説明

レンチウイルス・ベクター媒介遺伝子導入及びその使用

【課題】遺伝的又は後発的増殖性眼疾患に対するヒト遺伝子治療の方法を提供する。
【解決手段】メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)作用を有する第一のペプチドの遺伝子及び血管形成(angiogenesis)を阻害する第2のポリペプチドをコードする第2の治療遺伝子を含み、これらは眼疾患を治療するためにレンチウイルス・ベクターに導入し、本ウイルスが有する分裂活性及び不活性の両方の細胞に対して形質導入する能力を利用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ベクター及び遺伝子治療の分子生物学の分野に関するものである。より詳しくは、本発明は遺伝性及び増殖性の眼疾患に対する人間の遺伝子治療におけるレンチウイルス・ベクターの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の失明の最も一般的な原因の一つは、しばしば視軸の明確さの損失、あるいは網膜表面に対し、直接的に働く牽引力のために網膜色素上皮細胞(RPE)から網膜の剥離の結果を生じさせる異常眼球内細胞増殖である。増殖糖尿病網膜症(PDR)、未熟児網膜症(ROP)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、又は、加齢黄斑変性(AMD)のいずれかに関連した増殖性網膜剥離であると、治療を行わないままにしておくと、最終的には、視野の永遠の損失となってしまう。
【0003】
目における新しい血管の異常な増殖、眼の血管新生(ネオバスキュラリゼーション)は、先進国における永久失明の最も一般的な原因である。三つの疾病が眼内の新生血管形成のすべての原因に占める主要な部分と関連している。すなわち、糖尿病、未熟児網膜症、及び加齢黄斑変性である。これら三つの病気は区別でき、異なった群の患者に影響を与えるが、それらは最終的な網膜機能を含む新血管の形成を導く上皮細胞の抑制できない分裂を含む最終的な共通の経路を含んでいる。合計すると、これらの病気は米国における治療不可能な失明の約60%を占めている。
【0004】
網膜内の血管内皮細胞の増殖が、増殖糖尿病網膜症(PDR)の開始となる。もし治療を行わなければ、これらの内皮細胞は分裂を続け、結局は網膜の内表面に沿った、あるいは硝子体腔内部に広がる血管結合組織膜を形成する。後部網膜表面の収縮は、網膜−血管結合組織接着部位を牽引する結果となり、最終的には網膜剥離を引き起こす。タイプ1糖尿病の約50%は、糖尿病であるとの診断から20年以内に増殖糖尿病網膜症を発症し、一方タイプ2の疾患の患者の10%は、同じ時間枠内で増殖糖尿病網膜症が明らかになる。
【0005】
血管は通常、脈管形成(バスクロジェネシス)又は血管形成(アンジオジェネシス)の2つの過程のうちの一つにより発生する。脈管形成中、毛細血管の初期ネットワークは胚形成の間に多能性間葉前駆体の成熟により形成される。一方、血管形成は以前に存在している血管の改造のことを言うものである。血管形成では、新しい血管芽が古いものから生じ、形成された血管が周辺組織に進入する。網膜において、正常な血管のネットワークが確立した場合、このネットワークの改造は組織の酸素濃度に大きな影響を受けるものであり、低酸素症(酸素欠乏)が血管新生を刺激する。これは社会における、多数の糖尿病患者、未熟児又は老人の失明をもたらすプロセスである。
【0006】
加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、未熟児網膜症、緑内障及び増殖性硝子体網膜症のような眼内疾患は、従って、遺伝子治療が有用である異常増殖、その他の状態によって特徴づけられる。しかしながら、哺乳類の細胞に大きな効果を有する遺伝子形質導入を実施するのは困難であった。さらに、アデノウイルス・ベクター、リポソーム、及び、デンドリマーベース試薬のような従来用いられているベクターによって見られる効果は、全く一過性のものである。これらのベクターの眼への導入は、また、強い炎症反応を引き起こすので問題が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ナルディニ(Naldini)ら著、サイエンス(Science)、1996年、272:263−267
【非特許文献2】ミヨシ(Miyoshi)ら著、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)1997年、94:10319−10323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、従来の技術は眼の中、又は眼由来の最終的に分化した又は増殖性ヒト細胞に形質導入の手段の欠如の点で不十分である。本発明は、この分野における長年の要求と要望を満たすものである。
本発明の目的はレンチウイルス・ベクター及び遺伝的及び増殖性眼性疾患に対するヒト遺伝子治療におけるこれらのベクターの使用方法の開発である。ヒト網膜細胞、角膜細胞、血管内皮細胞、増殖性硝子体網膜細胞及び色素上皮細胞の形質導入に対するレンチウイルス・ベクターの有用性が記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施態様においては、レンチウイルス運搬構成的活性(突然変異体又はバリアント)網膜芽腫(CA−rb)遺伝子による眼内細胞分裂の抑制の可能性を示すものである。ヒトの眼の細胞がイン・ビトロで検査され、眼内増殖性疾患の2つのモデル(増殖性硝子体網膜症及びポスト・レンズ摘出後嚢混濁)はイン・ビボで検査した。イン・ビトロでの細胞分裂の有効で長期間の阻害が多くの異なった細胞型で観察された。増殖性硝子体網膜症及びポスト・レンズ摘出後嚢混濁の厳しさの減少がイン・ビボで観察された。
【0010】
本発明の別の実施態様においては、新血管の成長(血管形成)又は前プログラム細胞死(アポトーシス)の成長及び阻害に重要なものとして知られている遺伝子のレンチウイルス介在移転が病理的眼性血管形成(例えば、糖尿病性網膜症又は「ウェット」加齢黄斑変性)又は病理的細胞死(例えば、「ドライ」加齢黄斑変性)に有用なものとなることが示された。これらの遺伝子は、ヒト網膜、角膜及び網膜色素上皮細胞の活性化、及び、ウサギの実験における角膜血管新生を阻害するものとして知られている二つの分離した強力なプロモーターのいずれか一つの制御下に置かれていた。
【0011】
さらに、このベクター系は、遺伝的な眼の疾患を持つ人間では欠損していることが知られている遺伝子がある場合には、これらの遺伝子をヒトの眼の細胞に伝達することができる。この系によるこれらの遺伝子の伝達は眼疾患を持つこれらの患者に対する有効な治療の基本形を形成する。
【0012】
本発明は眼の疾患を持つ個人のような、このような治療の必要性のある個人における眼内細胞性増殖の阻害の方法を与えるものである。この方法は、前記の個人に眼内細胞性増殖を阻害する治療的遺伝子を含む薬理的有効量のレンチウイルス・ベクターの投与のステップを含むものである。
【0013】
本発明は眼の疾患を持つ個人に、眼内血管新生を阻害する治療的遺伝子を含む薬理的有効量のレンチウイルス・ベクターの投与のステップを含む、眼内血管新生を阻害する方法を示すものである。
【0014】
本発明の別の、そしてさらなる側面、特徴及び利点は、発明の現在の好ましい実施態様の以下の記載により明らかになるであろう。これらの実施態様は開示されるために与えられたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遺伝的又は後発的増殖性眼疾患に対するヒト遺伝子治療のための組成物が提供される。これは眼疾患を治療するためにレンチウイルス・ベクターが有する分裂活性及び不活性の両方の細胞に対して形質導入する能力を利用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ベクター(カリフォルニア州、サンディエゴ、サルク(Salk)大学、インデル・ベルマ(Inder Verma)博士より提供)を示すものである。HIV:ヒト免疫不全ウイルス、LTR:ロングリピートターミナル、GAG:HIV GAG遺伝子、POL:HIV逆転写酵素、ENV:HIVエンベロープ遺伝子、rre:rev応答配列、CMV:サイトメガロイウルス、VSV:水疱性口内炎ウイルス、Poly A:ポリアデニル化信号、特異的プロモーター:治療的遺伝子の発現の空間的、時間的又は量的側面を調節するために、ここにおいて置き換えることができるいずれかの転写促進プロモーター、治療遺伝子:それに限定されるものではないが、例えば、構成的活性網膜芽腫遺伝子、又は、疾患の結果欠損することとなる遺伝子のような、ここにおいて置き換えることができる治療的可能性を伴ったいずれかの遺伝子。
【図2】ヒト細胞系である、ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、脈絡膜繊維芽細胞(CF)、ヒト網膜芽腫(網膜由来)細胞(Weri−Rb−1及びY79)のイン・ビトロ形質導入を示すものである。これらの細胞系は標識遺伝子(促進緑色蛍光タンパク質遺伝子)を含むレンンチウイルス粒子で形質導入され、標識遺伝子の発現した細胞の割合は、蛍光活性化セルソーティングにより決定した。より多数のレンチウイルス粒子で形質導入された細胞でより多数発現しているように、投与量依存反応が示されている(感染の多様性−MOI)。
【図3A】培養網膜色素細胞へのレンチウイルス形質導入を示すものである。標識遺伝子(eGFP)の発現の結果、緑色に蛍光発色した細胞となる。
【図3B】形質導入効率の蛍光活性化セルソーティング分析の結果を示すものである。第1パネルにおけるR2の枠外のデータは、前期形質導入の蛍光発光欠如を反映している。第2パネルは、後期形質導入で95%以上の蛍光発光に移行したことを示している。
【図4】ヒト網膜色素上皮細胞における分裂活性化度及び形質導入効率を示している。ヒト網膜色素上皮細胞は、レンチウイルス又はマウス白血病ウイルス(MLV)で形質導入された。ベクターにさらされた時間により、細胞は分裂不活性(融合)又は分裂活性(成長)となる。図4に示されたこれらの結果は、非分割細胞の形質導入において、レンチウイルス・ベクターが他のレトロウイルス・ベクターより優れた能力を持つことを示している。
【図5A】図5はヒト網膜色素上皮細胞における発現の安定性を示すものである。細胞はeGFP含有レンチウイルス・ベクターの作用を受け、引き続き少なくとも120日間連続培養された。図5Aはレンチウイルス形質導入細胞に対する、又は除外する選択の欠如に加え、これらの細胞におけるeGFPの安定性を示している(形質導入された細胞の割合は一定時間あたり一定である)。
【図5B】細胞の5クローン集団のサザン分析の結果である。レーン1は非形質導入親系由来のゲノムDNAを含んでいる。レーン2及び3は、ベクターにさらされたが、緑色ではない(非形質導入)細胞由来のDNAを含んでいる。レーン4及び5は形質導入された緑色の細胞由来のDNAを含んでいる。細胞はゲノム統合の結果、細胞はeGFPポジティブのままであった。
【図6】ヒト胎児トランスジーン発現を示すものである。このグラフは、ヒト胎児細胞における、非レンチウイルス・レトロウイルス・ベクター(MND−eGFP)又はウイルス・ベクターがない状態(コントロール)と比較した場合に、レンチウイルス・ベクターは形質導入が高い効率で達成されることを示されている。
【図7A】図7は角膜における形質導入を示すものである。図7はヒト角膜の概要図である。
【図7B】e−GFP含有レンチウイルス・ベクターによるヒト角膜内皮細胞の形質導入を示すものである。角膜移植の際に除去されたヒト角膜のボタンをレンチウイルス粒子にさらした。デスメ膜が続いて除去され、室内光(左側)、及び、蛍光検出が可能な状況(右側)で写真撮影された。
【図7C】ヒト角膜上皮細胞に対するレンチウイルス媒介eGFP遺伝子導入を示すものである。サブパネルAは人工的に上皮層を剥離させたヒト角膜の光学顕微鏡写真を示すものである。蛍光顕微鏡写真(サブパネルB)は上皮の蛍光を示すものである。
【図8】欠損の結果ヒト疾患を生じさせる遺伝子のレンチウイルス遺伝子導入の例である。網膜芽腫の脱核の際に外科的に切開された正常ヒト網膜組織又は網膜色素上皮(RPE)組織は、治療遺伝子(Mock)を欠いているか、またはヒト・ペリフェリン遺伝子を含むレンチイルス・ベクターにさらされた。この遺伝子が、ヒトにおいて遺伝的に欠損した場合には、非常に多種の無力化表現型を生み出す結果となることが知られている。導入されたペリフェリン遺伝子のみを認識するように設計されたプライマーを用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rt−PCR)の結果が示されている。ヒト網膜及び網膜色素上皮におけるヒトにおけるヒト・ペリフェリンの発現が明確に示されている。
【図9】CA−rb mRNAのレンチウイルス媒介発現を示すものである。これは、構成的活性型の網膜芽腫遺伝子のみを認識するように設計されたプライマーを用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rt−PCR)の結果を示している。レーン1:マーカー、レーン2:レンチウイルスeGFP形質導入細胞から分離されたRNAとの反応結果、レーン3:レンチウイルスCA−rb形質導入細胞から分離されたRNAとの反応結果。反応産物は予測された大きさであった。
【図10】ヒト網膜及び角膜細胞分裂に対するレンチウイルス構成的活性網膜芽腫遺伝子ベクターの阻害効果を示すものである。細胞は段階的に希釈された単一レンチウイルス株(1:400希釈液から1:50希釈液)にさらされ、その成長を、構成的活性網膜芽腫遺伝子を含有しないレンチウイルス・ベクターにさらした細胞と比較した。時間に対する細胞分裂の阻害効果が明確に見られ、この効果は量依存性であった。
【図11】ヒトレンズ上皮細胞の細胞分裂に対するレンチウイルスCA−rbの阻害効果を示すものである。白内症摘出の際にヒト眼から除去された細胞は段階的に希釈された単一レンチウイルス株(1:400希釈液から1:50希釈液)にさらされ、その成長を、構成的活性網膜芽腫遺伝子を含有しないレンチウイルス・ベクターにさらした細胞と比較した。時間に対する細胞分裂の阻害効果が明確に見られ、この効果は量依存性であった。
【図12】失明眼内細胞増殖に対するレンチウイルスCA−rbのイン・ビボにおける阻害効果を示している。3組のウサギで増殖性硝子体網膜症が誘発された。1つの組は処理を行わないものであり、別の1組は構成的活性網膜芽腫遺伝子を欠いたレンチウイルス・ベクターで処理したものであり、残りの1組は硝子体内由来のレンチウイルスCA−rbで処理されたものである。増殖性硝子体網膜症及び網膜剥離は、最初の2組において高い頻度(>90%)で現れている。網膜剥離に至った動物の割合は、構成的活性網膜芽腫遺伝子で処理した組において有意に低下したのものであった(26%)。ここでは2つの網膜の写真が示されている。左側の目では、網膜が完全に接着しているものであり、構成的活性網膜芽腫遺伝子で処理したものであった。右側の目は、眼内硝子体内細胞増殖の結果、完全に網膜が剥離したものであって、CA−rb遺伝子を欠いたレンチウイルス・ベクターで処理されたものである。
【図13】ポスト・レンズ摘出後嚢混濁の過程におけるレンチウイルスCA−rbのイン・ビボにおける阻害効果を示している。3組のウサギが生まれつきのレンズを除去して標準的な水晶体混濁を生じさせた。第1の組(グループ1)はその後何も処理されず、残りの2組は空のレンチウイルス構造物(治療遺伝子無し、グループ2)又はレンチウイルスCA−rb(グループ3)を白内障の傷が閉塞する際に、傷のないレンズ嚢バックに伝達する処理を行った。動物は順次混濁が存在するかどうか調査された。混濁の存在は、1が混濁の無いものを表し、5が間接双眼検眼鏡による検査により網膜の視覚化を妨げるのに十分な重度の混濁を表す、1〜5の各段階で表された。グループ1及び2(未処理及び空ベクター)の間で結果に有意な差は存在しなかった。ここのグラフは後嚢混濁の発生に対するレンチウイルスCA−rbの著しい阻害効果を示している。28日目において、コントロールの動物は平均混濁段階が4.4であり、一方、レンチウイルスCA−rbで処理した動物では平均混濁段階が2.1であった。
【図14】レンチウイルス・ベクターによって伝達されたエンドスタチン−18/アンジオスタチン融合遺伝子の地図を示すものである。
【図15】エンドスタチン/アンジオスタチン融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−Endo/Ang−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図16】BIK遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−BIK−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図17】エンドスタチン/クリングル融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−Endo/Kringle−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図18】KDR遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−KDR−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図19】p16遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−P16−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図20】p21遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−P21−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図21】Timp1遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−CMV−Timp1−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図22】アンジオスタチン遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−Ang−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図23】エンドスタチンXV遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−Endo XV−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図24】エンドスタチン/アンジオスタチン融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−EndoAng−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図25】エンドスタチン/クリングル融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−EndoKringle−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図26】クリングル融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−Kringle1−5−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図27】Mig/IP10融合遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−MigIP10−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図28】Timp1遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−Timp1−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図29】Timp4遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−Timp4−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図30】p21遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−P21−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図31】エンドスタチンXVIII遺伝子を運搬するレンチウイルス・ベクターpHR−EF1/HTLV−EndoXVIII−ires−eGFPの地図を示すものである。
【図32】エンドスタチン−18/アンジオスタチン融合遺伝子で形質導入されたヒト皮膚毛細血管内皮細胞(hDMVE)から分離されたmRNAの逆転写PCRを示すものである。レーン1:1000/100bpラダー混合物;レーン2−5:12ウェルプレートの一つのウェルから得られた、1ul、5ul、10ul及び20ulのpHR’−eF1α/HTLV−Endo::Ang−IRES−eGFPウイルス上清で形質導入されたhDMVE細胞から分離されたmRNAによる逆転写PCR;レーン6:20μlのPBSとインキュベートされたhDMVE細胞から分離されたmRNAによる逆転写PCR;レーンhDMVE細胞から分離されたmRNAによる逆転写PCR;7:負のコントロール(逆転写PCRのテンプレートとしての水);100bpラダー。
【図33A】図33は処理された動物における角膜マイクロポッケトのeGFP存在を示すものである。図33AはマイクロポッケトにおけるeGFP発現を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図33B】図33Aで示した組織と同一の組織の非蛍光顕微鏡写真である。
【図33C】未処理動物における同様な過程を経た組織の蛍光顕微鏡写真である。
【図34A】図34はMig/IP10レンチウイルス・ベクターで処理された動物における新生血管形成に対する阻害効果を示すものである。図34Aは正常な(未処理、無刺激)角膜の写真である。
【図34B】Mig/IP10レンチイウルス・ベクターで処理された動物のアルカリ攻撃角膜の写真である。角膜中には血管が欠損していることに注意を要する。
【図34C】治療的抗血管新生促進遺伝子が無いコントロール・レンチウイルス・ベクターにより処理された動物のアルカリ攻撃角膜の写真である。角膜への血管の侵入に注意を要する。
【図34D】未処理動物のアルカリ攻撃角膜の写真である。角膜への血管の侵入に注意を要する
【発明を実施するための形態】
【0017】
レンチウイルスは、自然における病気の発症に数ヶ月から数年以上かかるスローウイルスである。この種類のウイルスには、HIVのようなレトロウイルスを含むものである。これらのウイルスは、最終的な分化を果たした、分裂活性あるいは不活性の多くの種類のヒト細胞型に感染及び移転することが知られている。それらの形質導入効率は、ヒト網膜、角膜、小柱、レンズ、網膜色素上皮、増殖性硝子体網膜及び血管内皮細胞のような遺伝子導入に対して伝統的に非常に抵抗力がある細胞系に対してさえ非常に高い値を取る。
【0018】
レンチウイルスに感染されると、ウイルス遺伝子物質は宿主ゲノム内でそれ自身統合する。従って、ウイルス遺伝子は宿主細胞の遺伝子物質の恒久的な一部となり、細胞の一生の中で遺伝子発現が常に行われる。レンチウイルスによって形質導入された各細胞は遺伝子情報をその子孫に伝える。親ウイルスによる感染の天然の状況下では、ウイルスは炎症反応を伴わない眼内病原体であるので、眼内疾患に対する遺伝子治療におけるレンチウイルスの使用は可能である。このウイルスについての従来の研究では、神経細胞及び網膜細胞の両方の形質導入における使用に有効的であることが示されている(ナルディニ(Naldini)ら、1996;ミヨシ(Miyoshi)ら、1997)。
【0019】
本発明は、2つのクローニング部位の間にIERS(内部リボソームエントリー部位)要素を取り込んだ新規なレトロウイルス・ベクターを提供する。IRES要素はmRNA−リボソーム結合及びタンパク質合成を可能にする。このバックボーンは2つの発現可能な遺伝子を収容できる。形質導入された細胞では単一のメッセージが造り出される;しかしながら、IRES要素のため、このメッセージは機能的に2遺伝子的なものであり2つの異なったタンパク質を合成させる。これら2つの遺伝子はCMV又はHTLVプロモーターのような強力なプロモーターの制御下に置かれる。あるいは、当業者であれば容易にヒト網膜、角膜又は網膜色素上皮細胞において活性があるとして知られている他のプロモーターを採用できるであろう。このようなやり方で、以下に記載するそれぞれの潜在的治療遺伝子は、形質導入された細胞が同時に標識されることと対象の治療遺伝子の発現とが可能となるように、標識遺伝子(例えば、促進緑色蛍光遺伝子−eGFP遺伝子)と結合することができる。標識された細胞は容易にイン・ビトロにおいて単離でき、また、イン・ビボにおいて観察することができる。当業者にとって促進緑色蛍光タンパク質遺伝子以外のレンチウイルス・ベクターに取り込むことができることは容易に理解できるであろう。遺伝子工学及びクローニング分野の平均的科学者の技術レベルは近年かなり増加しているので、この技術分野の通常の技術を有するものは、ここで開示されるものに加え対象となる他の治療遺伝子を含んだレンチウイルス・ベクターを容易に構築することができるであろう。さらに、ここに開示されたレンチウイルス・ベクター系は遺伝性眼疾患又は他の疾患を有する患者に欠如していることが知られている遺伝子を導入することができる。この系によるこれらの遺伝子のヒト眼細胞又は他の組織に対する導入は、様々な疾患を有する患者に対する有効な治療の基本を形成する。
【0020】
ここで記載されている基本的な発見は、レンチウイルス・ベクターは異常眼内増殖を是正させる多種の遺伝子を導入することができ、それにより、新生血管疾患、網膜剥離又はポスト・レンズ摘出後嚢混濁の発生を減少させることできることを示す。多くの治療遺伝子がイン・ビボで眼内細胞分裂を阻害することで治療を行う状況で有用なものとなる可能性がある。これらの遺伝子には新血管成長(アンジオジェネシス)又はアポトーシスの過程に対する調節物として近年同定された多くのものが含まれる。レンチウイルス媒介遺伝子導入によるこれらの調節物発現の遺伝子的制御は、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症(ROP)、又は、増殖糖尿病網膜症(PDR)のような、眼内新生血管疾患の治療に有効であることが証明されたと考えられる。
ここで開示されているレンチウイルス・ベクターは治療用のセッティングに適用できる。
【0021】
血管内皮細胞は脈管形成及び血管形成の中心的役割を果たす。これらの細胞は様々なタンパク質サイトカイニンに対してマイトジェン的に応答する(細胞分裂又は細胞移動に関して活性を持つようになる)。例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオジェニン(angiogenin)、アンジオポイエチン(angiopoitin)−1(Ang1)及びアンジオトロピン(angiotropin)は内皮細胞分裂、移動及び細胞−細胞接着を刺激し、よって血管形成に有利なサイトカイニンである。エンドスタチン、可溶(デコイ)VEGF受容体(sflt)及びトロンボスポンジンは血管形成を阻害させる内在タンパク質サイトカイニンである。本発明により、レンチウイルス・ベクターによって伝達されたこれら抑制性タンパク質の多くが眼内血管新生に有効であることが示された。本発明のレンチウイルス・ベクターに取り込むことのできる遺伝子には、それに制限されるものではないが、以下の遺伝子が含まれる:
【0022】
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMPs)はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)の自然の阻害物である偏在するタンパク質のファミリーを表す。マトリックスメタロプロテイナーゼは、がんの侵入、血管新生及びがんの転移の本質的ステップである、転移結合組織マトリックスの改造及び細胞外マトリックス(ECM)の分解に関連する亜鉛結合エンドペプチターゼの一群であり。MMPsはそれぞれECMの中の特異的な異なった基質を有し、その分解において重要なものである。ヒト乳腺の病気におけるMMPsの分析によってはEMCの分解に関連するいくつかのMMPsが示された:コラーゲナーゼ(MMP1)は原繊維間質コラーゲンを分解する;ゼラチナーゼ(MMP2)は主にタイプIVコラーゲンを分解する;ストロメライシン(MMP3)は広範な機能を有する(ブラムホール(Bramhall)ら、1996、1997)。TIMPファミリーには4つのメンバーが存在する。TIMP−1及びTIMP−2はMMP阻害活性に関連しているがんの成長、侵入及び転移を阻害することができる。さらに、TIMP−1及びTIMP−2の両方とも血管形成に関連する。TIMPファミリーの他のメンバーはこれと異なり、TIMP−3はECMのみに見出され、最終的な分化のマーカーとして機能している可能性がある。最後に、TIMP−4は細胞外マトリックスホメオスタシスにおいて組織特異的なやり方で機能するものと考えられる(ゴメス(Gomez)ら、1997)。
【0023】
TIMP−1
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤−1(TIMP−1)は、メタロプロテイナーゼインヒビター1、繊維芽細胞コラーゲナーゼインヒビター、コラーゲナーゼインヒビター、赤芽球ポテンティアティング活性化物(EPA)としても知られている23kDタンパク質である。TIMP−1をコードする遺伝子はドチェルティ(Docherty)ら(1985)によって記載された。TIMP−1は不可逆的不活性化の原因となるメタロプロテイナーゼ(コラーゲナーゼのような)と複合体を形成する。TIMP−1の効果はトランスジェニックマウスのモデルで調査されてきた:一つは肝臓における過剰発現であり、もう一つは肝細胞がんの遺伝性発生を導くウイルス性がん遺伝子シマンウイルス40/Tの発現である。ダブルトランスジェニック実験(TIMP−1系がTAgトランスジェニック系と交雑された)において、肝TIMP−1の過剰発現が成長及び血管形成を阻害することによりTAg−誘導肝細胞がんの成長を阻害することが報告されている(マーティン(Martin)ら、1996)。
【0024】
TIMP−2
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤−2(TIMP−2)は、メタロプロテイナーゼインヒビター2としても知られている24kDタンパク質である。TIMP−2をコードする遺伝子はステトラー−ステベンソン(Stetler-Stevenson)ら(1985)によって開示された。がんの侵入に重要な役割を果たすメタロプロテイナーゼ(MMP2)はTIMP−2によって複合され、阻害される。従って、TIMP−2はがんの転移の阻害に有効であった(ムッソ(Musso)ら、1997)。B16F10マウス黒色腫細胞(高度侵入性及び転移性細胞系)を、ヒトTIMP−2をコードするプラスミドによってトランスフェクトし、マウスに皮下注射した場合に、イン・ビボにおいてTIMP−2の過剰発現ががんの成長及び新生血管形成(ネオアンジオジェネシス)を制限した(バレンテ(Valente)ら、1998)。
【0025】
TIMP−3
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤−3(TIMP−3)は、メタロプロテイナーゼインヒビター3としても知られている。乳がん及び悪性黒色腫細胞系をTIMP−3プラスミドでトランスフェクトし、ヌードマウスに皮下注射した時に、がん細胞の成長が抑制されるのが観察された(アナンド−アプテ(Anand-Apte)ら、1996)。しかしながら、TIMP−3の過剰発現はイン・ビトロの2つの細胞系の成長に対して何も効果を示さなかった。従って、がん細胞に近接するECMに対して放出されたTIMP−3がECMとは隔離された増殖因子の放出の抑制、又は、血管形成の阻害によってがんの成長を阻害することが示唆された(アナンド−アプテ(Anand-Apte)ら、1996)。
【0026】
TIMP−4
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤−4(TIMP−4)は、メタロプロテイナーゼインヒビター4としても知られている。TIMP−4遺伝子及び組織分布はグリーン(Green)ら(1996)によって記載された。生化学的研究により、TIMP−4はTIMP−2と同様にヒトグルタチナーゼAに結合することが示された。イン・ビボのヒト乳がんの成長に対するTIMP−4調節の効果がワン(Wang)ら(1997)によって調査された。TIMP−4の過剰発現はイン・ビトロで細胞侵入を阻害することが見出され、イン・ビボにおいてTIMP−4がん細胞トランスフェクトをヌードマウス注射した後にがんの成長が有意に減少した(ワン(Wang)ら、1997)
【0027】
エンドスタチン、アンジオスタチン、PEX、クリングル−5、及び、融合遺伝子
フォークマン(J. Folkman)及び彼の共同研究者(ボーエン(Boehm)ら、1997)は、ルイス肺がんを持ったマウスをエンドスタチン+アンジオスタチンタンパク質の組み合わせで処理すると、がんの完全な退化を誘発し、マウスは残りの一生を健康的な状態を維持することを示した。この効果は、エンドスタチン単独ではがんの休止を誘発するのに6サイクルを要するにもかかわらず、エンドスタチン+アンジオスタチン処理ではわずか1サイクル(25日)後に獲得された。
ハナハン(D. Hanahan)及び共同研究者(ベルガーズ(Bergers)ら、1999)は、マウスモデルにおいて、エンドスタチン+アンジオスタチンタンパク質の組み合わせはランゲルハンス島がんに対して非常に優れた抗腫瘍があることを示した。エンドスタチン+アンジオスタチンタンパク質の組み合わせは、エンドスタチン又はアンジオスタチン単独では何も効果を有していないにもかかわらず、結果的にがんを有意に退化させた。
【0028】
エンドスタチンXVIII
ヘマンジオエンドセリオーマ(hemangioendothelioma)によって生産される血管形成阻害剤であるエンドスタチン(endostatin)はオーレイリー(O'Reilly)ら(1997)によって最初に確認された。エンドスタチンは内皮増殖を特異的に阻害するコラーゲンXVIIIの20kDのC末端断片であり、血管形成及び腫瘍増殖に対して有効な阻害を行うものである。実際に、初期の腫瘍が組換えエンドスタチンの投与後、休眠した、顕微鏡レベルの障害にまで退化させることが示されている(オーレイリー(O'Reilly)ら、1997)。エンドスタチンは増殖因子信号を含むヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合することにより、血管形成を阻害することが報告されている(ゼッター(Zetter)、1998)。
【0029】
エンドスタチンXV
最近、コラーゲンXVのC末端断片(エンドスタチンXV)がエンドスタチンXVIIIと同様に、しかしいくつかの機能的差異を持って、血管形成を阻害することが示された(ササキ(Sasaki)ら、2000)。
【0030】
アンジオスタチン
第1の4クリンングル構造の一つを含むプラスミノーゲンであるアンジオスタチン(angiostatin)は、今日までに文書で明らかにされた最も強力な血管形成阻害剤の一つである。アンジオスタチンの組織だった投与はイン・ビボにおいて悪性グリオーマの成長を効果的に抑制することが示されている(キルッシュ(Kirsch)ら、1998)。アンジオスタチンは、従来の放射線療法と組み合わせると、イン・ビボで毒性作用の増加無しにより多くの腫瘍を根絶した(マウセリ(Mauceri)ら、1998)。他の研究では、レトロウイルス及びアデノウイルスが媒介したアンジオスタチンcDNAの遺伝子導入は、イン・ビトロで内皮細胞成長を阻害し、イン・ビボで血管形成を阻害した。腫瘍誘導血管形成の阻害は腫瘍細胞の死滅を増加させる(タナカ(Tanaka)ら、1998)。マウスアンジオスタチンをコードするcDNAのマウスT241線維肉腫細胞に対する遺伝子導入は、初期及び転移性腫瘍をイン・ビボで抑制することが明らかにされている(カオ(Cao)ら、1998)。
【0031】
PEX
PEXは、血管形成及び腫瘍増殖に要求される細胞表面コラーゲン結合活性を遮断するインテグリン・アルファVベータ3に対するMMP−2の結合を阻害するMMP−2のC末端ヘモペキシンドメインであり、ブルックス(Brooks)ら(1998)によってクローン化され、開示された。
【0032】
クリングル−5
アンジオスタチンの4クリングルと高い配列相同性を有する、ヒトプラスミノーゲンのクリングル−5ドメインは内皮細胞増殖の特異的な阻害剤であることが報告されている。クリングル−5は毛細血管内皮細胞増殖刺激塩基性繊維芽細胞増殖因子の阻害において、アンジオスタチンよりも強力であると考えられる(カオ(Cao)ら、1997)。それ自身の抗増殖特性に加え、クリングル−5はアンジオスタチンと同様に、選択的に内皮細胞に影響を及ぼす抗移動活性も示す(ジ(Ji)ら、1998)。
【0033】
アンジオスタティック融合遺伝子
新規なアンジオスタティック融合遺伝子がリンカーとしてエラスチンペプチドモチーフ(Val−Pro−Gly−Val−Gly)を使用してクローニングできる。これらの融合物は腫瘍血管形成の抑制力を増加させるために2つの高いアンジオスタティック効果を示す遺伝子を組み合わせたものである。これらの分子は異なった機構により作用するので、それらの組み合わせは相互作用効果を生み出す。アンジオスタチン融合タンパク質の例としては、それに限定されるものではないが、エンドスタチン18及びアンジオスタチン(endo/ang)、エンドスタチン18及びプラスミノーゲンのクリングル5(endo/k5)、並びに、インターフェロン・ガンマ誘導モノカイン及びインターフェロン・アルファ誘発性タンパク質(MIG/IP10)の融合物が挙げられる。
【0034】
ケモカイン
ケモカインは白血球の走化性を引き出す能力のある低分子量前炎症性サイトカインである。考えられるケモカインに依存して、化学誘引はある型の白血球に対して特異的である。腫瘍内でのケモカイン遺伝子の発現は、白血球の抗腫瘍活性能力の強化効果を導く可能性がある。さらに、それらの走化性活性に加え、いくつかのケモカイン類は抗血管新生活性を有する:それらは、腫瘍に栄養を与える血管の形成を阻害する。この理由のため、これらのケモカインはがん治療に有効なものである。
【0035】
MIG
インターフェロンγにより誘導されるモノカインであるMigは、IP−10と関連するCXCケモカインであり、単球によって生産される。Migは活性化T細胞に対する化学誘引物質であり、また、強力なアンジオスタティック特性を有する。Migの腫瘍内注射は腫瘍ネクローシスを誘導する(スガダリ(Sugadari)ら、1997)。
【0036】
IP−10
インターフェロンα誘導可能タンパク質10であるIP−10は、CXCケモカインファミリーの一員である。IP−10は主に単球によって生産されるが、T−細胞、繊維芽細胞及び内皮細胞によっても生産される。IP−10は、T−細胞、単球及びNK細胞のようなリンパ球に対して走化性を発揮する。IP−10は血管形成の強力な阻害剤でもある:それは内皮細胞の分化を抑制することによって血管新生を阻害する。免疫細胞に向う走化性のため、IP−10は抗腫瘍免疫反応を高める、優れた候補者と考えられた。腫瘍細胞内にIP−10の遺伝子導入を行うとそれらの腫瘍化を減少させ、長期の防御免疫反応を引き出した(ラスター及びレーダー(Luster and Leder)、1993)。IP−10のアンジオスタティック活性はまた腫瘍退化を仲介することが示された:IP−10を発現する腫瘍細胞はイン・ビボで懐死性となった(スガダリ(Sgadari)ら、1996)。IP−10は腫瘍の退化を導くIL−12の血管静止効果を仲介することが示された(タンネンバウム(Tannenbaum)ら、1998)。
【0037】
可溶性VGEF受容体
FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)は、膜結合性のVEGF受容体(VEGF受容体1)である。FLT−1の可溶性断片(sFLT−1)はVEGFに対するアンタゴニスト活性によりアンジオスタティック特性を有する。可溶性FLT−1はVEGFに結合することによって作用するだけではなく、結合によって膜結合FLT−1の外部ドメインを妨害することによっても作用を及ぼす(ケンダル及びトーマス(Kendall & Thomas)1993、ゴールドマン(Goldman)ら、1998)。sFLT−1の一例はFLT−1の外部の7免疫グロブリン様ドメインに渡るヒトsFLT−1である。
【0038】
sFLK−1/KDR
FLK−1又はKDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)は膜結合性のVEGF受容体である(VGEF受容体2)。恐らく、それがVEGFに結合するためだけではなく、結合によって膜結合KDRの外部ドメインを妨害するため、KDRの可溶性断片(sKDR)はVEGFに対するアンタゴニスト活性によりアンジオスタティック特性を有する(ケンダル及びトーマス(Kendall & Thomas)1996、ミラー(Millauer)ら、1994)。sKDRの一例はKDRの外部の7免疫グロブリン様ドメインに渡るヒトsKDRである。
【0039】
アポトーシス
アポトーシスとはプログラム細胞死又は細胞自殺の過程を記載するために用いられる用語である。この過程は、多細胞性器官の成長及び健康維持の正常な構成要素である。アポトーシスの異常な制御は、がんから自己免疫疾患までの様々な病理学上の障害に関与するものである。
【0040】
BIK
BikはBcl−2関連キラー、アポトーシス誘導NBK、BP4、及びBIP1としても知られている18kD(160アミノ酸)の強力前アポトーシスタンパク質である。Bikはbik(又はnbk)遺伝子によってコードされている。Bikの機能は、Bcl−XL、BHRF1、Bcl−2、又は、そのアデノウイルス相同E1Bタンパク質のような様々なアポトーシスリプレッサーと複合体を形成することによって、プログラム細胞死を加速させることにある。一過性トランスフェクションの研究においては、BikはBcl−2ファミリーの前アポトーシスメンバーであるBax及びBakと同様なやり方でプログラム細胞死を促進させた(ボイド(Boyd)ら、1995)。
【0041】
BAK
Bcl−2と相同のBakは、前記のBikについて述べたのと同じように、Bcl−2及びBcl−XLを含む抗アポトーシスファミリーメンバーに結合し、それらの活性を阻害することにより、アポトーシスを促進する前アポトーシスタンパク質である(チッテンデン(Chittenden)ら、1995)。
【0042】
Bax
Baxはアポトーシスの調節物として機能する21kDタンパク質である。BaxはアポトーシスリプレサーBcl−2と二量化し、相殺することによりプログラム細胞死を加速させる。これらのタンパク質二量体の比率がアポトーシスの開始と関係していると考えられる。K562赤白血病細胞における組換えBax発現の効果がコバヤシ(Kobayashi)ら(1998)によって調査された。BaxベクターによるK562細胞へのトランスフェクションは、アポトーシスを誘導する結果となった。さらに、Baxで安定的にトランスフェクトされた細胞は化学療法剤ara−X、ドキソルビシン、及びSN−38に対してより高い感受性を示した(コバヤシ(Kobayashi)ら、1998)。
【0043】
BAD
Badタンパク質(Bcl−2結合成分6、bad遺伝子又はbbc6又はbcl218)は細胞死を促進する小規模タンパク質(168アミノ酸、18kD)である。Bcl−XL及びBcl−2に対しての結合が効果的に競合することにより、これらの2つのタンパク質とBaxとのヘテロダイマー化のレベルに影響を及ぼす。これは、Bcl−XLの死リプレッサー活性を逆にすることができるが、Bcl−2の活性を逆にすることができない。
【0044】
BCL−2
B細胞白血病/リンパ腫−2(Bcl−2)は細胞死調節タンパク質のファミリーの原始型メンバーである。Bcl−2は主にミトコンドリアで見出され、カスパーゼの活性化を妨害することでアポトーシスの進行を阻止する。腫瘍細胞へのBcl−2遺伝子導入が、それらの転移ポテンシャルを高めることが示された(ミヤケ(Miyake)ら、1999)。Bcl−2遺伝子導入は、Bcl−2が放射線照射を受けたものの再構成の後に造血幹細胞の生存を高めることから、骨髄移植に適用できる可能性がある(アイネス(Iness)ら、1999)。また、ニューロンにおけるBcl−2の発現により、それらをアポトーシスから保護するので、Bcl−2遺伝子導入は神経退化性疾患に有効であると考えられる(サイレ(Saille)ら、1999)。
【0045】
BCL−XS
Bcl−XS(ショートアイソフォーム)はBcl−2及びBcl−XLの優性ネガティブリプレサーである。これはBcl−2及びBcl−XLを発現した腫瘍におけるアポトーシスを開始させる遺伝子治療実験に用いられてきた。Bcl−XLの発現は腫瘍の大きさを減少させ(エアロベガ(Ealovega)ら、1996)、腫瘍細胞を化学療法剤に対して敏感にさせ(スマトラン(Sumatran)ら、1995)、これらはBcl−2又はBcl−XLを発現した腫瘍における細胞死を開始するBcl−XSの役割を示唆している(ドール(Dole)ら、1996)。
【0046】
GAX
Gaxはp21に依存する方法で細胞増殖を阻害する転写因子をコードするホメオボックス遺伝子である。Gaxは細胞が増殖するように刺激された時にダウンレギュレーションを行う。Gaxの過剰発現は、マイトジェン活性細胞においてBcl−2ダウンレギュレーション及びBaxアップレギュレーションを導く(ペルマン(Perlman)ら、1998)。したがって、Gaxはある腫瘍細胞の成長を阻害するのに有効である可能性がある。さらに、血管平滑筋におけるGaxの過剰発現はそれらの増殖を阻害する(ペルマン(Perlman)ら、1998)。したがって、Gax遺伝子導入は、血管障害後の血管狭窄症を制限することができるであろう。
【0047】
がん抑制遺伝子
がん抑制遺伝子の様々な突然変異が異なったタイプのがんと関連づけられてきた。これらの場合において、野生型のがん抑制遺伝子の体細胞遺伝子治療が、抗がん治療方法として観察されてきた。p16、p21、p27及びp53はサイクリン依存性キナーゼに作用することにより細胞周期を阻害する。
【0048】
P16
15kDタンパク質(148アミノ酸)のP16はCDK4、IP16−INK4、P−16INK4A又は多重がんサプレッサー1(MTS1)としても知られているものである。P16はcdkn2a又はcdkn2遺伝子によりコードされている。P16はサイクリン依存性キナーゼ4及び6とヘテロダイマーを形成し、それにより、それらのサイクリンDとの相互関係をイン・ビトロ及びイン・ビボの両方で妨害する。したがって、P16は正常な細胞の増殖に対する負の調節物として作用する。P16(cdkn2)突然変異は広範囲の組織における腫瘍の形成に関連している。cdkn2は高い比率の腫瘍細胞系、並びに、黒色腫及び胆汁管、すい臓及び胃の腫瘍を含むいくつかの初期腫瘍において、ホモ接合的に欠損、変異、あるいは別に不活性化される(バイデン(Biden)ら、1997;カステラノ(Castellano)ら、1997)。p16IKN4a遺伝子発現の欠如は、中皮腫及び他の細胞系で一般的に観察される。中皮腫細胞への発現アデノウイルスによるp16NK4aの形質導入は、形質導入された細胞の成長を減少させ、細胞死を導く結果となった(フリゼル(Frizelle)ら、1998)。さらに、内因性p16/CDKN2遺伝子を発現していない3つのヒトグリオーマ細胞系(U251 MG、U−87 MG及びD54 MG)に対する野生型p16のアデノウイルス媒介遺伝子導入の結果、G0及びG1期の細胞成長を停止させた(フエヨ(Fueyo)ら、1998)。さらに、p16−INK4Aを発現していない肺がん細胞系への野生型p16−INK4Aのアデノウイルス媒介遺伝子導入は、イン・ビトロ及びイン・ビボの両方で腫瘍の増殖を阻害した(ジン(Jin)ら、1995)。したがって、腫瘍細胞における野生型P16タンパク質の回復はがん治療に有効であると考えられる。
【0049】
P21
p21はサイクリン依存性キナーゼインヒビター1(CDKN1)、黒色腫分化関連タンパク質6、及び、CDK相互作用タンパク質1としても知られているものである。p21はCIP1及びWAF1としても知られているCDKN1遺伝子によってコードされている(ハーパー(Harper)ら、1993)。p21は、p53がDNA障害に対する応答における細胞増殖の阻害剤としての役割を仲介することによる重要な中間体であると思われる。p21はサイクリン依存性キナーゼに結合し、その活性を阻害し、重要なサイクリン依存性キナーゼ基質のリン酸化を阻止し、そして、細胞周期の進行及び増殖を妨害すると思われる。p21はすべての成人ヒト組織で発現される。腫瘍細胞に対するp21遺伝子導入は、腫瘍成長の阻害に有効であると考えることができる。2つの非小規模細胞肺がん(NSCLC)細胞系に組換えアデノウイルス媒介p21遺伝子導入を行った結果、投与量依存p21誘導及びG0/G1細胞周期停止のための付随した細胞成長阻害が起こった。さらに、マウスにおけるNSCLC確立前腫瘍へのp21運搬アデノウイルスの注入は腫瘍の成長を減少させ、動物の生存数を増加させた(ジョシ(Joshi)ら、1998)。これらの結果はがん遺伝子治療に対するp21の使用を支持するものである。
【0050】
本発明において、この分野の技術範囲内における従来の分子生物学、微生物学及び組換えDNAの手法を採用することができる。このような手法は文献に完全に記載されている。例えば、マニアティス、フリッチェ及びサムブルック(Manitis, Fritch & Sambrook)「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(1982)」;「DNAクローニング:実際の研究法(DNA Cloning: A Practical Approch)」、I及びII巻(グローバー(D.N. Glover)ら、1985);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(ガイト(M.J. Gait)ら、1984);「核酸交雑(Nucleic Acid Hybridization)」(ハムス及びヒギンス(B.D. Hames & S.J. Higgins)編(1985));「転写及び翻訳(Trancription and Translation)」(ハムス及びヒギンス(B.D. Hames & S.J. Higgins)編(1984));「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」(フレッシュニー(R.I. Freshney)ら(1886);「固定化細胞及び酵素(Immobilized Cell And Enzymes)」(IRL出版、(1986);ペルバル(B. Perbal)、「分子クローニングの実際のガイド(A Practical Guide To Molecular Cloning)」(1984)を参照。
【0051】
「ベクター」とは、別のDNA部分の複製を輸送するために別のDNA部分を付着させたプラスミド、ファージ又はコスミドのようなレプリコンである。
【0052】
「プロモーター配列」とは、細胞でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3’方向)コーディング配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を定義するために、プロモーター配列はその3’末端で転写開始部位と境界を接し、バックグラウンド上で検出できるレベルの転写を開始させるのに必要な最小限の塩基及び要素を含んだ上流(5’方向)に伸びている。プロモーター配列内には、RNAポリメラーゼの結合を行うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)だけでなく、転写開始部位(通常はヌクレアーゼS1によるマッピングで定義される)がある。真核生物プロモーターはいつもではないが、しばしば「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。様々なプロモーターがベクターを操縦するために使用できる。
【0053】
細胞は、外因性及び異種DNAが細胞内に、通常はウイルス・ベクターにより、導入された場合に、これらのDNAによって「形質導入」される。形質導入DNAは細胞のゲノム内に統合(共有的に結合)するか(レンチウイルス・ベクターを使用したような場合)、或いは、統合しない。例えば原核生物、酵母、及び哺乳類動物においては、DNAはプラスミドのようなエピソーム要素において維持できる。真核生物細胞に関しては、安定して形質導入された細胞は、形質導入DNAは染色体内に統合され、それゆえ、染色体複製を通じて娘細胞に遺伝される。この安定性は、真核生物細胞が形質導入DNAを含有する娘細胞の集団からなる樹立細胞系又はクローンとなる能力によって示される。「クローン」とは単一の細胞又は有糸分裂の共通の祖先から派生した細胞の集団である。「細胞系」とは多くの世代においてイン・ビトロで安定的な成長を行うことができる初代細胞のクローンである。
【0054】
「治療遺伝子」は、望まれる表現型を与える遺伝子のことを言う。例えば、構成的活性網膜芽腫(CA−rb)遺伝子は眼内増殖を阻止するために使用され、または、遺伝子の欠損はペリフェリン遺伝子の導入により回復される。
【0055】
ここにおいて、「標識遺伝子」という用語は、異種プロモーター又はエンハンサーに付随され、構築体が組織又は細胞に導入された時に、それらの産物が容易に、かつ定量的に分析できるコーディング配列を言うものである。標識には、通常、放射性要素、酵素、タンパク質(促進緑色蛍光タンパク質のような)、又は、紫外線を照射された時に蛍光を発する化学薬品、その他が含まれる。
【0056】
本発明はレンチウイルス遺伝子導入手段による、遺伝性、或いは、増殖性失明疾患の新規な治療方法を提供するものである。したがって、本発明にはこのような疾患の治療に助けとなる遺伝子をコードしたDNA配列を運搬するレンチウイルス・ベクターが含まれる。この例は、それに制限されるものではないが、ペリフェリン遺伝子、構成的活性型のrb遺伝子及び前述の様々な治療遺伝子が挙げられる。
【0057】
本発明は、眼疾患を有する個人に対し、眼内細胞増殖を阻害する治療遺伝子を含む薬理学的有効量のレンチウイルス・ベクターを投与するステップを含む、眼疾患を有する個人における眼内細胞増殖を阻害する方法を示すものである。本発明の方法で治療することができる眼疾患の代表例としては、加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、未熟児網膜症、緑内障、及び、増殖性硝子体網膜症が挙げられる。治療遺伝子は、構成的活性型の網膜芽腫、p16遺伝子又はp21遺伝子を用いることができる。好ましくはレンチウイルス・ベクターを約10から10形質導入ユニットを嚢(capsular)、硝子体(vitreal)又は網膜下(sub−retinal)の空間に投与するものである。
【0058】
本発明は、また、眼疾患を有する個人に対し、眼内血管新生を阻害する治療遺伝子を含む薬理学的有効量のレンチウイルス・ベクターを投与するステップを含む、眼疾患を有する個人における眼内血管新生を阻害する方法を示すものである。本発明の方法で治療することができる眼疾患の代表例としては、加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、未熟児網膜症、緑内障、及び、増殖性硝子体網膜症が挙げられる。治療遺伝子は、血管形成又はアポトーシスを調節する遺伝子とすることができる。一般的に、血管形成を調節する遺伝子としては、メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、エンドスタチン、アンジオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、基質メタロプロテイナーゼ−2のC末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル−5ドメイン、エンドスタチンとアンジオスタチンの融合タンパク質、エンドスタチンとヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメインの融合タンパク質、インターフェロンγ誘導モノカイン(Mig)、インターフェロンα誘導可能タンパク質10(IP10)、MigとIP−10の融合タンパク質、可溶性FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)、及び、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)をコードする遺伝子を含み、一方、アポトーシスを調節する遺伝子には、Bcl−2、Bad、Bak、Bax、Bik、Bcl−Xショートアイソフォーム、及び、Gaxが含まれる。好ましくはレンチウイルス・ベクターを約106から109形質導入ユニットを嚢、硝子体又は網膜下空間に投与するものである。
【0059】
以下の実施例は本発明の様々な態様を示すために与えられたもので、いかなるやり方においても本発明を制限することを意味するものではない。
【実施例1】
【0060】
細胞及び組織
ヒト脈絡膜繊維芽細胞(HCF)、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト胎児網膜色素上皮細胞(HRPE)の一次外植片を作り、分裂活性を促進する、若しくは促進しないかのいずれかの状況に置かれた。安定した光受容器由来細胞(Y−79及びWeri−Rb−1)もまた培養した。
ヒト網膜及びRPEは、網膜芽腫の脱核した際に得られ、レンチウイルス・ベクターのこれらの分裂不活性細胞にたいする形質導入の能力及び外因性ヒトペリフェリントランスジーンの発現を誘導する能力を示すために用いられた。角膜移植手術の際に得られたヒト角膜がレンチウイルス・ベクターがこれらの分裂不活性細胞に標識遺伝子である促進緑色蛍光タンパク質遺伝子を形質導入する能力を示すために用いられた。
【実施例2】
【0061】
レンチウイルス・ベクター
水疱性口内炎ウイルス(VSV)エンベロープを持ち、標識として緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)を含有した3つのプラスミドに基づく偽型レンチウイルス・ベクター系を使用した(図1)。組換えレンチウイルスはナルディニ(Naldini)らの方法により作成した。サイトメガロウイルス(CMV)極初期遺伝子プロモーターはpHR’−CMV−eGFPプラスミドでeGFPの発現をもたらす。ウイルスの株は以下のように発生させた。ヒト腎臓293T細胞(5×106)が10cmプレートに播かれ、後日、D10増殖培地(10%ウシ胎仔血清を含む高濃度グルコースDMEM)及び抗生物質中でのリン酸カルシウム沈殿により、10ugのpCMV△R8.91(パッケージング機能プラスミド)、10ugのpHR’−CMV−eGFP(標識遺伝子プラスミド)、及び、2ugのpMD.G(VSV−Gエンベロープ含有プラスミド)でコトランスフェクトされた。37℃で12〜16時間後、培地は取り除かれ、新鮮なD10増殖培地が加えられた。細胞はさらに10時間培養された。10mMの酪酸ナトリウム及び20mMのHEPESバッファーを含有する新鮮D10培地が細胞に加えられ、細胞はさらに12時間培養された。新鮮培地が加えられ、その後4日間、24時間ごとに上清を回収した。ウイルス性上清は回収後直ちに−80℃で保存した。
ウイルス株は上清を室温で140分間の超遠心分離することによって濃縮され、得られたウイルスのペレットは1〜3mlのリン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁された。アリコートされたウイルス株は293細胞で力価を求め、残りのサンプルは−80℃で保存した。
全てのレンチウイルス・ベクターはフィトヘマグルニチン刺激ヒト末梢血単核細胞の感染により複製コンピテントレトロウイルス(RCR)の存在が分析され、続いてELISAによる培養培地のp24gagが分析された。RCRは生産されたどのウイルス性上澄みにおいても観察されなかった。
【実施例3】
【0062】
レンチウイルス・ベクター形質導入
2×106複製欠如レンチウイルス粒子/ml含有上清は、上記のレンチウイルス・ベクターによる293T細胞のトランスフェクションによって作られた。細胞はウイルス粒子と共に24時間培養され、蛍光標示式細胞分取によるGFP発現の決定の前に、4日間通常培地に戻された(図2〜3)。
形質導入効果は1〜1000の範囲のMOIにおける感染多重度の関数として測定された。多くのヒト細胞系におけるイン・ビトロ形質導入の結果は、レンチウイルスの数が増加するにつれてより多くの細胞が形質導入されているように、MOIと形質導入効果との間に正の相関を示した(図2)。
レンチウイルス・ベクターの非分裂細胞に対して形質導入する能力を調査した。ヒト網膜色素上皮細胞がレンチウイルス又はマウス白血病ウイルス・ベクターによって形質導入された。細胞は、ベクターにさらされた時、分裂不活性(融合)又は分裂活性(成長)であった。図4に示す結果はレンチウイルス・ベクターが他のレトロウイルス・ベクターに比べ、非分裂細胞に対して非常に高い形質導入能力を有することを示している。レンチウイルス・ベクターはまた、非レンチウイルス・レトロウイルス・ベクターに比べ、ヒト胎児細胞に対し、高い形質導入効果を示した(図6)。
eGFPトランスジーン発現の継続性を決定するために、レンチウイルス・ベクターで形質導入された細胞を120日の間試験した。形質導入された細胞のクローン集団のサザンブロット分析の結果は、レンチウイルスeGFPベクターが宿主ゲノムに統合されたことを示した(図5B)。統合されたトランスジーンの発現は120日間に渡って安定しており、形質導入された細胞に対する、選択的な有利さも、不利さも与えなかった(図5A)。
【実施例4】
【0063】
イン・シトウ(in situ)(角膜形質導入)
角膜移植の際に得られたヒト角膜ボタンをレンチウイルス・ベクターがこれら分裂不活性細胞に緑色蛍光タンパク質遺伝子で促進された標識遺伝子を形質導入した効果を示すために使用した(図7)。デスメ膜に接触する内皮細胞を形質導入された角膜組織から剥ぎ、光学及び蛍光顕微鏡で観察した。角膜上皮はeGFPに対してポジティブであり、有効な遺伝子導入と発現が達成されたことが示された(図7B)。イン・シトウ形質導入の効果及び上皮層におけるeGFPの発現も観察された(図7C)。
従って、これら結果は複製欠如レンチウイルス・ベクターは、イン・シトウでヒト角膜内皮及び上皮細胞に対してトランスジーンを効果的に導入できることを示すものである。このベクターは角膜内皮及び上皮の治療で有効であると考えられ、同種移植拒絶の過程の恒久的な調節に関する方法のように、移植前にエクス・ビボで提供者の角膜組織の遺伝子構成の修正に応用することができる。
【実施例5】
【0064】
眼性増殖疾患に対する増殖抑制治療
ヒト・ペリフェリン(peripherin)遺伝子を治療遺伝子の一例として使用した。ヒトにおけるペリフェリン遺伝子の欠如は、結果的に多様な無力化表現型となることが知られている。網膜芽腫の脱核の際に外科的に切除された正常ヒト網膜又は網膜色素上皮(RPE)組織を、治療遺伝子を欠いているか、ヒト・ペリフェリン遺伝子を含んでいるかのいずれかのレンチウイルス・ベクターにさらした。図8に示す結果は、ペリフェリン遺伝子がレンチウイルス・ベクターによって有効に導入されたことを示している。
【0065】
別の治療遺伝子導入の実験には、構成的活性型の網膜芽腫遺伝子(CA−rb)が使用された。ここで開示されるレンチウイルス・ベクターは構成的活性型の網膜芽腫遺伝子の有効な導入を媒介した(図9)。導入されたCA−rb遺伝子はヒト網膜及び脈絡膜細胞(図10)並びにヒトレンズ上皮細胞(図11)の増殖に対して、量依存性阻害効果を示した。
レンチウイルス・ベクターにより導入された構成的活性型の網膜芽腫遺伝子はまた、イン・ビボで眼内細胞増殖を阻害する。2つの眼内増殖性疾患のモデル(増殖性硝子体網膜症及びポスト・レンズ摘出後嚢混濁)をイン・ビボで試験を行った。増殖性硝子体網膜症が3組のウサギで誘導された(図12)。1つの組は処理を行わないものであり、別の1組は構成的活性網膜芽腫遺伝子を欠いたレンチウイルス・ベクターで処理したものであり、残りの1組は硝子体内由来のレンチウイルスCA−rbで処理されたものである。増殖性硝子体網膜症及び網膜剥離は、最初の2組において高い頻度(>90%)で現れているが、一方、網膜剥離に至った動物の割合は、CA−rbで処理した組において有意に低下した(26%)。
【0066】
図13に表された結果は、ポスト・レンズ摘出後嚢混濁の過程におけるレンチウイルスCA−rbのイン・ビボにおける阻害効果を示している。3組のウサギが生まれつきのレンズを除去して標準的な水晶体混濁を生じさせた。第1の組(グループ1)はその後何も処理されず、残りの2組は空のレンチウイルス構築体(治療遺伝子無し、グループ2)又はレンチウイルスCA−rb(グループ3)を白内障の傷が閉塞する際に、傷のないレンズ嚢バックに伝達する処理を行った。動物を順次後嚢混濁が存在するかどうか調査した。混濁の存在は、1が混濁の無いものを表し、5が間接双眼検眼鏡による検査により網膜の視覚化を妨げるのに十分な重度の混濁を表す、1〜5の各段階で表された。グループ1及び2(未処理及び空ベクター)の間で結果に有意な差は存在しなかったが、一方、後嚢混濁の発生に対するレンチウイルスCA−rbの著しい阻害効果が観察された。28日目において、コントロールの動物は平均混濁段階が4.4であり、一方、レンチウイルスCA−rbで処理した動物では平均混濁段階が2.1であった。
【実施例6】
【0067】
「2遺伝子」レンチウイルス・ベクター
2つのクローニング部位の間にIRES(内部リボソームエントリー部位)要素を取り込んだ新規なレトロウイルス・ベクターを構築した。IRES要素はmRNA−リボソーム結合及びタンパク質合成を可能にする。このバックボーンは2つの発現可能な遺伝子を収容できる。形質導入された細胞では単一のメッセージが造り出される;しかしながら、IRES要素のため、このメッセージは機能的に2遺伝子的なものであり2つの異なったタンパク質の合成を行わせる。このようなやり方で、上記に記載のそれぞれの潜在的治療遺伝子は、形質導入された細胞が同時に標識と対象の治療遺伝子の発現が可能となるように、標識遺伝子(例えば、促進緑色蛍光遺伝子−eGFP遺伝子)と結合することができる。標識された細胞は容易にイン・ビトロにおいて単離でき、また、イン・ビボにおいて観察することができる。様々な治療遺伝子を運搬する多くのレンチウイルス・ベクターの遺伝子マップを図15〜31に示す。遺伝子工学及びクローニング分野の平均的科学者の技術レベルは近年かなり増加しているので、この技術分野の通常の技術を有するものは、ここで開示されるものに加え対象となる他の治療遺伝子を含んだレンチウイルス・ベクターを容易に構築することができるであろう。
【実施例7】
【0068】
抗血管新生遺伝子治療
天然の細胞(治療遺伝子を発現しないことが知られている細胞)を前述のレンチウイルス・ベクターにさらした。ベクターにさらした2日後、これらの細胞からRNAを分離し、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)によって、トランスジーン発現を検査した。図32は、ヒト皮膚毛細血管内皮細胞から分離されたmRNAからのエンドスタチン−18/アンジオスタチン融合遺伝子に対してポジティブなRT−PCR産物を示す。
上記のイン・ビトロレンチウイルス・ベクター媒介遺伝子導入の後、イン・ビボの血管新生を阻害する能力を調査した。以下のようなやり方で、ウサギ角膜組織に血管新生を誘導した:
【0069】
角膜ストローマ内マイクロポケットの創出及びレンチウイルス含浸ナイロンメッシュの挿入
ウサギはマスキングを用いたイソフルオラン(Isofluorane)(4 L/Min)及び酸素(2 L/Min)により通常の麻酔をされた。プロパラカイネ(Proparacaine)を一滴、局部麻酔のため脳弓にたらした。イソフルオランを2.5 L/Minに減少させた。ベータダイン(Beradine)を脳弓に30秒間置き、BBS(平衡塩類水溶液、アルコン(Alcon)社)ですすいだ。リドスペクラウムを目においた。2.8mmマイクロケラトーマを角膜ストローマに12時の方向に挿入するのに使用した。このストローマ内の切り口はマックフェルソン(McPherson)鉗子及びアイリッシュスイープ(Irish Sweep)器機を使用して前後に掃くことによって、5×5mmポケットに広げた。12時の切り口はバンナ(Vannas)はさみによって両サイドに4.5mmに開かれた。10μLのレンチウイルスを含浸させた4×4mmアメルシャム(Amersham)交雑ナイロンメッシュ(アメルシャム・バイオサイエンティストRPN2519)を先に形成したポケットに挿入した。1滴のトブラマイシンが角膜にたらされた。イソフルオランを中止し、鼻入酸素量を4L/Minにした。このようなやり方で、20分後にウサギは問題なく麻酔から覚め、通常の不可欠な機能を持ったままかれらのケージに戻された。ウサギには2日間、無覚性を指示するためブプレネックス(buprenex)(.3mg/cc)が与えられた。ウサギにはまた、手術後の毛様体筋麻痺及び抗生物質のケアのため、2日間一滴のアトロピン及び一滴のトブラマイシンが与えられた。手術の1日後それぞれのウサギは、局部麻酔のため一滴のプロパラカイネを与えられ、.12鉗子によって角膜ストローマ内ポッケトからナイロンメッシュが取り除かれた。2週間にわたり毎日、手術後の痛みの制御とケアについて監視を行った。
【0070】
アルカリ誘導血管新生
最初の手術から2週間後、角膜は20μlの1.0M NaOHで飽和されたワットマン(Whatman)#3フィルター板に1分間当てられた。全ての角膜は多量のBBSで洗浄された。ウサギには、手術後の毛様体筋麻痺及び抗生物質のケアのため、2日間一滴のアトロピン及び一滴のトブラマイシンが与えられた。新血管応答を記録するために、デジタル光文書化が行われた。新血管応答を外傷を与えた後1,3,5,7及び10日に、時間と血管の長さを記録するスリットランプ試験により測定した。血管新生は、以下の記載のように血管成長の範囲を計算することで定量化した。
【0071】

【0072】
角膜の血管新生を評価する標準的な方法は、以下のプロトコル及び式を記録するために工夫をし、アルカリやけど(burn)後の血管新生と比較することである。血管新生の範囲を示す式は半径RTで囲まれた大きな区域の範囲を計算し、半径R2で囲まれた小さな範囲を引くことによって得られる。半径RTで囲まれた大きな区域の範囲は12で割られた時計の時間にあたる数をπRT2で掛けたものである。半径R2で囲まれた大きな区域の範囲は12で割られた時間にあたるの数をπ(R2)2で掛けたものである。2つの区域を引いて残った範囲が血管新生の範囲である。
【0073】
レンチウイルス・バイシストロン・メッセージを含む標識遺伝子の促進緑色蛍光タンパク質の発現を文書化するために、共焦点顕微鏡観察を行った。図33はレンチウイルス・ベクターで処理された動物における角膜マイクロポケット内でのeGFPの存在を示す光学顕微鏡写真である。
【0074】
血管新生の阻害効果を示すために、上記の動物に血管新生を誘導した。Mig/IP10融合遺伝子を含むレンチウイルス・ベクターによる処理の後阻害効果が確認された。表1に示すように、レンチウイルス・ベクターを用いてMig/IP10融合遺伝子またはクリングル1−5遺伝子で処理された動物において、血管新生の有意な減少が確認された。
【0075】
【表1】

【0076】
この明細書に記載された特許及び文献は本発明が属する技術分野の通常の知識を有する人の水準を示すものである。さらに、これらの特許及び文献は、個々の文献が特にまた個々に参照することによって取り込まれることが記載されているのと同じ範囲で参照することによって取り込まれる。
【0077】
当業者は、ここに本来備わっている目的、結果及び利点と同じように、目的に応じて実行し、記載された結果及び利点を容易に得ることを理解されるであろう。好ましい態様の代表例としてここに記載された方法、手順、処理、分子、及び特異的な化合物を伴った本発明の実施例は、例示されたものであり、発明の範囲の限定を意図するものではない。その点の変化及び他の使用は、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神の範囲内において当業者が考え付くものである。
【0078】
上記記載の側面、特徴及び利点は、これから明らかになる他のものを含め、添付の図面に示される実施態様を参照することにより、達成し、詳細に理解できるように、発明の要旨をより詳細に記載している。これらの図面は明細書の一部を形成する。しかしながら、添付の図面は本発明の好ましい実施態様を記載したものであり、したがって発明の範囲を制限するものでないことを特記する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人における角膜の疾病を治療するための組成物であって、該組成物が、第1の治療遺伝子を含む組み換えのレンチウイルス・ベクターを薬理学的有効量含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
角膜の疾病が、角膜の血管新生(neovascularization)に関連した疾病であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
角膜の血管新生が、眼内の角膜の血管新生であることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項4】
角膜の疾病が、アルカリやけど(alkali burn)であることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項5】
角膜の疾病が、角膜細胞のアポトーシスに関連した疾病であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
対象がヒトであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
治療遺伝子が、ヒトの角膜細胞において活性であると知られているプロモーターに有効に結合されることを特徴とする請求項6記載の組成物。
【請求項8】
第1の治療遺伝子が、メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、アンジオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、クリングル1−5、PEX、基質メタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、インターフェロンγ誘導モノカイン(Mig)、インターフェロンα誘導可能タンパク質10(IP10)、可溶性FLT−1(fms−様チロシン・キナーゼ1受容体)及びキナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)から成るグループから選ばれる第1のポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
組み換えレンチウイルス・ベクターが、さらに血管形成(angiogenesis)を阻害する第2のポリペプチドをコードする第2の治療遺伝子を含み、前記第1の治療遺伝子は第2の治療遺伝子とは異なることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項10】
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、アンジオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、クリングル1−5、PEX、基質メタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、Mig、IP10、可溶性FLT−1及びKDRから成るグループから各々選ばれることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
第1のポリペプチドがMigであり、第2のポリペプチドがIP10であることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項12】
第1のポリペプチドがエンドスタチンXVIIIであり、第2のポリペプチドがアンジオスタチンであることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項13】
第1のポリペプチドがエンドスタチンXVIIIであり、第2のポリペプチドがヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメインあることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項14】
レンチウイルス・ベクターが、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとが単一の転写物によってコードされるような、第1の治療遺伝子と第2の治療遺伝子の間に内部リボソーム・エントリー・サイト(IRES)要素を含むことを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項15】
レンチウイルス・ベクターが、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードすることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項16】
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの間にリンカーをさらに含むことを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項17】
リンカーが、エラスチン・ペプチドリンカーであることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項18】
第1の治療遺伝子が、Bcl−2、Bad、Bak、Bax、Bik、Bcl−Xショートアイソフォーム及びGaxから成るグループから選ばれた第1のポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項5記載の組成物。
【請求項19】
第1の治療遺伝子及び第2の治療遺伝子が、ヒトの角膜の上皮細胞において活性であると知られている2つの離れたプロモーターの制御下にあることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項20】
組み換えレンチウイルス・ベクターで形質導入された細胞を含む角膜のボタンであって、前記組み換えレンチウイルス・ベクターが、角膜細胞において活性であると知られているプロモーターに有効に結合される第1の治療遺伝子を含むことを特徴とする角膜のボタン。
【請求項21】
角膜のボタンが、ヒトの角膜のボタンであることを特徴とする請求項20記載の角膜のボタン。
【請求項22】
第1の治療遺伝子が、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、アンジオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、クリングル1−5、PEX、基質メタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、Mig、IP10、可溶性FLT−1及びKDRから成るグループから選ばれる第1のポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項20記載の角膜のボタン。
【請求項23】
組み換えレンチウイルス・ベクターが、さらに血管形成を阻害する第2のポリペプチドをコードする第2の治療遺伝子を含み、前記第1の治療遺伝子は第2の治療遺伝子とは異なることを特徴とする請求項20記載の角膜のボタン。
【請求項24】
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、アンジオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、クリングル1−5、PEX、基質メタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、Mig、IP10、可溶性FLT−1及びKDRから成るグループから各々選ばれることを特徴とする請求項23記載の角膜のボタン。
【請求項25】
第1のポリペプチドはMigであり、第2のポリペプチドがIP10であることを特徴とする請求項24記載の角膜のボタン。
【請求項26】
第1のポリペプチドがエンドスタチンXVIIIであり、第2のポリペプチドがアンジオスタチンであることを特徴とする請求項24記載の角膜のボタン。
【請求項27】
第1のポリペプチドがエンドスタチンXVIIIであり、第2のポリペプチドがヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメインあることを特徴とする請求項24記載の角膜のボタン。
【請求項28】
形質導入された角膜上皮細胞を含むことことを特徴とする請求項20記載の角膜のボタン。
【請求項29】
形質導入された角膜内皮細胞を含むことことを特徴とする請求項20記載の角膜のボタン。
【請求項30】
個人における角膜の疾病を治療するためのドラッグ・デリバリーデバイスがメッシュ要素を含み、該メッシュ要素は請求項1〜17に記載のいずれかの組成物を含浸していることを特徴とするドラッグ・デリバリーデバイス。
【請求項31】
メッシュ要素が、さらにナイロンメッシュ要素であるとして定義されることを特徴とする請求項30記載のドラッグ・デリバリーデバイス。
【請求項32】
イン・シトウ(in situ)で角膜細胞を請求項1〜17に記載のいずれかの組成物と接触させることを含むイン・シトウでの角膜細胞の形質導入方法。
【請求項33】
角膜細胞が角膜上皮細胞であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
角膜細胞が角膜内皮細胞であることを特徴とする請求項32記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33A】
image rotate

【図33B】
image rotate

【図33C】
image rotate

【図34A】
image rotate

【図34B】
image rotate

【図34C】
image rotate

【図34D】
image rotate


【公開番号】特開2009−137998(P2009−137998A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16488(P2009−16488)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【分割の表示】特願2002−551014(P2002−551014)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(591026333)リサーチ ディベロップメント ファンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH DEVELOPMENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】