説明

レンズ鏡筒、および、光学機器

【課題】 案内バーを十分に短くすることで、より一層のレンズ鏡筒の小型化を図ることが可能となる。
【解決手段】 レンズ鏡筒であって、固定筒と、前記固定筒に固定された光軸方向に平行な案内バーと、前記案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部を有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、前記案内バーに嵌合する溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、を備え、前記溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズ群を有するレンズ鏡筒、および、レンズ鏡筒を備えた撮影装置(銀塩カメラやデジタルスチルカメラ)等の光学機器に関するものである。特に、非撮影時にはレンズ鏡筒を撮像装置本体内に沈胴させて携帯性を良くした、沈胴式の撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、銀塩フィルムを使用した銀塩カメラや、CCD等の撮影素子に光学像を結像させ画像情報を電気的に読み出しメモリ等の記録媒体に記録するデジタルスチルカメラ等の撮影装置用のレンズ鏡筒において、複数のレンズ群を共通の案内バーで案内しながら、光軸方向へそれぞれ移動させる機構が提案されている。
【0003】
特に、特許文献1には、変倍レンズ群とリレーレンズ群を同一の案内バーで案内しながら移動させる機構が開示されている。さらに、変倍レンズ群側スリーブとリレーレンズ群側スリーブのそれぞれには、案内バーと嵌合する孔部が2か所に設けられており、変倍レンズ群側スリーブの2つの孔部の間にリレーレンズ群側スリーブの2つの孔部うちの一方の孔部が挟み込まれるに配置される構成が記載されている。
【特許文献1】特開平6−34869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、リレーレンズ群側スリーブの他方の孔部が変倍レンズ群側スリーブの2つの孔部の外側に配置されることになる。すなわち、案内バーの長さは、変倍レンズ群側スリーブの2つの孔部の間の長さに、その外側に配置されるリレーレンズ群側スリーブの他方の孔部を加えた長さを考慮して、決定されることになるので、案内バーを十分に短くするのは難しく、レンズ鏡筒の小型化を十分に図ることはできない、という問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するためのもので、案内バーを十分に短くすることで、より一層のレンズ鏡筒の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の側面に係るレンズ鏡筒は、固定筒と、前記固定筒に固定された光軸方向に平行な案内バーと、前記案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部を有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、前記案内バーに嵌合する溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、を備え、前記溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の第2の側面に係るレンズ鏡筒は、固定筒と、前記固定筒に固定された光軸方向に平行な第1案内バー、第2案内バーおよび第3案内バーと、前記第1案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部と、前記第2案内バーに嵌合する第1溝部とを有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、前記第1案内バーに嵌合する第2溝部と、前記第3案内バーに嵌合する第3孔部および第4孔部とを有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、を備え、前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第3の側面に係るレンズ鏡筒は、固定筒と、前記固定筒に固定された光軸方向に平行な案内バーと、前記案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部を有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、前記案内バーに嵌合する第1溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、前記案内バーに嵌合する第2溝部を有し、第3光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第3保持部材と、を備え、前記第1溝部および前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明の第4の側面に係るレンズ鏡筒は、固定筒と、前記固定筒に固定された光軸方向に平行な第1案内バーおよび第2案内バーと、前記第1案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部と、前記第2案内バーに嵌合する第1溝部とを有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、前記第1案内バーに嵌合する第2溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、前記第2案内バーに嵌合する第3孔部および第4孔部とを有し、第3光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第3保持部材と、を備え、前記第1溝部は、前記第3孔部と前記第4孔部の間に配置されているとともに、前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明には、上記レンズ鏡筒を具備する光学機器も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、案内バーを十分に短くすることで、より一層のレンズ鏡筒の小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1〜9を用いて説明する。
【0014】
図1〜9は、変倍光学系を有する4群構成のレンズ鏡筒であって、非使用状態では通常使用状態よりも各レンズ群間隔を縮めて、レンズ全長を大幅に短縮することが可能なレンズ鏡筒、いわゆる沈胴式レンズ鏡筒に、本発明を適用した場合の説明図である。図1は分解斜視図、図2はレンズ鏡筒の沈胴時の断面図、図3は最広角時の(WIDE端での)断面図、図4は最望遠時の(TELE端での)断面図である。図5は本実施例における絞りシャッターユニット、シフトユニットおよび4群鏡筒ユニットのスリーブの斜視図、図6は本実施例における絞りシャッターユニットおよび3群鏡筒ユニットのスリーブの斜視図、図7は本実施例における可動配線板の断面図、図8は本実施例におけるカム筒の外カムの展開図、図9は本実施例におけるカム筒の内カムの展開図である。
【0015】
L1は第1レンズ群、L2は第2レンズ群、L3は光軸と垂直な平面内で移動して手振れ補正動作(防振動作)を行なう第3レンズ群、L4は光軸方向に移動して合焦動作(フォーカス調整動作)を行なう第4レンズ群である。
【0016】
1は第1レンズ群L1を保持する1群鏡筒ユニット、2は第2レンズ群L2を保持する2群鏡筒ユニット、3は第3レンズ群L3を光軸と垂直な平面内で移動可能に保持するシフトユニット、4は第4レンズ群L4を光軸方向に移動可能に保持する4群鏡筒ユニット、5は光量を調節するための絞りシャッターユニットである。
【0017】
シフトユニット3の後端部には、円錐形状のカムフォロワ−を有するカムピン6が圧入や接着等により固定されており、絞りシャッターユニット5の後端部には、円錐形状のカムフォロワ−を有するカムピン7が圧入や接着等により固定されている。
【0018】
8、9および10は、シフトユニット3、4群鏡筒ユニット4および絞りシャッターユニット5を光軸方向に移動可能に案内支持するガイドバー(案内バー)である。シフトユニット3はガイドバー8と9により支持され、4群鏡筒ユニット4はガイドバー9と10により支持され、絞りシャッターユニット5はガイドバー9と10により支持されている。
【0019】
11はガイドバー8,9,10の後ろ側の端部を位置決め固定し、CCD等の撮像素子を取付けるための後部鏡筒である。12はガイドバー8,9,10の前側の端部を位置決め固定する固定筒であり、後部鏡筒11にビス3本にて固定されている。13はカム筒であり、光軸方向において後部鏡筒11と固定筒12にて位置規制され、固定筒12の外周で回転可能に保持されている。
【0020】
カム筒13は、その外周壁部に第1レンズ群L1を光軸方向に駆動する際の駆動用の1群カム溝13aおよび衝撃受け用の衝撃カム溝13bを有し、その内周壁部に第2レンズ群L2を光軸方向に駆動するための2群カム溝13cと、第3レンズ群L3を光軸方向に駆動するための3群カム溝13dと、絞りシャッターユニット5を光軸方向に駆動するための絞りシャッターカム溝13eとを有しており、各カム溝は、後述する各レンズ群に一体的に設けられたカムフォロワ−ピンに嵌合している。カム筒13が光軸を中心に固定筒12の外周を回転することで、第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3および絞りシャッターユニット5を光軸方向に進退させて変倍動作を行なうとともにレンズ鏡筒全体を沈胴させている。
【0021】
14は後部鏡筒11にビス3本にて固定されている支持枠であり、15は第4レンズ群L4を光軸方向に移動させて合焦動作を行なわせるための駆動手段であるフォーカスモータである。回転するロータと同軸のリードスクリュー15aが4群鏡筒ユニット4に取付けられたラック35と噛み合っており、ロータが回転することで第4レンズ群L4を移動せしめる。また、不図示のねじりコイルバネによって、4群鏡筒ユニット4、ガイドバー9および10、ラック35、リードスクリュー15aのそれぞれのガタは片寄せされている。フォーカスモータ15はビス2本にて支持枠14に固定されている。
【0022】
16はカム筒13を回転させるための駆動手段であるズームモータであり、カム筒13の後端部に設けられたギア部13fと噛み合っており、カム筒13を回転させて変倍動作を行なわせる。ズームモータ16は後部鏡筒11に3本のビスにて固定されている。
【0023】
17はフォトインタラプタであり、4群鏡筒ユニット4に形成された遮光部4cの光軸方向での移動に伴い、遮光と透光の切り替わりを電気的に検出して第4レンズ群L4の基準位置を検出するためのフォーカスリセットスイッチである。18および19はフォトインタラプタであり、カム筒13の後端部に形成された遮光部13gの回転方向での移動に伴い、遮光と透光の切り替わりを電気的に検出してカム筒13の複数の基準位置を検出するためのズームリセットスイッチである。
【0024】
20はフォトインタラプタ18および19を取付けた配線板であり、コネクタ部20aで不図示のカメラ回路と接続している。33はシフトユニット3と配線板20とを接続するシフトユニット配線板であり、可動部33aを有する。34は絞りシャッターユニット5と配線板20とを接続する絞りシャッターユニット配線板であり、可動部34aを有する。21はフォーカスモータ15とフォトインタラプタ17を取付けた配線板であり、配線板20と接続されている。22は後部鏡筒11に固定された外筒である。
【0025】
次に、第1レンズ群L1および第2レンズ群L2の支持構成について説明する。固定筒12の先端部には3つのキー12aが光軸を中心に均等な角度で設けられている。1群鏡筒ユニット1の円筒部分の内周壁部には3つのキー12aとそれぞれ嵌合する3本の直進溝1aが設けられており、3つのキー12aと3本の直進溝1aの嵌合により1群鏡筒ユニット1は固定筒12に対して光軸に垂直な方向において位置決めされるとともに、直進溝1aに沿って光軸方向に進退自在に案内される。
【0026】
また、1群鏡筒ユニット1の後端部には3つのカムフォロワーピンと耐衝撃用ピンが光軸を中心に均等な角度でそれぞれ設けられている。カムフォロワーピンと耐衝撃用ピンがカム筒13の外周壁部に設けられた3本のカム溝13aと13bとそれぞれ係合しており、1群鏡筒ユニット1の光軸に対する倒れを規制するとともに、カム筒13の回転により1群鏡筒ユニット1を光軸方向に進退させる。
【0027】
カムフォロワーピンは沈胴領域および通常使用領域で常にカム溝13aと係合しているテーパーピンであり、耐衝撃用ピンは略円筒形状に近い角度をもつテーパーピンである。耐衝撃用ピンはカム溝13bと対応した位置にあるが、通常時はカム溝13bと係合していない。落下等の衝撃的な力が1群鏡筒ユニット1に加わると、常にカム溝13aと係合しているカムフォロワーピンはカム溝13aのテーパー角度に沿ってせり上がりカム溝13aから脱落しそうになるが、耐衝撃用ピンがカム溝13bと当接することでカムフォロワーピンがカム溝13aから脱落するのを防止する。
【0028】
2群鏡筒ユニット2の後端部には3つのキーとして3個の円筒ピン23が光軸を中心に均等な角度で設けられている。また、2本のカムフォロワーピン24が光軸を中心に均等な角度で設けられている。それぞれの円筒ピン23はその根元に軸部を有し、その軸部は2群鏡筒ユニット2に圧入結合されている。また、カムフォロワーピン24はその根元に軸部を有し、その根元は2群鏡筒ユニット2に嵌合しており、板バネ25でカム溝13cに片寄せされて係合している。
【0029】
固定筒12には3本の直進溝12bが設けられており、3つの円筒ピン23と3本の直進溝12bの嵌合により2群鏡筒ユニット2は固定筒12に対して光軸に垂直な方向において位置決めされるとともに、直進溝12bに沿って光軸方向に進退自在に案内される。
【0030】
2群鏡筒ユニット2の先端部には3つのキー2aが光軸を中心に均等な角度で設けられおり、3つのキー2aが1群鏡筒ユニット1の円筒部分の内周壁部に設けられた3本の直進溝1aと嵌合することで、1群鏡筒ユニット1に対して2群鏡筒ユニット2の先端部を光軸に垂直な方向において位置決めする。
【0031】
このように、2群鏡筒ユニット2は、後端部と先端部で光軸に垂直な方向において位置決めされ、固定筒12と1群鏡筒ユニット1により光軸に対する倒れを規制されている。もし1群鏡筒ユニット1が支持部のガタ、案内部のガタや3本のカム溝の不均一等によって光軸に垂直な方向にずれて動いてしまっても、2群鏡筒ユニット2の先端部がそれに追従するので、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の相対的な位置のずれが最小限に抑えられるのである。
【0032】
2本のカムフォロワーピン24は先端部に円錐形状のカムフォロワーを有し、板バネ25で片寄せされて、カム筒13の内周壁部に設けられた2本のカム溝13cと常に係合しており、カム筒13の回転により2群鏡筒ユニット2を光軸方向に進退させる。2群鏡筒ユニット2は、光軸に垂直な平面内において、圧入された3か所のピンと直進溝により精度良く位置決めされる。光軸方向においては、光軸を中心にカム溝にガタの無いように片寄せされた2か所でカムフォロワーによって駆動するので、光軸に対する傾きなどを発生させずに精度良く駆動できる。また、カムを2本としたことによりカムの回転角度を大きく取ることが出来る。また、本実施例では、直進溝12bとの嵌合部分として、円筒ピン23を2群鏡筒ユニット2に圧入して用いているが、2群鏡筒ユニット2と一体成形にしたものを用いてもよい。
【0033】
次に、シフトユニット3、4群鏡筒ユニット4および絞りシャッターユニット5の支持構成について説明する。図1において、シフトユニット3、4群鏡筒ユニット4および絞りシャッターユニット5を光軸方向に可動自在に支持するガイドバー8,9,10は後部鏡筒11と固定筒12に挟まれて光軸方向に平行に支持されており、ガイドバー9はガイドバー8と10に対して光軸を挟んで反対側に配置されている。
【0034】
図6において、ガイドバー8は、シフトユニット3のスリーブ3aに設けられた2つの孔部と嵌合しており、シフトユニット3を光軸方向に移動可能に支持している。カムフォロワー6はカム筒13のカム溝13dに係合しており、カム筒13の回転によりシフトユニット3はガイドバー8に案内されながら光軸方向に移動する。ガイドバー8の長さは、スリーブ3aの長さにシフトユニット3の移動量分を加味した長さが最低限必要となる。
【0035】
図5において、ガイドバー9は絞りシャッターユニット5のスリーブ5aに設けられた2つの孔部と嵌合しており、さらに、絞りシャッターユニット5のスリーブ5aの間(2つの孔部の間)でシフトユニット3のU溝部3bと嵌合しており、さらにまた、スリーブ5aの後ろ側(2つの孔部の外側)で4群鏡筒ユニット4のU溝部4bと嵌合している。ガイドバー9は、絞りシャッターユニット5を光軸方向に移動可能に支持している。カムフォロワー7はカム筒13のカム溝13eに係合しており、カム筒13の回転により絞りシャッターユニット5はガイドバー9に案内されながら光軸方向に移動する。ガイドバー9の長さは、スリーブ5aの長さとU溝部4bの長さに、絞りシャッターユニット5の移動量分と4群鏡筒ユニット4の移動量分を加味した長さが必要であるが、シフトユニット3のU溝部3bがスリーブ5aの内側(2つの孔部の間)にあるので、スリーブ5aの外側(2つの孔部の外側)にU溝部3bを配置する場合よりも短くすることが可能となる。
【0036】
また、図5に示すように、絞りシャッターユニット5のスリーブ5aは、2つの孔部の間に開口部が設けられており、2つの部位がガイドバー9の両側でガイドバー9を挟んで対向するような形状をしている。このように、スリーブ5aは、ガイドバー9の外周側に大きくならないように設計されている。さらに、2つの部位をガイドバー9を挟んで対向するような形状にすることで、スリーブの位置精度や形状精度を向上させるとともに、部品強度をも向上させている。
【0037】
ガイドバー10は4群鏡筒ユニット4のスリーブ4aに設けられた2つの孔部と嵌合しており、さらに、絞りシャッターユニット5のU溝部5bと嵌合しており、4群鏡筒ユニット4を光軸方向に移動可能に支持している。ラック35とステッピングモータ15により4群鏡筒ユニット4はガイドバー10に案内されながら光軸方向に移動する。ガイドバー10の長さは、スリーブ4aの長さとU溝部5bの長さに、4群鏡筒ユニット4の移動量分と絞りシャッターユニット5の移動量分を加味した長さが必要になる。
【0038】
本実施例では、上述のように、案内バー上で、絞りシャッターユニット(第1光学要素を保持する第1保持部材)のスリーブの内側(2つの孔部の間)に、シフトユニット(第2光学要素を保持する第2保持部材)のU溝部を配置することで、各保持部材ごとにスリーブ用案内バーとU溝部用案内バーを設けなくても良いので案内バーの本数を少なくでき、かつ、案内バーの長さを十分短くできる。すなわち、レンズ鏡筒の小型化を実現することができる。
【0039】
ちなみに、上述のように、絞りシャッターユニット5を光軸方向に移動させることで、特にWIDE端での撮影時に、いわゆるシェーディングを目立たなくさせるという光学的な効果が達成される。
【0040】
このとき、図9に示すように、カム筒13の内カムには、2群カム溝13cが2本、3群カム溝13dが1本、絞りシャッターカム溝13eが1本設けられており、3群カム溝13dは2本の2群カム溝13cのうちの一方のカム溝の後ろ側(CCD側)に配置され、絞りシャッターカム溝13eは2本の2群カム溝13cのうちの他方のカム溝の後ろ側(CCD側)に配置されている。このように、ある1つの部材を移動させるための同形状のカム溝を複数配置し、隣接する2つの部材を移動させるための互いに異なる形状のカム溝をカム筒の円周方向にずらして配置し、カム筒13の円周方向で互いの位相を合せることで、カム筒13のカム溝用スペースを有効に活用することが可能となる。言い換えれば、ある移動部材のカム溝の山谷の間のスペースに別の移動部材のカム溝を配置すれば、スペースを有効に活用することが可能となるのである。
【0041】
さらにこのとき、シフトユニット配線板33をシフトユニット3のスリーブ3a近傍の、シフトユニット3が光軸方向に移動しやすい位置で、CCDの側面に沿うように配置することにより、光軸により近づけて配置できるので固定筒12の径を小さくでき、レンズ鏡筒の小型化が可能となる。
【0042】
また同様に、絞りシャッターユニット配線板34を絞りシャッターユニット5のスリーブ5a近傍の、絞りシャッターユニット5が光軸方向に移動しやすい位置で、CCDの側面に沿うように配置することにより、光軸により近づけて配置できるので固定筒12の径を小さくでき、レンズ鏡筒の小型化が可能となる。
【0043】
さらに、シフトユニット3のU溝部3bと絞りシャッターユニット5のスリーブ5aは共通の案内バーで支持されており、シフトユニット3のスリーブ3aは、U溝部3bとは光軸を挟んで対向する位置に配置され、絞りシャッターユニット5のスリーブ5aとも光軸を挟んで対向する位置に配置されている。可動配線板であるシフトユニット配線板33と絞りシャッターユニット配線板34は各ユニットの移動を容易にするために各ユニットのスリーブ近傍に配置されるのが好ましく、シフトユニット配線板33と絞りシャッターユニット配線板34を光軸を挟んで対向する位置に配置することにより、レンズ鏡筒の小型化が可能となる。
【0044】
なお、2つの可動配線板は、本実施例では対向位置に配置しているが、CCDの側面に沿うように配置すれば、光軸を中心にして90度の位置でも良い。また、2つの配線板を一体化してから可動部を設けることも考えられるが、配線板を一体化すると幅が広くなるのでCCDの側面形状に沿わせても固定筒12の径が大きくなってしまう。よって、本実施例のように2つの配線板に分けて配置する方がより好ましい。
【0045】
次に、手振れ補正機構(防振機構)について説明する。
【0046】
図10は手振れ補正機構を有するレンズ鏡筒を搭載した撮影装置のシステム図である。50は被写体の空間周波数の高域成分を除去するための光学ローパスフィルタ、51はピント面に配置された光学像を電気信号に変換するための撮像素子であるCCD、52はCCD51から読み出された電気信号aを画像信号bに変換するためのカメラ信号処理回路、53はレンズ駆動を制御するマイコンである。
【0047】
電源投入時、マイコン53はフォーカスリセット回路54およびズームリセット回路55の出力を監視しながら、フォーカスモータ駆動回路56およびズームモータ駆動回路57によりそれぞれのステッピングモータを回転させて、各レンズ群を光軸方向に移動させる。フォーカスリセット回路54およびズームリセット回路55の出力は、それぞれの光学要素の保持部材が予め設定された所定位置まで移動してきたとき(保持部材に設けられた遮光部材が固定筒側に設けられたフォトインタラプタの光路を遮光したとき、もしくは、透過する境界部に達したとき)に反転する。そのときの位置を基準位置として以後のステッピングモータの駆動ステップ数をマイコン内で計数することで、マイコンは各レンズ群の絶対位置を検知することができ、これによって正確な焦点距離情報が得られる。この一連の動作をズームおよびフォーカスのリセット動作という。
【0048】
58は絞りシャッターユニット5を駆動するための絞り駆動回路であり、絞りの開口径はマイコン53に取り込まれた画像信号bの明るさ情報に基づいて制御される。
【0049】
59および60は撮影装置のピッチ方向(縦方向または鉛直方向)の傾き角およびヨー方向(横方向または水平方向)の傾き角を検出する角度検出回路であり、傾き角の検出は例えば撮影装置に固定された振動ジャイロ等の角速度センサの出力を積分して行われる。両回路59,60の出力、すなわち、撮影装置の傾き角情報はマイコン53に取り込まれる。61および62は手振れ補正を行なう際に第3レンズ群L3を光軸に垂直な平面内でシフト移動させるためのピッチ方向およびヨー方向のコイル駆動回路であり、マグネットを含む磁気回路のギャップにコイルを配置した、いわゆるムービングコイルの構成により第3レンズ群L3をシフト移動させる駆動力を発生させる。63および64は第3レンズ群L3の光軸に対するシフト移動量を検出するためのピッチ方向およびヨー方向の位置検出回路であり、その出力はマイコン53に取り込まれる。
【0050】
第3レンズ群L3が光軸に垂直な平面内でシフト移動すると、その通過光束が曲げられて、CCD51上に結像している被写体の像の位置は移動する。このときの被写体の像を、実際に撮影装置が傾いたり振れたりすることで像が移動する向きとは逆向きに同じ大きさだけ、移動させるようにマイコン53で制御することによって、撮影装置が傾いたり振れたりしても、被写体の像の位置が移動しないようにできる。いわゆる、手触れ補正を実現できる。
【0051】
マイコン53内では、ピッチ方向角度検出回路59およびヨー方向角度検出回路60から得られた撮影装置の傾き角信号と、ピッチ方向位置検出回路63およびヨー方向位置検出回路64から得られた第3レンズ群L3のシフト移動量信号と、をそれぞれ差し引いて得られた差信号に増幅処理および位相補償処理を行ない、その信号に基づいてピッチ方向コイル駆動回路61およびヨー方向コイル駆動回路62により第3レンズ群L3をそれぞれの方向で駆動する。このとき、上記の差信号がより小さくなるように位置決め駆動制御が行なわれ、目標位置が設定される。
【0052】
さらに、本実施例では第1〜第3レンズ群L1〜L3の相対移動により変倍動作を行なっているので、第3レンズ群L3のシフト移動による像の移動量が焦点距離によって変化してしまう。したがって、ピッチ方向角度検出回路59およびヨー方向角度検出回路60から得られる傾き角信号をそのまま用いて、第3レンズ群L3のシフト移動量を決定するのではなく、焦点距離情報に基づいて傾き角信号に対して補正処理を行ない、焦点距離によって生じる変化量をキャンセルする構成となっている。
【0053】
(第2実施例)
本実施例では、第1実施例を含め、図11(a)〜(c)を用いて、シフトユニット3、4群鏡筒ユニット4および絞りシャッターユニット5の各ユニットを案内バー8,9および10によって支持する際の支持構成の変形例について説明する。なお、ここで説明する変形例は、シフトユニット3、4群鏡筒ユニット4および絞りシャッターユニット5のそれぞれの移動量、スリーブ長さやU溝部長さを考慮してなされたものである。
【0054】
まず、図11(a)は、第1実施例を簡略に示した図である。絞りシャッターユニット5(第1光学要素を保持する第1保持部材)のスリーブの2つの孔部(第1孔部および第2孔部)は案内バー9(第1案内バー)に嵌合しており、そのU溝部(第1溝部)は案内バー10(第2案内バー)に嵌合している。一方、シフトユニット3(第2光学要素を保持する第2保持部材)のスリーブの2つの孔部(第3孔部および第4孔部)は案内バー8(第3案内バー)に嵌合しており、そのU溝部(第2溝部)は案内バー9(第1案内バー)に嵌合している。このとき、案内バー9(第1案内バー)上では、シフトユニット3の第2溝部が、絞りシャッターユニット5の第1孔部と第2孔部の間に配置されている。さらに、絞りシャッターユニットの後ろ側では、4群鏡筒ユニット4のスリーブが案内バー10に嵌合しており、そのU溝部が案内バー9に嵌合している。
【0055】
次に、図11(b)では、絞りシャッターユニット5(第1光学要素を保持する第1保持部材)のスリーブの2つの孔部(第1孔部および第2孔部)は案内バー9に嵌合している。一方、シフトユニット3(第2光学要素を保持する第2保持部材)のU溝部(第1溝部)は案内バー9に嵌合している。さらに、4群鏡筒ユニット4(第3光学要素を保持する第3保持部材)のU溝部(第2溝部)は案内バー9に嵌合している。このとき、案内バー9上では、シフトユニット3の第1溝部と4群ユニット4の第2溝部が、絞りシャッターユニット5の第1孔部と第2孔部の間に配置されている。
【0056】
さらに次に、図11(c)では、絞りシャッターユニット5(第1光学要素を保持する第1保持部材)のスリーブの2つの孔部(第1孔部および第2孔部)は案内バー9(第1案内バー)に嵌合しており、そのU溝部(第1溝部)は案内バー10(第2案内バー)に嵌合している。一方、シフトユニット3(第2光学要素を保持する第2保持部材)のU溝部(第2溝部)は案内バー9(第1案内バー)に嵌合している。さらに、4群鏡筒ユニット4(第3光学要素を保持する第3保持部材)のスリーブの2つの孔部(第3孔部および第4孔部)は案内バー10(第2案内バー)に嵌合している。このとき、案内バー9(第1案内バー)上では、シフトユニット3の第2溝部が、絞りシャッターユニット5の第1孔部と第2孔部の間に配置されおり、案内バー10(第2案内バー)上では、絞りシャッターユニット3の第1溝部が、4群鏡筒ユニット4の第3孔部と第4孔部の間に配置されている。
【0057】
上述した変形例によれば、各保持部材ごとにスリーブ用案内バーとU溝部用案内バーを設けなくても良いので案内バーの本数を少なくでき、かつ、案内バーの長さを十分短くできる。すなわち、レンズ鏡筒の小型化を実現することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施例の構成に限定されるものではなく、請求項で示された構成であればどの様なものであっても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施例のレンズ鏡筒の分解斜視図
【図2】第1実施例のレンズ鏡筒の沈胴時の断面図
【図3】第1実施例のレンズ鏡筒のWIDE端での断面図
【図4】第1実施例のレンズ鏡筒のTELE端での断面図
【図5】第1実施例の絞りシャッターユニット、シフトユニットおよび4群鏡筒ユニットのスリーブの斜視図
【図6】第1実施例の絞りシャッターユニットおよび3群鏡筒ユニットのスリーブの斜視図
【図7】第1実施例の可動配線板の断面図
【図8】第1実施例のカム筒の外カムの展開図
【図9】第1実施例のカム筒の内カムの展開図
【図10】第1実施例のレンズ鏡筒の手振れ機構のシステム図
【図11】第2実施例のレンズ鏡筒の案内バー配置を展開した簡略図
【符号の説明】
【0060】
1 1群鏡筒ユニット
2 2群鏡筒ユニット
3 シフトユニット
4 4群鏡筒ユニット
5 絞りシャッターユニット
3a,4a,5a スリーブ
3b,4b,5b U溝部
6,7 カムピン
8,9,10 案内バー
11 後部鏡筒
12 固定筒
13 カム筒
14 支持枠
15 フォーカスモータ
16 ズームモータ
17,18、19 フォトインタラプタ
20,21 配線板
22 外筒
23 円筒ピン
24 カムフォロワーピン
25 板バネ
26 1群鏡筒
27 1群案内筒
28 1群鏡筒止め板
29 前マスク
30 前マスク止め板
31 防塵リング
32 化粧板
33 シフトユニット配線板
34 絞りシャッターユニット配線板
35 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒であって、
固定筒と、
前記固定筒に固定された光軸方向に平行な案内バーと、
前記案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部を有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、
前記案内バーに嵌合する溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、を備え、
前記溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
レンズ鏡筒であって、
固定筒と、
前記固定筒に固定された光軸方向に平行な第1案内バー、第2案内バーおよび第3案内バーと、
前記第1案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部と、前記第2案内バーに嵌合する第1溝部とを有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、
前記第1案内バーに嵌合する第2溝部と、前記第3案内バーに嵌合する第3孔部および第4孔部とを有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、を備え、
前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1光学要素は光量調節機構を含み、前記第2光学要素は防振機構を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
レンズ鏡筒であって、
固定筒と、
前記固定筒に固定された光軸方向に平行な案内バーと、
前記案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部を有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、
前記案内バーに嵌合する第1溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、
前記案内バーに嵌合する第2溝部を有し、第3光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第3保持部材と、を備え、
前記第1溝部および前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
レンズ鏡筒であって、
固定筒と、
前記固定筒に固定された光軸方向に平行な第1案内バーおよび第2案内バーと、
前記第1案内バーに嵌合する第1孔部および第2孔部と、前記第2案内バーに嵌合する第1溝部とを有し、第1光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第1保持部材と、
前記第1案内バーに嵌合する第2溝部を有し、第2光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第2保持部材と、
前記第2案内バーに嵌合する第3孔部および第4孔部とを有し、第3光学要素を保持して前記光軸方向に移動する第3保持部材と、を備え、
前記第1溝部は、前記第3孔部と前記第4孔部の間に配置されているとともに、前記第2溝部は、前記第1孔部と前記第2孔部の間に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1光学要素は光量調節機構を含み、前記第2光学要素は防振機構を含み、前記第3光学要素はフォーカス調整レンズを含むことを特徴とする請求項4または5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のレンズ鏡筒を具備する光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−39385(P2006−39385A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221828(P2004−221828)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】