説明

レンズ鏡筒及び撮像装置

【課題】従来の電子カメラのレンズ鏡筒では、レンズユニットの小型化、特に、光軸方向の薄型化が困難であり、小型のレンズ鏡筒において高品位の画質及び動画が得られなかった。
【解決手段】撮影レンズを透過した被写体の光を受光して光電変換するCCD7と、そのCCD7の前面に配置されるローパスフィルタ6と、を備えたレンズ鏡筒に関する。ローパスフィルタ6を撮影レンズの光軸方向へ進退可能としてCCD7に支持するベローズ29を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の前面に光学フィルタを配置したレンズ鏡筒及びそのレンズ鏡筒を用いた撮像装置に関し、特に、撮影時と非撮影時とで、撮像素子に対する光学フィルタの光軸方向における位置を変化させることにより、光学フィルタ上に付着する異物の写り込みを軽減できると共に、レンズ鏡筒の薄型化を実現可能なレンズ鏡筒及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のレンズ鏡筒としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、画像情報を電子的に記録するように構成した電子カメラに関するものが記載されている。この特許文献1に係る電子カメラは、「撮影レンズを透過した被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を備えた電子カメラであって、前記撮像素子のカバーガラスと開口部を有する枠体状のスペーサを挟んで、前記撮影レンズ側に配置された光学部材とにより密閉空間が形成され、前記スペーサは帯電材料により形成されるとともに、その開口部内周面に粘着剤が塗付されている」ことを特徴としている。
【0003】
このような構成を有する特許文献1に記載された電子カメラよれば、「ゴミをスペーサに吸着することで撮影範囲から除去でき、また一度スペーサに吸着したゴミが再び撮影範囲に戻ってしまうことを防止することができる。」(明細書の段落[0036])という効果が期待される。
【特許文献1】特開2003−37756号公報
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された電子カメラにおいては、光学部材であるローパスフィルタと撮像素子が共にカメラ本体に取り付けられていて、撮像素子に対するローパスフィルタの光軸方向の間隔が固定されていた。そのため、ローパスフィルタの表面に異物が付着すると、その異物が被写体の像と一緒に撮像素子の受光面に写し込まれ、異物の写り込みが発生するという問題があった。
【0005】
一般に、レンズ鏡筒は、撮影レンズを通るレンズ系以外の部分(隙間)から光が入り込むのを防止する必要がある一方、焦点合わせやズーム機能その他の機能を実行するために、可動レンズを光軸方向へ移動させる必要がある。そのため、相対的に回動したり摺動したりする鏡筒部分の隙間をできるだけ小さくする配慮がなされているが、その回動や摺動等を確保するためには、ある程度の大きさの隙間が必要となる。その結果、回動部や摺動部等の隙間からレンズ鏡筒内に異物が入り込むことがあり、その異物が撮像素子の前面に配置されているローパスフィルタの表面に付着して、異物の写り込みの原因になっている場合があった。
【0006】
更に、撮像素子とローパスフィルタとの間の光軸方向の間隔が狭くなればなるほど、ローパスフィルタの表面に付着した異物が写り込み易くなる。そのため、ローパスフィルタと撮像素子との間隔は、ある一定の間隔(3mm程度が限界)よりも狭くすることができなかった。そのため、撮像素子とローパスフィルタが共にカメラ本体に固定されている従来例のような場合においては、最小間隔を確保する必要があることから、レンズ鏡筒の光軸方向の長さを短くするのが困難であった。また、絞り機構を小さくすることによってもレンズ鏡筒の小型化は可能であるが、その光学最小絞りを小さくすると、ローパスフィルタの表面に付着した異物が写り込み易くなるため、最小絞りを小さくすることもできなかった。
【0007】
その一方で、近年、レンズユニットの小型化、特に、光軸方向の薄型化が強く望まれている。更に、高品位な静止画ばかりでなく、品質のよい動画も求められており、前述したような小型化を阻害する要因を克服する必要性が強くなってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、従来の電子カメラのレンズ鏡筒では、レンズユニットの小型化、特に、光軸方向の薄型化が困難であり、小型のレンズ鏡筒において高品位の画質及び動画が得られない、という点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレンズ鏡筒は、撮影レンズを透過した被写体の光を受光して光電変換する撮像素子と、その撮像素子の前面に配置される光学フィルタと、を備えたレンズ鏡筒であって、光学フィルタを撮影レンズの光軸方向へ進退可能として撮像素子に支持する進退支持部材を設けたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明の撮像装置は、撮影レンズを透過した被写体の光を受光して光電変換する撮像素子と、その撮像素子の前面に配置される光学フィルタと、を有するレンズ鏡筒を備えた撮像装置であって、レンズ鏡筒には、光学フィルタを撮影レンズの光軸方向へ進退可能として撮像素子に支持する進退支持部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズ鏡筒及び撮像装置によれば、撮像素子の前面に配置される光学フィルタを光軸方向へ進退動作可能に構成し、撮影時には、光学フィルタを撮像素子から大きく離間させて異物の写り込みを軽減させる一方、非撮影時には、光学フィルタを撮像素子にできるだけ近づけられるようにする。これにより、レンズ鏡筒の光軸方向の薄型化と撮像装置全体の小型化を図ることができると共に、高品位の画質が得られ、きれいな動画撮影を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
光学フィルタを撮影レンズの光軸方向へ進退可能として撮像素子に支持する構成とすることにより、レンズ鏡筒の光軸方向の薄型化と撮像装置全体の小型化を図ることができ、高品位の画質及び動画が得られるレンズ鏡筒及び撮像装置を、簡単な構成によって実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図32は、本発明の実施の形態の例を説明するものである。即ち、図1A,Bは本発明のレンズ鏡筒のカム機構の第1の実施の例を示す鏡筒収納状態及び鏡筒繰出し状態の各斜視図、図2は図1のレンズ鏡筒の分解斜視図、図3は鏡筒収納状態の断面図、図4は鏡筒繰出し状態の断面図、図5は固定環の斜視図、図6は固定環の展開図、図7A,B,Cはカム環の斜視図、正面図及びX−X線断面図、図8A,Bはカム環の平面図及び底面図、図9A,Bはカム環の外周面及び内周面の各展開図、図10は直進規制部材の展開図、図11は直進環の展開図である。
【0014】
図12は自動露光装置と間隔規制部材と2群環の斜視図、図13は2群環の展開図、図14は1群レンズと1群環等の斜視図、図15は1群環の展開図、図16〜図22は1群環とカム環の関係を説明するもので、図16A,Bは1群環とカム環の組立状態の斜視図及び断面図、図17A,Bは要部を展開した説明図、図18A,Bは組立状態の正面図及び底面図、図19A,Bは同じく右側面図及び図18BのY−Y線断面図、図20A,Bは底面側の斜視図及び要部拡大図、図21は1群環がカム環の先端側に移動した状態の斜視図、図22A,Bは断面図及び要部説明図である。
【0015】
また、図23は2群環と3群レンズ枠とCCDユニットを正面側から見た斜視図、図24は同じく裏面側から見た斜視図、図25はCCDユニットの分解斜視図、図26は進退支持部材の第1の実施例の一部断面斜視図、図27は進退支持部材の第2の実施例の一部断面斜視図、図28は進退支持部材の第3の実施例の一部断面斜視図である。更に、図29は図1等のレンズ鏡筒を用いたデジタルスチルカメラの第1の実施の例を示すもので、鏡筒収納状態の正面側斜視図、図30は鏡筒繰出し状態の正面側斜視図、図31は同じく背面側斜視図、図32は図29に示すデジタルスチルカメラの概略構成を説明するブロック説明図である。
【0016】
図1〜図4に示すレンズ鏡筒1は、本発明のレンズ鏡筒の第1の実施の例を示すものであり、複数のレンズやフィルタ等の光学素子によって構成される撮影光学系と、その撮影光学系の各構成要素を固定又は移動可能に支持する環体や枠体等のメカニック系と、そのメカニック系を動作させるモータやギア等の動力系等から構成されている。
【0017】
図2〜図4に示すように、レンズ鏡筒1の撮影光学系は、被写体側から順に配置されている複数のレンズの組合せからなる第1レンズ群2と、シャッタ及びアイリスユニットである自動露光装置3と、複数のレンズの組合せからなる第2レンズ群4と、1又は2以上のレンズの組合せからなる第3レンズ群5と、光学フィルタの第1の具体例を示すローパスフィルタ6と、撮像素子(CCD)7等から構成されている。第1レンズ群2と第2レンズ群4によってズーミング機能が発揮され、両レンズ群2,4を光軸方向に所定量移動することにより光学系のズーミング動作を実行することができる。また、第3レンズ群5によってフォーカシング機能が発揮され、第3レンズ群5を光軸方向に所定量移動することにより光学系のフォーカシング動作を実行することができる。
【0018】
レンズ鏡筒1のメカニック系は、被写体側から順に直進部材の第1の具体例を示す1群環10と、第1レンズ群2を保持する1群レンズ枠11と、直進部材の第2の具体例を示す2群環12と、第2レンズ群4を保持する2群レンズ枠13と、直進環14と、回動部材の一具体例を示すカム環15と、デジタルスチルカメラ等のカメラ本体に固定される固定環16と、第3レンズ群5を保持する3群レンズ枠17と、固定環16の後部に固定される後部鏡筒18等から構成されている。そして、後部鏡筒18に、撮像素子(CCD)7を有するCCDユニット20が取り付けられている。
【0019】
また、レンズ鏡筒1の動力系は、カム環15を回動動作させる減速ギアユニット21及び駆動ギア22と、光学系のフォーカシング動作を行うFモータユニット23等から構成されている。減速ギアユニット21及びFモータユニット23は、固定環16と後部鏡筒18の組立体に取り付けられている。そして、駆動ギア22は、固定環16と後部鏡筒18によって回転自在に支持されている。
【0020】
後部鏡筒18は、中央部に略四角形をなす貫通穴25が設けられたリング状をなす後面部18aと、その後面部18aの貫通穴25の周囲を囲うように一面側に突出形成された内側ボス部18bと、後面部18aの外縁に連続して一面側に突出形成された外側ボス部18cとからなり、外側ボス部18cの一部にはFモータユニット23を支持するためのユニット支持部26が設けられている。後部鏡筒18の内側ボス部18bの背面側には、その周縁を凹ませることによって座部18dが設けられており、その座部18dにCCDユニット20が装着されている。
【0021】
後部鏡筒18の前部に固定される固定環16は、図5に示すような構成を有している。固定環16は、レンズ鏡筒1の外装体となる略円筒状をなす筒体からなり、この固定環16の内部に撮影光学系の全てが収納可能とされている。図6の展開図に示すように、固定環16の一方の端面である光軸方向の前面部16aは、その光軸方向と垂直をなす平面部とされているが、他方の端面である光軸方向の後面部16bは、その光軸方向に所定の段差によって凹凸が形成されている。この後面部16bの凹凸は、後部鏡筒18の接合部の凹凸に対応するように設けたものである。更に、固定環16には、駆動ギア22の一部を露出させるための第1の切欠き33と、3群レンズ枠17の一部を露出させるための第2の切欠き34が設けられている。
【0022】
固定環16の第1の切欠き33及び第2の切欠き34は、それぞれ後面部16bに開放されている。この第1の切欠き33に対応して固定環16の外面には、駆動ギア22を回転自在に支持する支持軸35の軸方向の一端を支持する軸受部16cが設けられている。そして、第2の切欠き34に対応して固定環16の外面には、Fモータユニット23の一部を支持する支持部16dが設けられている。また、固定環16の内周面には、同一カム曲線を有する2種類合計3個のカム溝37A,37B,37Cと、光軸方向へ直線状に延在された3種類合計5個の直進案内溝38A,38B,38Cが設けられている。
【0023】
固定環16の2種類合計3個のカム溝37A,37B,37Cは、周方向へ螺旋状に延在された斜面部37aと、その斜面部37aの前面部16a側に連続すると共に光軸方向に対して直交する周方向に延在された前水平部37bと、斜面部37aの後面部16b側に連続すると共に光軸方向に対して直交する周方向であって前記前水平部37bと逆方向に延在された後水平部37cとを有している。3個のカム溝37A〜37Cの各斜面部37aの幅は同一であるが、第1の種類である2個の第1のカム溝37A,37Bの各斜面部37aには、その幅方向を2分するように中央突条39が設けられている。この中央突条39によって斜面部37aには、互いに平行に延在された右通路39aと左通路39bが形成されている。
【0024】
このような構成上の相違点が設けられた2個の第1のカム溝37A,37B及び第2の種類である1個の第2のカム溝37Cの合計3個のカム溝37A〜37Cは、光軸方向と垂直に交差する平面上において周方向へ略等間隔に配置されている。このような構成を有する2種類合計3個のカム溝37A〜37Cには、カム環15に設けた3個の後述するカム従動子がそれぞれ摺動可能に係合される。
【0025】
これに対して、2種類合計5個の直進案内溝38A,38Bは、光軸方向と垂直に交差する平面上において周方向へ適当な間隔を設定して、互いに平行に配置されている。第1の種類である2個の第1の直進案内溝38A,38Aは、直進環14を光軸方向へ案内するものである。この2個の第1の直進案内溝38A,38Aには、直進環14に設けた後述するカム従動子がそれぞれ摺動可能に係合される。2個の第1の直進案内溝38A,38Aは、第1のカム溝37A,37Bのそれぞれ一側(図6において左側)に所定の間隔をあけて配置されている。そして、2個の第1の直進案内溝38A,38Aは、第1及び第2のカム溝37A,37Bの前水平部37bとそれぞれ交差するように設けられている。
【0026】
一方、第2の種類である3個の第2の直進案内溝38B,38B,38Cは、後述する直進規制部材を光軸方向へ案内するものである。この3個の第2の直進案内溝38B,38B,38Cのうち、2個の第2の直進案内溝38B,38Bは、第1のカム溝37Aの斜面部37aとそれぞれ交差するように設けられている。これにより、各斜面部37aには、中央突条39を斜め方向に分割する切り通し部41がそれぞれ設けられている。これに対して、残り1個の第2の直進案内溝38Cは、第1の直進案内溝38Aと同様に、第3のカム溝37Cの前水平部37bと交差するように設けられている。
【0027】
このような構成を有する固定環16が後部鏡筒18の前側に配置され、複数本の固定ねじによって着脱可能に固定されている。この固定環16と後部鏡筒18との鏡筒組立体によって支持軸35が保持されており、その支持軸35に回動自在に支持された駆動ギア22の一部の歯が、その歯幅方向の略全長に渡って第1の切欠き33から鏡筒組立体の外部に露出されている。この駆動ギア22の露出部を覆うように減速ギアユニット21が、固定環16の軸受部16cと後部鏡筒18のフランジ部に対して着脱可能に装着され、複数個の固定ねじで締付固定されている。
【0028】
図2に示すように、減速ギアユニット21は、駆動ギア22に噛合される図示しない出力ギアと、その出力ギアに動力を伝達する1又は2以上の減速ギアと、その減速ギアを介して動力を伝達することにより出力ギアを回転駆動するズームモータ44と、出力ギアその他のギアを回転自在に支持すると共にズームモータ44を固定支持するハウジング45等によって構成されている。このハウジング45を固定ねじで鏡筒組立体に締付固定することにより、減速ギアユニット21が組立・分解可能に取り付けられている。この減速ギアユニット21には、ズームモータ44の回転数を検出してその検出信号を出力するロータリエンコーダ等からなる回転検出器が設けられている。
【0029】
また、後部鏡筒18のユニット支持部26は、Fモータユニット23を抱えるように支持する一対の支持片からなり、一対の支持片は適当な隙間をあけて略平行をなすように前方へ突出されている。このユニット支持部26と固定環16の支持部16dによって保持されるFモータユニット23は、レンズ鏡筒1をフォーカシング動作させるための動力源をなすものである。このFモータユニット23は、フォーカスモータ46と、このフォーカスモータ46を固定支持するモータブラケット47と、フォーカスモータ46の回転軸46aに移動可能に螺合されたキャリッジ48と、このキャリッジ48を回転軸46aの軸方向へ略平行にガイドするガイドバー49等を備えて構成されている。
【0030】
モータブラケット47はコ字状に形成されており、一方の立ち上げ片の外側にフォーカスモータ46が固定されている。フォーカスモータ46の回転軸46aは送りねじ軸からなっており、その回転軸46aが一方の立ち上げ片を貫通し、その先端部が他方の立ち上げ片に回動自在に支持されている。この立ち上げ片間において、回転軸46aにキャリッジ48が軸方向へ移動可能に螺合されている。キャリッジ48には、回転軸46aの軸心線に対してその軸心線を略平行に設定したガイドバー49が摺動可能に貫通されている。ガイドバー49の軸方向の両端部はモータブラケット47に支持されており、このガイドバー49に案内されてキャリッジ48が光軸方向へ進退移動可能に構成されている。
【0031】
このような構成を有するFモータユニット23によって第3レンズ群5が光軸方向へ進退移動可能とされている。第3レンズ群5は、CCD7の前に配置されたローパスフィルタ6の前方に配置され、3群レンズ枠17によって保持されている。図23及び図24に示すように、3群レンズ枠17は、第3レンズ群5を保持するレンズ保持部17aと、そのレンズ保持部17aの一側に連続されたアーム部17bとから構成されている。アーム部17bには、ガイド軸51が摺動可能に挿通される摺動軸受部53aと、Fモータユニット23のキャリッジ48に係合される係合部53bが設けられている。
【0032】
また、3群レンズ枠17のレンズ保持部17aの2群環12側の面には、2群環12に設けた凸部12dに当接される前側凸部56aが設けられている(図23を参照)。そして、レンズ保持部17aのCCDユニット20側の面には、後述するフィルタ押え板31に設けた4つの受圧凸部137に、他の部分が接触する前に最初に当接する4つの後側凸部56b,56bが設けられている(図24を参照)。
【0033】
この3群レンズ枠17には、コイルばねからなる3群ばね52の一端が係止されている。3群ばね52の他端は固定環16に係止されており、この3群ばね52のばね力によって3群レンズ枠17の係合部17dが、常にキャリッジ48に適当な付勢力で押し当てられている。かくして、Fモータユニット23のフォーカスモータ46を回転駆動することにより、その回転方向に応じて3群ばね52のばね力に抗して、キャリッジ48がガイドバー49に案内されて光軸方向へ進退移動する。その結果、Fモータユニット23の回転量に応じて、第3レンズ群5が光軸方向に所定量移動することにより、所定のズーミング動作が実行される。
【0034】
固定環16の内側にカム環15が配置されている。カム環15は、図7〜図9に示すような構成を有している。カム環15は、固定環16の内径よりも外径がやや小さい筒状の胴体部15aと、その胴体部15aの一方の端面側に連続するフランジ部15bとからなり、フランジ部15bは半径方向外側に展開されている。フランジ部15bは、周方向の略1/2に亘る部分を占める円弧状の第1のフランジ部54aと、その第1のフランジ部54aと対向するよう反対側に配置された円弧状の第2のフランジ部54bとからなる。第2のフランジ部54bは、周方向の略1/6に亘る部分を占める領域として形成されており、その周方向の両側であって第1のフランジ部54aとの間には、第2のフランジ部54bと同程度の大きさを有する第1の切欠き部55aと第2の切欠き部55bが設けられている。
【0035】
図8A,Bに示すように、カム環15のフランジ部15bには、カム従動子の第1の実施例を示す3個のカム突部57A,57B,57Cが設けられている。3個のカム突部57A,57B,57Cは周方向に略等間隔に配置されていて、第1のカム突部57Aは第1のフランジ部54aの一側に設けられ、第2のカム突部57Bは第1のフランジ部54aの他側に設けられていて、第3のカム突部57Cは第2のフランジ部54bに設けられている。3個のカム突部57A〜57Cのうち、第1及び第2のカム突部57A,57Bの先端には、斜め方向に延びる係合溝58がそれぞれ設けられている。
【0036】
この3個のカム突部57A〜57Cは、固定環16の内周面に設けた3個のカム溝37A,37B,37Cに摺動可能に係合される。3個のカム突部57A〜57Cは、3個のカム溝37A,37B,37Cと対応するように形成されており、第1及び第2のカム突部57A,57Bに設けた各係合溝58に、第1及び第2のカム溝37A,37Bに設けた中央突条39がそれぞれ摺動可能に係合されるようになっている。このように、カム溝37A〜37Cの幅広な斜面部37aに中央突条39を設けて左右の通路39a,39bを形成したことにより、これと交差する方向に延在された第2の直進案内溝38Bに沿って移動する後述する直進規制部材の従動子が、その第2の直進案内溝38Bから外れることなく、スムースに直進移動できるようにしている。
【0037】
3個のカム突部57A〜57Cは、胴体部15aの軸心線と垂直に交差する同一平面上に設定されているが、図7A,Bに示すように、第3のカム突部57Cだけは他のカム突部57A,57Bよりも薄く形成されている。この第3のカム突部57Cを囲うようにフランジ部15bの第1のフランジ部54aには、平歯からなるギア部60が設けられている。ギア部60は、第1のカム突部57Aの周方向の一側に連続すると共に同じ歯幅を有する第1のギア部60aと、第3のカム突部57Cの軸心線方向の外側に第1のギア部60aと同程度の歯幅で形成された第2のギア部60bと、第1のギア部60aと第2のギア部60bの間を結ぶと共に両者を合わせた歯幅を有する第3のギア部60cとからなっている。
【0038】
このギア部60には、常に駆動ギア22がいずれかのギア部60a〜60cにおいて噛合されている。これにより、減速ギアユニット21の作動によって駆動ギア22が回転駆動されると、その回転方向に応じてカム環15が左回転又は右回転される。このギア部60の周方向の長さは、カム環15が所定角度回転するために必要な歯数を備えている。そのため、駆動ギア22によってカム環15が回転すると、そのカム環15は同時に軸心線方向にも移動することになるが、カム環15の軸心線方向の移動量(ストローク)よりも駆動ギア22の歯幅の方が十分に長く設定されているため、駆動ギア22とギア部60とが常に噛合した状態において所定範囲の回動動作が実行される。
【0039】
更に、カム環15のフランジ部15bの第1のフランジ部54aには、カム環15の回転位置を検出するためのフィン61が設けられている。フィン61は、第1のフランジ部54aの第3のカム突部57C側の端部に連続して、円周方向へ所定の長さで形成されている。このフィン61を検出するため、図示しないが、後部鏡筒18にはフォトセンサが設けられている。そのフォトセンサがフィン61の移動によって切り替わることにより、カム環15の回転位置を検出することができる。この回転位置検出手段により得られる回転位置情報と、前述した減速ギアユニット21に設けたロータリエンコーダにより得られる検出情報とに基づき、これらの情報を後述する制御装置で処理することにより、カム環15の回転速度及びその回転位置の制御を行うことができる。
【0040】
更に又、カム環15のフランジ部15bの第1のフランジ部54aには、これを歯幅方向に貫通する貫通穴62が設けられている。貫通穴62は、第2のフランジ部54bと対向する反対側の位置において胴体部15aの外周面若しくはギア部60の歯と同心をなすよう円弧状に形成されている。この貫通穴62に臨む胴体部15aの端部形状は、後述するように第1及び第2の切欠き部55a,55bの形状と同様に形成されている。
【0041】
カム環15の胴体部15aの外周には、同一のカム曲線(軌跡)を有する3個の外カム溝65が設けられている。3個の外カム溝65は、レンズ鏡筒1に光学ズーミング動作と鏡筒収納動作を与えるもので、周方向に略等間隔に配置されている。図7A,B及び図9Aに示すように、3個の外カム溝56は、鏡筒収納動作を付与する鏡筒収納動作領域66と、その鏡筒収納動作領域66に連続するズーミング動作領域67とから構成されている。外カム溝65の鏡筒収納動作領域66は、胴体部15aの外周面において略45度の傾斜角度を持って斜め方向へ螺旋状に延在されている。この鏡筒収納動作領域66の一端は胴体部15aのフランジ部15b側の端部に開口され、他端にはズーミング動作領域67の一端が連続されている。
【0042】
外カム溝65のズーミング動作領域67は、所定の曲線によって円弧状に形成された溝からなるズーム溝部67aと、このズーム溝部67aの一端と鏡筒収納動作領域66とを緩やかに連通する溝からなる連通部67bと、ズーム溝部67aの他端を閉鎖するか又は胴体部15aのフランジ部15b側と反対側(反フランジ側)の端部に開放する溝からなる閉鎖部67c又は開放部67dを有している。ズーミング動作領域67のズーム溝部67aは、胴体部15aの反フランジ側において、フランジ部15b側に凸となるように形成されている。ズーミング動作領域67の連通部67bは、複数の直線部を緩やかに連続させた溝からなっている。また、閉鎖部67c及び開放部67dは、周方向に連続された溝からなっている。
【0043】
これら連通部67b及び閉鎖部67c若しくは開放部67dを形成するために、胴体部15aの反フランジ側には3種類の突出部68a,68b,68cが設けられている。連通部67bに対応させて設けた3個の第1の突出部68aは、両側に傾斜面を有する台形部分からなる。また、閉鎖部67cに対応させて設けた1個の第2の突出部68b及び開放部67dに対応させて設けた2個の第3の突出部68c,68cは、一側にのみ傾斜面を有する台形部分からなっている。その一方、2個の第3の突出部68c,68cは、図9Aにおいて二点鎖線で示すように、その垂直面をカム溝の中途部に設定することによってカム溝を胴体部15aの端面側に開放させている。
【0044】
外カム溝65の鏡筒収納動作領域66のフランジ部15b側の開口端は、1群環10の後述するカム従動子が出入りされる溝開口部71を形成している。そのカム溝開口部71を形成する一方のカム溝側面の外側には、1群環10のカム従動子を押圧してカム環15の回転力を1群環10に伝達する押圧部72が設けられている。更に、カム溝開口部71の押圧部72と反対側には、カム従動子を外カム溝65から外れた位置に保持する保持部73が設けられている。
【0045】
図7A,C及び図9Bに示すように、カム環15の胴体部15aの内周には、同一のカム曲線(軌跡)を有する3組の内カム溝群74が周方向へ等間隔に配置されて設けられている。3組の内カム溝群74は、同一のカム曲線(軌跡)を有する前内周カム溝75と後内周カム溝76との組み合せからなっている。前内周カム溝75と後内周カム溝76は、光軸方向である胴体部15aの軸心線方向に所定の間隔をあけていると共に、周方向にも少し偏倚して設定されており、互いに少し捩れた状態で設けられている。
【0046】
前内周カム溝75及び後内周カム溝76の基本的なカム曲線は、外カム溝65の鏡筒収納動作領域66と同様の方向に傾斜された第1の斜面部77aと、その第1の斜面部77aと反対側に傾斜された第2の斜面部77bと、第1の斜面部77aの一端と第2の斜面部77bの一端を周方向に連続する水平部77cと、第1の斜面部77aの他端に連続された開放部77dと、第2の斜面部77bの他端に連続された循環部77eをそれぞれ有している。第1の斜面部77aは、略45度の角度で傾斜されているが、その中途部は少し後側に湾曲されている。また、第2の斜面部77bと循環部77eは、前側に湾曲された連結部によって連結されており、循環部77e内で周方向に移動して第2の斜面部77bに戻る構成となっている。
【0047】
このような基本的カム曲線を有する前内周カム溝75及び後内周カム溝76であるが、前内周カム溝75は、第1の斜面部77aの大部分と水平部77cと第2の斜面部77bと循環部77dとを備えて構成されている。一方、後内周カム溝76は、第1の斜面部77aの一部と開放部77dとのみから構成されている。即ち、前内周カム溝75の第1の斜面部77aは、第1の内カム溝群74においては突出部68bの端面に開口され、第2及び第3の内カム溝群74においては突出部68c,68cの側面に開口されている。前内周カム溝75の水平部77cは、その一部が胴体部15aのフランジ側の端面に開口されている。
【0048】
また、後内周カム溝76は、開放部77dと、第1の斜面部77aの開放部77d側の部分のみが設けられている。即ち、開放部77dの一端は胴体部15aの反フランジ側の端面に開口され、第1の斜面部77aの一端は胴体部15aのフランジ側の端面に開口されている。そして、前内周カム溝75及び後内周カム溝76の各開口部には、従動子カムの出入りを容易にするために末広がりとした導入部78がそれぞれ設けられている。
【0049】
このような構成を有するカム環15のフランジ部15bには、回転方向には回転可能であるが光軸方向には移動できないように規制された直進規制部材80が嵌合されている。直進規制部材80は、図2及び図10に示すように、胴体部15aの外径及び内径と略同程度の外径及び内径を有するリング状をなすリング部80aと、そのリング部80aの内周に連続する2個の直進ガイド片80b,80bと、リング部80aの外周に連続する2個の凸部片80c,80cとを有している。この直進規制部材80のリング部80aの外周には、後述する1群環10のカム従動子との接触を避けるための3個の切欠き81が周方向へ等間隔に設けられている。
【0050】
直進規制部材80の2個の直進ガイド片80b,80bは、180度回転変位した位置に対向するように配置されていると共に、リング部80aの面方向と垂直をなす方向に突出形成されている。この2個の直進ガイド片80b,80bは、2群環12の後述する2個の直進案内溝に摺動可能に係合される。また、2個の凸部片80c,80cは、周方向へ所定の間隔をあけて半径方向外側へ突出するように形成されている。この2個の凸部片80c,80cは、固定環16の前述した2つの第1の直進案内溝38A,38Aに摺動可能に係合される。この直進規制部材80のリング部80aを回動可能に収容するため、カム環15のフランジ部15bの内周には、図7C及び図8Bに示すように、リング状の座部15cが設けられている。
【0051】
カム環15の内周には、直進規制部材80によって回転動作が規制され、光軸方向へのみ移動可能とされた2群環12が装着されている。図12及び図13に示すように、2群環12は、筒状をなす筒体部12aと、その筒体部12aの軸方向中途部において半径方向内側へ展開された内フランジ部をなす2群レンズ枠12bとを備えている。2群環12の2群レンズ枠12bの内周にはボス部12cが設けられており、そのボス部12cには、複数枚のレンズの組み合せからなる第2レンズ群4が取り付けられている。
【0052】
2群環12の筒体部12aの外周には、直進規制部材80の2個の直進ガイド片80b,80bが摺動可能に係合される2個の直進案内溝83,83が設けられている。2個の直進案内溝83,83は、180度回転変位した位置に配置されていると共に、光軸方向と平行をなすよう直線状に形成されている。更に、筒体部12aの外周には、カム環15の内周に設けた3組の内カム溝群74に摺動可能に係合される3組のカムピン群84が設けられている。3組のカムピン群84は、光軸方向には同一高さであって周方向には等間隔に配置されている。
【0053】
各カムピン群84は、光軸方向の前後に配置された前カムピン85と後カムピン86とからなっている。前カムピン85と後カムピン86は、周方向にも少々偏倚させて設けられている。カムピン群84の前カムピン85は内カム溝群74の前内周カム溝75に係合され、後カムピン86は後内周カム溝76に係合されている。このとき、2群環12の外周に設けた2個の直進案内溝83,83には直進規制部材80の2個の直進ガイド片80b,80bが係合されている一方、その直進規制部材80の2個の凸部片80c,80cが固定環16の2つの第1の直進案内溝38A,38Aに摺動可能に係合されている。そのため、カム環15を回転させると、2群環12は、固定環16に対して回転することなく、前内周カム溝75と後内周カム溝76とで設定された内カム溝群74のカム曲線に沿って光軸方向へのみ進退移動することになる。
【0054】
この2群環12とカム環15のカム機構による動作は、次のようなものである。2群環12がカム環15に完全に収納された状態が、撮像装置の非撮影状態である。このとき、前カムピン85は前内周カム溝75の循環部77eに位置している一方、後カムピン86は胴体部15aから後方に突出して後内周カム溝76には係合されていない。この非撮影状態から、カム環15を繰出し方向へ回転させると、前内周カム溝75と前カムピン85との係合により、前カムピン85が循環部77eから第2の斜面部77bに移動する。その結果、2群環12は、回転することなく光軸方向に進退移動する。
【0055】
更にカム環15を繰出し方向に回転させると、前カムピン85が第2の斜面部77bを移動して水平部77cに到達する。これにより、前カムピン85と前内周カム溝75とのカム係合が外れるが、2群環12の一端が直進規制部材80に当接されるため、前カムピン85が前内周カム溝75から完全に脱落することがない。続けて、カム環15を繰出し方向に回転させると、前カムピン85が第1の斜面部77a内に入り込み、再び前カムピン85が前内周カム溝75にカム係合される。更に、カム環15を回転させると、後カムピン86が後内周カム溝76に近づき、その後カムピン86が後内周カム溝76にカム係合される。これにより、前後のカムピン85,86が前後の内周カム溝75,76にカム係合された状態となる。
【0056】
カム環15を更に繰出し方向に回転させることにより、2群環12が大きく前進して前カムピン85が第1の斜面部77aを通過すると、前カムピン85と前内周カム溝75とのカム係合が外れることになる。しかしながら、この場合には、後カムピン86が後内周カム溝76にカム係合されており、これにより更なるカム係合が確保されている。そのため、後カムピン86と後内周カム溝76のみのカム係合により、2群環12を更に大きく前進移動させることができる。この際、前内周カム溝75の前端及び後端並びに後内周カム溝76の後端の各開放部には、末広がりになっている導入部78を設けているため、前カムピン85と後カムピン86のカム係合が切り替わる際の切替動作をスムースに行うことができる。なお、撮影状態から非撮影状態に変化する場合の動きは、前述した動作と逆になる。
【0057】
2群環12の前部には自動露光装置3が、回転方向への移動を規制しつつ光軸方向へ所定の距離だけ移動可能に取り付けられている。自動露光装置3は、光が通過する光路を開閉するシャッタの機能と、光路の直径を大小変化させる可変絞りの機能と、光路にフィルタを出し入れするフィルタ機能を備えた光学装置である。この自動露光装置3は、図12に示すように、リング状をなす中空のホルダ88を備えており、中央の穴を囲うように、その穴の三方にシャッタ羽根と絞り羽根とフィルタ羽根とが配置されている。ホルダ88の外面には、3個のガイド突起89が周方向へ等間隔に配置されて設けられている。
【0058】
自動露光装置3の3個のガイド突起89に対応する3個の突起受部91が2群環12に設けられている。これらの突起受部91にガイド突起89をそれぞれ係合することにより、突起受部91内の隙間分だけ自動露光装置3が、光軸方向へ進退移動可能とされている。更に、自動露光装置3と2群環12の間には、互いを離間させる方向に付勢する弾性部材の一具体例を示す複数の圧縮コイルばね92が介在されている。この複数の圧縮コイルばね92が最も伸びて自動露光装置3が2群環12から最も離間された位置が撮影状態の位置であり、これとは逆に、複数の圧縮コイルばね92が最も縮められて自動露光装置3が2群環12に最も近づいた位置が非撮影状態の位置である。
【0059】
非撮影状態では、自動露光装置3のホルダ88の中央穴88a内に2群環12のボス部12cが入り込んでくる。そのため、中央穴88aの直径は、ボス部12cの直径よりも大きく設定されている。更に、ボス部12cの先端面は、中央穴88aを貫通してホルダ88の前面と略同一面となるように構成されている。そのため、非撮影状態においては、自動露光装置3のシャッタ機能、可変絞り機能及びフィルタ機能の各羽根は、中央穴88aから外側に退避している必要がある。かかる機能を確保するため、自動露光装置3と2群環12の間には間隔規制部材94が介在されている。
【0060】
間隔規制部材94は、図12に示すような構成を有している。間隔規制部材94は、2群環12のボス部12cに回動可能に嵌合されるリング部94aと、そのリング部94aの外周から半径方向外側に突出するように形成されたレバー部94bとを有している。レバー部94bの先端には、リング部94aの面方向と垂直をなす方向に延在されたカム突起94cが設けられている。このカム突起94cは、間隔規制部材94を2群環12に組み立てた状態では、2群レンズ枠12bに設けた穴を貫通して自動露光装置3と反対側に突出されている。そして、間隔規制部材94は、弾性部材の一具体例を示す捩りばね95によって所定の回転方向へ常時付勢されている。
【0061】
更に、間隔規制部材94のリング部94aには、自動露光装置3と2群環12が所定以上に近づくのを防止するストッパ部94dが3箇所に設けられている。3個のストッパ部94dは、リング部94aのカム突起94cが突出する側と反対側の面において周方向に略等間隔に配置されている。このレンズ鏡筒1が非撮影状態の手前にあるとき、間隔規制部材94のカム突起94cは、後部鏡筒18の後面部18aに設けた前方に突出するカム突起18eに当接されている。この状態から、レンズ鏡筒1を更に非撮影状態の方向に移動すると、カム突起94cのカム面とカム突起18eのカム面に従って、間隔規制部材94が所定量回動される。
【0062】
その結果、間隔規制部材94が所定量を回転することにより、3個のストッパ部94dが光軸方向の後方に退避する。これにより、自動露光装置3が2群環12に近づく方向へ移動可能となるため、2群環12に自動露光装置3を収納して光軸方向の長さを短くすることが可能となる。これに対して、撮影状態では、間隔規制部材94の3個のストッパ部94dが自動露光装置3と2群環12との間に介在することになる。そのため、ストッパ部94dによって自動露光装置3と2群環12との間隔を規制して、その間隔が必要以上に狭くなるのを防ぐことができる。
【0063】
このような構成とすることにより、撮影状態において不用意な外力や衝撃がレンズ鏡筒1に加えられることがある場合にも、自動露光装置3と2群環12との間隔が所定以上に狭まることがない。そのため、自動露光装置3が2群環12に押圧されるのを防ぐことができ、これにより、自動露光装置3のシャッタ機構や可変絞り機構等を保護することができる。しかも、2群環12から自動露光装置3までの厚みを、撮影状態のときよりも非撮影状態のときの方を薄く構成することができる。
【0064】
図2及び図3等に示すように、カム環15の胴体部15aの外周には、1群環10が相対的に回動可能に取り付けられている。1群環10は、図14及び図15等に示すように、胴体部15aが内側に挿入される筒体部10aと、その筒体部10aの軸方向の一端に連続して半径方向外側に展開された外フランジ部10bと、筒体部10aの軸方向の他端である前側に連続すると共に半径方向内側に展開された内フランジ部10cとを有している。更に、1群環10の筒体部10aには、光軸方向の後方に突出する3つのブラケット10dが周方向へ等間隔に設けられている。
【0065】
3つのブラケット10dには、半径方向外側に突出するガイド凸部97と、半径方向内側に突出するカム従動子の一具体例を示すカムピン98がそれぞれ設けられている。ガイド凸部97とカムピン98は、同じ位置に重なり合うように配置されているが、ガイド凸部97がブラケット10dの一部を肉盛りするよう一体的に形成されている一方、カムピン98は、別部材を圧入することによって一体的に設けられている。即ち、ガイド凸部97は、光軸方向に延在されたブロック状の部分からなり、3個のガイド凸部97は、直進環14の後述する直進案内溝に摺動可能に係合される。
【0066】
3個のカムピン98は、カム環15の胴体部15aの外周に設けた3個の外カム溝65にそれぞれ摺動可能に係合されるカム従動子である。カムピン98は、外カム溝65に摺動接触されるピン頭部98aと、ブラケット10dの取付孔に圧入される固定部98bと、固定部98bとピン頭部98aとの間に設けられたフランジ部98cとを有している。フランジ部98cは、固定部98bの圧入深さを制限してピン頭部65aの突出量を所定値に保持する役割を有する。このカムピン98等が設けられたブラケット10dの一側面には、カム環15の押圧部72が当接される操作面99が設けられている。操作面99は、押圧部72の傾斜面に対応した傾斜角度に設定されており、例えば、略45度である。
【0067】
この1群環10が直進環14の内周に、回転方向の移動を規制して光軸方向へのみ移動可能に装着されている。図2及び図11に示すように、直進環14は、1群環10が挿入される筒体部14aと、その筒体部14aの光軸方向の一端に設けられると共に半径方向外側に展開された外フランジ部14bとを有している。外フランジ部14bには、固定環16の内周に設けた3個の直進案内溝38B,38B,38Cにそれぞれ摺動可能に係合される3個の突起部14cが設けられている。3個の突起部14cは、3個の直進案内溝38B,38B,38Cと対応する位置に配置されている。
【0068】
直進環14の筒体部14aの内周には、1群環10の外周に設けた3個のガイド凸部97が摺動可能に係合される3個の直進案内溝101が設けられている。3個の直進案内溝101は、周方向へ略等間隔に配置されていると共に、互いに平行をなして光軸方向へ直線状に延在されている。それぞれの直進案内溝101は、外フランジ部14b側の端部は筒体部14aの端面に開口されている一方、その反対側の端部は光軸方向の中途部で途切れている。これにより、直進環14に対して1群環10は、外フランジ部14b側では出入り可能であるが、反外フランジ部14b側の先端側では行き止まりとされていて、先端側から1群環10が脱落しないように構成されている。
【0069】
直進環14の外周には、主にレンズ鏡筒1の体裁を整えるための直進環14用の外化粧環102が装着されて一体的に構成されている。この外化粧環102を装着した状態で、直進環14が固定環16の内周に装着されている。そして、固定環16の内周に装着された直進環14の内周にカム環15が装着されている。
【0070】
即ち、カム環15の外周に設けた3個の外カム溝74に、1群環10の内周に設けた3個のカムピン98がそれぞれ摺動可能に係合されている。そして、1群環10の外周に設けた3個のガイド凸部97が、直進環14の内周に設けた3個の直進案内溝101にそれぞれ摺動可能に係合されている。更に、直進環14の外周に突出した3個の突起部14cが、固定環16の内周に設けた3個の直進案内溝38B,38B,38Cにそれぞれ摺動可能に係合されている。これと同時に、カム環15のフランジ部15bに設けた3個のカム突部57A〜57Cが、固定環16の内周に設けた3個のカム溝37A,37B,37Cにそれぞれ摺動可能に係合されている。更に、カム環15に保持された直進規制部材80の2個の凸部片80cが、固定環16の内周に設けた2個の直進案内溝38A,38Aにそれぞれ摺動可能に係合されている。
【0071】
かくして、直進環14と直進規制部材80は、直進環14の3個の突起部14cが固定環16の3個のカム溝37A,37B,37Cに係合されていると共に直進規制部材80の2個の凸部片80cが固定環16の2個の直進案内溝38A,38Aに係合されているため、固定環16に対して相対的に回転することなく、カム環15が光軸方向へ移動する距離だけ一体となって光軸方向へ移動する。また、1群環10の3個のガイド凸部97が直進環14の3個の直進案内溝101に係合されているため、1群環10は、カム環15の回転量に応じて、回転することなく光軸方向へ進退移動する。なお、1群環10と2群環12は、弾性部材の一具体例を示す複数本のコイルばね103によって光軸方向へ互いに引き合うように付勢されている。
【0072】
この1群環10とカム環15のカム機構による動作は、次のようなものである。図18A,B、図19A,B及び図20A,Bに示すように、1群環10がカム環15に完全に収納された状態が、撮像装置の非撮影状態である。このとき、カム環15の外カム溝65の後端側は開放されており、カメラの非撮影状態においてカムピン98は、その開放されたカム溝開口部71の保持部73に位置しており、外カム溝65との係合は外れている。この状態から、カム環15を繰出し方向へ回転させると、カム環15の押圧部72が1群環10のブラケット10dの操作面99に突き当たり、その傾斜された操作面99によって1群環10が押し上げられる。このカム環15の押上力により、1群環10は、固定環16に対して回転することなく光軸方向へ移動する。
【0073】
更に、カム環15を繰出し方向にあるところまで回転すると、カムピン98が外カム溝65に係合される状態となり、更に回転すると、カム環15の押圧部72と1群環10の操作面99との突き当て状態が解除される。その後は、カム環15の回転量に応じて、外カム溝65のカム曲線(軌跡)に沿って、固定環16に対して回転することなく光軸方向へ進退移動することになる。この際、外カム溝65の開放端は末広がりの形状となっているため、カムピン98を外カム溝65に確実且つ容易に係合させることが可能である。なお、撮影状態から非撮影状態に変化する場合の動きは、前述した動作と逆になる。
【0074】
図2及び図14に示すように、1群環10の内周に設けた内フランジ部10cには、光軸方向に高さを違えた階段状の固定部105が複数箇所に設けられている。この内フランジ部10cに設けた複数の固定部105を用いることによって1群レンズ枠11が1群環10に保持されて固定されている。1群レンズ枠11は、内フランジ部10cに嵌合されるリング状の部材からなり、その内周に複数のレンズの組み合せからなる第1レンズ群2が保持されている。1群レンズ枠11の外周には、1群レンズ枠11を1群環10に固定するための複数組(本実施例では3組)の挟持突起106が周方向へ略等間隔に設けられている。
【0075】
それぞれの挟持突起106は、光軸方向の前後に所定の隙間をあけて設けた前突起106aと後突起106bとの組み合せからなり、前突起106aと後突起106bは周方向に少々偏倚して配置されている。このような構成を有する複数組の挟持突起106で内フランジ部10cの固定部105を前後から挟み込むことにより、1群レンズ枠11が1群環10に固定されている。この固定状態において、1群レンズ枠11を周方向へ回転させると、その回転量に応じて階段の段差分だけ1群レンズ枠11が光軸方向へ進退移動することになる。図14等に示す符号108は、第1レンズ群2の周囲を覆う化粧リングである。
【0076】
図2〜図4に示すように、1群環10の前端には、非撮影時に撮影開口である光路を閉じて撮影光学系を保護するレンズバリアユニット110が設けられている。レンズバリアユニット110は、リング状をなすバリア本体110aと、そのバリア本体110aに回動可能に支持された一対の開閉羽根110bと、その開閉羽根110bを開閉動作させる羽根開閉機構110c等を備えて構成されている。バリア本体110aには、複数の係合爪110dが周方向へ略等間隔に設けられている。それらの係合爪110dを筒体部10aの内周に係合させることにより、レンズバリアユニット110が1群環10に固定されている。
【0077】
レンズバリアユニット110の羽根開閉機構110cには、図示しないが、開閉羽根110bを回転動作させる駆動アームが設けられている。その駆動アームは、光軸方向への相対移動によって回転動作される構成となっている。そこで、光軸方向への相対移動によって駆動アームを回転動作させることにより、開閉羽根110bを開閉動作させて、レンズバリアユニット110の光路を開閉できるようになっている。
【0078】
また、図2〜図4に示すように、1群環10には、レンズ鏡筒1の体裁を整えるための内化粧環112が装着されている。この内化粧環112は、直進環14用の外化粧環102と同様の役目を有するもので、1群環10に装着されて一体的に固定されている。これら内化粧環112及び外化粧環102の材質としては、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属が好適であるが、エンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論である。また、1群環10、1群レンズ枠11、2群環12、直進環14、カム環15、固定環16,3群レンズ枠17及び後部鏡筒18の材質としては、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)が好適であるが、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)その他のエンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論のこと、アルミニウム合金その他の金属を用いることもできる。
【0079】
図3及び図4に示すように、自動露光装置3にはフレキシブル配線板115が電気的に接続されている。フレキシブル配線板115の一端は、自動露光装置3のシャッタ機構や可変絞り機構等を駆動するアクチュエータの配線回路と接続されていて、その他端は、レンズ鏡筒1の外部に設置される電力源と電気的に接続されている。このフレキシブル配線板115の一端は、自動露光装置3と2群環12の間隔が変化しても自らの反力によって悪影響が生じないように適切な弛みをもって2群環12内に這いまわされている。
【0080】
図2及び図23〜図25に示すように、CCDユニット20は、撮像素子の一具体例を示す前記CCD(電荷結合素子)7と、このCCD7が固定されるCCDアダプタ27と、CCD7の受光面の前面に配置されるローパスフィルタ6と、このローパスフィルタ6をレンズ系の光軸方向へ進退移動可能に弾性支持するベローズ29と、被写体からの光がローパスフィルタ6を透過する領域を仕切るフィルタマスク30と、CCD7から離れる方向へのローパスフィルタ6の移動量を制限するフィルタ押え板31等を備えて構成されている。
【0081】
CCD7は、略矩形をなす薄いブロック状のCCD本体7aと、このCCD本体7aの一方の平面に設けられた受光部7bとを有し、受光部7bの周囲には段付き形状とされた縁取り部7cが設けられている。このCCD7は、第1のレンズ群2から第3のレンズ群5までの組み合わせからなるレンズ系の後端に配置されており、その受光部7bの略中央部にレンズ系の光軸が設定されている。このCCD7の受光部7bに被写体からの光が入力されることにより、その光が光電変換されて電気信号としてCCD7から出力される。
【0082】
CCDアダプタ27は、CCD7の受光面7aを露出させる開口部131を有する枠状の部材からなる。即ち、CCDアダプタ27は、開口部131を設けた枠状のアダプタ本体27aと、このアダプタ本体27aの外縁の複数箇所(本実施例では2箇所)に設けたフランジ状の固定部27b,27bとを有している。2つの固定部27b,27bは、アダプタ本体27aの対向する2辺の対角線方向に配置されている。そして、各固定部27bには、図示しない取付ねじのねじ軸部が挿通される挿通孔132aと、後部鏡筒18の所定位置に位置決めするための位置決め穴132bが設けられている。
【0083】
更に、アダプタ本体27aの固定部27bを設けた各辺の当該固定部27bと反対側には、フィルタ押え板31によって摺動可能に保持される摺動接触部27cがそれぞれ設けられている。それぞれの摺動接触部27cの、開口部131が貫通する方向(アダプタ本体27aの厚さ方向)に展開された平面は平滑面とされていて、その略中央部には、フィルタ押え板31がCCD7から所定距離以上に離間するのを防止する規制爪133がそれぞれ設けられている。各規制爪133は、アダプタ本体27aの平面に対して、CCD7の面を平行面とする一方、その反対側の面を傾斜面として形成されており、フィルタ押え板31の後述する規制片が外れ難くなるようにしている。このアダプタ本体27aの材質としては、適当な強度及び剛性を有するエンジニアリングプラスチックが好適であるが、アルミニウム合金その他の金属を用いることもできる。
【0084】
ベローズ29は、ローパスフィルタ6をCCD7に対して近接及び離反可能に弾性支持する進退支持部材である弾性封止体の第1の具体例を示すものである。このベローズ29は、柔軟性と密封性を有する蛇腹形の伸縮自在な筒状体からなり、例えば、シリコンゴムによって形成されている。ベローズ29の伸縮方向と直交する方向の断面形状は、CCD7の受光部7bの形状に対応させて略四角形とされており、レンズ系を透過して受光部7bに照射される光と干渉しない大きさに設定されている。また、ベローズ29の伸縮方向の断面形状は、サインカーブを連続したような形状とされており、図3及び図4に示すように、所定の間隔内で容易に進退動作が行えるように構成している。ベローズ29の材質としては、シリコンゴムに限定されるものではなく、例えば、ふっ素ゴム、アクリルゴムその他のゴムを適用することができることは勿論である。
【0085】
このような進退動作を確保するためベローズ29の周面(側面)には、微細な異物は通過させないが、空気は通過させる微細な通気孔を多数設けるようにする。このような通気孔を設けることにより、内部の密封性を確保しつつ進退動作を可能とすることができる。この通気孔に代えて、比較的大きな穴を開け、その穴を、微細な異物は通過させないが空気は通過させる繊維、布地、フィルタ等で塞ぐ構成としてもよい。このベローズ29の伸縮方向一端の端面部29aを、CCD7の受光部7bの外縁、或いは縁取り部7cに密着させ、接着材等の固着手段を用いて液密に固定する。そして、ベローズ29の伸縮方向他端の端面部29bにローパスフィルタ6の外縁を密着させ、接着材等の固着手段を用いて液密に固定する。
【0086】
ローパスフィルタ6は、光学フィルタの第1の具体例を示すものであり、ベローズ29の一方の端面部29bを完全に塞ぐことができる大きさを有している。このローパスフィルタ6のベローズ29と反対側の面の外縁には、フィルタマスク30が接着材等の固着手段によって一体的に設けられている。フィルタマスク30は、ローパスフィルタ6を透過する光の範囲を制限するもので、長方形の枠状に形成されており、ローパスフィルタ6の周囲を連続して覆うようになっている。このフィルタマスク30の外側にフィルタ押え板31が配置されている。
【0087】
フィルタ押え板31は、被写体からの光を通過させる開口窓135を設けた押え板本体31aと、この押え板本体31aの対向する2辺から外側へ突出するように形成された2つの規制片31b,31bと、押え板本体31aの対向する残り2辺から外側へ突出するように形成された2つの折り返し部31c,31cを有している。2つの規制片31b,31bは、その中途部から90度折り曲げられていて、先端部が一面側へそれぞれ突出するように形成されている。2つの規制片31b,31bは、CCDアダプタ27の2つの摺動接触部27c,27cと対応する位置に設定されていると共に、その間隔も略同一に設定されており、組立時には、互いに接触するようになされている。
【0088】
更に、フィルタ押え板31の2つの規制片31b,31bには、開口窓135が貫通する方向に延在されたガイド溝136がそれぞれ設けられている。2つのガイド溝136,136には、CCDアダプタ27に設けた2つの規制爪133,133がそれぞれ個別に係合されている。このガイド溝136の範囲内において、フィルタ押え板31がCCDアダプタ27に対して、レンズ系の光軸方向へ移動可能とされている。2つの折り返し部31c,31cは、規制爪133と同方向へ突出するように折り曲げ形成されている。
【0089】
また、押え板本体31aの四隅には、規制爪133と反対側に突出する4つの受圧凸部137がそれぞれ設けられている。4つの受圧凸部137の先端面は、フィルタ押え板31の一面において最も外側へ突出しており、非撮影状態においてレンズ鏡筒1が最も後退したときに、この4つの受圧凸部137に3群レンズ枠17が当接するようになっている。このフィルタ押え板31によって移動が制限されているローパスフィルタ6は、ベローズ29自体が持つ弾性による復元力に基づいて常時CCD7から離れる方向へ付勢されている。この場合に、ベローズ29自体の弾力に加えて、別部品としてばね等の弾性部材を設け、その弾性部材の付勢力でローパスフィルタ6を、CCD7から離れる方向へ常時付勢するように構成してもよい。フィルタ押え板31の材質としては、例えば、ステンレス鋼板、スチール鋼板等の金属が好適であるが、エンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
【0090】
このような構成部品を備えたCCDユニット20は、例えば、次のようにして組立てられる。まず、CCD7の受光部7a側の面にベローズ29の一方の端面部29aを密着させて固定する。次に、ベローズ29の他方の端面部29bに、接着材等の固着手段を用いてローパスフィルタ6を密着させて固定する。そして、ローパスフィルタ6のベローズ29と反対側の面に、フィルタマスク30を固着する。このフィルタマスク30の固着作業は、ローパスフィルタ6をベローズ29に固定する前であってもよい。
【0091】
次に、ローパスフィルタ6側からベローズ29をCCDアダプタ27の開口部131内に挿入し、CCD7の受光部7a側の面をCCDアダプタ27の一面(背面)に接着材等の固着手段を用いて固定する。その後、フィルタ押え板31を、ローパスフィルタ6側から差し込んでCCDアダプタ27に装着する。このとき、フィルタ押え板31の2つの規制片31b,31bをCCDアダプタ27の2つの摺動接触部27c,27cに対向させ、各規制片31bの内面を各摺動接触部27cの表面に摺動させる。そして、規制片31bが持つ弾性を利用して規制爪133をそれぞれ乗り越えさせ、2つの規制爪133,133を2つの規制片31b,31bのガイド溝136,136にそれぞれ係合させる。
【0092】
これにより、フィルタ押え板31が所定の範囲内においてCCDアダプタ27の厚さ方向(ベローズ29が伸縮する方向)へ相対的に移動可能に装着され、CCDユニット20の組立作業が完了する。このときの所定範囲内とは、ガイド溝136内を規制爪133が移動可能とされた範囲である。このようにして組立てられたCCDユニット20を、図2、図23及び図24に示している。図2において示す符号32は、CCD7の電気回路と電気的に接続された配線回路を有するフレキシブル配線板である。
【0093】
また、CCD7の前面に配置される光学フィルタとしては、前記実施例の光学式ローパスフィルタ6に限定されるものではなく、例えば、赤外線カットフィルタ、或いは両フィルタを複合させた複合フィルタその他の光学フィルタを用いることができることは勿論である。
【0094】
図26〜図28には、進退支持部材の他の実施例を示している。図26に示すベローズ140は、本発明に係る進退支持部材である弾性封止体の第2の実施例を示すもので、ベローズ本体140aに防塵フィルタ141を設けたものである。ベローズ本体140aは、前記実施例のベローズ29と同様のものであるが、異なる点は、外面に防塵フィルタ141を一体的に設けた点である。ベローズ140の一方の端面部140bがCCD7に固着され、他方の端面部140cにローパスフィルタ6が固着される点は、前記実施例の場合と同様である。
【0095】
防塵フィルタ141は、四角形の筒体からなるフィルタケース142と、そのフィルタケース142の開口部を塞ぐように設けたフィルタ部材143とを備えて構成されている。フィルタケース142は、ベローズ本体140aの折り畳み部に対応させて偏平の薄い板状の筒体として形成されており、その開口側の一端をベローズ本体140aの凸部と合致させるように接合している。このフィルタケース142の穴に対応させて、図示しないがベローズ本体140aの側面には穴が設けられており、その穴を介してベローズ本体140aの内部が外部と連通されている。フィルタケース142の突出端は、適当な角度に傾斜した傾斜面として形成されており、これにより、開口部の面積を大きくして空気の出し入れが容易に行えるようにしている。また、フィルタ部材143は、微細な異物は通過させないが、空気は通過させる大きさの隙間が多数設けられた部材によって形成されている。
【0096】
図27に示すシールゴム150は、本発明に係る進退支持部材の第3の実施例を示すもので、弾性が大きくて柔軟性に優れたシリコンゴムによって形成されている。このシールゴム150は、ローパスフィルタ6を支持する支持部150aと、CCD7に密着して固定される固定部150bと、支持部150aと固定部150bの間を弾性的に連結してローパスフィルタ6の進退動作を許容する弾性部150cとを有している。支持部150aは、ローパスフィルタ6よりも少々大きな四角形の枠状部分からなり、その内側にローパスフィルタ6よりも少し小さい開口部151が設けられている。固定部150bは、シールゴム150をCCD7に密着させて固定するための部分で、支持部150aよりも少し大きな四角形の枠状部分として形成されている。
【0097】
シールゴム150の弾性部150cは、断面形状がJ字形をなす湾曲部分を四角形の枠状に連続させることによって形成されている。この弾性部150cの弾性変形に基づいて、支持部150aに固定されているローパスフィルタ6が容易に進退動作できるように構成している。この場合、弾性部150cに多数の通気孔が設けられていて、それらの通気孔から空気を出し入れすることにより、シールゴム150の進退動作を可能としている。このシールゴム150に、前述した防塵フィルタ141を設ける構成としてもよい。また、支持部150aの内側に弾性部材を配置し、その弾性部材のばね力によってローパスフィルタ6を常時外側へ付勢する構成としてもよい。なお、シールゴム150の材質は、シリコンゴムに限定されるものではなく、ブチルゴムその他のゴムを適用できることは勿論である。
【0098】
図28に示す入れ子式進退装置160は、本発明に係る進退支持部材の第4の実施例を示すものである。この入れ子式進退装置160は、ローパスフィルタ6を支持する支持枠161と、CCD7に密着して固定される固定枠162と、支持枠161をCCD7から離間する方向へ付勢する弾性部材163等を有している。支持枠161は、ローパスフィルタ6よりも大きな四角形の枠状部材からなり、その内側にローパスフィルタ6よりも少し小さい開口部164が設けられている。この開口部164には、レンズ系を透過した被写体の光が通過する。
【0099】
更に、支持枠161は、開口部164の内側に張り出した内フランジ部161aと、外縁から外側に張り出した外フランジ部161bを有しており、内フランジ部161aによってローパスフィルタ6が支えられている。外フランジ部161bは、内フランジ部161aと反対側の面に設けられており、固定枠162からの抜け出しを防止する役割を有している。支持枠161の、ローパスフィルタ6が固定された面には、横並びとなるように防塵フィルタ165が設けられている。防塵フィルタ165は、支持枠161に設けた複数(本実施例では3つ)の穴に嵌合された3つのフィルタ部材からなっている。このフィルタ部材は、微細な異物は通過させないが、空気は通過させる大きさの隙間が多数設けられた部材によって形成されている。
【0100】
固定枠162は、支持枠161を摺動可能に支持する部材であって、支持枠161よりも少し大きな四角形の枠体として構成されている。固定枠162は、四角形をなす開口部の内側に張り出した内フランジ部162aと、外縁から外側に張り出した外フランジ部162bを有している。固定枠162の一方の面側に内フランジ部162aが設けられ、他方の面側に外フランジ部162bが設けられている。内フランジ部162aには支持枠161の外フランジ部161bが対向され、外フランジ部161bが内フランジ部162aに係合することによって固定枠162からの支持枠161の抜け出しを防止するようにしている。
【0101】
弾性部材163は、支持枠161を介してローパスフィルタ6を、CCD7から離反する方向へ常時付勢するもので、固定枠162の枠内に収納されている。この弾性部材163は、板状のばね材からなる板ばねによって形成されており、支持枠161の四隅を略等しい付勢力で略均等に付勢できるように構成されている。即ち、弾性部材163は、略平行に設けられた2つの弾性片163a,163aと、2つの弾性片163a,163a間を連結する連結片163bとを有している。各弾性片163aの両端は同方向へ突出するように折り曲げ形成されており、これにより両端部に弾性を付与して、支持枠161の全体を略均等な力で付勢できるようにしている。連結片163bは、各弾性片163aの長手方向の一側へ偏倚した位置に設定されており、これにより連結片163bが、ローパスフィルタ6を透過する光を遮ることがないようにしている。
【0102】
図16A,B、図17A,B、図18A,B、図19A,B、図20A,B、図21及び図22A,Bは、レンズ鏡筒1が鏡筒収納状態から伸長してズーミング状態に変化する形態を説明する図である。次に、これらのレンズ鏡筒1の変化形態について簡単に説明する。
【0103】
図16〜図20は、レンズ鏡筒1が鏡筒収納状態にあることを示している。この状態においては、1群環10の3個のカムピン98は、カム環15の外カム溝65の鏡筒収納動作領域66におけるフランジ部15b側に開口されているカム溝開口部71の外に設けた保持部73に収納されている。このとき、3個のカムピン98のうち、2個のカムピン98は、フランジ部15bの2箇所の切欠き部55a,55bに位置している。一方、残り1個のカムピン98は、第1のフランジ部54aに設けた貫通穴62内に挿入されていて、図20A,Bに示すように、フランジ部15bの背面側に露出されている。
【0104】
1群環10の進退動作は、減速ギアユニット21による駆動ギア22の回転に基づいてカム環15が1群環10に対して相対的に回転駆動されることにより実行される。まず、1群環10の繰出し動作について説明する。カム環15を繰出し方向に回転すると、まず、カム環15に設けた押圧部72が1群環10に設けたブラケット10dの傾斜された操作面99に当接し、その押圧部72が操作面99を周方向に押圧する。このとき、押圧部72の斜面と操作面99の斜面の働きにより、操作面99に光軸方向に向かう力が発生する。
【0105】
この押圧部72と操作面99の当接によってカムピン98が、押圧部72と操作面99が当接し、ブラケット10dの先端から基端側に徐々に移行する。そして、カムピン98が外カム溝65内に完全に入り込むと、押圧部72と操作面99との当接から、カムピン98と外カム溝65の一方の側面との当接に移り変わる。その後は、カムピン98と外カム溝65の接触により、カムピン98が外カム溝65にガイドされて、光学ズーミング動作が実行される。1群環10の収納動作は、前述した図16〜図20に示す動作の逆側への動作によって行われる。
【0106】
このような作用を有するレンズ鏡筒1において、図3に示すような非撮影状態から図4に示すような撮影状態にズーム駆動させる場合に、3群レンズ枠17の非撮影状態での位置は、カム環15の前内周カム溝75と後内周カム溝76の軌跡によって決定される。このとき、非撮影状態の手前から2群環12を後退させることにより、2群環12の凸部12dが3群レンズ枠17の前側凸部56aに当接する。同様に、3群レンズ枠17を後退させることにより、3群レンズ枠17の4つの後側凸部56bが、CCDユニット20のフィルタ押え板31の4つの受圧凸部137に当接する。
【0107】
このとき、図3に示すように、3群レンズ枠17に保持されている第3レンズ群5とCCDユニット20のローパスフィルタ6の間には隙間S1が設定されていて、第3レンズ群5がローパスフィルタ6に直接接触することがない。また、フィルタ押え板31が3群レンズ枠17により押圧されてベローズ29が押し縮められ、ローパスフィルタ6がCCD7に接近している。このとき、ローパスフィルタ6とCCD7との間には、比較的小さな隙間T1が設定されている。
【0108】
そこで、第3レンズ群5とローパスフィルタ6との間の隙間S1を、両者が接触する直前までの最小値に設定することにより、レンズ鏡筒1の光軸方向の長さを小さくすることができる。また、ローパスフィルタ6の非撮影状態におけるレンズ系光軸方向の位置も、カム環15の前内周カム溝75と後内周カム溝76の軌跡によって決定されるため、非撮影状態での軌跡を、ローパスフィルタ6とCCD7の間隔S1が最小となる位置に設定することにより、レンズ鏡筒1の光軸方向の長さを可及的に小さくすることができる。
【0109】
一方、撮影状態においては、図4に示すように、CCDユニット20のローパスフィルタ6が固定されたベローズ(進退支持部材)29自体が持つばね力(或いは弾性部材163のばね力等)により、ローパスフィルタ6がCCD7から離反する方向へ付勢され、大きく離間される。これにより、ローパスフィルタ6と第3レンズ群5との間の隙間S2は、非撮影時における隙間S1よりも大きくなる(S2>S1)。また、ローパスフィルタ6及びフィルタ押え板31がベローズ29の弾性により押圧されて、ローパスフィルタ6がCCD7から離間する方向に移動する。
【0110】
その結果、ローパスフィルタ6とCCD7との間には、非撮影状態における隙間T1よりも大きな隙間T2が設定される(T2>T1)。これにより、ローパスフィルタ6の表面に異物が付着していたとしても、その異物がCCD7の受光部7aに写り込まれるのを軽減することができる。しかも、光学最小絞りを小さくすることができ、薄型で光学最小絞りの小さいレンズ鏡筒を得ることができる。
【0111】
図29〜図31に示すデジタルスチルカメラ300は、前述した本発明のレンズ鏡筒1を用いて構成した撮像装置の第1の実施の例を示すものである。このデジタルスチルカメラ300は、情報記録媒体として半導体記録メディアを使用し、被写体からの光学的な画像をCCD(固体撮像素子)で電気的な信号に変換して、半導体記録メディアに記録したり、液晶ディスプレイ等の表示装置である平面表示パネル302に表示できるようにしたものである。
【0112】
このデジタルスチルカメラ300は、被写体の像を光として取り込んで撮像手段としてのCCD(撮像素子)に導く前記レンズ鏡筒1と、そのレンズ鏡筒1その他の装置、機器等が内蔵されるカメラケース301と、CCDから出力される映像信号に基づいて画像を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示装置である平面表示パネル302と、レンズ鏡筒1の動作や平面表示パネル302の表示等を制御する制御装置と、図示しないバッテリー電源等を備えて構成されている。
【0113】
カメラケース301は、横長とされた偏平の容器からなり、前後方向に重ね合わされたフロントケース303及びリアケース304と、このフロントケース303とリアケース304の間に介在された略長方形の枠体からなるセンタケース305等によって構成されている。フロントケース303の前面の、中央より一側に少し偏倚した位置には、リング状をなす化粧リング306が取り付けられており、その化粧リング306の中央穴307にレンズ鏡筒1の正面側の1群環10等が進退可能に臨んでいる。
【0114】
図29は、図1Aに対応したレンズ鏡筒1の非撮影状態(鏡筒収納状態)を示すもので、レンズ鏡筒1の前面の略全体が、フロントケース303の前面と略同一平面となるように構成されている。また、図30は、図1Bに対応したレンズ鏡筒1の撮影状態(繰出し状態)を示すもので、1群環10を包む内化粧環112と、直進環14を包む外化粧環102が入れ子状態で繰出されている。
【0115】
フロントケース303のレンズ鏡筒1の斜め上部には、フラッシュ装置の発光部307と、オートフォーカス機構の発光・受光部308が設けられている。また、センタケース305の上面には、電源ボタン309やシャッタボタン310、マイクロホン等の集音装置の集音用穴311等が設けられている。更に、センタケース305の一方の側面部には、電源であるバッテリーが着脱可能に収納されるバッテリー収納部が設けられており、そのバッテリー収納部にはバッテリー蓋312が着脱可能に係合されている。そして、センタケース305のバッテリー蓋312と反対側の側面部には、スピーカ装置のためのスピーカ用孔313が設けられている。
【0116】
図31に示すように、リアケース304には表示窓315が大きく開口されており、その表示窓315に平面表示パネル302が装着されている。平面表示パネル302は、使用者が表示面に触れることにより操作が可能なタッチ操作機能を備えている。また、リアケース304の平面表示パネル302の一側には、各種の操作スイッチが設けられている。操作スイッチとしては、例えば、機能モード(静止画、動画、再生等)を選択するモード切替スイッチ316、ズーム操作を実行する光学ズーム操作ボタン317、各種メニューを選択するメニューボタン318、画面表示を切り替える表示切替ボタン319等を挙げることができるが、その他にもメニューを選択するカーソル等を移動させる方向キー、画面サイズを切り換えたり画面削除を行う画面ボタン等を設けることも可能である。
【0117】
このような構成を有するカメラケース301の内部に、レンズ鏡筒1や平面表示パネル302等を駆動制御する制御装置が内蔵されている。制御装置は、例えば、配線基板上に所定のマイクロコンピュータ、抵抗やコンデンサその他の電子部品等を搭載することによって構成される。
【0118】
図32は、前述したような構成及び作用を有するレンズ鏡筒1を備えたデジタルスチルカメラ300の概略構成の第1の実施の例を示すブロック図である。このデジタルスチルカメラ300は、レンズ鏡筒1と、制御装置の中心的役割を果す映像記録/再生回路部330と、その映像記録/再生回路部330を駆動するためのプログラムメモリやデータメモリその他のRAMやROM等を有する内蔵メモリ331と、撮影された映像等を所定の信号に処理する映像信号処理部332と、撮影された映像等を表示する平面表示パネル302と、記憶容量を拡大する外部メモリ333と、レンズ鏡筒1を駆動制御するレンズ鏡筒制御部334等を備えて構成されている。
【0119】
映像記録/再生回路部330は、例えば、マイクロコンピュータ(CPU)を有する演算回路等を備えて構成されている。この映像記録/再生回路部330に、内蔵メモリ331と映像信号処理部332とレンズ鏡筒制御部334とモニタ駆動部335と増幅器336と2つのインタフェース(I/F)337,338が接続されている。映像信号処理部332は、レンズ鏡筒1に取り付けられたCCD7に増幅器336を介して接続されている。映像信号処理部332で所定の映像信号に処理された信号が映像記録/再生回路部330に入力される。
【0120】
平面表示パネル302は、モニタ駆動部335を介して映像記録/再生回路部330に接続されている。第1のインタフェース(I/F)337にはコネクタ339が接続されており、このコネクタ339に外部メモリ333が着脱自在に接続可能とされている。また、第2のインタフェース(I/F)338には、カメラケース301に設けられた接続端子340が接続されている。そして、レンズ鏡筒制御部334には、レンズ鏡筒1を駆動制御するレンズ駆動部341と、レンズ鏡筒1の回動量や光軸方向への移動量等を検出する位置センサ342が接続されている。
【0121】
かくして、被写体の像がレンズ鏡筒1のレンズ系に入力されてCCD7の結像面に結像されると、その画像信号が増幅器336を介して映像信号処理部332に入力される。この映像信号処理部332で所定の映像信号に処理された信号が映像記録/再生回路部330に入力される。これにより、映像記録/再生回路部330から被写体の像に対応した信号がモニタ駆動部335、内蔵メモリ331若しくは外部メモリ333に出力される。その結果、モニタ駆動部335を介して平面表示パネル302に被写体の像に対応した画像が表示され、或いは、必要により情報信号として内蔵メモリ331若しくは外部メモリ333に記録される。
【0122】
このような構成を備えたデジタルスチルカメラ300は、例えば、次のようにして使用することができる。図29は、レンズ鏡筒1におけるレンズバリアユニット110の開閉ばね10bを閉じて光学レンズ系を閉じた状態、即ち、非撮影状態を示している。この場合には、デジタルスチルカメラ300の電源はオフの状態となる。また、図30は、レンズバリアユニット110の開閉ばね10bを開いて光学レンズ系を開放した状態、即ち、撮影可能状態を示している。この撮影可能状態は、電源ボタン309を操作して電源をオンとすることによって自動的に実行される。その結果、デジタルスチルカメラ300が、図29に示す形態から図30に示す形態に変化することになる。
【0123】
デジタルスチルカメラ300の撮影可能状態において、被写体に撮影レンズを向けてシャッタボタン310を押すことにより、その被写体を撮影してその画像を取り込むことができる。この際、光学ズーム操作ボタン317を操作することにより、像点の位置を変えることなく、その操作方向に応じて焦点距離を連続的に変化させて、ワイド(広角)画面又はテレ(望遠)画面を得ることができる。
【0124】
以上説明したように、本発明によれば、撮影時と非撮影時とで、光学フィルタ(ローパスフィルタ等)と撮像素子(CCD)とのレンズ系における光軸方向の間隔を変化させることにより、ローパスフィルタ等の表面に付着している異物がCCDの受光部に写り込むのを軽減することができる。これにより、いわゆる沈胴式レンズ鏡筒の光軸方向の長さ(沈胴長)を小さくすることが可能となり、レンズ鏡筒の薄型化と光学最小絞りの小径化を達成することが可能となる。
【0125】
即ち、本発明は、複数のレンズを有するレンズ鏡筒であって、前記複数のレンズを密接させた非撮影時の第1の状態と、当該複数のレンズを離間させた撮影可能な撮影時の第2の状態とを選択可能としたレンズ鏡筒において、撮像素子の直前に光学フィルタを設けると共に、前記第1の状態では前記光学フィルタを撮像素子に近接させ、前記第2の状態では光学フィルタを撮像素子から離間させるようにしたことを特徴とするレンズ鏡筒に関するものである。なお、本実施例では、撮像素子としてCCDについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、CMOSその他の撮像素子を適用できることは勿論である。
【0126】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例においては、撮像装置としてデジタルスチルカメラを適用した例について説明したが、デジタルビデオカメラ、カメラ付きパーソナルコンピュータ、カメラ付き携帯電話その他の撮像装置にも適用できるものである。更に、光学レンズとして3群レンズを用いた例について説明したが、4群レンズ以上であってもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明のレンズ鏡筒のカム機構の第1の実施の例を示すもので、図1Aはレンズ鏡筒の鏡筒収納状態、図1Bはレンズ鏡筒の鏡筒繰出し状態のそれぞれ斜視図である。
【図2】図1に示すレンズ鏡筒を分解した斜視図である。
【図3】図1に示すレンズ鏡筒の鏡筒収納状態の断面図である。
【図4】図1に示すレンズ鏡筒の鏡筒繰出し状態の断面図である。
【図5】図1に示すレンズ鏡筒に係る固定環の斜視図である。
【図6】図5に示す固定環を展開して内周面のカム溝等を破線で現した展開図である。
【図7】図1のレンズ鏡筒に係るカム環を示すもので、図7Aは斜視図、図7Bは正面図、図7Cは図8AのX−X線部分の断面図である。
【図8】図7のカム環を示すもので、図8Aは平面図、図8Bは底面図である。
【図9】図7のカム環を展開して示すもので、図9Aは外周面のカム溝を現した展開図、図9Bは内周面のカム溝を破線で現した展開図である。
【図10】図2に示すレンズ鏡筒の直進規制部材を展開した展開図である。
【図11】図2に示すレンズ鏡筒の直進環を展開して内周面のガイド溝を破線で現した展開図である。
【図12】図2に示すレンズ鏡筒の自動露光装置と間隔規制部材と2群環を分解して現した斜視図である。
【図13】図2に示すレンズ鏡筒の2群環を展開した展開図である。
【図14】図2に示すレンズ鏡筒の1群環と1群レンズ枠等を分解して現した斜視図である。
【図15】図14に示す1群レンズ枠を展開して内面の係合部を破線で現した展開図である。
【図16】図2に示すレンズ鏡筒の1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、図16Aは1群環のカム従動子がカム環のカム溝開口部から外へ完全に移動した状態の斜視図、図16Bは半断面図である。
【図17】図16に示す1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、図17Aは1群環とカム環を展開して要部を現した展開図、図17Bは図17Aのギア部を一部断面してカム溝開口部を現した展開図である。
【図18】図16に示す1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、図18Aは正面図、図18Bは底面図である。
【図19】図16に示す1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、図19Aは右側面図、図19Bは図18BのY−Y線断面図である。
【図20】図16に示す1群環とカム環を組み合せたもので、図20Aは底面側から見た斜視図、図20Bは図20Aの要部を拡大した説明図である。
【図21】図16に示す1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、1群環のカム従動子がカム環のカム溝の鏡筒収納領域に移動した状態の斜視図である。
【図22】図16に示す1群環とカム環の組立体と駆動ギアとの関係を説明するもので、図22Aは半断面図、図22Bは図21に示す1群環とカム環を展開すると共にギア部の一部を断面してカム溝開口部を現した展開図である。
【図23】図2に示すレンズ鏡筒の2群環と3群レンズ枠とCCDユニットを正面側から見た斜視図である。
【図24】図2に示すレンズ鏡筒の2群環と3群レンズ枠とCCDユニットを背面側から見た斜視図である。
【図25】図2に示すレンズ鏡筒のCCDユニットを分解した斜視図である。
【図26】図2に示すレンズ鏡筒のCCDユニットに係る進退支持部材の第1の実施例の一部を断面して斜めから見た説明図である。
【図27】図2に示すレンズ鏡筒のCCDユニットに係る進退支持部材の第2の実施例の一部を断面して斜めから見た説明図である。
【図28】図2に示すレンズ鏡筒のCCDユニットに係る進退支持部材の第3の実施例の一部を断面して斜めから見た説明図である。
【図29】図1のレンズ鏡筒を用いた撮像装置の実施の例を示すデジタルスチルカメラを現したもので、鏡筒収納状態を正面側から見た斜視図である。
【図30】図1のレンズ鏡筒を用いた撮像装置の実施の例を示すデジタルスチルカメラを現したもので、鏡筒繰出し状態を正面側から見た斜視図である。
【図31】図1のレンズ鏡筒を用いた撮像装置の実施の例を示すデジタルスチルカメラを現したもので、背面側から見た斜視図である。
【図32】図1のレンズ鏡筒を用いた撮像装置の実施の例を示すデジタルスチルカメラの概略構成を現したブロック説明図である。
【符号の説明】
【0128】
1…レンズ鏡筒、 2…第1レンズ群、 3…自動露光装置、 4…第2レンズ群、 5…第3レンズ群、 6…ローパスフィルタ(光学フィルタ)、 7…CCD(撮像素子)、 10…1群環(直進部材)、 11…1群レンズ枠、 12…2群環(直進部材)、 13…2群レンズ枠、 14…直進環、 15…カム環(回動部材)、 16…固定環、 17…3群レンズ枠、 18…後部鏡筒、 20…CCDユニット、 21…減速ギアユニット、 27…CCDアダプタ、 29…ベローズ(進退支持部材)、 31…フィルタ押え板、 37A,37B,37C…カム溝、 38A,38B,38C…直進案内溝、 57A,57B,57C…カム突部、 60…ギア部、 65…外カム溝(カム溝)、 66…鏡筒収納動作領域、 67…ズーミング動作領域、 74…内カム溝群、 75…前内周カム溝、 76…後内周カム溝、 80…直進規制部材、 83…直進案内溝、 84…カムピン、 85…前カムピン、 86…後カムピン、 89…ガイド突起、 94…間隔規制部材、 97…ガイド凸部、 98…カムピン(カム従動子)、 101…直進案内溝、 110…レンズバリアユニット、 300…デジタルスチルカメラ(撮像装置)、 301…カメラケース、 302…平面表示パネル(表示装置)、 309…電源ボタン、 310…シャッタボタン、 334…レンズ鏡筒制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを透過した被写体の光を受光して光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子の前面に配置される光学フィルタと、
を備えたレンズ鏡筒であって、
前記光学フィルタを前記撮影レンズの光軸方向へ進退可能として前記撮像素子に支持する進退支持部材を設けたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記進退支持部材は、弾性部材によって伸縮可能に形成されると共に前記光学フィルタと前記撮像素子との間を気密に封止する弾性封止体と、前記弾性封止体に設けられると共に塵埃の通過を阻止し且つ空気の通過のみを許容して弾性封止体の進退動作を可能とするフィルタ部と、を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記弾性封止体は、ゴム状弾性体によって筒状に形成されたベローズからなることを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記弾性封止体は、前記光学フィルタを支持する支持部と、前記撮像素子に密着して固定される固定部と、前記支持部と前記固定部の間を弾性的に連結して前記光学フィルタの進退動作を許容する弾性部と、を有することを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記進退支持部材は、前記撮像素子に密着して固定される固定部と、前記光学フィルタを支持すると共に前記固定部に対して入れ子式に収納される可動部と、前記可動部又は前記固定部に設けられると共に塵埃の通過を阻止し且つ空気の通過のみを許容して可動部の進退動作を可能とするフィルタ部と、前記光学フィルタを前記撮像素子から離れる方向に付勢する付勢手段と、を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
撮影レンズを透過した被写体の光を受光して光電変換する撮像素子と、前記撮像素子の前面に配置される光学フィルタと、を有するレンズ鏡筒を備えた撮像装置であって、
前記レンズ鏡筒には、
前記光学フィルタを前記撮影レンズの光軸方向へ進退可能として前記撮像素子に支持する進退支持部材を設けたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−248642(P2007−248642A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69771(P2006−69771)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】