説明

レーザプロジェクタ

【課題】レーザ・スキャン式のプロジェクタにおいて、スクリーンの凹凸とレーザ光源のコヒーレント性に起因するスペックル・ノイズを軽減し、表示品位を上げる。
【解決手段】マルチモード・レーザ光源が出力するレーザビームを走査して画像を表示するレーザプロジェクタは、表示フレームごとに、前記レーザビーム形状の2次元出力パターンが異なるように前記マルチモード・レーザ光源を駆動するレーザ駆動部を備えるようにした。前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中のレーザ光源の出力強度と出力時間の積が同一で、表示フレームごとに異なる出力強度と出力時間の駆動波形パターンを前記マルチモード・レーザ光源に印加するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じて変調されたコヒーレント光源からの光を走査させることで映像を表示する表示装置に関し、表示時のスペックル・ノイズを低減させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザプロジェクタは、例えば、図1に示されるように、3色のレーザ発光素子10,11,12からの光をコリメートレンズ20,21,22で略平行光にし、稼動するミラー50に当てて反射させ、スクリーン100上に映像を表示するように構成されている。特許文献1に、同様の構成の表示装置が記載されている。このようなコヒーレント性の高いレーザ光を用いるディスプレイでは、ランダムな斑模様が発生するスペックル現象が発生し、表示品位が低下する問題がよく知れれている。
【0003】
かかるスペックル現象を低減する為、例えば特許文献2に示されているように、光路を機械的に振動させる方法が挙げられるが、スペックルを十分に低減する為には周波数が不足して効果が小さいという問題がある。
【0004】
また、光を操作する方法の他に、特許文献3に示されているように、画像情報に応じて光変調素子によって変調された画像を拡大投影する方法も提案されている。この方法でも同じようにスペックルが課題となるが、こちらに関しては特許文献4では、一対の透明基板の間に液晶を密封したスペックル・キャンセラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−021800号公報
【特許文献2】特許04144713号公報
【特許文献3】特開平6−208089号公報
【特許文献4】特開2007−163702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に特許文献2と同様に、レーザ・ビーム全体を揺動させた場合のレーザ・ビームとスクリーンの拡大図を示す。この場合には、1つのビーム90がスクリーン100に投影された範囲内のスクリーンの凹凸を反映してスペックルが発生する。揺動前のビーム90と揺動後のビーム91とはスクリーン100上の投影範囲がずれ、長さaだけ重なっているとすると、aの範囲では凹凸の形状は変わらず、従ってスペックルも変化しない。すなわち、特許文献2による方法では、揺動の振幅が大きく、揺動前後のビームの重なりが少ないほどスペックル低減効果が大きくなるが、同時に副作用として画像のぶれが大きいという問題がある。
【0007】
本発明は、スペックルノイズを低減し、高品位の表示をおこなえるレーザプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明のマルチモード・レーザ光源が出力するレーザビームを走査して画像を表示するレーザプロジェクタは、表示フレームごとに、前記レーザビーム形状の2次元出力パターンが異なるように前記マルチモード・レーザ光源を駆動するレーザ駆動部を備えるようにした。
【0009】
より詳しくは、前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中のレーザ光源の出力強度と出力時間の積が同一で、表示フレームごとに異なる出力強度と出力時間の駆動波形パターンを前記マルチモード・レーザ光源に印加するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スペックル・パターンを時間的に変化させることで、人間の認識上で時間積分されて、スペックルノイズを見かけ上低減できるので、高品位の表示をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】ビーム全体を揺動させた場合の説明図である。
【図3(a)】マルチモードLDの2次元出力プロファイル(TEM00)の例を示す図である。
【図3(b)】マルチモードLDの2次元出力プロファイル(TEM01)の例を示す図である。
【図3(c)】マルチモードLDの2次元出力プロファイル(TEM10)の例を示す図である。
【図3(d)】マルチモードLDの2次元出力プロファイル(TEM11)の例を示す図である。
【図4】同じ強度を得るための瞬時出力と時間の組合せの例の例を示す図である。
【図5】第1の実施形態を説明する図である。
【図6】第2の実施形態を説明する図である。
【図7】第3の実施形態を説明する図である。
【図8】第4の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的にマルチモードLDの出力は波長的にも発光プロファイル的にも不安定だといわれている。図3に、出力強度によって、出現する幾つかのビーム断面の光強度分布の形状の例を示す。図中TEMxyと表示しているx、yはそれぞれX およびY 方向の強度の小さな節の数を表す。ビーム形状は、出力強度によって異なるし、ある出力が出るまでに過渡的にも変化する。
【0013】
本実施形態では、出力ビーム形状の不安定なマルチモードLD(レーザ・ダイオード)を用い、同じ輝度を得るのに、出力強度と出力時間の異なる複数の組合せをフレーム単位あるいは1ドット表示時間内に変化させてLDを駆動する事で、レーザビーム形状を変化させ、各部からの反射光の干渉を時間平均してスペックルを軽減する。以下に、詳細に説明する。
【0014】
図4に、1ドットを表示する際に同じ出力強度1を得るための瞬時出力強度と時間の例を示す。図中の時間10が1つのドットの表示時間に相当する。出力強度は瞬時出力強度と時間の積で表されるため、強度が強い場合には短い時間、強度が弱い場合には長い時間出力すればよい。それぞれの強度で異なる2次元出力パターンが生じるため、それぞれ出現するスペックル・パターンが異なる。
【0015】
例えば、この組合せをフレーム毎に変化させれば、フレームごとにレーザ出力パターンが変わるため、人間の認識上、時間平均されることでスペックルノイズが軽減して見える。
【0016】
また、動画の場合には、時間平均できないため、スペックル低減効果が小さい。このため、1つのドットをビームがスキャンしている間に2次元出力パターンがを変化させた方がスペックルノイズの低減効果が大きい。
以下図面を用いて実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
装置の全体の構成は図1に示した従来のものと同様である。第1の実施形態では、例えば、図示していないレーザ駆動回路により駆動された緑色レーザ10から発したビームは、コリメート・レンズ20によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30およびダイクロイック・プリズム31を透過して、稼動するミラー50で反射して、スクリーン100上に映像を表示する。
【0018】
同様に、赤色レーザ11から発したビームはコリメート・レンズ21によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30で反射し、ダイクロイック・プリズム31を透過して、稼動するミラー50で反射して、スクリーン100上に映像を表示する。
【0019】
さらに、青色レーザ12から発したビームはコリメート・レンズ22によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム31で反射し、稼動するミラー50で反射して、スクリーン100上に映像を表示する。
【0020】
つぎに、図示していないレーザ駆動回路の制御方法をより詳細に説明する。図5は、緑色レーザ10の1つの画素(ドット)に対応するレーザ出力をフレームごとに示した図である。レーザ出力は、1ドットの表示時間の1/10時間を単位に、レーザの瞬時出力強度を0.1単位に制御する。先に述べたように、1ドットのレーザ出力強度は、瞬時出力強度と時間の積で表されるため、図の面積に対応する。
【0021】
図5(a)は、表示フレームnで、1の出力強度に対して1ドットの表示時間の1/10だけ出力した場合のレーザの駆動状態を示したものである。このときビームの形状は例えばTEM00の形状であり、1ドットの強度は1になる。
【0022】
図5(b)は、表示フレームn+1で、0.5の出力強度に対して1ドットの表示時間の2/10だけ出力した場合のレーザの駆動状態を示したものである。このときビームの形状は例えばTEM01の形状であり、1ドットの強度は1になる。
【0023】
図5(c)は、表示フレームn+2で、1ドットの表示時間の5/10だけ出力した場合のレーザの駆動状態を示したものである。このときビームの形状は例えばTEM11の形状であり、1ドットの強度は1になる。
【0024】
図5(a) (b) (c)に示すように、フレーム毎にレーザの駆動波形を変えて同じレーザ出力の駆動をおこなうことにより、フレーム毎にフレームビームの2次元プロファイルが変化する。2次元プロファイルごとにスペックル・パターンが異なるため、観察者には、フレーム毎に発生するスペックル・パターンが時間積分されて、認識されるスペックルノイズが軽減される。
【0025】
フレーム毎のレーザ駆動パターンは、図4に示した形式でレーザー駆動回路が記憶し、フレーム毎にパターンを切替えてレーザを駆動すればよい。
【実施例2】
【0026】
図6により、第2の実施形態について説明する。本実施例は、先に述べた第1の実施例のレーザ駆動パターンを、1つのドットの表示時間中に強度を変化させる例である。具体的には、図6に示した例の場合、強度1で1ドットの0.05の時間出力した後、0.5の強度で0.1の時間出力する。このとき、ビーム形状は最初はTEM00であり、次にTEM01に変化する。それぞれの発光時期でスペックル・パターンは変化するため、人間の認識上、時間積分されてスペックルが軽減される。
【0027】
図6には、1つのレーザ駆動パターンしか示していないが、第1の実施形態と同様に、フレーム毎に異なるパターンでレーザ駆動をおこなうようしてもよい。その場合には、フレーム毎のレーザ駆動パターンを、レーザー駆動回路が記憶し、フレーム毎にパターンを切替えてレーザを駆動すればよい。
【0028】
本実施例の場合、レーザ駆動パターンの重心が1ドットの表示時間の中心近辺にあるのが好ましい。
【0029】
本実施例の場合、強度を変化させる過渡期に予期しないビーム形状が出現する可能性もあり、その場合はスペックル低減度合いが高めることができる。
【実施例3】
【0030】
図7により、第3の実施形態について説明する。本実施例は、先に述べた第2の実施例のレーザ駆動パターンと同様に、1つのドットの表示時間中に強度を変化させる例である。
【0031】
具体的には、図7(a)に示すように、表示フレームnにおいて強度1で1ドットの0.05の時間出力した後、0.5の強度で0.1の時間出力する。このとき、ビーム形状は最初はTEM00であり、次にTEM01に変化する。
【0032】
次に図7(b)に示すように、表示フレームn+1において強度0.2で1ドットの0.25の時間出力した後、0.5の強度で0.1の時間出力する。このとき、ビーム形状は最初はTEM11であり、次にTEM01に変化する。
【0033】
次に図7(c)に示すように、表示フレームn+2において強度0.2で1ドットの0.17の時間出力した後、0.5の強度で0.67の時間出力した後、1の強度で0.3の時間出力する。このとき、ビーム形状は最初はTEM11であり、次にTEM01に、最後にTEM00に変化する。それぞれのスペックル・パターンは変化するため、人間の認識上、時間積分されてスペックルが軽減される。
【0034】
上記のように、レーザ駆動パターンは、レーザの瞬時出力強度が増える方向でも減る方向でもよく、また、段階数も図の2段階や3段階に限定されるものではない。
【0035】
また、本実施例の場合、レーザ駆動パターンの重心が1ドットの表示時間の中心近辺にあるのが好ましい。
【0036】
本実施例の場合、強度を変化させる過渡期に予期しないビーム形状が出現する可能性もあり、その場合はスペックル低減度合いが高めることができる。
【0037】
また、本実施例の場合、強度を変化させる過渡期に予期しないビーム形状が出現する可能性もあり、その場合はスペックル低減度合いが高まる。
【0038】
また、本実施例の場合、スペックル・パターンの認識上の重畳がフレーム毎にも行われるため、スペックル低減効果は大きい。
【実施例4】
【0039】
図8により、第4の実施形態について説明する。本実施例は、先に述べた実施例のレーザ駆動パターンと異なり、1つのドットの表示時間中に離散的に駆動パルスを印加する例である。
【0040】
具体的には、図8に示した例の場合、表示フレームnにおいて強度1で1ドットの0.05の時間出力した後、出力を0に戻し、次に0.5の強度で0.1の時間出力する。このとき、ビーム形状は最初はTEM00であり、次にTEM01に変化する。
【0041】
さらに、本実施例の場合、強度を変化させる過渡期に予期しないビーム形状(TEM11、TEM10)が出現する可能性が他の実施例より大きく、スペックル低減度合いが高まる。
【0042】
本実施例の場合も、図8のパターンで限定されるものではなく、また、レーザ駆動パターンの重心が1ドットの表示時間の中心近辺にあるのが好ましい。
【0043】
実施例1から実施例4では、緑のレーザについて説明したが、同様の操作を赤レーザ、青レーザで行っても良いし、全てで実施しても良い。
【符号の説明】
【0044】
10:緑色レーザー、11:赤色レーザー、12:青色レーザー、20-22:コリメートレンズ、30-31:ダイクロイック・プリズム、50:MEMSミラー、90-92:レーザ・ビーム、100:スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード・レーザ光源が出力するレーザビームを走査して画像を表示するレーザプロジェクタにおいて、
表示フレームごとに、前記レーザビーム形状の2次元出力パターンが異なるように前記マルチモード・レーザ光源を駆動するレーザ駆動部を備えたことを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中のレーザ光源の出力強度と出力時間の積が同一で、表示フレームごとに異なる出力強度と出力時間の駆動波形パターンを前記マルチモード・レーザ光源に印加することを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、レーザ光源に印加する前記駆動波形パターンを複数個有し、表示フレーム毎に前記駆動波形パターンを変えて前記マルチモード・レーザ光源に印加することを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中に、異なる2次元出力パターンのレーザビームが出力されるように前記マルチモード・レーザ光源を駆動することを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中に、第1の出力時間の間に第1の出力強度で前記マルチモード・レーザ光源を駆動し、第2の出力時間の間に前記第1の出力強度と異なる第2の出力強度で前記マルチモード・レーザ光源を駆動することを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、1ドットの表示時間中に、前記第1の出力強度と前記第2の出力強度の前記マルチモード・レーザ光源駆動を分散しておこなうことを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項7】
請求項2と請求項4と請求項5のいずれかに記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ駆動部は、前記出力強度と出力時間の駆動波形パターンの重心が1ドットの表示時間中の中心に位置するように、前記マルチモード・レーザ光源を駆動することを特徴とするレーザプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78611(P2012−78611A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224470(P2010−224470)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】