説明

レンズ表面の検査方法

【課題】 レンズ表面の検査を効率良く行う。
【解決手段】 CCDカメラ20とリング状光源23とが、ファインダ12を挟んで配される。CCDカメラ20は、対物レンズ15の表面に焦点を結ぶように撮像レンズ22のピント合わせを行うとともに、ファインダ12の光軸方向に移動する。リング状光源23は、ファインダ12の光軸方向に移動して、CCDカメラ20の撮像範囲から退避する。CCDカメラ20によって対物レンズ15の表面が撮像される。得られた画像信号は画像処理装置21に送られ、欠陥の有無についての判定が行われる。その後、CCDカメラ20は、接眼レンズ16の表面に焦点を結ぶように移動し、同様の処理を行う。ユニット本体10を分解することなく2枚のレンズを検査できるため、検査作業が効率化する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学系を構成する複数枚のレンズの表面検査を行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光学系を構成する各種レンズはカメラにおいて重要な部品であり、その表面に欠陥が存在することは好ましくない。例えば、レンズ付きフイルムユニットにおいて、ファインダを構成するレンズの表面に傷や塵埃などの欠陥が存在していると被写体が見えにくくなるため、撮影者にとって大きな不満となる。
【0003】このため、レンズ付きフイルムユニットの製造時、もしくはリサイクル時において、ファインダの表面検査が行われている。この検査は、ファインダを構成するレンズの表面に検査光を照射しつつ、被検査体であるレンズの表面を撮像装置で撮像して、得られた画像信号を画像処理することによって行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ファインダが複数のレンズで構成されている場合には、一方のレンズしか検査を行うことができないため、ファインダを個々のレンズに分解した状態で検査を行う必要があった。また、リサイクル時においても、ファインダユニットの状態で検査を行うことができず、更に分解した状態で表面検査を行う必要があった。このため、検査作業が非効率的なものとなっていた。
【0005】一方、ファインダが2枚組のレンズで構成されている場合には、レンズ付きフイルムユニットの両側に撮像装置を設け、ファインダの両側から各レンズの表面を撮像することによって、上記の問題を解決できる。しかし、検査に必要となる撮像装置が2台と増えるため、コスト高となるとともに検査装置が大型化するため、効率的な検査を行う上では問題がある。
【0006】本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、表面検査を効率良く行うことができるレンズ表面の検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のレンズ表面検査方法は、光学系の一方の側にピント調節機能を備えた撮像装置を配置し、光学系の他方の側に撮像装置の撮像範囲から外れた位置で光学系を他方の側から照明する照明装置を配置しておき、検査対象となるレンズの表面ごとに撮像装置のピント合わせと撮像を行って、レンズ表面ごとに欠陥の有無を検査するようにしたものである。
【0008】また、検査対象となるレンズの表面の変更に応じて撮像装置を光学系の光軸方向に移動させるとともに、撮像装置が有する撮像レンズの焦点距離を変えるようにしたものである。また、光学系の他方の側に、撮像装置の撮像範囲内を暗視野にするスクリーンを設けたものである。また、照明装置は、光学系の光軸を中心とするリング状の光源としたものである
【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明を実施した表面検査装置の構成を示したものである。レンズ付きフイルムユニット10の前面には、撮影レンズ11やファインダ12を外部に露呈する開口が形成され、上部にはシャッタボタン13が設けられている。また、レンズ付きフイルムユニット10の背面には、内部に装填された写真フイルムを給送するための巻き上げノブ14が設けられている。ファインダ12は2枚組のプラスチックレンズから構成され、被写体側から対物レンズ15、接眼レンズ16の順になるように取り付けられる。
【0010】接眼レンズ16の後方にはCCDカメラ20が配されており、ファインダ12の表面を撮像して画像信号に変換する。得られた画像信号は画像処理装置21に送られて画像解析が行われ、レンズ表面における欠陥の有無を判定する。このCCDカメラ20の内部に設けられた撮像用レンズ22は、焦点距離が変動自在となっており、対物レンズ15及び接眼レンズ16の表面にピントを合わせることができる。また、CCDカメラ20はファインダ12の光軸方向に移動して、その撮像範囲を一定にする。これにより、ピント合わせを行った場合でも、CCDカメラ20の撮像可能範囲を有効に使用することができる。
【0011】対物レンズ15の前方には、照明装置として用いられるリング状光源23が配されており、検査光をファインダ12に照射する。ここで、検査時にCCDカメラ20がリング状光源23の像を写し込むことがないように、リング状光源23はファインダの光軸方向に可動となっている。
【0012】図2は、対物レンズ15の検査を行う様子を示したものである。CCDカメラ20は、レンズ付きフイルムユニット10の背面から距離L1離れた位置に移動し、リング状光源23はCCDカメラ20から距離L2離れた位置に移動する。リング状光源23及びCCDカメラ20の位置は、装置のテスト段階で予め定められており、位置データとして図示しないメモリに書き込まれている。例えば、L1=72mm、L2=157mmとし、CCDカメラ20の焦点距離を12.5mmとしたときに、対物レンズ15の表面に焦点が結ばれる。
【0013】ここで、対物レンズ15は凹レンズであり、検査面に湾曲が生じるが、その湾曲が極端に大きくなければ撮像レンズ22の被写界深度でカバーできるため、検査に大きな影響を与えることはない。
【0014】対物レンズ15の表面像がCCDカメラ20によって撮像され、得られた画像信号が画像処理装置21へと送られる。画像処理装置21では、内部のメモリに予め書き込まれた基準値と各画素の信号強度とを比較し、その差が一定値以上となったときに欠陥ありと判定する。あるいは、近接する複数の画素同士で信号強度を比較し、最大値と最小値との差が一定値以上であるときに欠陥ありと判定することもできる。
【0015】対物レンズ15の表面に欠陥がない場合には、通過した検査光の強度に変動がないため、撮像された画素の信号強度は一定となる。このため、画像処理装置22では異常なしと判定される。しかし、対物レンズ15に塵埃や傷などの欠陥が存在する場合には、当該部分を通過する検査光が散乱されて強度変化が生じる。このため、検査光の強度変化がCCDカメラ20によって信号強度の変化として得られ、画像処理装置21で異常ありと判定される。
【0016】なお、撮像の際、光源側に物体が存在していると、その物体を撮像してしまうため、実際には欠陥がないのに異常ありと判定されるおそれがある。そこで、リング状光源23の前面に黒色のスクリーン24を設け、暗視野中で検査を行うことにより、かかる事態を回避することができる。
【0017】図3は、接眼レンズ16の検査を行う様子を示したものである。CCDカメラ20はレンズ付きフイルムユニット10の背面から距離L3離れた位置に移動し、リング状光源21はCCDカメラ20から距離L4離れた位置に移動する。例えば、L1=100mm、L2=265mmとし、CCDカメラ20の焦点距離を25mmとしたときに、接眼レンズ16の表面に焦点が結ばれ、対物レンズ15の場合と同様の検査が行われる。
【0018】ここで、対物レンズ15と接眼レンズ16との間隔は、撮像レンズ22の被写界深度よりも十分長くなっている。このため、例えば、対物レンズ15の表面に欠陥があったとしても、接眼レンズ16に焦点を合わせた場合では、対物レンズ15の表面にある欠陥を写し込むことがない。従って、欠陥があるレンズのみを正確に検出することができる。
【0019】上記構成による作用について、図4のフローチャートを用いて説明する。各構成部品が組み付けられたレンズ付きフイルムユニット10は、検査装置に入れられてファインダ12の検査が行われる。まず、リング状光源23が移動して検査光を対物レンズ15の表面に照射するとともに、対物レンズ15の表面に焦点を結ぶようにCCDカメラ20のピント合わせが行われる。そして、CCDカメラ20によって対物レンズの表面が撮像され、得られた画像信号が画像処理装置21に送られ、欠陥の判定が行われる。
【0020】ここで、異常ありと判定された場合には、その時点で検査が終了する。異常が発見されたレンズ付きフイルムユニット10は分解され、対物レンズ15が新しいものに交換される。一方、異常なしと判定された場合には、リング状光源23が移動し、接眼レンズ16の表面に焦点を結ぶようにCCDカメラ20のピント合わせが行われる。そして、対物レンズ15の場合と同様の検査が行われる。
【0021】このように、本発明の検査方式では、レンズ付きフイルムユニットを分解することなくファインダの検査を行うことができる。さらに、本発明による検査方式は従来の方式と全く変わらないため、検査の正確性は従来のものと同程度である。従って、従来の検査装置と同等の信頼性を有する検査を迅速に行うことができ、検査の効率化が図られる。また、一台のCCDカメラを用いて2枚のレンズを検査できるため、検査装置の小型化、ローコスト化が図られる。
【0022】なお、上記実施形態において、CCDカメラ20とリング状光源23の配置を逆にすることもできる。また、接眼レンズ16を先に検査しても良い。
【0023】上記実施形態では2枚のレンズからなるファインダ12を用いた例について説明したが、図5に示すように、3枚のレンズ25,26,27からなるファインダを用いた場合であっても、所望のレンズの表面に焦点が合うようにCCDカメラ20のピントあわせを行うことによって、レンズ付きフイルムユニット10を分解することなく検査を行うことができる。
【0024】また、防水型レンズ付きフイルムユニットのように、本体の外側に透明の外装体28が取り付けられている場合であっても、外装体28の屈折率を考慮してCCDカメラ20のピントあわせを行うことにより、外装体28を取り外すことなく検査を行うことができる。
【0025】また、本発明の検査方法はファインダ用のレンズに限らず、2枚玉の撮影レンズのように、透明な部品によって覆われた内部部品を検査する場合にも適用することができる。この場合には、外部の透明体の屈折率を考慮して被検査体である部品の表面に焦点を合わせることにより、検査を行うことができる。さらに、本発明の検査方法は、レンズ付きフイルムユニットに限定されず、一般のカメラの光学系の検査にも適用することができる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ファインダを構成する各レンズを検査する毎に、撮像装置の焦点位置あわせを行うとともに、検査光が効率良く被検査体のレンズに照射するように照明装置が移動するようにしたから、ユニット本体を分解することなくファインダの欠陥検査を行えるとともに、検査に必要な撮像装置の台数を少なくすることができるため、装置の小型化及びローコスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ファインダ検査装置の構成について示す斜視図である。
【図2】対物レンズを検査する様子を示す概略図である。
【図3】接眼レンズを検査する様子を示す概略図である。
【図4】ファインダの検査手順を示すフローチャートである。
【図5】3枚組のレンズからなるファインダを検査する様子を示す概略図である。
【図6】レンズ付きフイルムユニット本体が透明体で覆われている場合に、ファインダを検査する様子を示す概略図である。
【符号の説明】
10 レンズ付きフイルムユニット
12 ファインダ
15 対物レンズ
16 接眼レンズ
20 CCDカメラ
23 リング状光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光学系を構成する複数のレンズの表面を、光学系が構成された状態のままで検査するレンズ表面の検査方法において、光学系の一方の側にピント調節機能を備えた撮像装置を配置し、光学系の他方の側に前記撮像装置の撮像範囲から外れた位置で光学系を他方の側から照明する照明装置を配置しておき、検査対象となるレンズの表面ごとに撮像装置のピント合わせと撮像を行って、レンズ表面ごとに欠陥の有無を検査することを特徴とするレンズ表面の検査方法。
【請求項2】 検査対象となるレンズの表面の変更に応じて前記撮像装置を光学系の光軸方向に移動させるとともに、撮像装置が有する撮像レンズの焦点距離を変えることを特徴とする請求項1記載のレンズ表面の検査方法。
【請求項3】 光学系の他方の側に、前記撮像装置の撮像範囲内を暗視野にするスクリーンを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ表面の検査方法。
【請求項4】 前記照明装置は、光学系の光軸を中心とするリング状の光源であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のレンズ表面の検査方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2001−215170(P2001−215170A)
【公開日】平成13年8月10日(2001.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−25971(P2000−25971)
【出願日】平成12年2月3日(2000.2.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】