、
前記プラスチックレンズの周縁形状を所望の形状に縁摺り加工する工程と、
を備えたプラスチックレンズの製造方法。
【請求項10】
粘着層と基材とを備えた粘着部材であって、
粘着層の表面には、粘着面を保護する剥離部材が備えられており、
前記剥離部材の粘着層に密着する面の表面粗さの算術平均粗さが0.1μm以下である粘着部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−158727(P2010−158727A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−642(P2009−642)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(592103442)ビッグテクノス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】