説明

レーザダイオード素子の製造方法

【課題】本発明は、活性層に結晶欠陥を生じさせることなく半導体基板を割ることができるレーザダイオード素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に活性層を含む複数の半導体層を形成する工程と、該複数の半導体層の一部を、該複数の半導体層の表面から少なくとも該活性層までエッチングして分離溝を形成する工程と、該半導体基板の裏面のうち該分離溝の直下部分に、該分離溝に沿ってスクライブ溝を形成する工程と、該スクライブ溝を起点として該半導体基板を割り、該半導体基板の裏面から該分離溝の底面に至る劈開面を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業用機器などに用いられるレーザダイオード素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板(ウエハ)を割ってチップ状のレーザダイオード素子を形成する技術が開示されている。この技術は、半導体基板に溝を形成した上でその溝を起点として半導体基板を割るものである。半導体基板を割るとレーザダイオード素子の劈開面が露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−5703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオード素子は活性層を有する。特許文献1に開示の方法で半導体基板を割ると、活性層の断面を含む劈開面が形成される。劈開面にはクラックやチッピングなどの欠けが生じることがあり、この欠けは活性層に結晶欠陥をもたらすことがある。その結果レーザダイオード素子の性能が劣化することがある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、活性層に結晶欠陥を生じさせることなく半導体基板を割ることができるレーザダイオード素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係るレーザダイオード素子の製造方法は、半導体基板の表面に、活性層を含む複数の半導体層を形成する工程と、該複数の半導体層の一部を、該複数の半導体層の表面から少なくとも該活性層までエッチングして分離溝を形成する工程と、該半導体基板の裏面のうち該分離溝の直下部分に、該分離溝に沿ってスクライブ溝を形成する工程と、該スクライブ溝を起点として該半導体基板を割り、該半導体基板の裏面から該分離溝の底面に至る劈開面を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性層を含まない劈開面を形成するように半導体基板を割るので、活性層に結晶欠陥を生じさせることなくレーザダイオード素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】半導体基板の上に複数の半導体層を形成することを示す図である。
【図2】分離溝を形成することを示す図である。
【図3】電極を形成することを示す図である。
【図4】スクライブ溝を形成することを示す図である。
【図5】半導体基板を割ることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
図を参照して本発明の実施の形態に係るレーザダイオード素子の製造方法を説明する。まず、半導体基板の表面に、活性層を含む複数の半導体層を形成する。図1は、半導体基板の上に複数の半導体層を形成することを示す図である。半導体基板10はGaAsで形成する。半導体基板10の上にはバッファ層12を形成する。バッファ層12は半導体基板10と同じ組成の結晶を含む材料で形成する。
【0010】
バッファ層12の上には下クラッド層14を形成する。下クラッド層14の上には活性層16を形成する。活性層16の上には上クラッド層18を形成する。上クラッド層18の上にはコンタクト層20を形成する。このように半導体基板10の上に、活性層16を含む複数の半導体層を形成する。
【0011】
次いで、分離溝を形成する。図2は、分離溝を形成することを示す図である。分離溝22a、22bは複数の半導体層の一部を、複数の半導体層の表面から少なくとも活性層16までエッチングして形成する。図2には、コンタクト層20から下クラッド層14までエッチングして形成された分離溝22a、22bが示されている。分離溝22a、22bの底面にはバッファ層12の表面が現れている。分離溝22a、22bの幅(L)はそれぞれ30μmである。
【0012】
次いで、電極を形成する。図3は、電極を形成することを示す図である。電極24はコンタクト層20の上に形成する。電極26は半導体基板10の裏面に形成する。こうして、メサストライプ28a、28b、28cを形成する。
【0013】
次いで、半導体基板の裏面にスクライブ溝を形成する。図4は、スクライブ溝を形成することを示す図である。スクライブ溝30a、30bは、半導体基板10の裏面のうち分離溝22a、22bの直下部分に、分離溝22a、22bに沿って形成する。スクライブ溝30a、30bは、例えば先端がダイヤモンドで形成されたペンで罫書きすることで形成する。
【0014】
次いで、スクライブ溝30a、30bを基点に半導体基板10を割る。図5は、半導体基板を割ることを示す図である。スクライブ溝30a、30bを起点として半導体基板10を割り、半導体基板10の裏面から分離溝22a、22bの底面に至る劈開面を形成する。劈開が成功した場合、平坦な劈開面40aが形成される。一方、一定の確率で欠けを有する劈開面40bが生じることは避けられない。
【0015】
本発明の実施の形態に係るレーザダイオード素子の製造方法によれば、活性層16をエッチングして分離溝22a、22bを形成するので、劈開面に活性層16の断面が含まれない。従って、劈開面に欠けが生じたとしても、活性層16に結晶欠陥を生じさせることはない。また、分離溝22a、22bの幅は劈開面がメサストライプ28a、28b、28cまで到達しないように30μmに設定したため、活性層16に結晶欠陥が生じることを回避できる。さらに半導体基板10の裏面にスクライブ溝30a、30bを形成したので分離溝にスクライブ溝を設ける必要がなく、分離溝22a、22bの幅(L)を自由に設定できる。
【0016】
本発明の実施の形態に係るレーザダイオード素子の製造方法は、様々な変形が可能である。半導体基板10はGaAsに限らず、劈開性が<110>方向にあるせん亜鉛構造の結晶であれば特に限定されない。本発明の実施の形態に係るレーザダイオード素子の製造方法は、この劈開性を利用して半導体基板を割るものである。よって、例えば、半導体基板をGaPで形成してもよい。
【0017】
電極24、26は、分離溝22a、22bの形成前に形成してもよいし、スクライブ溝30a、30bの形成後に形成してもよい。電極24、26の材料としては、特に限定されないが、金、白金、チタン、モリブデン、タンタル、ニッケル等、又はこれらの多層膜を用いることができる。また、電極24、26の上に金メッキがあってもよい。
【0018】
分離溝22a、22bは、活性層16をエッチングして形成されるものであれば特に限定されない。そのため、例えば、下クラッド層14をわずかに残すようにして分離溝を形成してもよい。
【0019】
本発明の実施の形態に係るレーザダイオード素子の製造方法では、複数の半導体層(エピ層)の詳細構造の説明は省略したが、活性層を含む限り複数の半導体層の構造は限定されない。なお、活性層は、QW、MQW、SCH構造などで形成してもよい。本発明は活性層を有する全てのタイプのレーザダイオード素子に利用できる。
【符号の説明】
【0020】
10 半導体基板、 12 バッファ層、 14 下クラッド層、 16 活性層、 18 上クラッド層、 20 コンタクト層、 22a,22b 分離溝、 24,26 電極、 28a,28b,28c メサストライプ、 30a、30b スクライブ溝、 40a,40b 劈開面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に、活性層を含む複数の半導体層を形成する工程と、
前記複数の半導体層の一部を、前記複数の半導体層の表面から少なくとも前記活性層までエッチングして分離溝を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面のうち前記分離溝の直下部分に、前記分離溝に沿ってスクライブ溝を形成する工程と、
前記スクライブ溝を起点として前記半導体基板を割り、前記半導体基板の裏面から前記分離溝の底面に至る劈開面を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするレーザダイオード素子の製造方法。
【請求項2】
前記複数の半導体層は、前記半導体基板の上に形成されたバッファ層、前記バッファ層の上に形成された下クラッド層、前記下クラッド層の上に形成された前記活性層、前記活性層の上に形成された上クラッド層、前記上クラッド層の上に形成されたコンタクト層を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザダイオード素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58624(P2013−58624A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196285(P2011−196285)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】