説明

レンズ装置、撮像装置、デジタルカメラ及び携帯電話機

【課題】屈曲光学系を用いるレンズ装置に組み込まれた光学的な手振れ補正機構の精度を向上させ、かつレンズ装置単体で手振れ補正機構の調整を行なえるようにする。
【解決手段】レンズ装置5は、光軸S2に直交する方向で移動自在とされた第5レンズ42と、レンズ装置5の被写体に対する振れを検出するヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65と、これらの検出結果に基づいてレンズ装置5の振れを打ち消すために必要な第5レンズ42の移動方向と移動量とを算出する補正用CPU66と、演算結果に基づいて第5レンズ42を移動させるアクチュエータを備えている。ジャイロセンサ64,65は、第5レンズ42の移動面M1上に配置されているので、第5レンズ42の移動方向及び移動量を求める演算が簡単になり、補正精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲光学系と、光学的振れ補正機構とを有するレンズ装置、レンズ装置を有する撮像装置、デジタルカメラ、カメラ付きの携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影時の手振れを検出するジャイロセンサと、撮影光学系内に組み込まれ、光軸に直交する方向で移動自在とされた補正レンズと、ジャイロセンサから入力された検出信号に基づいて、手振れを打ち消すために必要な補正レンズの移動方向と移動量とを算出する制御回路と、この制御回路によって算出された移動方向及び移動量で補正レンズを移動させるレンズ移動機構から構成される光学的手振れ補正機構を組み込んだデジタルカメラが発明されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、撮影光学系内にプリズムやミラー等の光学素子を組み込んで光軸を屈曲させ、小型化及び薄型化を実現したデジタルカメラが発明されている(例えば、特許文献4参照)。屈曲光学系には、誤差感度が高く、偏心調整が難しいという特性があるため、特許文献4記載のデジタルカメラでは、反射ミラーの角度を変化させることにより手振れを補正している。この屈曲光学系は、撮影レンズや光学素子、撮像素子等をレンズ鏡筒に組み込んでレンズ装置として構成され、デジタルカメラに組み込まれている。
【特許文献1】特開平07−159834号公報
【特許文献2】特開2004−153503号公報
【特許文献3】特開2005−189573号公報
【特許文献4】特開2004−219930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3記載の発明では、ジャイロセンサが補正レンズから離れた位置に配置されている。そのため、制御回路で行なわれる補正レンズの移動方向と移動量の計算が複雑になり、誤差が多くなるという問題があった。
【0005】
特許文献4記載の発明では、反射ミラーを移動させて屈曲光学系の手振れを補正しているが、反射ミラーは三次元的な動きが必要となるため制御が難しく、コストが高くなるという問題がある。そのため、屈曲光学系においても補正レンズを使用し、その精度が向上されることが望まれている。
【0006】
また、屈曲光学系を用いたレンズ装置は、屈曲光学系と撮像素子の偏心調整がレンズ装置単体で行なわれてデジタルカメラに組み込まれている。そのため、光学的手振れ補正機構の調整もレンズ装置だけで行なえることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するために、屈曲光学系の手振れ補正機構の精度を向上させ、かつレンズ装置単体で光学的手振れ補正機構の調整を行なえるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のレンズ装置は、被写体側レンズ群と、被写体側レンズ群に入射した光束を屈曲させる光学手段と、光学手段により曲げられた光束を撮像面上に結像させる結像レンズ群と、光学手段と結像レンズ群との間の光軸上に配置され、光軸と直交する方向で移動自在とされた振れ補正レンズと、被写体側レンズ群、光学手段、結像レンズ群、振れ補正レンズを保持するレンズ鏡筒と、補正レンズの移動面上に配置され、レンズ鏡筒の被写体に対する振れを検出する振れ検出手段と、振れ検出手段の検出結果に基づいて、振れ補正レンズを振れが打ち消される方向に移動させる補正レンズ移動手段から構成したものである。
【0009】
振れ検出手段は、レンズ鏡筒の外側、またはレンズ鏡筒の固定に用いられる固定部材に取り付けてもよい。あるいは、レンズ鏡筒の側方で、かつ被写体側レンズ群の光軸方向から見たときに結像レンズ群等を駆動するモータ等と重ならない位置に配置してもよい。
【0010】
また、振れ検出手段は、予め設定されたピッチ軸及びヨー軸の交点近傍に配置して、少なくともレンズ鏡筒のピッチ方向の振れとヨー方向の振れを検出するようにしたものである。ピッチ軸とヨー軸の交点は、振れ補正レンズの移動面上で、かつ被写体側レンズ群の下方に配置してもよい。
【0011】
別のレンズ装置としては、被写体側レンズ群と、被写体側レンズ群に入射した光束を屈曲させる光学手段と、光学手段により曲げられた光束を撮像面上に結像させる結像レンズ群と、光学手段と結像レンズ群との間の光軸上に配置され、光軸と直交する方向で移動自在とされた振れ補正レンズと、被写体側レンズ群、光学手段、結像レンズ群、振れ補正レンズを保持するレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒の外面に、光学手段や結像レンズ群、振れ補正レンズ等に干渉しないように形成された凹部と、凹部に組み込まれ、レンズ鏡筒の被写体に対する振れを検出する振れ検出手段と、振れ検出手段の検出結果に基づいて、振れ補正レンズを振れが打ち消される方向に移動させる補正レンズ移動手段から構成したものである。
【0012】
また、振れ検出手段は、レンズ鏡筒の固定に用いられる固定部材に取り付けられて、凹部内に収めるようにしたものである。
【0013】
また、レンズ鏡筒の外面に検出手段配置面を形成し、この検出手段配置面を基準として振れ検出手段をレンズ鏡筒に固定するようにしたものである。
【0014】
また、振れ検出手段及び補正レンズ移動手段を制御する制御手段と、この制御手段に対して振れ検出手段及び補正レンズ移動手段の調整信号を入力する接続コネクタを設け、単体で振れ検出手段及び補正レンズ移動手段の調整を行なえるようにしたものである。また、調整信号は、振れ検出手段の検出信号に模した擬似振れ信号を含むようにしたものである。
【0015】
また、本発明の撮像装置は、レンズ装置として、本発明の請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いるようにしたものである。
【0016】
また、本発明のデジタルカメラは、レンズ装置として、請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いるようにしたものである。
【0017】
更に、本発明の携帯電話機は、レンズ装置として、請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレンズ装置によれば、振れ検出手段を振れ補正レンズの移動面上に配置したので、振れ検出手段の検出結果から振れ補正レンズの移動方向及び移動量を得るための演算が簡単になり、誤差が少なくなる。これにより、高精度な手振れ補正を行なうことができる。
【0019】
また、振れ検出手段は、レンズ鏡筒の外側や、レンズ鏡筒を固定する固定部材等に取り付けるようにしたので、振れ検出手段と振れ補正レンズの間の位置精度が向上し、手振れ補正の精度も向上させることができる。
【0020】
また、振れ検出手段は、レンズ鏡筒の側方で、かつモータ等と重ならない位置に配置したので、屈曲光学系を用いたレンズ装置の薄型性を阻害することがない。
【0021】
また、振れ検出手段は、ピッチ軸及びヨー軸の交点近傍に配置するようにしたので、手振れの検出精度を向上させることができる。
【0022】
また、別のレンズ装置では、レンズ鏡筒上に凹部を設けてその中に振れ検出手段を組み込むようにしたので、振れ検出手段が取り付けられることによるレンズ装置の大型化は発生しない。更に、振れ検出手段は、固定部材に取り付けて凹部内に配置してもよいので、レンズ装置を用いる各種製品に合せて、最適な振れ検出手段の取り付け位置を選択することができる。
【0023】
また、制御手段とコネクタを設け、コネクタから振れ検出手段や補正レンズ移動手段の調整信号を入力できるようにしたので、レンズ装置単体で手振れ補正機構の調整が可能となる。更に、調整信号として、擬似振れ信号を含むようにしたので、実際にレンズ装置を振動させなくても手振れ補正機構の検査及び調整を行なうことができる。
【0024】
また、上記レンズ装置を用いることにより、手振れ補正精度が高く、小形でローコストな撮像装置、デジタルカメラ、携帯電話機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1及び2に示す本発明のデジタルカメラ2は、ヨー方向及びピッチ方向の手振れを検出して光学的な補正を行なう手振れ補正機構を備えている。デジタルカメラ2の前面上部には、ストロボ光を照射するストロボ発光部3と、撮影開口4が設けられている。撮影開口4からは、デジタルカメラ2の内部に組み込まれたレンズ装置5の第1レンズ6が露呈される。この第1レンズ6は、被写体側レンズを構成する。デジタルカメラ2の上面には電源ボタン7とレリーズボタン8とを配している。レリーズボタン8を押圧操作することにより、1フレーム分の静止画の撮影が行われ、この撮影で得られる画像データがデジタルカメラ2に装着されたメモリカード9(図3参照)に記録される。
【0026】
デジタルカメラ2の背面には、LCD(液晶ディスプレイ)12と、ズームタイプのレンズ装置5を望遠側、広角側にズーミング(変倍)させるズームレバー13と、各種設定操作に用いられるカーソルボタン14及び設定ボタン群15等を配している。LCD12に表示されるメニューを見ながらカーソルボタン14及び設定ボタン群15を操作することで、撮影モードと再生モードの切り替え、ストロボ発光のオン/オフなどの各種設定を行うことができる。
【0027】
LCD12は、撮影モード下では、被写体像を動画のスルー画像として表示する。ユーザーは、このスルー画像を観察して撮影範囲を確定する。また、再生モード下では、メモリカード9に記録されている画像を選択してLCD12に表示する。
【0028】
デジタルカメラ2内には、LCD12と重なるように配置されたメイン基板18が組み込まれている。このメイン基板18には、デジタルカメラ2の各部を制御する制御回路が設けられている。従来の手振れ補正機構を有するデジタルカメラでは、このメイン基板18に手振れ検出用のジャイロセンサを取り付けていたが、本発明ではレンズ装置5に取り付けている。
【0029】
図3に示すように、デジタルカメラ2は、メイン基板18に取り付けられて制御回路を構成するメインCPU21を備えている。メインCPU21は、レリーズボタン8,ズームレバー13,カーソルボタン14、設定ボタン群15等の操作信号に基づいて、デジタルカメラ2の各部を制御する。駆動回路24は、レンズ装置5に組み付けられたズームモータ、フォーカスモータ、露光用モータ等をメインCPU21の制御下で駆動する。
【0030】
レンズ装置5には、撮像素子であるCCDイメージセンサ27が組み込まれている。CCDイメージセンサ27は、受光面にレンズ装置5を透過した被写体光が入射し、その被写体像をアナログの撮影信号に変換して出力する。この例では、CCDイメージセンサ27を用いて撮影を行うが、イメージセンサとしては、これに限らず、例えばCMOS型のイメージセンサを用いてもよい。
【0031】
信号処理部30は、撮影モード下では、撮影信号に対してノイズ除去、増幅,画像データへの変換処理を行ってから、ホワイトバランス、γ補正を行い、処理済みの画像データを順次にLCDドライバ31に送る。これにより、撮影中の被写体像がスルー画像としてLCD12に表示される。撮影モード下でレリーズボタン8が押圧操作されると、信号処理部30は、その直後の撮影で得られる1フレーム分の画像データをデータ圧縮した後にインタフェース回路32を介してメモリカード9に記録する。なお、記録媒体としては、メモリカードに限らず、各種のものを用いることができ、またデジタルカメラ2の内部メモリに画像データを記録してもよい。
【0032】
再生モード下では、インタフェース回路32によってメモリカード9から画像データを読み出し、信号処理部30で各種処理を施してからLCDドライバ31に送る。これにより、メモリカード9に記録されている画像がLCD12に表示される。
【0033】
信号処理部30は、画像データに基づいて被写体輝度の検出と、画像データのコントラストの検出とを行う回路を備えており、検出した被写体輝度とコントラストの情報をそれぞれメインCPU21に送る。メインCPU21は、信号処理部30からの被写体輝度情報に基づいてシャッタ速度,絞りを制御し、コントラスト情報に基づいてピント調節の制御を行う。
【0034】
図4〜6に示すように、レンズ装置5には、撮影光路を屈曲させた屈曲光学系が用いられている。レンズ装置5は、縦長の略箱状に形成されたレンズ鏡筒35を有しており、このレンズ鏡筒35の前面上部に被写体側レンズである第1レンズ6が取り付けられている。第1レンズ6の奥には、第1レンズ6の光軸S1に対して45度の角度で傾斜された反射面36aを有するプリズム36が組み込まれている。第1レンズ6に入射された被写体光は、反射面36aにより下方に向けて反射される。このプリズム36は、本発明の光学手段を構成する。
【0035】
プリズム36の下方には、第2〜第6レンズ群39〜43が組み込まれている。第3レンズ群40は、レンズ装置5の焦点距離を変化させるズームレンズであり、レンズ鏡筒35の外面上部に取り付けられたズームモータ44によって上下方向で移動される。第6レンズ群43は、レンズ装置5の焦点調整を行なう結像レンズ群であり、レンズ鏡筒35の外面下部に取り付けられたフォーカスモータ45によって上下方向で移動される。
【0036】
第4レンズ41と第5レンズ42との間には、シャッタ及び絞りからなる露光機構48が配置されている。この露光機構48は、レンズ鏡筒35の側方から突出された突出部49内に組み込まれており、この突出部49の上面に取り付けられた露光用モータ50によって駆動される。
【0037】
プリズム36と第6レンズ群43との間に配置される第5レンズ42は、撮影時のピッチ方向及びヨー方向の手振れを補正する振れ補正レンズであり、屈曲後の撮影光軸S2に直交する方向で移動自在とされている。本発明のデジタルカメラ2では、第1レンズ6の中心を通る垂直軸をヨー軸、第5レンズ42の移動面M1上でヨー軸に交差する軸をピッチ軸として設定し、このヨー軸及びピッチ軸における手振れ量に応じて第5レンズ42を移動させる。なお、詳しくは図示しないが、第5レンズ42の近傍には、第5レンズ42の位置を検出する位置センサ53(図7参照)が配置されている。この位置センサ53には、例えばホールセンサなどが用いられる。
【0038】
第5レンズ42は、ピッチ軸方向の手振れに対し、図6の左右方向に移動される。また、ヨー軸方向の手振れに対しては、図6に直交する方向に移動される。この第5レンズ42の移動には、レンズ鏡筒35の側面に取り付けられたヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57が用いられる。これらのアクチュエータ56、57は、振れ補正レンズを移動させる補正レンズ移動手段であり、例えばボイスコイルモータなどが用いられる。
【0039】
レンズ鏡筒5の下部には、CCD基板60に取り付けられたCCDイメージセンサ27が組み込まれている。このCCDイメージセンサ27は、第1〜第6レンズ群6,39〜43を透過した被写体光を受光するために、受光面27aが上方を向くように配置されている。
【0040】
レンズ鏡筒35の背面35aには、ジャイロ基板63が取り付けられる。このジャイロ基板63には、ヨー軸方向及びピッチ軸方向の手振れを検出するヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65と、これらのジャイロセンサ64,65と、ヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57等を制御する補正用CPU66と、手振れ補正機構の調整装置を接続するためのコネクタ67とが取り付けられている。各ジャイロセンサ64,65、及び補正用CPU66、及びコネクタ67は、本発明の振れ検出手段、及び制御手段、及び接続コネクタを構成する。
【0041】
図7に示すように、補正用CPU66は、ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65を動作させて手振れを検出させるドライバ部71と、ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65から入力された検出信号に基づいて、手振れを打ち消すために必要な第5レンズ42の移動方向と移動量とを算出する演算部72とを備えている。ドライバ部71は、演算部72の演算結果に基づいてヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57等を制御し、第5レンズ42を移動させる。手振れ補正用CPU66には、第5レンズ42の移動位置を検出する位置センサ53と、コネクタ67も接続されている。
【0042】
ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65は、第5レンズ42の移動面M1上に配置される。そのため、第5レンズ42の移動方向及び移動量を求める演算が簡単になり、誤差が小さくなる。
【0043】
図8に示すように、ジャイロ基板63はレンズ鏡筒35の背面35aに形成された取付面70に4本のネジ73で取り付けられる。この取付面70を基準にして、ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65が、第5レンズ42に位置決めされるので、手振れの補正精度を向上させることができる。この取付面70は、本発明の検出手段配置面を構成する。
【0044】
また、CCD基板60は、フレキシブルプリント基板68によってジャイロ基板63と接続されている。調整装置で手振れ補正機構を調整検査する際に、ジャイロ基板63を介してCCDイメージセンサ27が駆動される。
【0045】
次に、手振れ補正機構の検査及び調整について、図9のフローチャートを参照して説明する。本発明のレンズ装置5は、手振れ補正機構の調整検査をレンズ装置単体で行なうことができる。図10に示すように、手振れ補正機構の調整検査時には、レンズ装置5は振動可能な検査台である加振台75に固定される。そして、コネクタ67に接続されたケーブル76によってジャイロ基板63と調整装置77とが接続される。調整装置77は、調整内容の設定や確認のために、例えばパーソナルコンピュータ78に接続されている。
【0046】
調整装置77は、補正用CPU66を擬似手振れ信号によって動作する擬似信号モードで動作させ、擬似手振れ信号を入力する。この擬似手振れ信号は、ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65の検出信号を模した信号である。補正用CPU66は、入力された擬似手振れ信号に基づいて第5レンズ42の移動方向と移動量とを算出し、この算出結果に基づいてヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57を動作させる。第5レンズ42の移動方向及び移動量は、位置センサ53によって検出される。
【0047】
補正用CPU66による演算結果と位置センサ53の検出信号は、調整装置77に入力され、ヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57の動作状態と、位置センサ53の検出精度とが評価される。アクチュエータ56,57または位置センサ53の動作に問題がある場合には、ドライバ部71の設定が調整される。また、調整できないレベルである場合には、そのレンズ装置5はNG品と評価される。
【0048】
次いで、調整装置77は、補正用CPU66を実際にデジタルカメラ2に搭載される際の実装モードで動作させ、加振台75を所定の振動レベルで振動させる。振動を受けたヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65は、検出信号を補正用CPU66に入力する。補正用CPU66は、入力された検出信号に基づいて、第5レンズ42の移動方向と移動量とを算出し、この演算結果に基づいてヨー方向アクチュエータ56及びピッチ方向アクチュエータ57を動作させる。第5レンズ42の移動方向及び移動量は、位置センサ53によって検出される。
【0049】
補正用CPU66の演算結果と位置センサ53の検出信号は、擬似信号モードと同様に調整装置77に入力される。調整装置77は、加振台75の振動レベルとヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65の検出信号を比較して検出精度を評価する。そして、その評価結果に基づいてドライバ部71の設定を調整する。また、調整できないレベルである場合には、そのレンズ装置5はNG品と評価される。
【0050】
ヨー方向ジャイロセンサ64及びピッチ方向ジャイロセンサ65の調整検査後、手振れ総合調整検査が行なわれる。この手振れ総合調整検査では、例えば、加振台75を駆動して手振れ状態を発生させ、第1レンズ6に検査光を入射してCCDイメージセンサ27により撮像を行なわせる。そして、CCDイメージセンサ27から出力された画像を確認することにより、手振れ補正の検査を行なう。この検査により、実際の撮影時に近い状態での手振れ補正を検査することができる。
【0051】
このように、本発明のレンズ装置5は、単体で手振れ補正機構の調整検査を行なうことができるので、デジタルカメラ2の製造を効率的に行なうことができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、レンズ鏡筒35の背面35aにジャイロ基板63を取り付けたが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、ジャイロセンサ等の取り付けに関する実施形態を説明するが、上記実施形態と同じ部品については、詳しい説明は省略する。
【0053】
図11に示すレンズ装置82のように、レンズ鏡筒83の側方で、かつ第1レンズ6の光軸方向から見たときにズームモータ84や露光用モータ85、フォーカスモータ86等と重ならない位置、例えば、突出部87の下方にジャイロ基板88を取り付けてもよい。これによれば、屈曲光学系の特徴である薄型性を維持することができる。また、ジャイロ基板88に取り付けられたヨー方向ジャイロセンサ89及びピッチ方向ジャイロセンサ90を補正レンズの移動面上に配置することができるので、手振れ補正の誤差を小さくすることができる。
【0054】
なお、詳しくは図示しないが、この実施形態のレンズ装置82においても、ジャイロ基板88はレンズ鏡筒83に形成された取付面に取り付けられるので、補正レンズである第5レンズ42と、ジャイロセンサ89,90との間の位置精度を向上させることができる。
【0055】
また、図12に示すレンズ装置93のように、レンズ鏡筒94の外面に、プリズム36や第1レンズ6、第2〜第6レンズ群39〜43等に干渉しないように凹部95、96等を形成し、この凹部95、96内にヨー方向ジャイロセンサ97、ピッチ方向ジャイロセンサ98を取り付けてもよい。これによれば、屈曲光学系の特徴である薄型性を維持することができる。また、ジャイロセンサ97、98がレンズ鏡筒94に直接取り付けられるので、補正レンズである第5レンズとの間の位置精度を向上させることができる。なお、補正用CPU66やコネクタ67等は、CCD基板60に取り付けておき、フレキシブルプリント基板99により各ジャイロセンサ97、98と接続するとよい。
【0056】
また、図13に示すレンズ装置102のように、レンズ鏡筒103の背面にデジタルカメラ2や加振台75への固定に用いられるブラケット104を取り付け、このブラケット104にジャイロ基板105を取り付けて、プリズム36の背後の空間に配置してもよい。これによれば、レンズ装置102の固定が容易になるとともに、従来は無駄になっていたプリズム36の背後の空間を有効利用してレンズ装置102を小型化することができる。この場合にも補正用CPU66やコネクタ67等は、CCD基板60に取り付けておき、フレキシブルプリント基板によりヨー方向ジャイロセンサ106、ピッチ方向ジャイロセンサ107と接続するとよい。
【0057】
また、図14に示すレンズ装置110のように、レンズ鏡筒111に前面側から取り付けられて側面にネジ止めされるブラケット112を設け、このブラケット112の前面にジャイロ基板113を取り付けてもよい。これによれば、レンズ装置110の固定が容易になる。また、ヨー方向ジャイロセンサ114及びピッチ方向ジャイロセンサ115は、補正レンズである第5レンズ42の移動面上で、かつヨー軸とピッチ軸との交点Gの近傍に配置することができるので、手振れの補正精度を向上させることができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、撮像した画像を記録することができるデジタルカメラを例に説明したが、撮像のみを行なう撮像装置や、デジタルカメラを内蔵した携帯電話機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のデジタルカメラの前面側の外観形状を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面側の外観形状を示す斜視図である。
【図3】デジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図4】レンズ装置の前面側の外観形状を示す斜視図である。
【図5】レンズ装置の背面側の外観形状を示す斜視図である。
【図6】レンズ装置の断面図である。
【図7】ジャイロ基板の構成を示すブロック図である。
【図8】レンズ鏡筒に対するジャイロ基板の取付状態を示す分解斜視図である。
【図9】手振れ補正機構の調整検査の手順を示すフローチャートである。
【図10】手振れ補正機構の調整検査の状態を示す斜視図である。
【図11】レンズ鏡筒の側方にジャイロ基板を配したレンズ装置の外観斜視図である。
【図12】レンズ鏡筒に設けた凹部にジャイロセンサを配したレンズ装置の外観斜視図である。
【図13】レンズ鏡筒の背面に取り付けたブラケットにジャイロセンサを配したレンズ装置の外観斜視図である。
【図14】ヨー軸とピッチ軸の交点近傍にジャイロセンサを配したレンズ装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2 デジタルカメラ
5 レンズ装置
6 第1レンズ
27 CCDイメージセンサ
35 レンズ鏡筒
36 プリズム
42 第5レンズ
56 ヨー方向アクチュエータ
57 ピッチ方向アクチュエータ
63,88,105,113 ジャイロ基板
64,89,97,106,114 ヨー方向ジャイロセンサ
65,90,96,107,115 ピッチ方向ジャイロセンサ
66 補正用CPU
67 コネクタ
70 取付面
75 加振台
77 調整装置
104,112 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体側レンズ群と、
前記被写体側レンズ群に入射した光束を屈曲させる光学手段と、
前記光学手段により曲げられた光束を撮像面上に結像させる結像レンズ群と、
前記光学手段と前記結像レンズ群との間の光軸上に配置され、前記光軸と直交する方向で移動自在とされた振れ補正レンズと、
前記被写体側レンズ群、光学手段、結像レンズ群、振れ補正レンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記補正レンズの移動面上に配置され、前記レンズ鏡筒の被写体に対する振れを検出する振れ検出手段と、
前記振れ検出手段の検出結果に基づいて、前記振れ補正レンズを振れが打ち消される方向に移動させる補正レンズ移動手段を備えることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記振れ検出手段は、前記レンズ鏡筒の外側に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記振れ検出手段は、前記レンズ鏡筒の固定に用いられる固定部材に取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記振れ検出手段は、前記レンズ鏡筒の側方で、かつ前記被写体側レンズ群の光軸方向から見たときに前記結像レンズ群等を駆動するモータ等と重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記振れ検出手段は、予め設定されたピッチ軸及びヨー軸の交点近傍に配置され、少なくとも前記レンズ鏡筒のピッチ方向の振れと、ヨー方向の振れを検出することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記ピッチ軸とヨー軸の交点は、前記振れ補正レンズの移動面上で、かつ前記被写体側レンズ群の下方に配置されていることを特徴とする請求項5記載のレンズ装置。
【請求項7】
被写体側レンズ群と、
前記被写体側レンズ群に入射した光束を屈曲させる光学手段と、
前記光学手段により曲げられた光束を撮像面上に結像させる結像レンズ群と、
前記光学手段と前記結像レンズ群との間の光軸上に配置され、前記光軸と直交する方向で移動自在とされた振れ補正レンズと、
前記被写体側レンズ群、光学手段、結像レンズ群、振れ補正レンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒の外面に、前記光学手段や結像レンズ群、振れ補正レンズ等に干渉しないように形成された凹部と、
前記凹部に組み込まれ、前記レンズ鏡筒の被写体に対する振れを検出する振れ検出手段と、
前記振れ検出手段の検出結果に基づいて、前記振れ補正レンズを振れが打ち消される方向に移動させる補正レンズ移動手段を備えることを特徴とするレンズ装置。
【請求項8】
前記振れ検出手段は、前記レンズ鏡筒の固定に用いられる固定部材に取り付けられて、前記凹部内に収められることを特徴とする請求項7記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記レンズ鏡筒の外面に検出手段配置面を形成し、この検出手段配置面を基準として前記振れ検出手段を前記レンズ鏡筒に固定することを特徴とする請求項1〜8いずれか記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記振れ検出手段及び前記補正レンズ移動手段を制御する制御手段と、この制御手段に対して前記振れ検出手段及び前記補正レンズ移動手段の調整信号を入力する接続コネクタとを備え、単体で前記振れ検出手段及び前記補正レンズ移動手段の調整を行なえるようにしたことを特徴とする請求項1〜9いずれか記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記調整信号は、前記振れ検出手段の検出信号に模した擬似振れ信号を含むことを特徴とする請求項10記載のレンズ装置。
【請求項12】
被写体画像を結像するレンズ装置と、
前記レンズ装置によって結像された被写体画像を撮像する撮像素子を備える撮像装置において、
前記レンズ装置として、前記請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
被写体画像を結像するレンズ装置と、
前記レンズ装置によって結像された被写体画像を撮像して撮像画像を生成する撮像手段と、
前記撮像画像を記憶する記憶手段を備えるデジタルカメラにおいて、
前記レンズ装置として、前記請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項14】
被写体画像を結像するレンズ装置と、
前記レンズ装置によって結像された被写体画像を撮像して撮像画像を生成する撮像手段と、
前記撮像画像を記憶する記憶手段と、
無線による通話を行なう通話手段を備える携帯電話機において、
前記レンズ装置として、前記請求項1〜11いずれか記載のレンズ装置を用いることを特徴とする携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−107731(P2008−107731A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292801(P2006−292801)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】