説明

レンズ鏡筒及び光学システム

【課題】ピント誤差を小さくすることができるレンズ鏡筒及び光学システムを提供する。
【解決手段】像を撮像するための光学系4と、光学系4による像を所定の倍率に変換する光学装置6に取付け可能なマウント部13を有し、光学系4を保持する鏡筒3と、像の明るさを調節する絞り部12と、光学装置6の倍率に関する情報を用いて絞り部12によって絞り込まれた像面に関する情報を演算する演算部10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレンズ鏡筒及び光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの交換が可能な一眼レフカメラの使用態様として、レンズとカメラ本体との間にテレコンバータ(以下テレコンという)を装着し、レンズの焦点距離を伸ばして被写体を大きく撮影する方法が知られている(特許3345890号公報参照)。
【特許文献1】特許3345890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題はピント誤差を小さくすることができるレンズ鏡筒及び光学システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、像を撮像するための光学系と、前記光学系による像を所定の倍率に変換する光学装置に取付け可能なマウント部を有し、前記光学系を保持する鏡筒と、前記像の明るさを調節する絞り部と、前記光学装置の倍率に関する情報を用いて前記絞り部によって絞り込まれた像面に関する情報を演算する演算部とを備えていることを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のレンズ鏡筒であって、前記演算部は、前記光学系の設計像面に関する情報と、前記光学系の測定像面に関する情報と、前記光学装置の前記倍率に関する情報と、前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報とを用いて、前記マウント部に前記光学装置が取り付けられたときの像面の補正量を演算することを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載のレンズ鏡筒であって、請求項1又は2記載のレンズ鏡筒であって、前記光学系の設計像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系による像面が移動する距離についての設計値であり、前記光学系の測定像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系による像面が移動する距離についての測定値であり、前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系と前記光学装置とを組み合わせた光学系による像面が移動する距離についての設計値であることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のレンズ鏡筒であって、前記光学装置はテレコンバータであることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒であって、前記光学系の設計像面に関する情報をXとし、前記光学系の測定像面に関する情報をAとし、前記光学装置の前記倍率に関する情報をMとし、前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報をYとし、前記マウント部に前記光学装置が取付けられたときの像面の補正量をY´としたとき、以下の式1を満たすことを特徴とする。
(Y+(X−A)×M2)≦ Y´≦(Y+(X−A)×M22 式1
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のレンズ鏡筒であって、前記補正量Y´は以下の式2を満たすことを特徴とする。
Y´=Y+(X−A)×M2 式2
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載のレンズ鏡筒を備えていることを特徴とする光学システム。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ピント誤差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1はこの発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を有する光学システムの構成を説明する図、図2はレンズだけを使用したときに絞り部を、例えば開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときの最良像面位置を示す図、図3はレンズにテレコンバージョンレンズを組み合わせたときに、絞り部を開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときの最良像面位置を示す図である。
【0014】
図2において、実線は開放時の光束、点線及び2点鎖線はF8に絞ったときの光束を示す。P1、P2及びP3はそれぞれ開放時のピント位置、F8に絞ったときの位置(設計値)及び実際のF8に絞ったときの位置(測定値)を示す。
【0015】
図3において、実線及び2点鎖線はそれぞれ開放時の光束及びF8に絞ったときの光束を示す。P4及びP5はそれぞれ開放時のピント位置、F8に絞ったときの位置(設計値)を示す。
【0016】
図1に示すように、この光学システムはカメラ本体1とレンズ鏡筒(鏡筒)3とテレコンバータ(光学装置)6とを備えている。
【0017】
カメラ本体1内には焦点検出装置2と変換装置9とが収容されている。焦点検出装置2は像面位置のずれ量を検出する。変換装置9は焦点検出装置2及び後述するCPU(演算部)10に接続され、CPU10からの入力情報である補正量Y´に基いて、焦点検出装置2で検出された像面位置のずれ量を補正して正確な像面ずれ量に変換する。
【0018】
テレコンバータ6はカメラ本体1とレンズ鏡筒3との間に配置されている。テレコンバータ6にはテレコンバージョンレンズ群7と第1の情報記憶装置8とが収容されている。第1の情報記憶装置8にはテレコンバータ6の倍率情報Mが記憶されている。
【0019】
レンズ鏡筒3にはレンズ群(光学系)4が収容されている。レンズ群4は鏡筒11に保持されている。鏡筒11はマウント部13を介してテレコンバータ6に装着される。レンズ鏡筒3内には絞り部12とCPU(演算部)10と第2の情報記憶装置5とが収容されている。第2の情報記憶装置5には、レンズ群4の設計像面位置に関する情報X、レンズ群4の測定像面位置に関する情報A、レンズ群4とテレコンバータ6とを組み合わせたときの設計像面位置に関する情報Y等が記憶されている。
【0020】
CPU10は第1の情報記憶装置8及び第2の情報記憶装置5に接続されている。CPU10は、レンズ鏡筒3にテレコンバータ6を組み合わせたとき、第1の情報記憶装置8及び第2の情報記憶装置5に記憶された情報を読み込み、テレコンバータ6が取り付けられたときの像面位置の補正量Y´を演算する。補正量Y´は2式によって近似的に求められる。
Y´=Y+(X−A)×M2 2式
【0021】
CPU10は、第1の情報記憶装置8からテレコンバータ6の倍率に関する情報Mを入力し、第2の情報記憶装置5からレンズ群4の設計像面位置に関する情報(図4のF0F8設計値)X、レンズ群4の測定像面位置に関する情報A、レンズ群4とテレコンバータ6とを組み合わせたときの設計像面位置に関する情報Yを入力し、補正量Y´を演算し、変換装置9へ出力する。
【0022】
変換装置9はCPU10からの入力情報である補正量Y´に基いて、焦点検出装置2で検出された像面位置のずれ量を補正して正確な像面ずれ量に変換する。
【0023】
なお、レンズ群4の設計像面位置に関する情報Xは、絞り部12を開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての設計値である。
【0024】
また、レンズ群4の測定像面位置に関する情報Aは、絞り部12を開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての測定値である。
【0025】
更に、レンズ群4とテレコンバータ6とを組み合わせたときの設計像面位置に関する情報Yは、絞り部12を開放からF8まで変化させたときのレンズ群4とテレコンバータ6とを組み合わせた光学系による像面位置が移動する距離についての設計値である。
【0026】
図4はレンズ単体(テレコンを装着していない状態)のとき、1.4倍テレコンを装着したとき、1.7倍テレコンを装着したとき、2.0倍テレコンを装着ときの無限遠(d0)から至近距離(dn)まで変化させたときのF0F8設計値とF0F8補正をしたときの補正値とを示す図、図5はレンズ単体のとき、1.4倍テレコンを装着したとき、1.7倍テレコンを装着したとき、2.0倍テレコンを装着ときの無限遠(d0)から至近距離(dn)まで変化させたときのF0F8設計値とF0F8補正をしないときの値とを比較例として示した図である。
【0027】
図4において、左側の図はF0F8設計値を示し、右側の図はF0F8補正をしたときを示す。また、図5において、左側の図はF0F8設計値を示し、右側の図はF0F8補正をしたとき及び補正をしないときを示す。図4、5において、d0〜dnはそれぞれ被写体までの距離を示す。d0は無限遠であることを示し、dnは至近距離であることを示し、d1、d2・・・はd0とdnとの中間であることを示す。
【0028】
また、1.4、1.7及び2.0はそれぞれテレコンバータ6の倍率(M)を示す。
【0029】
X0〜Xnはテレコンバータ6を装着しないで、絞り部12を開放からF8まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての設計値、Y0〜Ynは1.4倍テレコンバータ6を装着し、絞り部12を開放からF8まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての設計値、Z0〜Znは1.7倍テレコンバータを装着し、絞り部12を開放からF8まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての設計値、W0〜Wnは2.0倍テレコンバータを装着し、絞り部12を開放からF8まで変化させたときのレンズ群4による像面位置が移動する距離についての設計値である。
【0030】
図4、5からわかるように、レンズ単体の場合にはオフセット量B(=X0−A)を加えることによってF0F8補正が行われる。
【0031】
なお、図4中、1.4^2、1.7^2及び2.0^2は、それぞれ1.42 、1.72 、2.02 を示す。
【0032】
上記2式で得られた補正量Y´によってテレコンバータ6を装着した場合の設計値を測定値に近づけることができる。比較例ではテレコンバータ6を装着した場合に補正をしていないので、設計値と測定値とのずれが生じる。
【0033】
この実施形態によれば、テレコンバータ6を装着した場合に設計値を測定値に近づけることができるので、ピントずれを小さくすることができる。また、演算によって補正量を求めるので、レンズ群4とテレコンバージョンレンズ群7との組合せについて全ての補正量を記憶しておく必要がないので、記憶容量の小さい情報記憶装置を用いることができ、製造コストの低減を図ることができる。更に、CPU10をレンズ鏡筒3に設けたので、複数のテレコンバータ6を交換しながら用いる場合にも容易に対応することができる。
【0034】
なお、補正量Y´は、下記の式1を満たす値であれば、上記式2で得られる値に限られるものではない。
(Y+(X−A)×M2)≦ Y´≦(Y+(X−A)×M22 式1
【0035】
また、上述した実施の形態では開放とF8とを用いて絞り量を説明したが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を有する光学システムの構成を説明する図である。
【図2】図2はレンズだけを使用したときに絞り部を開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときの最良像面位置を示す図である。
【図3】図3はレンズにテレコンバージョンレンズを組み合わせたときに、絞り部を開放からF8(所定の絞り量)まで変化させたときの最良像面位置を示す図である。
【図4】図4はレンズ単体のとき、1.4倍テレコンを装着したとき、1.7倍テレコンを装着したとき、2.0倍テレコンを装着ときの無限遠(d0)から至近距離(dn)まで変化させたときのF0F8設計値とF0F8補正をしたときの補正値とを示す図である。
【図5】図5はレンズ単体のとき、1.4倍テレコンを装着したとき、1.7倍テレコンを装着したとき、2.0倍テレコンを装着ときの無限遠(d0)から至近距離(dn)まで変化させたときのF0F8設計値とF0F8補正をしないときの値とを比較例として示した図である。
【符号の説明】
【0037】
3:レンズ鏡筒(鏡筒)、4:レンズ群(光学系)、6:テレコンバータ(光学装置)、10:CPU(演算部)、11:鏡筒、12:絞り部、13:マウント部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を撮像するための光学系と、
前記光学系による像を所定の倍率に変換する光学装置に取付け可能なマウント部を有し、前記光学系を保持する鏡筒と、
前記像の明るさを調節する絞り部と、
前記光学装置の倍率に関する情報を用いて前記絞り部によって絞り込まれた像面に関する情報を演算する演算部と
を備えていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ鏡筒であって、
前記演算部は、前記光学系の設計像面に関する情報と、前記光学系の測定像面に関する情報と、前記光学装置の前記倍率に関する情報と、前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報とを用いて、前記マウント部に前記光学装置が取り付けられたときの像面の補正量を演算することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1又は2記載のレンズ鏡筒であって、
前記光学系の設計像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系による像面が移動する距離についての設計値であり、
前記光学系の測定像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系による像面が移動する距離についての測定値であり、
前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報は、前記絞り部を開放から所定の絞り量まで変化させたとき前記光学系と前記光学装置とを組み合わせた光学系による像面が移動する距離についての設計値であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のレンズ鏡筒であって、
前記光学装置はテレコンバータであることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒であって、
前記光学系の設計像面に関する情報をXとし、前記光学系の測定像面に関する情報をAとし、前記光学装置の前記倍率に関する情報をMとし、前記光学系と前記光学装置とを組み合わせたときの設計像面に関する情報をYとし、前記マウント部に前記光学装置が取付けられたときの像面の補正量をY´としたとき、以下の式1を満たすことを特徴とするレンズ鏡筒。
(Y+(X−A)×M2)≦ Y´≦(Y+(X−A)×M22 式1
【請求項6】
請求項5記載のレンズ鏡筒であって、
前記補正量Y´は以下の式2を満たすことを特徴とするレンズ鏡筒。
Y´=Y+(X−A)×M2 式2
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のレンズ鏡筒を備えていることを特徴とする光学システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−170709(P2008−170709A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3566(P2007−3566)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】