説明

レーザーチップの製造方法およびレーザーチップ

【課題】一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを製造する。
【解決手段】尖頭母型部Hの表面に内面被覆材を電解めっきし内面被覆1を形成し、内面被覆1の表面に芯材をめっきし芯2を形成し、尖頭母型部Hを引き抜き、内面被覆1および芯2の他端側に開口を形成し、芯2の表面に外面被覆材をめっきし外面被覆を形成する。
【効果】一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーチップの製造方法およびレーザーチップに関し、さらに詳しくは、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを容易に製造できるレーザーチップの製造方法および一端側から他端側まで適正な強度を有するレーザーチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザーチップ(またはレーザープローブ)は、金属パイプの内面を研磨した後、その研磨した内面に金や銀の薄膜をめっきして製造されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
他方、電鋳めっき法による細管の製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特許第3535685号公報([0016])
【特許文献2】特許第2659481号公報([0006][0007])
【特許文献3】特許第3517232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のレーザーチップでは、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の金属パイプを用いた場合、他端側の内径が小さくなると、内面を研磨する工程や内面にめっきする工程が難しくなる。このため、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを製造しにくい問題点があった。
他方、従来のレーザーチップでは、金属パイプの厚さが一端側から他端側まで均等であったため、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状にした場合、一端側の強度が適正になる厚さにすると他端側の強度が不足し、他端側の強度が適正になる厚さにすると一端側の強度が過剰になる問題点があった。
そこで、本発明の目的は、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを容易に製造できるレーザーチップの製造方法および一端側から他端側まで適正な強度を有するレーザーチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、一端側から他端側へ向けて細くなった母型の表面に内面被覆材を電解めっきし内面被覆を形成する内面被覆形成工程と、前記内面被覆の表面に芯材をめっきし少なくとも1層の芯を形成する芯形成工程と、前記母型を引き抜く引抜工程と、前記内面被覆および芯の他端側に開口を形成する開口形成工程と、前記芯の表面に外面被覆材をめっきし外面被覆を形成する外面被覆形成工程とを有することを特徴とするレーザーチップの製造方法を提供する。
上記第1の観点によるレーザーチップの製造方法では、母型の表面を平滑にしておけば、平滑な内面のレーザーチップを製造できる。すなわち、金属パイプの内面を研磨したり、金属パイプの内面にめっきする必要がなくなる。また、母型の表面を平滑にするのは、金属パイプの内面を研磨するより容易であり、表面粗さをより小さく出来る。よって、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の、高品質のレーザーチップを製造できる。なお、従来の金属パイプでは形状の自由度が低いのに対して、本発明では、母型の形状の自由度が高いため、レーザーチップの内面の自由度が高くなる利点もある。
なお、芯材を1種とし1層の芯としてもよいが、用途に合わせて芯材を2種以上とし2層以上の芯としてもよい。
【0005】
第2の観点では、本発明は、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の芯と、前記芯の全面を覆う被覆とからなるレーザーチップであって、前記芯の厚さは一端側から他端側へ向けて厚くなっていることを特徴とするレーザーチップを提供する。
上記第2の観点によるレーザーチップでは、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の芯の厚さを一端側から他端側へ向けて厚くしているため、一端側から他端側まで過不足のない適正な強度になる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレーザーチップの製造方法によれば、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップを製造できる。
本発明のレーザーチップによれば、一端側から他端側まで過不足のない適正な強度になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1にかかるレーザーチップの製造方法を示す工程フロー図である。
ステップS1では、図2に示すごとき母型治具Mの尖頭母型部Hの表面を研磨し、表面を平滑にする。例えば、0.01μmの研磨材で120秒間研磨し、表面粗さ0.5μm以下とする。
図2に示すように、尖頭母型部Hは、一端側から他端側へ直線的に細くなった円錐形である。
尖頭母型部Hの材料は、ステンレスや黄銅のような加工性に優れた金属や、導電性を付与した絶縁材料を用いることが出来る。
基部Bは、尖頭母型部Hと同一材料でもよく、別の材料でもよい。
【0009】
ステップS2では、尖頭母型部Hの脱脂および酸活性を行う。例えば、60℃のアルカリ脱脂液に120秒間浸漬し、30℃の10%塩酸水溶液に60秒間浸漬する。
ステップS3では、尖頭母型部Hの表面に光沢ニッケルめっきを行い、表面をさらに平滑にする。なお、このステップS3を省略してもよい。
ステップS4では、尖頭母型部Hの表面(光沢ニッケルめっきした場合はその表面)に離型処理を行う。例えば、10%水酸化ナトリウム溶液中で、6V、30秒間、逆電流処理を行う。
【0010】
ステップS5では、図3に示すように尖頭母型部Hに内面被覆材を電解めっきし、内面被覆1を形成する。例えば1A/dm2で20分間の電解金めっきを行う。尖頭母型部Hが一端側から他端側へ直線的に細くなった円錐形であるため、電解めっきすると、内面被覆1の厚さは、一端側から他端側へ向けて厚くなる。内面被覆1の厚さは、一端側で例えば2μmとする。
内面被覆材としては、金、銀、ロジウム、白金、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄またはそれらの合金を用いる。好適なのは、レーザーの反射率が良い金属、例えば金、銀、ロジウムまたはそれらの合金である。特に、耐食性に優れ、傷付きにくい硬質金合金、例えば金/コバルト、金/ニッケル、金/鉄が好ましい。
【0011】
ステップS6では、図4に示すように内面被覆1に芯材を電解めっきし、芯2を形成する。例えば4A/dm2〜10A/dm2で所望のめっき厚になるまで電解ニッケルめっきを行う。尖頭母型部Hが一端側から他端側へ直線的に細くなった円錐形であるため、電解めっきすると、芯2の厚さは、一端側から他端側へ向けて厚くなる。芯2の厚さは、例えば一端側で50μm〜100μmとする。
芯材としては、ニッケル、銅、鉄、コバルト、モリブデン、タングステンまたはそれらの合金を用いる(但し、被覆材より硬い材料を用いる)。好適なのは、ニッケルである。特に、スルファミン酸ニッケルめっきが適している。
【0012】
ステップS7では、図5に示すように母型治具Mを引き抜く。引き抜いた母型治具Mは、ステップS1に戻って繰り返し再使用する。
【0013】
ステップS8では、図6に示すように内面被覆1および芯2の頭部hを研磨し、レーザ出射口xを開口する。精密研磨により研磨量を制御することにより、レーザ出射口xを調整できる。
【0014】
ステップS9では、図7に示すように芯2に被覆材をめっきし、外面被覆3を形成する。例えば芯材をニッケルとするとき、置換金めっきする。外面被覆3の厚さは、例えば0.05μm以上とする。
外面被覆材は、耐食性に優れ、傷付きにくい材料が好ましく、例えば金、白金、ロジウム、パラジウムまたはそれらの合金を用いる。
以上により、図7に示すごときレーザーチップ10を製造することが出来る。
このレーザーチップ10のレーザ出射口xの径は例えば0.005mmから2.0mmであり、レーザ入射口nの径は例えば0.5mm以上である。
【0015】
実施例1のレーザーチップの製造方法によれば、従来のように金属パイプの内面を研磨したり、金属パイプの内面にめっきする必要がなくなる。また、尖頭母型部Hの表面を平滑にするのは、金属パイプの内面を研磨するより容易であり、表面粗さをより小さく出来る。よって、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップ10を製造できる。なお、従来の金属パイプでは形状の自由度が低いのに対して、本発明では、母型の形状の自由度が高いため、レーザーチップ10の内面形状の自由度が高くなる利点もある。
実施例1のレーザーチップ10によれば、内側被覆1および芯2の厚さを一端側から他端側へ向けて厚くしているため、一端側から他端側まで過不足のない適正な強度になる。
【実施例2】
【0016】
実施例2にかかるレーザーチップの製造方法では、3層の芯2を形成する。
ステップS1〜S5までは、実施例1と同じである。
【0017】
ステップS6では、図8に示すように内面被覆1に第1の芯材を電解めっきし、芯第1層21を形成する。芯材としては例えばニッケルを用いる。次に、図9に示すように芯第1層21に第2の芯材を電解めっきし、芯第2層22を形成する。芯材としては例えば銅を用いる。次に、図10に示すように芯第2層22に第3の芯材を電解めっきし、芯第3層23を形成する。芯材としては例えばニッケルを用いる。かくして、3層の芯2を形成する。
【0018】
ステップS7では、図11に示すように母型治具Mを引き抜く。引き抜いた母型治具Mは、ステップS1に戻って繰り返し再使用する。
【0019】
ステップS8では、図12に示すように内面被覆1および芯2の頭部hを研磨し、レーザ出射口xを開口する。
【0020】
ステップS9では、図13に示すように芯2に被覆材をめっきし、外面被覆3を形成する。例えば金を無電解めっきする。
以上により、図13に示すごときレーザーチップ20を製造することが出来る。
【0021】
実施例2のレーザーチップの製造方法によれば、従来のように金属パイプの内面を研磨したり、金属パイプの内面にめっきする必要がなくなる。また、尖頭母型部Hの表面を平滑にするのは、金属パイプの内面を研磨するより容易であり、表面粗さをより小さく出来る。よって、一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の高品質のレーザーチップ20を製造できる。
実施例2のレーザーチップ20によれば、内側被覆1および芯2の厚さを一端側から他端側へ向けて厚くしているため、一端側から他端側まで過不足のない適正な強度になる。また、芯第2層22を銅にしているため、ニッケルだけで芯2を構成する場合より柔らかくすることが出来る。また、芯第1層21および芯第2層23をニッケルにしているから内側被覆1および外側被覆3の金との密着性が良好になる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のレーザーチップの製造方法およびレーザーチップは、医科医・歯科医等で使用されるレーザーメスに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係るレーザーチップの製造方法を示す工程フロー図である。
【図2】母型治具の一例を示す正面図および側面図である。
【図3】内面被覆形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図4】実施例1に係る芯形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図5】実施例1に係る引抜工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図6】実施例1に係る開口工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図7】実施例1に係る外面被覆形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図8】実施例2に係る芯第1層形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図9】実施例2に係る芯第2層形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図10】実施例2に係る芯第3層形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図11】実施例2に係る引抜工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図12】実施例2に係る開口工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【図13】実施例2に係る外面被覆形成工程後の状態を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 内面被覆
2 芯
3 外面被覆
10 レーザーチップ
21 芯第1層
22 芯第2層
23 芯第3層
H 尖塔母型
M 母型治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側から他端側へ向けて細くなった母型の表面に内面被覆材を電解めっきし内面被覆を形成する内面被覆形成工程と、前記内面被覆の表面に芯材をめっきし少なくとも1層の芯を形成する芯形成工程と、前記母型を引き抜く引抜工程と、前記内面被覆および芯の他端側に開口を形成する開口形成工程と、前記芯の表面に外面被覆材をめっきし外面被覆を形成する外面被覆形成工程とを有することを特徴とするレーザーチップの製造方法。
【請求項2】
一端側から他端側へ向けて細くなった管形状の芯と、前記芯の全面を覆う被覆とからなるレーザーチップであって、前記芯の厚さは一端側から他端側へ向けて厚くなっていることを特徴とするレーザーチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−202746(P2007−202746A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24209(P2006−24209)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】